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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】果汁感向上剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20220316BHJP
   A23L 2/02 20060101ALI20220316BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20220316BHJP
   A23L 21/18 20160101ALI20220316BHJP
   A23L 27/10 20160101ALI20220316BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20220316BHJP
   C12G 3/06 20060101ALN20220316BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L2/02 B
A23L2/56
A23L21/18
A23L27/10 C
A23L27/20 E
C12G3/06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020065967
(22)【出願日】2020-04-01
(62)【分割の表示】P 2015209185の分割
【原出願日】2015-10-23
(65)【公開番号】P2020099363
(43)【公開日】2020-07-02
【審査請求日】2020-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000175283
【氏名又は名称】三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大西 正展
(72)【発明者】
【氏名】東 栄美
(72)【発明者】
【氏名】幸野 将也
(72)【発明者】
【氏名】岩渕 久克
【審査官】吉海 周
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-169334(JP,A)
【文献】特開2017-079607(JP,A)
【文献】特許第6734037(JP,B2)
【文献】Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients,5th Ed.,CRC Press,2005年,pp. 984-986, 1178, 1217, 1218
【文献】フレーバー・クリエーション,株式会社 講談社,2014年,41,42,135頁
【文献】Fenaroli's Handbook of Flavor Ingredients,5th Ed.,CRC Press,2005年,pp. 984-986, 1178, 1217, 1218
【文献】フレーバー・クリエーション,株式会社 講談社,2014年,41,42,135頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A23F
A23G
C12C
C12G
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/EMBASE/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチルジヒドロジャスモネートを0.0000001ppm~0.01ppm含有する、柑橘類風味以外のフルーツ風味を有する飲食物(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースを除く。)。
【請求項2】
下記要件(1)及び(2)の一方又は両方を満たす、請求項1に記載の飲食物(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースを除く。):
(1)該飲食物がりんご、ぶどう、桃、梨、パイナップル、梅、プルーン、ざくろ、いちじく、すいか、洋梨、アセロラ、キウィーフルーツ、グァバ、ココナッツ、パッションフルーツ、マンゴー、バナナ、パパイア、ドリアン、ライチ、メロン、いちご、ブルーベリー、ラズベリー、グズベリー及びトマトからなる群より選択される少なくとも一種の天然果汁又は濃縮還元果汁を含む、
(2)該飲食物がアップルフレーバー、グレープフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズフレーバー、ウメフレーバー、サクランボフレーバー、ベリー類のフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ペアフレーバー及びプラムフレーバーからなる群より選択される少なくとも一種の果実フレーバーを含む。
【請求項3】
