(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】シーケンスアプリケーションにおけるヌクレオチドのためのショートペンダントアームリンカー
(51)【国際特許分類】
C07H 19/10 20060101AFI20220316BHJP
C07H 21/04 20060101ALI20220316BHJP
C07H 19/14 20060101ALI20220316BHJP
C12N 15/09 20060101ALI20220316BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220316BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220316BHJP
C12Q 1/6816 20180101ALI20220316BHJP
【FI】
C07H19/10 CSP
C07H21/04 B
C07H19/14
C12N15/09 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6816 Z
(21)【出願番号】P 2019570949
(86)(22)【出願日】2018-07-12
(86)【国際出願番号】 EP2018069030
(87)【国際公開番号】W WO2019012080
(87)【国際公開日】2019-01-17
【審査請求日】2020-01-21
(32)【優先日】2017-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502279294
【氏名又は名称】イルミナ ケンブリッジ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100167623
【氏名又は名称】塚中 哲雄
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】エレナ クレッシーナ
(72)【発明者】
【氏名】アントニー フランセ
(72)【発明者】
【氏名】シャオハイ リュー
【審査官】植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/020457(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/135223(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/097320(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0139133(US,A1)
【文献】特表2004-529070(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
の化合物であり、ここで、
Bはヌクレオシド塩基またはヌクレオチド塩基であり、
Fl
はフルオロフォアであ
り、
Bがプリンヌクレオシド塩基またはヌクレオチド塩基の場合、Bは8位に結合し、Bがピリミジンヌクレオシド塩基またはヌクレオチド塩基の場合、Bは5位に結合する、化合物。
【請求項2】
Bはヌクレオチド塩基である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Bはピリミジン塩基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
前記化合物は、
式(c):
【化2】
または
式(t):
であり、ここで、
Pは三リン酸基であり、
Fl
はフルオロフォアである、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
Bは7-デアザプリン塩基である、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
前記化合物は、
式(a):
【化3】
であり、ここで、
Pは三リン酸基であり、
Fl
はフルオロフォアである、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
前記
フルオロフォアがアルキル鎖リンカー
を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
前記アルキル鎖リンカーは、1つもしくは複数のヘテロ原子置換を有する、および/または、アミドもしくはエステル基を含む、および/またはアリール基、任意にトリアゾール基を含む、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
前記化合物がオリゴヌクレオチドに結合している、請求項2に記載の化合物。
【請求項10】
請求項2に記載の化合物で標識されたオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
式(II):
【化4】
の化合物であり、ここで、
Bはヌクレオチド塩基であ
り、
Bがプリンヌクレオチド塩基の場合、Bは8位に結合し、Bがピリミジンヌクレオチド塩基の場合、Bは5位に結合する、化合物。
【請求項12】
Bはピリミジン塩基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
前記化合物は、
式(ci):
【化5】
または
式(ti):
の化合物であり、ここで、
Olnはオリゴヌクレオチドである、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
Bは7-デアザプリン塩基である、請求項11に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物は、
式(ai):
【化6】
の化合物であり、ここで、
Olnはオリゴヌクレオチドである、請求項14に記載の化合物。
【請求項16】
請求項11から15のいずれか一項に記載の化合物を含むオリゴヌクレオチド。
【請求項17】
請求項11から15のいずれか一項に記載の化合物の2以上のコピーを含むオリゴヌクレオチド。
【請求項18】
請求項11から15のいずれか一項に記載の化合物の10以上のコピーを含むオリゴヌクレオチド。
【請求項19】
請求項11から15のいずれか一項に記載の化合物の100以上のコピーを含むオリゴヌクレオチド。
【請求項20】
少なくとも1つのヌクレオチドが、請求項2から8のいずれか一項に記載の化合物である標識されたヌクレオチドである、2以上のヌクレオチドを含むキット。
【請求項21】
少なくとも2つのヌクレオチドが、請求項2から8のいずれか一項に記載の化合物である標識されたヌクレオチドである、2以上のヌクレオチドを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項22】
少なくとも2つのヌクレオチドが、請求項2から8のいずれか一項に記載の化合物である標識されたヌクレオチドである、4つのヌクレオチドを含む、請求項20に記載のキット。
【請求項23】
配列決定、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、もしくはタンパク質結合アッセイ、またはそれらの組み合わせにおける請求項2から8のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項24】
配列決定、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、もしくはタンパク質結合アッセイ、またはそれらの組み合わせにおける請求項10に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【請求項25】
配列決定、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、もしくはタンパク質結合アッセイ、またはそれらの組み合わせにおける請求項16に記載のオリゴヌクレオチドの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権出願への参照による援用
本出願は、参照によりその全体が組み込まれる、2017年7月12日に提出された英国(GB)出願第1711219.4号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
技術分野
本開示は、新しいヌクレオチドおよびオリゴヌクレオチド化合物、並びに核酸シーケンスアプリケーション(配列決定用途)におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
配列決定技術が進歩するにつれて、特に固相配列決定などのようなハイスループット分子法に適した改良された配列決定試薬の必要性が生じた。
【0004】
特定のタイプのハイスループットシーケンスでは、使用されるヌクレオチドに、組み込まれた塩基を特異的に識別するフルオロフォアが含まれる。フルオロフォアは、切断(開裂)可能なリンカーを介してヌクレオチド塩基に付着させることができる。したがって、組み込まれた塩基が同定された後、リンカーを切断することができ、フルオロフォアを除去して、次の塩基を結合して同定する準備が整う。そのような切断は、検出された核酸塩基のそれぞれに位置する残りの「瘢痕(痕跡)」または「ペンダントアーム」部分を残す。切断後に瘢痕を残さない試薬を設計することは可能であるが、これらは切断するのが遅い傾向があり、したがって特に効果的ではない。標識されたヌクレオチドの効率的な取り込み(組み入れ)、組み入れられたすべての標識を除去するための効率的な切断、および次のヌクレオチドの効率的な取り込みの間のバランスを見つける必要がある。本明細書に記載されているのは、合成による配列決定(SBS)サイクルにおける先行技術のヌクレオチドの性能を改善する最適化されたヌクレオチド構造である。
【0005】
適切なヌクレオチドリンカーは、例えばWO2004/018493に記載されている。そこに開示されている化合物は、
式(e):
【化1】
の例として示され、
ここで、
Bはヌクレオシド塩基であり、
Flは、任意のリンカーを介して結合したフルオロフォアである。これは切断され、
式(ei):
【化2】
のペンダントアーム部分が残る。
【0006】
出願人は、ペンダントアームの変更が、得られた配列決定データに改善をもたらす可能性があることに気付いた。
【0007】
