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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】運搬車
(51)【国際特許分類】
   B60R 11/02 20060101AFI20220316BHJP
   B60P 3/00 20060101ALI20220316BHJP
   G01S 19/36 20100101ALI20220316BHJP
【FI】
B60R11/02 A
B60P3/00 L
G01S19/36
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020118172
(22)【出願日】2020-07-09
(65)【公開番号】P2022015384
(43)【公開日】2022-01-21
【審査請求日】2021-07-02
(73)【特許権者】
【識別番号】591117631
【氏名又は名称】株式会社NICHIJO
(73)【特許権者】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】金田 脩佑
(72)【発明者】
【氏名】難波 真二
(72)【発明者】
【氏名】酒井 相向
(72)【発明者】
【氏名】小原 敏之
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-170228(JP,A)
【文献】特開2005-258754(JP,A)
【文献】特開平06-053848(JP,A)
【文献】特開平02-249320(JP,A)
【文献】特開2016-065769(JP,A)
【文献】特開昭60-061809(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 11/02
B60P 3/00- 3/42
G01S 19/36
H01Q 1/00- 1/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台を含む車体を備えた運搬車であって、
衛星測位システムにより位置情報を受信する少なくとも1つのアンテナと、
前記アンテナを介して前記位置情報を受信する少なくとも1つの衛星測位受信器と、
前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部、及び、前記車体に連結された車体連結部を有する少なくとも1つのアンテナ支持部材と、
前記衛星測位受信器で受信した前記位置情報を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、
前記アンテナ支持部材を動作させるアンテナアクチュエータと、
前記アンテナアクチュエータを制御するアンテナ位置制御器と、を備え、
前記アンテナ位置制御器は、
前記荷台に運搬物が有る場合に、前記アンテナが前記荷台の積載面から上方に所定距離だけ離れた少なくとも1つの使用位置に配置される少なくとも1つの使用状態に動作するように前記アンテナアクチュエータを制御し、
前記荷台に運搬物が無い場合に、前記アンテナが前記使用位置よりも下方に配置される収納状態に動作するように前記アンテナアクチュエータを制御する、運搬車。
【請求項2】
荷台を含む車体を備えた運搬車であって、
衛星測位システムにより位置情報を受信する少なくとも1つのアンテナと、
前記アンテナを介して前記位置情報を受信する少なくとも1つの衛星測位受信器と、
前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部、及び、前記車体に連結された車体連結部を有する少なくとも1つのアンテナ支持部材と、
前記衛星測位受信器で受信した前記位置情報を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、
前記アンテナ支持部材を動作させるアンテナアクチュエータと、
前記アンテナアクチュエータを制御するアンテナ位置制御器と、
前記荷台を所定の上位置と所定の下位置との間で昇降させる荷台アクチュエータと、
前記荷台が前記上位置にあるか前記下位置にあるかを検知する荷台高さ検知器と、を備え、
前記アンテナ位置制御器は、
