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特許7041636メタノール分解による水素または合成ガスの製造方法
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  • 特許-メタノール分解による水素または合成ガスの製造方法 図1
  • 特許-メタノール分解による水素または合成ガスの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】メタノール分解による水素または合成ガスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 3/22 20060101AFI20220316BHJP
   B01J 23/72 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
C01B3/22 A
B01J23/72 M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018555478
(86)(22)【出願日】2017-04-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-06-06
(86)【国際出願番号】 EP2017059594
(87)【国際公開番号】W WO2017186612
(87)【国際公開日】2017-11-02
【審査請求日】2020-04-21
(31)【優先権主張番号】PA201600242
(32)【優先日】2016-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】590000282
【氏名又は名称】ハルドール・トプサー・アクチエゼルスカベット
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】モーデンスン・ピーダ・ムルゴー
(72)【発明者】
【氏名】ウストベアウ・マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ホイルント・ニールセン・ポール・エリック
【審査官】武重 竜男
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102013214313(DE,A1)
【文献】特開平09-286603(JP,A)
【文献】特開2004-122037(JP,A)
【文献】特開2011-245475(JP,A)
【文献】米国特許第03948645(US,A)
【文献】特開2012-236182(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 3/22
B01J 23/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノール分解により水素または合成ガスを製造する方法であって、メタノールが、以下に示す吸熱反応において水素と一酸化炭素とに触媒的に分解され、
CHOH -> CO+2H
前記反応は、反応ゾーンにおいて直接誘導加熱を伴う反応器内で行われ、前記加熱が、触媒活性相で含浸した酸化物でコーティングされている、強磁性構造体の形状の誘導加熱された触媒ハードウェアを用いて得られる、上記の方法。
【請求項2】
前記触媒活性相が、Cu/ZnOのようなCuを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記強磁性構造体が、Fe-CrまたはAl-Ni-Co合金の金属からなる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記強磁性構造体上にコーティングされた酸化物が、Al、Zrおよび/またはCeを含む組み合わせからなる酸化物である、請求項1~のいずれか一つに記載の方法。
【請求項5】
前記酸化物の表面をメタノール分解に適した触媒相で含浸させている、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒相がCu/ZnOのようなCuを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタノール分解による、水素または合成ガス、すなわち、水素と一酸化炭素との混合物を製造する方法に関する。メタノール分解は、メタノールが、典型的に、Cu/ZnOのようなCuを含む触媒上で、次の吸熱反応によって水素と一酸化炭素とに接触分解されるプロセスである。
