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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】飲料調製用カプセル
(51)【国際特許分類】
   A47J 31/06 20060101AFI20220316BHJP
   A47J 31/34 20060101ALI20220316BHJP
   A47J 31/36 20060101ALI20220316BHJP
   B65D 85/804 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
A47J31/06 323
A47J31/34
A47J31/36 120
B65D85/804 200
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2018554319
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-09
(86)【国際出願番号】 IB2018051624
(87)【国際公開番号】W WO2018167641
(87)【国際公開日】2018-09-20
【審査請求日】2020-12-28
(31)【優先権主張番号】102017000029991
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514028558
【氏名又は名称】カフィタリー システム エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】CAFFITALY SYSTEM S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100149249
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 達也
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ アキュルシ
(72)【発明者】
【氏名】ロベルト フィーニ
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/136433(WO,A1)
【文献】特表2015-530142(JP,A)
【文献】特表2009-539443(JP,A)
【文献】特表2016-527946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/00-31/60
B65D 85/804
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カップ形状の収容体(2)であって、第1の縁(23)と第2の縁(24)との間に延在する管状側壁(21)と、第1の縁(23)に接続され、また、管状側壁(21)の中心軸(25)に対して横断方向に延在する底部(22)とを備え、前記底部(22)は分注孔(26)を備え、前記収容体(2)はそれ自体の内部に収容チャンバ(20)を画定する、カップ形状の収容体(2)と、
前記第2の縁(24)に固定されて前記収容体(2)の頂部を閉鎖する閉鎖要素(29)と、
前記収容チャンバ(20)内に取り付けられ、粉末食品物質(8)と前記底部(22)との間に配置されたフィルタ要素(3)と、
前記収容チャンバ(20)内に取り付けられ、前記フィルタ要素(3)と前記底部(22)との間に配置された分注要素(5)であって、使用時に、前記分注孔(26)に向かって流れる飲料の蛇行路を形成することを意図された分注要素(5)と、
収容チャンバ(20)内に取り付けられ、フィルタ要素(3)と分注要素(5)との間に挿入された酸素不透過性バリヤ(6)であって、酸素不透過性バリヤ(6)は可撓性材料シートであり、前記収容体(2)に酸素が通らないように固定され、また、使用中に引き裂かれることを意図され、これにより前記飲料がそれを通過できるようにする、酸素不透過性バリヤ(6)と、
前記フィルタ要素(3)と前記分注要素(5)との間に挿入された状態で前記収容チャンバ(20)内に取り付けられ、前記管状側壁(21)の前記中心軸(25)に対して横断方向に延在する流れ絞り要素(7)であって、前記収容チャンバ(20)内の飲料用の通路断面を塞ぎ、また、使用時に前記飲料が前記分注要素(5)に向かって流れる少なくとも1つの貫通開口(71)を有する、流れ絞り要素(7)と、
を備える粉末食品物質(8)に水を通すことにより飲料の作製を可能にする粉末食品物質(8)を含む飲料作製用カプセル(1)。
【請求項2】
前記流れ絞り要素(7)が、前記フィルタ要素(3)と前記酸素不透過性バリヤ(6)との間に配置されている、請求項1に記載のカプセル。
【請求項3】
前記流れ絞り要素(7)が、特にプラスチック材料で形成された膜または薄板であり、前記少なくとも1つの貫通開口(71)が、膜または薄板内に形成された孔または切り口である、請求項1または2に記載のカプセル(1)。
【請求項4】
前記流れ絞り要素(7)の前記少なくとも1つの貫通開口(71)は、特に0.5mm~3mmの直径を有する永久的に開いている孔であり、より特定的には、1.2mmの直径を有する永久的に開いている孔である、請求項1~3のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項5】