前記荷台高さ検知器によって前記荷台が前記上位置にあることが検知されると、前記アンテナ支持部材が前記使用状態に動作するように前記アンテナアクチュエータを制御し、
前記荷台高さ検知器によって前記荷台が前記下位置にあることが検知されると、前記アンテナ支持部材が前記収納状態に動作するように前記アンテナアクチュエータを制御する、運搬車。
【請求項3】
荷台を含む車体を備えた運搬車であって、
衛星測位システムにより位置情報を受信する少なくとも1つのアンテナと、
前記アンテナを介して前記位置情報を受信する少なくとも1つの衛星測位受信器と、
前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部、及び、前記車体に連結された車体連結部を有する少なくとも1つのアンテナ支持部材と、
前記衛星測位受信器で受信した前記位置情報を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、
前記アンテナ支持部材を動作させるアンテナアクチュエータと、
前記アンテナアクチュエータを制御するアンテナ位置制御器と、
前記アンテナの受信状態を判定する受信状態判定器と、を備え、
前記アンテナ位置制御器は、
前記受信状態判定器で判定された前記受信状態が不良状態であると、前記アンテナの高さ位置が移動するように前記アンテナアクチュエータを制御し、
前記受信状態判定器で判定された前記受信状態が良好状態であると、前記アンテナ支持部材が停止するように前記アンテナアクチュエータを制御する、運搬車。
【請求項4】
前記アンテナ支持部材は、前記収納状態にあるときに、前記アンテナ支持部材及び前記アンテナの全体が前記荷台の前記積載面よりも下方に位置するように構成されている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の運搬車。
【請求項5】
前記荷台が運搬物を積載した積載状態であるか前記荷台が運搬物を積載していない空車状態であるかを検知する積載検知器を更に備え、
前記アンテナ位置制御器は、
前記積載検知器によって前記荷台が前記積載状態であることが検知されると、前記アンテナ支持部材が前記使用状態に動作するように前記アンテナアクチュエータを制御し、
前記積載検知器によって前記荷台が前記空車状態であることが検知されると、前記アンテナ支持部材が前記収納状態に動作するように前記アンテナアクチュエータを制御する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の運搬車。
【請求項6】
前記荷台に積載される運搬物に関する情報を取得する運搬物情報取得器を更に備え、
前記少なくとも1つの使用位置は、前記アンテナが前記積載面から第1距離だけ離れた第1使用位置と、前記アンテナが前記積載面から前記第1距離とは異なる第2距離だけ離れた第2使用位置と、を含み、
前記少なくとも1つの使用状態は、前記アンテナが前記第1使用位置に配置される第1使用状態と、前記アンテナが前記第2使用位置に配置される第2使用状態と、を含み、
前記アンテナ位置制御器は、前記運搬物情報取得器で取得された情報に応じて前記アンテナの位置を変更するように前記アンテナアクチュエータを制御する、請求項乃至5のいずれか1項に記載の運搬車。
【請求項7】
前記少なくとも1つのアンテナ支持部材は、前記車体の一端部に連結された第1アンテナ支持部材と、前記車体の他端部に連結された第2アンテナ支持部材と、を含み、
前記少なくとも1つのアンテナは、前記第1アンテナ支持部材に取り付けられた第1アンテナと、前記第2アンテナ支持部材に取り付けられた第2アンテナと、を含み、
前記少なくとも1つの衛星測位受信器は、前記第1アンテナに接続された第1衛星測位受信器と、前記第2アンテナに接続された第2衛星測位受信器と、を含み、
