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特許7041732耐結露性内部表面を有するエンクロージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】耐結露性内部表面を有するエンクロージャ
(51)【国際特許分類】
   F21S 45/00 20180101AFI20220316BHJP
   F21V 3/10 20180101ALI20220316BHJP
   F21Y 101/00 20160101ALN20220316BHJP
   F21W 102/00 20180101ALN20220316BHJP
【FI】
F21S45/00
F21V3/10
F21Y101:00 300
F21W102:00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020202508
(22)【出願日】2020-12-07
(62)【分割の表示】P 2017526543の分割
【原出願日】2015-11-11
(65)【公開番号】P2021044257
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2020-12-07
(31)【優先権主張番号】62/083,451
(32)【優先日】2014-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ガスワース スティーブン マルク
【審査官】坂口 達紀
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-283402(JP,A)
【文献】特開2011-243520(JP,A)
【文献】国際公開第2014/107498(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0070470(US,A1)
【文献】特開2013-258141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/20,43/20,45/50,45/60
F21V 5/00,15/00,29/00,31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンクロージャであって、前記エンクロージャを形成する壁を備え、前記エンクロージャが、可視光照明装置であり、前記エンクロージャが、
内部空間(82);
少なくとも1つの壁の中に配置され、前記内部空間(82)に露出した内部抑止性表面(72)を有する抑止性要素(70)であって、ASTM D1003-11、CIE標準光源Cを用いる手順Aに従って求めて、20%以上の透明度を有する抑止性要素(70);及び、
少なくとも1つの別の壁の中に配置され、前記内部空間(82)に露出した内部結露性表面(76)を有する結露性要素(62,64);
を備え、
前記抑止性要素(70)または前記結露性要素(62,64)の少なくとも1つが、ある温度範囲にわたって内部抑止性表面温度と内部結露性表面温度との間に温度差を生じるように構成された相変化材料を含み、前記温度差が生じたとき、前記内部抑止性表面温度が、前記内部結露性表面温度を超えることを特徴とするエンクロージャ。
【請求項2】
請求項1に記載のエンクロージャであって、前記結露性要素(62,64)が、結露性要素相変化材料を含み、前記結露性要素相変化材料が、25℃未満の結露性相変化温度を有する、または、前記抑止性要素(70)が、抑止性要素相変化材料を含み、前記抑止性要素相変化材料が、0℃を超える抑止性相変化温度を有することを特徴とするエンクロージャ。
【請求項3】
請求項1に記載のエンクロージャであって、前記結露性要素が前記相変化材料を含み、前記抑止性要素が前記相変化材料を含まない、または、前記抑止性要素が前記相変化材料を含み、前記結露性要素が前記相変化材料を含まないことを特徴とするエンクロージャ。
【請求項4】
請求項1に記載のエンクロージャであって、前記抑止性要素(70)が前記抑止性要素相変化材料を含み、前記結露性要素(62,64)が前記結露性要素相変化材料を含み、前記抑止性要素相変化材料が、前記結露性要素相変化材料より高い相変化温度を有することを特徴とするエンクロージャ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載のエンクロージャであって、前記相変化材料は、
75wt%を超える前記相変化材料が結露性要素外部表面(78)よりも前記内部結露性表面(76)の近くにあるような前記結露性要素(62,64);及び、
75wt%を超える前記相変化材料が抑止性要素外部表面(74)よりも前記内部抑止性表面(72)の近くにあるような前記抑止性要素(70);
の少なくとも一方の全体にわたって不均一に分布していることを特徴とするエンクロージャ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載のエンクロージャであって、前記相変化材料が、ゼオライト粉末、ポリリン酸トリフェニル、結晶性パラフィンワックス、ポリエチレングリコール、脂肪酸、ナフタレン、二塩化カルシウム、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリエチレンオキシド、ポリイソブチレン、ポリシクロペンテン、ポリシクロオクテン、ポリシクロドデセン、ポリイソプレン、ポリオキシトリエチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシオクタメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンスベレート、ポリデカメチルアゼレート、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含む、または、前記相変化材料が、形状安定化された相変化材料粒子及び個別にカプセル化された相変化材料粒子の少なくとも1つを含むことを特徴とするエンクロージャ。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載のエンクロージャであって、前記結露性要素及び前記抑止性要素の少なくとも1つが、ポリマ及び前記相変化材料を含み、前記ポリマの屈折率及び前記相変化材料の屈折率が互いに10%以内にある、または、
前記結露性要素(62,64)及び前記抑止性要素(70)の少なくとも1つが、前記相変化材料を含み、熱伝導率向上剤をさらに含み、前記熱伝導率向上剤が、金属、金属酸化物、カーボン、シリカ、金属シリコン、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含むことを特徴とするエンクロージャ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の前記エンクロージャを形成する方法であって、
前記内部空間(82)に露出した内部抑止性表面(72)を有し、ASTM D1003-11、CIE標準光源Cを用いる手順Aに従って求めて、20%以上の前記透明性を有する前記抑止性要素(70)を備える前記壁を形成すること;
前記内部空間(82)に露出した前記内部結露性表面(76)を有する前記結露性要素(62,64)を備える前記別の壁を形成すること;及び、
前記内部空間(82)を有する前記エンクロージャを形成するために前記壁を配向させること;
を含み、
前記エンクロージャが、可視光照明装置であり、
前記抑止性要素(70)または前記結露性要素(62,64)の少なくとも1つが、ある温度範囲にわたって内部抑止性表面温度と内部結露性表面温度との間に温度差を生じるように構成された相変化材料を含み、前記温度差が生じたとき、前記内部抑止性表面温度が、前記内部結露性表面温度を超えることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の前記エンクロージャを備える可視光照射装置であって、前記抑止性要素(70)を備える前記壁がレンズ(104)であり、前記エンクロージャがハウジング部(102)及びベゼル部(110)を備え、前記ハウジング部(102)及び前記ベゼル部(110)の少なくとも1つが、
前記結露性要素(62,64);
光源(108)と電気的に接続するように構成された電気接続(100);及び
前記電気接続(100)に接続し、前記光源(108)に電気を供給するように構成された配線;
を備えることを特徴とする装置。
【請求項10】
ランプエンクロージャであって、
ベゼル(110);
光源(108)を受け入れるように構成されたソケット;
前記ベゼル(110)に連結され、前記光源(108)からの光を反射するように置かれた反射器(106);及び、
前記ベゼル(110)に連結されたレンズ(104);
を備え、
前記ベゼル(110)及び前記レンズ(104)の少なくとも1つが相変化材料を含み、
前記ランプエンクロージャは、請求項1から7のいずれか1項に記載のエンクロージャであり、
前記ベゼル(110)が前記結露性要素(62,64)を備え、前記レンズ(104)が前記抑止性要素(70)を備えることを特徴とするランプエンクロージャ。
