(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】乗用移植機
(51)【国際特許分類】
A01B 69/00 20060101AFI20220316BHJP
A01C 11/02 20060101ALI20220316BHJP
B62D 7/20 20060101ALI20220316BHJP
B62D 11/08 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
A01B69/00 302
A01C11/02 331C
A01C11/02 322D
B62D7/20
B62D11/08 E
(21)【出願番号】P 2018205946
(22)【出願日】2018-10-31
【審査請求日】2021-04-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085394
【氏名又は名称】廣瀬 哲夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165456
【氏名又は名称】鈴木 佑子
(74)【代理人】
【識別番号】100206106
【氏名又は名称】廣瀬 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】土江 昌嗣
(72)【発明者】
【氏名】宇山 昌樹
【審査官】櫻井 健太
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-121013(JP,A)
【文献】特開2010-208537(JP,A)
【文献】特開2002-264835(JP,A)
【文献】特開2011-188825(JP,A)
【文献】特開2010-207119(JP,A)
【文献】特開2013-123375(JP,A)
【文献】特開平11-187721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01B 69/00 - 69/08
A01C 11/02
B62D 7/00 - 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステアリングハンドルの操作に応じて左右の前輪を操舵する前輪操舵機構と、
リヤアクスルケースに内装され、左右の後輪に対する動力伝達を個別に入り切りする左右のサイドクラッチと、
前記前輪操舵機構と左右の前記サイドクラッチとを機械的に連係させ、前記ステアリングハンドルの旋回操作に応じて旋回内側の前記サイドクラッチを自動的に切り動作させるサイドクラッチ連係機構と、
旋回内側の前記サイドクラッチが自動的に切り動作された状態における連係解除操作具の操作に応じて前記前輪操舵機構と左右の前記サイドクラッチとの連係を解除するサイドクラッチ連係解除操作機構と、
前記前輪の操舵角を検出する操舵角検出機構と、を備える乗用移植機であって、
前記サイドクラッチ連係解除操作機構は、前記サイドクラッチ連係機構が左右いずれかの前記サイドクラッチを自動的に切り動作させることに連動して第1の位置から第2の位置に回動する連係解除部材を備え、
前記連係解除操作具は、前記連係解除部材が第2の位置に回動している状態で操作されたとき前記連係解除部材を第2の位置から第1の位置に回動させることで前記前輪操舵機構と左右の前記サイドクラッチとの連係を解除し、
前記操舵角検出機構は、前記連係解除部材の回動角変化に基づいて前記前輪の操舵角を検出する回動角検出センサを備えることを特徴とする乗用移植機。
【請求項2】
原動機の動力を変速するトランスミッションケースを備え、
前記回動角検出センサは、側面視において前記トランスミッションケースの後方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の乗用移植機。
【請求項3】
原動機の動力を変速するトランスミッションケースと、
前記トランスミッションケースと前記リヤアクスルケースとを連結するメインフレームと、を備え、
前記回動角検出センサは、平面視において前記メインフレームで囲まれる空間に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗用移植機。
