(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】チャンバ圧力制御方法及び装置、半導体設備
(51)【国際特許分類】
G05D 16/20 20060101AFI20220316BHJP
G05B 11/36 20060101ALI20220316BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
G05B11/36 N
(21)【出願番号】P 2019572824
(86)(22)【出願日】2019-12-24
(86)【国際出願番号】 CN2019127864
(87)【国際公開番号】W WO2020211440
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2020-02-25
(31)【優先権主張番号】201910314577.2
(32)【優先日】2019-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520001981
【氏名又は名称】ベイジン セブンスター フロー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Beijing Sevenstar Flow Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Wenchang Avenue Beijing Economic-Technological Development Area, Beijing 100176, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン ウェンニン
(72)【発明者】
【氏名】ヂャオ ディ
(72)【発明者】
【氏名】チェン ヂォンタン
【審査官】大古 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2009/072241(WO,A1)
【文献】特開2010-152763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 16/20
G05B 11/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ圧力制御方法であって、
前記チャンバ圧力制御方法は半導体設備によって実行され、
チャンバ内部の実質圧力値を検出するステップS1と、
前記実質圧力値と予め設定された目標圧力値との差値を計算し、かつ前記差値が所定の範囲を超えているか否かを判断し、超えている場合はステップS3を実行し、超えていない場合はフローを終了するステップS2と、
曲率と所定のPID係数との積である制御係数を取得するステップであって、前記曲率が、現時点のガス流量値に対応する、圧力と実行ユニットの位置パラメータとに関する曲線における、前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する曲率であるステップS3と、
前記差値と前記制御係数とに基づいて、前記実行ユニットの位置パラメータ調整量を計算して取得するとともに、前記実行ユニットに出力し、前記ステップS2に戻るステップS4と、を含むことを特徴とする、
チャンバ圧力制御方法。
【請求項2】
前記ステップS1の前に、
サンプルデータテンプレートを予め記憶するステップS0をさらに含み、
前記サンプルデータテンプレートは、異なる前記ガス流量値と前記曲線との対応関係、及び各前記曲線における異なる前記位置パラメータ値と曲率との対応関係を含み、
前記ステップS3は、
現時点の前記ガス流量値と前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値とに基づいて、前記サンプルデータテンプレートから前記曲率を取得するステップS31と、
前記サンプルデータテンプレートから取得した前記曲率と前記PID係数との積を計算するステップS32と、をさらに含むことを特徴とする、
請求項1に記載のチャンバ圧力制御方法。
【請求項3】
前記実行ユニットは圧力調節弁を含み、前記実行ユニットの位置パラメータは、前記圧力調節弁の、その開度に対応する弁の位置であることを特徴とする、請求項1または2に記載のチャンバ圧力制御方法。
【請求項4】
前記実行ユニットの位置パラメータの初期値は、前記圧力調節弁の開度の数値範囲に対応する範囲内に設定されており、前記開度の数値範囲は30°~50°であることを特徴とする、請求項3に記載のチャンバ圧力制御方法。
【請求項5】