本明細書に記載されているのは、改良されたヌクレオチド構造および配列決定(シーケンス)におけるそれらの使用である。記載された分子は、核酸鎖に組み込まれ得る。より効率的なヌクレオチドの取り込みを可能にする特定の修飾を有する核酸鎖も記載されている。また、核酸アレイおよび配列決定におけるその使用も記載されている。特定の改善は、標識されたヌクレオチドの取り込みの効率、および新しい構築物を使用して得られる配列読み取り(シーケンスリード)の長さおよび精度に見られる。以下に説明する分子は、長い読み取り長が必要な場合、またはより短いヌクレオチド取り込み時間が有利な場合に特に有利であり、高出力励起源が使用される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本開示は、核酸配列決定のための改良された試薬に関する。蛍光標識ヌクレオチドが伸長された核酸鎖に組み込まれる合成による配列決定(SBS)の繰り返しサイクル中に、「瘢痕のある」DNAプライマー:鋳型が生成される。「瘢痕」すなわち「ペンダントアーム」は、検出された核酸塩基のそれぞれに位置する部分であり、それが結合している核酸塩基からのフルオロフォアの化学的切断から生じる。これらのペンダントアームは、繰り返されるSBSサイクルにわたってDNAプライマー:鋳型に蓄積し、天然DNAプライマー:鋳型とは異なる分子構造を持つプライマー:鋳型DNA分子を生成する。これらの残留ペンダントアームは、特にシーケンシングランの後期および長時間のシーケンシングランで、新しく入ってきたヌクレオチドの取り込みを遅くするため、エラー率を高め、データ品質を低下させる。本開示は、配列決定中にDNAプライマー:鋳型上に残るペンダントアームのサイズを最小化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様によれば、この開示は
式(I):
【化3】
の化合物であり、ここで、
Bはヌクレオシド塩基であり、
Flは任意のリンカーを介して結合したフルオロフォアである、化合物を提供する。
【0010】
ヌクレオシドは、核酸塩基に結合した炭水化物リボースを有する化合物である。核酸塩基はプリンまたはピリミジンであり得る。一般的な天然プリンは、アデニン(A)とグアニン(G)である。一般的な天然のピリミジンは、DNA鎖のシチジン(C)とチミン(T)またはRNA鎖のウラシル(U)である。リボースは2’-デオキシリボース(DNA内)にすることができる。結合したリン酸部分を有するヌクレオシドはヌクレオチドであり、したがって、本明細書に記載の化合物はヌクレオチドの形態であり得る。本明細書に記載の式では、Bはヌクレオチド塩基を表し得る。
【0011】
本明細書に記載の式において、Bはピリミジン塩基を表すことができる。塩基Bは、4つの一般的な天然塩基、A、G、CまたはT/Uのいずれかの形をとることができる。リン酸部分は三リン酸部分であり得、リボースの5’位に結合され得る。本開示の化合物は、以下の
【化4】
の化合物を含み得、
ここで、
pは三リン酸基であり、
Flは任意のリンカーを介して結合したフルオロフォアである。
【0012】
三リン酸部分は、ヌクレオチド化合物の核酸への取り込みを可能にする。核酸ポリメラーゼを使用した伸長により、化合物を核酸プライマーの3’-OHに結合することを可能にする。したがって、本開示の化合物は、オリゴ核酸に結合させることができる。オリゴヌクレオチドは、本開示の化合物を組み込むためにポリメラーゼ伸長を受けた核酸プライマーの形をとることができる。したがって、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される化合物を含むオリゴヌクレオチドである。
【0013】
オリゴヌクレオチドに結合したヌクレオチド化合物が開示されている。化合物が蛍光標識されている場合、一般に、単一の修飾化合物のみが各オリゴヌクレオチドに結合する。したがって、3’-ヌクレオチドが
式(I):
【化5】
の化合物であるオリゴヌクレオチドが開示され、
ここで、
Bはヌクレオシド塩基であり、
Flは任意のリンカーを介して結合したフルオロフォアである。
【0014】
誤解を避けるために、取り込みの際に三リン酸基が一リン酸ジエステルに変換されることが理解される。したがって、3’-ヌクレオチドが
【化6】
、の化合物であるオリゴヌクレオチドが開示され、
ここで、
pは一リン酸基であり、
Flは任意のリンカーを介して結合したフルオロフォアである。
【0015】
あるいは、上記の化合物は、3’-ヌクレオチドが
【化7】
、の化合物であるオリゴヌクレオチドとして表すことができ、
ここで、
Olnはオリゴヌクレオチドであり、
Flは任意のリンカーを介して結合したフルオロフォアである。
【0016】
組み込まれた核酸塩基を検出すると、蛍光標識と任意のリンカーを除去し得る。除去はアジド基の還元によって行われ、O-CHNH2-部分の断片化につながる。切断すると、ヒドロキシル基が核酸塩基に結合したままになり、蛍光部分が分離する。
【0017】
したがって、
式(II):
【化8】
の化合物が開示され、
ここで、
Bはヌクレオシド塩基である。
【0018】
核酸塩基はプリンまたはピリミジンであり得る。一般的な天然プリンは、アデニン(A)とグアニン(G)である。一般的な天然のピリミジンは、DNA鎖のシチジン(C)とチミン(T)またはRNA鎖のウラシル(U)である。リボースは2’-デオキシリボース(DNA内)であり得る。
【0019】
式IIの化合物は、オリゴヌクレオチドに付着させることができる。したがって、部分Bは、さらなる塩基に付着した塩基であり得る。したがって、3’-ヌクレオチドが、
【化9】
、の化合物であるオリゴヌクレオチドが開示され、
ここで、
Olnはオリゴヌクレオチドである。
【0020】
ヒドロキシルペンダントアームを持つオリゴヌクレオチドは、同じオリゴヌクレオチド上に複数のペンダントアームを持ち得る。通常、ペンダントアームで修飾された塩基は、配列上で隣接している。式(II)による化合物の2以上のコピー(複製)を含むオリゴヌクレオチドが開示される。式(II)による化合物の10以上のコピーを含むオリゴヌクレオチドが開示される。式(II)による化合物の100以上のコピーを含むオリゴヌクレオチドが開示される。
【0021】
ヌクレオチドの取り込みは、複数のタイプのヌクレオチドを含む溶液を使用して実行できる。したがって、開示されるのは、少なくとも1つのヌクレオチドが本明細書に記載される標識されたヌクレオチドである、2以上のヌクレオチドを含むキットである。キットは、少なくとも2つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識ヌクレオチドである2つ以上のヌクレオチドを含んでもよい。キットは、少なくとも2つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識されたヌクレオチドである4つのヌクレオチドを含んでもよい。
【0022】
本明細書に記載されるヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびキットは、配列決定、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、またはタンパク質結合アッセイ、またはそれらの組み合わせで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、配列決定中の瘢痕、ペンダントアームDNAプライマー:鋳型(テンプレート)の形成を示す。
【
図2】
図2は配列決定中に使用される完全に機能化されたショートペンダントアーム(ffN)の構造の例を示す。
【
図3】
図3は、2チャネルSBS配列決定のための4つのショートペンダントアームヌクレオチドの例を示している。
【
図4】
図4のAからCは、2つの異なるポリメラーゼ(PolAとPolB)と2つの異なる鋳型ライブラリ(PhiXとヒト)を備えた2チャネル修飾Hiseq(登録商標)のスタンダードおよびショートペンダントアームヌクレオチドで観察されたシーケンスメトリックの例を示す。
【
図5】
図5のAおよびBは、2チャネル修飾Miseq(登録商標)上のスタンダードまたはショートペンダントアームヌクレオチドのいずれかで観察されたシーケンシングメトリックの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示は、蛍光検出および合成による配列決定の方法に特に適した新規化合物を提供する。短縮された残留ペンダントアームを有する化合物は、特定の核酸シーケンスアプリケーションを改善する。
【0025】
第1の態様によれば、本開示は、
式(I):
【化10】
の化合物を提供し、
ここで、
Bはヌクレオシド塩基であり、
Flは任意のリンカーを介して結合したフルオロフォアである。
【0026】
ヌクレオシドは、核酸塩基に結合した炭水化物リボースを持つ化合物である。核酸塩基はプリンまたはピリミジンであり得る。一般的な天然プリンは、アデニン(A)とグアニン(G)である。一般的な天然のピリミジンは、DNA鎖のシチジン(C)とチミン(T)またはRNA鎖のウラシル(U)である。リボースは2’-デオキシリボース(DNA内)であり得る。結合したリン酸部分を有するヌクレオシドはヌクレオチドであり、したがって、本明細書に記載の化合物はヌクレオチドの形態であり得る。本明細書に記載の式では、Bはヌクレオチド塩基を表し得る。
【0027】
Flはフルオロフォアである。したがって、本開示の化合物は蛍光標識されている。フルオロフォアの性質は重要ではなく、例えばローダミンまたはシアニンなどの既知の蛍光種から選択された化合物を含めることができる。フルオロフォアは、任意のリンカーを介して核酸塩基に結合できる。リンカーの機能は、概して、ヌクレオチドへのフルオロフォアの化学的付着を補助することである。リンカーは、例えば、1つ以上のヘテロ原子置換を任意に有するアルキル鎖であり得る。リンカーは、化学カップリング反応を促進するために、アミドまたはエステル基を含んでもよい。リンカーは、クリックケミストリーを使用して合成できる。リンカーはトリアゾール基を含んでもよい。リンカーは他のアリール基を含んでもよい。
【0028】
リンカーの例には、次のような種:
【化11】
が含まれ、
ここで、
nは2~6の整数であり、
Flはフルオロフォアである。
【0029】
ヌクレオシドまたはヌクレオチドのリボース部分は、リボースまたはデオキシリボースであり得る。リボースは、単一ヌクレオチドへの取り込みを制限するために、1つ以上の2’または3’ブロッキング基(ブロック基)を有してもよい。ブロッキング基はアジドメチル基であってもよい。リボースは、3’-アジドメチルブロッキング基を有する2’-デオキシリボースであってもよい。ブロッキング基はアリル基であってもよい。リボースは、3’-アリルブロッキング基を有する2’-デオキシリボースであってもよい。
【0030】
本明細書に記載の式において、Bはピリミジン塩基を表すことができる。塩基Bは、4つの一般的な天然塩基、A、G、CまたはT/Uのいずれかの形をとることができる。リン酸部分は三リン酸部分であり得、リボースの5’位に結合され得る。本開示の化合物は、以下の
【化12】
の化合物を含み得、
ここで、
pは三リン酸基であり;