柑橘類風味以外のフルーツ風味を有する飲食物にメチルジヒドロジャスモネートを0.0000001ppm~0.01ppm含有せしめることを特徴とする、前記飲食物の製造方法(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースの製造方法を除く。)。
【請求項4】
下記要件(1)及び(2)の一方又は両方を満たす、請求項3に記載の飲食物の製造方法(但し、シトラールを含有する飲食物ならびにインスタントコーヒー、茶及びスイートソースの製造方法を除く。):
(1)該飲食物がりんご、ぶどう、桃、梨、パイナップル、梅、プルーン、ざくろ、いちじく、すいか、洋梨、アセロラ、キウィーフルーツ、グァバ、ココナッツ、パッションフルーツ、マンゴー、バナナ、パパイア、ドリアン、ライチ、メロン、いちご、ブルーベリー、ラズベリー、グズベリー及びトマトからなる群より選択される少なくとも一種の天然果汁又は濃縮還元果汁を含む、
(2)該飲食物がアップルフレーバー、グレープフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズフレーバー、ウメフレーバー、サクランボフレーバー、ベリー類のフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ペアフレーバー及びプラムフレーバーからなる群より選択される少なくとも一種の果実フレーバーを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フルーツ風味の飲食物、特にフレーバーで香味付けされた無果汁飲食物あるいは果汁含量の低い飲食物に対し、果汁含有量が高い飲食物が醸し出す果汁感、すなわち、自然な風味、豊かなトップノート、コク、ボリューム感、呈味感及び果実感などを併せもつフレッシュで濃厚なフルーツ風味を飲食物に付与し、又は/及びそれを向上させることができる素材に関する。
【背景技術】
【0002】
フルーツ風味飲食物は、年齢や性別を問わず広く飲食されている嗜好性の高い飲食物の一つである。中でも、清涼飲料、特にはフルーツ風味の無果汁飲料又は低果汁飲料は、フルーツ風味飲食物の中核をなす製品種として、多種多様の製品が市場に提供されている。
しかしながら、果汁含量1質量%未満の無果汁飲料や、同1質量%以上30質量%未満の低果汁飲料は、果汁含量が50質量%以上の飲料に比べると果汁感に欠け、単調で人工的な風味となる欠点を有している。
【0003】
このため、無果汁又は果汁含量の低い果汁飲料に対して、高果汁飲料のような自然で豊かなトップノートを有する風味、コクやボリューム感、呈味感などの濃厚な果実風味といった、果汁感を付与し又は増強することのできる技術が要求されている。
このような技術要求に応ずるため、従来、例えば内分岐環状構造部分と外分岐構造部分とを有し重合度が50以上であるグルカンを有効成分として含有することを特徴とする果汁含有飲食物の果汁感向上剤が提案されている(特許文献1)。また、ヘスペリジン配糖体を添加することで果汁の苦味をマスキングし、果汁感を向上させる方法(特許文献2)、フェルロイルプトレシンを添加することで飲食物に果汁感を付与する方法(特許文献3)、シトロプテンを添加することで飲食物に果汁感を付与する方法(特許文献4)、パルミトレイン酸を添加することで飲食物の果汁感を増強する方法(特許文献5)などが提案されている。
しかしながら、これらの呈味改善物質は、果汁感を向上させるという効果の観点からは不十分であったり、入手や製造が容易ではなく、コスト面や供給面などに問題を有していたりするため、更なる改善された技術の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-289836号公報
【文献】特開平11-318379号公報
【文献】特開2010-41934号公報
【文献】特開2011-55797号公報
【文献】特開2014-54192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、フルーツ風味を有する飲食物、特にフレーバーで香味付けされた無果汁飲料や果汁含量の低い飲料に優れた果汁感を付与できる果汁感向上剤、及び、果汁感向上剤を添加することによるフルーツ風味飲食物の果汁感の向上方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは従来技術の問題点を解決すべく鋭意研究したところ、メチルジャスモネート及び/又はメチルジヒドロジャスモネートがフルーツ風味飲食物に対する果汁感向上剤として優れた効果を示すことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、メチルジャスモネート及び/又はメチルジヒドロジャスモネートを有効成分として含有することを特徴とする果汁感向上剤であり、具体的には以下の態様を有するものである。
(項1)メチルジャスモネート及び/又はメチルジヒドロジャスモネートを有効成分として含有することを特徴とするフルーツ風味飲食物の果汁感向上剤。