前記ガス流量値の数値範囲は3~50L/minであることを特徴とする、請求項1または2に記載のチャンバ圧力制御方法。
【請求項6】
前記ステップS1において、前記チャンバの排気口部分の圧力を前記実質圧力値として検出する、
または前記チャンバの内部圧力と前記チャンバ外部の大気圧との差値を前記実質圧力値として検出することを特徴とする、
請求項1に記載のチャンバ圧力制御方法。
【請求項7】
チャンバ圧力制御装置であって、検出ユニットと、制御ユニットと、実行ユニットとを含み、
前記検出ユニットは、チャンバ内部の実質圧力値を検出するとともに、前記制御ユニットに送信するために用いられ、
前記制御ユニットは、前記実質圧力値と予め設定された目標圧力値との差値を計算し、
かつ前記差値が所定の範囲を超えているか否かを判断し、超えている場合は制御係数を取得し、かつ前記差値及び前記制御係数に基づいて、実行ユニットの位置パラメータ調整量を計算して取得するとともに、該実行ユニットに出力するために用いられ、前記制御係数は、曲率と所定のPID係数との積であり、前記曲率は、現時点のガス流量値に対応する、圧力と位置パラメータとに関する曲線における、前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する曲率であり、
前記実行ユニットは、前記位置パラメータ調整量に基づいて自身の位置パラメータを調節するために用いられることを特徴とする、
チャンバ圧力制御装置。
【請求項8】
前記制御ユニットは、記憶モジュールと、取得モジュールと、計算モジュールと、制御モジュールとを含み、
前記記憶モジュールはサンプルデータテンプレートを記憶するために用いられ、前記サンプルデータテンプレートは、異なる前記ガス流量値と前記曲線との対応関係、及び各前記曲線における異なる前記位置パラメータ値と曲率との対応関係を含み、
前記取得モジュールは、現時点の前記ガス流量値と前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値とに基づいて、前記記憶モジュールに記憶された前記サンプルデータテンプレートから前記曲率を取得し、かつ前記計算モジュールに送信するために用いられ、
前記計算モジュールは、前記サンプルデータテンプレートから取得した前記曲率と前記PID係数との積を計算し、かつ前記制御係数として前記制御モジュールに送信するために用いられ、
前記制御モジュールは、前記差値と前記制御係数とに基づいて、実行ユニットの位置パラメータ調整量を計算して取得し、かつ前記実行ユニットに出力するために用いられることを特徴とする、
請求項7に記載のチャンバ圧力制御装置。
【請求項9】
前記実行ユニットは、前記チャンバの排気流量を調節するための圧力調節弁と、前記チャンバの内部ガスを抜き取るための真空装置とを含み、
前記位置パラメータは、前記圧力調節弁の、その開度に対応する弁の位置であることを特徴とする、
請求項7または8に記載のチャンバ圧力制御装置。
【請求項10】
前記圧力調節弁は、バタフライ弁、ニードル弁またはボール弁を含むことを特徴とする、請求項9に記載のチャンバ圧力制御装置。
【請求項11】
前記チャンバ圧力制御装置はさらに、ユーザが入力した前記目標圧力値を受信し、かつ前記制御ユニットに送信するための入力ユニットを含むことを特徴とする、
請求項7に記載のチャンバ圧力制御装置。
【請求項12】
前記検出ユニットは、前記チャンバの排気口部分の圧力を前記実質圧力値として検出するために用いられ、
または、前記検出ユニットは、前記チャンバの内部圧力と前記チャンバ外部の大気圧との差値を前記実質圧力値として検出するために用いられることを特徴とする、
請求項7に記載のチャンバ圧力制御装置。
【請求項13】
反応チャンバを含む半導体設備であって、前記反応チャンバの圧力を制御するためのチャンバ圧力制御装置をさらに含み、前記チャンバ圧力制御装置は、請求項7~12のいずれか1項に記載のチャンバ圧力制御装置を採用しており、
前記検出ユニットは、前記反応チャンバ内部の実質圧力値を検出するとともに、前記制御ユニットに送信するために用いられ、前記実行ユニットは、前記反応チャンバの排気口部分に設置され、前記位置パラメータ調整量に基づいて自身の位置パラメータを調節するために用いられることを特徴とする、