nは2~6の整数であり;
Flはフルオロフォアである。
【0031】
三リン酸部分は、ヌクレオチド化合物の核酸への取り込みを可能にする。核酸ポリメラーゼを使用した伸長により、化合物を核酸プライマーの3’-OHに結合できる。したがって、本開示の化合物は、オリゴ核酸に結合させることができる。オリゴヌクレオチドは、本開示の化合物を組み込むためにポリメラーゼ伸長を受けた核酸プライマーの形をとることができる。したがって、本明細書に開示されるのは、本明細書に開示される化合物を含むオリゴヌクレオチドである。
【0032】
オリゴヌクレオチドに付着したヌクレオチド化合物が開示されている。化合物が蛍光標識されている場合、一般に、単一の修飾化合物のみが各オリゴヌクレオチドに付着する。したがって、3’-ヌクレオチドが
式(III):
【化13】
の化合物であるオリゴヌクレオチドが開示され、
ここで、
Bはヌクレオシド塩基であり、
nは2~6の整数であり、
Flはフルオロフォアである。
【0033】
誤解を避けるために、取り込みの際に三リン酸基が一リン酸ジエステルに変換されることが理解される。したがって、3’-ヌクレオチドが
【化14】
、の化合物であるオリゴヌクレオチドが開示され、
ここで、
pは一リン酸基であり;
nは2~6の整数であり;
Flは発蛍光団である。
【0034】
上記の化合物は、代わりに、3’-ヌクレオチドが
【化15】
の化合物であるオリゴヌクレオチドとして表すことができ、
ここで、
Olnはオリゴヌクレオチドであり;
nは2~6の整数であり;
Flはフルオロフォアである。
【0035】
所与の例のいずれかでは;nは2~6である。所与の例のいずれかでは;nは2に等しくすることができる。所与の例のいずれかでは;nは3に等しくすることができる。所与の例のいずれかでは;nは4に等しくすることができる。所与の例のいずれかでは;nは5に等しくすることができる。所与の例のいずれかでは;nは6に等しくすることができる。
【0036】
組み込まれた核酸塩基を検出すると、蛍光標識と任意のリンカーを除去できる。除去はアジド基の還元によって行われ、O-CHNH2-部分の断片化につながる。切断すると、ヒドロキシル基が核酸塩基に付着したままになり、蛍光部分が分離する。
【0037】
したがって、
式(II):
【化16】
の化合物が開示され、
ここで、
Bはヌクレオチド塩基である。
【0038】
核酸塩基はプリンまたはピリミジンであり得る。一般的な天然プリンは、アデニン(A)とグアニン(G)である。一般的な天然のピリミジンは、DNA鎖のシチジン(C)とチミン(T)またはRNA鎖のウラシル(U)である。リボースは2’-デオキシリボース(DNA内)にすることができる。
【0039】
式IIの化合物は、オリゴヌクレオチドに付着させることができる。したがって、部分Bは、さらなる塩基に付着した塩基であり得る。
したがって、3’-ヌクレオチドが
【化17】
の化合物であるオリゴヌクレオチドが開示され、
ここで、
Olnはオリゴヌクレオチドである。
【0040】
ヒドロキシルペンダントアームを有するオリゴヌクレオチドは、同じオリゴヌクレオチド上に複数のペンダントアームを有することができる。通常、ペンダントアームで修飾された塩基は、配列で隣接している。式(II)による化合物の2つ以上のコピーを含むオリゴヌクレオチドが開示される。式(II)による化合物の10以上のコピーを含むオリゴヌクレオチドが開示される。式(II)による化合物の100以上のコピーを含むオリゴヌクレオチドが開示される。
【0041】
ヌクレオチドの取り込みは、複数のタイプのヌクレオチドを含む溶液を使用して実行できまる。したがって、開示されるのは、少なくとも1つのヌクレオチドが本明細書に記載される標識ヌクレオチドである、2つ以上のヌクレオチドを含むキットである。キットは、少なくとも2つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識ヌクレオチドである2以上のヌクレオチドを含んでもよい。キットは、少なくとも2つのヌクレオチドが本明細書に記載の標識ヌクレオチドである4つのヌクレオチドを含んでもよい。
【0042】
本明細書に記載されるヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチドおよびキットは、配列決定、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析またはタンパク質結合アッセイ、またはそれらの組み合わせで使用することができる。
【0043】
本明細書では、少なくとも1つのヌクレオチドが本開示のヌクレオチドである2つ以上のヌクレオチドを含むキットが提供される。キットは、2つ以上の標識されたヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチドは、2以上の蛍光標識で標識されていてもよい。レーザーなどの単一の励起源を使用して、2以上のラベルを励起できる。例えば、2以上の標識の励起バンドは、スペクトルの重複領域での励起により両方の標識が蛍光を発するように、少なくとも部分的に重複していてもよい。特定の実施形態では、2つ以上の標識からの放出は、スペクトルの異なる領域で起こり、少なくとも1つの標識の存在が放出を光学的に区別することにより決定され得る。
【0044】
キットは4つの標識ヌクレオチドを含むことができ、4つのヌクレオチドの最初のものは本明細書に開示されている通りである。そのようなキットでは、第2、第3、および第4ヌクレオチドはそれぞれ、第1ヌクレオチドの標識と任意にスペクトルが異なり、任意に互いの標識とスペクトルが異なる化合物で標識することができる。したがって、1つまたは複数の化合物は、化合物が他の化合物と区別できるように、明確な吸収極大および/または発光極大を有することができる。例えば、各化合物は、それぞれの化合物が他の3つの化合物と区別できるように、異なる吸収極大および/または発光極大を有することができる。最大値以外の吸収スペクトルおよび/または発光スペクトルの部分が異なる可能性があり、これらの違いを利用して化合物を区別できることが理解されよう。キットは、2以上の化合物が600nmを超える明確な吸収極大を持つようなものである場合がある。本発明の化合物は、典型的には、640nmを超える領域の光を吸収する。
【0045】
本明細書に記載される化合物、ヌクレオチドまたはキットは、生物学的システム(例えば、そのプロセスまたは構成要素を含む)を検出、測定または同定するために使用され得る。化合物、ヌクレオチドまたはキットを使用できる例示的な技術には、配列決定、発現分析、ハイブリダイゼーション分析、遺伝子分析、RNA分析、細胞アッセイ(例えば、細胞結合または細胞機能分析)、またはタンパク質アッセイ(例えば、タンパク質結合アッセイまたはタンパク質活性アッセイ)が含まれる。自動シーケンシング機器など、特定の技術を実行するための自動機器で使用することができる。シーケンス機器には、異なる波長で動作する2つのレーザーが含まれている場合がある。
【0046】
本開示は、蛍光標識ヌクレオシドおよびヌクレオチド(修飾ヌクレオチド)のコンジュゲートを提供する。標識されたヌクレオシドおよびヌクレオチドは、非限定的な例として、PCR増幅、等温増幅、固相増幅、ポリヌクレオチド配列決定(例えば、固相配列決定)、ニックトランスレーション反応などの酵素合成によって形成されたポリヌクレオチドの標識に有用である。
【0047】
ヌクレオシドおよびヌクレオチドは、糖または核酸塩基上の部位で標識されていてもよい。当技術分野で知られているように、「ヌクレオチド」は、窒素塩基、糖、および1つまたは複数のリン酸基からなる。RNAでは糖はリボースであり、DNAではデオキシリボース、すなわちリボースに存在するヒドロキシル基を欠く糖である。窒素塩基はプリンまたはピリミジンの誘導体である。プリンはアデニン(A)またはグアニン(G)であり、ピリミジンはシトシン(C)、チミン(T)、またはRNAのコンテキストではウラシル(U)である。デオキシリボースのC-1原子は、ピリミジンのN-1またはプリンのN-9に結合している。ヌクレオチドはヌクレオシドのリン酸エステルでもあり、糖のC-3またはC-5に結合したヒドロキシル基でエステル化が起こる。ヌクレオチドは通常、一リン酸、二リン酸、または三リン酸である。
【0048】
「ヌクレオシド」は構造的にヌクレオチドに似ているが、リン酸部分が欠落している。ヌクレオシド類似体の例は、標識が塩基に結合しており、糖分子に結合したリン酸基がないものである。
【0049】
塩基は通常プリンまたはピリミジンと呼ばれるが、ヌクレオチドまたはヌクレオシドがワトソン-クリック塩基対形成を受ける性能を変えない誘導体および類似体が利用可能であることを当業者は理解するであろう。「誘導体」または「アナログ」とは、コア構造が親化合物と同じ、または親化合物のものと非常に似ているが、たとえば異なるまたは追加の側基などの化学的または物理的修飾を有する化合物または分子を意味し、これにより、誘導体ヌクレオチドまたはヌクレオシドを別の分子に結合できる。例えば、塩基はデアザプリンであってもよい。特定の実施形態では、誘導体は、ワトソン・クリックのペアリングを受けることができる。「誘導体」および「アナログ」には、例えば、修飾塩基部分および/または修飾糖部分を有する合成ヌクレオチドまたはヌクレオシド誘導体も含まれる。そのような誘導体および類似体は、例えば、Scheit、Nucleotide analogs(John Wiley&Son、1980)およびUhlman et al., Chemical Reviews 90:543-584, 1990で議論されている。ヌクレオチド類似体は、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、アルキルホスホネート、ホスホラニデート、ホスホルアミデート結合などを含む修飾されたホスホジエステル結合を持つこともできる。
【0050】
フルオロフォアは、例えばリンカーを介して、ヌクレオチド塩基上の任意の位置に結合し得る。特定の実施形態では、得られた類似体に対してワトソン・クリック塩基対合を依然として実行することができる。特定の核酸塩基標識部位には、ピリミジン塩基のC5位置または7-デアザプリン塩基のC7位置が含まれる。上記のように、リンカー基を使用して、色素をヌクレオシドまたはヌクレオチドに共有結合させることができる。特定の実施形態では、標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、酵素的に取り込み可能および酵素的に伸長可能であってもよい。したがって、リンカー部分は、化合物が核酸複製酵素によるヌクレオチドの全体的な結合および認識を著しく妨害しないように、ヌクレオチドを化合物に接続するのに十分な長さであり得る。したがって、リンカーはスペーサーユニットも含むことができる。スペーサー距離は、例えば、切断部位または標識からヌクレオチド塩基までの距離である。
