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  • 特許-電池および電池を形成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】電池および電池を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 12/08 20060101AFI20220316BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20220316BHJP
   H01M 4/74 20060101ALI20220316BHJP
   H01M 4/96 20060101ALI20220316BHJP
   H01M 4/88 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M4/66 A
H01M4/74 C
H01M4/96 B
H01M4/96 M
H01M4/88 C
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019568751
(86)(22)【出願日】2018-06-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-20
(86)【国際出願番号】 IB2018054301
(87)【国際公開番号】W WO2018234936
(87)【国際公開日】2018-12-27
【審査請求日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】15/629,893
(32)【優先日】2017-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(73)【特許権者】
【識別番号】514023586
【氏名又は名称】アセルサン・エレクトロニク・サナイ・ヴェ・ティジャレット・アノニム・シルケティ
【氏名又は名称原語表記】Aselsan Elektronik Sanayi ve Ticaret Anonim Sirketi
(74)【復代理人】
【識別番号】110000420
【氏名又は名称】特許業務法人エム・アイ・ピー
(74)【代理人】
【識別番号】100108501
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 剛史
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【弁理士】
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ハン、シュー-ジェン
(72)【発明者】
【氏名】ファーマー、デイモン、ブルックス
(72)【発明者】
【氏名】オウ、ダーユン
(72)【発明者】
【氏名】マウネ、ハレーム、タリク
(72)【発明者】
【氏名】アクグン、カグラ
(72)【発明者】
【氏名】アクカ、エシン
(72)【発明者】
【氏名】デミルシ、ゴクハン
【審査官】菊地 リチャード平八郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/002277(WO,A1)
【文献】特開2014-022281(JP,A)
【文献】特開2013-073765(JP,A)
【文献】特開2014-063711(JP,A)
【文献】特開2013-051169(JP,A)
【文献】国際公開第2015/153995(WO,A1)
【文献】特開2014-053270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0111730(US,A1)
【文献】国際公開第2017/013379(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/06ー12/08
H01M 4/64- 4/84
H01M 4/86- 4/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム・アノードと、
電解質と、
グラフェン・カソードの表面のところにLiを形成させるためにリチウム・イオンが前記リチウム・アノードから前記電解質を通って泳動するように、基板の上に形成された前記グラフェン・カソードと、
前記電解質中の電流コレクタと、
を備える、電池。
【請求項2】
前記電解質が、1,2-ジメトキシエタンおよびテトラエチレン・グリコール・ジメチル・エーテルからなる群から選択される溶剤を含む、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
前記電解質が、LiNOおよび(リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)からなる群から選択される溶質を含む、請求項1または2に記載の電池。
【請求項4】
リチウム・アノードと、