半導体設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は半導体製造技術分野に関し、特にチャンバ圧力制御方法及び装置、半導体設備に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造、太陽光発電などの分野では、酸化炉などの反応チャンバは半導体工程プロセスにおいて最も重要な設備である。コーティングなどの工程を行う過程で、反応チャンバ内に投入する反応ガスには、H2、HCl、大量のO2、少量のC2H2Cl2、N2などが含まれており、これらの反応ガスは、一定の圧力条件下で化学反応を行って、工程結果、例えばコーティングの厚さなどが要求を満たすよう確保する必要があり、反応チャンバ内の圧力が設定圧力で安定するよう保持しなければならず、工程の実際の圧力が設定圧力より大きかったり小さかったりすると、コーティングの厚さに影響が生じる。現在、反応チャンバ内の圧力を精確かつ高速に制御可能な方法及び装置が早急に必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、少なくとも従来技術において存在する技術的課題の一つを解決するために、チャンバ圧力制御方法及び装置、半導体設備を提供することにあり、それらはチャンバ内の圧力を精確かつ高速で制御し、圧力を所定の範囲内で安定させることで、工程品質及び歩留まりを向上させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を実現するために、本発明が提供するチャンバ圧力制御方法は、チャンバ内部の実質圧力値を検出するステップS1と、前記実質圧力値と予め設定された目標圧力値との差値を計算し、かつ前記差値が所定の範囲を超えているか否かを判断し、超えている場合はステップS3を実行し、超えていない場合はフローを終了するステップS2と、曲率と所定のPID係数との積である制御係数を取得するステップであって、前記曲率が、現時点のガス流量値に対応する、圧力と実行ユニットの位置パラメータとに関する曲線における、前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する曲率であるステップS3と、前記差値と前記制御係数とに基づいて、前記実行ユニットの位置パラメータ調整量を計算して取得するとともに、前記実行ユニットに出力し、前記ステップS2に戻るステップS4と、を含む。
【0005】
好適には、前記ステップS1の前に、サンプルデータテンプレートを予め記憶するステップS0をさらに含み、前記サンプルデータテンプレートは、異なる前記ガス流量値と前記曲線との対応関係、及び各前記曲線における異なる前記位置パラメータ値と曲率との対応関係を含み、前記ステップS3は、現時点の前記ガス流量値と前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値とに基づいて、前記サンプルデータテンプレートから前記曲率を取得するステップS31と、前記サンプルデータテンプレートから取得した前記曲率と前記PID係数との積を計算するステップS32と、をさらに含む。
【0006】
好適には、前記実行ユニットは圧力調節弁を含み、前記実行ユニットの位置パラメータは、前記圧力調節弁の、その開度に対応する弁の位置である。
【0007】
好適には、前記実行ユニットの位置パラメータの初期値は、前記圧力調節弁の開度の数値範囲に対応する範囲内に設定されており、前記開度の数値範囲は30°~50°である。
【0008】
好適には、前記ガス流量値の数値範囲は3~50L/minである。
好適には、前記ステップS1において、前記チャンバの排気口部分の圧力を前記実質圧力値として検出する、
【0009】
または前記チャンバの内部圧力と前記チャンバ外部の大気圧との差値を前記実質圧力値として検出する。
【0010】
別の技術的解決手段として、本発明ではさらに、検出ユニットと、制御ユニットと、実行ユニットとを含むチャンバ圧力制御装置を提供しており、前記検出ユニットは、チャンバ内部の実質圧力値を検出するとともに、前記制御ユニットに送信するために用いられ、前記制御ユニットは、前記実質圧力値と予め設定された目標圧力値との差値を計算し、かつ前記差値が所定の範囲を超えているか否かを判断し、超えている場合は制御係数を取得し、前記差値及び前記制御係数に基づいて、実行ユニットの位置パラメータ調整量を計算して取得するとともに、該実行ユニットに出力するために用いられ、前記制御係数は、曲率と所定のPID係数との積であり、前記曲率は、現時点のガス流量値に対応する、圧力と位置パラメータとに関する曲線における、前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する曲率であり、前記実行ユニットは、前記位置パラメータ調整量に基づいて、自身の位置パラメータを調節するために用いられる。
【0011】