前記流れ絞り要素(7)が単一の貫通開口(71)を有し、前記貫通開口(71)は特に前記流れ絞り要素(7)の中央領域にある、請求項1~4のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項6】
前記流れ絞り要素(7)が、特にプラスチック材料で形成された膜または薄板であり、前記膜または前記薄板と前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートとが互いに重なり合い、前記膜または前記薄板と前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートの各々は前記収容体(2)に固定された周囲領域(78、68)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項7】
前記流れ絞り要素(7)が、特にプラスチック材料で形成された膜または薄板であり、前記膜または薄板と前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートとが互いに結合し、前記収容体(2)に固定された多層要素を形成する、請求項1~5のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項8】
前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートは、前記可撓性材料シートが使用中に引き裂かれることを意図された、少なくとも1つの意図された引き裂き領域(60)を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項9】
前記流れ絞り要素(7)の前記少なくとも1つの貫通開口(71)が、前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートの少なくとも1つの意図された引き裂き領域(60)にある、請求項8に記載のカプセル(1)。
【請求項10】
前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートは、少なくとも、互いに結合した、プラスチック材料で形成されたフィルムから構成される第1の層(61)と、アルミニウムフィルムから構成される第2の層(62)とを備え、前記第1の層(61)は、前記フィルタ要素(3)と前記第2の層(62)との間に挿入され、
少なくとも1つの意図された引き裂き領域(60)において、前記第1の層(61)は切り口または貫通開口(615)を有し、また、前記第2の層(62)は、前記フィルタ要素(3)に面している前記第1の層(61)の側の圧力が増加した後に前記第2の層(62)が破裂するまで、意図された引き裂き領域(60)において底部22に向かって局所的に膨張することが可能であり、特に、前記第1の層(61)は前記第2の層(62)から局所的に分離され、前記第2の層(62)が局所的に膨張することを可能にする、請求項8または9に記載のカプセル(1)。
【請求項11】
前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートは、前記分注要素(5)上に載置され、前記分注要素(5)は、前記酸素不透過性バリヤ(6)に向かって面する側にチャンバまたは凹部(551)を有し、前記チャンバまたは凹部(551)は、前記分注要素(5)が前記チャンバまたは凹部(551)内の飲料の流れを受けるよう意図されるように、前記少なくとも1つの意図された引き裂き領域(60)を取り囲む、請求項8~10のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項12】
前記酸素不透過性バリヤ(6)の前記可撓性材料シートは、単一の意図された引き裂き領域(60)を有する、請求項8~11のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項13】
前記分注要素(5)は、前記フィルタ要素(3)に面する第1の面(51)と、前記収容体(2)の前記底部(22)に面する第2の面(52)と、前記第1の面(51)と前記第2の面(52)とを互いに接合する周面(53)とを有し、
前記分注要素(5)は、前記第1の面(51)において、中央領域内にチャンバまたは凹部(551)と、環状領域内に1つ以上のチャンバまたは凹部(552)と、前記チャンバまたは凹部(551、552)を互いと前記周面(53)とに連通させる複数のチャネル(553)とを有し、
前記分注要素(5)は、前記第2の面(52)において、環状領域内に1つ以上のチャンバまたは凹部(562)と、前記1つ以上のチャンバまたは凹部(562)を前記周面(53)と前記分注要素(5)とに連通させる複数のチャネル(563)とを有し、
前記飲料の前記蛇行路は、前記分注要素(5)の前記第1の面(51)と、前記周面(53)と、前記第2の面(52)とを含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載のカプセル(1)。
【請求項14】
前記分注要素(5)は、を前記周面(53)上に、前記第1の面(51)と前記第2の面(52)とを互いに連通させるチャネル(573)有する、請求項13に記載のカプセル(1)。
【請求項15】
前記分注要素(5)は、前記第2の面(52)上に、前記分注孔(26)の中央位置に収容されるガイド突起(58)を備える、請求項13または14に記載のカプセル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料作製用カプセルであって、熱湯を通すことにより飲料の作製を可能にする粉末食品物質を含むタイプのものに関する。当該食品物質は、可溶性のものまたは焙煎粉末コーヒー等の、浸出による抽出が可能なタイプのものであってもよい。