電解質と、
グラフェン・カソードの表面のところにLiを形成させるためにリチウム・イオンが前記リチウム・アノードから前記電解質を通って泳動するように、基板の上に形成された前記グラフェン・カソードと
前記グラフェン・カソードとセパレータとの間または前記グラフェン・カソードと前記電解質との間に配置された電流コレクタと
を備える、電池。
【請求項5】
前記電流コレクタが、ステンレス鋼およびチタンからなる群から選択される材料から形成された金属メッシュであり、前記金属メッシュが、38μmよりも小さい開口を有する、請求項4に記載の電池。
【請求項6】
前記グラフェン・カソードが、単層グラフェンおよび二層グラフェンからなる群から選択される材料である、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項7】
前記グラフェン・カソードが、1nm~2nmの厚さを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の電池。
【請求項8】
前記電流コレクタは、金属メッシュから形成され、前記グラフェン・カソードが単層または二層グラフェン材料から形成される、請求項1に記載の電池。
【請求項9】
前記電解質が、1,2-ジメトキシエタンおよびテトラエチレン・グリコール・ジメチル・エーテルからなる群から選択される溶剤を含む、請求項8に記載の電池。
【請求項10】
前記電解質が、LiNOおよび(リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)からなる群から選択される溶質を含む、請求項9に記載の電池。
【請求項11】
電池を形成する方法であって、
基板の上にグラフェン・カソードを形成することと、
リチウム・アノードを設けることと、
前記グラフェン・カソードと前記リチウム・アノードとの間に電解質を供給することと
を含み、前記電解質中に電流コレクタを設けることをさらに含む、方法。
【請求項12】
前記電解質が、1,2-ジメトキシエタンを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記電解質が、テトラエチレン・グリコール・ジメチル・エーテルを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記電解質が、LiNOおよび(リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)からなる群から選択される溶質を含む、請求項11~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記電流コレクタが、ステンレス鋼およびチタンからなる群から選択される材料から形成された金属メッシュであり、前記金属メッシュが、38μmよりも小さい開口を有する、請求項11~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
電池を形成する方法であって、
基板の上にグラフェン・カソードを形成することと、
リチウム・アノードを設けることと、
前記グラフェン・カソードと前記リチウム・アノードとの間に電解質を供給することと
を含み、前記グラフェン・カソードを形成することが、
初期表面の上にグラフェン層を堆積することと、
前記初期表面から中間表面へと前記グラフェン層を移動させることと、
前記中間表面から前記基板へと前記グラフェン層を移動させることと
を含む、方法。
【請求項17】
マスクとして前記中間表面を使用して、前記グラフェン層を前記中間表面へと移動させた後で前記グラフェン層をパターニングすることをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記初期表面が、銅から形成され、前記中間表面が、ポリ(メチル・メタアクリレート)およびエチレン・ビニル・アセテートからなる群から選択される材料から形成される、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記グラフェン・カソードが、単層グラフェンおよび二層グラフェンからなる群から選択される層である、請求項11~18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記グラフェン・カソードが、1nm~2nmの厚さを有する、請求項11~18のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に電池に関し、より詳細には、リチウム酸素電池内の薄い炭素カソードの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム・イオン電池は、家電製品、自動車、医療装置、および家庭蓄電装置などの分野で広く用いられている。リチウム・イオン・インサーション反応では、ホスト・カソードへと挿入することができるリチウム・イオンの数が、電池に蓄えるエネルギーの量を決定する。その結果として、大きなカソードが電池の蓄電容量を大きくするために必要である。したがって、役に立つエネルギー密度を提供しながら、効果的なリチウム・イオン電池をどれだけ小さく作ることができるかについての限界がある。
