(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】ガンの処置において使用するためのリポソーム製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 31/519 20060101AFI20220316BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220316BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220316BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20220316BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20220316BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220316BHJP
A61K 47/24 20060101ALI20220316BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220316BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220316BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
A61K31/519
A61K9/08
A61K9/10
A61K9/127
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/24
A61K47/26
A61P35/00
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2019522453
(86)(22)【出願日】2017-10-27
(86)【国際出願番号】 EP2017077538
(87)【国際公開番号】W WO2018078064
(87)【国際公開日】2018-05-03
【審査請求日】2020-10-02
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500287019
【氏名又は名称】レ ラボラトワール セルヴィエ
(73)【特許権者】
【識別番号】504389991
【氏名又は名称】ノバルティス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】特許業務法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ウェッセルズ,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ティエメッセン,ヘンリキュス
(72)【発明者】
【氏名】デ・マルコ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ララビ,マリカ
(72)【発明者】
【氏名】シーデル,クリスティアーネ
(72)【発明者】
【氏名】グリナ,マリーナ
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-129120(JP,A)
【文献】特表2013-544861(JP,A)
【文献】特開2012-051823(JP,A)
【文献】特開2005-075783(JP,A)
【文献】特表2013-536805(JP,A)
【文献】特開2005-225818(JP,A)
【文献】特表2003-526679(JP,A)
【文献】特表2004-516247(JP,A)
【文献】特開2010-174029(JP,A)
【文献】特開2002-080400(JP,A)
【文献】特開平06-039274(JP,A)
【文献】国際公開第00/000178(WO,A1)
【文献】特表平11-500712(JP,A)
【文献】特表2013-512262(JP,A)
【文献】特表2006-516650(JP,A)
【文献】特表2014-506922(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/519
A61K 9/08
A61K 9/10
A61K 9/127
A61K 47/02
A61K 47/10
A61K 47/24
A61K 47/26
A61P 35/00
A61P 35/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩と、
b.負に帯電しているか又は極性のリン脂
質と、
c.
PEG300,PEG400及び塩化ナトリウムからなる群から選択されるゼリー化に対する安定剤と
を含む有機濃縮物組成物。
【請求項2】
(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩を含む、請求項1記載の有機濃縮物組成物。
【請求項3】
化合物Aが、遊離分子である、請求項1又は2記載の有機濃縮物組成物。
【請求項4】
負に帯電しているか又は極性のリン脂
質が、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、卵レシチン(例えば、Lipoid
(登録商標)E 80 S)、大豆レシチン(例えば、Lipoid
(登録商標)S 75)及びオレイン酸ナトリウムから選択される、請求項1~3のいずれか一項記載の有機濃縮物組成物。
【請求項5】
負に帯電しているか又は極性のリン脂
質が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールのナトリウム塩又はアンモニウム塩、卵レシチン(例えば、Lipoid
(登録商標) E 80 S)、大豆レシチン(例えば、Lipoid
(登録商標) S 75)、好ましくは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールナトリウム塩である、請求項1~4のいずれか一項記載の有機濃縮物組成物。
【請求項6】
ゼリー化に対する安定剤が、塩化ナトリウムである、請求項1~
5のいずれか一項記載の有機濃縮物組成物。
【請求項7】
ゼリー化に対する安定剤が、PEG300及びPEG400
から選択されるポリマーである、請求項1~6のいずれか一項記載の有機濃縮物組成物。
【請求項8】
溶媒を更に含む、請求項1~
7のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【請求項9】
更に、プロピレングリコール及びエタノールから選択される溶媒を含むか、又は、特に、プロピレングリコール及びエタノールの両方を含む、請求項1~
8のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか記載の有機濃縮物組成物とリポソーム性ビヒクルとの混合物から得られる医薬組成物であって、該リポソーム性ビヒクルが、リン脂質及び浸透圧調整剤を含み、特に、該浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaClから選択される、医薬組成物。
【請求項11】
リン脂質が、卵レシチン、大豆レシチン又は合成リン脂質から選択される、請求項
10記載の医薬組成物。
【請求項12】
リン脂質が、式
【化1】
(式中、
・R
1は、C
10~C
24アシルを表し;
・R
2は、C
10~C
24アシルを表し;
・R
3は、水素、2-トリメチルアミノ-1-エチル、2-アミノ-1-エチル、C
1~C
4アルキル、カルボキシによって置換されているC
1~C
5アルキル、カルボキシ及びヒドロキシによって置換されているC
2~C
5アルキル、カルボキシ及びアミノによって置換されているC
2~C
5アルキル、イノシトール基、又はグリセリル基を表す)
で示されるもの、又はこのような化合物の塩である、請求項
10又は11記載の医薬組成物。
【請求項13】
リン脂質が、卵レシチン、大豆レシチン、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPCから選択される、請求項
10~12のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項14】
リン脂質が、少なくとも70%のホスファチジルコリンを含む卵レシチン又は大豆レシチンから選択され、特に、Lipoid
(登録商標) E 80 Sから選択される、請求項
10、11又は13のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項15】
浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaCl、特に、スクロース又はグリセリンから選択される、請求項
10~14のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項16】
リポソームに加えて、
a.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩
、
b.
PEG300,PEG400及び塩化ナトリウムからなる群から選択されるゼリー化に対する安定剤
、及び
c.負に帯電しているか又は極性のリン脂質
を含むリポソーム医薬組成物。
【請求項17】
a.請求項2又は3記載の化合物Aと、
b.請求項
6又は7のいずれか記載のゼリー化に対する安定剤と
を含む、請求項
16記載のリポソーム医薬組成物。
【請求項18】
負に帯電しているか又は極性のリン脂
質が、請求項4又は5記載のとおりである、請求項
16記載のリポソーム医薬組成物。
【請求項19】
溶媒を更に含む、請求項
16~18のいずれか記載のリポソーム医薬組成物。
【請求項20】
溶媒が、プロピレングリコール及びエタノールから選択されるか、又は、特に、プロピレングリコール及びエタノールの両方を含む、請求項
19記載のリポソーム医薬組成物。
【請求項21】
請求項
11~14のいずれか一項記載のリン脂質を含む、請求項
16~20のいずれか記載のリポソーム医薬組成物。
【請求項22】
浸透圧調整剤を更に含み、特に、該浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaClから選択される、請求項
16~21のいずれか記載のリポソーム医薬組成物。
【請求項23】
医薬として使用するための、請求項
10~22のいずれか記載の医薬組成物。
【請求項24】
請求項
23記載の使用のための医薬組成物であって、該使用が、ガンの処置における使用であり、特に、ガンが、膀胱、脳、乳房及び子宮のガン、慢性リンパ性白血病、結腸、食道及び肝臓のガン、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣ガン、非小細胞肺ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、並びに小細胞肺ガンから選択される、医薬組成物。
【請求項25】
ガンを処置するための医薬を調製するための、請求項1~
9のいずれか記載の有機濃縮物組成物の使用。
【請求項26】
a.請求項
10~22のいずれか記載の医薬組成物と、
b.同時に、逐次的に又は別々に使用するための、1つ以上の治療的活性剤と
を含む組み合わせ物。
【請求項27】
a.リポソーム性ビヒクルと、
b.請求項1~
9のいずれか一項記載の有機濃縮物組成物と
を含むキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
本発明は、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(本明細書中において「化合物A」と称する)又はその薬学的に許容し得る塩を含む医薬リポソーム組成物に関する。より具体的には、本発明は、リポソーム性ビヒクル、化合物Aを含む有機濃縮物組成物、及びリポソームと化合物Aとを含む非経口投与用の医薬組成物に関する。更に、本発明は、ガンを処置するためのこのような組成物の使用に関する。「化合物A」は、本明細書中で使用する場合、その全てのエナンチオマー、ジアステレオ異性体及びアトロプ異性体、又はこれらの混合物を含み、そして、場合により、それらの薬学的に許容し得る塩も含む。
【0002】
化合物Aの構造は、
【化1】
2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である。
【0003】
特定の実施態様では、化合物Aは、
【化2】
(2R)-2-{[(5S