【0002】
特に、本発明は、特許文献1(欧州特許第1472156号明細書)、特許文献2(欧州特許第1500358号明細書)、特許文献3(欧州特許第1574452号明細書)、および特許文献4(欧州特許第1808382号明細書)に記載のタイプのカプセルに関する。すなわち、好適な飲料作製機において使用される場合、飲料を直接下方のカップに分注することができるカプセルに関する。当該カプセルは、分注孔を備えた底部を有するカップ形状の収容体を備える。収容体は、上部を閉鎖要素によって閉じられており、収容体の内部には、粉末食品物質と底部との間に配置された少なくとも1つの下部フィルタ要素がある。
【0003】
このタイプのカプセルに関し、カプセルは一般に、カプセルが使用される前に、粉末食品物質に向かう酸素の通過を防止するよう形成される。これにより、粉末食品物質の劣化を防止する。さらに、カプセルが使用されるときに、飲料作製用機械はカプセル内に水を注入するために上部閉鎖要素のみを貫通する。多くの先行技術のカプセルでは、飲料の流出は、カプセルに水を注入した後に膨張してカプセル内に存在する固定接触要素に当たって裂けるアルミニウムのシートで形成された、酸素に対するバリヤをカプセルの内部に備えることにより実現される。特に、下部フィルタ要素は、アルミニウムシートが膨張するとすぐにアルミニウムシートが引き裂かれることを可能にするピラミッド形状の釘状物により、実質的に完全に覆われている。
【0004】
さらに、既に示したように、これらの先行技術のカプセルでは、飲料はカプセルからカップに直接分注される。すなわち、機械のいずれの部分とも接触することなく分注される。当該目的のため、射出成形されたカプセル収容体は、飲料が出るときに飲料を誘導する一種の短い管を生成し、下方のカップに向かって飲料が正確に方向づけされていることを保証する、外側に延在し、かつ分注孔を取り囲む環形状を有する。
【0005】
カプセルに注入された水は高圧を有し、これは、アルミニウムシートが引き裂かれた後、噴霧で飲料の不規則な流れを生じ得ることに留意されたい。この問題は、飲料の流れを規則正しくするために好適な、カプセルの外側のディスペンサが無いことから、カップに直接分注するカプセルにとってはより大きな問題である。
【0006】
さらに、飲料分注の終わりに、粉末食品物質が飲料作製工程中に吸収した水を放出するため、カプセルから多量の液だれが生じ得る。これは、カップが取り除かれた後に滴りが下方の表面を汚し、また、ユーザが液だれしているカプセルを処理しなければならないため、不便である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】欧州特許第1472156号明細書
【文献】欧州特許第1500358号明細書
【文献】欧州特許第1574452号明細書
【文献】欧州特許第1808382号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような状況において、本発明の基礎をなす主な技術的目的は、上記のカプセルを使用する同様のタイプの機械で使用され得る飲料作製用カプセルであって、従来技術のカプセルとは別の代替手段で形成されたカプセルを提供することである。
【0009】
本発明の技術的目的は、飲料の流出が規則的で、実質的に加圧噴霧を含まないカプセルを提供することでもある。
【0010】
本発明の別の技術的目的はまた、分注の終了時の液だれが実質的に無視可能なカプセル、または液だれが無いカプセルを提供することにも関する。
【0011】
本発明の第2の技術的目的は、飲料分注に関する代替開封方法を使用するカプセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
特定された技術目的及び提示した目標は、請求項に記載した飲料作製用カプセルによって実質的に達成される。
【0013】
本発明のさらなる特徴および利点は、添付の図面に示す、飲料作製用カプセルのいくつかの好適な非限定的実施形態を参照して、以下の詳細な説明においてより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施形態によって形成された飲料作製用カプセルの側面図であり、カプセルの内部を示すためカプセルの側壁を部分的に中断した図である。
図2】線II-IIに沿って切断し、また、カプセルの内部構造をより良く示すために粉末食品物質無しで示す、図1のカプセルの断面図である。
図3図1のカプセルの上部フィルタ要素の斜視頂面図である。
図4図3の上部フィルタ要素の斜視底面図である。
図5図3の上部フィルタ要素の断面図である。
図6図1のカプセルの下部フィルタ要素の斜視頂面図である。
図7図6の下部フィルタ要素の斜視底面図である。
図8図6の下部フィルタ要素の断面図である。
図9図1のカプセルの分注要素の斜視頂面図である。
図10図9の分注要素の斜視底面図である。
図11図9の分注要素の底面図である。
図12】線XII-XIIに沿って切断した、図9の分注要素の断面図である。
図13】線XIII-XIIIに沿って切断した、図9の分注要素の断面図である。
図14図1のカプセルの流れ絞り要素の頂面図である。
図15図1のカプセルの酸素不透過性バリヤの頂面図である。
図16】線XVI-XVIに沿って切断した、図15の酸素不透過性バリヤの一部の拡大断面図である。