好適には、前記制御ユニットは、記憶モジュールと、取得モジュールと、計算モジュールと、制御モジュールとを含み、前記記憶モジュールはサンプルデータテンプレートを記憶するために用いられ、前記サンプルデータテンプレートは、異なる前記ガス流量値と前記曲線との対応関係、及び前記各曲線における異なる前記位置パラメータ値と曲率との対応関係を含み、前記取得モジュールは、現時点の前記ガス流量値と前記実行ユニットの現時点の位置パラメータ値とに基づいて、前記記憶モジュールに記憶された前記サンプルデータテンプレートから前記曲率を取得し、かつ前記計算モジュールに送信するために用いられ、前記計算モジュールは、前記サンプルデータテンプレートから取得した前記曲率と前記PID係数との積を計算し、かつ前記制御係数として前記制御モジュールに送信するために用いられ、前記制御モジュールは、前記差値と前記制御係数とに基づいて、実行ユニットの位置パラメータ調整量を計算して取得し、かつ前記実行ユニットに出力するために用いられる。
【0012】
好適には、前記実行ユニットは、前記チャンバの排気流量を調節するための圧力調節弁と、前記チャンバの内部ガスを抜き取るための真空装置とを含み、前記位置パラメータは、前記圧力調節弁の、その開度に対応する弁の位置である。
【0013】
好適には、前記圧力調節弁は、バタフライ弁、ニードル弁またはボール弁を含む。
【0014】
好適には、前記チャンバ圧力制御装置はさらに、ユーザが入力した前記目標圧力値を受信し、かつ前記制御ユニットに送信するための入力ユニットを含む。
【0015】
好適には、前記検出ユニットは、前記チャンバの排気口部分の圧力を前記実質圧力値として検出するために用いられ、または、前記検出ユニットは、前記チャンバの内部圧力と前記チャンバ外部の大気圧との差値を前記実質圧力値として検出するために用いられる。
【0016】
別の技術的解決手段として、本発明ではさらに、反応チャンバを含む半導体設備を提供しており、前記反応チャンバの圧力を制御するためのチャンバ圧力制御装置をさらに含み、前記チャンバ圧力制御装置は、本発明で提供する上記のチャンバ圧力制御装置が用いられており、前記検出ユニットは、前記反応チャンバ内部の実質圧力値を検出するとともに、前記制御ユニットに送信するために用いられ、前記実行ユニットは前記反応チャンバの排気口部分に設置され、前記位置パラメータ調整量に基づいて自身の位置パラメータを調節するために用いられる。
【0017】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
本発明で提供するチャンバ圧力制御方法及び装置、半導体設備の技術的解決手段では、ステップS1、ステップS2及びステップS4によってチャンバ圧力に対する閉ループ制御を実現するとともに、ステップS3によって制御係数を取得しており、該制御係数は、現時点のガス流量値に対応する、圧力と位置パラメータとに関する曲線における、実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する曲率と所定のPID(Proportion-Integral-Derivative)係数との積であり、即ち、ガス流量、圧力及び実行ユニットの位置パラメータの間の対応関係に基づいて、異なるガス流量条件において、PID係数に対する段階的な細かい調節を行うことができ、それによってチャンバ圧力に対する高速で安定した制御を行い、圧力を所定の範囲内で安定させることができ、工程品質及び歩留まりを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施例で提供するチャンバ圧力制御方法のフローチャートである。
【
図2】
図2は、あるガスの特定流量における、圧力と位置パラメータとに関する曲線図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施例で提供するチャンバ圧力制御方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施例で提供するチャンバ圧力制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、本発明の第3実施例で採用している制御ユニットの機能ブロック図である。
【
図6】
図6は、本発明の第3実施例で提供するチャンバ圧力制御装置の構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
当業者がより適切に本発明の技術的解決手段を理解できるように、以下では、図面と組み合わせて、本発明で提供するチャンバ圧力制御方法及び装置、半導体設備について詳細に説明する。
【0020】
図1を参照すると、本発明の第1実施例で提供するチャンバ圧力制御方法は、 チャンバ内部の実質圧力値を検出するステップS1を含む。
【0021】