【0051】
本開示に従って標識されたヌクレオシドまたはヌクレオチドは、
式:
【化18】
を有し、
ここで、Dye(色素)が蛍光化合物である場合、
Bは、例えば、ウラシル、チミン、シトシン、アデニン、グアニンなどの核酸塩基であり、
Lは存在してもしなくてもよい任意のリンカー基である。
R’は、H、一リン酸塩、二リン酸塩、三リン酸塩、チオリン酸塩、リン酸エステル類似体、反応性リン含有基に結合した-O-、またはブロッキング基によりブロッキングされた-O-であり得る。
R’’はH、OH、ホスホラミダイトまたは3’OHブロッキング基であり得、
R’’’はHまたはOHである。
ここで、R’’がホスホルアミダイトである場合、
R’は酸切断可能なヒドロキシルブロッキング基であり、自動合成条件下で後続のモノマーカップリングを可能にする。
【0052】
別の代替実施形態では、ペントース糖の3’炭素にはブロッキング基がなく、色素(または色素とリンカーコンストラクト)は塩基に結合しており、例えば、さらなるヌクレオチドの取り込みに対するブロックとして作用するのに十分なサイズまたは構造のものであり得る。したがって、ブロックは立体障害によるか、色素が糖の3’位置に付着しているかどうかにかかわらず、サイズ、電荷、構造の組み合わせに起因し得る。
【0053】
別の代替実施形態では、ブロッキング基は、ペントース糖の2’または4’炭素上に存在し、さらなるヌクレオチドの取り込みに対するブロックとして作用するのに十分なサイズまたは構造のものであり得る。
【0054】
ブロッキング基を使用すると、修飾ヌクレオチドが組み込まれたときに伸長を停止するなどして、重合を制御できる。ブロッキング効果が可逆的である場合、例えば、化学条件の変更または化学ブロックの除去による非限定的な例により、特定のポイントで伸長を停止し、その後継続させることができる。
【0055】
別の特定の実施形態では、3’OHブロッキング基は、WO2004/018497に開示されている部分を含む。例えば、ブロッキング基はアジドメチル(CH2N3)またはアリルであり得る。
【0056】
特定の実施形態では、リンカー(色素とヌクレオチドの間)とブロッキング基の両方が存在し、別々の部分である。特定の実施形態では、リンカーおよびブロッキング基は両方とも、実質的に同様の条件下で切断可能である。したがって、色素化合物とブロックの両方を除去するのに単一の処理しか必要とされないため、脱保護と脱ブロックのプロセスはより効率的である。しかしながら、いくつかの実施形態では、リンカーおよびブロッキング基は、類似の条件下で切断可能である必要はなく、代わりに、別個の条件下で個別に切断可能である。
【0057】
本開示は、蛍光化合物を組み込んだポリヌクレオチドも包含する。そのようなポリヌクレオチドは、ホスホジエステル結合で結合されたデオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドからそれぞれ構成されるDNAまたはRNAであり得る。本開示によるポリヌクレオチドは、本明細書に挙げられている少なくとも1つの修飾ヌクレオチド(例えば、色素化合物で標識された)と組み合わせた、天然ヌクレオチド、本開示の修飾ヌクレオチド以外の非天然(すなわち修飾)ヌクレオチド、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。本開示によるポリヌクレオチドは、非天然骨格結合および/または非ヌクレオチド化学修飾も含み得る。本開示による少なくとも1つの修飾ヌクレオチドを含むリボヌクレオチドおよびデオキシリボヌクレオチドの混合物からなるキメラ構造も企図される。
【0058】
本開示による蛍光化合物を含む修飾ヌクレオチド(またはヌクレオシド)は、それ自体であるかもしくは組み込まれているか、または、より大きな分子構造もしくは共役に関連付けられているか、にかかわらず、ヌクレオチドまたはヌクレオシドに結合した蛍光標識の検出を含む方法などのあらゆる分析方法で使用され得る。これに関連して、「ポリヌクレオチドに組み込まれる」という用語は、5’リン酸がホスホジエステル結合で、それ自体がより長いポリヌクレオチド鎖の一部を形成する第2の(修飾または未修飾)ヌクレオチドの3’ヒドロキシル基に結合することを意味し得る。本明細書に記載の修飾ヌクレオチドの3’末端は、さらなる(修飾または非修飾)ヌクレオチドの5’リン酸にホスホジエステル結合で結合してもしなくてもよい。したがって、非限定的な一実施形態では、本開示は、ポリヌクレオチドに組み込まれた修飾ヌクレオチドを検出する方法を提供し、これは以下を含む:
(a)本開示の少なくとも1つの修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドに組み込むこと、および
(b)前記修飾ヌクレオチドに結合した色素化合物からの蛍光シグナルを検出することにより、ポリヌクレオチドに組み込まれた修飾ヌクレオチドを検出すること。
【0059】
この方法には、合成ステップ(a)であって、本開示による1つまたは複数の修飾ヌクレオチドがポリヌクレオチドに組み込まれるステップと、ポリヌクレオチドに組み込まれた1つまたは複数の修飾ヌクレオチドが、それらの蛍光を検出または定量的に測定することにより検出される検出ステップ(b)と、が含まれる。
【0060】
本開示の一実施形態において、少なくとも1つの修飾ヌクレオチドは、ポリメラーゼ酵素の作用による合成ステップでポリヌクレオチドに組み込まれる。しかしながら、例えば化学オリゴヌクレオチド合成または非標識オリゴヌクレオチドへの標識オリゴヌクレオチドのライゲーションなど、修飾ヌクレオチドをポリヌクレオチドに結合する他の方法を使用することができる。したがって、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドに関して使用される場合、用語「組み込む」は、化学的方法ならびに酵素的方法によるポリヌクレオチド合成を包含し得る。
【0061】
特定の実施形態では、合成ステップが実行され、鋳型ポリヌクレオチド鎖を本開示の蛍光標識修飾ヌクレオチドを含む反応混合物とインキュベートすることを任意で含むことができる。ポリメラーゼはまた、鋳型ポリヌクレオチド鎖にアニールされたポリヌクレオチド鎖上の遊離3’ヒドロキシル基と修飾ヌクレオチド上の5’リン酸基との間のホスホジエステル結合の形成を可能にする条件下で提供され得る。したがって、合成ステップは、ヌクレオチドの鋳型鎖への相補的な塩基対合によって指示されるポリヌクレオチド鎖の形成を含むことができる。
【0062】
本方法のすべての実施形態において、修飾ヌクレオチドが組み込まれたポリヌクレオチド鎖が鋳型鎖にアニーリングされている間、または2つの鎖が分離される変性ステップの後に、検出ステップが実行され得る。合成ステップと検出ステップの間に、追加のステップ、例えば化学的または酵素的反応ステップまたは精製ステップを含めることができる。特に、修飾ヌクレオチドを組み込んだ標的鎖を単離または精製してから、さらに処理するか、後続の分析で使用することができる。例として、合成ステップで、修飾ヌクレオチドにより標識された標的ポリヌクレオチドは、標識プローブまたはプライマーとして続いて使用され得る。他の実施形態では、本明細書に記載の合成工程の生成物は、さらなる反応工程の対象となり得る。必要に応じて、これらの後続のステップの生成物を精製または分離できる。
【0063】
合成ステップの適切な条件は、標準的な分子生物学技術に精通している人にはよく知られている。一実施形態では、合成工程は、本明細書に記載の修飾ヌクレオチドを含むヌクレオチド前駆体を使用して、適切なポリメラーゼ酵素の存在下で鋳型鎖に相補的な伸長標的鎖を形成する標準的なプライマー伸長反応に類似していてもよい。他の実施形態では、合成ステップ自体が、標的および鋳型ポリヌクレオチド鎖のコピーに由来するアニーリングされた相補鎖からなる標識二本鎖増幅産物を生成する増幅反応の一部を形成してもよい。他の例示的な合成ステップには、ニックトランスレーション、鎖置換重合、ランダムプライムDNA標識などが含まれる。合成工程に特に有用なポリメラーゼ酵素は、本明細書に記載の1つまたは複数の修飾ヌクレオチドの取り込みを触媒することができるものである。さまざまな天然または修飾ポリメラーゼを使用できる。本開示による修飾ヌクレオチドを組み込むことができる適切な熱安定性ポリメラーゼには、WO2005/024010またはWO06120433に記載されているものが含まれる。37℃などの低温で実行される合成反応では、ポリメラーゼ酵素は必ずしも熱安定性ポリメラーゼである必要はない。したがって、ポリメラーゼの選択は、反応温度、pH、鎖置換活性などの多くの要因に依存する。
【0064】
特定の非限定的な実施形態では、本開示は、核酸配列決定、再配列決定、全ゲノム配列決定、一塩基多型スコアリング、またはポリヌクレオチドに組み込まれた場合に本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドの検出を含む任意の他の用途の方法を包含する。フルオロフォアを含む修飾ヌクレオチドで標識されたポリヌクレオチドの使用から利益を得る様々な他の用途のいずれも、本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを使用できる。
【0065】
特定の実施形態では、本開示は、合成反応によるポリヌクレオチド配列決定反応における本開示による修飾ヌクレオチドの使用を提供する。合成による配列決定は、概して、配列決定される鋳型核酸に相補的な伸長されたポリヌクレオチド鎖を形成するために、ポリメラーゼまたはリガーゼを使用して、5’から3’方向に成長するポリヌクレオチド鎖に1つまたは複数のヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドを連続的に追加することを含む。1つまたは複数の追加されたヌクレオチドに存在する塩基の同一性は、検出または「イメージング」ステップで決定できる。追加された塩基の同一性は、各ヌクレオチド取り込みステップの後に決定され得る。鋳型のシーケンスは、従来のWatson-Crick塩基ペアリングルールを使用して推測できる。単一塩基の同一性の決定のための本明細書に記載の色素で標識された修飾ヌクレオチドの使用は、例えば、単一ヌクレオチド多型のスコアリングにおいて有用であり得、そのような単一塩基伸長反応は本開示の範囲内である。
【0066】
本開示の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドの配列は、組み込まれたヌクレオチドに付着した蛍光標識の検出により、配列決定される鋳型ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖への一つ以上のヌクレオチドの取り込みを検出することにより決定される。鋳型ポリヌクレオチドの配列決定は、適切なプライマーでプライミングすることができ(または、ヘアピンの一部としてプライマーを含むヘアピン構築物として調製される)、ポリメラーゼ連鎖反応でプライマーの3’末端にヌクレオチドを付加することにより、新生鎖が段階的に延長される。