【0003】
リチウム酸素電池の化学的性質の重量エネルギー密度および体積エネルギー密度は、最も一般的に使用されているカソード材料のうちの1つ、LiCoO(例えば、カソード質量または体積だけに関してそれぞれ約1,095Wh/kgおよび約5,543Wh/L)よりも大きい(例えば、カソード質量または体積だけに関してそれぞれ約3,213Wh/kgおよび約7,422Wh/L)。リチウム酸素電池は、それゆえさらなる小型化に向けての道筋を示し、エネルギー容量を犠牲にせずに電池の重さおよび体積を減少させる。しかしながら、既存のリチウム酸素電池実装形態は、小型化された用途にとって体積的な不利益を依然として強いる大きな多孔質カソードを使用している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池および電池を形成する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
電池は、リチウム・アノードと、リチウム・イオンおよび酸素に対する高い溶解度を有する電解質と、基板の上に形成された薄いグラフェン・カソードとを含む。リチウム・イオンは、上記薄いグラフェン・カソードの表面のところにLiを形成させるために上記リチウム・アノードから上記電解質を通って泳動する。
【0006】
電池は、リチウム・アノードと、リチウム・イオンおよび酸素に対する高い溶解度を有する電解質と、金属メッシュから形成され上記電解質中の電流コレクタと、単層または二層グラフェン材料から基板の上に形成された薄いグラフェン・カソードとを含む。リチウム・イオンは、上記薄いグラフェン・カソードの表面のところにLiを形成させるために上記リチウム・アノードから上記電解質を通って泳動する。
【0007】
電池を形成する方法は、基板の上に薄いグラフェン・カソードを形成することを含む。リチウム・アノードが設けられ、電解質が上記薄いグラフェン・カソードと上記リチウム・アノードとの間に供給される。
【0008】
これらのおよび他の特徴および利点が、例示の実施形態の下記の詳細な説明から明らかになるだろう。この例示の実施形態は、添付の図面とともに読まれるはずである。
【0009】
下記の説明は、下記の図を参照して好ましい実施形態の詳細を与えるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態による薄いグラフェン・カソードを有するリチウム酸素電池の断面図である。
図2】本発明の実施形態による薄いグラフェン・カソードを有するリチウム酸素電池を形成する方法のブロック/流れ図である。
図3】本発明の実施形態によるベア基板の使用と比較してリチウム酸素電池において薄いグラフェン・カソードを使用する効果を図示しているグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、溶液媒介型のリチウム酸素電池放電反応のための核形成シードとして使用するために、リチウム酸素電池を形成するための、例えば、数原子の厚さを有するグラフェンから形成した薄いカソード層を採用している。本実施形態は、これによりLiに対してLiCoOの同様の体積で得られるLiCoOのカソード容量の2倍である約0.05mAh/cmよりも大きなカソード容量を提供する。本実施形態は、さらにその上、LiCoOのカソード質量当たりの重量エネルギー密度よりも2000倍大きく、そして放電生成物の重さが含まれるときのカソード質量当たり4倍大きいカソード質量当たりの重量エネルギー密度を提供する。
【0012】
ここで図1を参照して、リチウム酸素電池100の断面図が示されている。アノード102は、電解質104およびセパレータ106によってカソード108から分離されている。電解質104は、放電反応中にアノード102からカソード108への電荷キャリアの移動のための導電性チャネルを形成する。セパレータ106は、非導電性であり、アノード102とカソード108とが互いに電気的に接触することを防止している多孔質構造である。いくつかの実施形態では、電解質104は、流体である。他の実施形態では、電解質104は、やはりセパレータ106の役割を行う固体材料である。カソード108を基板層110の上に形成し、基板層110は、柔軟であっても硬くてもよく、導電性であっても非導電性であってもよく、平坦であっても凸凹であってもよく、そしてカソード108を移動させるために使用される。
【0013】