前記自車位置推定器は、前記第1アンテナ及び前記第2アンテナを介して前記第1衛星測位受信器及び前記第2衛星測位受信器でそれぞれ受信される各位置情報を用いて前記自車位置を推定する、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の運搬車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷台を含む車体を備えた運搬車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運搬車の例として、工場の構内で荷物を運搬するキャリアパレット車が知られている(例えば、特許文献1参照)。キャリアパレット車は、荷物(例えば、鋼材やコイル等)が積まれたパレット(運搬物)を荷台に載せて走行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-75642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、自動車等で自動運転技術の研究がなされているが、運搬車についても自動運転を実現できれば、作業効率が向上する。自動運転の実現には、自車位置を高精度に認識できることが必要になる。自車位置を認識する手法としては、衛星測位システムを利用して自車位置を特定するものがある。しかし、運搬車では、荷台に背丈の大きい運搬物が積載されるため、車両の位置や姿勢によっては、衛星測位受信機のアンテナと衛星との間に運搬物の一部が介在してアンテナの受信状態が悪化する可能性がある。アンテナの受信状態が悪化すると、自車位置の認識精度が不安定になって好ましくない。
【0005】
そこで本発明は、運搬車であっても衛星測位システムを好適に利用して自車位置の認識を安定して行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る運搬車は、荷台を含む車体を備えた運搬車であって、衛星測位システムにより位置情報を受信する少なくとも1つのアンテナと、前記アンテナを介して前記位置情報を受信する少なくとも1つの衛星測位受信器と、前記アンテナが取り付けられたアンテナ取付部、及び、前記車体に連結された車体連結部を有する少なくとも1つのアンテナ支持部材と、前記衛星測位受信器で受信した前記位置情報を用いて自車位置を推定する自車位置推定器と、を備え、前記アンテナ支持部材は、前記アンテナが前記荷台の積載面から上方に所定距離だけ離れた少なくとも1つの使用位置に配置される少なくとも1つの使用状態と、前記アンテナが前記使用位置よりも下方に配置される収納状態との間で動作可能に構成されている。
【0007】
前記構成によれば、アンテナ支持部材を使用状態に動作させることで、アンテナが荷台の積載面から所定距離だけ上方に離れた位置に配置されるので、荷台に積載された運搬物にアンテナの受信を邪魔することを回避できる。しかも、アンテナ支持部材を収納状態に動作させることで、荷台に運搬物を積載する作業の際にアンテナ支持部材及びアンテナが邪魔になることを防止できる。よって、運搬車であっても衛星測位システムを好適に利用して自車位置の認識を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、運搬車であっても衛星測位システムを好適に利用して自車位置の認識を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、運搬車の側面図である。
図2図2は、図1の運搬車の正面図である。
図3図3は、図1の運搬車の走行動力システムの模式図である。
図4図4は、図1の運搬車の荷台昇降システムの模式図である。
図5図5は、図1の運搬車の制御システムのブロック図である。
図6図6(A)は、図1の運搬車のパレット積載状態における側面図である。図6(B)は、図2の運搬車のパレット積載状態における正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0011】
図1は、運搬車1の側面図である。図2は、図1の運搬車1の正面図である。図1及び2に示すように、本実施形態で例示する運搬車1は、重量物運搬車の一種であるキャリアパレット車である。なお、運搬車は、キャリアパレット車に限られず、運搬物を荷台に載せて走行するものであれば他の種類の車両でもよい。運搬車1は、荷台3を含む車体2と、荷台3を支持する複数(例えば、24個)のタイヤ4とを備える。複数のタイヤ4は、それぞれ一対ごとに車軸5で結合されている。荷台3には、荷物(例えば、鋼材やコイル等)を積載したパレット(運搬物)が積載される。なお、運搬車1としてキャリアパレット車を例示したが、キャリアパレット車以外の車両(例えば、ダンプトラック車)であってもよい。図1の例では、荷台3が車体2であるが、車体2が荷台3を支持するフレーム等を備えてもよい。
【0012】