(項2)前記飲食物に対し、メチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートから選択される1種以上を0.0000001~0.1ppm添加することを特徴とする項1に記載の果汁感向上剤。
(項3)フルーツ風味飲食物に対し、メチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートから選択される1種以上を0.0000001~0.1ppm添加することを特徴とするフルーツ風味飲食物の果汁感向上方法。
(項4)フルーツ風味飲食物にメチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートから選択される1種以上を0.0000001~0.1ppm含有せしめることを特徴とするフルーツ風味飲食物の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の果汁感向上剤は、極めて少ない量で効果を奏するため、それ自体の異味異臭が飲食物本来の香味に悪影響を及ぼすことなく、飲食物に果汁感を付与、向上することができる。更には、果汁由来と同等のコク、ボリュームなどの呈味感を付与することができるとともに、飲食物の果汁感をより自然で天然らしい、好ましいものに改善する効果がある。
したがって、本発明の果汁感向上剤は各種飲食物に幅広く利用できるが、特にフレーバーで香味付けされた無果汁飲料あるいは果汁含量の低い飲料に対し、果汁含有量が高い飲食物が醸し出す果汁感を付与し、それを向上することができる。本発明における果汁感とは、果汁感に加え、豊かなトップノートを有する自然な風味、コク、ボリューム感、呈味感及び果実感などを併せもつフレッシュで濃厚な果実風味を意味する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[A]果汁感向上剤の有効成分
(1)メチルジャスモネート
本発明の果汁感向上剤であるメチルジャスモネート(ジャスモン酸メチル)、すなわち、メチル3-オキソ-2-(cis-2-ペンテニル)-シクロペンチルアセテートは、ジャスミンオイルの主香成分の一つであり、ジャスミンはじめ、ペパーミント、スペアミント、茶などの精油中に存在し、柔らかなジャスミン調の爽やかで優雅な花香を有する。メチルジャスモネートは商業上入手可能であり、例えば、日本ゼオン株式会社製の「ZEPPIN(ゼッピン)」が利用できる。
(2)メチルジヒドロジャスモネート
本発明の果汁感向上剤であるメチルジヒドロジャスモネート(ジヒドロジャスモン酸メチル)、すなわち、メチル3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチルアセテートは、“Hedione”の名で知られる単品香料である。天然には、中国産秀英花、ジャスミン、紅茶などに存在する。ジャスミン的な持続性のある花様香気を有し、ジャスモン酸メチルとはやや香調が異なる。メチルジヒドロジャスモネートは商業上入手可能であり、例えば、日本フィルメニッヒ株式会社製の「HEDIONE FAB 964895」が利用できる。
メチルジャスモネート及びメチルジヒドロジャスモネートは、共にジャスミン様フローラル香を有する香気成分であることから、用途としては、香水や化粧料への応用が数多く提案され、利用されているが、飲食物おける果汁感向上効果についてはこれまで知られていなかった。
【0010】
(3)果汁感向上剤有効成分の添加量
果汁感向上効果を示すメチルジャスモネートの飲食物中の好ましい濃度は、0.0000001~0.1ppmであるが、より好ましくは0.000001~0.1ppm、更により好ましくは0.0001~0.01ppmである。0.0000001ppm未満では果汁感が十分に向上されず、0.1ppmを超えるとメチルジャスモネートの風味が現れすぎ、全体の風味バランスが崩れることがある。
一方、果汁感向上効果を示すメチルジヒドロジャスモネートの飲食物中の好ましい濃度は、0.0000001~0.1ppmであるが、より好ましくは0.00001~0.1ppm、更により好ましくは0.0001~0.01ppmである。メチルジャスモネートと同様、0.0000001ppm未満では果汁感が向上されず、0.1ppmを超えるとメチルジヒドロジャスモネートの風味が現れすぎ、全体の風味バランスが崩れることがある。
メチルジャスモネートとメチルジヒドロジャスモネートを併用する場合は、各々の好ましい添加量範囲において、任意の量を飲食物に添加することができる。果汁感向上の観点からは、メチルジャスモネートとメチルジヒドロジャスモネートを併用することが好ましい。メチルジャスモネートとメチルジヒドロジャスモネートの添加割合は、飲食物の種類や効果に応じて任意の割合で使用することができるが、メチルジャスモネート1質量部に対してメチルジヒドロジャスモネートを0.01~100質量部となる量が好ましく、より好ましくは0.1~10質量部となる量である。
【0011】
[B]果汁感向上剤を配合するフルーツ風味飲食物