【請求項11】
ランプエンクロージャであって、
ベゼル(110);
前記ベゼル(110)に連結されたレンズ(104);及び、
前記ベゼル(110)に連結された任意選択の第2レンズ;
を備え、
前記ベゼル(110)が、前記レンズ(104)と前記任意選択の第2レンズの両方の外辺部の回りに延び、また
前記ベゼル(110)及び前記レンズ(104)の少なくとも1つが相変化材料を含み、
前記ランプエンクロージャは、請求項1から7のいずれか1項に記載のエンクロージャであり、
前記ベゼル(110)が前記結露性要素(62,64)を備え、前記レンズ(104)が前記抑止性要素(70)を備えることを特徴とするランプエンクロージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐結露性(condensation-resistant)内部表面を有するエンクロージャに関する。
【背景技術】
【0002】
密閉されたランプのエンクロージャのレンズの内部表面、例えば乗り物のヘッドライトの内部表面にある、液滴状などの結露は、ランプの機能に影響を及ぼす。結露は、また、エンクロージャが視野にあるとき、例えば、使用者の乗り物が駐車していて、そのヘッドランプが視野にあるとき、ランプの特質についての使用者の知覚にも影響を及ぼし得る。結露は、また、望ましくなく光を屈折させて、光度性能にも影響を及ぼし得る。結露は、抑止され得る、又は、結露物は、ランプのエンクロージャが暖かければ、レンズから蒸発させられ得るが、あるランプクロージャでは、例えば発生熱の少ない光源を用いるもの(例えば発光ダイオード(LED)を含むランプ)では、ランプの点燈は、結露を抑止するのに、又は結露物を消散させるのに十分な熱をレンズで発生しないこともあり得る。
【0003】
ランプエンクロージャにおける結露を減らすための試みにおいて、能動的及び受動的手法が用いられてきた。能動的手法は、エンクロージャを加熱するためにエンクロージャに熱的に接触している電気伝導体に電力を供給することを含み得る。この手法は、少なくとも、それが追加の部品及び製造ステップに頼るという理由で、費用が掛かり得る。さらに、能動的要素がレンズの部品である場合、それは、光度性能に影響を及ぼし得る。また、このような手法は、乗り物がエンクロージャを能動的に加熱していない、電力を切った車における結露の問題に適切に対処していない。
【0004】
受動的手法は、濡れを良くするために、すなわち、小さな液滴の生成を抑止し、それによって光の散乱を減らすために、レンズの内部表面に適用される曇り止め剤又は処理を含み得る。このような作用剤又は処理は、水滴よりも水の膜を選ぶことによって、結露の光学的影響を最小限にするように設計されている;それらは、レンズ上の結露を抑止するようには設計されていないので、環境条件に応じて光度の変動の可能性が依然としてある。さらに、追加の製造ステップ及びコストが伴う。別の受動的手法は、LEDで発生する比較的低レベルの熱をレンズに誘導するように、ランプエンクロージャを設計することであるが、この手法は、設計への余分の制約を伴う。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、エンクロージャの選ばれた表面での結露の傾向を低下させた、改善されたエンクロージャが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書に開示されているのは、その上での結露への傾向が低下した表面を備えるエンクロージャである。
【0007】
一実施形態において、エンクロージャは、エンクロージャを形成する壁を備え、ここで、エンクロージャは、内部空間;少なくとも1つの壁に配置された抑止(抑制)性要素(an inhibiting element)、この抑止性要素は、内部空間に露出した内部抑止(抑制)性表面(an internal inhibiting surface)を有し、ここで、抑止性要素は、ASTM D1003-11、CIE標準光源Cを用いる手順Aに従って求めて、20%以上、特に40%以上、より特別には60%以上、より一層特別には80%以上の光線透過率を有する;及び、少なくとも1つの別の壁に配置された結露性要素(a condensing element)、この結露性要素は内部空間に露出した内部結露性表面(an internal condensing surface)を有する;を備え、ここで、抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、ある温度範囲にわたって内部抑止性表面温度(an internal inhibiting surface temperature)と内部結露性表面温度(an internal condensing surface temperature)との間に温度差を生じるように構成された相変化材料を含み、温度差が生じたとき、内部抑止性表面温度は、内部結露性表面温度を超える(内部結露性表面温度より高い)。
【0008】
一実施形態において、エンクロージャにおける結露を誘導する方法は、内部抑止性表面と内部結露性表面との間に温度差を生み出すことを含む。
【0009】
一実施形態において、エンクロージャを形成する方法は、抑止性要素を備える壁を形成すること;結露性要素を備える別の壁を形成すること;及び、エンクロージャを形成するように壁を配向させること;を含む。
【0010】
一実施形態において、可視光照明装置はエンクロージャを備え、ここで、抑止性要素を備える壁はレンズであり、エンクロージャは、ベゼル(bezel)部及びハウジング部を備え、ベゼル部及びハウジング部の少なくとも1つは、結露性要素;光源と電気的に接続するように構成された電気接続;及び、光源に接続し、光源に電気を供給するように構成された配線;を備える。
【0011】
一実施形態において、ランプエンクロージャは、ベゼル;光源を受け入れるように構成されたソケット;ベゼルに連結され、光源からの光を反射するように置かれた反射器;及び、ベゼルに連結されたレンズ;を備え、ここで、ベゼル及びレンズの少なくとも1つは、相変化材料を含む。
【0012】
一実施形態において、ランプエンクロージャは、ベゼル;ベゼルに連結された第1レンズ;及び、ベゼルに連結された任意選択の第2レンズを備え、ここで、ベゼルは、第1レンズ及び任意選択の第2レンズの両方の外辺部の回りに延び、ベゼル及び第1レンズの少なくとも1つは、相変化材料を含む。
【0013】
上記及び他の特徴は、以下の図及び詳細な説明によって例示される。
【0014】
以下は、図の簡単な説明であり、図では、類似の要素は、同じように番号を付けられ、図は、本明細書に開示されている例示的実施形態を説明する目的のためであって、例示的実施形態を限定する目的で与えられているのではない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】相変化材料(PCM:phase change material)を含まない抑止性表面、及びPCMを含む結露性表面について、温度vs.蓄熱を例示するグラフである。
図2】PCMを含む抑止性表面、及びPCMを含まない結露性表面について、温度 vs.蓄熱を例示するグラフである。
図3】PCMを含む抑止性表面、及びPCMを含む結露性表面について、温度 vs.蓄熱を例示するグラフである。
図4】結露性表面及び抑止性表面を含む、密閉されたヘッドランプの横断面を示す図である。
図5】結露性表面、及び別個のPCM層を有する抑止性表面を含む、密閉されたヘッドランプの横断面を示す図である。
図6】別個のPCM層を有する結露性表面、及び抑止性表面を含む、密閉されたヘッドランプの横断面を示す図である。
図7】ヘッドランプの分解組立図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
エンクロージャ、例えばランプエンクロージャは、その中に取り込まれた、ある量の水を有する。様々な環境条件下に、水は、エンクロージャの内部表面に結露し得る。結露は、視覚的に見栄えがしないことがあり得る。結露は、ランプエンクロージャの場合には、光度性能の低下を生じ得る。結露への傾向を低下させるために、能動的及び受動的の両方の方法が開発されてきたが、改善された方法が望まれる。
【0017】
それゆえに、本明細書において開示されるのは、エンクロージャを形成する壁;少なくとも1つの壁に配置された抑止性要素、この抑止性要素は内部空間に露出した内部抑止性表面を有する;及び、少なくとも1つの別の壁に配置された結露性要素、この結露性要素は、内部空間に露出した内部結露性表面を有する;を備えるエンクロージャであり、ここで、抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、ある温度範囲にわたって内部抑止性表面温度と内部結露性表面温度との間に温度差を生じるように構成されたPCMを含み、温度差が生じたとき、内部抑止性表面温度は、内部結露性表面温度を超える。本明細書で用いられる場合、PCMは、その相変化温度(PCT:phase change temperature)で相変化を経る材料であり、その温度で、それは、温度の上昇なしに、潜熱としてエネルギーを吸収し、温度の低下なしに、熱を放出する。