CHOH <-----> CO+2H
反応は適度な温度、すなわち、200~400℃、好ましくは、200~350℃で行われる。
【背景技術】
【0002】
上記の反応は吸熱であるので、加熱が必要である。誘導加熱は、次のように、多くのプロセス上の利点をもたらすことからメタノール分解反応に必要な熱を供給するための良い候補であることが判明した。
【0003】
まず、誘導加熱により、非常に速い始動を行うことが可能になり、かっ、触媒に供給されるエネルギーは、磁界を触媒床に誘導する電気コイルを調整することによって制御することができる。さらに、磁気誘導加熱は、多くの材料に対して透過性であるため、反応の活性領域に直接適用することができる。
【0004】
触媒の誘導加熱を可能にするために、誘導加熱された触媒ハードウェアの使用が可能である。この実施形態では、触媒活性相が含浸された酸化物でコーティングされた強磁性構造体を用いることができる。
【0005】
別の可能性は、強磁性材料を触媒と混合することである。この実施形態では、強磁性材料は、表面上に保護酸化膜を有するFeCr合金または他の磁性材料の小さな球体であってもよい。これは特に、Cuべ一スの触媒に関連する。
【0006】
本明細書で使用される「触媒ハードウェア」という語は、触媒の層が別の材料、例えば、金属の表面上に配置されている触媒系を指す。「多孔質の構造安定化された触媒ハードウェア」という語は、触媒よりも強い材料から製造された多孔質の構造体が、他の材料に接着され、かつ、触媒が多孔質の構造体の空隙内に堆積されている触媒系を指す。多孔質の構造体は、一般に、金属からなると考えられているが、原則として触媒材料よりも強い、いずれの多孔質材料も使用できる。
【0007】
異なる形態の触媒ハードウェアは、様々な目的のために使用することができる。例えば、触媒ハードウェアを用いたホルムアルデヒド合成反応は、とりわけ、本出願人の欧州特許第1570901号明細書(特許文献1)から知られている。ここで、触媒ハードウェアは、触媒層の被膜を有する構造化された要素の形態である。触煤層はチューブの外側上に直接コーティングすることができる。また、構造化された要素は、触媒の層が、別の材料の表面上に固定され触媒系であって、その別の材料が系に強度を与える支持構造体として機能する触媒系であることができる。該別の材料は、金属またはセラミックであることができる。例は、モノリス、交差波形(cross-corrugated)構造体、高表面積構造化要素、発泡体、プレート、管壁に取り付けられた構造または他の適切な形状である。
【0008】
さらに、本出願人の国際公開第2000/005168号パンフレット(特許文献2)は、触媒ハードウェアと接触させる、炭化水素供給原料の水蒸気改質による合成ガスの製造に関する。
【0009】
誘導加熱は、導電性の対象物(通常は金属)を磁気誘導によって、渦電流(フーコー電流(Foucault current)とも呼ばれ、ファラデーの誘導の法則のために、導体内の変化する磁場によって導体内に誘起される電流のループである)および/またはヒステリシス損失によって対象物内に生じた熱を介して加熱するプロセスである。渦電流は、磁場に垂直な平面内において、導体内の閉ループ内を流れる。
【0010】
誘導加熱器は、電磁石、およびこの電磁石に高周波の交流(AC)を通す電子発振器からなる。急速に交番する磁場が対象物を貫通し、渦電流と呼ばれる導体内部の電流が発生する。材料の抵抗体を通って流れる渦電流は、ジュール加熱によってそれを加熱することになる。渦電流加熱はまた、オーム加熱とも呼ばれる。鉄のような強磁性(および強磁性および反強磁性)材料では、磁気ヒステリシス損失によって、代替的にまたは付加的に熱が発生し得る。これは強磁性加熱と呼ばれる。使用される電流の周波数は、対象物のサイズ、材料の種類、(誘導コイルと加熱される対象物との間の)カップリングおよび浸透深さに依存する。複数のループまたは巻線の形態に曲げられた導体を含む誘導コイルは、電磁石の一例である。
【0011】
誘導加熱は、一般に、金属コイルを通過させた、しばしば高周波の交流電流を用いて行われる。加熱される対象物はコイルの内側に置かれる。しかしながら、この手法は、コイルによって生成された磁場がコイルの外側でも継続するため、エネルギー効率がそれほど高くない。この欠点は、コイルをトーラスとして形成することによって回避することができるが、コイル内の抵抗、すなわちプロセスのために通常失われることになるオーム熱による損失が依然として存在する。
【0012】