a)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である。更なる実施態様では、本明細書中に記載される組成物において使用される化合物Aは、遊離分子である(その塩ではない)。
【0004】
化合物Aの調製、ガンを処置するためのMcl-1阻害剤としてのその使用、及びその医薬製剤は、国際公開公報第2015/097123号に記載されており、その内容は参照により援用される。該調製は、国際公開公報第2015/097123号の実施例30に具体的に開示されている。
【背景技術】
【0005】
化合物Aは、光学的に活性であり、1つのキラル中心及びキラル軸を有する。化合物Aは、生理学的に関連するpHを含む全てのpHにわたって、限定された水溶解度を有する。化合物Aを安全かつ有効に投与できるようにし、そして、必要な治療効果を生じさせるために、化合物Aを可溶化する必要がある。
【0006】
可溶性の低い化合物を非経口投与用に可溶化するための様々な方法が存在する。典型的なアプローチは、pHの最適化又は共溶媒(例えば、PEG300、PEG400、プロピレングリコール又はエタノール)の使用である。これらアプローチが何らかの理由で実行不可能な場合、界面活性剤の使用が検討され得る(例えば、Tween(登録商標)80又はCremophor EL(登録商標))。しかし、これらの種類の界面活性剤は、有害作用を伴うことが多い。シクロデキストリンは、安全な可溶化剤として確立されているが、全ての化合物について有効な可溶化剤である訳ではないので限界がある。更に、天然油に対して高い可溶性を有する化合物(例えば、Propofol)は、非経口脂肪乳剤に可溶化し得る。
【0007】
可溶性の低い化合物を可溶化する別の可能性は、リン脂質の使用である(非特許文献1)。したがって、通常のアプローチに加えて、可溶性の低い化合物を可溶化するための1つの更なるツールとしてリン脂質が提起される。しかし、特定の可溶性の低い化合物のリン脂質による可溶化は、予測することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【文献】van Hoogevest P., Xiangli L., and Alfred F. “Drug delivery strategies for poorly water-soluble drugs: the industrial perspective” Expert Opinion on Drug Delivery 2011, 8(11), 1481-1500
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、化合物Aを可溶化し、かつ非経口的に送達するために便利に使用することができる組成物を提供することである。特に、安全かつ有効な化合物Aの医薬組成物を提供する必要がある。更なる目的は、関連する条件及び容器において安定であり、そして、合理的なタイムスケールにわたって適切な用量の化合物Aを投与できるようにする組成物を提供することである。更なる目的では、該組成物は、信頼性が高く、かつロバストなプロセスによって製造することができなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
概要
本発明は、患者に非経口投与するのに好適な、化合物Aを含む組成物を提供する。特に、このような投与は、静脈内注射又は点滴による。本発明は、更に、投与に好適な組成物を提供するために、患者に投与する直前に一緒に混合することができる2つの別々の組成物を提供する。混合するための一方の組成物は、化合物Aを含む有機濃縮物組成物であり、そして、混合するための第2の組成物は、リポソーム性ビヒクルである。2つの別々の組成物を一緒に混合した場合、化合物Aがリポソーム性ビヒクル内のリポソームにロードされて、化合物Aの可溶化が可能になり、その結果、臨床で使用するのに好適な医薬リポソーム組成物が得られる。
【0011】
好ましくは、本発明は、化合物Aの化学的安定性を維持する、化合物Aを含む組成物を提供する。例えば、望ましくないアトロプ異性体及び/又は酸化生成物及び/又は分解生成物の形成が制限されている。
【0012】
好ましくは、本発明は、最適な物理的安定性を有する(例えば、ゲルの形成が回避された及び/又は成分の沈殿が回避された)化合物Aを含む組成物を提供する。予想外なことに、化合物Aを含む組成物はゼリー化しやすいので、該組成物がゲルを形成することが見出された。このようなゼリー化は、可逆性である場合もあり、可逆性ではない場合もある。ゼリー化は、その提案されている用途のための化合物Aを含む組成物の取り扱いを複雑にするか又は妨げるので、回避する必要がある。
【0013】
化合物Aを含む組成物(有機濃縮物)は、患者に投与する直前に、単に2つの組成物を一緒に混合することによって、リポソーム性ビヒクル中のリポソームに化合物Aを効率的かつ最適にロードすることができなければならない。
【0014】
好ましくは、本発明は、静脈内投与後にリポソームから化合物Aを迅速に放出させることができる医薬リポソーム組成物を提供する。
【0015】
まとめると、本明細書中に記載される発明は、化合物Aの化学的特徴の課題及び化合物Aを含む製剤の物理的特徴の課題にもかかわらず、化合物Aを患者に有効に投与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】MV4;11 AML異種移植片を有する雌ヌードラットにおける10mg/kg QW投与後のリポソーム製剤化された化合物Aの有効性及び忍容性を示す。
【
図2】MV4;11 AML異種移植片を有する雌ヌードラットにおける30mg/kg QW投与後のリポソーム製剤化された化合物Aの有効性及び忍容性を示す。
【
図3】リポソームからMLVへの化合物Aの放出をモニタリングすることを可能にする、MLVベースの放出アッセイの原理の概略図を示す。
【
図4】様々な異なるSUV:MLV比(v/v)におけるSUVから100% ePL(卵リン脂質)への化合物Aの放出プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
発明の詳細な説明
【0018】
リポソームは、少なくとも1つの脂質二重層を有する球形ベシクルである。リポソームは、栄養素及び医薬を投与するためのビヒクルとして使用することができる。リポソームは、ほとんどの場合、リン脂質、特にホスファチジルコリンで構成されるが、脂質二重層構造と適合する限り、卵ホスファチジルエタノールアミン等の他の脂質を含んでいてもよい。
【0019】
「リポソーム性ビヒクル」は、本明細書中で使用する場合、リポソームを含む液体を意味し、該リポソームはリン脂質を含む。該リポソーム性ビヒクルは、特に化合物Aが本明細書中に記載される有機濃縮物として提供される場合、化合物Aと混合された後に水性環境において化合物Aを可溶化するのに好適である。該リポソーム性ビヒクルは、患者に投与する前に化合物Aをロードするのに好適である。
【0020】
本明細書中に開示されるリポソームのサイズは、光子相関分光法(PCS)によって求めた場合のサイズを指す。Z平均直径として表される平均サイズ及び多分散性指数は、ISO13321に従って光子相関分光法を用いて求められる。
【0021】
本明細書中に記載される医薬組成物は、特に、医薬リポソーム組成物である。「医薬リポソーム組成物」は、医薬投与に好適なリポソームを含む組成物を意味する。
【0022】
「ゼリー化」は、本明細書中で使用する場合、ゲルの形成を意味する。ゲルが形成されると、組成物の粘性がより高くなり、自由流動性がより低くなる。これによって、該組成物がその意図される目的のために機能するのがより困難になるか又は不可能になる。
【0023】
本明細書中におけるリポソーム性ビヒクルで用いられるリン脂質は、式
【化3】
(式中、
・R
1は、C
10~C
24アシルを表し;
・R
2は、C
10~C
24アシルを表すか、或いはR
2は、水素又はC
10~C
20アシルを表し;
・R
3は、水素、2-トリメチルアミノ-1-エチル、2-アミノ-1-エチル、C
1~C
4アルキル、カルボキシによって置換されているC
1~C
5アルキル、カルボキシ及びヒドロキシによって置換されているC
2~C
5アルキル、カルボキシ及びアミノによって置換されているC
2~C
5アルキル、イノシトール基、又はグリセリル基を表す)
の少なくとも1つのリン脂質、又はこのような化合物の塩を含む。
【0024】
本明細書中の上記で使用されたアシルという用語は、以下:
【化4】
(式中、
*は、R
1又はR
2の分子の残部への結合点であり、そして、例えば、Rは、飽和していても、部分的に不飽和であってもよい非分岐アルキル鎖である)。
の基を表す。
【0025】
リン脂質は、中性であってもよいし、帯電していてもよい。リン脂質は、二本鎖又は単鎖の両親媒性物質であってもよい。二本鎖を有する中性リン脂質の例は、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びスフィンゴミエリンである。帯電しているリン脂質の例は、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルイノシトール(PI)及びホスファチジルセリン(PS)、並びにホスファチジルグリセロール(PG)である。炭化水素鎖は、不飽和であっても、飽和であってもよい。一実施態様では、14~18個の炭素原子を有する。
【0026】
非経口製剤の場合、リン脂質は、二本鎖であってもよく、そして、20%未満の比率の単鎖両親媒性物質を含有していてもよい。非経口製剤の場合、リン脂質は、ホスファチジルコリン(PC)であってもよく、そして、40%未満の比率の帯電しているリン脂質を含有していてもよい。
【0027】
単鎖脂質は、中性又は帯電しているリン脂質のモノアシル誘導体であるが、糖脂質及びスフィンゴ脂質のモノアシル誘導体であってもよい。しかし、非経口用途の場合、モノアシル誘導体は好ましくない。脱アシル化は、ホスホリパーゼA2酵素による加水分解によって又は化学的手段によって実施され得る。炭化水素鎖は、不飽和であっても、飽和であってもよく、そして、特に、14~18個又は14~24個の炭素原子を有し得る。脂質は、天然植物由来であってもよく、動物又は微生物の起源由来であってもよく、合成又は部分的に合成されていてもよく、ペグ化モノアシルホスファチジルエタノールアミン等のポリエチレングリコール(PEG)由来のモノアシルリン脂質を含む。
【0028】
好ましい実施態様では、R2は、水素ではない。
【0029】
特に、本明細書中に記載されるリポソーム性ビヒクルで使用されるリン脂質は、卵レシチン、大豆レシチン又は合成リン脂質から選択される。本明細書中で使用するための合成リン脂質の例は、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、合成リン脂質POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPCである。より特には、リポソーム性ビヒクルで使用されるリン脂質は、少なくとも75%のホスファチジルコリン又は少なくとも70%のホスファチジルコリンを含む卵レシチン又は大豆レシチンから選択される。別の実施態様では、71.5%w/w(±7.5%w/w)卵PC(ホスファチジルコリン)及び15%w/w(±3%w/w)卵PE(ホスファチジルエタノールアミン)を含む卵レシチンを使用することができる。特定の実施態様では、該リン脂質は、Lipoid E80S及びLipoid E80から選択される。好ましい実施態様では、該リン脂質は、Lipoid E80Sである。Lipoid E80を使用する場合、場合により、コロイド安定性の安定剤としてオレイン酸ナトリウムを製剤に含めてもよい。
【0030】
好ましい実施態様では、化合物Aの血流へのより迅速な放出を促進するためにリン脂質を選択する。
【0031】
「有機濃縮物」は、本明細書中で使用する場合、リポソームをロードすることができるようにリポソーム性ビヒクルと混合するのに好適な、化合物Aを含有する有機の水混和性溶媒を含む溶液である組成物を意味する。特に、該有機濃縮物は、本明細書中に記載されるとおり、リポソーム性ビヒクルと混合し、かつロードするのに好適である。得られる混合物は、患者に投与するのに好適である。
【0032】
「ロード」は、有機濃縮物からリポソームに化合物Aを組み込むか又は移行させることを意味する。
【0033】