【0018】
エンクロージャはランプエンクロージャであってもよい。ランプエンクロージャは、複数の領域を、例えば、複数の平面領域、又は平面及び非平面領域の混合型を含む、複合表面を成し得る。異なる領域は、異なる部品から形成され得る。異なる領域は、一体部品(monolithic part)から形成され得る。異なる領域は、同じ一体部品から形成され得る。ある領域はPCMを含み得る。複数の領域が同じPCMを含み得る。複数の領域は異なるPCMを含み得る。
【0019】
温度差は、熱源から供給される熱により生じ得る。潜熱(相変化によって現れる)及び顕熱(温度上昇によって現れる)として蓄え得る熱の供給源は、日射及び周囲温度を含み得る。熱源はランプを含み得る。熱源は、ランプエンクロージャに不可欠な補助的な熱供給源を含み得る。熱源は、エンジンルーム中の熱供給源を含み得る。結露性要素及び抑止性要素の少なくとも1つに、1種又は複数のPCMを組み込むことによって、出願人等は、それらが、取り込まれた湿分の結露を、内部結露性表面に、選択的に局在化し得ることを見出した。
【0020】
内部抑止性表面及び内部結露性表面は、それぞれ独立に、それぞれ抑止性要素及び結露性要素の内部表面積の10%以上に広がり得る。内部抑止性表面及び内部結露性表面は、それぞれ独立に、それぞれ抑止性要素及び結露性要素の内部表面積の80%以上に広がり得る。内部抑止性表面及び内部結露性表面は、それぞれ独立に、それぞれ抑止性要素及び結露性要素の内部表面積の90%以上に広がり得る。内部抑止性表面及び内部結露性表面は、それぞれ独立に、それぞれ抑止性要素及び結露性要素の内部表面積の95から100%に広がり得る。結露は、使用されている領域間の温度差を助長するために、複数の領域を形成するための1種又は複数のPCMを選択することによって、ある1つの領域に局在化され得る。抑止性表面及び結露性表面の間の温度差は、結露を結露性表面に誘導する。この誘導される結露は、ある温度範囲にわたって、結露性表面を、抑止性表面の温度より低い温度に保つように、PCMを使用することによって起こる。
【0021】
この誘導される結露は、エンクロージャの周囲と内部の間の空気交換(例えば、ベント又はエンクロージャの不完全な密封に起因する)も、エンクロージャの壁を通しての又はその内側からの湿分の拡散も、結露に影響を及ぼすのに十分な温度変化よりゆっくりと起こる場合、さらに支援されることに留意される。例えば、このような温度変化は、熱源がエンクロージャに影響を及ぼすとき、数十分の時間スケールにわたって、自動車照明のためのエンクロージャにおいて起こり得る。これらの条件の下で、結露性表面は、乾燥剤の役割を果たすことができ、エンクロージャ内の空気中の湿分を、それが、周囲との空気交換、又はエンクロージャ内へのエンクロージャ壁からの湿分の拡散によって、置き換えられ得るより迅速に激減させる。
【0022】
エンクロージャは、エンクロージャを形成する壁を含み、ここで、エンクロージャは、内部空間;エンクロージャの少なくとも1つの壁に配置された抑止性要素、この抑止性要素は内部空間に露出した内部抑止性表面を有する;及び、少なくとも1つの別の壁に配置された結露性要素、この結露性要素は内部空間に露出した内部結露性表面を有する;を備え、ここで、1)結露性要素だけがPCMを含む;2)抑止性要素だけがPCMを含む;又は、3)PCMが、高PCTのPCM及び低PCTのPCMを含み、抑止性要素が、高PCTのPCMを含み、結露性要素が低PCTのPCMを含む。
【0023】
図1は、エンクロージャの内部の抑止性表面(線分22及び12)及び結露性表面(太線、線分22、10、及び20)の温度軌跡を例示し、ここで、抑止性要素は、PCMを含まず、結露性要素はPCMを含む。図1において、蓄えられる熱がx軸に沿って示され、増加する表面温度は、低温域16から高温域18まで、y軸で示されている。線分22に沿って、共通の低い温度から温度を上げると、結露性表面と抑止性表面のどちらの温度も、PCMの結露性PCT14に達するまで(これは、破線24が、y軸と交差する位置で示される)、増加する。一旦、低い温度からPCMの結露性PCT14に達すると、潜熱の形の結露性要素の熱貯蔵は増加し、温度は、結露性PCT14で、温度プラト10を辿り、一方、抑止性表面の温度は、線分12で連続的に上昇する。いつかは、結露性要素は、図1の軌跡線分20によって示される、顕熱貯蔵を再開し、これは、有限の体積のPCMの有限の潜熱貯蔵容量を反映している。
【0024】
図1に見られるように、エンクロージャの表面が、結露性PCT14未満の共通の初期温度から温まるにつれて、結露性表面の温度は、結露性PCT14でプラトに達するのに対して、抑止性表面は温まり続ける。したがって、PCMを含む結露性要素の結露性表面温度は、PCMを含まない抑止性要素の抑止性表面温度に比べて、より低くなり得る。結果は、結露性表面の瞬間温度は、一般に、抑止性表面温度より低く、エンクロージャ内の湿分は、結露性表面に、そのより低い温度のために、優先的に、結露する、又は存続するであろうということである。例えば、内部空間の状態は、抑止性表面と結露性表面の両方に結露があるようなものであり得る。内部空間の温度が上がるにつれて、抑止性表面温度は、結露性表面温度より高く、抑止性表面での結露は、蒸発のために少なくなり得るのに対して、結露性表面での結露は持続し得る。図1のPCTは、PCMがなければ結露物が抑止性表面に存続し得る加温の状況推移に典型的な、エンクロージャ内部の表面の温度範囲に対して、低くなり得ることが指摘される。ランプエンクロージャに適用される場合、この実施形態では、様々な加工及び光学的要件に従うレンズが、PCMを含まない抑止性要素にあたる。
【0025】
図2は、抑止性表面(線分42、30、及び40)及び結露性表面(太線、線分42及び32)の温度軌跡を例示し、ここで、抑止性要素はPCMを含み、結露性要素はPCMを含まない。図2において、蓄熱は、x軸に沿って示され、上昇する温度は、低温域36から高温域38まで、y軸で示されている。線分42に沿って共通の高い温度から温度を下げると、結露性表面と抑止性表面の両方の温度は、PCMの抑止性PCT34に達するまで(これは、破線44がy軸と交差する位置で示される)、低下する。一旦、より高い温度からPCMの抑止性PCT34に達すると、潜熱の形の抑止性要素の熱貯蔵は減少し、温度は、抑止性PCT34で、温度プラト30を辿り、一方、結露性表面の温度は、線分32で連続的に低下する。最終的に、抑止性要素は、図2の軌跡線分40によって示される、顕熱損失を再開し、これは、有限の体積のPCMの有限の潜熱貯蔵容量を反映している。
【0026】
図2に見られるように、エンクロージャの表面が、抑止性PCT34を超える共通の温度から、例えばエンクロージャの外部の周囲の大気の温度低下のために、冷えるにつれて、抑止性表面の温度は、抑止性PCT34でプラトに達するのに対して、結露性表面は冷え続ける。したがって、PCMを含まない結露性要素の結露性表面温度は、PCMを含む抑止性要素の抑止性表面温度に比べて、より低くなり得る。結果は、結露性表面の瞬間温度は、一般に、抑止性表面温度より低く、エンクロージャ内の湿分は、結露性表面に、そのより低い温度のために、優先的に結露するであろうということである。図2のPCTは、PCMがなければ抑止性表面での結露に至る冷却の状況推移に典型的な、エンクロージャ内部の空気の飽和温度(露点)の範囲に対して、高くなり得ることが指摘される。PCMを含む抑止性要素の抑止性表面、及びPCMを含まない結露性要素の結露性表面は、高温の昼間又は稼働温度から冷めることを経るであろうエンクロージャに有用であり得る。
【0027】
図3は、抑止性表面(線分22、52、30、及び42)及び結露性表面(太線、線分42、54、10、及び22)の温度軌跡を例示し、ここで、抑止性要素は、抑止性PCT34を示す高PCTのPCMを含み、結露性要素は、結露性PCT14を示す低PCTのPCMを含む。図3において、蓄熱は、x軸に沿って示され、上昇する温度は、低温域16→中温域50→高温域38へとy軸で示されている。線分22に沿って共通の低い温度から温度を上げると、結露性表面と抑止性表面の両方の温度は、結露性PCMの結露性PCT14に達するまで(これは、破線24がy軸と交差する位置で示される)、上昇する。一旦、より低い温度からPCMの結露性PCT14に達すると、潜熱の形の結露性要素の熱貯蔵は増加し、結露性表面の温度は、結露性PCT14で温度プラト10を辿り、一方、抑止性表面の温度は、線分52で連続的に上昇する。抑止性表面の温度は、抑止性PCT34に達するまで上昇する。この時点で、抑止性表面の温度は、抑止性要素が軌跡線分42によって示される顕熱の貯蔵を再開するまで(これは、有限の体積のPCMの有限の潜熱貯蔵容量を反映している)、温度プラト30にわたって一定のままである。結露性表面は、結露性要素が図3の軌跡線分54及び42によって示される顕熱の貯蔵を再開するまで(これは、有限の体積のPCMの有限の潜熱貯蔵容量を反映している)、温度プラト10を辿る。
【0028】