荷台3と車軸5との間には、荷台アクチュエータ6が介設されている。荷台アクチュエータ6は、その伸縮によって荷台3を所定の上位置と所定の下位置との間で昇降させる。本実施形態では、荷台アクチュエータ6として油圧シリンダが用いられる。車軸5は、荷台アクチュエータ6を介して荷台3の荷重を支持する。荷台3の前後方向の両端部には、それぞれ第1運転室7A及び第2運転室7Bが設けられている。即ち、一方向に向けて走行する場合には作業員が第1運転室7Aに搭乗し、他方向に向けて走行する場合には作業員は第2運転室7Bに搭乗する。
【0013】
荷台3の前後方向の一端側には、第1可動アンテナセット9Aが配置されている。荷台3の前後方向の他端側には、第2可動アンテナセット9Bが配置されている。第1可動アンテナセット9Aは、第1アンテナ10A、第1アンテナ支持部材11A及び第1アンテナアクチュエータ12Aを有する。第2可動アンテナセット9Bは、第2アンテナ10B、第2アンテナ支持部材11B及び第2アンテナアクチュエータ12Bを有する。第1可動アンテナセット9Aと第2可動アンテナセット9Bとは、互いに同じ構造である。
【0014】
第1アンテナ10A及び第2アンテナ10Bは、衛星測位システム(例えば、RTK-GNSS又は準天頂衛星システム)により位置情報の電波を受信する。第1アンテナ支持部材11Aは、荷台3の前後方向の一端部に連結されている。第2アンテナ支持部材11Bは、荷台3の前後方向の他端部に連結されている。第1アンテナアクチュエータ12Aは、荷台3の前後方向の一端部に設けられ、第1アンテナ支持部材11Aを動作させる。第2アンテナアクチュエータ12Bは、荷台3の前後方向の他端部に設けられ、第2アンテナ支持部材11Bを動作させる。第1アンテナアクチュエータ12A及び第2アンテナアクチュエータ12Bは、例えば電動モータである。
【0015】
図2に示すように、第1アンテナ支持部材11Aは、棒状である。第1アンテナ支持部材11Aの先端部は、第1アンテナ10Aが取り付けられたアンテナ取付部11Aaである。第1アンテナ支持部材11Aの基端部は、荷台3に連結された車体連結部11Abである。車体連結部11Abは、前後方向に延びる軸線を有する回転軸を含む。即ち、車体連結部11Abは、第1アンテナ支持部材11Aを荷台3に対して前記軸線周りに回動自在な回動部である。なお、第2アンテナ支持部材11Bの構成は、第1アンテナ支持部材11Aの構成と同じであるため説明を省略する。
【0016】
第1アンテナ支持部材11Aは、第1アンテナアクチュエータ12Aに駆動されることによって少なくとも1つの使用状態と収納状態との間で回動可能なように荷台3に連結されている。前記収納状態は、第1アンテナ10Aが荷台3の積載面3a(上面)から下方に第1距離L0(L0≦ゼロ)だけ離れた状態であり、第1アンテナ10A及びアンテナ支持部材11Aの全体が積載面3aよりも下方に位置する状態である。前記収納状態では、第1アンテナ支持部材11Aは、長尺部材であり、荷台3の前後方向の端面に沿って車幅方向に配置される。
【0017】
前記少なくとも1つの使用状態は、第1アンテナ10Aが積載面3aから上方に第1距離L1だけ離れた第1使用位置に配置される第1使用状態と、第1アンテナ10Aが積載面3aから上方に第2距離L2(L2>L1)だけ離れた第2使用位置とを含む。前記第2使用状態では、第1アンテナ支持部材11Aは鉛直に延び、第1アンテナ10Aは最大高さに配置される。前記第1使用状態は、前記収納状態と前記第2使用状態との間の任意の中間状態である。
【0018】
図3は、図1の運搬車1の走行動力システムの模式図である。図3に示すように、運搬車1では、6列の車軸5が並んでいる。第2列及び第5列の車軸5は、駆動力が伝達される駆動軸である。第2列及び第5列の車軸5(駆動軸)には、それぞれ油圧モータ23が接続されている。他の車軸5は、駆動力が伝達されない非駆動軸(従動軸)である。具体的には、第1列及び第6列の車軸5は、制動力を付与可能なブレーキ軸であり、第3列及び第4列の車軸5は、駆動力も制動力も付与されない遊動軸である。
【0019】