「負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤」は、少なくとも幾らか負に帯電している脂質又は極性の脂質を含むリン脂質を意味する。特に、負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤は、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、Lipoid S 75、Lipoid E 80 S及びオレイン酸ナトリウムから選択される。特に、負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールのナトリウム若しくはアンモニウムの塩、又はLipoid E 80 S、好ましくは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールナトリウム塩である。該「負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤」は、化合物Aのリポソームへのロードを促進する。
【0034】
「負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤」は、卵レシチン又は大豆レシチンであってもよい。
【0035】
「浸透圧調整剤」は、製剤をヒト血漿と等張にするために該製剤に添加され得る薬学的に許容し得る化合物を意味する。浸透圧調整剤は、例えば、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaCl、特に、スクロース又はグリセリン、より特には、スクロースを含む。浸透圧は、「有効オスモル濃度」であり、膜を越える浸透力を発揮する能力を有する溶質の濃度の合計に等しい。非経口製剤は、血漿と等張でなければならない。浸透圧調整剤は、当業者に周知である。
【0036】
適切な溶媒は、処方化の熟練者によって選択され得る。本明細書中における有機濃縮物では、溶媒は、プロピレングリコール、エタノール、PEG300、Super-Refined(登録商標)PEG300、PEG400及びSuper-Refined(登録商標)PEG400、特に、プロピレングリコール及びエタノールから選択され得る。
【0037】
Super-Refined(登録商標)は、高純度等級のPEG300又はPEG400を指す。
【0038】
「緩衝剤」は、溶液のpHの変化を防ぐために使用され、そして、好適な例は、処方化の熟練者に周知である。
【0039】
「容器」は、非経口投与用の組成物を収容するのに好適な、ゴムの栓及び蓋のついたアンプル又はバイアル、単一又は二重のチャンバのシリンジ、高分子材料又はガラスで作製された輸液バッグ又はボトルを意味する。容器は、液体を保持するための任意の容器も含む。
【0040】
「遊離分子」は、本明細書中で使用する場合、化合物が、外部対イオンによって形成される塩の形態で使用されないことを意味する。化合物Aは、双性イオン形態で存在し得、そして、用語「遊離分子」は、本明細書中で使用する場合、双性イオン形態を含む。
【0041】
本明細書中で使用する場合、用語「含む(comprising)」は、「含む(including)」を意味し、そして、文脈上そうではないと示唆しない限り、例えば成分の合計が100%になる場合、任意の追加の成分の存在を除外することを意図しない。
【0042】
本明細書中で使用する場合、任意の疾患又は障害を「処置する」、任意の疾患又は障害を「処置している」、又は任意の疾患又は障害の「処置」という用語は、一実施態様では、該疾患又は障害を改善させる(即ち、疾患又はその臨床症状のうちの少なくとも1つの発症を減速若しくは抑止、又は低減する)ことを指す。別の実施態様では、「処置する」、「処置している」又は「処置」とは、少なくとも1つの物理的パラメータ(患者が認識することができない場合があるものを含む)を緩和又は改善させることを指す。更に別の実施態様では、「処置する」、「処置している」又は「処置」とは、物理的に(例えば、認識可能な症状の安定化)、生理学的に(例えば、物理的パラメータの安定化)、又は両方で、該疾患又は障害を調節することを指す。
【0043】
「ゼリー化に対する安定剤」は、本明細書中で使用する場合、化合物Aを含む組成物のゼリー化に対する安定剤を意味する。この安定剤の定義は、例えば、電解質又はポリマーを含む。好適な電解質の例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニン、好ましくは、塩化ナトリウムである。電解質と共に、必要に応じて製剤に水を添加してもよい。好適なポリマーの例は、PEG300及びPEG400、特に、PEG300である。ゼリー化に対する安定剤は、当業者に周知の技術によって検討することができ、特に、本明細書中に記載される技術を使用することができる。本明細書中における実施例12は、ゼリー化について試験するために用いることができる技術を提供する。選択された組成物のゼリー化についての性質が理解された場合、処方化の熟練者は、化合物Aを含む組成物の最適な保存条件を選択するために、その情報を使用することができる。
【0044】
最適な一実施態様では、PEG300は、Super-Refined(登録商標)PEG300であり、これは高純度PEG300である。
【0045】
好ましい一実施態様では、化合物Aを含む組成物のゼリー化を防ぎ、そして、化合物Aを含む組成物の成分の沈殿をも低減又は防止する安定剤が選択される。例えば、PEG300がこれに関して特に興味深い。最適な一実施態様では、PEG300は、Super-Refined(登録商標)PEG300であり、そして、これはまた、化合物Aの化学的安定性を維持することを補助し得る。
【0046】
「患者に投与する直前に」混合するとは、患者に投与する最長3日間前、特に最長24時間前、そして、例えば最長6時間前を意味する。
【0047】
「ヒスチジン」は、本明細書中で使用する場合、特に「L-ヒスチジン」を意味する。
【0048】
有利なことに、本発明の特定の実施態様では、リポソームの粒径が非常に小さいため製剤が透明に見えるので、投与前に化合物Aの可溶化の完了度を目視検査することが可能となる。特定の実施態様では、該組成物は、患者に静脈内投与される。
【0049】
実施態様
【0050】
本発明の多数の実施態様を以下に記載する。
【0051】
E1.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩と、負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤とを含む有機濃縮物組成物。
【0052】
E2.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩と、負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤とを含む、実施態様E1記載の有機濃縮物組成物。
【0053】
E3.化合物Aが、遊離分子である、実施態様E1又はE2記載の有機濃縮物組成物。
【0054】
E4.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤が、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、Lipoid E80S及びオレイン酸ナトリウムから選択される、実施態様E1~E3のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0055】
E5.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤が、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)ナトリウム塩又はLipoid E80Sである、実施態様E1~E4のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0056】
E6.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールナトリウム塩である、実施態様E5記載の有機濃縮物組成物。
【0057】
E7.1つ以上の溶媒を更に含む、実施態様E1~E6のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0058】
E8.プロピレングリコール、エタノール、PEG300及びPEG400から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、実施態様E1~E7のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0059】
E9.以下
・プロピレングリコール及びエタノール、又は
・プロピレングリコール、PEG300及びエタノール
から選択される少なくとも1つの溶媒を含む、実施態様E1~E8のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0060】
E10.プロピレングリコール及びエタノールの両方を含む、実施態様E1~E9のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0061】
E11.塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニン(好ましくは、塩化ナトリウム)から選択される安定剤を更に含む、実施態様E1~E10のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0062】
E12.水を更に含む、実施態様E1~E11のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0063】
E13.リン脂質及び浸透圧調整剤を含むリポソーム性ビヒクル。
【0064】
E14.5%w/w~20%w/wのリン脂質、特に、7%w/w~13%w/wのリン脂質を含む、実施態様E13記載のリポソーム性ビヒクル。
【0065】
E15.リン脂質が、
【化5】
(式中、
・R
1は、C
10~C
24アシルを表し;
・R
2は、C
10~C
24アシルを表すか、或いはR
2は、水素又はC
10-C
20アシルを表し;
・R
3は、水素、2-トリメチルアミノ-1-エチル、2-アミノ-1-エチル、C
1~C
4アルキル、カルボキシによって置換されているC
1~C
5アルキル、カルボキシ及びヒドロキシによって置換されているC
2~C
5アルキル、カルボキシ及びアミノによって置換されているC
2~C
5アルキル、イノシトール基、又はグリセリル基を表す)
又はこのような化合物の塩から選択される、実施態様E13又はE14記載のリポソーム性ビヒクル。
【0066】
E16.リン脂質が、卵レシチン、大豆レシチン又は合成リン脂質から選択される、実施態様E13又はE14記載のリポソーム性ビヒクル。
【0067】
E17.リン脂質が、卵レシチン、大豆レシチン、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPCから選択される、実施態様E13~E16のいずれか記載のリポソーム性ビヒクル。
【0068】
E18.リン脂質が、少なくとも75%のホスファチジルコリン又は少なくとも70%のホスファチジルコリンを含む卵レシチン又は大豆レシチンから選択される、実施態様E13、E14、E16又はE17のいずれか記載のリポソーム性ビヒクル。
【0069】
E19.リン脂質が、Lipoid E 80 Sである、実施態様E13、E14、E16、E17又はE18のいずれか記載のリポソーム性ビヒクル。
【0070】
E20.浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaClから選択される、実施態様E13~E19のいずれか記載のリポソーム性ビヒクル。
【0071】
E21.浸透圧調整剤が、スクロース又はグリセリン、特に、スクロースである、実施態様E20記載のリポソーム性ビヒクル。
【0072】
E22.緩衝剤を更に含む、実施態様E13~E21のいずれか記載のリポソーム性ビヒクル。
【0073】
E23.緩衝剤が、ヒスチジンである、実施態様E22記載のリポソーム性ビヒクル。
【0074】
E24.水を更に含む、実施態様E13~E23のいずれか記載のリポソーム性ビヒクル。
【0075】
E25.リポソーム性ビヒクル中に存在するリポソームが、20nm~300nm、好ましくは20nm~100nmの平均サイズを有する、実施態様E13~E24のいずれか記載のリポソーム性ビヒクル。
【0076】
E26.リポソームが、20nm~80nm、好ましくは40nm~70nmの平均サイズを有する、実施態様E25記載のリポソーム性ビヒクル。
【0077】
E27.リン脂質と、2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩とを含む医薬組成物。
E28.