同様に、図3は、線分42に沿って共通の高い温度から温度を下げると、結露性表面と抑止性表面の両方の温度が、PCMの抑止性PCT34に達するまで(これは、破線44がy軸と交差する位置で示される)、低下することを例示する。一旦、より高い温度からPCMの抑止性PCT34に達すると、潜熱の形の抑止性要素の熱の貯蔵は減少し、その温度は、抑止性PCT34で温度プラト30を辿り、一方、結露性表面の温度は、線分54で連続的に低下する。結露性表面の温度は、結露性PCT14に達するまで、低下する。この時点で、結露性表面の温度は、結露性要素が軌跡線分22によって示される顕熱損失を再開するまで(これは、有限の体積のPCMの有限の潜熱貯蔵容量を反映している)、温度プラト10にわたって一定のままである。抑止性表面は、抑止性要素が図3の軌跡線分52及び22によって示される顕熱損失を再開するまで(これは、有限の体積のPCMの有限の潜熱貯蔵容量を反映している)、温度プラト30を辿る。
【0029】
結露性PCT及び抑止性PCTは、それらが、飽和温度の実際的な範囲を概ね挟むように選択され得る。この範囲にわたって、高PCTのPCM及び低PCTのPCMは、抑止性表面と結露性表面の温度に相違を生じ、その結果、空気交換及び内部の湿分供給源についての上記条件の下で、結露は、抑止性表面での結露なしに、結露性表面の方で起こる。
【0030】
図1~3は、少なくとも1つの要素における1種のPCTを有する、PCMの組み込みを例示するが、複数種のPCMが1つの要素に組み込まれてもよいことが指摘される。同様に、図3に関して、図3は、高PCTのPCM及び低PCTのPCMが、同量の潜熱を蓄えることが可能である場合の実施形態を例示するが、1つの材料が、例えば、その固有の貯蔵容量のために、又は要素におけるPCMの相対量を変えることによって、他方より多くの潜熱を蓄えることが可能であり得ることが分かることが指摘される。さらに図3に関して、要素における個々のPCM及びそれらの量が、蓄熱の所定の値に対して結露性表面温度が抑止性表面温度以下であるように、選択されることが指摘される。
【0031】
さらに図2及び3に関して、PCMがランプエンクロージャにおけるレンズの抑止性要素に組み込まれるとき、周囲環境に露出した外面をレンズが有する場合、PCMは、そのPCTが、水の氷点を超えているように選択できることが指摘される(すなわち、PCTが0℃を超える)。こうして、レンズ温度は、PCMが存在しなければ水の氷点未満に低下するであろう(例えば、周囲温度の低下のために、又は、内部熱供給源(例えばLED又はエンジン)のスイッチが切られたという理由で)が、PCMの相変化の継続時間を通して高いままであろうから、レンズ要素におけるPCMの存在は、その外部表面での氷の生成を防ぐことができる。
【0032】
抑止性要素が抑止性要素PCMを含む場合、抑止性要素PCMは、0℃を超える、又は5℃から25℃の範囲、又は10℃から20℃の範囲にある抑止性PCTを有し得る。結露性要素が結露性要素PCMを含む場合、結露性要素PCMは、25℃未満、又は0℃から20℃の範囲、又は5℃から15℃の範囲にある結露性PCTを有し得る。
【0033】
ある要素がPCMを含む場合、PCMは、その要素の全体にわたって均一に、又は不均一に分散され得る。均一に分散される、又は均一に分布するとは、例えばポリママトリックスに、PCMを十分に混合し、次いで要素を形成することによって製造される要素を表す。PCMが不均一に分散されている場合、PCMは、例えば、要素内で、エンクロージャの内部表面に近くに局在化され得るが、この場合、要素の内部表面は、高濃度のPCMを有し、要素の外部表面は、より低濃度のPCMを有し得る。例えば、不均一に分散されたとは、50wt%を超えるPCMが、外部表面より内部表面の近くに、局在していることを意味し得る。「不均一に分散された」は、60wt%を超えるPCMが、外部表面より内部表面の近くに、局在していることを意味し得る。「不均一に分散された」は、75wt%を超えるPCMが、外部表面より内部表面の近くに、局在していることを意味し得る。同様に、要素は、別個の位置に、例えばエンクロージャの要素の内部表面にある別個の層にあるPCMを含み得るが、ここで、別個のPCM層は、PCMを含む層(例えば、コーティング層)である。別個のPCM層は、下にある表面と、熱的又は機械的かのいずれかで、又は両方で、結び付けられ得る。別個のPCM層は、層を定期的に除去し取り替えることができるように、下にある表面に機械的に緩く結び付けられ得る。別個のPCM層は、別個の層の温度がプラト領域をはっきりと示し、他方、下にある表面は温度を変え続けるように、下にある表面に熱的に緩く結び付けられ得る。
【0034】
PCMは、PCMを組み込む、インモールドコーティング、キャップ(cap)層、又はフィルムインサート成型層により、表面に集中させることができる。
【0035】
本明細書に開示されているエンクロージャは、これらに限らないが、乗り物(例えば、自動車、列車、航空機、及び船舶)における使用;インドア用途(例えば、陳列ケース);これらに限らないが、建築物及び建造物(例えば、建物、スタジアム、グリーンハウスなど)を含めて、アウトドア用途;を含めて、様々な用途に使用できる。エンクロージャは、例えば、ヘッドランプ、ルーフライト(roof light)、ドア灯、天井灯、フラッシュライトなどとして、ランプエンクロージャとして使用できる。エンクロージャは、例えば外包として、ランプエンクロージャであり得るし、ベゼル及び反射器の少なくとも1つを含み得る。
【0036】
可視照明装置は、本発明のエンクロージャを含み得るが、その場合、抑止性要素を含む壁は、レンズであり、エンクロージャは、ハウジング部及びベゼル部を備え、ハウジング部及びベゼル部の少なくとも1つは、結露性要素;光源;光源と電気的に接続するように構成された電気接続;及び、光源に接続し、光源に電気を供給するように構成された配線;を備える。前記装置は、反射器を備え得るが、反射器は、光源と光学的に連通している。電気接続は、ソケット及び/又はピンを備え得る。
【0037】
エンクロージャが、ランプエンクロージャである場合、ランプエンクロージャは、ベゼル;及び光源を受け入れるように構成されたソケット;ベゼルに連結され、光源からの光を反射するように置かれた反射器;及びベゼルに連結されたレンズ;を含み得る。ベゼル及びレンズの少なくとも1つは、PCMを含み得る。ランプエンクロージャは、ベゼル;ベゼルに連結された第1レンズ;及び、ベゼルに連結された任意選択の第2レンズを含み得るが、ここで、ベゼルは、第1レンズと任意選択の第2レンズの両方の外辺部の回りに延び、ベゼル及び第1レンズの少なくとも1つが、PCMを含む。
【0038】
図4は、内部空間82に囲まれた光源80を含む、ランプエンクロージャ56の横断面の例示である。ランプエンクロージャ56は、結露性要素62及び64(例えばベゼル(複数可))、結露性要素又は抑止性要素であり得る要素66及び68、並びに抑止性要素70(例えば、レンズ)を含む。結露性要素62及び64の少なくとも1つは、PCMを含み得る;抑止性要素70はPCMを含み得る;又は、PCMは高PCTのPCM及び低PCTのPCMを含み得、抑止性要素70が、高PCTのPCMを含み得、結露性要素62及び64の少なくとも1つが低PCTのPCMを含み得る。
【0039】
PCMは、1つ又は複数の要素に均一に分散され得る。PCMは、1つの要素内に不均一に分散され得る。例えば、抑止性要素がPCMを含む場合、PCMは、図4に示される内部抑止性表面72の近くに局在化され得るが、ここで、50wt%を超えるPCMが、外部抑止(抑制)性表面74より内部抑止性表面72の近くに局在化され得る。同様に、結露性要素62がPCMを含む場合、PCMは、図4に示される内部結露性表面76の近くに局在化され得るが、ここで、50wt%を超えるPCMが、外部抑止結露性表面78より内部抑止(抑制)結露性表面76の近くに局在化され得る。
【0040】
図5は、内部空間82に囲まれた光源80を含むランプエンクロージャ58のエンクロージャの横断面の例示である。ランプエンクロージャ58は、PCMを含む別個のPCM層84を含む。抑止性要素は、層70、及び内部抑止性表面72を備える別個のPCM層84を備え、ここで、層70と層84は、互いに直接接触している。図6は、内部空間82に取り囲まれた光源80を含むランプエンクロージャ60のエンクロージャの横断面の例示である。ランプエンクロージャ60は、PCMを含む別個のPCM層86を含む。図6は、結露性要素が、層62、64、及び内部結露層76を備える別個のPCM層86を備え、層62、64と、層86とが、互いに直接接触していることを示す。
【0041】
図7は、ヘッドランプの分解組立図である。ヘッドランプはハウジング102を有し、これは、反射器アセンブリ106(反射器を備える)、光源108、及び乗り物の電気系への連結のための電気接続器(例えばソケット)100を含む。ベゼル110及びレンズ104は、ハウジングを出ていく光がベゼル110及びレンズ104を通過するように、ハウジングの外部に配置されている。ハウジング102、反射器アセンブリ106、ベゼル110、及びレンズ104の1つ又は複数が、相変化材料を含み得る。図7は、1つの特定のヘッドランプデザインを示すこと、及び、実際の形状及び構造に対する多数の代替があることが理解されるであろう。例えば、ハウジング及び反射器は、単一のコンポーネントであり得る。
【0042】