【請求項4】
前記サイドクラッチ連係機構と前記連係解除部材とを連結する連結ロッドを備え、該連結ロッドの長さを調整可能としたことを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の乗用移植機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前輪の操舵角を検出する操舵角検出機構を備えた乗用移植機に関する。
【背景技術】
【0002】
前輪の操舵角を検出する操舵角検出機構を備えた乗用移植機が知られている(例えば、特許文献1参照)。操舵角検出機構は、例えば、ステアリングハンドルの旋回操作に応じて植付作業機を自動的に上昇させる旋回自動上昇制御機能を実装する機種では必須の構成であり、旋回自動上昇制御機能を追加する場合は、操舵角検出機構を設ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるような従来の操舵角検出機構は、少なくとも、ポテンショメータなどの回動角検出センサと、該回動角検出センサとピットマンアームなどの操向部材とを連係させる連係機構と、を備えるので、部品点数やコストが増加するという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の如き実情に鑑みこれらの課題を解決することを目的として創作されたものであって、請求項1の発明は、ステアリングハンドルの操作に応じて左右の前輪を操舵する前輪操舵機構と、リヤアクスルケースに内装され、左右の後輪に対する動力伝達を個別に入り切りする左右のサイドクラッチと、前記前輪操舵機構と左右の前記サイドクラッチとを機械的に連係させ、前記ステアリングハンドルの旋回操作に応じて旋回内側の前記サイドクラッチを自動的に切り動作させるサイドクラッチ連係機構と、旋回内側の前記サイドクラッチが自動的に切り動作された状態における連係解除操作具の操作に応じて前記前輪操舵機構と左右の前記サイドクラッチとの連係を解除するサイドクラッチ連係解除操作機構と、前記前輪の操舵角を検出する操舵角検出機構と、を備える乗用移植機であって、前記サイドクラッチ連係解除操作機構は、前記サイドクラッチ連係機構が左右いずれかの前記サイドクラッチを自動的に切り動作させることに連動して第1の位置から第2の位置に回動する連係解除部材を備え、前記連係解除操作具は、前記連係解除部材が第2の位置に回動している状態で操作されたとき前記連係解除部材を第2の位置から第1の位置に回動させることで前記前輪操舵機構と左右の前記サイドクラッチとの連係を解除し、前記操舵角検出機構は、前記連係解除部材の回動角変化に基づいて前記前輪の操舵角を検出する回動角検出センサを備えることを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載の乗用移植機であって、原動機の動力を変速するトランスミッションケースを備え、前記回動角検出センサは、側面視において前記トランスミッションケースの後方に配置されていることを特徴とする。
また、請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の乗用移植機であって、原動機の動力を変速するトランスミッションケースと、前記トランスミッションケースと前記リヤアクスルケースとを連結するメインフレームと、を備え、前記回動角検出センサは、平面視において前記メインフレームで囲まれる空間に配置されていることを特徴とする。
また、請求項4の発明は、請求項1~3のいずれか1項に記載の乗用移植機であって、前記サイドクラッチ連係機構と前記連係解除部材とを連結する連結ロッドを備え、該連結ロッドの長さを調整可能としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、操舵角検出機構は、サイドクラッチ連係解除操作機構を利用して前輪の操舵角を検出するので、最小限の部品構成で前輪の操舵角を検出可能とし、コストダウンが図れる。また、サイドクラッチ連係解除操作機構の連係解除部材は、左右いずれの前輪操舵にも連動するので、1つの回動角検出センサで前輪の操舵角を検出することが可能になる。