a.実施態様E15~E19のいずれか記載のリン脂質と、
b.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩と
を含む医薬リポソーム組成物。
【0078】
E29.化合物Aが、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又はその塩、好ましくは遊離分子である、実施態様E27記載の医薬組成物。
【0079】
E30.化合物Aが、((2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸又はその塩、好ましくは遊離分子である、実施態様E28記載の医薬リポソーム組成物。
【0080】
E31.点滴又は静脈内注射用の、実施態様E27~E30のいずれか記載の医薬組成物。
【0081】
E32.5%w/w~20%w/wのリン脂質、特に、7%w/w~13%w/wのリン脂質を含む、実施態様E27~E31のいずれか記載の医薬組成物。
【0082】
E33.リン脂質が、実施態様E15~E19、特に、E18又はE19記載のものから選択される、実施態様E27~E32のいずれか記載の医薬組成物。
【0083】
E34.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤を更に含む、実施態様E27~E33のいずれか記載の医薬組成物。
【0084】
E35.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤が、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、Lipoid E80S及びオレイン酸ナトリウム、特に、ジミリストイルホスファチジルグリセロール(DMPG)ナトリウム塩、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールナトリウム塩及びLipoid E80Sから選択される、実施態様E34記載の医薬組成物。
【0085】
E36.1つ以上の溶媒、特に、実施態様E8、E9又はE10のいずれか記載の溶媒を更に含む、実施態様E27~E35のいずれか記載の医薬組成物。
【0086】
E37.塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニンから選択される安定剤、好ましくは塩化ナトリウムを更に含む、実施態様E27~E36のいずれか記載の医薬組成物。
【0087】
E38.浸透圧調整剤を更に含む、実施態様E27~E37のいずれか記載の医薬組成物。
【0088】
E39.浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaCl、特に、スクロース及び/又はグリセリン、より特には、スクロースから選択される、実施態様E38記載の医薬組成物。
【0089】
E40.緩衝剤、特に、ヒスチジンを更に含む、実施態様E27~E39のいずれか記載の医薬組成物。
【0090】
E41.リポソームを含む、実施態様E27~E40のいずれか記載の医薬組成物。
【0091】
E42.リン脂質(リポソーム性ビヒクル由来)の、遊離分子としての化合物Aに対する比が、100:1~4.5:1重量部である、実施態様E27~E41のいずれか記載の医薬組成物。
【0092】
E43.リポソーム性ビヒクル由来のリン脂質の遊離分子としての化合物Aに対する比が、50:1~6:1重量部、特に、20:1~9:1重量部である、実施態様E42記載の医薬組成物。
【0093】
E44.ロードされたリポソームが、20nm~100nm、特に、50nm~90nm、より特には、50nm~80nmの平均サイズを有する、実施態様E27~E43のいずれか記載の医薬組成物。
【0094】
E45.実施態様E13~E26のいずれか記載のリポソーム性ビヒクルと、実施態様E1~E12のいずれか記載の有機濃縮物組成物との混合物を含む、点滴又は静脈内注射用の医薬組成物。
【0095】
E46.点滴用グルコースを更に含む、実施態様E45記載の点滴用医薬組成物。
【0096】
E47.
a.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物Aと、
b.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤と、
c.プロピレングリコール、エタノール、PEG300及びPEG400から選択される少なくとも1つの溶媒と
を含む有機濃縮物組成物。
【0097】
E48.プロピレングリコール、エタノール及びPEG300、特に、プロピレングリコール及びエタノールの両方を含む、実施態様E47記載の有機濃縮物組成物。
【0098】
E49.塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニンから選択される安定剤、特に、塩化ナトリウムを更に含む、実施態様E47又はE48記載の有機濃縮物組成物。
【0099】
E50.
a.実施態様E15~E19のいずれか1つ記載のものから選択されるリン脂質と、
b.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物Aと、
c.実施態様E4~E6のいずれか記載のものから選択される負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤と
を含む点滴又は静脈内注射用の医薬組成物。
【0100】
E51.塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニンから選択される安定剤、特に、塩化ナトリウムを更に含む、実施E50記載の医薬組成物。
【0101】
E52.プロピレングリコール及びエタノールの両方を更に含む、実施態様E50又はE51記載の医薬組成物。
【0102】
E53.
a.実施態様E13~E26のいずれか1つ記載のリポソーム性ビヒクルと、
b.実施態様E1~E12、若しくはE47~E49、又はE55~E66、E81若しくはE82のいずれか1つ記載の有機濃縮物組成物と
を含むキット。
【0103】
E54.a.及びb.が、患者に投与される直前に互いに混合されることが意図される、実施態様E53記載のキット。
【0104】
E55.
a.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩と、
b.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤と、
c.ゼリー化に対する安定剤と
を含む有機濃縮物組成物。
【0105】
E56.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩を含む、実施態様E55記載の有機濃縮物組成物。
【0106】
E57.化合物Aが、遊離分子である、実施態様E55又はE56記載の有機濃縮物組成物。
【0107】
E58.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤が、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、卵レシチン(例えば、Lipoid E 80 S)、大豆レシチン(例えば、Lipoid S 75)及びオレイン酸ナトリウム、好ましくは、DMPGナトリウム塩から選択される、実施態様E55~E57のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0108】
E59.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤が、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールのナトリウム塩若しくはアンモニウム塩、卵レシチン(例えば、Lipoid E 80 S)、大豆レシチン(例えば、Lipoid S 75)、又は、好ましくは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールナトリウム塩である、実施態様E58記載の有機濃縮物組成物。
【0109】
E60.ゼリー化に対する安定剤が、ポリマー又は電解質である、実施態様E55~E59のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0110】
E61.ゼリー化に対する安定剤が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニン、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、並びに硫酸アンモニウムから選択される電解質でる、実施態様E60記載の有機濃縮物。
【0111】
E62.ゼリー化に対する安定剤が、塩化ナトリウムである、実施態様E61記載の有機濃縮物組成物。
【0112】
E63.ゼリー化に対する安定剤が、PEG300及びPEG400から選択されるポリマー、好ましくは、PEG300である、実施態様E60に記載の有機濃縮物組成物。
【0113】
E64.PEG300が、濃縮物組成物の5%w/w~30%w/w、特に、15%w/w~20%w/w、より特には、15%w/wで存在する、実施態様E63記載の有機濃縮物組成物。
【0114】
E65.溶媒を更に含む、実施態様E55~E64のいずれか記載の有機濃縮物組成物。
【0115】
E66.更に、プロピレングリコール及びエタノールから選択される溶媒を含み、特に、プロピレングリコール及びエタノールの両方を含む、実施態様E65記載の有機濃縮物組成物。
【0116】
E67.実施態様E1~E12、若しくはE47~E49、又はE55~E66のいずれか記載の有機濃縮物組成物とリポソーム性ビヒクルとの混合物から得られる医薬組成物であって、該リポソーム性ビヒクルが、リン脂質及び浸透圧調整剤を含み、特に、該浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaClから選択される医薬組成物。
【0117】
E68.リン脂質が、式
【化6】
(式中、
・R
1は、C
10~C
24アシルを表し;
・R
2は、C
10~C
24アシルを表すか、或いはR
2は、水素又はC
10-C
20アシルを表し;
・R
3は、水素、2-トリメチルアミノ-1-エチル、2-アミノ-1-エチル、C
1~C
4アルキル、カルボキシによって置換されているC
1~C
5アルキル、カルボキシ及びヒドロキシによって置換されているC
2~C
5アルキル、カルボキシ及びアミノによって置換されているC
2~C
5アルキル、イノシトール基、又はグリセリル基を表す)
で示されるもの、又はこのような化合物の塩である、実施態様E67記載の医薬組成物。
【0118】
E69.リン脂質が、卵レシチン、大豆レシチン又は合成リン脂質から選択される、実施態様E67記載の医薬組成物。
【0119】
E70.リン脂質が、卵レシチン、大豆レシチン、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPCから選択される、実施態様E67~E69記載の医薬組成物。
【0120】
E71.リン脂質が、少なくとも75%のホスファチジルコリン又は少なくとも70%のホスファチジルコリンを含む卵レシチン又は大豆レシチンから選択され、特に、Lipoid E 80 Sから選択される、実施態様E67、E69又はE70のいずれか記載の医薬組成物。
【0121】
E72.浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaCl、特に、スクロース又はグリセリンから選択される、実施態様E67~E71のいずれか記載の医薬組成物。
【0122】
E73.リポソームに加えて、
a.2-{[5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩と、
b.ゼリー化に対する安定剤と
を含むリポソーム医薬組成物。
【0123】
E74.
a.実施態様E2~E3のいずれか記載の化合物Aと、
b.実施態様E60~E63のいずれか記載のゼリー化に対する安定剤と
を含む、実施態様E73記載のリポソーム医薬組成物。
【0124】
E75.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤を更に含む、実施態様E74記載のリポソーム医薬組成物。
【0125】
E76.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤が、E4~E6又はE58又はE59に記載のとおりである、実施態様E75記載のリポソーム医薬組成物。
【0126】
E77.溶媒を更に含む、実施態様E73~E76のいずれか記載のリポソーム医薬組成物。
【0127】
E78.溶媒が、プロピレングリコール及びエタノールから選択されるか、又は、特に、プロピレングリコール及びエタノールの両方を含む、実施態様E77記載のリポソーム医薬組成物。
【0128】
E79.実施態様E15~E19のいずれか又は実施態様E68~E71のいずれか記載のリン脂質を含む、E73~E78のいずれか記載のリポソーム医薬組成物。
【0129】
E80.浸透圧調整剤を更に含み、特に、該浸透圧調整剤が、デキストロース、グルコース、マンニトール、スクロース、ラクトース、トレハロース、グリセリン及びNaClから選択される、実施態様E73~E79のいずれか記載のリポソーム医薬組成物。
【0130】
E81.
a.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその薬学的に許容し得る塩、好ましくは、遊離分子と、
b.例えば、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、Lipoid E80S及びオレイン酸ナトリウムから選択される負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤と、
c.塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニンから選択される安定剤、好ましくは、塩化ナトリウムと
を含む有機濃縮物組成物。
【0131】
E82.
a.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物Aと、
b.例えば、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、卵レシチン(例えば、Lipoid E 80 S)、大豆レシチン(例えば、Lipoid E75)及びオレイン酸ナトリウムから選択される負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤、特に、DMPGナトリウムと、
c.例えば、
・ポリマーであって、特に、PEG300及びPEG400である、ポリマー、並びに
・電解質であって、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニン、より特には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、特に、塩化ナトリウムである、電解質
から選択されるゼリー化に対する安定剤と
を含む有機濃縮物組成物。
【0132】
E83.