ステップS1では、好適には、チャンバの排気口部分の圧力を実質圧力値として検出するか、または、チャンバの内部圧力とチャンバ外部の大気圧との差値を実質圧力値として検出することができる。すなわち、本実施例で提供するチャンバ圧力制御方法は、絶対的圧力制御方法または相対的圧力制御方法に適用することができる。
【0022】
また、実質圧力値と予め設定された目標圧力値との差値を計算し、かつ該差値が所定の範囲を超えているか否かを判断し、超えている場合はステップS3を実行し、超えていない場合はフローを終了するステップS2を含む。
【0023】
また、制御係数を取得するステップS3を含む。該制御係数は、現時点のガス流量値に対応する、圧力と位置パラメータとに関する曲線における、実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する曲率と所定のPID係数との積である。
【0024】
ステップS3では、各種のガスは、ある流量値の下で(チャンバ内に投入されるガス流量値)、圧力と実行ユニットの位置パラメータとに関する1本の曲線に対応している。即ち、ガス流量値が異なると、対応する圧力と実行ユニットの位置パラメータとに関する曲線も異なる。
図2に示すように、各曲線の横座標は実行ユニットの位置パラメータ値(L1、L2、...、Ln)であり、縦座標は各位置パラメータ値(L1、L2、...、Ln)と一対一で対応するチャンバ圧力値(P1、P2、...、Pn)である。各位置パラメータ値(L1、L2、...、Ln)と一対一で対応する曲線の曲率が、即ち圧力変化と弁の開度とを表す変換係数(K1、K2、...、Kn)である。
【0025】
上記の制御係数は、実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する変換係数と所定のPID(Proportion-Integral-Derivative)係数との積である。所謂PID係数とは、PID制御を実現するための比例係数(Proportion)、積分係数(Integral)及び微分係数(Derivative)を指し、PID制御は下記のステップS4によって実現される。PID制御は閉ループ制御に応用され、システムの誤差に基づき、比例係数、積分係数、微分係数、及び実際の値と所望値との差値を基に、制御量(例えば実行ユニットの調整量)を計算して取得するとともに、該制御量に基づいて実行ユニットに対する制御を行うために用いられる。
【0026】
また、上記の差値及び制御係数に基づいて、実行ユニットの位置パラメータ調整量を計算して取得するとともに、該実行ユニットに出力し、ステップS2に戻るステップS4を含む。
【0027】
上記の実行ユニットはチャンバ圧力の調整に用いられ、例えば、実行ユニットはチャンバの排気管路上に設置された圧力調節弁である。真空装置がチャンバ内のガスを抜き取る過程で、圧力調節弁は、弁の開度を調節することにより排気流量を調節し、それによってチャンバ圧力を調節することができる。ここでは、圧力調節弁の位置パラメータ値が、即ちその開度に対応する弁の位置である。
【0028】
上記のステップS1、ステップS2及びステップS4によって、チャンバ圧力に対する閉ループ制御を実現することができる。また、ステップS3によって制御係数を取得し、該制御係数は、現時点のガス流量値に対応する、圧力と位置パラメータとに関する曲線における、実行ユニットの現時点の位置パラメータ値に対応する曲率と所定のPID係数との積であり、即ち、ガス流量、圧力及び位置パラメータの間の対応関係に基づき、異なるガス流量条件において、PID係数に対する段階的な細かい調節を行うことができる。つまり、ガス流量値、位置パラメータ値が異なると、対応する曲線の曲率も異なり、曲率とPID係数との積(即ち制御係数)も異なり、それによってチャンバ圧力に対する高速で安定した制御を行い、圧力を所定の範囲内で安定させることができ、工程品質及び歩留まりを向上させることができる。
【0029】
実験によって、本発明の実施例で提供するチャンバ圧力制御方法は、チャンバ圧力に対する制御精度が0.02%F.S.に達することがわかった。
【0030】
好適には、本実施例で提供するチャンバ圧力制御方法は、PTL(Pressure to Location)方法を基に実行ユニットの位置パラメータ範囲を選択することで、圧力の揺れ幅を最大限に小さくするという目的を達し、それによって工程の安定性及び重複性を向上させることができる。
【0031】
