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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】送電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20220316BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20220316BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20220316BHJP
   B60L 53/122 20190101ALI20220316BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20220316BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220316BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20220316BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20220316BHJP
【FI】
H02J50/40
B60L5/00 B
B60L50/60
B60L53/122
B60M7/00 X
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/12
H02M7/48 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019072932
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020171180
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社SOKEN
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】木村 統公
(72)【発明者】
【氏名】宇田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】金▲崎▼ 正樹
(72)【発明者】
【氏名】間崎 耕司
(72)【発明者】
【氏名】山口 宜久
【審査官】宮本 秀一
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-284696(JP,A)
【文献】特開2020-048369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L1/00-13/00
B60L15/00-58/40
B60M1/00-7/00
H02J7/00-7/12
H02J7/34-7/36
H02J50/00-50/90
H02M7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路側に設けられる送電装置(20)と車両側に設けられる受電装置(30)との間で、非接触で送電を行い、車両に設けられる蓄電池(12)を充電する非接触給電システム(10)の送電装置において、
単相又は複数相の送電コイル(26u,26v,26w)を有し、前記受電装置との間で、それぞれ非接触で送電を行う複数の送電部(20a~20c)と、
前記複数の送電部のうち、送電に関与していない前記送電部を検出する検出部(SE1)と、
前記送電コイルの一端と他端との間における電気経路の通電及び通電遮断を切り替えるスイッチ部(22)と、
前記検出部により検出された、送電に関与していない前記送電部の前記送電コイルの一端と他端とを短絡させるように、前記スイッチ部を制御する制御部(60)と、を備え、
前記スイッチ部は、直流電源から入力した直流電流を交流電流に変換するインバータ(22)であり、
前記インバータは、直流電源の正極端子に接続される上アームスイッチ及び直流電源の負極端子に接続される下アームスイッチの直列接続体を複数有し、
前記送電コイルの一端には、複数の前記直列接続体のうち、第1の直列接続体の上アームスイッチと下アームスイッチとの中間接続点が接続され、前記送電コイルの他端には、複数の前記直列接続体のうち、第2の直列接続体の上アームスイッチと下アームスイッチとの中間接続点が接続されており、
前記制御部は、送電に関与していない前記送電部が前記検出部により検出された場合、前記第1の直列接続体及び前記第2の直列接続体の前記上アームスイッチをオンさせ、かつ、前記下アームスイッチをオフさせる、又は、前記上アームスイッチをオフさせ、かつ、前記下アームスイッチをオンさせて、送電に関与していない前記送電部の前記送電コイルの一端と他端とを短絡させるように制御する送電装置。
【請求項2】
前記検出部は、前記送電コイルと前記受電装置の受電コイルとの間における磁気結合係数に係る情報を取得し、当該情報に基づいて検出する請求項1に記載の送電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電装置から受電装置へ非接触で送電する非接触給電システムの送電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車などに搭載される蓄電池に給電を行うシステムとして、非接触で送電を行う非接触給電システムがある(例えば特許文献1)。非接触給電システムでは、送電装置側にインバータ回路を設け、そのインバータ回路から送電コイルに交流電力を供給する。そして、送電コイルから車両側の受電コイルに対して非接触で電力を送電し、受電コイルから蓄電池に対して給電を行う。