果汁感向上の対象となるフルーツ風味飲食物は、果実フレーバー及び/又は果汁を含有する飲食物であれば特に限定されない。飲食物としては例えば、コーヒー、紅茶、清涼飲料、乳酸菌飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料、機能性飲料などの飲料類、カクテル、チューハイなどの酒類、スナック類、栄養食品、アイスクリーム、シャーベット等の冷菓類、ゼリー、プリン、羊かん等のデザート類、クッキー、ケーキ、チョコレート、チューイングガム、饅頭等の菓子類、菓子パン、食パン等のパン類、ラムネ菓子、タブレット等の錠菓類などを挙げることができ、特に無果汁または果汁含量が30%以下の飲食物、とりわけ、清涼飲料、無果汁飲料、果汁入り飲料(特に果汁含量が30%以下の低果汁飲料)等に好適である。
【0012】
フルーツ風味飲食物が含有する果汁には、果実を搾汁して得られる天然果汁と、天然果実の搾汁を一旦濃縮した後に水などを加えて元の状態に戻す濃縮還元果汁が含まれる。
天然果汁又は濃縮還元果汁としては、例えば、みかん、ゆず、かぼす、オレンジ、ライム、レモン、グレープフルーツ、シークァーサー、りんご、ぶどう、桃、梨、パイナップル、梅、プルーン、ざくろ、いちじく、すいか、洋梨、アセロラ、キウィーフルーツ、グァバ、ココナッツ、パッションフルーツ、マンゴー、バナナ、パパイア、ドリアン、ライチ、メロン、いちご、ブルーベリー、ラズベリー、グズベリーやトマト等が挙げられる。
【0013】
フルーツ風味飲食物が含有する果実フレーバーは、天然香料および合成香料を原料素材とするものである。シトラス系フレーバーとしてはオレンジフレーバー、レモンフレーバー、ライムフレーバー、グレープフルーツフレーバー、ユズ・スダチフレーバー等が知られ、また、フルーツ系フレーバーとしてはアップルフレーバー、グレープフレーバー、ストロベリーフレーバー、パイナップルフレーバー、バナナフレーバー、ピーチフレーバー、メロンフレーバー、アンズ、ウメ、サクランボのフレーバー、ベリー類のフレーバー、トロピカルフルーツフレーバー、ペアフレーバー、プラムフレーバー等が知られている。更に詳しくは、特許庁編「周知・慣用技術集(香料)第II部 食品用香料」(平成12年1月14日発行)の第88~257頁に解説されている。
【0014】
[C]果汁感向上剤の使用
本発明の果汁感向上剤の飲食物への添加方法は、特に制限はされない。例えば、果汁感を付与したい飲食物に果汁感向上剤をそのまま添加することができるが、本発明では果汁感向上剤を、水、アルコール、グリセリン、プロピレングリコール等の単独又は混合の溶剤に溶解させた希釈液剤として飲食物に添加してもよい。また、例えば、果汁感向上剤を、天然香料・合成香料などを原料素材とする香料組成物に配合した香料製剤として飲食物に添加してもよく、更に、例えば、果汁感向上剤をデキストリン等の賦形剤を用いて噴霧乾燥した粉末製剤として飲食物に添加してもよい。本発明の果汁感向上剤の利用上の利便性からは、希釈液剤、香料製剤もしくは粉末製剤として飲食物に添加することが好ましく、香料製剤として添加することがより好ましい。
【実施例
【0015】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例の記載に限定されるものではない。
【0016】
[実施例1]
メチルジャスモネート含有果汁感向上剤
メチルジャスモネートとして、日本ゼオン株式会社製の「ZEPPIN(ゼッピン)」を用いて、メチルジャスモネートの含量が0.0001ppm、0.001ppm、0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、または100ppmとなるようにメチルジャスモネートのエタノール溶液を調製し、本発明の果汁感向上剤(実施例1-1、1-2、1-3、1-4、1-5、1-6、および1-7)を得た。
【0017】
[実施例2]
メチルジヒドロジャスモネート含有果汁感向上剤
メチルジヒドロジャスモネートとして、日本フィルメニッヒ株式会社製の「HEDIONE FAB 964895」を用いて、メチルジヒドロジャスモネートの含量が0.0001ppm、0.001ppm、0.01ppm、0.1ppm、1ppm、10ppm、または100ppmとなるようにメチルジヒドロジャスモネートのエタノール溶液を調製し、本発明の果汁感向上剤(実施例2-1、2-2、2-3、2-4、2-5、2-6、および2-7)を得た。
【0018】
[実施例3]
メチルジャスモネート添加グレープ風味飲料
砂糖80kg、クエン酸0.8kg、およびイオン交換水919.2kgを混合して調製したシロップに、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、グレープ風味飲料を調製した。
このグレープ風味飲料に、飲料中のメチルジャスモネートの含量が表1の量となるように実施例1-1~1-7の果汁感向上剤を添加してグレープ風味飲料(実施例3-1、3-2、3-3、3-4、3-5、3-6、および3-7)を得た。