図17】互いに重なり合う、図14の流れ絞り要素の一部と図16の酸素不透過性バリヤの一部との拡大断面図である。
図18】互いに重なり合う、図14の流れ絞り要素と図15の酸素不透過性バリヤとを示す、図1のカプセルの底の概略頂面図である。
図19】本発明の第2の実施形態によって形成された飲料作製用カプセルの側面図であり、カプセルの内側を示すためカプセルの側壁を部分的に中断した図である。
図20】線XX-XXに沿って切断し、また、カプセルの内部構造をより良く示すために粉末食品物質無しで示す、図19のカプセルの断面図である。
図21図19のカプセルの分注要素の斜視頂面図である。
図22図21の分注要素の斜視底面図である。
図23図21の分注要素の底面図である。
図24】線XXIV-XXIVに沿って切断した、図21の分注要素の断面図である。
図25】線XXV-XXVに沿って切断した、図21の分注要素の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
上記の図を参照すると、参照符号1は、本発明によって形成されたカプセルの全体を示す。
【0016】
従来のカプセルと同様に、本発明によるカプセル1は、粉末食品物質8に水(特に、加圧された熱湯)を通すことにより飲料の作製を可能にする粉末食品物質8を含む。以下でより詳細に説明するように、粉末食品物質8は可溶性タイプであってもよく、または加圧が加減される水で浸出によって抽出され得るタイプであってもよい。いずれにせよ、ある程度の抽出圧力が常に必要とされる。
【0017】
特に、粉末食品物質8は、焙煎粉砕コーヒーの粉末である。このようにして得られる飲料は、例えば、エスプレッソコーヒーである。
【0018】
図面に関して明確にするために、粉末食品物質8を図1および図19のみにおいて示し、ここでカプセル1の本体を、カプセルの内部を示すため窓型の中断を用いて示す。一方、粉末食品物質8は他の添付図面において示していない。粉末食品物質8は、下部フィルタ要素(符号3)と上部フィルタ要素(符号4)との間、または上部フィルタ要素が存在しない場合には下部フィルタ要素3と閉鎖要素29との間の領域に含まれる。
【0019】
カプセル1は、カップ形状の第1の収容体であって、管状側壁21と底部22とを識別することが可能な収容体2を備える。収容体2は、それ自体の内部に収容チャンバ20を画定する。管状側壁21は、第1の縁23と第2の縁24との間に延在する。底部22は、第1の縁23に接続され、また、管状側壁21の中心軸25に対して横断方向に(特に、中心軸25に対して垂直方向に)延在し、当該中心軸25はまた、カプセル1の中心軸でもある。底部22はまた、特にその中心領域において、分注孔26を有する。酸素に対するバリヤとして作用し得る多層材料のシート等の閉鎖要素29は、管状側壁21の第2の縁24に固定され、収容体2の頂部および収容チャンバ20を閉鎖する。閉鎖要素29は通常、封止または接着によって固定される。
【0020】
例示した実施形態では、収容体2の管状側壁21と底部22とは、好ましくは、成形プラスチック材料または熱成形された多層フィルム等の、酸素に対するバリヤとして作用し得る材料を用いて、一体的に形成される。
【0021】
図に示す実施形態では、収容体2の底部22は、分注孔26を取り囲む内側環状領域221と、内側環状領域221を取り囲む中間環状領域222と、中間環状領域222を取り囲む外側環状領域223とを備える。これらの3つの領域は、互いに対し階段状に配置され、内側環状領域221が中間環状領域222よりも閉鎖要素29から離れて配置され、中間環状領域222が外側環状領域223よりも閉鎖要素29から離れて配置される。実際には、底部22は、カプセル1の頂部から離れるように延出する突出部分を有する。カプセル1の内側において、内側環状領域221と、中間環状領域222と、外側環状領域223とはそれぞれ、中心軸25に対して横断方向に延在する支持表面を画定する。様々な支持表面は、中心軸25に対して同心である。
【0022】
特に、収容体2は、酸素に対するバリヤとされたプラスチック材料を熱成形することによって形成され、ダイ打抜きによって形成され得る分注孔26と共に形成される。しかしながら、一般的に、収容体2は任意の材料および任意の方法を用いて、例えば射出成形によって形成され得る。
【0023】
特に下部フィルタ要素であるフィルタ要素3を、収容チャンバ20内に取り付け、粉末食品物質8と底部22との間に配置する。下部フィルタ要素3は、例えば、複数の貫通孔31を備えた剛性または半剛性のプラスチック要素である。図において、径方向の補強リブ33と、粉末食品物質8に向かって突出する中央膨出部35との両方を備えた下部フィルタ要素3の一例を示す。例において、径方向リブ33は、下部フィルタ要素3の底部22に面する面と、粉末食品物質8に面する反対面との両方において設けられる。
【0024】
下部フィルタ要素3は、外側環状領域223の内面に載置され、管状側壁21に形成された造形へこみ27によって所定位置に保持される。下部フィルタ要素3を、例えばスナップで取り付ける(スナップイン)方法でカプセル1内に挿入する。
【0025】
図示された特定の実施形態では、カプセル1はまた、閉鎖要素29と粉末食品物質8との間に配置された上部フィルタ要素4を備える。上部フィルタ要素4はまた、複数の穴41とリブ43とを備える剛性または半剛性のプラスチック要素であってもよい。他の実施形態も実施可能である。
【0026】