例えば、実行ユニットが圧力調節弁である場合は、弁の急速開閉特性に基づき、すなわち、開度が比較的小さい場合、圧力調節弁の制御により圧力に変化が生じる感度が比較的高く、弁の位置が全閉状態(開度が0°)に近づくときに、弁の位置を変えると、圧力の揺れが比較的はっきりする。弁の位置が開度の数値範囲が30°~50°に対応する範囲に位置するときに、弁の位置を変えると、圧力の揺れは比較的小さく、圧力が比較的安定し、工程に対する影響の度合いも比較的小さい。弁の位置が、開度の数値範囲が60°を上回る範囲に対応する範囲に位置するときに、弁の位置を変えると、圧力に対する調節はほぼ作用しない。
【0032】
PTL(Pressure to Location)方法に基づき、実行ユニットの位置パラメータの初期値を圧力調節弁の開度の数値範囲に対応する範囲内に設定することができる。該開度の数値範囲は30°~50°である。このように、圧力の揺れが比較的小さい安定領域内で実行ユニットの位置パラメータを調節することができ、それにより圧力の揺れの工程に対する影響を少なくすることができる。
【0033】
図3は、本発明の第2実施例で提供するチャンバ圧力制御方法のフローチャートである。
図3を参照すると、本発明の第2実施例で提供するチャンバ圧力制御方法は、上記の第1実施例をベースとしてさらに改良されたものであり、具体的には、前記ステップS1の前に、さらに、
サンプルデータテンプレートを予め記憶するステップS0を含む。ここで、サンプルデータテンプレートは、異なるガス流量値と曲線との対応関係、及び各曲線における異なる位置パラメータ値と曲率との対応関係を含む。
【0034】
工程プロセス全体において、タイムクォンタムごとに異なるガス流量値(チャンバ内に投入するガス流量値)を段階的に設定することができる。例えば、工程時間全体を4つのタイムクォンタムに分割し、4つのタイムクォンタムをそれぞれ4つのガス流量値と対応させ、それぞれを28L/min、24L/min、20L/min及び16L/minとする。ここで、異なるガス流量値に対応するタイムクォンタムは、同じであっても異なっていてもよく、例えば、該所定時間の長さは110sである。好適には、工程のニーズに応じて、ガス流量値の数値範囲を3~50L/minとする。
【0035】
上記のガス流量値の変化に基づいて、圧力と位置パラメータとに関する数組のデータを収集して取得し、かつ該データに基づいて、圧力と位置パラメータとに関する曲線、及びその曲率を取得し、それに基づいて流量と圧力と位置パラメータとの対応関係を反映するサンプルデータテンプレートを構築し、かつ工程の前に記憶しておくことができる。
【0036】
これを基に、上記のステップS3はさらに、 現時点のガス流量値と実行ユニットの現時点の位置パラメータ値とに基づいて、サンプルデータテンプレートから対応する曲率を取得するステップS31と、
サンプルデータテンプレートから取得した曲率とPID係数との積を計算するステップS32とを含む。
【0037】
このことから、工程を実行する過程で、現時点のガス流量と現時点の位置パラメータ値とがすでにわかっている場合、サンプルデータテンプレートからそれに対応する曲率を直接取得し、かつ曲率とPID係数との積を計算して取得することができるとわかる。このように、制御精度が高いだけでなく、応答速度も速い。
【0038】
別の技術的解決手段として、併せて
図4~
図6を参照すると、本発明の第3実施例で提供するチャンバ圧力制御装置は、検出ユニット2と、制御ユニット5と、実行ユニット3とを含み、検出ユニット2は、チャンバ内部の実質圧力値を検出するとともに、制御ユニット5に送信するために用いられる。例えば、検出ユニット2は圧力測定器である。
【0039】
好適には、検出ユニット2は、チャンバ1の排気口部分の圧力を実質圧力値として検出するために用いられ、または、検出ユニット2は、チャンバ1の内部圧力とチャンバ外部の大気圧との差値を実質圧力値として検出するために用いられる。すなわち、本実施例で提供するチャンバ圧力制御装置は、絶対的圧力制御システムまたは相対的圧力制御システムに適用することができる。
【0040】
制御ユニット5は、実質圧力値と予め設定された目標圧力値との差値を計算し、かつ該差値が所定の範囲を超えているか否かを判断し、超えている場合は制御係数を取得し、差値と制御係数とに基づいて、実行ユニット3の位置パラメータ調整量を計算して取得するとともに、該実行ユニット3に出力するために用いられる。制御係数は、曲率と所定のPID係数との積である。該曲率は、現時点のガス流量値に対応する、圧力と位置パラメータとに関する曲線における、実行ユニット3の現時点の位置パラメータ値に対応する曲率である。好適には、制御ユニット5はマイクロプロセッサである。
【0041】
実行ユニット3は、制御ユニット5からの位置パラメータ調整量に基づいて、自身の位置パラメータを調節するために用いられる。
【0042】
本実施例では、