【0019】
メチルジャスモネートを添加したグレープ風味飲料について、果汁感向上剤を添加していないグレープ風味飲料(コントロール)を比較対象として、熟練したパネル10名により「トップノート」、「果皮感」、「果汁感」、および「呈味(コク味)」について官能評価を行った。
官能基準は、以下の7段階評価により点数をつけ、パネル10名の平均値を求めた。評価結果を表1に示した。
<評価基準>
1点:コントロールに比較して「非常に弱い」あるいは「非常に低い」
2点:コントロールに比較して「弱い」あるいは「低い」
3点:コントロールに比較して「やや弱い」あるいは「やや低い」
4点:コントロールと同じ
5点:コントロールに比較して「やや強い」あるいは「やや高い」
6点:コントロールに比較して「強い」あるいは「高い」
7点:コントロールに比較して「非常に強い」あるいは「非常に高い」
【0020】
【表1】
【0021】
表1の結果から、0.0000001~0.1ppmのメチルジャスモネートのグレープ風味飲料への添加は、飲料のトップノートを増強し、果皮感・果汁感を向上し、更に、優れた呈味を付与する効果があることが確認された。特に、メチルジャスモネートの飲料中の含量が0.0001~0.01ppmの範囲において、その効果が優れていることがわかった。
【0022】
[実施例4]
メチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味飲料
実施例3において、実施例1-1~1-7の果汁感向上剤を、実施例2-1~2-7の果汁感向上剤に変更した以外は、実施例3と同様の方法により、飲料中のメチルジヒドロジャスモネートの含量が表2の量となるグレープ風味飲料(実施例4-1、4-2、4-3、4-4、4-5、4-6、および4-7)を調製した。
実施例4-1~4-7の飲料について、実施例3と同様の方法により官能評価を実施し、その結果を表2に示した。
【0023】
【表2】
【0024】
表2の結果から、0.0000001~0.1ppmのメチルジヒドロジャスモネートのグレープ風味飲料への添加は、飲料のトップノートを増強し、果皮感・果汁感を向上し、更に、優れた呈味を付与する効果があることが確認された。特に、メチルジヒドロジャスモネートの飲料中の含量が0.0001~0.01ppmの範囲において、その効果が優れていることがわかった。
【0025】
[実施例5]
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味飲料
実施例3において調製したグレープ風味飲料に、実施例1-4および実施例2-5の果汁感向上剤を飲料中のメチルジャスモネートの含量が0.0001ppmおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が0.001ppmとなるように添加したグレープ風味飲料(実施例5)を調製した。
実施例5の飲料について、実施例3と同様の方法により官能評価を実施し、その結果を表3に示した。
【0026】
【表3】
【0027】
表3の結果から、メチルジャスモネートとメチルジヒドロジャスモネートを併用することにより、単独にて添加した場合に比較して、飲料の果汁感や呈味がより増強され、向上することがわかった。
【0028】
[実施例6]
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート含有果汁感向上剤
表4の処方にしたがって、メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネートをエタノール/水中に溶解し、本発明の果汁感向上剤(実施例6)を調製した。
【0029】
【表4】
【0030】
[実施例7]
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加各種フルーツ風味飲料
実施例3のグレープ風味飲料に加えて、実施例3におけるグレープフレーバーNO.90572を、アップルフレーバーNO.120596(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更することにより、アップル風味飲料を調製した。
同様に、実施例3のグレープフレーバーを、ピーチフレーバーNO.2420(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更したピーチ風味飲料、ストロベリーフレーバーNO.2226(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更したストロベリー風味飲料、および、マンゴーフレーバーNO.116288(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)に変更したマンゴー風味飲料を調製した。