結露性要素及び抑止性要素は、それぞれ独立に、ポリマを含み得るが、このポリマは、同じてあっても異なっていてもよい。可能なポリマには、これらに限らないが、オリゴマ、ポリマ、イオノマ、デンドリマ、コポリマ、例えば、グラフトコポリマ、ブロックコポリマ(例えば、星型ブロックコポリマ)、ランダムコポリマなど、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。このようなポリマの例には、これらに限らないが、ポリカーボネート類(例えば、ポリカーボネートのブレンド(例えば、ポリカーボネート-ポリブタジエンブレンド、コポリエステルポリカーボネート))、ポリスチレン類(例えば、ポリスチレンホモポリマ、ポリカーボネートとスチレンのコポリマ、ポリフェニレンエーテル-ポリスチレンブレンド)、ポリイミド(例えば、ポリエーテルイミド)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアルキルメタクリレート(例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA))、ポリエステル(例えば、コポリエステル、ポリチオエステル)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン(PP)及びポリエチレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE))、ポリアミド(例えば、ポリアミドイミド)、ポリアクリレート、ポリスルホン(例えば、ポリアリールスルホン、ポリスルホンアミド)、ポリフェニレンスルフィド、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテル(例えば、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン(PES))、ポリアクリリック、ポリウレタン、ポリアセタール、ポリベンゾオキサゾール(例えば、ポリベンゾチアジノフェノチアジン、ポリベンゾチアゾール)、ポリオキサジアゾール、ポリピラジノキノキサリン、ポリピロメリトイミド、ポリキノキサリン、ポリベンゾイミダゾール、ポリオキシインドール、ポリオキソイソインドリン(例えば、ポリジオキソイソインドリン)、ポリトリアジン、ポリピリダジン、ポリピペラジン、ポリピリジン、ポリピペリジン、ポリトリアゾール、ポリピラゾール、ポリピロリジン、ポリカルボラン、ポリオキサビシクロノナン、ポリジベンゾフラン、ポリフタリド、ポリアセタール、ポリアンヒドリド、ポリビニル(例えば、ポリビニルエーテル、ポリビニルチオエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルケトン、ポリハロゲン化ビニル(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルニトリル、ポリビニルエステル)、ポリスルホネート、ポリスルフィド、ポリウレア、ポリホスファゼン、ポリシラザン、ポリシロキサン、フルオロポリマ(例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、フッ素化エチレン-プロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(PETFE))、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0043】
より詳細には、ポリマには、これらに限らないが、ポリカーボネート樹脂(例えば、LEXAN(商標)樹脂、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、ポリフェニレンエーテル-ポリスチレン樹脂(例えば、NORYL(商標)樹脂、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、ポリエーテルイミド樹脂(例えば、ULTEM(商標)樹脂、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、ポリブチレンテレフタレート-ポリカーボネート樹脂(例えば、XENOY(商標)樹脂、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、コポリエステルカーボネート樹脂(例えば、LEXAN(商標)SLX樹脂、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、ポリカーボネート/アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(例えば、CYCOLOY(商標)、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、及びこれらの樹脂の少なくとも1つを含む組合せが含まれ得る。より一層詳細には、ポリマには、これらに限らないが、ポリカーボネートのホモポリマ及びコポリマ、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンエーテル、又はこれらの樹脂の少なくとも1つを含む組合せが含まれ得る。ポリカーボネートには、ポリカーボネートのコポリマ(例えば、ポリカーボネート-ポリシロキサン、例えば、ポリカーボネート-ポリシロキサンブロックコポリマ)、直鎖ポリカーボネート、分岐状ポリカーボネート、エンドキャップ処理(end-capped)ポリカーボネート(例えば、ニトリルエンドキャップ処理ポリカーボネート)、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せ、例えば、分岐状及び直鎖ポリカーボネートの組合せが含まれ得る。
【0044】
ポリカーボネート樹脂は、2価フェノール(複数可)とカーボネート前駆体、例えば、ホスゲン、ハロホルメート、又は炭酸エステルとを反応させることによって製造され得る芳香族カーボネートポリマであり得る。使用できるポリカーボネートの1つの例は、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されているポリカーボネートのLEXAN(商標)である。表面は、ビスフェノール-Aポリカーボネート及び他の樹脂グレード(例えば分岐状の又は置換された、さらには他のポリマ、例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(ABS)、又はポリエチレンと共重合又はブレンドされた)を含み得る。
【0045】
アクリルポリマは、メチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなど、さらには、これらの少なくとも1つを含む組合せのようなモノマーから製造され得る。置換アクリレート及びメタクリレート、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、及びn-ブチルアクリレートもまた使用できる。
【0046】
ポリエステルは、例えば、有機ポリカルボン酸(例えば、フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、アヂピン酸、マレイン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、セバシン酸、ドデカン二酸、など)又はそれらの無水物と、第1級または第2級ヒドロキシル基を含む有機ポリオール(例えば、エチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、及びシクロヘキサンジメタノール)とのポリエステル化によって製造できる。
【0047】
前記ポリマはポリウレタンを含み得る。ポリウレタンは、ポリイソシアネートと、ポリオール、ポリアミン、又は水との反応によって製造できる。ポリイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート、並びに、これらのジイソシアネートのビウレット及びイソシアヌレートが含まれる。ポリオールの例には、低分子量脂肪族アルコール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、脂肪アルコールなどが含まれる。基材を形成できる他の材料の例には、CYCOLAC(商標)(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、CYCOLOY(商標)(LEXAN(商標)とCYCOLAC(商標)のブレンド、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、VALOX(商標)(ポリブチレンテレフタレート、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)、XENOY(商標)(LEXAN(商標)とVALOX(商標)のブレンド、SABIC’S Innovative Plastics Businessから市販されている)などが含まれる。
【0048】
抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、透明プラスチックを、例えば、ポリカーボネート樹脂、アクリルポリマ、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリスルホン樹脂、さらには、これらの少なくとも1つを含む組合せを含み得る。抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、1%以下の可視光を、それを通して移動させる不透明プラスチックを含み得る。抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、5%以上の可視光を、それを通して通過させる透明プラスチックを含み得る。抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、20%以上の可視光を、それを通して通過させる透明プラスチックを含み得る。抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、50%以上の可視光を、それを通して通過させる透明プラスチックを含み得る。抑止性要素及び結露性要素の少なくとも1つは、90%以上の可視光を、それを通して通過させる透明プラスチックを含み得る。可視光透過率は、米国材料試験協会(ASTM)規格D1003-11、国際照明委員会(CIE)標準光源Cを用いる手順Aに従って決定できる(例えば、国際標準化機構(ISO)10526を参照)。
【0049】
ポリマは、この種のポリマ組成物に通常組み込まれる様々な添加剤を含み得、ポリマに望まれる特性、例えば透明度に、添加剤がそれ程悪影響を与えないように選択されるように、ポリマを選ぶことができる。このような添加剤は、ポリマ製の物品を成形するための、成分の混合の間の適切な時点で、混合できる。例示的な添加剤には、耐衝撃改良剤、フィラー、強化剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外(UV)光安定剤(例えば、UV吸収性)、可塑剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、着色剤(例えば、カーボンブラック及び有機染料)、表面効果添加剤、赤外放射安定剤(例えば、赤外吸収性)、難燃剤、熱伝導率向上剤(a thermal conductivity enhancer)、及びドリップ防止剤が含まれる。添加剤の組合せ、例えば、熱安定剤、離型剤、及び紫外光安定剤の組合せが使用され得る。通常、添加剤は、効果があると一般に分かっている量で使用される。添加剤(耐衝撃改良剤、フィラー、又は強化剤以外)の全量は、組成物の全重量に対して、通常、0.001から30重量パーセント(wt%)である。一実施形態において、任意選択で、繊維(例えば、カーボン、セラミック、又は金属)が、光学的及び/又は美的要件と両立させて、熱伝導率を高めるために、ポリマに組み込まれ得る。
【0050】
耐候層が、エンクロージャの外部及び内部表面の1つ又は両方に付けられ得る。例えば、耐候層は、100マイクロメートル(μm)以下の厚さを有するコーティングであり得る。耐候層は、4μmから65μmの厚さを有するコーティングであり得る。耐候層は、室温及び大気圧で、コーティング溶液にプラスチック基材をディッピングすること(すなわち、ディップコーティング)を含めて、様々な手段によって付けることができる。耐候層は、また、これらに限らないが、フローコーティング、カーテンコーティング、及びスプレーコーティングを含めて、他の方法によって付けられてもよい。耐候層は、シリコーン(例えば、シリコーンハードコート)、ポリウレタン(例えば、ポリウレタンアクリレート)、アクリル、ポリアクリレート(例えば、ポリメタクリレート、ポリメチルメタクリレート)、ポリフッ化ビニリデン、ポリエステル、エポキシ、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せを含み得る。耐候層は、紫外吸収性分子(例えば、ヒドロキシフェニルチアジン、ヒドロキシベンゾフェノン、ヒドロキシルフェニルベンゾチアゾール、ヒドロキシフェニルトリアジン、ポリアロイルレソルシノール、及び、シアノアクリレート、さらには、これらの少なくとも1つを含む組合せ)を含み得る。例えば、耐候層は、シリコーンハードコート層(例えば、AS4000又はAS4700、Momentive Performance Materialsから市販されている)を含み得る。耐候層は、アクリルUV硬化ハードコート(例えば、UVHC3000K又はUVHC5000、Momentive Performance Materialsから市販されている)を含み得る。
【0051】
耐候層は、プライマ層及びコーティング(例えば、トップコート)を含み得る。プライマ層は、エンクロージャへの耐候層の接着の助けとなることができる。プライマ層には、これらに限らないが、アクリル、ポリエステル、エポキシ、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれ得る。プライマ層は、また、紫外吸収剤を、耐候層のトップコートにおける紫外吸収剤に加えて、又はそれらの代わりに、含み得る。例えば、プライマ層は、アクリルプライマ(SHP401又はSHP470、Momentive Performance Materialsから市販されている)を含み得る。
【0052】
耐摩耗層(例えば、コーティング又はプラズマコーティング)が、エンクロージャの内部及び外部表面の1つ又は両方に付けられ得る。任意選択で、耐候層は、耐摩耗層とエンクロージャの外部表面との間に置かれ得る。耐摩耗層は、単層又は多層を含み、エンクロージャの耐摩耗性を改善することによって、向上した機能を付け加えることができる。一般に、耐摩耗層には、有機コーティング及び/又は無機コーティングが、例えば、これらに限らないが、酸化アルミニウム、フッ化バリウム、窒化ホウ素、酸化ハフニウム、フッ化ランタン、フッ化マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化スカンジウム、一酸化ケイ素、二酸化ケイ素、窒化ケイ素、オキシ窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、水素化オキシ炭化ケイ素、酸化タンタル、酸化チタン、酸化スズ、酸化インジウムスズ、酸化イットリウム、酸化亜鉛、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコニウム、ガラス、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれ得る。
【0053】
耐摩耗層は、様々な堆積技術、例えば、真空アシスト堆積法及び大気圧コーティング法によって付けられ得る。例えば、真空アシスト堆積法には、これらに限らないが、プラズマ援用化学蒸着(PECVD)、アーク-PECVD、膨張熱プラズマPECVD、イオン援用プラズマ堆積、マグネトロンスパッタリング、電子ビーム蒸発、及びイオンビームスパッタリングが含まれ得る。
【0054】
曇り止め層又は曇り止め処理は、結露をさらに妨げるために、又は水滴状の結露を抑止するために、外部表面、内部抑止性表面、及び内部結露性表面の少なくとも1つに適用され得る。例えば、曇り止め層又は曇り止め処理は、表面を、より疎水性か又はより親水性かのいずれかにする(例えば、処理前後の表面上の水滴の接触角における変化を求めることによって決定できる)ことによって、水が、表面に結露する傾向を低下又は増大させ得る。曇り止め層又は曇り止め処理は、結露をさらに妨げるために、又は外部抑止性表面上の水滴状の結露を抑止するために、外部抑止性表面に付けられ得る。曇り止め層は、インモールドコーティング、キャップ層、又はフィルムインサート成型層により、付けられ得る。内部抑止性表面上の親水性曇り止め要素(例えば、1つ又は複数の曇り止め層及び曇り止め処理)の寿命は、抑止性表面以外の表面にある曇り止め層又は曇り止め処理に比べて、延長され得ることが指摘される。この寿命の延長は、曇り止め要素が、通常、結露によって引き起こされる、加水分解による不安定を被るという事実に由来する。内部抑止性表面は、結露性表面の存在のために、結露が減る(抑止性表面でない同じ表面に比べて)ので、曇り止め要素が水に曝されることが少なくなる。
【0055】
任意選択で、1つ又は複数の層(例えば、耐候層及び/又は耐摩耗層及び/又は曇り止め層)は、ラミネーション若しくはフィルムインサート成型のような方法によって、又は上記の方法によって、エンクロージャの内部及び外部表面の1つ又は両方に付けられたフィルムであってもよい。例えば、2つ以上の層を備える、共押出フィルム、押出コーティング、ロールコーティング、又は押出ラミネートによるフィルムが、先に記載されたハードコート(例えば、シリコーンハードコート、又はアクリルUV硬化ハードコート)の代替として使用され得る。フィルムは、耐摩耗層への耐候層(すなわち、フィルム)の接着を向上させるために、添加剤又はコポリマを含み得る、及び/又は、それ自体、アクリル(例えば、ポリメチルメタクリレート)、フルオロポリマ(例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル)などのような耐候性材料を含み得る、及び/又は、下にある基材を保護するのに十分なだけ、紫外放射の透過を遮ることができる;及び/又は、フィルムインサート成型(FIM)(インモールド加飾(IMD))、押出、又は3次元形状パネルのラミネート加工に適切であり得る。