化学反応に関連した誘導加熱の利用は、反応ゾーン内の温度を正確に制御するために、化学反応の温度制御、より具体的には、誘導加熱の利用、特に、高周波誘導加熱を使用することに関する米国特許第2,519,481号明細書(特許文献3)から知られている。
【0013】
国際公開第2014/162099号パンフレット(特許文献4)は、少なくとも一つの試薬および所与の温度Tの範囲内で反応を触媒できる触媒組成物を使用する、化学反応の不均一触媒反応のための方法を記載している。少なくとも一つの試薬は、その表面が、反応のための触媒である化合物によって少なくとも部分的に形成されている強磁性ナノ粒子成分を含む触媒組成物と接触させる。ナノ粒子成分は、温度Tの範囲内の温度に達するように磁気誘導によって加熱され、ナノ粒子成分の表面上に形成された反応生成物が回収される。触媒組成物のナノ粒子成分は、磁気誘導によって反応温度に加熱することができ、そして、触媒は磁揚の効果によって加熱される。この方法は、所与の反応に必要なエネルギーの量の大幅な減少を可能にする。国際公開第2014/162099号パンフレット(特許文献4)では、温度Tの範囲は300~500℃となるように与えられている。したがって、この特許文献は、比較的限定された温度範囲内での化学反応の触媒に使用される触媒を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】欧州特許第1570901号明細書
【文献】国際公開第2000/005168号パンフレット
【文献】米国特許第2,519,481号明細書
【文献】国際公開第2014/162099号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって本発明は、メタノール分解による、水素または合成ガス、すなわち、水素と一酸化炭素との混合物を製造する方法に関し、該方法により、メタノールは、吸熱反応において水素と一酸化炭素とに触媒的に分解される:
CHOH ----> CO+2H
【0016】
該反応は、反応ゾーンにおいて直接誘導加熱を伴う反応器内で行われる。誘導加熱は、反応器内に配置された金属コイルに交流電流を通流することによって得ることができる。
【0017】
好ましくは、触媒はCu/ZnOのようなCuを含み、金属コイルは銅線である。Cuコイルは絶縁されていなくてもよく、それにより触媒と電気的に接触することができる。
【0018】
誘導加熱はまた、触媒活性相が含浸された酸化物でコーティングされた強磁性構造体の形状の誘導加熱された触媒ハードウェアを使用して得ることもできる。強磁性構造体は、Fe-CrまたはAl-Ni-Co合金の金属からなることが好ましい。
【0019】
強磁性構造体上にコーティングされた酸化物は、Al、Zrおよび/またはCeを含む組合せからなる酸化物が好ましい。酸化物表面は、メタノール分解に適した触媒相で含浸することができる。好ましくは、該触媒相は、Cu/ZrLOのようなCuを含む。
【0020】
メタノール分解の吸熱特性は、十分な変換を達成するために、かつ、メタノールの凝縮を回避するために、反応全体にわたって加熱が必要であることを意味する。誘導加熱により、効率的な加熱が促進され、結露の危険性は実質的に回避される。なぜなら、反応に必要な加熱が、エネルギーが消費される反応ゾーン内に供給されるからである。
【0021】
メタノール分解は、誘導加熱の影響を受けやすい一つまたは二つ以上の強磁性巨視的支持体を含む触媒材料を収容するように配置された反応器ユニット内で行われ、該一つまたは二つ以上の強磁性巨視的支持体は、所与の温度範囲Tの上限までの温度で強磁性である。前記一つまたは二つ以上の強磁性巨視的支持体は、それぞれ酸化物でコーティングされており、該酸化物は触媒活性粒子を含浸されている。メタノール分解反応器(「メタノール分解装置」)は、交流を供給する電源によって電力が供給されるように構成され、かっ、電源により通電すると分解装置内に交番磁界を生成するように配置された誘導コイルを備え、それにより、その交番磁界によって触媒材料が所定の温度範囲T内の温度に加熱される。
【0022】
触媒自体は、強磁性、反強磁性または非磁性であり得る。後者の場合、触媒は強磁性材料、例えば、鉄ビーズ、または、非常に高温での反応のために、金属コバルトと混合することができる。
【0023】
一つまたは二つ以上の強磁性巨視的支持体は、所与の温度範囲Tの少なくとも上限までの温度、すなわち、所与の温度範囲Tの上限を超える温度でも強磁性である。「所与の温度範囲Tの上限まで」という語は、標準周囲温度と所与の温度範囲Tの上限との間の任意の温度のような、この上限までの適切な温度を示すことを意味する。
【0024】