a.卵レシチン、大豆レシチン、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、DMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDPPC(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)、特に、POPC(パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン)、DOPC(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)及びDMPC(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン)から選択されるリン脂質、特に、POPC、
又は少なくとも70%のホスファチジルコリンを含む卵レシチン又は大豆レシチンから選択されるリン脂質と、
b.(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸である化合物A又はその塩、好ましくは、遊離分子と、
c.負に帯電しているか又は極性のリン脂質安定剤、例えば、DMPGのナトリウム塩又はアンモニウム塩(1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロール又はジミリストイルホスファチジルグリセロール)、POPGナトリウム塩(1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DOPSナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホセリン)、DOPGナトリウム塩(1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])、DPPG(1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、DSPG(1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3[ホスホ-rac-(1-グリセロール)])のナトリウム塩又はアンモニウム塩、大豆ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、卵ホスファチジン酸(PA)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルセリン(PS)ナトリウム塩、卵ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、大豆ホスファチジルグリセロール(PG)ナトリウム塩、ホスファチジルイノシトール(PI)ナトリウム塩、Lipoid E 80 S及びオレイン酸ナトリウム、特に、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールのナトリウム若しくはアンモニウムの塩、卵レシチン又はLipoid E 80 S、好ましくは、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-rac-グリセロールナトリウム塩と、
d.例えば、
・ポリマーであって、特に、PEG300及びPEG400である、ポリマー、
・電解質であって、特に、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、並びにアルギニン、より特には、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸一水素及び二水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、特に、塩化ナトリウムである、電解質
から選択されるゼリー化に対する安定剤と
を含む医薬組成物。
【0133】
E84.水性環境において、実施態様E1、E2又はE3のいずれか記載の化合物Aを可溶化するためのプロセスであって、
a.実施態様E13~E26のいずれか記載のリポソーム性ビヒクルと、
b.実施態様E1~E12、若しくはE47~E49、又はE55~E66、E81若しくはE82のいずれか記載の有機濃縮物組成物と
を混合することを含む、プロセス。
【0134】
E85.非経口投与に好適な化合物Aの組成物を調製するためのプロセスであって、
a.実施態様E13~E26のいずれか記載のリポソーム性ビヒクルと、
b.実施態様E1~E12、若しくはE47~E49、又はE55~E66、E81若しくはE82のいずれか記載の有機濃縮物組成物と
を混合することを含む、プロセス。
【0135】
E86.患者に投与する直前に混合を行う、実施態様E84又はE85記載のプロセス。
【0136】
E87.混合及びリポソームのロードが、容器を繰り返し反転させる、特に、反転させることによって激しく振盪することによって行われる、実施態様E84、E85又はE86のいずれか記載のプロセス。
【0137】
E88.混合及びリポソームのロードが、混合物に視認される粒子がなくなるまで、a.及びb.の両方を収容している容器を反転させることによって、特に、反転させることによって繰り返し又は激しく振盪することによって行われる、実施態様E84~E87のいずれか記載のプロセス。
【0138】
E89.被験体におけるMcl-1受容体活性を調節する方法であって、治療的に有効な量の実施態様E27~E46、若しくはE50~E52、又はE67~E80、若しくはE83のいずれか記載の組成物を該被験体に投与することを含む、方法。
【0139】
E90.ガンを処置する方法であって、治療的に有効な量の実施態様E27~E46、若しくはE50~E52、又はE67~E80、若しくはE83のいずれか記載の組成物を被験体に投与することを含む、方法。
【0140】
E91.ガンが、膀胱、脳、乳房及び子宮のガン、慢性リンパ性白血病、結腸、食道及び肝臓のガン、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣ガン、非小細胞肺ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、並びに小細胞肺ガンから選択される、実施態様E90記載の方法。
【0141】
E92.ガンが、非ホジキンリンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病から選択される、実施態様E91記載の方法。
【0142】
E93.医薬として使用するための、実施態様E27~E46、若しくはE50~E52、又はE67~E80、若しくはE83のいずれか記載の医薬組成物。
【0143】
E94.実施態様E93記載のとおり使用するための医薬組成物であって、該使用が、ガンの処置における使用であり、特に、該ガンが、膀胱、脳、乳房及び子宮のガン、慢性リンパ性白血病、結腸、食道及び肝臓のガン、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣ガン、非小細胞肺ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、並びに小細胞肺ガンから選択される、医薬組成物。
【0144】
E95.ガンが、非ホジキンB細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病から選択される、実施態様E94記載のとおり使用するための医薬組成物。
【0145】
E96.ガンを処置するための医薬を調製するための、実施態様E1~E12、若しくはE47~E49、又はE55~E66、E81若しくはE82のいずれか記載の有機濃縮物組成物の使用。
【0146】
E97.ガンを処置するためのリポソーム医薬を調製するための、実施態様E96記載の使用。
【0147】
E98.ガンが、膀胱、脳、乳房及び子宮のガン、慢性リンパ性白血病、結腸、食道及び肝臓のガン、リンパ芽球性白血病、急性骨髄性白血病、リンパ腫(例えば、非ホジキンB細胞リンパ腫及びびまん性大細胞型B細胞リンパ腫)、黒色腫、悪性血液疾患(例えば、骨髄異形成症候群)、骨髄腫(例えば、多発性骨髄腫)、卵巣ガン、非小細胞肺ガン、前立腺ガン、膵臓ガン、並びに小細胞肺ガン、特に、非ホジキンB細胞リンパ腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群、慢性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病から選択される、実施態様E96又はE97記載の使用。
【0148】
E99.
・実施態様E27~E46、若しくはE50~E52、又はE67~E80、若しくはE83のいずれか記載の医薬組成物と、
・同時に、逐次的に又は別々に使用するための、1つ以上の治療的活性剤と
を含む組み合わせ物。
【0149】
E100.E1、E2又はE3記載の化合物Aと、ゼリー化に対する安定剤とを含む組成物。
【0150】
特定の実施態様では、例えば、以下の基準に従って患者を選択する:
【0151】
主な組み入れ基準:
・年齢≧18歳
多発性骨髄腫の患者については:
・組織学的に確認されたリンパ腫又は確認された多発性骨髄腫。多発性骨髄腫患者についての特定の実施態様では、多発性骨髄腫は再発及び/又は標準的処置に対して抵抗性である。
・染色体異常を特徴とする
・測定可能な疾患:
-血清Mタンパク質≧0.5g/dl
-尿Mタンパク質≧200mg/24時間、又は
-血清遊離軽鎖(FLC)レベル≧100mg/L involved FLC
組織学的に確認されたDLBCLの患者については:
・蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)又は免疫組織化学的検査(IHC)によって明らかになった、確認されたMYC陽性
・測定可能な疾患(ホジキン及び非ホジキンリンパ腫の、初期評価、病期分類及び効果判定のための推奨に従う)
【0152】
主な除外基準
1.以下を含む慢性肝疾患の既往歴
・活動性のB型又はC型の肝炎感染
・原発性胆汁性肝硬変
・肝硬変、又は
・門脈圧亢進症
2.慢性膵炎の病歴
3.腫瘍崩壊症候群(TLS)の高いリスクを有する患者
4.肺炎、間質性肺疾患又は炎症性腸疾患の病歴又は診断
5.以下のうちのいずれかを含む、心機能の悪化又は臨床的に重大な心疾患:
・多関門集積スキャン(MUGA)又は心エコー(ECHO)によって決定した場合、左室駆出率(LVEF)<50%
・Fredericia補正されたQT(QTcF)>450ms(男性患者)、>460ms(女性患者)
6.研究者の意見で、個体の安全性に影響を与えるか又は試験結果の評価を損ない得る、重篤な及び/又は管理不良の病状
7.Mcl-1阻害剤による前処置