【0067】
特定の実施形態において、異なるヌクレオチド三リン酸(A、T、GおよびC)のそれぞれは、独特のフルオロフォアで標識され得、制御されない重合を防ぐために3’位にブロッキング基も含む。あるいは、4つのヌクレオチドの1つは標識されていなくてもよい(ダーク)。ポリメラーゼ酵素は、鋳型ポリヌクレオチドに相補的な新生鎖にヌクレオチドを組み込み、ブロッキング基はヌクレオチドのさらなる組み込みを防ぐ。組み込まれていないヌクレオチドは洗い流すことができ、組み込まれた各ヌクレオチドからの蛍光シグナルは、レーザー励起と適切な放射フィルターを使用した電荷結合デバイスなどの適切な手段によって光学的に「読み取る」ことができる。次いで、3’-ブロッキング基およびフルオロフォア化合物を除去(脱保護)し(同時にまたは連続して)、さらなるヌクレオチド取り込みのために新生鎖を露出させることができる。通常、組み込まれたヌクレオチドの同一性は、各組み込みステップの後に決定されるが、これは厳密に必須ではない。同様に、米国特許第5,302,509号は、固体支持体上に固定化されたポリヌクレオチドを配列決定する方法を開示している。
【0068】
この方法は、上に例示したように、DNAポリメラーゼの存在下で、固定化されたポリヌクレオチドに相補的な成長鎖への蛍光標識3’ブロックヌクレオチドA、G、CおよびTの取り込みを利用する。ポリメラーゼには、標的ポリヌクレオチドに相補的な塩基が組み込まれているが、3’ブロッキング基によってそれ以上の付加が妨げられている。次いで、組み込まれたヌクレオチドの標識を決定し、化学的切断によりブロッキング基を除去して、さらなる重合を生じさせることができる。合成による配列決定反応で配列決定される核酸テンプレートは、配列決定することが望ましい任意のポリヌクレオチドであり得る。配列決定反応のための核酸テンプレートは、典型的には、配列決定反応におけるさらなるヌクレオチドの追加のためのプライマーまたは開始点として機能する遊離3’ヒドロキシル基を有する二本鎖領域を含む。配列決定される鋳型の領域は、相補鎖上のこの遊離3’ヒドロキシル基に張り出す。配列決定される鋳型のオーバーハング領域は一本鎖であってもよいが、配列決定反応の開始のための遊離3’OH基を提供するために配列決定される鋳型鎖に相補的な鎖上に「ニックが存在する」という条件で、二本鎖であってもよい。そのような実施形態において、配列決定は、鎖置換により進行し得る。特定の実施形態では、遊離の3’ヒドロキシル基を有するプライマーを、配列決定される鋳型の一本鎖領域にハイブリダイズする別個の成分(例えば、短いオリゴヌクレオチド)として加えてもよい。あるいは、プライマーおよび配列決定されるテンプレート鎖はそれぞれ、例えばヘアピンループ構造などの分子内二本鎖を形成することができる部分的に自己相補的な核酸鎖の一部を形成してもよい。ヘアピンポリヌクレオチドおよびそれらを固体支持体に付着させる方法は、国際出願公開番号WO0157248およびWO2005/047301に開示されている。ヌクレオチドを成長中のプライマーに連続的に添加することにより、5’から3’の方向にポリヌクレオチド鎖が合成される。付加された塩基の性質は、特に各ヌクレオチドの付加後に決定されるが、必ずしもそうではないため、核酸鋳型の配列情報が提供される。したがって、ヌクレオチドは、ヌクレオチドの5’リン酸基とのホスホジエステル結合の形成を介して核酸鎖の遊離3’ヒドロキシル基に結合することにより、核酸鎖(またはポリヌクレオチド)に組み込まれる。
【0069】
配列決定される核酸鋳型は、DNAまたはRNA、あるいはデオキシヌクレオチドおよびリボヌクレオチドからなるハイブリッド分子であってもよい。核酸鋳型は、配列決定反応における鋳型の複製を妨げない限り、天然および/または非天然ヌクレオチドおよび天然または非天然骨格結合を含んでもよい。
【0070】
特定の実施形態では、配列決定される核酸鋳型は、当技術分野で公知の任意の適切な結合方法により、例えば共有結合により固体支持体に結合され得る。特定の実施形態において、鋳型ポリヌクレオチドは、固体支持体(例えば、シリカベースの支持体)に直接付着され得る。しかしながら、本開示の他の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドの直接共有結合を可能にするか、ヒドロゲルまたは高分子電解質多層を通して鋳型ポリヌクレオチドを固定化するために、何らかの方法で固体支持体の表面を修飾してもよく、それ自体が固体支持体に非共有結合していてもよい。
【0071】
ポリヌクレオチドがシリカベースの支持体に直接結合したアレイは、例えばWO00006770に開示されているものであり、ポリヌクレオチドは、ガラス上のペンダントエポキシド基とポリヌクレオチド上の内部アミノ基との反応によりガラス支持体上に固定化されている。さらに、例えばWO2005/047301に記載されているように、硫黄ベースの求核試薬と固体支持体との反応により、ポリヌクレオチドを固体支持体に付着させることができる。固体支持鋳型ポリヌクレオチドのさらに別の例は、鋳型ポリヌクレオチドがシリカベースまたは他の固体支持体に支持されたヒドロゲルに付着している場合、例えば、WO00/31148、WO01/01143、WO02/12566、WO03/014392、米国特許第6,465,178号およびWO00/53812である。
【0072】
鋳型ポリヌクレオチドが固定化され得る特定の表面は、ポリアクリルアミドヒドロゲルである。ポリアクリルアミドヒドロゲルは、上記引用文献およびWO2005/065814に記載されている。
【0073】
DNA鋳型分子は、ビーズまたは微粒子に結合できる。ビーズまたは微粒子への付着は、シーケンスアプリケーションに役立つ。各ビーズに異なるDNA配列が含まれるビーズライブラリを準備できる。例示的なライブラリおよびそれらの作成方法は、Nature. 437, 376-380 (2005); Science. 309, 5741, 1728-1732 (2005)に記載されている。本明細書に記載のヌクレオチドを使用するこのようなビーズのアレイの配列決定は、本開示の範囲内である。
【0074】
配列される鋳型は、固体支持体上の「配列」の一部を形成する場合があり、その場合、配列は任意の便利な形をとることがある。したがって、本開示の方法は、単一分子アレイ、クラスター化アレイおよびビーズアレイを含むすべてのタイプの高密度アレイに適用可能である。本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドは、固体支持体上の核酸分子の固定化によって形成されたものを含むがこれらに限定されない、本質的に任意のタイプのアレイ上のテンプレートの配列決定に使用され得る。
【0075】
しかしながら、本開示の修飾ヌクレオチドは、クラスター化アレイの配列決定の文脈において特に有利である。クラスター化されたアレイでは、アレイ上の別個の領域(多くの場合、サイトまたは機能と呼ばれる)に複数のポリヌクレオチドテンプレート鋳型が含まれる。概して、複数のポリヌクレオチド分子は、光学的手段によって個別に分解可能ではなく、その代わりにアンサンブルとして検出される。アレイがどのように形成されるかに応じて、アレイ上の各部位は、1つの個々のポリヌクレオチド分子(例えば、特定の一本鎖または二本鎖核酸種に対して部位は均一である)の複数のコピー、または少数の異なるポリヌクレオチド分子の複数のコピーさえも含み得る(例えば、2つの異なる核酸種の複数のコピー)。核酸分子のクラスター化されたアレイは、当技術分野で一般的に知られている技術を使用して生成され得る。例として、それぞれが本明細書に組み込まれているWO98/44151およびWO00/18957は、核酸の増幅方法を記載しており、固定化された核酸分子のクラスターまたは「コロニー」からなるアレイを形成するために、鋳型および増幅産物の両方が固体支持体上に固定化されたままである。これらの方法に従って調製されたクラスター化アレイ上に存在する核酸分子は、本開示の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを使用した配列決定に適した鋳型である。
【0076】
本開示の修飾ヌクレオチドは、単一分子アレイ上の鋳型の配列決定にも有用である。本明細書で使用される「単一分子アレイ」または「SMA」という用語は、固体支持体上に分布(または配列)されたポリヌクレオチド分子の集団を指し、個体群の他のすべてからの個々のポリヌクレオチドの間隔は、個々のポリヌクレオチド分子を個々に分解することが可能なようなものである。したがって、いくつかの実施形態では、固体支持体の表面上に固定化された標的核酸分子は、光学的手段によって分解され得る。これは、それぞれが1つのポリヌクレオチドを表す1つまたは複数の別個の信号が、使用される特定のイメージングデバイスの分解可能な領域内で発生することを意味する。
【0077】
アレイ上の隣接するポリヌクレオチド分子間の間隔が少なくとも100nm、より具体的には少なくとも250nm、さらにより具体的には少なくとも300nm、さらにより具体的には少なくとも350nmである単一分子検出を達成することができる。したがって、各分子は個別に分解可能であり、単一分子蛍光点として検出可能であり、前記単一分子蛍光点からの蛍光も単一ステップの光退色を示す。
【0078】
本明細書では、「個別に分解される」および「個別の分解」という用語を使用して、視覚化されたときに、アレイ上の1つの分子をその隣接分子と区別できることを特定する。アレイ上の個々の分子間の分離は、個々の分子を分解するために使用される特定の技術によってある程度決定される。単一分子アレイの一般的な特徴は、公開された出願WO00/06770およびWO01/57248を参照することにより理解されるであろう。本開示の修飾ヌクレオチドの1つの用途は合成による配列決定反応におけるものであるが、修飾ヌクレオチドの有用性はそのような方法に限定されない。実際、ヌクレオチドは、ポリヌクレオチドに組み込まれたヌクレオチドに付着した蛍光標識の検出を必要とする任意の配列決定方法論で有利に使用され得る。
【0079】
特に、本開示の修飾ヌクレオチドは、自動蛍光配列決定プロトコル、特にサンガーおよび同僚たちの連鎖停止配列決定法に基づくフルオロフォア-ターミネーターサイクル配列決定に使用され得る。そのような方法は一般に、酵素およびサイクル配列決定を使用して、蛍光標識ジデオキシヌクレオチドをプライマー伸長配列決定反応に組み込む。いわゆるサンガーシーケンシング法、および関連プロトコル(サンガータイプ)は、標識ジデオキシヌクレオチドによるランダム化されたチェーンターミネーションを利用する。