【0003】
そして、特許文献1に記載の非接触給電システムでは、車両の進行方向に沿って、送電コイルを複数配置することにより、車両走行中、非接触で電力を送電可能としている。さらに、特許文献1に記載の非接触給電システムでは、無負荷時のインピーダンスが最大となるように、送電コイルと並列コンデンサとが並列共振回路を構成している。これにより、送電に関与しない送電コイルでの電力消費や漏洩磁束の発生を抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-192218号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、走行中、途切れずに連続して送電するため、複数の送電コイルを近接して設けることが求められている。しかしながら、複数の送電コイルを近接して設けた場合、隣接する送電コイルが磁気結合してしまう場合がある。この場合、インバータ回路を構成する半導体スイッチング素子をオフしているにもかかわらず、そのボディダイオードを介して、送電に関与しない送電コイルが電源ラインと接続されてしまう。その結果、磁気結合の影響により、送電に関与しない送電コイルにも電流が流れ、電力消費が大きくなるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、電力消費を抑制することができる送電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、道路側に設けられる送電装置と車両側に設けられる受電装置との間で、非接触で送電を行い、車両に設けられる蓄電池を充電する非接触給電システムの送電装置において、複数の送電コイルと、前記複数の送電コイルのうち、送電に関与していない前記送電コイルを検出する検出部と、前記送電コイルの一端と他端との間における電気経路の通電及び通電遮断を切り替えるスイッチ部と、前記検出部により検出された前記送電コイルの一端と他端とを短絡させるように、前記スイッチ部を制御する制御部と、を備えた。
【0008】
上記構成によれば、送電に関与しない送電コイルの一端と他端とを短絡させた。このため、送電コイル同士の磁気結合係数が高くても、送電に関与しない送電コイルに電流が流れることを抑制し、無駄な電力消費を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】非接触給電システムの構成を示すブロック図。
図2】送電部の電気的構成を示す回路図。
図3】受電装置の電気的構成を示す回路図。
図4】送電側共振コイルを示す斜視図。
図5】受電側共振コイルを示す斜視図。
図6】従来における電流経路を示す回路図。
図7】電流経路を示す回路図。
図8】送電制御に関わる処理を示すフローチャート。
図9】別例の非接触給電システムの構成を示すブロック図。
図10】別例の非接触給電システムの構成を示すブロック図。
図11】別例の非接触給電システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態における非接触給電システム10は、商用電源11から供給された電力を、非接触で送電する送電装置20、及び、送電装置20から非接触で電力を受電する受電装置30を備える。送電装置20は、車両が走行する道路側(高速道路など)に埋設されている。受電装置30は、電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載され、蓄電池としての車載バッテリ12に対して電力を出力することで、車載バッテリ12を充電するものである。
【0011】
図1に本実施形態における非接触給電システム10の概略構成を示す。非接触給電システム10の送電装置20には、商用電源11が接続されており、商用電源11から供給される交流電力を送電装置20に入力するように構成されている。一方、非接触給電システム10の受電装置30には、車載バッテリ12が接続されており、受電装置30から電力を車載バッテリ12に出力し、充電が実施されるように構成されている。送電装置20及び受電装置30は、3相給電を実施可能とすべく、それぞれ3相(U相、V相、W相)のコイルを有する。
【0012】
まず、送電装置20について説明する。送電装置20は、商用電源11に接続されるAC-DCコンバータ21と、AC-DCコンバータ21に接続される送電部20a~20cと、を備える。送電部20a~20cは、複数備えられている。
【0013】
AC-DCコンバータ21は、商用電源11から供給される交流電力を直流電力に変換するものである。そして、AC-DCコンバータ21は、変換した直流電力を送電部20a~20cに出力する。このため、送電部20a~20cから見た場合、AC-DCコンバータ21は、直流電源に相当する。
【0014】
次に、各送電部20a~20cについて説明する。各送電部20a~20cの構成は、同一とされている。以下では、送電部20a~20cを代表して送電部20aの構成について説明する。