1つの特定の実施形態では、アノード102をリチウム金属の層から形成するが、例えば、ナトリウムまたは他のアルカリ金属などの他の金属を代わりに使用してもよいことが理解されるはずである。1つの特定の実施形態では、カソード108を、グラフェン、単原子の厚さに形成することができる非常に薄い種類の炭素から形成する。1つの特定の実施形態では、セパレータ106は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンまたは石英(SiO)マイクロファイバ・フィルタなどの多孔質高分子膜であってもよく、そして約25μmと450μmとの間の厚さで形成してもよい。機械的な強さをともなう実施形態では、(セパレータとして機能することができる)固体電解質104は、数百ナノメートルの薄さであってもよい。1つの特定の実施形態では、基板110は、例えば、シリコンもしくは二酸化シリコン・ウェハ、ステンレス鋼パッド、ガラス、またはポリイミド膜で形成してもよい。
【0014】
1つの特定の実施形態では、電解質104を、例えば、溶剤としての1,2-ジメトキシエタン(DME)またはテトラエチレン・グリコール・ジメチル・エーテル(TEGDME)と混合した、塩としてのLiNOまたは(リチウム・ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド)(LiTFSI)を有する溶液などの適切な液体電解質物質から形成する。電解質は、単層および二層グラフェン・カソードで電池容量を高めそしてLiの形成中には中間種(例えば、LiおよびO )の高い溶解度を有する。中間種が放電中に電解質に溶解できるという理由で、これらの種は、膜へと凝集することそしてカソード表面を不動態化させることよりはむしろLiの大きな粒子を形成するためにさらに遠くへ泳動することができる。このような電解質は、少量の水をさらに含むことができる。
【0015】
電流コレクタ107を、電解質104中に配置し、いくつかの実施形態では、ステンレス鋼またはチタンから形成することができる。電流コレクタ107を、例えば、いずれかの適切な金属または電解質104と反応しないもしくはそれ以外には腐食しない他の導電体から形成した導電性ワイア・メッッシュから形成することができることが具体的に考えられる。電流コレクタ107は、約38μmよりも小さな開口を有するメッシュを含むことができる。このサイズは、ほんの1つの例を示し、メッシュが細かいほど、より良い電子分布を形成するだろう。電流コレクタ107は、電池100を外部回路に接続したままにする。
【0016】
本実施形態が電池内での薄い炭素カソードの使用のほんの1つの可能な例を図示しているに過ぎないことを理解すべきである。この実施形態では、カソード108を、例えば、化学気相堆積(CVD)またはいずれかの他の適切な機構によって銅の層の上に形成することができることが、具体的に考えられる。例えば、グラフェンの層を、炭素CVDにより銅層の上に形成することができる、ここで炭素の原子は、1原子または複数原子の厚さである平坦なシートへと自己組織化する。
【0017】
いくつかの実施形態は、基板110として直接銅層を利用することができる。しかしながら、実験事実は、グラフェン/銅電極が2.1VまでLiの形成、続いて2.1V未満の電位で銅からの電気化学反応を示すことを示している。このように、本実施形態は、グラフェンを代わりの基板材料まで移動させる。したがって、カソード108を、例えば、ポリ(メタクリ酸メチル)(PMMA)、エチレン酢酸ビニル(EVA)、または銅層とのエッチ選択性を有するいずれかの他の適切な材料から形成された中間ハンドリング層に載置することができる。銅層を、次いで、例えば、FeClを使用してエッチングして除去し、カソード108を基板層110まで移動させることを可能にする。ハンドリング層を、次いで、例えば、PMMAに対してはアセトンをまたはEVAに対してはキシレンを使用してエッチングして除去し、そして基板110およびカソード108を電池100にはり付ける。カソード108を作成しそして移送するこのプロセスには、このプロセスが、リチウム・イオン・カソードが必要とするような高温アニールを必要とせず、そしてカソード108を非導電性または導電性表面へと転移させることができるという利点がある。しかしながら、これは薄いカソード層を形成するためのほんの1つの可能なプロセスを説明しているに過ぎず-いずれかの他の適切なプロセスを代わりに使用することができる。いくつかの実施形態では、カソードは、約1nmから約2nmの厚さであってもよい。
【0018】
リチウム酸素電池の動作中に、リチウム・イオンは、アノード102からカソード108まで電解質を横切って拡散し、ここでリチウム・イオンがカソード108のところで酸素と反応して、Liを形成する。正イオンのこの移動は、放電作用を表しており、デバイス100に向かう電流コレクタ107内の電子の流れによって実現される。Liは、この放電作用中にカソード108の表面に蓄積する。
【0019】
ここで図2を参照して、電池を製造する方法を示している。ブロック202では、第1の基板の上にカソード108を形成する。上に記したように、カソード108をグラフェンから形成しそして非常に薄く(例えば、約1nmと2nmとの間)にすることができこと、および第1の基板を例えば、銅またはニッケルとすることができることが具体的に考えられる。カソード108を、CVDによりまたはカソード材料(例えば、炭素)の原子が第1の基板の表面の上で自己組織化することを可能にするいずれかの他の適切な堆積プロセスにより形成することができる。