【0080】
本開示はまた、フルオロフォアで標識された修飾ヌクレオシドおよび/またはヌクレオチドを含むキットを提供する。そのようなキットは、概して、少なくとも1つのさらなる成分とともに、本明細書に記載されるように標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを含む。さらなる成分は、上記の方法または以下の実施例セクションで特定される1つまたは複数の成分であってもよい。本開示のキットに組み合わせることができる構成要素のいくつかの非限定的な例を以下に記載する。
【0081】
特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載のように標識された少なくとも1つの修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドを、修飾または非修飾ヌクレオチドまたはヌクレオシドとともに含むことができる。例えば、本開示に従って標識された修飾ヌクレオチドは、非標識または天然ヌクレオチド、および/または蛍光標識ヌクレオチドまたはそれらの任意の組み合わせと組み合わせて供給されてもよい。したがって、キットは、本開示による色素で標識された修飾ヌクレオチドおよび他の、例えば、先行技術の色素化合物で標識された修飾ヌクレオチドを含み得る。ヌクレオチドの組み合わせは、別個の個々の成分(例えば、容器またはチューブごとに1つのヌクレオチドタイプ)として、またはヌクレオチド混合物(例えば、同じ容器またはチューブで混合された2つ以上のヌクレオチド)として提供され得る。
【0082】
キットが色素化合物で標識された複数、特に2つ、さらには4つの修飾ヌクレオチドを含む場合、異なるヌクレオチドは異なる色素化合物で標識されるか、色素化合物なしで1つが暗くなる。異なるヌクレオチドが異なる色素化合物で標識されている場合、その色素化合物がスペクトル的に区別可能なフルオロフォアであることはキットの特徴である。本明細書で使用する「スペクトル的に区別可能なフルオロフォア」という用語は、2つ以上のそのような色素が1つのサンプルに存在する場合、蛍光検出装置(例えば、市販のキャピラリーベースのDNAシーケンシングプラットフォーム)によって区別できる波長で蛍光エネルギーを発するフルオロフォアを指す。フルオロフォア化合物で標識された2つの修飾ヌクレオチドがキットの形で供給される場合、スペクトル識別可能なフルオロフォアが、例えば同じレーザーなどの同じ波長で励起できることがいくつかの実施形態の特徴である。フルオロフォア化合物で標識された4つの修飾ヌクレオチドがキットの形で提供される場合、2つのスペクトル的に区別可能なフルオロフォアが両方とも1つの波長で励起でき、他の2つのスペクトルで区別可能な色素が両方とも別の波長で励起できることがいくつかの実施形態の特徴である。具体的な励起波長は532nm、630nm~700nm、特に660nmである。
【0083】
一実施形態では、キットは、本開示の化合物で標識された修飾ヌクレオチドおよび第2色素で標識された第2修飾ヌクレオチドを含み、色素は少なくとも10nm、特に20nmから50nmの吸収極大の差を有する。より詳細には、2つの色素化合物は、15~40nmのストークスシフトを有し、「ストークスシフト」は、ピーク吸収波長とピーク発光波長との間の距離である。
【0084】
さらなる実施形態において、キットは、色素が488nmから550nm、特に532nmで同じレーザーにより励起されるフルオロフォアで標識された2つの他の修飾ヌクレオチドをさらに含むことができる。色素は、少なくとも10nm、特に20nmから50nmの最大吸光度の差を有し得る。より具体的には、2つの色素化合物は、20~40nmのストークスシフトを有し得る。さらにより具体的には、2つの色素化合物は、640nm未満、特に600nm未満の異なる吸収極大を有し得る。本開示のポリメチン色素とスペクトル的に区別可能であり、上記の基準を満たす特定の色素は、米国特許第5,268,486号(例えばCy3)またはWO226891(Alexa 532; Molecular Probes A20106)に記載されているポリメチン類似体、または米国特許第6,924,372号に開示されている非対称ポリメチンである。別の色素には、ローダミン類似体、例えばテトラメチルローダミンおよびその類似体が含まれる。
【0085】
別の実施形態では、本開示のキットは、同じ塩基が2つの異なる化合物で標識されているヌクレオチドを含んでもよい。1番目のヌクレオチドは、第1の蛍光化合物、例えば650nmを超える波長で吸収する「赤色」フルオロフォアで標識されてもよい。2番目のヌクレオチドは、スペクトルが異なる化合物、たとえば600nm未満で吸収する「緑色」のフルオロフォアで標識することができる。3番目のヌクレオチドは、1番目のフルオロフォアとスペクトル的に異なる化合物の混合物として標識され、4番目のヌクレオチドは「暗」で標識を含まないこととしてもよい。したがって、簡単に言えば、ヌクレオチド1~4は、「緑」、「赤」、「赤/緑」、および暗色とラベル付けすることとしてもよい。機器をさらに簡素化するために、1つのレーザーで励起された2つの色素で4つのヌクレオチドを標識できる。したがって、ヌクレオチド1~4の標識は「赤1」、「赤2」、「赤1/赤2」、ダークまたは「グリーン1」、「グリーン2」、「グリーン1/グリーン2」、およびダークであり得る。
【0086】
キットは、異なる色素化合物で標識された異なるヌクレオチドを有する構成に関して上記で例示されているが、キットは同じ色素化合物を有する2、3、4またはそれ以上の異なるヌクレオチドを含むことができることが理解される。
【0087】
特定の実施形態では、キットは、修飾ヌクレオチドのポリヌクレオチドへの取り込みを触媒することができるポリメラーゼ酵素を含み得る。そのようなキットに含まれるべき他の成分には、緩衝液などが含まれ得る。本開示による色素で標識された修飾ヌクレオチド、および異なるヌクレオチドの混合物を含む他の任意のヌクレオチド成分は、使用前に希釈される濃縮形態でキットに提供されてもよい。そのような実施形態では、適切な希釈緩衝液も含めることができる。ここでも、本明細書に記載の方法で特定された1つまたは複数の構成要素は、本開示のキットに含めることができる。
【0088】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、明示的かつ明確に1つの指示対象に限定されない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。本教示の精神または範囲から逸脱することなく、本明細書に記載の様々な実施形態に対して様々な修正および変更を行うことができることは、当業者には明らかであろう。したがって、本明細書で説明される様々な実施形態は、添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物の範囲内で他の修正および変形を包含することが意図されている。
【0089】
追加の実施形態は、特許請求の範囲を限定することを決して意図するものではない以下の実施例でさらに詳細に開示される。
【0090】
実施例1.ショートペンダントアームヌクレオチド三リン酸の合成
【化19】
スキーム1:2つのショートペンダントアームヌクレオチド三リン酸(pppT-sPA-FlおよびpppT-sPA2-Fl、Flはフルオロフォア)の合成の例
中間体L2の合成
【0091】
出発材料L1(1.07g、4mmol)を無水DMF(15mL)に溶解し、氷浴中0℃で窒素下に置いた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(884μL、4.8mmol)を加え、続いてPyBOP(2.29g、4.4mmol)を加えた。反応物を窒素下で、0℃で20分間撹拌した。次いで、N-(5-アミノペンチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド、トリフルオロ酢酸塩(1.5g、4.8mmol)を加え、続いてN,N-ジイソプロピルエチルアミン(1mL、5.4mmol)を加えた。反応物を氷浴から外し、室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチル(100mL)に溶解した。溶液を3×の100mLの希釈KHSO4水溶液(pH=1)、1×の50mLの水、2×の100mLの飽和NaHCO3水溶液で抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中の酢酸エチルの直線勾配、50%から100%)により精製した。L2は透明な粘性のある油として分離された(1.60g、3.59mmol、90%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.45 (m, 1H, Ar CH), 7.33 (m, 2H, Ar CH), 7.07 (m, 2H, Ar CH, NH), 6.57 (t, J = 5.6 Hz, 1H, NH), 4.85 (t, J = 4.9 Hz, 1H, CH-N3), 4.22 (dd, J =10.4, 5.1 Hz, 1H, CH2-OAr), 4.16 (dd, J = 10.5, 4.7 Hz, 1H, CH2-OAr), 4.00 (ddd, J = 10.1, 4.9, 2.9 Hz, 1H, CH2-O), 3.83 (m, 2H, CH2-OH), 3.75 (ddd, J = 9.8, 6.6, 3.0 Hz, 1H, CH2-O), 3.45 (q, J = 6.7 Hz, 2H, CH2-NH), 3.36 (q, J = 6.6 Hz, 2H, CH2-NH), 2.78 (t, J = 6.2 Hz, 1H, OH), 1.65 (m, 4H, CH2-CH2-NH), 1.41 (p, J = 7.4, 6.9 Hz, 2H, CH2-CH2-CH2-NH). 19F NMR (376.5 MHz, CDCl3): δ (ppm) -75.7. 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ (ppm) 167.5 (s), 158.2 (s), 137.5 (s), 135.9 (s), 129.7 (d), 128.2 (d), 119.6 (d), 118.5 (d), 113.2 (d), 89.9 (d), 71.4 (t), 69.4 (t), 61.6 (t), 39.7 (t), 39.4 (t), 29.0 (t), 28.1 (t), 23.6 (t). LC-MS (ESおよびCI): (-ve) m/z 446 (M-H+); (+ve) m/z 448 (M+H+), 470 (M+Na+).