カプセル1はまた、収容チャンバ20内に取り付けられ、下部フィルタ要素3と底部22との間に配置される分注要素5を備える。特に、分注要素5は、中間環状領域222の内面と内側環状領域221の内面との上に載置される。基本的には、分注要素5は、飲料が分注孔26に直接到達するのを防止することにより、使用中に分注孔26に向かって流れる飲料の蛇行路を形成することを意図された分流器である。分注要素5は、例えば、成形プラスチック材料で形成され、また、カプセル1の底部22に連結される。
【0027】
分注要素5の第1の実施形態を図9図13に詳細に示し、一方、第2の実施形態を図21図25に示す。
【0028】
特に、分注要素5は、下部フィルタ要素3に面する第1の面51、すなわちカプセル1の頂部に向けて面する第1の面51と、底部22に向けて面する第2の面52とを有する。分注要素5はまた、第1の面51と第2の面52とを互いに接合する周面53または環状面も有する。
【0029】
第1の面51において、分注要素5は、中央領域内に(実際には、カプセル1の中心軸25の上において)チャンバまたは凹部551を有し、環状領域内に1つ以上のチャンバまたは1つ以上の凹部552を有し、また、当該チャンバまたは凹部551、552を互いと周面53とに連通させる複数のチャネル553を有する。実際には、中央チャンバまたは凹部551は分注される飲料を収集するくぼみであり、一方、図9図13の実施形態ではその両者が存在する、環状チャンバまたは凹部552は、中央チャンバ551から、または上記の環状チャンバ552から飲料を受ける同心の溝である。飲料は、特に実質的に半径方向に延在するチャネル553に沿って移動することにより、1つのチャンバから別のチャンバに流れる。中央チャンバ551は、環状チャンバ552よりも深く、かつより大きな容量を有することに留意されたい。
【0030】
第2の面52において、分注要素5は、環状領域内に1つ以上のチャンバまたは凹部562を有し、また、前記1つ以上のチャンバまたは凹部562を周面53と分注孔26とに連通させる複数のチャネル563を有する。実際には、図9図13の実施形態ではその1つのみがある、環状チャンバまたは凹部562は、周面53から、または上記の環状チャンバ562から飲料を受ける同心の溝である。飲料は、特に実質的に半径方向に延在するチャネル563に沿って移動することにより、分注孔26が位置する第2の面52の中央領域に達するまで、1つのチャンバから別のチャンバに流れる。
【0031】
カプセル1の出口に向かって飲料の流れをより導きやすくするために、分注要素5は、特に第2の面52の中心で、第2の面52上にガイド突起58を備える。ガイド突起58は、分注孔26の中央位置に収容され、また、実際には、出てくる飲料を迂回させ、また導くような方法で、第2の面52から下方に突出して分注孔26内に延在するくぎ、または同種のものである。
【0032】
特に、分注要素5は、周面53に、第1の面51と第2の面52とを互いに連通させるチャネル573を有する。
【0033】
図に示すように、分注要素5は、収容体2の底部22の突出部内に完全に収容される。分注要素5の第1の面51は、外側環状領域223と実質的に同じ高さであり、一方、分注要素5の第2の面52は、中間環状領域222上と内側環状領域221上とに載置される。
【0034】
分注孔26に達するために、中央チャンバ内または凹部551内の飲料は、環状チャンバ552、562と、チャネル553、563、573とを通る蛇行路を辿らなければならない。
【0035】
多数のチャネル553、563、573が存在することと、それらはチャンバ551、552、562を互いに仕切る仕切り壁の全周囲に沿って分布していることと、それらは通路断面積が小さく、また、それらはそれらが互いに連通させるチャンバ551、552、562の深さと比較してそこまで深くはないこととに留意されたい。これは、飲料の経路の蛇行を増加させるのに役立つ。
【0036】
当該蛇行路によって、分注要素5は飲料の流れを減衰させ、また、飲料の流れを遅くする。これは、分注孔26からの噴霧無しで規則的な分注を達成するのに役立つ。
【0037】
飲料の蛇行路は、分注要素5の第1の面51と、周面53と、第2の面52とを含む。
【0038】
分注要素5はそれ自体で、必要な場合には、例えば分割特許出願において、カプセル1の他の特徴とは独立して、特許によって保護され得ることに留意されたい。
【0039】
カプセル1はまた、収容チャンバ20内に取り付けられ、また、下部フィルタ要素3と分注要素5との間に挿入される酸素不透過性バリヤを備える。酸素不透過性バリヤは、可撓性材料シート6であり、収容体2に酸素が通らないように固定され、また、使用中に引き裂かれることを意図され、これにより飲料がそれを通過できるようにする。カプセル1が使用される前に、粉末食品物質8を収容している収容チャンバ20の部分は、酸素が通らないように封止される。カプセル1の使用中、閉鎖要素29と可撓性材料シート6は引き裂かれ、水が流入することと飲料が流出することをそれぞれ可能にする。
【0040】
この目的のため、可撓性材料シート6は、可撓性材料シート6が使用中に引き裂かれることが意図される少なくとも1つの意図された引き裂き領域60を有する。図示した特定の実施形態では、可撓性材料シート6は、特にシート6の中央領域にある単一の意図された引き裂き領域60を有する。実際には、単一の引き裂き領域60は、カプセル1の中心軸25上に配置される。
【0041】
図示した構成では、可撓性材料シート6は分注要素5上に載置され、分注要素5の第1の面51と接触している。分注要素5が中央チャンバまたは凹部551内の飲料の流れを直接受けるよう意図されるように、分注要素5の中央チャンバ551は、可撓性材料シート6に向かって面し、また、意図された引き裂き領域60を取り囲む。