運搬車1は、駆動力を発生する原動機としてエンジン20を備える。なお、エンジン20の代わりに又はエンジン20と共に、電動モータが原動機として用いられてもよい。エンジン20は、ギヤボックス21を介して一対の油圧ポンプ22を駆動する。油圧ポンプ22は、油圧配管24を介して油圧モータ23に接続されている。即ち、油圧ポンプ22で発生した油圧は、油圧配管24を介して油圧モータ23に伝達され、それにより油圧モータ23が車軸5(駆動軸)を駆動する。油圧モータ23のドレンポートは、ドレン配管25を介して作動油タンク26に接続されている。
【0020】
図4は、図1の運搬車1の荷台昇降システムの模式図である。図4に示すように、第1~第3列の車幅方向一方側の車軸5に対応する荷台アクチュエータ6(No.1、No.3及びNo.5)には、第1油圧配管32Aを介して油圧ポンプ31が接続されている。第4~第6列の車幅方向一方側の車軸5に対応する荷台アクチュエータ6(No.7、No.9及びNo.11)には、第2油圧配管32Bを介して油圧ポンプ31が接続されている。第1~第3列の車幅方向他方側の車軸5に対応する荷台アクチュエータ6(No.2、No.4及びNo.6)には、第3油圧配管32Cを介して油圧ポンプ31が接続されている。第4~第6列の車幅方向他方側の車軸5に対応する荷台アクチュエータ6(No.8、No.10及びNo.12)には、第4油圧配管32Dを介して油圧ポンプ31が接続されている。
【0021】
第1油圧配管32Aには、第1切換弁33Aが介設されており、第2油圧配管32Bには、第2切換弁33Bが介設されており、第3油圧配管32Cには、第3切換弁33Cが介設されており、第4油圧配管32Dには、第4切換弁33Dが介設されている。第1~第4切換弁33A~Dは、油圧ポンプ31からの油圧を荷台アクチュエータ6(油圧シリンダ)に供給して荷台アクチュエータ6を伸長させる位置と、荷台アクチュエータ6を収縮させるようにドレンする位置と、荷台アクチュエータ6を停止させる位置との間で動作する。即ち、第1~第4切換弁33A~Dを制御することで、荷台アクチュエータ6が伸縮して荷台3が昇降する。
【0022】
第1油圧配管32Aには、荷台アクチュエータ6と第1切換弁33Aとの間に第1圧力センサ34Aが接続されている。第2油圧配管32Bには、荷台アクチュエータ6と第2切換弁33Bとの間に第2圧力センサ34Bが接続されている。第3油圧配管32Cには、荷台アクチュエータ6と第2切換弁33Cとの間に第3圧力センサ34Cが接続されている。第4油圧配管32Dには、荷台アクチュエータ6と第2切換弁33Dとの間に第4圧力センサ34Dが接続されている。
【0023】
第1圧力センサ34Aは、No.1、No.3及びNo.5の荷台アクチュエータ6が荷台3を支持する圧力を検出し、第2圧力センサ24Bは、No.7、No.9及びNo.11の荷台アクチュエータ6が荷台3を支持する圧力を検出し、第3圧力センサ34Cは、No.2、No.4及びNo.6の荷台アクチュエータ6が荷台3を支持する圧力を検出し、第4圧力センサ34Dは、No.8、No.10及びNo.12の荷台アクチュエータ6が荷台3を支持する圧力を検出する。即ち、第1~第4圧力センサ34A~Dの検出する圧力が、荷台3の積載重量に対応(比例)している。
【0024】
図5は、図1の運搬車1の制御システムのブロック図である。図5に示すように、運搬車1は、自動運転制御装置40を備える。自動運転制御装置40は、ハードウェア面において、プロセッサ、メインメモリ(RAM)、ストレージ(フラッシュメモリ、ハードディスク等)及びI/Oインターフェース等を有する。自動運転制御装置40は、エンジン20及び油圧ポンプ22を制御することで運搬車1の速度及び加減速度を調節する。自動運転制御装置40は、制動装置61を制御することで運搬車1の制動を行う。自動運転制御装置40は、操舵装置62を制御することで運搬車1の操舵角(走行方向)を調節する。
【0025】
自動運転制御装置40には、第1衛星測位受信器35A及び第2衛星測位受信器35Bからの信号が入力される。第1衛星測位受信器35A及び第2衛星測位受信器35Bは、例えば、RTK-GNSS又は準天頂衛星システムの受信機が用いられる。第1衛星測位受信器35Aは、第1アンテナ10Aに接続されている。第2衛星測位受信器35Bは、第2アンテナ10Bに接続されている。
【0026】
自動運転制御装置40は、自動位置推定部41及び走行制御部42を有する。自動位置推定部41は、第1及び第2衛星測位受信器35A,35Bで受信した位置情報を用いて自車位置を推定する。第1及び第2衛星測位受信器35A,35Bの一方の受信状態が良好で且つ他方の受信状態が不良である場合には、自動位置推定部41は、当該一方の信号を用いて自車位置を推定する。