【0015】
図2に送電部20aの電気的構成を示す。送電部20aは、それぞれインバータとしてのインバータ回路22と、インバータ回路22に接続される送電側フィルタ回路23と、送電側フィルタ回路23に接続される送電側共振回路24と、を備える。
【0016】
インバータとしてのインバータ回路22は、AC-DCコンバータ21から供給される直流電力を所定の周波数の交流電力に変換するものである。このインバータ回路22として、U相、V相、W相の3相の交流電力に変換する3相インバータを用いている。
【0017】
インバータ回路22は、AC-DCコンバータ21に接続されている。具体的には、AC-DCコンバータ21の正極端子にインバータ回路22の高電位側端子が接続されている。一方、AC-DCコンバータ21の負極端子にインバータ回路22の低電位側端子が接続されている。
【0018】
インバータ回路22は、それぞれ3相の相数と同数の上下アームを有するフルブリッジ回路により構成されている。各アームに設けられたスイッチング素子のオンオフにより、各相における電流が調整される。本実施形態において、インバータ回路22がスイッチ部に相当する。
【0019】
詳しく説明すると、インバータ回路22は、U相、V相及びW相からなる3相において、スイッチング素子としての上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体をそれぞれ備えている。本実施形態では、各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnとして、電圧制御形の半導体スイッチング素子を用いており、具体的にはIGBTを用いている。なお、MOSFETを用いてもよい。各相における上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnには、それぞれフリーホイールダイオード(還流ダイオード)Dp,Dnが逆並列に接続されている。フリーホイールダイオードDp,Dnは、半導体スイッチング素子のボディダイオードでもよい。
【0020】
各相の上アームスイッチSpの高電位側端子(コレクタ)は、AC-DCコンバータ21の正極端子に接続されている。また、各相の下アームスイッチSnの低電位側端子(エミッタ)は、AC-DCコンバータ21の負極端子(グランド)に接続されている。各相の上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点は、それぞれ送電側フィルタ回路23に接続されている。
【0021】
すなわち、U相における上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点には、送電側フィルタ回路23等を介して、送電側共振回路24のU相の送電コイルとしての送電側共振コイル26uに接続されている。同様に、V相における上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点には、送電側フィルタ回路23等を介して、送電側共振回路24のV相の送電コイルとしての送電側共振コイル26vに接続されている。同様に、W相における上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの間の中間接続点には、送電側フィルタ回路23等を介して、送電側共振回路24のW相の送電コイルとしての送電側共振コイル26wに接続されている。
【0022】
また、インバータ回路22には、上アームスイッチSpと下アームスイッチSnとの直列接続体に対して並列に接続される平滑コンデンサ28が設けられている。
【0023】
送電側フィルタ回路23は、インバータ回路22から入力される交流電力から所定の周波数域の交流電力(交流電流)を除去する回路である。この送電側フィルタ回路23として、ローパスフィルタを用いている。本実施形態において、送電側フィルタ回路23は、入力電圧と出力電流が比例し、入力電流と出力電圧が比例するイミタンス変換器(インピーダンス・アドミタンス変換器)である。
【0024】
具体的に説明すると、送電側フィルタ回路23は、各相ごとに、2つのリアクトル23a,23bが直列接続された直列接続体を備えている。また、送電側フィルタ回路23は、各直列接続体の中間接続点に対して一端が接続されるコンデンサ23cを直列接続体ごとにそれぞれ備える。各コンデンサ23cの他端は、接続点(中性点)N1で接続されている。つまり、各コンデンサ23cの他端同士が接続されている。
【0025】
送電側共振回路24は、送電側フィルタ回路23から入力した交流電力を受電装置30に対して出力する回路である。送電側共振回路24は、各相ごとに、送電側共振コンデンサ25u,25v,25wと、送電側共振コイル26u,26v,26wとが直列接続されたLC共振回路が設けられている。LC共振回路の一端は、送電側フィルタ回路23に接続されており、他端は、中性点N2に接続されている。
【0026】
次に図3に基づいて受電装置30について説明する。受電装置30は、送電側共振回路24から電力を供給される受電側共振回路31と、受電側共振回路31に接続される受電側フィルタ回路32と、受電側フィルタ回路32に接続される整流器としての整流回路33と、整流回路33に接続されるDC-DCコンバータ34と、を備える。