【0056】
エンクロージャのコンポーネントの少なくとも1つ(例えば、抑止要素、結露要素、要素内の層など)は、それぞれ独立に、添加剤を含み得る。添加剤は、着色剤(1つまたは複数)、酸化防止剤(1つまたは複数)、界面活性剤(1つまたは複数)、可塑剤(1つまたは複数)、赤外放射吸収剤(1つまたは複数)、静電防止剤(1つまたは複数)、抗菌剤(1つまたは複数)、流動添加剤(1つまたは複数)、分散剤(1つまたは複数)、相溶化剤(1つまたは複数)、硬化触媒(1つまたは複数)、紫外放射吸収剤(1つまたは複数)、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せを含み得る。様々な要素及び/又は様々な層に添加される何らかの添加剤の種類及び量は、エンクロージャに望まれる性能及び最終用途に応じて決まる。
【0057】
例示的なPCMには、これらに限らないが、ゼオライト粉末、ポリリン酸トリフェニル(polytriphenylphosphate)、結晶性パラフィンワックス、ポリエチレングリコール、脂肪酸、ナフタレン、二塩化カルシウム、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリエチレンオキシド、ポリイソブチレン、ポリシクロペンテン、ポリシクロオクテン、ポリシクロドデセン、ポリイソプレン、ポリオキシトリエチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシオクタメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンスベレート、ポリデカメチルアゼレート、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。
【0058】
PCMは、これらに限らないが、個別にカプセル化された、数マイクロメートルの直径を有するPCM粒子、又は、固相若しくは液相PCMをポリママトリックスなどの支持構造体が完全に含んだ、形状安定化されたPCMを含めて、様々な形態で実現され得る。カプセルの材料は、例えば、(例えば、カプセルの材料としてのガラス又はポリマによる)マイクロスフィアを含み得る。このような場合、PCMは、マイクロスフィアによって個別にカプセル化され得る。PCMは、これらに限らないが、2ショット射出成型コンポーネントでの第1ショット及び/又は第2ショットへの組み込みを含めて、様々な位置でポリマに組み込まれ得る。例えば、第1及び第2ショットに組み込まれたPCMは、異なるそれぞれの形態(例えば、個別にカプセル化されたPCM粒子、又は形状安定化されたPCM粒子)、及び/又は大きさ、及び/又は材料、及び/又は充填量のPCMを含み得る。2ショット射出成型法における第2ショットにPCMを組み込むとき、この場合、通常、第2ショットは不透明又は比較的暗色であり得るが、第2ショットにおけるPCMの充填量、及び/又は大きさ、及び/又は材料、及び/又は形態は、光透過及び/又はヘーズについての仕様によって制限されないであろう。
【0059】
要素がポリマ及びPCMを含む場合、ポリマの屈折率及びPCMの屈折率は、材料の透明度における変化が実質的にないように、実質的に等しくできる。例えば、ランプエンクロージャにおける使用では、PCMが、抑止性要素、例えばレンズに組み込まれるとき、ポリマ及びPCMの屈折率は、実質的に等しくできる。実質的に等しいとは、屈折率の値が、互いに10%以内であることを意味し得る。実質的に等しいとは、屈折率の値が、互いに5%以内であることを意味し得る。実質的に等しいとは、屈折率の値が、互いに2.5%以内であることを意味し得る。
【0060】
要素がPCMを含む場合、その要素は熱伝導率向上剤(TCE)をさらに含んで、TCEが所在する材料の熱伝導率を増大させ得る。TCEは、金属、金属酸化物、セラミック、カーボン(例えば、炭素繊維)、炭素相(carbon phase)、シリカ、金属シリコン、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含み得る。例示的な金属には、これらに限らないが、アルミニウム、マグネシウム、タングステン、銅、ニッケル、金、銀、これらの合金、例えば、スチール、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。例示的な金属酸化物には、これらに限らないが、酸化第二銅、金、銀、及びパラジウムの酸化物、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。例示的な熱伝導性セラミックには、これらに限らないが、窒化アルミニウム、酸化ベリリウム、窒化ホウ素、高伝導率サーメット、クプラート、及びケイ化物、並びにこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。例示的なカーボン及び炭素相には、これらに限らないが、ダイヤモンド、カーボンナノチューブ、関連する誘導体、及びこれらの少なくとも1つを含む組合せが含まれる。TCEは、被覆されていてもよく、例えば、アルミニウム被覆銅であり得る。TCEは、粉末、微粉末、繊維、ナノチューブ、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せの形態で利用され得る。繊維は、ひれ状(fin)、蜂の巣状、羊毛状、ブラシ状などの様々な形態を取り得る。
【0061】
本明細書に開示されているエンクロージャを製造する方法もまた考慮されている。例えば、エンクロージャを製造する方法は、抑止性要素を成型すること;結露性要素を成型すること;及びエンクロージャを形成するように、これらの要素を一緒にすること;を含み得る。PCMは、少なくとも1つの前記要素に添加され得る、及び/又は、少なくとも1つの前記要素の内面と直接接触している別個の層に添加され得る。
【0062】
エンクロージャを形成する方法は、抑止性要素を備える壁を形成すること;結露性要素を備える別の壁を形成すること;及び、エンクロージャを形成するように壁を配向させること;を含み得る。前記形成することの少なくとも1つは、PCMをポリマに添加すること、及び結露性要素及び抑止性要素の少なくとも1つを形成すること、を含み得る。前記方法は、PCMがポリマの全体にわたって均一に分布するように、PCM、及び任意選択で熱伝導率向上剤を、ポリマに十分に混合することを含み得る。
【0063】
エンクロージャは、2つの表面の間の温度差を大きくするために、結露性表面と抑止性表面との間の熱伝導が少ないように、設計され得る。
【実施例
【0064】
次の実施例は、異なる温度の表面での結露への異なる傾向を例示するために示される。実施例は、単に例示のためであり、本開示に従って製造される装置を、実施例に記載された材料、条件、又はプロセスパラメータに限定しようとするものではない。
【0065】
パネル面A及びパネル面Bを有し、4mmの厚さを有する透明パネルが、2つの密閉空間:A及びBを隔て、パネル面Aが、密閉空間Aに露出しており、パネル面Bが、密閉空間Bに露出していた。密閉空間Aは、0℃の温度に保たれた無加湿循環空気を含んでいた。密閉空間Bは、エンクロージャに対応し、24℃の温度に保たれ、相対湿度(RH)が制御された循環空気を含んでいた。パネル面Bの中央の位置で、温度センサが温度を測定した。相対湿度は、結露の最初の時点と、温度センサの近くで結露が完全に進展した状態に達した時点との両方で、密閉空間Bにおいて測定した。結露は、光学的検出器によりモニターした。実験は、ガラスパネル(実施例1)及びポリカーボネートパネル(実施例2)で行われた。表1は、実施例1と2の両方について、パネル面Bの温度、結露が始まるときのRH(RH)、結露が完全に進展しているときのRH(RH)、及び、結露が完全に進展している場合のパネルも透明度(T)を示す。
【0066】
【表1】
【0067】
表1は、ガラスとポリカーボネートのパネルのパネル面Bの間の4.8℃の温度差を示す。この温度差は、ポリカーボネートパネルの5分の1の熱伝導率に起因し、より温かい表面で10単位近く高いRHとRHの両方の値を生じ、これは、ポリカーボネートパネルによってはっきりと示されている。すなわち、10単位近くの範囲のRHにわたって、結露は、より冷たい表面でのみ観察された。表面温度差の原因は、結露過程には関係ないので、PCMにより誘発される温度差は、同様に、目下の抑止性表面及び目下の結露性表面での結露への傾向に相当の違いを生じるであろう。
【0068】
下に記載されるのは、本発明のエンクロージャ及び結露を減らす方法のいくつかの実施形態である。
【0069】