【0027】
第1及び第2衛星測位受信器35A,35Bの両方の受信状態が良好である場合には、自動位置推定部41は、当該両方の信号の平均値を用いて自車位置を推定してもよい。第1及び第2衛星測位受信器35A,35Bの両方の受信状態が良好である場合には、自動位置推定部41は、エンジン20、第1及び第2衛星測位受信器35A,35Bの各信号に基づいて、車両の特定箇所(例えば、車両中心)の位置および車両の向きを推定してもよい。例えば、運搬車1が前後方向の一端部側を支点として扇旋回することで、車両1の一端部の位置座標があまり変わらずに車両1の他端部の位置座標が大きく変わる場合でも、車両中心の位置や車両の向きを正確に把握できる。また例えば、運搬車1が、車両中心付近を支点として超信地旋回(スピンターン)することで、車両中心の位置座標があまり変わらずに車両1の一端部及び他端部の位置座標が点対称に変わる場合でも、車両中心の位置や車両の向きを正確に把握できる。
【0028】
走行制御部42は、自動位置推定部41で推定された自車位置、周辺環境、運転計画等に基づいて、エンジン20、制動装置61及び操舵装置62を制御し、運搬車1を自動で走行させる。また、自動運転制御装置40は、所定のイベント(例えば、所定の位置(例えば、パレットの前)への到達を検知したこと)をトリガーとして、荷台3を前記上位置と前記下位置との間で昇降させるべく荷台アクチュエータ6を駆動させる。なお、荷台アクチュエータ6の駆動は、作業者の手動によって行われてもよい。
【0029】
運搬車1は、アンテナ制御装置50を備える。アンテナ制御装置50は、ハードウェア面において、プロセッサ、メインメモリ(RAM)、ストレージ(フラッシュメモリ、ハードディスク等)及びI/Oインターフェース等を有する。アンテナ制御装置50は、第1アンテナアクチュエータ12A及び/又は第2アンテナアクチュエータ12Bを制御することで第1アンテナ10A及び/又は第2アンテナ10Bの位置を調節する。アンテナ制御装置50には、第1及び第2衛星測位受信器35A,35B及び第1~第4圧力センサ34A~Dの各信号が入力される。
【0030】
アンテナ制御装置50は、第1受信状態判定部51A,第2受信状態判定部51B、積載検知部52、荷台高さ検知部53、運搬物情報取得部54、及び、アンテナ位置制御部55を有する。第1受信状態判定部51Aは、第1アンテナ10Aを介した第1衛星測位受信器35Aの受信状態を判定する。第2受信状態判定部51Bは、第2アンテナ10Bを介した第2衛星測位受信器35Bの受信状態を判定する。
【0031】
積載検知部52は、第1~第4圧力センサ34A~Dの信号に基づいて、荷台3が運搬物を積載した積載状態であるか、荷台3が運搬物を積載していない空車状態であるかを検知する。なお、積載検知部52は、荷台3に積載された重量を把握可能なものであれば他のもの(例えば、荷台3と当該荷台3を支持する装置との間に介在させたロードセル等)であってもよい。
【0032】
荷台高さ検知部53は、荷台アクチュエータ6を制御するための信号に基づいて、荷台3が前記上位置にあるか前記下位置にあるかを検知してもよいし、荷台アクチュエータ6のストロークセンサ又は荷台3の地面からの高さを検出するセンサなどの信号に基づいて、荷台3が前記上位置にあるか前記下位置にあるかを検知してもよい。なお、荷台高さ検知部53は、作業者の荷台高さ操作を示す信号に基づいて、荷台3が前記上位置にあるか前記下位置にあるかを検知してもよい。
【0033】
運搬物情報取得部54は、別の上位システムから入力された情報に基づいて、荷台3に積載される運搬物の大きさ(例えば、高さ、長さ等)に関する情報を取得する。なお、当該情報は、作業者によって入力されてもよい。
【0034】
アンテナ位置制御部55は、第1及び第2受信状態判定部51A,51B、積載検知部52、荷台高さ検知部53及び運搬物情報取得部54の少なくとも1つからの情報に基づいて、第1アンテナアクチュエータ12A及び第2アンテナアクチュエータ12Bの少なくとも1つを制御する。
【0035】