【0027】
受電側共振回路31は、非接触で送電側共振回路24から電力を入力し、受電側フィルタ回路32に出力する回路である。受電側共振回路31は、送電側共振回路24と同一の構成となっており、送電側共振回路24に対して磁場共鳴可能に構成されている。
【0028】
すなわち、受電側共振回路31は、各相ごとに、受電側共振コンデンサ35u,35v,35wと、受電コイルとしての受電側共振コイル36u,36v,36wとが直列接続されたLC共振回路が設けられている。LC共振回路の一端は、中性点N3に接続され、他端は、受電側フィルタ回路32に接続されている。この受電側共振回路31と送電側共振回路24との共振周波数は同一に設定されている。
【0029】
受電側フィルタ回路32は、受電側共振回路31から入力される交流電力に含まれる所定の周波数域の交流電力を除去するものである。この受電側フィルタ回路32として、ローパスフィルタを用いている。本実施形態において、受電側フィルタ回路32は、入力電圧と出力電流が比例し、入力電流と出力電圧が比例するイミタンス変換器(インピーダンス・アドミタンス変換器)である。
【0030】
具体的に説明すると、受電側フィルタ回路32は、各相ごとに、2つのリアクトル32a,32bが直列接続された直列接続体を備えている。また、受電側フィルタ回路32は、各直列接続体の中間接続点に対して一端が接続されるコンデンサ32cを直列接続体ごとに備える。各コンデンサ32cの他端は、接続点(中性点)N4で接続されている。つまり、各コンデンサ32cの他端同士が接続されている。
【0031】
整流回路33は、交流電力を全波整流する回路である。本実施形態では、整流回路33として、ダイオードブリッジから構成される全波整流回路を採用したが、6つのスイッチング素子(例えばMOSFET)から構成される同期整流回路を用いてもよい。
【0032】
DC-DCコンバータ34は、整流回路33から入力される直流電力を変圧し、車載バッテリ12に出力するものである。車載バッテリ12は、DC-DCコンバータ34から入力された直流電力を充電する。
【0033】
また、送電装置20には、送電装置20の制御を行う送電制御部60が設けられており、受電装置30には、受電装置30の制御を行う受電制御部70が設けられている。送電制御部60は、AC-DCコンバータ21や、各送電部20a~20cのインバータ回路22の制御を行う。受電制御部70は、DC-DCコンバータ34の制御を行う。
【0034】
また、車両には、ECU50(Electronic Control Unit)が設けられており、受電制御部70に対して指示を行い、車両の走行中に非接触給電を実施させ、車載バッテリ12を充電させる。
【0035】
上記構成によれば、送電装置20及び受電装置30の相対位置が磁場共鳴可能な位置にある状況において、交流電力が送電側共振コイル26u,26v,26wに入力された場合、送電側共振コイル26u,26v,26wと、受電側共振コイル36u,36v,36wと、がそれぞれ磁場共鳴する。これにより、受電装置30は、送電装置20からエネルギーを受け取る。すなわち、交流電力を受電する。
【0036】
上記非接触給電システム10は、車両の走行中に非接触で給電を実施可能とすることを目的としている。その際、給電可能な期間をできるだけ長くすることが望ましい。そこで、図4に示すように、送電部20a~20cの送電側共振コイル26u,26v,26wを車両進行方向(つまり、道路の延伸方向)に沿って隣接するように配置している。ここで、送電側共振コイル26u,26v,26wの形状及び配置について説明する。以下では、送電部20aの送電側共振コイル26au,26av,26awと示し、送電部20bの送電側共振コイル26bu,26bv,26bwと示し、送電部20cの送電側共振コイル26cu,26cv,26cwと示す場合がある。
【0037】
図4に示すように、送電側共振コイル26au,26av,26awは、巻線(例えばリッツ線)が平面状に巻かれることで形成されている角型の平面コイルとなっている。この送電側共振コイル26au,26av,26awは、環状に形成されている。各送電側共振コイル26au,26av,26awの形状及び巻き数は同じとされている。
【0038】
これらの送電側共振コイル26au,26av,26awは、鉄心としてのフェライトコア27a上に配置され、固定されている。詳しく説明すると、フェライトコア27aは、長方形の平板状に形成されており、その長手方向が道路の延伸方向に沿うように配置されている。また、フェライトコア27aの短手方向が道路の幅方向となり、かつ、平面が道路の路面に対して平行となるように配置されている。そして、フェライトコア27aの平面上において、送電側共振コイル26au,26av,26awが長手方向に沿って配置されている。その際、送電側共振コイル26au,26av,26awは、フェライトコア27aよりも車両側(上側)になるように配置されている。
【0039】