また、請求項2の発明によれば、回動角検出センサは、側面視において前記トランスミッションケースの後方に配置されているので、車輪が跳ね上げる泥の付着や、深田作業における泥の付着を抑制することができる。
また、請求項3の発明によれば、回動角検出センサは、平面視において前記メインフレームで囲まれる空間に配置されているので、車輪が跳ね上げる泥の付着や、深田作業における泥の付着をさらに抑制することができる。
また、請求項4の発明によれば、サイドクラッチ連係機構と連係解除部材とを連結する連結ロッドを備え、該連結ロッドの長さを調整可能としたので、回動角検出センサで検出する操舵角や、回動角検出センサの検出角度に応じて動作する装置の動作タイミングを容易に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に係る乗用田植機の全体側面図である。
【
図2】サイドクラッチ連係機構及びサイドクラッチ連係解除操作機構を示す側面図である。
【
図3】サイドクラッチ連係機構及びサイドクラッチ連係解除操作機構を示す拡大側面図である。
【
図4】サイドクラッチ連係機構及びサイドクラッチ連係解除操作機構を示す平面図である。
【
図5】サイドクラッチ連係機構及びサイドクラッチ連係解除操作機構を示す拡大平面図である。
【
図6】サイドクラッチ連係機構及びサイドクラッチ連係解除操作機構を示す背面図である。
【
図7】サイドクラッチ連係機構及びサイドクラッチ連係解除操作機構を示す拡大背面図である。
【
図9】サイドクラッチ連係機構、サイドクラッチ連係解除操作機構及び操舵角検出機構を上方から見た斜視図である。
【
図10】サイドクラッチ連係機構、サイドクラッチ連係解除操作機構及び操舵角検出機構を下方から見た斜視図である。
【
図11】サイドクラッチ連係機構、サイドクラッチ連係解除操作機構及び操舵角検出機構を示す乗用田植機の要部平面図である。
【
図12】サイドクラッチ連係機構、サイドクラッチ連係解除操作機構及び操舵角検出機構を示す乗用田植機の要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明する。
図1において、1は乗用田植機P(乗用移植機)の走行機体であって、該走行機体1の後部には、昇降リンク機構2を介して植付部3が連結されている。走行機体1自体は、機体前部に搭載されるエンジン4、該エンジン4の動力を変速するトランスミッションケース5、該トランスミッションケース5の左右両側にフロントアクスルケース6を介して設けられる前輪7、リヤアクスルケース8の左右両側に設けられる後輪9などを備える。
【0009】
トランスミッションケース5で変速された動力は、フロントアクスルケース6を介して左右の前輪7に伝動されるとともに、リヤアクスルケース8を介して左右の後輪9に伝動され、さらには、植付部3にも伝動される。リヤアクスルケース8の内部には、トランスミッションケース5から入力した動力を分岐し、左右の後輪9にそれぞれ伝動する左右の後輪動力伝動経路が構成されている。左右の後輪動力伝動経路には、それぞれサイドクラッチ10(
図8参照)が介設されており、その入り/切り動作にもとづいて、左右の後輪9に対する動力伝動が個別に入り切りされる。
【0010】
図8に示すように、本実施形態のサイドクラッチ10は、湿式多板クラッチであり、上流側伝動軸11にスプライン嵌合する内筒部材12と、内筒部材12の外周に設けられる止め輪13及び複数の円盤14と、下流側伝動軸15に一体的に結合される外筒部材16と、外筒部材16の内周に設けられる止め輪17及び複数の円盤18と、内筒部材12と外筒部材16の間に介装され、内筒部材12を離間方向に付勢するバネ19と、内筒部材12の一端位置から下方に延出し、ケース外に突出するシフタ軸20と、シフタ軸20の下端から機体外側方向に延出する操作アーム21と、を備えて構成されている。
【0011】
円盤14、18は、止め輪13、17間で交互に重合されるとともに、常時はバネ19の付勢力で圧縮されている。これにより、円盤14、18間の摩擦力で内筒部材12と外筒部材16が一体回動し、上流側伝動軸11の回転が下流側伝動軸15に伝動される。一方、操作アーム21を前方に引き操作すると、シフタ軸20がバネ19に抗して内筒部材12を押す。これにより、円盤14、18間に滑りが発生し、上流側伝動軸11から下流側伝動軸15への動力伝動が断たれる。