【0042】
図示した実施形態では、可撓性材料シート6は、少なくとも1つの、互いに結合した、プラスチック材料、好ましくはポリエチレンまたはポリエステルで形成されたフィルムから構成される第1の層61と、アルミニウムフィルムから構成される第2の層62とを備える。第1の層61は、下部フィルタ要素3と第2の層62との間に挿入され、第2の層62は第1の層61と分注要素5との間に挿入される。
【0043】
意図された引き裂き領域60において、第1の層61は切り口615または貫通開口を有し、また、第2の層62が、下部フィルタ要素3に面している第1の層61の側の圧力が増加した後に破裂するまで、意図された引き裂き領域60において底部22に向かって局所的に膨張することを可能にするよ、第1の層61は第2の層62から局所的に分離される。
【0044】
換言すると、カプセル1の使用中に、加圧された飲料はプラスチック材料の第1の層の切り口615を流れ、第1の層61から離れた領域内のアルミニウムフィルムの第2の層62に直接作用し、第2の層62がたわんで裂けるまで第2の層62を膨張させ、それによって分注孔26に向かう飲料の通路を開く。
【0045】
特に、意図された引き裂き領域60は、分注要素5の中央チャンバ551の上方にあり、したがって、中央チャンバ551自体が第2の層2の膨張のための膨張空間を提供する。可撓性材料シート6の破壊は、その2つの面の間の圧力差によって第2の層62の破壊強度を超えたことに起因することに留意されたい。シート6と分注要素5との相互貫入を引き裂くことに起因するものではない。実際には、可撓性材料シート6の引き裂きは、中央チャンバ551よりもはるかに小さい寸法の領域に影響を及ぼし、したがって中央チャンバ551自体の中に完全に閉じ込められる。
【0046】
図示した実施形態では、切り口615は十字形状であり、離れた領域は円形状である。明らかに、他の形状も可能である。
【0047】
可撓性材料シート6はまた、第1の層61と第2の層62との間に挿入された接着剤層63を備え、それらが確実に互いに固着するようにする。接着剤層63は意図された引き裂き領域60で中断される。可撓性材料シート6はまた、第1の層61に面する面の反対側の面において第2の層62に塗布されたラッカー層64と、必要な場合には、第2の層62が第1の層61と絡み合ったプラスチック繊維の層65との間に挿入されたままとなるように、上記のラッカー層64と同じ側において第2の層62に関連付けられた絡み合ったプラスチック繊維の層65とを備え得る。特に、絡み合ったプラスチック繊維の層65は、織製または不織製のポリエステルから構成される。
【0048】
好適な実施形態では、様々な層の厚さは以下の通りである。
‐第1の層61(ポリエチレンフィルム):10μm±4μm
‐接着剤層63:4μm±2μm
‐第2の層62(アルミニウムフィルム):7μm±3μm
‐ラッカー層64:4μm±2μm
‐織製または不織製のポリエステルの層65:11μm±3μm
【0049】
例えば、アルミニウム層(第2の層62)の厚さは、可撓性材料シート6の2つの面の間の圧力差が少なくとも2バールに等しい場合に、第2の層62が、少なくとも意図された引き裂き領域60で自律的に引き裂かれるよう選択される。特定の技術的要件に応じて、明らかに、2バール未満の圧力に起因して引き裂かれるような厚さを有するアルミニウムの層62を選択してもよい。
【0050】
様々な層について上記に示した厚さは、一例として示しており、特定の技術的要件によって変更を加えることができる。特に、厚さは上記に示した範囲よりも広い範囲であってもよい。例えば、アルミニウムの第2の層62の厚さは、6μm~30μmであり得る。
【0051】
切り口615は、レーザービームで形成することができ、特に、第1の層61と第2の層62とが既に結合されている場合に形成してもよい。実際、好適な強度のレーザービームを使用して、ポリエチレンを切断することは可能であるが、単にレーザービームを反射するアルミニウムは切断することはできない。例えば、切り口615の長さは約数ミリメートル、好ましくは1mm~10mmであり、一方、切り口615の幅は約0.5mm~1mmであり、必要な場合には約0.5mm~2mmである。
【0052】
可撓性材料シート6の別の実施形態では、第1の層61と第2の層62とは、意図された引き裂き領域60内であっても互いに接着されており、すなわち、これらは当該領域において局所的に分離されていない。この別の実施形態においても存在する切り口615は、可撓性材料シート6の局所脆弱部を構成し、また、加圧された飲料がアルミニウムフィルムの第2の層62に直接作用し、それを切り口615で破壊することを可能にする。
【0053】
カプセル1はまた、下部フィルタ要素3と分注要素5との間に挿入された状態で収容チャンバ20内に取り付けられた流れ絞り要素7を備える。流れ絞り要素7は、管状側壁21の中心軸25に対して横断方向に延在し、収容チャンバ20内の飲料用の通路断面を塞ぐ。実際には、流れ絞り要素7は、中心軸25に対して垂直に配置され、また収容チャンバ20の横断面全体にわたって延在する。
【0054】
流れ絞り要素7は、使用時に、飲料が分注要素5に向かって流れる少なくとも1つの貫通開口71を有する。換言すると、流れ絞り要素7は飲料の流れに、管状側壁21の通路断面積よりもはるかに小さい通路断面積を有する少なくとも1つの貫通開口71を通過させる。