そして、送電側共振コイル26au,26av,26awは、フェライトコア27a上で、長手方向において相互の位置がずれるように配置されている。より詳しくは、送電側共振コイル26au,26av,26awで囲まれた領域が、他の送電側共振コイル26au,26av,26awで囲まれた領域に対して相互に重複するように配置されている。その際、送電側共振コイル26au,26av,26awは、長手方向において等間隔でずれるように配置されている。より詳しくは、電気角で120°ずらして配置されている。なお、本実施形態では、送電側共振コイル26auが長手方向中央に配置されており、送電側共振コイル26av,26awが、送電側共振コイル26auの長手方向両側に配置されている。
【0040】
そして、送電側共振コイル26bu,26bv,26bwは、送電側共振コイル26au,26av,26awと同様に構成されており、フェライトコア27bに配置されている。この送電側共振コイル26bu,26bv,26bwは、送電側共振コイル26au,26av,26awに対して、道路の延伸方向においてその位置がずれるように配置されている。このとき、送電側共振コイル26bu,26bv,26bwは、送電側共振コイル26au,26av,26awと重複しないように位置をずらして配置されている。
【0041】
送電側共振コイル26cu,26cv,26cwは、送電側共振コイル26au,26av,26awと同様に構成されており、フェライトコア27cに配置されている。同様に、送電側共振コイル26cu,26cv,26cwは、送電側共振コイル26au,26av,26aw及び送電側共振コイル26bu,26bv,26bwに対して、道路の延伸方向においてその位置がずれるように配置されている。このとき、送電側共振コイル26cu,26cv,26cwは、送電側共振コイル26au,26av,26aw及び送電側共振コイル26bu,26bv,26bwと重複しないように位置をずらして配置されている。
【0042】
本実施形態では、図4に示すように、道路の延伸方向において、送電側共振コイル26bu,26bv,26bwが、送電側共振コイル26au,26av,26awと送電側共振コイル26cu,26cv,26cwとの間に配置されている。つまり、道路の延伸方向において、送電側共振コイル26bu,26bv,26bwの両側に送電側共振コイル26au,26av,26awと、送電側共振コイル26cu,26cv,26cwとが配置されている。
【0043】
なお、フェライトコア27a~27cも、送電側共振コイル26u,26v,26wの配置に合わせて、道路の延伸方向に沿って配置されている。その際、図4に示すように、各フェライトコア27a~27cの間に隙間がないように配置されている。
【0044】
次に、受電側共振コイル36u,36v,36wについて説明する。受電側共振コイル36u,36v,36wは、送電側共振コイル26u,26v,26wとほぼ同様に構成されている。
【0045】
すなわち、図5に示すように、受電側共振コイル36u,36v,36wは、巻線(例えばリッツ線)が平面状に巻かれることで形成されている角型の平面コイルとなっている。この受電側共振コイル36u,36v,36wは、環状に形成されている。各受電側共振コイル36u,36v,36wの形状及び巻き数は同じとされている。
【0046】
これらの受電側共振コイル36u,36v,36wは、鉄心としてのフェライトコア37上に配置され、固定されている。詳しく説明すると、フェライトコア37は、長方形の平板状に形成されており、その長手方向が車両の進行方向に沿うように配置されている。また、フェライトコア37の短手方向が車両の幅方向となり、かつ、平面が車両の底面に対して平行となるように配置されている。つまり、フェライトコア37の平面が、道路の路面に対向するように配置されている。そして、フェライトコア37上において、受電側共振コイル36u,36v,36wが進行方向(長手方向)に沿って配置されている。その際、受電側共振コイル36u,36v,36wは、フェライトコア37よりも道路側(下側)になるように配置されている。
【0047】
そして、受電側共振コイル36u,36v,36wは、フェライトコア37上で、長手方向において相互の位置がずれるように配置されている。より詳しくは、受電側共振コイル36u,36v,36wで囲まれた領域が、他の受電側共振コイル36u,36v,36wで囲まれた領域に対して相互に重複するように配置されている。その際、受電側共振コイル36u,36v,36wは、長手方向において等間隔でずれるように配置されている。より詳しくは、電気角で120°ずらして配置されている。なお、本実施形態では、受電側共振コイル36uが長手方向中央に配置されており、受電側共振コイル36v,36wが、受電側共振コイル36uの長手方向両側に配置されている。
【0048】
また、受電側共振コイル36u,36v,36wの長手方向(延伸方向)における長さは、1組の送電側共振コイル26u,26v,26wの長さと同程度とされている。
【0049】
ところで、前述したように、送電部20a~20cの送電側共振コイル26u,26v,26wを車両進行方向に沿って隣接するように配置している。このため、各送電側共振コイル26u,26v,26w同士が、磁気結合する可能性がある。特に、途切れなく連続して送電可能とするように、送電側共振コイル26u,26v,26wを隣接させる場合、磁気結合する可能性が高くなり、また、送電側共振コイル26u,26v,26w同士の磁気結合係数も高くなる。
【0050】
そして、各送電側共振コイル26u,26v,26w同士が、磁気結合すると、送電に関与しない送電側共振コイル26u,26v,26wにおいて、電流が流れ、無駄な電力が消費されるという問題がある。