【0012】
左右の前輪7は、フロントアクスルケース6に操舵可能に設けられ、ステアリングハンドル22の操作に応じて操舵される。前輪7を操舵する前輪操舵機構23は、ステアリングハンドル22の操作に応じて回動するステアリング軸24と、ステアリング軸24に一体的に設けられるピットマンアーム25と、ピットマンアーム25を左右の前輪7に連繋させる左右一対のロッド26とを備えて構成されている。
【0013】
走行機体1は、前輪操舵機構23と左右のサイドクラッチ10(操作アーム21)を機械的に連係させ、ステアリングハンドル22の旋回操作に応じて旋回内側のサイドクラッチ10を自動的に切り動作させる左右一対のサイドクラッチ連係機構27を備える。
図2~
図7に示すように、サイドクラッチ連係機構27は、前端部が前輪操舵機構23に連繋される前半部27aと、後端部が操作アーム21に連繋される後半部27bと、前半部27aと後半部27bを連結する中間連結部27cと、を備えて構成されている。
【0014】
ステアリング軸24の下端部には、左右方向に延出する連動プレート28が一体的に設けられており、その左右両端部には、ステアリング軸24を中心とする円弧状の長孔28aが形成されている。サイドクラッチ連係機構27の前半部27aは、前後方向を向く第1連結ロッド29で構成されており、その前端部には、連動プレート28の長孔28aに遊嵌するピン29aが設けられている。つまり、ステアリングハンドル22を左旋回操作すると、左側の第1連結ロッド29が後方に押され、右旋回操作すると、右側の第1連結ロッド29が後方に押される構成となっている。
【0015】
サイドクラッチ連係機構27の後半部27bは、前後方向を向く第2連結ロッド30で構成されており、その後端部は、ピン30aを介してサイドクラッチ10の操作アーム21に連繋されている。
【0016】
中間連結部27cは、リンク機構からなり、例えば、左右方向に沿う中間リンク31で構成される。中間リンク31は、上下方向に延出する回動軸31aを中心として前後に回動するように構成されており、回動軸31aよりも機体内側で第1連結ロッド29の後端部に連結されるとともに、回動軸31aよりも機体外側で第2連結ロッド30の前端部に連結されている。
【0017】
すなわち、ステアリングハンドル22の左旋回操作に応じて、左側の第1連結ロッド29が後方に押されると、左側の中間リンク31が回動して左側の第2連結ロッド30を前方に引くことにより、左側サイドクラッチ10の操作アーム21が引かれ、左側後輪9への動力伝動が断たれる。また、ステアリングハンドル22の右旋回操作に応じて、右側の第1連結ロッド29が後方に押されると、右側の中間リンク31が回動して右側の第2連結ロッド30を前方に引くことにより、右側サイドクラッチ10の操作アーム21が引かれ、右側後輪9への動力伝動が断たれる。
【0018】
つぎに、前輪操舵機構23と左右のサイドクラッチ10との連係を解除するサイドクラッチ連係解除操作機構32について、
図2~
図12を参照して説明する。サイドクラッチ連係解除操作機構32は、ステアリング連動でサイドクラッチ10が切られたとき、駆動力不足で走行不能となった場合に操作され、この操作に応じてサイドクラッチ10のステアリング連動を解除するように構成されている。具体的には、連係解除時に踏込み操作されるペダル33(連係解除操作具)と、解除ペダル33の踏込み操作に応じて回動する側面視逆L字状の解除アーム34(連係解除部材)と、解除ペダル踏込み時に解除アーム34で前方に引かれる左右一対の解除ロッド35(連結ロッド)と、を備えて構成されており、左側解除ロッド35の後端部は、左側中間リンク31の内端部に連結され、右側解除ロッド35の後端部は、右側中間リンク31の内端部に連結されている。
【0019】
即ち、ステアリングハンドル22を旋回操作に応じて、左右いずれかの中間リンク31が回動した状態で解除ペダル33を踏込み操作すると、解除アーム34を介して解除ロッド35が前方に引かれ、中間リンク31がクラッチ入り側に戻される。これにより、サイドクラッチ10のステアリング連係動作を一時的に解除することができる。なお、中間リンク31と第一連結ロッド29の間には、ステアリング連係解除操作時における中間リンク31の動きを許容する融通手段が介設されるものとする。