【0055】
具体的には、流れ絞り要素7は例えば0.03mm~3mmの厚さを有する膜又は薄板である。特に、前記膜または薄板は、プラスチック材料で形成されてもよく、単層材料(ポリエチレン、ポリテンまたは収容体2の材料上に封止され得る他の材料等)、多層材料(例えば、封止可能な層を有する材料、任意のプラスチック材料またはアルミニウムで形成された中間層を有する材料、ポリエステル外層を有する材料)またはポリエステル+ポリエステル+ポリプロピレン多層材料であり得る。
【0056】
したがって、具体的には、流れ絞り要素7は、プラスチック材料で形成された可撓性シートである。
【0057】
少なくとも1つの貫通開口71は、特に、材料を取り除くことなく膜に穴をあける穿刺針を使用して、膜または薄板に形成された孔または切り口である。ダイ打抜き等の孔を開ける他の方法も明らかに可能である。
【0058】
図示した実施形態では、貫通開口71は、直径が0.5mm~3mm、特に直径が1.2mmの孔である。必要な場合には、特定の実施形態では、孔71の直径は3mm超であってもよい。
【0059】
好ましくは、貫通開口71は、永久的に開いている孔である。すなわち、流れ絞り要素7の材料は、流れ絞り要素7に機械的応力が無い場合に孔71を閉じ得る弾性復帰を有さない。さらに、孔71は好ましくは、分注前(すなわち、カプセルが使用されていない状態)と分注後(すなわち、カプセルが使用された後)とにおいて同一の寸法を有する。換言すると、流れ絞り要素7の材料は、カプセル1の使用中に塑性変形しない。
【0060】
具体的には、流れ絞り要素7は、特に流れ絞り要素7の中央領域内にある単一の貫通開口71を有する。実際には、単一の貫通開口71は、カプセル1の中心軸25上に配置される。
【0061】
代替的な実施形態では、2つ以上の貫通開口71が存在してもよいが、その数は限られる。例えば、最大10個または12個の貫通開口71があり得る。好ましくは、貫通開口71の全通路断面積は、収容チャンバ20の対応する通路断面積の0.5%以下である。
【0062】
図示する実施形態では、流れ絞り要素7を形成する膜と、酸素不透過性バリヤの可撓性材料シート6とが互いに重なり合っている。具体的には、流れ絞り要素7の少なくとも1つの貫通開口71は、可撓性材料シート6の少なくとも1つの意図された引き裂き領域60にある。他の可能な実施形態では、貫通開口71の位置と意図された引き裂き領域60の位置とは互いに対応しない。
【0063】
可撓性材料シート6と流れ絞り要素7とは、収容体2に固定された周辺領域68、78をそれぞれ有する。図18に示すように、可撓性材料シート6と流れ絞り要素7とは、平面視で円形状を有するが、直径が異なる。それぞれの周辺領域68、78は、例えば封止または接着によって底部22(特に外側環状領域223)に固定される。換言すれば、2つのシート6、7は互いに固定されておらず、代わりにそれら両方はカプセル1の底部に固定されている。さらに、下部フィルタ要素3が外側環状領域223の内面に載置されているので、可撓性材料シート6と流れ絞り要素7とは、一方の側の下部フィルタ要素3と、他方の側の底部22および分注要素5との間に閉じ込められている。
【0064】
特定の実施形態では、流れ絞り要素7は、下部フィルタ要素3と酸素不透過性バリヤ6との間に挿入され、酸素不透過性バリヤ6は流れ絞り要素7と底部22との間に挿入される。換言すれば、流れ絞り要素7は粉末食品物質8に向かって面し、また酸素不透過性バリヤ6は分注口26に向かって面する。
【0065】
この構成は、酸素不透過性バリヤ6が破れる前に、意図された引き裂き領域60の膨張を流れ絞り要素7が妨げ得ることを防止するため、有用である。
【0066】
あまり有利ではないが、下部フィルタ要素3と流れ絞り要素7との間に、酸素不透過性バリヤ6を挿入した逆の構成も可能である。
【0067】
単一の貫通開口71と単一の意図された引き裂き領域60のみが存在する記載した実施形態では、それらの位置は互いに一致し、かつ、それらは中心軸25上であって、分注要素5の中央チャンバ551にある。
【0068】
図示した実施形態では、下部フィルタ要素3と、流れ絞り要素7と、酸素不透過性バリヤ6と、分注要素5とは、互いに分離した要素であることに留意されたい。すなわち、それらは互いに分離した部分であり、必要に応じて、互いに異なる材料と形状で形成され、また、それらの特定の目的により適した材料と形状で形成され得る。
【0069】
しかしながら、代替的な実施形態では、流れ絞り要素7と、酸素不透過性バリヤ6とは一体化され得る。換言すると、少なくとも1つの貫通開口71を有する膜または薄板(例えば、流れ絞り要素7に関し上述した材料で形成された可撓性シート)である第1の層を有する多層要素が供給されてもよく、前記第1の層は、酸素不透過性バリヤに関し上述した可撓性材料シート6に連結されている。このようにして得られた、互いに連結した貫通開口71を有する膜または薄板と可撓性材料シート6とによって形成された多層要素は、特に底部22の外側環状領域223の内側でカプセル1の収容体2に固定される。当該多層要素において、貫通開口71は、好ましくは意図された引き裂き領域60にある。
【0070】
図19図25はカプセル1の第2の実施形態に関し、当該実施形態は主として分注要素5の点で、また、ひいては底部22内のそのシートの点で、上述した第1の実施形態とは異なる。
【0071】
特に、図19のカプセルにおいて、分注要素5とそのシートは、図1に示すカプセルのそれぞれよりも大きい直径有する。
【0072】