8.(用量拡大に登録されている患者については)Bcl-2阻害剤による前処置
9.原発性CNS腫瘍又はCNS腫瘍病変を有する患者
【0153】
本明細書中に記載されるリポソーム性ビヒクルは、最大1000nm、好ましくは、最大300nm、特に、最大100nmの平均粒径を有するリポソームが得られる任意の生成方法によって生成され得る。本明細書中に記載されるリポソームサイズは、得られる平均粒径及び多分散性指数について記載しているISO 13321に従う光子相関分光法を使用するZ平均直径を指す。典型的な生成方法は、分散させ、高剪断混合し、そして、その後に高圧ホモジナイズすることを含み、そして、このような方法は当業者に周知である。
【0154】
有機濃縮物は、化合物Aが溶解している均質な溶液が得られるまで成分を混合することによって形成される。
【0155】
投与するための組成物を形成するために、濃縮物をリポソーム性ビヒクルに添加し、次いで、例えば繰り返し反転させるか又は激しく振盪することによって直ちに混合する。或いは、かき回しながらビヒクルに濃縮物を添加してもよい。
【0156】
有利なことに、本発明の具体的な実施態様では、透明な組成物を生成するために、投与直前に化合物Aと混合することができるリポソーム性ビヒクルが提供される。具体的には、リポソーム性ビヒクルを本明細書中に記載される化合物Aを含む有機濃縮物と混合することによってこれが達成される。投与前に化合物Aが可溶化したことを確認するために、透明であることが望ましい。これは、目視検査によって判定してもよいし、或いは脂質濃度に依存して最も適切な波長(例えば、660nm)で又は1cmの透過セル若しくはキュベットを用いて透明度を測定する。本発明の態様では、投与するための医薬組成物(化合物Aがロードされたリポソーム)は、リポソーム性ビヒクルと比べて、透過率が30%超よりも悪くてはならず、好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。
【0157】
本発明の好ましい実施態様では、リポソーム性ビヒクルは、化合物Aと混合された場合、特に、化合物Aが本明細書中に記載される有機濃縮物として存在する場合、化合物Aのリポソームへのロードを最大化することができる。
【実施例】
【0158】
本明細書中における実施例では、「化合物A’」は、(2R)-2-{[(5Sa)-5-{3-クロロ-2-メチル-4-[2-(4-メチルピペラジン-1-イル)エトキシ]フェニル}-6-(4-フルオロフェニル)チエノ[2,3-d]ピリミジン-4-イル]オキシ}-3-(2-{[2-(2-メトキシフェニル)ピリミジン-4-イル]メトキシ}フェニル)プロパン酸(塩ではない)を意味する。
【0159】
実施例1:化合物A及び塩化ナトリウムを含む有機濃縮物
【表1】
【0160】
バルク溶媒の調製:
注射用水、続いて無水エタノール、次いでDMPG-Naを容器に仕込み、撹拌して、DMPG-Na粉末を湿潤させる。次いで、プロピレングリコールの約4分の1を添加し、混合物を撹拌し、そして、加温する。撹拌を続け、そして、温度を90分間又はDMPG-Naが完全に溶解するまで維持する。完全に溶解した後、次いで混合物を室温まで冷却し、プロピレングリコールの残りを添加し、そして、均質に見えるようになるまで混合物を撹拌する。次いで、塩化ナトリウムを添加し、そして、90分間又は塩化ナトリウムが完全に溶解するまで混合物を加温する。得られた溶液を室温まで冷却する。
【0161】
有機薬物濃縮物の調製:
上記のとおり調製したバルク溶媒を容器に仕込み、化合物Aを添加し、そして、混合物を撹拌して、化合物Aの粉末を湿潤させる。60分間又は化合物Aが完全に溶解するまで撹拌を続ける。Kleenpak(商標)Capsules KA3DFLP1G又はKA3DFLP1における滅菌0.2μm Pall Fluorodyne(登録商標)II DFL Membraneで濃縮物を濾過する。濾過後、得られた有機薬剤濃縮物(61.75mg/mL)を、滅菌され、パイロジェン除去されたバイアルに移す。
【0162】
【0163】
希釈用のリポソーム性ビヒクルの調製
レシチン(ePL)は酸化しやすいので、技術的に可能な場合はいつも酸素を除去し、そして、好ましくは、窒素で表面を覆うことによって材料を保護すべきである。
【0164】
注射用水、続いて、L-ヒスチジンを容器に仕込み、そして、L-ヒスチジンが完全に溶解するまで撹拌する。スクロースを仕込み、そして、スクロースが完全に溶解するまで混合物を撹拌する。pHを調べ、そして、1N 塩酸又は1N 水酸化ナトリウム溶液を添加することによって6.5±0.2に調整し、次いで、均質になるまで溶液を撹拌する。次いで、Lipoid E80Sを容器に添加する。均質な分散液が得られるまで混合物を撹拌する。
【0165】
インライン混合
上で得られた分散液を撹拌し、そして、流速2~5L/分に調節されたインラインホモジナイザ(Kinematica MEGATRON MT-SV 1-45 M)を介して別の容器に移す。供給元の容器が空になるまでインライン混合を続ける。
【0166】
高圧ホモジナイズ
上で得られたレシチン分散液を収容している容器を、循環ループにおける高圧ホモジナイザ(Avestin Emulsiflex C160)に接続し、そして、300rpmで撹拌しながら分散液を2~8℃まで冷却する。容器を0.5barに加圧した後、ポンプを最高速度に設定し、そして、系内の空気を除去するための開放弁を備えた高圧ホモジナイザを準備する。次いで、高圧ホモジナイザのポンプを60Hzに、流速を130~140L/時に、そして、圧力を950~1050barに設定し、そして、高圧ホモジナイズを19パス実施し(約7.5~8時間)、次いで、20回目のパスにおいて、高圧ホモジナイザを介して容器の内容物を別の容器に移す。
【0167】
PVDF(二フッ化ポリビニリデン膜)0.2μmフィルタを用いて予濾過を実施し、そして、濾過した溶液を室温で保存する。次いで、PVDF滅菌等級フィルタで溶液を滅菌濾過し、次いで、乾式熱処理によってパイロジェン除去した滅菌バイアルに移す。
【0168】
この水性製剤は、そのまま注射若しくは点滴してもよいか、又は点滴前に点滴溶液(例えば、5%グルコース)で希釈してもよい。
【0169】
実施例3A:点滴用製剤
実施例1から得られた有機濃縮物を、以下のとおり、実施例2から得られたリポソーム性ビヒクルと混合する。混合の少なくとも30分前に冷蔵庫から取り出すことによって、実施例2から得られたリポソーム性ビヒクルを室温(即ち、20~25℃)に加温する。患者に投与される活性リポソーム性ビヒクルの総体積は、以下の表3A.1に示すとおり求めることができる。リポソーム性ビヒクルは、小さなリポソームを含有し、可溶化ビヒクルとして使用され、化合物Aを含む有機濃縮物と混合された後に水性環境において化合物Aを溶解させることができる。
【表3】
【0170】
化合物A有機濃縮物 1バイアル(3mL中 化合物A 185.25mg[超過量を含む])をリポソーム性ビヒクル 1バイアル(21mL中 Lipoid E80S 2.1グラム)と合わせて、合計で化合物A 180mgを含有する、化合物Aを含む活性リポソーム性ビヒクル 24mLの抜き取り可能な体積を得る。1人の患者につき、より多くのバイアルを調製する必要がある場合もある。患者に投与するのに十分な、適切なバイアル数の活性リポソーム性ビヒクルを調製しなければならない。
【0171】
化合物A有機濃縮物(3mL)を無菌的かつ正確に抜き取り、そして、リポソーム性ビヒクル 1バイアルに迅速に注入し、そして、該バイアルを40回以上反転させることによって直ちに混合する。初期の曇りは消失する。得られた活性リポソーム性ビヒクル製剤は、希釈用のリポソーム性ビヒクルと比べてわずかに濁っている。該製剤は、混合後に視認される粒子があってはならない。化合物A 180mg超を患者に投与する必要がある場合、必要に応じて添加及び混合工程を繰り返す。
【0172】
次いで、輸液バッグから取り出されるグルコース溶液の総体積を計算する(例えば、Glucose 5% Ecobag又はGlucose 5% Ecoflacを用いて)。この体積は、表3A.1に与えられる活性リポソーム性ビヒクルの体積と同じである。計算された体積のグルコース溶液を無菌的かつ正確に輸液バッグから抜き取る(そして、廃棄する)。
【0173】
計算された体積の活性リポソーム性ビヒクル(化合物Aを含む)を無菌的かつ正確に1本以上のバイアルから抜き取り、上で調製したグルコースバッグに注入し、そして、少なくとも10回該バッグを反転させることによって十分に混合する。180mgの倍数よりも少ない化合物Aが必要な場合、バイアル中の残留物を廃棄する必要がある。
【0174】
点滴の準備が整った、調製された輸液バッグを、粒子状物質について目視検査しなければならない。該バッグの内容物は、化合物Aの濃度に依存して乳白色に見えたり、わずかに濁っていたりする場合がある。粒子が視認される場合、該バッグを廃棄し、そして、新たな輸液バッグを調製する。
【0175】
化合物Aはわずかに感光性であるので、輸液バッグを光保護カバー内に置く。
【0176】
手順の一例は以下のとおりである。新たに調製した輸液バッグを室温(即ち、20~25℃)で最長5時間+冷蔵庫条件(2~8℃)下で最長8時間保存し、これは実際の点滴時間を含む。室温20~25℃で維持される場合、輸液バッグ中で点滴用希釈溶液を調製し、そして、調製後2時間以内に点滴を開始し、制御された室温で投与してもよい。静脈内注射用溶液を直ちに投与しない場合、8時間未満だけであれば該溶液を2~8℃で冷蔵してもよい。調製された溶液を投与前に冷蔵する場合、該バッグを投与前に室温にしてもよい。必要な濃度の化合物A原薬を含有する点滴製剤は、輸液ラインと、輸液バッグの後にカテーテルにできる限り近接して配置される1.2μmインラインフィルタとを通じて点滴してもよい。
【0177】
実施例3B:点滴用製剤
実施例3Aと同じ手順を使用して、実施例2から得られたリポソーム性ビヒクルを以下の組成の有機溶液と混合した:
【0178】
【0179】
【0180】
実施例4:週1回静脈内投与スケジュールを使用する、ヌードラットにおけるMV4;11急性骨髄性白血病異種移植片モデルにおける化合物Aリポソーム製剤の有効性
【0181】
【0182】
表4.2の成分及び実施例2において本明細書中に記載された方法を使用してリポソーム性ビヒクルを得た。1:32.33(v/v)比で有機溶液(表4.1)をリポソーム性ビヒクルと混合し、そして、10mL/kgでビヒクル群に投与するために使用した。
【0183】
この試験では、MV4;11ガンを有するヌードラットにおける、i.v.点滴後のリポソームベースの製剤中の化合物Aの抗腫瘍活性及び忍容性を評価した。雌のCrl:NIH-Foxn1rnuヌードラット(Charles River)で実験を行った。
【0184】