【0020】
具体的に説明すると、解除アーム34は、
図9及び
図10に示すように、左右方向に沿う支軸36に回動可能に外嵌する筒部34aと、筒部34aの一端側から後方及び下方に延出する側面視逆L字状の第1アーム部34bと、筒部34aの他端側から下方に延出する第2アーム部34cと、両アーム部34b、34cの下端部間に回動可能に架設される軸状の架設部34dと、筒部34aの中間部から上方に延出する第3アーム部34eと、を備える。そして、第1アーム部34bの後端部には解除ペダル33が連結され、架設部34dには左右一対の解除ロッド35が連結され、第3アーム34eには復帰用のスプリング37が連結される。
【0021】
左右一対の解除ロッド35は、それぞれ、頭部38a、軸部38b及びネジ部38cを有するスルーボルト38と、側面視コ字状の連結プレート39と、スルーボルト38と連結プレート39とを連結する一対のナット40と、を備えて構成されている。スルーボルト38は、解除アーム34の架設部34dに形成される左右一対の挿通孔34fに前方からスライド可能に挿通されるとともに、頭部38aが架設部34dに前方から係合している。連結プレート39の開口側の端部は、ピン41を介して中間リンク31に回動可能に連結される一方、連結プレート39の他方の端部には、スルーボルト38のネジ部38cが挿通され、一対のナット40を介して固定される。このとき、一対のナット40のによるスルーボルト38の固定位置を変更することで、解除ロッド35の長さを調整できるようになっている。
【0022】
このようなサイドクラッチ連係解除操作機構32によれば、ステアリングハンドル22の旋回操作に応じてサイドクラッチ連係機構27が左右いずれかのサイドクラッチ10を自動的に切り動作させる際、左右いずれかの中間リンク31の回動に連動して左右いずれかの解除ロッド35が後方に移動すると、解除ロッド35の前端部と係合している解除アーム34の架設部34dが後方に引っ張られて解除アーム34が前方位置(第1の位置)から後方位置(第2の位置)に回動する。このとき左右いずれか他方の解除ロッド35は、架設部34dの挿通孔34f内を相対的に移動することにより、解除アーム34の回動を阻害しない。そして、解除アーム34が後方位置に回動している状態でペダル33を踏み込み操作すると、解除アーム34が後方位置から前方位置に回動するのに伴い、解除ロッド35が前方に引かれ、中間リンク31がクラッチ入り側に戻される。これにより、サイドクラッチ10のステアリング連係動作が一時的に解除される。
【0023】
つぎに、前輪7の操舵角(ステアリングハンドル22の切れ角)を検出する操舵角検出機構50について、
図9~
図12を参照して説明する。操舵角検出機構50は、サイドクラッチ連係解除操作機構32を利用して前輪7の操舵角を検出するように構成されており、具体的には、ステアリングハンドル22の旋回操作に応じて回動する解除アーム34の回動角変化に基づいて前輪7の回動角を検出する回動角検出センサ51を備える。このような操舵角検出機構50によれば、サイドクラッチ連係解除操作機構32を利用して前輪7の操舵角を検出することにより、最小限の部品構成で前輪7の操舵角を検出可能とし、コストダウンが図れる。また、サイドクラッチ連係解除操作機構32の解除アーム34は、ステアリングハンドル22の左右いずれの旋回操作にも連動するので、1つの回動角検出センサ51で前輪7の操舵角を検出することが可能になる。
【0024】
具体的に説明すると、操舵角検出機構50は、回動角検出センサ51を構成するポテンショメータと、回動角検出センサ51を支持するブラケット52と、回動角検出センサ51の検出軸51aを解除アーム34の筒部34aから後方に延出する第4アーム部34gに連結する検出レバー53と、を備える。ステアリングハンドル22の左右いずれかの旋回操作に応じて解除アーム34が回動すると、第4アーム部34g及び検出レバー53を介して回動角検出センサ51の検出軸51aが回動される。これにより、サイドクラッチ連係解除操作機構32を利用して前輪7の操舵角を検出することが可能になる。
【0025】