図6(A)は、図1の運搬車1のパレット積載状態における側面図である。図6(B)は、図2の運搬車1のパレット積載状態における正面図である。図6(A)及び図6(B)に示すように、運搬車1は、荷物X(例えば、鋼材やコイル等)が積まれたパレットPを荷台に載せて走行する。パレットPは、荷物Xが載置される底部Paと、底部Paの側端部から下方に突出して地面に着地する脚部Pbと、底部Paの側端部から上方に突出して荷物Xを側方に配置される側部Pcとを有する。空車状態の運搬車1は、荷台3を前記下位置に降下させた状態で、パレットPの脚部Pbの下側の空間に進入する。その状態から、荷台3を前記上位置に上昇させて荷台3がパレットPを持ち上げることで、運搬車1が積載状態になる。
【0036】
積載状態の運搬車1では、パレットP及び荷物Xの上端が荷台3の載置面3aよりも高い位置にある。そのため、第1アンテナ支持部材11A及び第2アンテナ支持部材11Bが前記収納状態であると、パレットP及び/又は荷物Xが第1アンテナ10A及び第2アンテナ10Bの受信の妨げになる可能性がある。そこで、アンテナ位置制御部55(図5参照)は、下に例示するように、第1アンテナアクチュエータ12A及び/又は第2アンテナアクチュエータ12Bを制御し、パレットP及び/又は荷物Xが第1アンテナ10A及び第2アンテナ10Bの受信を邪魔することを回避する。
【0037】
図5及び6に示すように、第1アンテナ10Aを使用する場合、アンテナ位置制御部55は、第1受信状態判定部51Aによって第1アンテナ10Aを介した第1衛星測位受信器35Aの受信状態が不良状態であると判定されると、第1アンテナ10Aが高く移動するように第1アンテナアクチュエータ12Aを制御し得る。そして、アンテナ位置制御部55は、第1受信状態判定部51Aによって第1アンテナ10Aを介した第1衛星測位受信器35Aの受信状態が良好状態であると判定されると、第1アンテナ10Aが停止するように第1アンテナアクチュエータ12Aを制御し得る。
【0038】
同様に、第2アンテナ10Bを使用する場合、アンテナ位置制御部55は、第2受信状態判定部51Bによって第2アンテナ10Bを介した第2衛星測位受信器35Bの受信状態が不良状態であると判定されると、第2アンテナ10Bが高く移動するように第2アンテナアクチュエータ12Bを制御し得る。そして、アンテナ位置制御部55は、第2受信状態判定部51Bによって第2アンテナ10Bを介した第2衛星測位受信器35Bの受信状態が良好状態であると判定されると、第2アンテナ10Bが停止するように第2アンテナアクチュエータ12Bを制御し得る。
【0039】
このようにすることで、第1及び/又は第2アンテナ10A,10Bの受信状態が不良状態になっても、第1及び/又は第2アンテナ10A,10Bの受信状態が良好状態になるように第1及び/又は第2アンテナ支持部材11A,11Bアンテナが移動するので、第1及び/又は第2アンテナ10A,10Bの受信状態を自動的に良好に保つことができる。
【0040】
アンテナ位置制御部55は、積載検知部52によって荷台3が積載状態であることが検知されると、第1アンテナ支持部材11A及び/又は第2アンテナ支持部材11Bが前記第1使用状態又は前記第2使用状態になるように第1アンテナアクチュエータ12A及び/又は第2アンテナアクチュエータ12Bを制御し得る。そして、アンテナ位置制御部55は、積載検知部52によって荷台3が空車状態であることが検知されると、第1アンテナ支持部材11A及び第2アンテナ支持部材11Bが前記収納状態になるように前記アンテナアクチュエータを制御する。これにより、荷台3上の運搬物の有無に応じて第1及び/又は第2アンテナ支持部材11A,11Bを適切な状態に自動的に移動させることができる。
【0041】
アンテナ位置制御部55は、荷台高さ検知部53によって荷台3が前記上位置にあることが検知されると、第1アンテナ支持部材11A及び/又は第2アンテナ支持部材11Bが前記第1使用状態及び/又は前記第2使用状態になるように第1アンテナアクチュエータ12A及び/又は第2アンテナアクチュエータ12Bを制御し得る。そして、アンテナ位置制御部55は、荷台高さ検知部53によって荷台3が前記下位置にあることが検知されると、第1アンテナ支持部材11A及び/又は第2アンテナ支持部材11Bが前記収納状態に動作するように第1アンテナアクチュエータ12A及び/又は第2アンテナアクチュエータ12Bを制御し得る。
【0042】