メタノール分解装置内の触媒材料が、触媒活性粒子を含む一つまたは二つ以上の強磁性巨視的支持体を含む場合、これらの活性粒子は、強磁性巨視的支持体の加熱から加熱される。したがって、触媒活性粒子は、任意の適切な常磁性要素または強磁性要素または適切な常磁性要素または強磁性元素の組み合わせであり得る。誘導加熱プロセスの重要な特徴は、熱伝導によって外部の熱源によって加熱されるのではなく、熱が対象物自体の内部で生成されることである。これは、対象物が非常に急速に加熱される得ることを意味する。
【0025】
しかしながら、触媒的に活性な粒子自体が強磁性体である場合には、それらは、巨視的支持体の誘導加熱ならびに磁揚による直接的な誘導加熱によって間接的に加熱されることになる。これにより、触媒活性粒子中に非常に速い昇温速度も直接的に達成可能である。さらに、温度範囲Tの上限までの任意の関連する温度で、場合によってはそれ以上であるような、関連する動作条件で強磁性である触媒材料は、交番磁界にさらされたときに、以下に説明するように有利である。
【0026】
強磁性材料の場合、誘導加熱は強磁性/ヒステリシス加熱およびオーム/渦電流加熱の両方によって行われる。ヒステリシス加熱の概算は、以下の式によって与えられる。
【0027】
【数1】
【0028】
式中、Pは、材料に伝達される加熱力を示し、Bは、磁束密度であり、dHは、磁場強度の変化であり、そして、fは交番磁界の周波数である。従って、ヒステリシス加熱によって材料に伝達される加熱力は、ヒステリシス曲線の面積に交番磁界の周波数を乗じたものである。オーム/渦電流加熱の推定値は式により与えられる。
【0029】
【数2】
【0030】
式中、Pは材料に伝達される加熱力を示し、Bmは、材料内に誘導される磁束密度であり、1は材料の特徴的な長さであり、σは材料の導電率であり、そして、fは、交番磁界の周波数である。それ故、渦電流加熱によって材料に伝達される加熱力は、二乗された磁束密度および二乗された交番磁界の周波数に比例する。常磁性材料は、交番磁界を受けると、強磁性材料と比較して非常に小さな磁束密度Bを有する。したがって、強磁性材料は、非強磁性材料よりも誘導加熱の影響を非常に受けやすく、そして、非強磁性材料よりも低い周波数の交番磁界が強磁性材料に使用可能であるか、または、より低い周波数の交番磁界が使用され得る。高周波磁場を発生させることはエネルギー的に比較的余裕があるので、より低い周波数の磁場を使用することにより、材料を安価に加熱することができる。ここで、高周波磁揚とは、MHz範囲の周波数、0,1~0.5MHzおよびそれ以上の磁揚を意味する。
【0031】
強磁性材料は、以下のようなさらなる利点を提供する。
【0032】
強磁性材料は、高い割合の磁場を吸収し、それによって遮蔽の必要性があまり重要ではなくなるか、または余分にさえなる。
【0033】
強磁性材料の加熱は、非強磁性材料の加熱よりも比較的迅速かつ安価である。強磁性材料は、加熱の固有のまたは固有の最大温度、すなわちキュリー温度を有する。したがって、強磁性である触媒材料の使用は、吸熱化学反応が特定の温度、すなわちキュリー温度を超えて加熱されないことを確実にする。したがって、化学反応が制御不能にならないことが保証される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、変化する磁場におけるFe-Cr合金およびAlnico合金の加熱プロファイルを示す。
図2図2は、変化する磁場におけるFe-Cr合金およびAlnico合金の加熱プロファイルを示す。
【0035】
誘導加熱は、150W/秒超の加熱速度を与える70W/g超の熱出力での加熱を可能にする。それ故、誘導加熱は、非常に迅速かつ効果的な加熱の方法を提供する。これは、様々な磁場にさらされたAl-Ni-Co(Alnico)合金の温度が、時間の関数としてどのように現れるかを示している図1及び図2において示されている。具体的には、図1および図2は、変化する磁揚におけるFe-Cr合金およびAlnico合金の加熱プロファイルを示している。
【0036】
両方の図において、温度はグラフの上に示され、磁揚の変化はグラフの下に示されている。
【0037】
図1は、0,01Tと0,08Tとの間で変化する磁場強度および周波数は55.7KHzにおける時間の関数としてFe-Cr合金の加熱プロファイルを示し、ここで、Tは、化学反応を実施するのに関連する温度範囲である。図1のプロファイルから、72W/gの熱入力に対応する、約160℃/秒の加熱速度で誘導することによって、非常に急速な加熱が達成できることは明らかである。図1から、達成可能な温度は、特定の材料が永久磁気特性を失う温度であるキュリー温度によって制限され、そして、加熱はこの温度より上では大幅に遅くなることが分かる。したがって、加熱プロファイルは550~560℃で平坦化される。