患者由来の親MV4;11細胞からMV4;11 lucヒト急性骨髄性白血病(AML)細胞株を樹立した。親MV4;11細胞は、DSMZセルバンクから入手した。MV4;11 luc細胞を全てのインビボ試験で使用し、空気中 5%CO2の雰囲気において、37℃、10%FCS(GE health care life sciences、# H30071.03)、4mM L-グルタミン(BioConcept Ltd. Amimed、# 5-10K00-H)、0.6mg/mL ジェネテシン(Life Technologies、# 10131-027)を添加したRPMI-1640培地(BioConcept Ltd. Amimed, # 1-41F01-I)中で培養した。細胞を、0.2~1.1×106細胞/mLで維持した。MV4;11 luc異種移植片を樹立するために、細胞を収集し、HBSS(Gibco, # 14175)に再懸濁させ、そして、Matrigel(BD Bioscience、#354234)と混合(1:1 v/v)した後、1.0×107個の細胞を含有する200μLを、イソフルランで麻酔した動物の右側腹部に皮下注射した。細胞を接種する24時間前に、γ線照射機を用いて2分間にわたって全ての動物に5Gyを照射した。
【0185】
細胞接種後、定期的に腫瘍成長をモニタリングし、腫瘍が適切な体積に達した場合、動物を処置群に無作為化した。腫瘍サイズ(mm3)を以下から計算した:(L×W2×π/6)(式中、W=腫瘍の幅であり、L=腫瘍の長さである)。
【0186】
ガンを有する動物を、処置群(n=5)(平均腫瘍体積が、約450mm3)に入れた。次いで、10及び30mg/kgの用量のビヒクル又は化合物A製剤で動物を処置した。
【0187】
有機薬物濃縮物(実施例1に記載)及びビヒクル(本明細書中における実施例2に記載)を使用して、化合物Aをリポソームベースの製剤に配合した。1:7.236(v/v)で実施例1及び2の生成物を混合し、次いで、10mg/kgの用量については1:6.50(v/v)、30mg/kgの用量については1:1.50(v/v)で5%グルコースを添加することによりこの混合物を更に希釈することによって、投与溶液を形成した。
【0188】
10mL/kgで側部尾静脈に15分間i.v.点滴することによって、週1回(QW)、ビヒクル及び化合物Aを投与した。点滴するために、約20分間イソフルラン/O2で動物を麻酔した。1週間あたり2~3回、キャリパーを用いて腫瘍体積を測定した。1週間あたり2~3回動物を計量し、そして、何らかの有害作用の明らかな徴候について頻繁に調べた。
【0189】
GraphPad Prism 7.00(GraphPad Software)を用いて、腫瘍及び体重の変化データを統計的に解析した。データの分散が正規分布していた場合、処置群対対照群を比較するために事後ダネット検定を伴う一元配置分散分析を用いてデータを解析した。群内比較には事後チューキー検定を使用した。そうでない場合、クラスカル・ワリス順位検定事後ダンを使用した。適用可能な場合、結果を平均±SEMとして提示する。
【0190】
有効性の尺度として、以下に従って実験の最後に%T/C値を計算する:
(Δ腫瘍体積処置/Δ腫瘍体積対照)*100。
【0191】
以下に従って腫瘍縮小を計算した:
-(Δ腫瘍体積処置/Δ腫瘍体積開始時処置)*100
(式中、Δ腫瘍体積は、評価日における平均腫瘍体積-実験の開始時における平均腫瘍体積を表す)。
【0192】
結果:有効性及び忍容性
リポソームベースの化合物A製剤は、点滴投与後に有意な用量依存的有効性を示した。10mg/kg QW点滴投与は、1回目の投与後に最大の抗腫瘍応答(処置開始後3日目に61%縮小)を誘導し、そして、その後の各投与では応答が弱まり、時間と共に腫瘍体積が徐々に増加した。24日目(ビヒクル群における腫瘍体積測定の最終日)、10mg/kg QW投与後の縮小は6%であった(ビヒクル群と比較してp<0.05)。30mg/kg 化合物Aリポソーム製剤をQWで2週間にわたって点滴した後、処置開始後13日目に全てのMV4;11異種移植片において完全縮小(CR)が達成された。完全縮小は全ての動物において21日目まで維持され、その後、3頭の動物で腫瘍の再成長が観察され、そして、2頭の動物はCRに達した後更に60日間腫瘍成長を示さなかった。30mg/kgの処置開始後25日目、平均腫瘍体積は92%の縮小を示した(ビヒクル群と比較してp<0.05)。体重変化に基づいて、リポソーム製剤の両投与レジメンは忍容性が良好であった。結果を
図1及び
図2に示す。
【0193】
実施例5:実施例1の組成物の安定性データ
最長3ヶ月間の保存期間及び光安定性を試験することによって、実施例1の組成物、3.0mL中 化合物A 185.25mgの安定性について調べた。
【0194】
5.1.5℃/周囲RH(相対湿度)における試験
5℃/周囲RHの条件でバイアル内において3ヶ月間保存している間、実施例1の組成物、化合物A 185.25mg/3.0mLは物理的及び化学的に安定であることが観察された。化学的又は物理的な特性に著しい変化は観察されなかった。
【0195】
5.2.25℃/60%RHにおける試験
25℃/60%RHの条件でバイアル内において3ヶ月間保存している間、実施例1の組成物、化合物A 185.25mg/3.0mLは物理的に安定であることが観察された。3ヶ月間、著しい変化は観察されなかった。望ましくないアトロプ異性体のレベルの増加が観察された。全ての結果は仕様限界内にとどまっていた。
【0196】
5.3.40℃/75%RHにおける試験
40℃/75%RHの条件でバイアル内において3ヶ月間保存している間、実施例1の組成物、化合物A 185.25mg/3.0mLは物理的に安定であることが観察された。時間と共に望ましくないアトロプ異性体のレベルが増加したことを除いて、3ヶ月間、著しい変化は観察されなかった。1.5ヶ月後、全ての結果は仕様限界内にとどまっていた。
【0197】
5.4.光安定性
バイアル内における光安定性試験中、実施例1の組成物、化合物A 185.25mg/3.0mLは、化学的にも物理的にも安定ではないことが観察された。光曝露から保護されたサンプルについての全ての結果は、仕様限界内であることが観察された。
【0198】
結論
5℃/周囲RH及び25℃/60%RHでは3ヶ月間、そして、40℃/75%RHでは1.5ヶ月間、満足のいく安定性データが得られた。入手可能な安定性データは、実施例1の組成物、化合物A 185.25mg/3.0mLの満足のいく安定性を示す。光からの保護は必要であろう。
【0199】
実施例6:実施例2の組成物の安定性データ
最長3ヶ月間の保存期間及び光安定性を試験することによって、実施例2の組成物、ビヒクル(21.7mL)の安定性について調べた。
【0200】
6.1.5℃/周囲RHにおける試験
初期結果と比較して、5℃で最長3ヶ月間保存した容器の外観、内容物の外観及びリン脂質の定量において変化は観察されなかった。pHについても、粒径についても著しい変化は観察されなかった。
【0201】
6.2.25℃/60%RHにおける試験
初期結果と比較して、25℃で最長3ヶ月間保存した容器の外観及び内容物の外観において変化は観察されなかった。初期pH6.6は、それぞれ、3ヶ月間でpH6.3に低下した。最長3ヶ月間、光子相関分光法による粒径及びリン脂質の定量について著しい変化は観察されなかった。肉眼では見ることのできない粒子状物質が増加したが、値は許容可能な範囲内にとどまっていた。
【0202】
6.3.40℃/75%RHにおける試験
初期結果と比較して、40℃で最長3ヶ月間保存した容器の外観及び内容物の外観において変化は観察されなかった。pHについてはわずかな変化が観察され、初期のpH6.6から、40℃で3ヶ月間保存後には6.3にわずかに低下していた。
【0203】
40℃における最長3ヶ月間保存で、光子相関分光法による粒径及びリン脂質の定量について著しい変化は観察されなかった。肉眼では見ることのできない粒子状物質試験において著しい違いが観察された。しかし、これら条件は、5℃の長期間保存と比較して、ストレス条件であると考慮される。
【0204】
6.4.光安定性
ガラスバイアル内の生成物を用いて光安定性試験を実施し、そして、ダンボール箱内で光から保護されたバイアルと比較した。光安定性試験では、保存後の容器の外観、内容物の外観、溶液のpH、視認される粒子状物質及びリン脂質の定量のパラメータにおいて著しい変化は観察されなかった。
【0205】
結論
5℃の長期条件及び25℃/60%RHで最長3ヶ月間の加速条件について、満足のいく安定性データが示された。40℃/75%RHで最長1.5ヶ月間の加速条件について、満足のいく安定性データが示されたが、肉眼では見ることのできない粒子状物質の結果が律速である。容器の外観、内容物の外観及び粒径については、全ての保存条件で最長3ヶ月間、変化は観察されなかった。pH値は安定であり、そして、全ての保存条件について仕様範囲内であった。5℃/周囲RHの長期条件において満足のいく安定性データが示された。ビヒクルは、光安定性であると考慮される。
【0206】
実施例7:インビトロ放出アッセイ、化合物A:大きな多層ベシクル(MLV)として存在する過剰の脂質を含むアクセプタへの、小さなリポソームからの化合物Aの放出
この実験の目的は、小さな単層ベシクル(SUV;ここでは薬物担体系として使用される、実施例3Aを参照)から、卵リン脂質からなり、放出される薬物の親油性アクセプタとして使用される大きな多層ベシクル(MLV)への化合物Aの放出速度を調べることであった(Shabbits J. A., Chiu G. N. and Mayer L. D. “Development of an in vitro drug release assay that accurately predicts in vivo drug retention for liposome-based delivery systems” Journal of Controlled Release 2002, 84(3), 161-170を参照)。
【0207】
アクセプタとして多層ベシクルを使用する放出試験の準備及び性能
【0208】
MLVの調製及び特性評価
膜水和法を使用することによって多層ベシクルを調製した。簡潔に述べると、卵リン脂質(Lipoid E80S)を量り取り、そして、確実に全成分の均質な混合物にするために有機溶媒(4:1v/v EtOH/DCM)に完全に溶解させた。
【0209】
次に、ロータリーエバポレーション(第1の工程:200mbar、50℃、2時間;第2の工程:30mbar、50℃、45分間)を用いて有機溶媒を除去して、均質な脂質膜を生成した。有機溶媒を確実に完全に除去するために、フラスコを窒素でフラッシングした。次に、リン酸緩衝生理食塩水(PBS、pH7.4)を用いて膜を再水和してMLVを生成し、そして、再水和の完了に際し、MLVを15分間超音波処理に曝した。