【0020】
CVDは、堆積される種が室温よりも高い温度(例えば、約25℃から約900℃)でガス状の反応物質同士の間の化学反応の結果として形成される堆積プロセスである。反応の固体生成物が、固体生成物の膜、コーティング、または層を形成しようとする表面の上に堆積される。CVDプロセスの変形形態は、限定しないが、常圧CVD(APCVD)、低圧CVD(LPCVD)、プラズマ強化CVD(PECVD)、および有機金属CVD(MOCVD)を含み、これらの組み合わせもやはり利用することができる。
【0021】
ブロック204では、ハンドリング層をカソード層108に付ける。ハンドリング層を、例えば、PMMAから形成することができることが具体的に考えられるが、第1および第2の基板ならびにカソード108とのエッチ選択性を有するいずれかの材料を代わりに使用することができることが理解されるべきである。ハンドリング層を、例えば、スピン・コーティングを含めいずれかの適切な機構により取り付けることができる。本明細書において使用するように、材料除去プロセスに関連する「選択的な」という用語は、第1の材料についての材料除去速度が、材料除去プロセスを適用しようとする構造の少なくとももう1つの材料についての除去速度よりも大きいことを示している。
【0022】
ブロック206では、次いで、例えば、FeClなどの適切なウェット・エッチまたはドライ・エッチを使用して第1の基板をエッチングして除去する。カソード108は、ハンドリング層に取り付けられたままであり、第2の基板(これは完成した電池100の基板110を形成する)の上方の位置へと移動させることができる。第2の基板により覆われたカソード108を、フォトレジストとしてハンドリング層を使用してブロック207において任意選択でパターニングすることができる。ハンドリング層により覆われていないカソード表面を選択的に除去することができる。カソード108をグラフェンから形成し、ハンドリング層をPMMAから形成する例では、グラフェン・カソードを、酸素プラズマを使用してエッチングすることができる。無機カソードが厳しい化学エッチング法を必要とするという理由で、酸素プラズマを使用することは、例えば、LiCoO、LiFePO、またはLiNiMnCoから形成される無機カソードをパターニングすることよりも単純なプロセスである。電池のアレイを構築することおよび付随する回路設計が、特にミクロン・スケールのデバイスに関して、グラフェン系のカソードの単純なマイクロパターニングによって同様に単純化される。
【0023】
カソード108を、ブロック208において第2の基板に付ける。カソード108を第2の基板に付けるために、接着剤を必要としなくてもよく、代わりに引力が、例えば、ファン・デル・ワールス相互作用のために存在する。ハンドリング層を、次いで、例えば、アセトンなどのいずれかの適切なウェットまたはドライ・エッチャントを使用してエッチングして除去し、基板110の上にカソード108を残す。
【0024】
ブロック212では、カソード層108の最上部に導電性メッシュの形態の電流キャリア107を付加する。ブロック214では、電流キャリア107の上にセパレータ106を付加し、電流キャリア107およびカソード層108を覆う。セパレータを、例えば、多孔質メンブレンの薄いシートから形成することができる。ブロック216では、セパレータ106の上にアノード102を付加する。アノード102を、例えば、リチウム、LiC、LiTi12、またはLi4.4Siなどの適切な金属から形成する。ブロック218では、次いで、アノード102とカソード108との間に液体電解質を導入する。電解質を、エーテル系の溶剤(例えば、DME、TEGDME)に混合される塩としてのLiNOまたはLiTFSIから形成することができるが、任意の適切な電解質組成物を代わりに使用することができることが具体的に考えられる。
【0025】
本発明の態様は、所与の例示のアーキテクチャに関して説明するだろう、しかしながら、他のアーキテクチャ、構造、基板材料、ならびにプロセスの構成およびステップを、本発明の態様の範囲内で変えることができることを理解すべきである。
【0026】
ここで図3を参照して、ボルトで測定した縦軸302のセル電圧と、4μA/cmの電流密度においてmAh/cmで測定した横軸304の電荷容量との間の関係のグラフは、溶液媒介型のリチウム酸素電池放電反応を促進させるためにLiNOと混合したDME系の電解質中の2つの異なるカソード材料について示している。ベア・シリコンまたは二酸化シリコン層が、曲線308により示され、シリコンまたは二酸化シリコン層の上に載置されたグラフェン層が、曲線306により示されている。これらのカソードを、アノードとしてのリチウム金属に対して試験した。平坦な電圧プロファイルが、曲線306に関して2.5V付近に示されているが、顕著な放電容量は、ベア・ウェハによっては与えられない。同様な結果が、TEGDMEに基づく電解質溶液により与えられる。