リンカーsPA LN3 TFAの合成
【0092】
アルコールL2(500mg、1.12mmol)をアセトニトリル(15mL)に溶解し、TEMPO(70mg、0.448mmol)をそれに加えた。NaH2PO4・2H2O(1.1g、7.2mmol)およびNaClO2(405mg、4.48mmol)を10mLの水に溶解し、反応物に加えた。その後、NaClO水溶液(14.5%の有効塩素、1.32mL、2.24ミリモル)を加えると、溶液は直ちに暗褐色に変わった。反応物を室温で6時間撹拌した。この間、茶色はオレンジ色に退色した。反応物が無色になるまで濃Na2S2O3水溶液でクエンチした。アセトニトリルを減圧下で蒸発させ、溶液を水20mLで希釈し、トリエチルアミン(約1mL)で塩基性化した。溶液を酢酸エチル10mLで抽出し、水相を減圧下で濃縮した。粗sPA LN3 TFAを、C18の逆相クロマトグラフィー(水中0%から30%のアセトニトリルの直線勾配)により精製し、透明な油(438mg、0.95mmol、85%)として単離した。RP-HPLC:tR=17.9分(YMC-C18分析カラムでの5~50%の0.1M TEAB/アセトニトリル勾配)。1H NMR (400 MHz, CD3CN): δ (ppm) 8.03 (br s, 1H, NH), 7.63 (s, 1H, NH), 7.54 (s, 1H, Ar), 7.42 (d, J = 7.7 Hz, 1H, Ar), 7.34 (t, J = 7.9 Hz, 1H, Ar), 7.08 (d, J = 8.1 Hz, 1H, Ar), 5.10 (m, 1H, CH-N3), 4.35 (dd, J =10.9, 3.7 Hz, 1H, CH2O), 4.18 (dd, J = 10.8, 6.1 Hz, 1H, CH2O), 4.09 (m, 2H, CH2O), 3.32 (m, 2H, CH2-NH), 3.27 (m, 2H, CH2-NH), 3.02 (q, J = 7.3 Hz, 2H, Et3N), 1.60 (m, 4H, CH2-CH2-NH ), 1.39 (m, 2H, CH2-CH2-CH2-NH ), 1.21 (t, J = 7.3 Hz, 2H, Et3N). 19F NMR (376.5 MHz, CD3CN): δ (ppm) -76.5. 13C NMR (100 MHz, CD3OD): δ (ppm) 173.1 (s), 170.0 (s), 159.9 (s), 137.5 (s), 131.0 (d), 125.7 (d), 121.4 (d), 119.2 (d), 114.5 (d), 90.8 (d), 70.5 (t), 66.7 (t), 41.0 (t), 40μ.8 (t), 30.2 (t), 29.7 (t), 25.4 (t). LC-MS (ESおよびCI): (-ve) m/z 460 (M-H+). (+ve) m/z 484 (M+Na+), 561 (M+Et3NH+)
中間体L3の合成
【0093】
出発物質L1(658mg、2.46mmol)を無水DMF(10mL)に溶解し、氷浴中0℃で窒素下に置いた。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(544μL、2.95ミリモル)を加え、続いてPyBOP(1.41g、2.71ミリモル)を加えた。反応物を窒素下で、0℃で20分間撹拌し、次いでN-(2-アミノエチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド、トリフルオロ酢酸塩(796mg、2.95mmol)、続いてN,N-ジイソプロピルエチルアミンを加えた。(589μL、3.2ミリモル)。反応物を氷浴から外し、室温で3時間撹拌した。溶媒を減圧下で除去し、残渣を酢酸エチル(100mL)に溶解した。溶液を3×の100mLの希釈KHSO4水溶液(pH=1)、1×の50mLの水、2×の100mLの飽和NaHCO3水溶液で抽出した。有機相を無水Na2SO4で乾燥させ、溶媒を減圧下で除去した。粗生成物を、シリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(DCM中の酢酸エチルの直線勾配、50%から100%)により精製し、粘性油(0.91g、2.24ミリモル、91%)として単離した。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 8.19 (br s, 1H, NH), 7.39 (d, J = 1.7 Hz, 1H, Ar CH), 7.38 - 7.30 (m, 2H, Ar), 7.24 (t, J = 5.5 Hz, 1H, Ar CH), 7.07 (dt, J =7.2, 2.1 Hz, 1H, Ar CH), 4.84 (t, J =4.9 Hz, 1H, CH-N3), 4.20 (dd, J = 10.5, 5.1 Hz, 1H, CH2-OAr), 4.15 (dd, J = 6.0, 4.5 Hz, 1H, CH2-OAr), 4.00 (ddd, J = 10.2, 4.8, 3.0 Hz, 1H, CH2-O), 3.88 - 3.79 (m, 2H, CH2-OH), 3.74 (ddd, J = 9.8, 6.4, 3.2 Hz, 1H, CH2-O), 3.65 (m, 2H, CH2-NH), 3.58 (m, 2H, CH2-NH), 2.82 (t, J = 5.6 Hz 1H, OH). 19F NMR (376.5 MHz, CDCl3): δ (ppm) -75.9. LC-MS (ESおよびCI): (-ve) m/z 404 (M-H+); (+ve) m/z 406 (M+H+), 428 (M+Na+)
sPA2 LN3 TFAの合成
【0094】
アルコールL3(230mg、0.567mmol)をアセトニトリル(10mL)に溶解し、TEMPO(35mg、0.27mmol)を加えた。NaH2PO4・2H2O(575mg、3.68mmol)およびNaClO2(205mg、2.26mmol)を10mLの水に溶解し、反応物に加えた。その後、NaClO水溶液(14.5%塩素含有量、0.671mL、1.13mmol)を加えると、溶液は直ちに暗褐色に変わった。反応物を室温で18時間撹拌した。この間、茶色はオレンジ色に退色した。無色になるまで濃Na2S2O3水溶液で反応停止した。アセトニトリルを減圧下で蒸発させ、溶液を水10mLで希釈し、トリエチルアミン(約0.6mL)で塩基性化し、酢酸エチル10mLで抽出した。水相を減圧下で濃縮した。粗sPA2 LN3 TFAをC18の逆相クロマトグラフィー(0%から20%までの水中のアセトニトリルの直線勾配)により精製し、透明な油として単離した(224mgのトリエチルアンモニウム塩、0.43mmol、77%)。RP-HPLC:tR=17.9分(YMC-C18分析カラムで5%から40%の0.1M TEAB/アセトニトリル勾配)。1H NMR (400 MHz, CD3CN): δ (ppm) 8.52 (br s, 1H, NH), 8.34 (br s, 1H, NH), 7.77 (s, 1H, Ar), 7.49 (dt, J = 7.7, 1.1 Hz, 1H, Ar), 7.38 (t, J = 7.9 Hz, 1H, Ar), 7.10 (ddd, J = 8.2, 2.6, 1.0 Hz, 1H, Ar), 5.14 (dd, J = 6.7, 3.4 Hz, 1H, CH-N3), 4.48 (dd, J =11.5, 3.4 Hz, 1H, CH2O), 4.20 (dd, J = 11.5, 6.7 Hz, 1H, CH2O), 4.11 (d, J = 1.4 Hz, 2H, CH2O), 3.66 - 3.42 (m, 4H, CH2-NH), 3.05 (q, J = 7.3 Hz, 5H, Et3N), 1.22 (t, J = 7.3 Hz, 8H, Et3N). 19F NMR (376.5 MHz, CD3CN): δ (ppm) -76.3. 13C NMR (101 MHz, CD3CN): δ (ppm) 173.1 (s), 166.9 (s), 157.6 (s), 135.7 (s), 129.3 (d), 120.0 (d), 118.0 (d), 117.0 (s), 112.1 (d), 88.4 (d), 68.8 (t), 67.6 (t), 45.1 (t), 39.2 (t), 38.4 (t), 7.5 (q). LC-MS (ESおよびCI): (-ve) m/z 418 (M-H+).