図21図25に示すように、分注要素5は、第1の面51の同心環状領域に4つのチャンバまたは凹部552を有し、第2の面52の同心環状領域に3つのチャンバまたは凹部562を有する。第1の実施形態の分注要素5と比較すると、これは流出する飲料の流路の蛇行の増加を可能にする。
【0073】
本発明によるカプセル1の動作を以下に簡単に説明する。
【0074】
カプセル1が飲料作製機(例えばコーヒーメーカー)に挿入されると、飲料作製機に属する好適な穿孔要素が閉鎖要素29を貫通し、加圧された熱湯を閉鎖要素29自体を介して収容チャンバ20内に注入する。供給された水の分注も行う上部フィルタ要素4が存在する場合には、水は当該上部フィルタ要素4を通過した後に粉末食品物質8に達して、粉末食品物質8を濡らし、それによって飲料作製プロセス、すなわち粉末食品物質8が可溶性である場合にはその溶解、または粉末食品物質8が不溶性である場合には、芳香物質の抽出を開始する。
【0075】
作製された飲料は下部フィルタ要素3に到達し、粉末食品物質8を保持して当該物質が抜け出るのを防止する機能を有する下部フィルタ要素3を通過し、流れ絞り要素7に到達する。少なくとも1つの貫通開口71を通過すると、飲料は、元のままの可撓性材料シート6に到達し、これによって飲料は止められる。カプセル1内の圧力の増加に伴い、飲料は可撓性材料シート6の第1の層61の少なくとも1つの切り口615を通り、少なくとも1つの意図された引き裂き領域60で第2の層62に到達する。
【0076】
粉末食品物質8に面する可撓性材料シート6の面と反対の面との間に徐々に生じる圧力差は、第2の層62が意図された引き裂き領域60において引き裂かれるまで、第2の層62の底部22に向かう局所的な膨張であって、特に分注要素5の中央チャンバ551における膨張を引き起こす。
【0077】
圧力差および可撓性材料シートの特定の機械的特性によって、第2の層62において生じる実際の引き裂きは、第1の層61と第2の層62とが意図された引き裂き領域60において互いに分離される領域の寸法よりも遥かに小さい寸法を有し得る。例えば、引き裂きは、切り口615の寸法に匹敵するか、またはそれらよりも小さい寸法を有し得る。
【0078】
第1の層61と第2の層62とを構成する材料の異なる機械的特性は、圧力の増加に伴い第2の層62が引き裂かれる一方、第1の層61は実質的に無傷であり得ることを意味することに留意されたい。
【0079】
その時点で、飲料は、その経路上を自由に移動し、分注要素5の中央チャンバ551内に流入し、また、飲料はそこから、第1の面51上の蛇行路と、周面53上の蛇行路と、第2の面52上の蛇行路とを通ることによって分注孔26に到達する。
【0080】
可撓性材料シート6が引き裂かれ、飲料がカプセル1から出てくると、流れ絞り要素7は、少なくとも1つの開口71に限定された通路断面積により、粉末食品物質8が配置されている領域とに分注要素5との間に、飲料の流れに対する抵抗を生成する。実際、流れ絞り要素7は、それを通して圧力降下を課す。
【0081】
したがって、流れ絞り要素7は流量調節機能を有し、カプセル1内の飲料の流れを遅くすることを可能にし、また、規則的にすることを可能にする。
【0082】
流れ絞り要素7は、可撓性材料シート6が破れた後でさえも、その上流にある(すなわち、粉末食品物質8が配置されている注入領域内の)いくつかの逆圧を維持するのに有用であってもよい。この態様は、改善された飲料抽出を可能にし得る。
【0083】
コーヒーのカプセル1の場合において、いくつかの試験は、分注の最後に収容チャンバ20に残っているコーヒー粉末の「タブレット」が、同一のコーヒー粉末を用いた従来技術のカプセルの「タブレット」よりも圧縮されており、かつ固いことを具体的に立証した。これは、本発明によるカプセル1で達成可能な改善された抽出の指標と考えることができる。
【0084】
さらに、分注の終了時に、流れ絞り要素7は、粉末食品物質からカプセル1の底に向かって下降する傾向にある残留水の滴下を防止するか、または少なくとも遅くするのに役立つ。実際、大きな圧力差が無い場合にはなおさら、小さな孔71を通過することができるだけの残留水の経路においては、それはかなりの障害である。
【0085】
本発明は重要な利点をもたらす。
【0086】
本発明により、上述の従来技術のカプセルを現在使用している機械と同じ機械で使用できる、従来技術のカプセルの代替のカプセルを提供することが可能となっただけでなく、上記のように改善された結果も達成された。
【0087】
さらに、酸素不透過性バリヤとして上述した可撓性材料の特定のシートを使用することにより、従来技術のシステムの代替物であるだけでなく、従来技術のカプセルが開かれる圧力よりも大きい圧力を使用して開封することと、飲料中へのアルミニウム片の望ましくない放出の危険性の低減とを可能にするカプセルの開封のシステムを提供することが、アルミニウムシートと相互作用する機械的穿孔要素がないために、可能である。
【0088】
最後に、本発明は、製造が比較的容易であるのみならず、その実施に関連するコストもそれほど高くないことに留意されたい。
【0089】
上述した本発明は、本発明の概念の範囲から逸脱することなく、いくつかの方法で変更を加えてもよく、また、適合させてもよい。
【0090】
詳細事項の全ては、技術的に均等な他の要素で置換可能であり、また、様々な構成要素に用いられる材料と、形状と、寸法とは、要求に応じて変化し得る。
図1
図2
図3
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