これら5種の飲料に、飲料中のメチルジャスモネートの含量が0.0005ppmおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が0.0005ppmとなるように実施例6の果汁感向上剤を添加した飲料(実施例7-1、7-2、7-3、7-4、および7-5)を調製した。
実施例7-1~7-5の飲料について、果汁感向上剤を添加していない飲料を各々コントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表5に示した。
【0031】
【表5】
【0032】
表5の結果から、本発明の果汁感向上剤は、グレープ、アップル、ピーチ、ストロベリー、およびマンゴーの種々のフルーツ風味飲料の、トップノート、果皮感・果汁感、呈味を向上する効果が確認された。
【0033】
[実施例8]
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味ゼリー
砂糖50kg、果糖ぶどう糖液糖160kg、クエン酸1.5kg、クエン酸三ナトリウム0.2kg、ゲル化剤「ゲルアップ(登録商標)WN-100(F)」(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)8kg、および、イオン交換水780.3kgを加熱攪拌可能な容器に投入し、攪拌しながら80℃にて10分間保持した後に、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加してグレープゼリーベースを調製した。このゼリーベースに実施例6の果汁感向上剤を、ゼリー中のメチルジャスモネートの含量が0.0005ppm、およびメチルジヒドロジャスモネートの含量が0.0005ppmとなるように添加した後、ゼリー用カップに充填・シールして、冷蔵庫内で一晩冷却することにより、果汁感向上剤を添加したグレープ風味ゼリー(実施例8)を調製した。
実施例8のゼリーについて、果汁感向上剤を添加していないゼリーベースを冷却して調製したグレープ風味ゼリーをコントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表6に示した。
【0034】
【表6】
【0035】
表6の結果から、本発明の果汁感向上剤は、グレープフレーバーが配合されたゼリーのトップノート、果皮感・果汁感、呈味を向上する効果が確認された。
【0036】
[実施例9]
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味チューハイ
果糖ぶどう糖液糖61kg、クエン酸3.5kg、クエン酸三ナトリウム1.3kg、ウォッカ150Lを攪拌可能な容器に投入し、イオン交換水を液量が400Lになるまで投入した後、更に炭酸水600Lを投入して、チューハイベースを調製した。チューハイベースに、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、グレープ風味チューハイを調製した。
このグレープ風味チューハイに、チューハイ中のメチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が表7に記載の量となるように実施例6の果汁感向上剤を添加したグレープ風味チューハイ(実施例9-1および9-2)を調製した。
実施例9-1および9-2のチューハイについて、果汁感向上剤を添加していないチューハイをコントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表7に示した。
【0037】
【表7】
【0038】
表7の結果から、本発明の果汁感向上剤は、グレープフレーバーが配合されたチューハイのトップノート、果皮感・果汁感、呈味を向上する効果が確認された。
【0039】
[実施例10]
メチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネート添加グレープ風味炭酸飲料
果糖ぶどう糖液糖130kg、砂糖5kg、クエン酸0.8kg、クエン酸三ナトリウム0.3kgを攪拌可能な容器に投入し、イオン交換水を液量が200Lになるまで投入した後、更に炭酸水800Lを投入して、炭酸飲料ベースを調製した。炭酸飲料ベースに、グレープフレーバーNO.90572(三栄源エフ・エフ・アイ株式会社製)を添加し、グレープ風味炭酸飲料を調製した。
このグレープ風味炭酸飲料に、炭酸飲料中のメチルジャスモネートおよびメチルジヒドロジャスモネートの含量が表8に記載の量となるように実施例6の果汁感向上剤を添加したグレープ風味炭酸飲料(実施例10-1および10-2)を調製した。
実施例10-1および10-2の炭酸飲料について、果汁感向上剤を添加していないグレープ風味炭酸飲料をコントロールとして、実施例3と同様の方法により官能評価を行い、その結果を表8に示した。
【0040】
【表8】
【0041】
表8の結果から、本発明の果汁感向上剤は、グレープフレーバーが配合された炭酸飲料のトップノート、果皮感・果汁感、呈味を向上する効果が確認された。