pppT-sPAおよびpppT-sPA2の一般的な合成
【0095】
リンカー(sPA-LN3-TFAまたはsPA2-LN3-TFA、0.089mmol)を2×の2mLの無水N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)と共蒸発させ、2mLの無水DMFに溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(33μL、0.178mmol)を加え、N,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU、32mg、0.106mmol)を加えた。反応物を窒素下、室温で1時間撹拌した。その間に、三リン酸PA-TTPの水溶液(0.1mmol)を減圧下で蒸発乾固させ、300μLの0.1M重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)水溶液に再懸濁した。リンカー溶液を三リン酸に加え、反応物を室温で18時間撹拌した。次に、溶媒を減圧下で蒸発させ、残渣を1mLのメタノールと3mLの33%水酸化アンモニウム水溶液に溶解した。溶液を室温で7時間撹拌し、次いで蒸発乾固させた。粗生成物を、0.1M TEABおよびアセトニトリルで溶出するYMC-Pack-Pro C18カラムを使用した分取スケールRP-HPLCで精製した。pppT-sPA:収率:67%。RP-HPLC:tR=16.9分(YMC-C18分析カラムで5%から35%の0.1M TEAB/アセトニトリル勾配)。LC-MS(ESおよびCI):(-ve)m/z922(M-H+)、461(M-2H+)。pppT-sPA2:収率:65%。RP-HPLC:tR=17.5分(YMC-C18分析カラムで5%から30%の0.1M TEAB/アセトニトリル勾配)。LC-MS (ESおよびCI): (-ve) m/z 880 (M-H+), 440 (M-2H+).
pppT-sPA-FlおよびpppT-sPA2-Flの一般的な合成
【0096】
フルオロフォアカルボキシレート(Fl、0.0105mmol)を2×の2mLの無水N,N’-ジメチルホルムアミド(DMF)と共蒸発させた後、2mLの無水N,N’-ジメチルアセトアミドDMAに溶解した。N,N-ジイソプロピルエチルアミン(15μL、0.084mmol)を添加し、続いてN,N,N’,N’-テトラメチル-O-(N-スクシンイミジル)ウロニウムテトラフルオロボレート(TSTU、0.012mmol)を添加した。反応物を窒素下、室温で45分間撹拌した。その間に、三リン酸pppT-sPAまたはpppT-sPA2(0.084ミリモル)の水溶液を減圧下で蒸発乾固させ、300μLの0.1M重炭酸トリエチルアンモニウム(TEAB)水溶液に再懸濁した。フルオロフォア-NHSエステル溶液を三リン酸に加え、反応物を室温で18時間撹拌した。粗生成物は、DEAE-Sephadexのイオン交換クロマトグラフィー(20%アセトニトリルによる、0.1M TEABから1M TEABへの勾配)および分取スケールRP-HPLCで精製した(YMC-Pack-Pro C18カラム、0.1M TEABおよびアセトニトリルで溶出)。
N-(アミノアルキル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミドの一般的な合成
【0097】
【0098】
tert-ブチル(アミノアルキル)カルバメート(48mmol)を無水DCM(60mL)に溶解し、窒素下で氷浴に入れた。トリエチルアミン(103mmol)を加え、続いて無水トリフルオロ酢酸(53mmol)を滴下した。反応物を氷浴から外し、室温で1時間撹拌した。反応物を200mLのDCMで希釈し、2×の200mLの飽和NaHCO3水溶液で抽出した。有機相を無水MgSO4で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗生成物をシリカゲル上のフラッシュクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル3:7)により精製した。
【0099】
tert-ブチル(5-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)ペンチル)カルバメート(n=5):1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 6.40 (br s, 1H, NH), 4.49 (br s, 1H, NH), 3.30 (q, J = 6.8 Hz, 2H, CH2-NH), 3.06 (q, J = 6.6 Hz, 2H, CH2-NH), 1.56 (p, J = 7.2 Hz, 2H, CH2-CH2-NH ), 1.45 (p, J = 7.0 Hz, 2H, CH2-CH2-NH), 1.37 (m, 9H, CH3), 1.31 (m, 2H, CH2-CH2- CH2-NH).19F NMR (376.5 MHz, CDCl3): δ (ppm) -75.8.
【0100】
tert-ブチル(2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)エチル)カルバメート(n=2):1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ (ppm) 7.72 (br s, 1H, NH), 4.86 (br s, 1H, NH), 3.39 (m, 2H, CH2-NH), 3.31 (m, 2H, CH2-NH), 1.38 (s, 9H, CH3). 19F NMR (376.5 MHz, CDCl3): δ (ppm) -76.1.
【0101】
tert-ブチル(2-(2,2,2-トリフルオロアセトアミド)アルキル)カルバメート(44mmol)を無水DCM(40mL)およびトリフルオロ酢酸(40mL)に溶解した。反応物を室温で撹拌し、空気に開放して1時間放置した。揮発物を減圧下で除去した。残渣を水に溶かし、50mLのDCMで抽出した後、水相を蒸発乾固させた。残留物を100mLのエタノールおよび4×の100mLのアセトニトリルと共蒸発させた。
【0102】
N-(5-アミノペンチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(n=5):1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ (ppm) 9.44 (br s, 1H, NH), 7.75 (br s, 3H, NH), 3.17 (q, J = 6.7 Hz, 2H, CH2-NH), 2.77 (m, 2H, CH2-NH), 1.57-1.45 (m, 4H, CH2-CH2-NH), 1.29 (m, 2H, CH2-CH2- CH2-NH ).19F NMR (376.5 MHz, d6-DMSO): δ (ppm) -74.4, -74.7.
【0103】
N-(2-アミノエチル)-2,2,2-トリフルオロアセトアミド(n=2):1H NMR (400 MHz, d6-DMSO): δ (ppm) 9.58 (br t, 1H, NHCO), 8.04 (br s, 3H, NH), 3.45 (m, 2H, CH2NHCO), 2.98 (m, 2H, CH2NH). 19F NMR (376.5 MHz, d6-DMSO): δ (ppm) -74.0, -74.4.
実施例2.SBS配列決定におけるショートペンダントアームヌクレオチド三リン酸の使用
【0104】
ショートペンダントアームヌクレオチドの配列決定性能を、スタンダードな切断可能リンカー上に同じ蛍光基を含む標準的なSBSヌクレオチドのものと比較した。2チャネルSBSシーケンスに適したフルオロフォアで標識された4つのショートペンダントアームヌクレオチド(2つのAs、C、T)(
図3)、およびダークGはDNAポリメラーゼと取り込みバッファーを含む溶液に含まれ、2チャネル修飾Hiseq(登録商標)または2チャネル修飾Miseq(登録商標)のいずれかで使用され、それぞれ150サイクルの2回の読み取りで配列決定された。同じ条件下で、4つすべてのショートペンダントアームヌクレオチドまたはすべてのスタンダードヌクレオチドを使用して行った実験間で、シーケンスメトリック(例えば、フェーズ、プリフェーズ、%エラー率、%Q30)を比較した(例えば、取り込み温度、取り込み時間、ポリメラーゼ、鋳型ライブラリ)。結果を
図4A~4C並びに
図5Aおよび5Bに示す。
【0105】
図4A~4Cは、50℃の取り込み温度と10秒の取り込み時間を使用し、2つの異なるポリメラーゼ(PolAとPolB)と2つの異なる鋳型ライブラリ(PhiXとヒト)を使用し、2チャネル修飾Hiseq(登録商標)上のスタンダードおよびショートペンダントアームヌクレオチドで観察されたシーケンスメトリック(フェーズ、プリフェーズ、%エラー率、%Q30)の例を示す。ショートペンダントアームヌクレオチドが使用された場合、使用されたポリメラーゼまたは鋳型に関係なく、フェーズおよび%エラー率の減少と%Q30の増加が観察された。
【0106】
図5Aおよび5Bは、PhiX鋳型で60℃の取り込み温度で2チャネル修飾Miseq(登録商標)のスタンダードまたはショートペンダントアームヌクレオチドで観察され、異なる取り込み時間を可能にするシーケンスメトリック(フェーズと%エラー率)の例を示す。
【0107】
ショートペンダントアームヌクレオチドにより、%エラー率に大きな影響を与えることなく、取り込み時間を約50%短縮できた。テストした最短取り込み時間(10+5秒)で、スタンダードヌクレオチドのエラー率2.5%と比較して、%エラー率の割合はまだ<1%であった。