【0027】
放電反応の放電生成物は、初期および放電後のグラフェン・カソードの(例えば、532nmレーザを使用して)ラマン・スペクトルを測定することによってLiであると確認された。LiのO-O結合伸縮に対応する790cm-1付近のピークが、放電後に現れる。Liの成長を、グラフェンの単層/二層を有することにより可能にする。グラフェン表面は、非導電性基板110が存在してさえもLi成長のためのシードとして機能することができる。TEGDME電解質および0.5M LiNO溶液を用いて、本実施形態は、24μA/cmの電流密度で約60μAh/cmの容量を提供することができる。
【0028】
層、領域または基板などのある要素がもう1つの要素の「上に(on)」または「上をおおって(over)」いると呼ばれるときには、他の要素の直接上にあってもよいことも、介在する要素がやはり存在してもよいことがやはり理解されるだろう。対照的に、ある要素がもう1つの要素の「直接上に(directly on)」または「直接上をおおって(directly over)」いると呼ばれるときには、介在する要素は存在しない。ある要素がもう1つの要素に「接続される(connected)」または「結合される(coupled)」と呼ばれるときには、他の要素と直接接続されるまたは結合されてもよいし、介在する要素が存在してもよいことがやはり理解されるだろう。対照的に、ある要素がもう1つの要素に「直接接続される(directly connected)」または「直接結合される(directly coupled)」と呼ばれるときには、介在する要素は存在しない。
【0029】
本実施形態は、グラフィカル・コンピュータ・プログラミング言語で作成することができ、そしてコンピュータ・ストレージ媒体(ディスク、テープ、物理ハード・ドライブ、またはストレージ・アクセス・ネットワークなどの仮想ハード・ドライブなど)に記憶することができる集積回路チップに関する設計を含むことができる。設計者が、チップまたはチップを製造するために使用するフォトリソグラフィ用マスクを製造しない場合には、設計者は、物理的な手段によって(例えば、設計を記憶しているストレージ媒体のコピーを提供することによって)または電子的に(例えば、インターネットを介して)このようなエンティティに、直接または間接的に得られた設計を伝達することができる。記憶された設計は、次いで、フォトリソグラフィ用のマスクの製造のために適切なフォーマット(例えば、GDSII)へと変換され、このマスクは、ウェハの上に形成しようとしている当該チップ設計の複数のコピーを典型的には含む。フォトリソグラフィ用のマスクを、エッチしようとするまたはそれ以外では処理しようとするウェハ(またはウェハ上の層あるいはその両方)の領域を画定するために利用する。
【0030】
本明細書において説明するような方法を、集積回路チップの製造において使用することができる。得られる集積回路チップを、生ウェハの形態で(すなわち、多数のパッケージングしていないチップを有する単一のウェハとして)、生のダイとして、またはパッケージした形態で製造者により配布することができる。後者のケースでは、チップを、(マザーボードもしくは他の高次レベル・キャリアにはり付けられるリード線を有するプラスチック・キャリアなどの)シングル・チップ・パッケージにまたは(表面相互接続部もしくは埋め込み相互接続部のいずれかもしくは両方を有するセラミック・キャリアなどの)マルチチップ・パッケージに載置する。いずれにせよ、チップは、次いで、いずれか(a)マザーボードなどの中間製品、または(b)最終製品の一部として他のチップ、個別回路素子、または他の信号処理デバイスあるいはこれらの組み合わせと集積される。最終製品を、玩具および他のロー・エンド用途からディスプレイ、キーボードまたは他の入力装置、および中央プロセッサを有する先端コンピュータ製品までの範囲にわたる集積回路チップを含むいずれかの製品とすることができる。
【0031】
材料化合物が、記載した成分、例えば、SiGeに関して説明されるだろうことをやはり理解すべきである。これらの化合物は、化合物内に異なる割合の成分を含み、例えば、SiGeは、SiGe1-xを含み、ここでxは1以下である、等。加えて、他の成分を、化合物に含ませることができ、本原理にしたがって依然として機能することができる。追加成分を有する化合物を、本明細書では合金と呼ぼう。
【0032】
「1つの実施形態(one embodiment)」または「ある実施形態(an embodiment)」、ならびにこれらの他の変形形態への明細書における言及は、実施形態に関連して説明したある特定の特徴、構造、特性、等が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、明細書全体を通して様々な場所に現れる「1つの実施形態では(in one embodiment)」または「ある実施形態では(in an embodiment)」という句、ならびにいずれかの他の変形形態の出現は、すべてが同じ実施形態を必ずしも参照する必要はない。