【0038】
Fe-Cr合金とは対照的に、Aln.iCO合金はいくらか高いキュリー温度を有する。したがって、図2に示すように、容易に800℃に達するAlniCo合金により、さらに高い温度を達成することができる。図2の温度プロファイルにおいて約800℃から1000℃超に達するスパイクは、測定誤差とみなされる。
【0039】
全体として、Fe-Cr合金とAlnico合金の両方を高強度でかつ150℃/秒超の加熱速度で加熱することができる。材料問の最も顕著な違いは、それらの使用を制限するキュリー温度である。Fe-Cr合金のより低いキュリー温度は、それが約550℃までの温度でのみ使用できることを意味し、一方、Alnico合金は、誘導により、少なくとも800℃まで加熱することができる。
【0040】
酸化物コーティングに、より高いキュリー温度を有する強磁性相を導入することによって、合金が加熱される最高温度がわずかに上昇することが予想される。
【0041】
磁場の遮蔽効果に起因して、上記の測定は、温度を示す熱電対の触媒材料のサンプル上における配置、および、触媒材料のサンプルの寸法および形状に対して非常に感応性であることが強調されるべきである。
【0042】
さらに、図1および図2に示す測定は、使用される磁場の二つの例に過ぎず、そしてまた、磁界強度および磁界の周波数の広範囲の値が考えられることは強調すべきである。一般に、相対的に高い磁場強度を有する低周波磁場は、良好な誘導加熱を提供することになる。より具体的には、誘導によって生成される磁場は、約5mT~約1000皿T、好ましくは約5~約200mTの振幅、かっ、約0.5kHz~約400kHzの周波数を有利に有する。
【0043】
強磁性構造と適切なコーティングとの組み合わせが確認された。最良の場合は、構造がFe-CrまたはAl-Ni-Co合金の金属からなるものであることが判明した。
【0044】
Fe-Cr合金は、約560℃のキュリー温度を有し、これはメタノール分解にとって明らかに十分である。コーティングは、酸化物系であり、Al、Zr、Ce等の組み合わせからなる酸化物であることができる。
【0045】
コーティングされた金属構造体は、実際上任意の触媒格を含浸させることができる多孔質酸化物表面を有する。したがって、これは、典型的に、Cu/ZnOのようなCuを含む、メタノール分解のための任意の従来の触媒に適合させることができる。
【0046】
このように、十分な活性を得ることは困難であり得る。したがって、別の可能性は、従来の触媒を磁性材料で希釈することである。
【0047】
加熱は反応器の内部から供給され、それにより触媒は反応器の最も高温の部分となる。これは、始動のために大型で高価な予備加熱装置が不要であることを意味する。非常に速い加熱により、実際上、瞬時に始動する。
【0048】
本発明を、以下の実施例によってさらに説明する。
【実施例
【0049】
本出願人のMK-121触媒のようなメタノール合成触媒を、Fe-Cr合金の表面酸化された球体と1:1の体積比で混合する。
【0050】
該混合物を、管型反応器中へ、還元ガスに耐性を有するカンタル型(Fe-Cr-Al合金)ワイヤからなるコイル内に充填する。コイルは、絶縁層によって反応器壁から分離されている。
【0051】
誘導加熱により、反応器を200℃の温度にし、そこで全ての酸化銅が元素のCuに還元されるまで、N2中の2%H2のストリームを用いて触媒を活性化する。
【0052】
還元されたCu触媒は、~100Aの小さい粒子としてのCuを約50重量%含む。
【0053】
次いで、触媒を、水で希釈され得るメタノールのストリームに曝す。次の反応は、20バールの典型的な圧力で行われる。
CHOH+HO <-----> 3H+CO
CHOH <-----> 2H+CO
CO+HO <-----> CO+H
【0054】
所望の生成物が水素である揚合、反応混合物は、典型的に、等モル量のメタノールおよび水である.1000Nm3のHには、約15kmo1のメタノール、および、200~250℃における260kWhの入熱を必要とされる。
【0055】
所望の生成物がCOである場合には、わずかな量の水しか反応に使用されず、かつ、温度は300℃を超えるべきである。1000Nin3のCOには、約45k皿01のメタノールおよび1、3mWhの入熱が必要とされる。
【0056】
ガス流の処理は、従来の技術を用いて行われる。使用済み触媒は磁気的に分離される。
図1
図2