このようにすることで、荷台3上の運搬物の有無に応じて第1及び/又は第2アンテナ支持部材11A,11Bを適切な状態に自動的に移動させることができる。即ち、荷物Xが積まれたパレットPを荷台3に載せる前には、荷台3がパレットPの下に進入できるように荷台3を降下させた状態になる。そして、荷物Xが積まれたパレットPを荷台3に載せた状態では、荷台3を上昇させた状態になる。よって、荷台3の高さに応じて第1及び/又は第2アンテナ10A,10Bの高さを調節することで、荷台3上の運搬物の有無に応じて第1及び/又は第2アンテナ10A,10Bを適切な位置に移動させることができる。
【0043】
アンテナ位置制御部55は、運搬物情報取得部54で取得された運搬物の大きさ(例えば、高さ、長さ等)に関する情報に応じて、第1アンテナ10A及び/又は第2アンテナ10Bの位置を変更するように第1アンテナアクチュエータ12A及び/又は第2アンテナアクチュエータ12Bを制御してもよい。これにより、荷台3に積載される運搬物に関する情報(例えば、運搬物の高さ)に応じて、第1及び/又は第2アンテナ支持部材11A,11Bを前記使用状態の範囲内で動作させることで、荷台3に積載された運搬物が受信を邪魔しない位置に第1及び/又は第2アンテナ10A,10Bを自動的に移動させることができる。
【0044】
以上に説明した構成によれば、第1及び第2アンテナ支持部材11A,11Bを前記使用状態に動作させることで、第1及び第2アンテナ10A,10Bが荷台3の積載面3aから所定距離だけ上方に離れた位置に配置されるので、荷台3に積載されたパレットP及び荷物Xに第1及び第2アンテナ10A,10Bの受信を邪魔されることを回避できる。しかも、第1又は第2アンテナ支持部材11A,11Bを前記収納状態に動作させることで、荷台3にパレットPを積載する作業の際に第1又は第2アンテナ10A,10Bが邪魔になることを防止できる。よって、運搬車1であっても衛星測位システムを好適に利用して自車位置の認識を安定して行うことができる。
【0045】
また、第1及び第2アンテナ支持部材11A,11Bは、前記収納状態にあるときに、第1及び第2アンテナ支持部材11A,11B及び第1及び第2アンテナ10A,10Bの全体が荷台3の積載面3aよりも下方に位置するので、荷物Xを積載したパレットPを荷台3に積載するために、地面に置かれたパレットPの下側に荷台3を潜り込ませるように運搬車1を走行させる際、第1又は第2アンテナ支持部材11A,11Bと第1又は第2アンテナ10A,10BがパレットPに干渉することを防止できる。
【0046】
アンテナ位置制御部55は、第1及び第2アンテナ支持部材11A,11Bのうち走行方向の前側に位置する方を前記収納状態として、パレットPとの干渉を防止し得る。アンテナ制御装置50は、第1運転室7A又は第2運転室7Bのうち電源がONになっている方の運転席のある側を前記走行方向の前側と判断することができる。また、アンテナ位置制御部55は、前後方向を撮影するカメラからの画像に基づいて、地面に置かれたパレットPが近づいていることを判断して、第1及び第2アンテナ支持部材11A,11BのうちパレットPに近い側のアンテナ支持部材を前記収納状態としてもよい。
【0047】
アンテナ支持部材を使用位置と収納位置との間で動作させるための構成として、アンテナ支持部材を回動する構成とする代わりには、アンテナ支持部材を伸縮する構成としてもよいし、アンテナ支持部材を折り畳み可能な構成としてもよい。アンテナ支持部材は、アクチュエータで動作させずに手動で動作させてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 運搬車
3 荷台
3a 載置面
6 荷台アクチュエータ
10A 第1アンテナ
10B 第2アンテナ
11Aa アンテナ取付部
11Ab 車体連結部
11A 第1アンテナ支持部材
11B 第2アンテナ支持部材
12A 第1アンテナアクチュエータ
12B 第2アンテナアクチュエータ
35A 第1衛星測位受信器
35B 第2衛星測位受信器
40 自動運転制御装置
41 自動位置推定部
42 走行制御部
50 アンテナ制御装置
51A 第1受信状態判定部
51B 第2受信状態判定部
52 積載検知部
53 荷台高さ検知部
54 運搬物情報取得部
55 アンテナ位置制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6