【0210】
SUVと同じ緩衝系に再懸濁したMLVを得るために、懸濁液を14,000gで10分間遠心分離し、上清(PBS)を除去し、そして、スクロースヒスチジン緩衝剤によって置き換えた。最後に、MLVを新たな媒体に確実に完全に再分散させるために混合物を十分にボルテックスした後、放出実験を開始した。
【0211】
PBSを用いて1:5000希釈した後、HELOS KR(SympaTec)システムを使用するレーザー回折を用いて、MLV製剤をそのサイズに基づいて特定評価して、x
10、x
50及びx
90の値を与えた。
x
10=積算ふるい下分布の10%に対応する粒子寸法、x
50=中央粒子寸法(即ち、粒子のうちの50%がより小さく、そして、粒子のうちの50%がより大きい)、及びx
90=積算ふるい下分布の90%に対応する粒子寸法。
【表8】
【0212】
MLVを使用する放出試験
MLVを使用する放出試験については、全ての実験に以下の設定を使用した:
栓のついた25mL三角フラスコにおいて、撹拌下(500rpm)、様々な比(1:40、1:100、1:200、1:500;SUV:MLV v/v)で、SUV(ドナー)をMLV(アクセプタ)と混合した。サンプル 1mLを様々な時点で採取し、そして、更に加工するために、直ちに遠心分離(14’000rpm、10分間)して、SUVからMLVを分離した。本明細書中における
図3は、MLVベースの放出アッセイの原理を示す概略図である。
【0213】
次に、吸引を介してMLV部分を除去し、そして、HPLCサンプル調製のために、SUV部分 50μLをACN:H2O 450μLと混合した。次いで、サンプルを遠心分離(14’000rpm、10分間)し、0.22μmフィルタを用いて上清を濾過し、そして、分析のためにHPLCに注入した。
【0214】
化合物Aの高性能液体クロマトグラフィ法
以下の機器設定及び溶媒系を含む、UV検出を備える高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)システムを使用した:
機器 Shimadzu LC2010C HT
カラム Waters Symmetry Shield、RP18、3.5μm、3×150mm
カラム条件 45℃
移動相 A)ACN:H
2O:FA:NH
4OH(20:80:1:0.4)
B)ACN:H
2O:FA:NH
4OH(80:20:1:0.4)
溶媒勾配 多段階勾配
溶媒流速 1.0mL/分
圧力 最高270bar
自動サンプル オートサンプラーを用いてサンプルを注入した。
UV検出 210nm~245nmに設定されたHPLC-UV検出器
【表9】
【0215】
MLVを使用する化合物A放出アッセイ
アクセプタコンパートメントとしてMLVを使用して化合物Aの放出を測定した。ここでは、化合物AがロードされたSUV(7.5mg/mL)をこれらMLVに様々な比(v/v)で添加した。
図4は、様々なSUV:MLV比(v/v)におけるSUVから100% ePLへの化合物Aの放出プロファイルを示す。
【0216】
注記:全てのMLV放出実験について、MLVの代わりにスクロースヒスチジン緩衝剤で、7.5mg/mL ロードSUVを1対40、1対100、1対200、又は1対500(v/v)希釈することによって、最高濃度(maxC=100%)を得た。
【0217】
この種の実験設定を使用して、SUVからアクセプタMLVへの非常に迅速な化合物Aの放出が観察された。ここでは、1対40希釈の場合、わずか2分後に、適用された化合物Aの初期量のわずか~44%しかサンプルのSUV部分で検出できなかった。したがって、この時点で既に~60%が放出されたか又はアクセプタMLV部分に移動していた。更に、希釈係数を増大させただけで(1:100、1:200、1:500 SUV:MLV v/v)、薬物の放出が加速及び増加したが、その理由は、t=2分において1対100希釈は~70%、1対200希釈は~80%の放出を示し、そして、1対500希釈では、t=2分において薬物の総量のほぼ90%がSUV中でもはや検出することができず、したがって、アクセプタコンパートメントに放出されていたためである。
【0218】
結論
わずか2分後に最高90%の薬物が放出される、化合物Aの迅速放出プロファイルが示された。このデータは、リポソームが、過剰の脂質の存在下で封入された化合物Aを物理的に保持しないが、インキュベート中に存在する全ての脂質にわたる化合物Aの迅速な再分布が存在することを示す。インビボにおいて、同等の挙動が予測される。この製剤は、化合物Aの有効な可溶化と共に、化合物Aの望ましい迅速放出プロファイルとの特に好ましいバランスを提供する。
【0219】
実施例8:化合物A及びPEG300を含む有機濃縮物組成物、変形例1
【表10】
【0220】
実施例1と同様の方法を用いて又は当業者に周知の方法を用いて、組成物を製造することができる。
【0221】
実施例9:化合物A及びPEG300を含む有機濃縮物組成物、変形例2
【表11】
【0222】
実施例1と同様の方法を用いて又は当業者に周知の方法を用いて、組成物を製造することができる。
【0223】
実施例10:化合物A及びPEG300を含む有機濃縮物組成物、変形例3
【表12】
【0224】
実施例1と同様の方法を用いて又は当業者に周知の方法を用いて、組成物を製造することができる。
【0225】
参照例11:ゼリー化に対する安定剤を含まない、化合物Aを含む有機濃縮物
【表13】
【0226】
実施例1と同様の方法を用いて又は当業者に周知の方法を用いて、組成物を製造することができる。
【0227】
実施例12:実施例1、8~10の有機濃縮物の物理的安定性試験
2つの別々の方法:a)シーディング(seeding)に対する抵抗性、及びb)2℃における250rpmでの連続撹拌下の探索的安定性を用いて、物理的安定性試験を評価した。
【0228】
a.ゼリー化した製剤(化合物A:60mg/mL、DMPG:4.0mg/mL、プロピレングリコール 851mg/mL、エタノール:94mg/mL:この溶液は、2℃において撹拌下で保存した場合にゼリー化した) ~1μLを、実施例1、8及び9の澄明な濃縮物に添加することによって、シーディング実験を実施した。サンプルを10秒間ボルテックスし、そして、2~8℃で一晩、冷蔵庫で保存した。実施例1、8及び9は、シーディングした際、化合物Aがゼリー化を示さなかった。
【0229】
B.各有機濃縮物 2mLをガラス管に入れ、そして、2℃において250rpmで均質に撹拌することによって、連続撹拌下で探索的安定性実験を実施した。以下の表に示すとおり、10日間の間、実施例1、8~10に記載の製剤でゼリー化は生じなかった。13日後、実施例1の組成物はゼリー化していたが、実施例8~10に記載の製剤は安定なままであった、即ち、澄明な溶液であった。
【表14】
【0230】
有利なことに、PEG300を含む製剤は、シーディングに対する抵抗性と共に、上記撹拌実験においてゼリー化にも抵抗性を有していた。実施例1のゼリー化は、適切な保存温度を選択することによって、例えば、室温で保存することによって管理することができる。
【0231】
実施例13:実施例1、8~10の濃縮物組成物を使用するリポソームのロード
実施例3Aに記載のアプローチと同じアプローチを使用して、23.7mLのスケールでリポソームのロードを試験した。
【0232】
実施例8~10の有機濃縮物は、実施例1と同等のリポソームロード特性を示した。実施例8~10から、実施例1から得られたものと同等の濁度を有するリポソーム製剤が得られた。
【表15】
【0233】
実施例8及び実施例9のリポソームロードを促進するために、19Gの針を用いたロードについて調べ、そして、21Gの針と比較した。19Gの針を使用した結果、21Gの針による注入と比較して、わずかに小さなサイズの粒子が生じ、そして、濁度がわずかに低くなった。
【0234】
実施例14:プラセボ有機濃縮物製剤の物理的安定性
プラセボ製剤(化合物Aを含まない)を、製剤成分において生じ得る沈殿を加速させ得る極限条件である-20℃で試験した。下記プラセボ有機濃縮物の物理的安定性を最長17日間にわたって調べた。
【表16】
【表17】
【0235】
実施例1のプラセボ組成物で沈殿が観察された。実施例8及び10のプラセボ組成物は澄明のままであり、そして、実験中沈殿は観察されなかった。
【0236】
実施例15:実施例1、8及び9の活性有機濃縮物の化学的安定性
実施例1、8及び9の製剤中の活性化合物の化学的安定性を試験し、特に、酸化的分解から生じる不純物のレベル及び望ましくないアトロプ異性体の形成について調べることを目的とする。
【0237】
HPLCによる同定、アッセイ及び分解生成物
原理 イオン対化及びUV検出を伴うRP HPLC法
試薬
アセトニトリル 勾配等級、例えば、Merck LiChrosolv No. 100030
エタノール LC等級、例えば、Merck 1.00983
ギ酸 LC等級、例えば、Prolabo No. 84865.260
25%水酸化アンモニウム 分析等級、例えば、Sigma No. 09860
30%H
2
O
2
分析等級、例えば、Sigma No. 95313
水 MilliQ又はHPLC等級
希釈された水酸化アンモニウム 50.0mLメスフラスコに、25%水酸化アンモニ
ウム 2.5mLを導入し、そして、精製水でメスア
ップして完成させた。
希釈剤 エタノール
材料
ガラス器具 琥珀色のガラス器具を使用しなければならない
機器
装置 勾配溶離及びUV検出器を備えるHPLCシステム
例えば、UV検出器を備えるAgilent 1290又は等価
物
カラム Acquity BEH C18
長さ:100mm、内径:2.1mm
粒径:1.7μm
追加の機器 超音波浴、化学天秤、微量天秤
クロマトグラフィ条件
分離モード 勾配
移動相A 水+アセトニトリル+ギ酸、95+5+0.02(
v/v/v)水性画分 pH=4.9、水酸化アンモニウ
ムで調整。
ギ酸 200μLを水 950mLに添加する。希釈さ
れた水酸化アンモニウムを用いてpHを4.9に調
整する。アセトニトリル 50mLを添加する。
移動相B 水+アセトニトリル+ギ酸、5+95+0.02(
v/v/v)、水性画分 pH=4.9、水酸化アンモニ
ウムで調整。
ギ酸 200μLを水 50mLに添加する。希釈され
た水酸化アンモニウムを用いてpHを4.9に調整
する。アセトニトリル 950mLを添加する。
体積比が同じである限り、異なる体積を使用しても
よい。
【表18】
【表19】
【0238】
酸化的分解生成物は、上記製剤変形例全てにわたって少なかった。検出された望ましくないアトロプ異性体の増加は、温度及び時間に関連していたが、試験した製剤変形例によっては変化しなかった。
【0239】
目視検査では、上で試験した製剤のいずれにおいても濃縮物の色に変化はないことが明らかになった。