【0051】
詳しく説明すると、従来では、送電に関与しない送電部20a~20cでは、そのインバータ回路22のスイッチング素子がオフされる。すなわち、上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnが共にオフされる。
【0052】
例えば、図6では、受電装置30は、送電部20a及び送電部20bに対して対向している一方、送電部20cには対向していない。すなわち、受電側共振コイル36u,36v,36wが、送電側共振コイル26au,26av,26aw及び送電側共振コイル26bu,26bv,26bwに対して対向する一方、送電側共振コイル26cu,26cv,26cwに対しては対向していない。このため、図6に示す状態では、送電側共振コイル26au,26av,26aw及び送電側共振コイル26bu,26bv,26bwは、送電側共振コイル26cu,26cv,26cwに比較して、受電側共振コイル36u,36v,36wとの磁気結合係数が高くなる。
【0053】
この状態において、送電部20a及び送電部20bでは、インバータ回路22はオンオフ制御されて、交流電流が、送電側共振コイル26au,26av,26aw及び送電側共振コイル26bu,26bv,26bwに入力される。つまり、受電側共振コイル36u,36v,36wとの磁気結合係数が高く、高効率で送電を行うことができるため、送電側共振コイル26au,26av,26aw及び送電側共振コイル26bu,26bv,26bwから送電を行う。
【0054】
一方、送電部20cでは、受電側共振コイル36u,36v,36wとの磁気結合係数が低く、送電部20a,20bに比較して高効率で送電を行うことができないため、インバータ回路22はオフ制御される。すなわち、送電部20cのインバータ回路22では、上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnが共にオフされる。この状態を図6に示す。
【0055】
図6に示すように、送電部20cにおいて、上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnが共にオフされた場合であっても、フリーホイールダイオードDp,Dnを通じて電流が通過可能となっている。そして、この場合、インバータ回路22の平滑コンデンサ28を介した電流経路(一点破線で送電側共振コイル26uの電流経路を示す)となる。
【0056】
その結果、送電に関与しない送電側共振コイル26cu,26cv,26cwが、送電に関与する送電側共振コイル26bu,26bv,26bw等と磁気結合すると、数式(1)~(3)に示すように、当該平滑コンデンサ28の端子間電圧を送電側フィルタ回路23のインピーダンスで除した電流が当該電流経路(つまり、送電側共振コイル26cu,26cv,26cw)に流れることとなる。平滑コンデンサ28の端子間電圧は、電源電圧に等しいため、結果として、送電に関与しない大電流が流れ、効率が低下することとなる。
【数1】
【0057】
なお、数式(1)~(3)において、「I」は、送電側共振コイル26u,26v,26wに流れる電流を示し、「Vb」は、平滑コンデンサ28の端子間電圧(≒電源電圧)を示し、「X」は、送電側フィルタ回路23のインピーダンスを示す。また、「ω」は、電気角周波数を示し、「f」は、インバータ回路22の駆動周波数を示し、「L」は、送電側フィルタ回路23のインダクタンスを示し、「C」は、送電側フィルタ回路23のコンデンサ容量を示す。
【0058】
そこで、本実施形態では、図7に示すように、送電に関わらない送電部20a~20cを検出した場合、検出した送電部20a~20cのインバータ回路22において、全ての上アームスイッチSpをオフする一方、下アームスイッチSnをすべてオンするように構成されている。以下、詳しく説明する。
【0059】
図8は、送電制御部60による処理を示すフローチャートである。まず、送電制御部60は、検出部から送電側共振コイル26u,26v,26wと、受電側共振コイル36u,36v,36wとの磁気結合係数(磁気結合度)に対応する物理量を検出する(ステップS100)。本実施形態では、図1に示すように、検出部として赤外線センサSE1を送電部20a~20cごとに備えている。送電制御部60は、各赤外線センサSE1により、送電部20a~20cごとに、受電装置30(つまり、受電側共振コイル36u,36v,36w)との距離を取得(検出)する。磁気結合係数(磁気結合度)に対応する物理量が、磁気結合係数に係る情報に相当し、本実施形態では、受電装置30との距離である。
【0060】
次に、送電制御部60は、送電部20a~20cごとに、検出した物理量に基づいて受電側共振コイル36u,36v,36wとの磁気結合係数が所定値以上であるか否かを判定する(ステップS110)。本実施形態では、送電制御部60は、検出した距離に基づいて、受電装置30が送電部20a~20cに対して対向する距離に存在するか否かを判定する。具体的には、受電装置30との距離が閾値以下であるか否かを判定する。
【0061】