また、本実施形態のサイドクラッチ連係解除操作機構32は、サイドクラッチ連係機構27の中間リンク31と解除アーム34とを連結する解除ロッド35を備え、該解除ロッド35が長さ調整可能なので、回動角検出センサ51で検出する操舵角や、回動角検出センサ51の検出角度に応じて動作する装置の動作タイミングを容易に調整することができる。
【0026】
また、回動角検出センサ51は、ブラケット52を介してメインフレーム54に取付けられている。メインフレーム54は、トランスミッションケース5とリヤアクスルケース8とを連結する前後方向に沿った左右一対のフレーム部材であり、左右いずれか一方のメインフレーム54の内側部にブラケット52を介して回動角検出センサ51が取付けられている。このように取付けられた回動角検出センサ51は、平面視においてメインフレーム54で囲まれる空間に配置されるだけでなく、平面視及び側面視においてトランスミッションケース5の後方に配置されるので、前輪7が跳ね上げる泥の付着や、深田作業における泥の付着を抑制することができる。
【0027】
叙述の如く構成された本実施形態によれば、ステアリングハンドル22の操作に応じて左右の前輪7を操舵する前輪操舵機構23と、リヤアクスルケース8に内装され、左右の後輪9に対する動力伝達を個別に入り切りする左右のサイドクラッチ10と、前輪操舵機構23と左右のサイドクラッチ10とを機械的に連係させ、ステアリングハンドル22の旋回操作に応じて旋回内側のサイドクラッチ10を自動的に切り動作させるサイドクラッチ連係機構27と、旋回内側のサイドクラッチ10が自動的に切り動作された状態におけるペダル33の操作に応じて前輪操舵機構23と左右のサイドクラッチ10との連係を解除するサイドクラッチ連係解除操作機構32と、前輪7の操舵角を検出する操舵角検出機構50と、を備える乗用田植機Pであって、サイドクラッチ連係解除操作機構32は、サイドクラッチ連係機構27が左右いずれかのサイドクラッチ10を自動的に切り動作させることに連動して前方位置から後方位置に回動する解除アーム34を備え、ペダル33は、解除アーム34が後方位置に回動している状態で操作されたとき解除アーム34を後方位置から前方位置に回動させることで前輪操舵機構23と左右のサイドクラッチ10との連係を解除し、操舵角検出機構50は、解除アーム34の回動角変化に基づいて前輪7の操舵角を検出する回動角検出センサ51を備えるので、サイドクラッチ連係解除操作機構32を利用して前輪7の操舵角を検出することが可能になり、その結果、最小限の部品構成で前輪7の操舵角を検出可能とし、コストダウンが図れる。
【0028】
また、サイドクラッチ連係解除操作機構32の解除アーム34は、左右いずれの前輪操舵にも連動するので、1つの回動角検出センサ51で前輪7の操舵角を検出することが可能になる。
【0029】
また、乗用田植機Pは、エンジン4の動力を変速するトランスミッションケース5を備え、回動角検出センサ51は、少なくとも側面視においてトランスミッションケース5の後方に配置されているので、前輪7が跳ね上げる泥の付着や、深田作業における泥の付着を抑制することができる。
【0030】
また、乗用田植機Pは、トランスミッションケース5とリヤアクスルケース8とを連結するメインフレーム54を備え、回動角検出センサ51は、平面視においてメインフレーム54で囲まれる空間に配置されているので、前輪7が跳ね上げる泥の付着や、深田作業における泥の付着をさらに抑制することができる。
【0031】
また、サイドクラッチ連係解除操作機構32は、サイドクラッチ連係機構27と解除アーム34とを連結する解除ロッド35を備え、該解除ロッド35の長さを調整可能としたので、回動角検出センサ51で検出する操舵角や、回動角検出センサ51の検出角度に応じて動作する装置の動作タイミングを容易に調整することができる。
【符号の説明】
【0032】
P 乗用田植機
1 走行機体
4 エンジン
5 トランスミッションケース
7 前輪
8 リヤアクスルケース
10 サイドクラッチ
22 ステアリングハンドル
23 前輪操舵機構
27 サイドクラッチ連係機構
31 中間リンク
32 サイドクラッチ連係解除操作機構
33 ペダル
34 解除アーム
35 解除ロッド
50 操舵角検出機構
51 回動角検出センサ
54 メインフレーム