【0033】
下記の「/」、「...または...あるいはその両方(and/or)」および「のうちの少なくとも1つ(at least one of)」のいずれかの使用が、例えば、「A/B」、「AまたはBあるいはその両方(A and/or B)」ならびに「AおよびBのうちの少なくとも1つ(at least one of A and B)」のケースでは、最初に記載した選択肢(A)だけの選択、または2番目に記載した選択肢(B)だけの選択、または両方の選択肢(AおよびB)の選択を包含するものであることを認識されたい。さらなる例として、「AまたはBまたはCあるいはその組み合わせ(A, B, and/or C)」ならびに「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ(at least one of A, B, and C)」のケースでは、このような言い回しは、最初に記載した選択肢(A)だけの選択、または2番目に記載した選択肢(B)だけの選択、または3番目に記載した選択肢(C)だけの選択、または最初および2番目に記載した選択肢(AおよびB)だけの選択、または最初および3番目に記載した選択肢(AおよびC)だけの選択、または2番目および3番目に記載した選択肢(BおよびC)だけの選択、またはすべての3つの選択肢(AおよびBおよびC)の選択を包含するものである。これを、記載した多くの項目に関して、本技術および関連技術の当業者には容易に明らかであるとして拡張することができる。
【0034】
本明細書において使用する用語法は、特定の実施形態だけを説明する目的のためであり、例の実施形態を限定するものではない。本明細書において使用するように、「1つ(a)」、「1つ(an)」、および「その(the)」という単数形は、文脈が明らかに別なふうに指示しない限り、同様に複数形を含むものとする。「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、「含む(includes)」または「含んでいる(including)」あるいはその組み合わせの用語は、本明細書において使用されるときに、述べた特徴、整数、ステップ、動作、要素、または構成部品あるいはその組み合わせの存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成部品またはそのグループあるいはそれらの組み合わせの存在または追加を排除しないことが、さらに理解されるだろう。
【0035】
「下に(beneath)」、「下方に(below)」、「下側に(lower)」、「上方に(above)」、「上側に(upper)」、等などの空間的に相対的な用語を、図に図示されたように、1つの要素のまたは構成のもう1つの要素または構成に対する関係を説明するため説明の容易さのために本明細書において使用することがある。空間的に相対的な用語は、図に描かれた向きに加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる向きを含むものであることが理解されるだろう。例えば、図のデバイスがひっくり返されるのであれば、他の要素または構成の「下方に」または「下に」と記述された要素は、そのときには他の要素または構成の「上方に」向けられるはずである。したがって、「下方に」という用語は、上方および下方の両方の向きを含むことができる。デバイスを、別なふうに(90°回転させるまたは他の向きで)向けることができ、本明細書において使用した空間的に相対的な記述を、それに応じて解釈することができる。加えて、ある層が2つの層の「間に」あると呼ばれるときには、2つの層の間にその層だけがあることも、または1つもしくは複数の介在する層がやはり存在してもよいことがやはり理解されるだろう。
【0036】
第1の、第2の、等という用語を、様々な要素を記述するために本明細書において使用することができるとは言え、これらの要素は、これらの用語により限定されるべきはないことが理解されるだろう。これらの用語は、1つの要素をもう1つの要素とは区別するために使用されるに過ぎない。したがって、下記に論じられる第1の要素を、本概念の範囲から逸脱せずに第2の要素と名付けることができる。
【0037】
(例示的であり限定するものではない)システムおよび方法の好ましい実施形態を説明してきており、修正形態および変形形態を、上記の教示を考慮して当業者なら行い得ることに留意されたい。変更を、別記の特許請求の範囲によって概要を示したように、発明の範囲内である開示した特定の実施形態において行ってもよいことを、したがって理解すべきである。特許法により要求される詳細および独自性とともに、発明の態様をこのように説明してしまうと、特許証によって何が権利を主張され、望ましくは保護されるかが、別記の特許請求の範囲に記載されている。
図1
図2
図3