この判定結果が肯定の場合、送電制御部60は、通電モードを設定する(ステップS120)。すなわち、送電制御部60は、インバータ回路22の上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnをオンオフ制御して、直流電流(直流電力)を交流電流(交流電力)に変換する。そして、交流電流を、送電側共振コイル26u,26v,26wに供給する。これにより、送電側共振コイル26u,26v,26wと、受電側共振コイル36u,36v,36wと、がそれぞれ磁場共鳴する。
【0062】
一方、ステップS110の判定結果が否定の場合、送電制御部60は、待機モードを設定する(ステップS130)。すなわち、送電制御部60は、インバータ回路22の上アームスイッチSpをオフし、下アームスイッチSnをオンするように制御する。
【0063】
これにより、図7に示すように、送電に関与しない送電部20cの送電側共振コイル26cu,26cv,26cwの一端と他端が下アームスイッチSnにより短絡する。
【0064】
数式(4)に示すように、下アームスイッチSnにより短絡された場合、送電側共振コイル26cu,26cv,26cwに流れる電流は、下アームスイッチSnのオン電圧を送電側フィルタ回路23のインピーダンスで除した値となる。数式(4)において、「Von」は、下アームスイッチSnのオン電圧であり、「R」は、下アームスイッチSnのオン抵抗であり、「Ia」は、インバータ回路22からの出力電流である。
【数2】
【0065】
そして、下アームスイッチSnのオン電圧(オン抵抗)は、無視できるほど小さい。この結果、送電に関与しない送電側共振コイル26cu,26cv,26cwに流れる電流は、ほぼゼロとなる。これにより、送電に関わらない送電側共振コイル26cu,26cv,26cwに流れる電流を抑制し、無駄な電力消費を抑えることができる。
【0066】
また、インバータ回路22の上アームスイッチSp及び下アームスイッチSnを利用して、送電側共振コイル26u,26v,26wの一端と他端とを短絡させるため、短絡させるための専用のスイッチを設ける場合と比較して、回路構成を簡単にすることができる。
【0067】
(他の実施形態)
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の変形実施が可能である。なお、以下では、各実施形態で互いに同一又は均等である部分には同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0068】
・上記実施形態において、各送電部20a~20cは、3相の送電側共振コイル26u,26v,26wを設けたが、相数を任意に変更してもよい。同様に、受電側共振コイル36u,36v,36wも、相数を任意に変更してもよい。
【0069】
例えば、図9に示すように、各送電部20a~20cの送電側共振回路24を単相にしてもよい。また、各送電部20a~20cの送電側共振回路24を単相とする一方、受電側共振回路31を複数相にした非接触給電システム10にしてもよい。同様に、図10に示すように、各送電部20a~20cの送電側共振回路24及び受電側共振回路31を単相にしてもよい。また、図示しないが、送電側共振回路24を複数相とする一方、受電側共振回路31を単相にした非接触給電システム10にしてもよい。
【0070】
・上記実施形態では、インバータ回路22の上アームスイッチSpをオフにする一方、下アームスイッチSnをオンにすることにより、送電に関与しない送電部20a~20cの送電側共振コイル26u,26v,26wの一端と他端を短絡させた。この別例として、インバータ回路22の上アームスイッチSpをオンにする一方、下アームスイッチSnをオフにすることにより、送電に関与しない送電部20a~20cの送電側共振コイル26u,26v,26wの一端と他端を短絡させてもよい。この場合でも同様の効果を得ることができる。
【0071】
・上記実施形態では、インバータ回路22を利用して、送電に関与しない送電部20a~20cの送電側共振コイル26u,26v,26wの一端と他端を短絡させた。この別例として、図11に示すように、送電部20a~20cの送電側共振コイル26u,26v,26wの一端と他端を短絡させるスイッチ部としてのスイッチSWを設けてもよい。スイッチSWは、インバータ回路22と送電側フィルタ回路23との間に設けられており、各相の端子間を短絡可能に構成されている。
【0072】
・上記実施形態では、検出部としての赤外線センサSE1により、磁気結合係数に係る物理量として送電部20a~20cと受電装置30との間の距離を検出した。この別例として、検出部を任意に変更してもよい。例えば、各相の通電電流を検出する電流センサを設け、通電電流に基づいて、送電装置20と受電装置30との間の磁気結合係数を判定してもよい。また、車両や受電装置30と通信可能な通信装置を設けて、送電装置20と受電装置30との間の磁気結合係数を判定してもよい。
【0073】
・上記実施形態において、送電部20a~20cの数は任意に変更してもよい。
【符号の説明】
【0074】
10…非接触給電システム、12…車載バッテリ、20…送電装置、20a~20c…送電部、22…インバータ回路(スイッチ部)、26u,26v,26w…送電側共振コイル(送電コイル)、30…受電装置、60…送電制御部(制御部)、SE1…赤外線センサ(検出部)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11