図6に示すように、実行ユニット3は、チャンバ1の排気流量を調節するための圧力調節弁31と、チャンバ1の内部ガスを抜き取るための真空装置32とを含み、圧力調節弁31は排気管路7上に設置され、自身の弁の位置を調節することによって弁の開度を調節することで、排気管路7内のガス流量の調節を行い、それによってチャンバ内の圧力調節を実現する。これにより、上記実行ユニット3の位置パラメータが、即ち圧力調節弁31の、その開度に対応する弁の位置であり、弁の位置が異なれば、対応する弁の開度も異なる。真空装置32は、抽気によってチャンバ1内のガスを排気管路7内に送り込むために用いられる。真空装置32は、例えば真空発生器である。
【0043】
好適には、圧力調節弁31は、バタフライ弁、ニードル弁またはボール弁等を含む。
具体的には、自動制御機能を有する圧力調節弁には、通常、弁(バタフライ弁、ニードル弁またはボール弁など)の移動を駆動するためのモータが設置されており、制御ユニット5は、該モータに制御信号を送信することによって、弁位置に対する調節を実現している。
【0044】
好ましくは、
図5に示すように、制御ユニット5は、記憶モジュール51と、取得モジュール52と、計算モジュール53と、制御モジュール54とを含み、記憶モジュール51はサンプルデータテンプレートを記憶するために用いられ、該サンプルデータテンプレートは、異なるガス流量値と前記曲線との対応関係、及び各曲線における異なる位置パラメータ値と曲率との対応関係を含む。取得モジュール52は、現時点のガス流量値と実行ユニットの現時点の位置パラメータ値とに基づいて、記憶モジュール51に記憶されたサンプルデータテンプレートから対応する曲率を取得して計算モジュール53に送信するために用いられる。計算モジュール53は、サンプルデータテンプレートから取得した曲率とPID係数との積を計算し、かつ制御係数として制御モジュール54に送信するために用いられる。制御モジュール54は、差値と制御係数とに基づいて、実行ユニット3の位置パラメータ調整量を計算して取得し、実行ユニット3に出力するために用いられる。
【0045】
工程を実行する過程で、記憶モジュール51に上記のサンプルデータテンプレートを予め記憶することにより、現時点のガス流量と現時点の位置パラメータ値とがすでにわかっている場合、取得モジュール52はサンプルデータテンプレートからそれに対応する曲率を直接取得し、かつ計算モジュール53を利用して曲率とPID係数との積を計算して取得することができる。このように、制御精度が高いだけでなく、応答速度も速い。
【0046】
好適には、チャンバ圧力制御装置は、ユーザが入力した目標圧力値を受け取り、かつ制御ユニット5に送信するための入力ユニットをさらに含む。このように、ユーザは必要に応じて圧力の所望値を自由に入力することができる。
【0047】
上記のように、本実施例で提供するチャンバ圧力制御装置は、チャンバ圧力を高速かつ安定的に制御し、圧力を所定の範囲内で安定させることで、工程品質及び歩留まりを向上させることができる。
【0048】
別の技術的解決手段として、本発明の実施例ではさらに、反応チャンバ及び該反応チャンバの圧力を制御するためのチャンバ圧力制御装置を含む半導体設備を提供しており、該チャンバ圧力制御装置には、本発明の実施例で提供する上記のチャンバ圧力制御装置が用いられている。該半導体設備において、検出ユニットは、反応チャンバ内部の実質圧力値を検出するとともに、制御ユニットに送信するために用いられ、実行ユニットは反応チャンバの排気口部分に設置され、位置パラメータ調整量に基づいて自身の位置パラメータを調節するために用いられる。
図6に示すように、該半導体設備は、反応チャンバ1と、反応チャンバ内にプロセスガスを送り込むための各プロセスガス路(O
2ガス路、H
2ガス路、N
2ガス路など)を含む。該半導体設備では、検出ユニットはT字ジョイントの一端を介して反応チャンバの排気口と連通することができ、実行ユニットは、T字ジョイントの3つのジョイントの1つを介して反応チャンバの排気口と連通することができる。
【0049】
本実施例で提供する半導体設備は、本発明の実施例で提供するチャンバ圧力制御装置を採用することで、チャンバ圧力に対する高速で安定した制御を実現し、圧力を所定の範囲内で安定させ、工程品質及び歩留まりを向上させることができる。
【0050】
上記の実施形態は、本発明の原理を説明するために用いられる例示的な実施形態にすぎず、本発明がこれに限定されるわけではないことを理解すべきである。当業者であれば、本発明の主旨及び実質から逸脱しない状況において、様々な変更や改良を行うことができるが、それらの変更及び改良も、本発明の保護範囲と見なされる。