実施形態1:エンクロージャであって、前記エンクロージャを形成する壁を備え、前記エンクロージャが、内部空間;少なくとも1つの壁に配置された抑止性要素であって、前記抑止性要素は、前記内部空間に露出した内部抑止性表面を有し、ここで、前記抑止性要素は、ASTM D1003-11、CIE標準光源Cを用いる手順Aに従って求めて、20%以上の光線透過率を有する抑止性要素;及び、少なくとも1つの別の壁に配置された結露性要素であって、ここで、前記結露性要素は前記内部空間に露出した内部結露性表面を有する結露性要素;を備え、前記抑止性要素及び前記結露性要素の少なくとも1つは、ある温度範囲にわたって内部抑止性表面温度と内部結露性表面温度との間に温度差を生じるように構成された相変化材料を含み、前記温度差が生じたとき、前記内部抑止性表面温度は、前記内部結露性表面温度を超える、エンクロージャ。
【0070】
実施形態2:実施形態1のエンクロージャであって、前記結露性要素が前記相変化材料を含み、前記抑止性要素が前記相変化材料を含まない、又は、前記抑止性要素が前記相変化材料を含み、前記結露性要素が前記相変化材料を含まない、エンクロージャ。
【0071】
実施形態3:実施形態1のエンクロージャであって、前記抑止性要素が抑止性要素相変化材料(an inhibiting element phase change material)を含み、前記結露性要素が結露性要素相変化材料(a condensing element phase change material)を含み、前記抑止性要素相変化材料が、前記結露性要素相変化材料より高い相変化温度を有する、エンクロージャ。
【0072】
実施形態4:実施形態1~3のいずれか1つのエンクロージャであって、前記抑止性要素が抑止性要素相変化材料を含み、前記抑止性要素相変化材料が、0℃を超える、又は5℃から25℃の範囲の、又は10℃から20℃の範囲の抑止性相変化温度(an inhibiting phase change temperature)を有する、エンクロージャ。
【0073】
実施形態5:実施形態1~3のいずれか1つのエンクロージャであって、前記結露性要素が結露性要素相変化材料を含み、前記結露性要素相変化材料が、25℃未満の、又は0℃から20℃の範囲の、又は5℃から15℃の範囲の結露性相変化温度(a condensing phase change temperature)を有する、エンクロージャ。
【0074】
実施形態6:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記相変化材料が、前記結露性要素及び前記抑止性要素の少なくとも一方の全体にわたって均一に分布している、エンクロージャ。
【0075】
実施形態7:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、75wt%を超える前記相変化材料が結露性要素外部表面(a condensing element external surface)よりも前記内部結露性表面の近くにあるような前記結露性要素;及び、75wt%を超える前記相変化材料が抑止性要素外部表面(an inhibiting element external surface)よりも前記内部抑止性表面の近くにあるような前記抑止性要素;の少なくとも一方の全体にわたって、前記相変化材料が不均一に分布している、エンクロージャ。
【0076】
実施形態8:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記結露性要素及び前記抑止性要素の少なくとも1つが、第1層及び別個の相変化材料層を備え、前記別個の相変化材料層が、前記相変化材料を含む、エンクロージャ。
【0077】
実施形態9:実施形態8のエンクロージャであって、前記別個の相変化材料層が、前記第1層に、熱的に結び付けられている、エンクロージャ。
【0078】
実施形態10:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記相変化材料が、ゼオライト粉末、ポリリン酸トリフェニル、結晶性パラフィンワックス、ポリエチレングリコール、脂肪酸、ナフタレン、二塩化カルシウム、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリエチレンオキシド、ポリイソブチレン、ポリシクロペンテン、ポリシクロオクテン、ポリシクロドデセン、ポリイソプレン、ポリオキシトリエチレン、ポリオキシテトラメチレン、ポリオキシオクタメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリブチロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンスベレート、ポリデカメチルアゼレート、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含む、エンクロージャ。
【0079】
実施形態11:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記相変化材料が、形状安定化された相変化材料粒子を含む、エンクロージャ。
【0080】
実施形態12:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記相変化材料が、個別にカプセル化された相変化材料粒子を含む、エンクロージャ。
【0081】
実施形態13:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記結露性要素及び前記抑止性要素の少なくとも1つが、ポリマ及び前記相変化材料を含み、前記ポリマの屈折率及び前記相変化材料の屈折率が互いに10%以内にある、エンクロージャ。
【0082】
実施形態14:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記結露性要素及び前記抑止性要素の少なくとも1つが、前記相変化材料を含み、熱伝導率向上剤をさらに含む、エンクロージャ。
【0083】
実施形態15:実施形態14のエンクロージャであって、前記熱伝導率向上剤が、金属、金属酸化物、カーボン、シリカ、金属シリコン、又はこれらの少なくとも1つを含む組合せを含む、エンクロージャ。
【0084】
実施形態16:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記内部抑止性表面が、その上に配置された曇り止め層を有する、エンクロージャ。
【0085】
実施形態17:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記エンクロージャが、可視光照明装置の要素である、エンクロージャ。
【0086】
実施形態18:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記抑止性要素がレンズである、エンクロージャ。
【0087】
実施形態19:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記抑止性表面及び前記結露性表面が、それぞれ独立に、前記抑止性要素及び前記結露性要素の前記内部表面の面積の50%以上にそれぞれ広がる、エンクロージャ。
【0088】
実施形態20:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、前記抑止性表面及び前記結露性表面が、それぞれ独立に、前記抑止性要素及び前記結露性要素の前記内部表面の面積の80%以上にそれぞれ広がる、エンクロージャ。
【0089】
実施形態21:前記実施形態のいずれか1つのエンクロージャであって、50%以上、又は80%以上の光線透過率を有する、エンクロージャ。
【0090】
実施形態22:前記実施形態のいずれか1つの前記エンクロージャにおける結露を誘導する方法であって、前記内部抑止性表面と前記内部結露性表面の間に温度差を生じさせることを含む、方法。
【0091】
実施形態23:実施形態1~21のいずれか1つの前記エンクロージャを形成する方法であって、前記抑止性要素を備える前記壁を形成すること;前記結露性要素を備える前記別の壁を形成すること;及び、前記エンクロージャを形成するために前記壁を配向させること;を含む、方法。
【0092】
実施形態24:実施形態23の方法であって、前記形成することの少なくとも1つが、ポリマに前記相変化材料を添加すること、及び、前記結露性要素及び前記抑止性要素の少なくとも1つを形成すること、を含む、方法。
【0093】
実施形態25:実施形態1~21のいずれか1つの前記エンクロージャを備える可視光照射装置であって、前記抑止性要素を備える前記壁がレンズであり、前記エンクロージャがベゼル部及びハウジング部を備え、前記ベゼル部及び前記ハウジング部の少なくとも1つが、前記結露性要素;光源に電気を供給するように構成された電気接続;及び、前記光源に接続し、前記光源に電気を供給するように構成された配線;を備え、任意選択で反射器を備え、前記光源が反射器と光学的に連通している、装置。前記電気接続はソケット及び/又はピンを備え得る。
【0094】
実施形態26:ランプエンクロージャであって、ベゼル;ランプを受け入れるように構成されたソケット;前記ベゼルに連結され、前記ランプからの光を反射するように置かれた反射器;及び、前記ベゼルに連結されたレンズ;を備え、前記ベゼル及び前記レンズの少なくとも1つが、相変化材料を含む、ランプエンクロージャ。
【0095】
実施形態27:ランプエンクロージャであって、ベゼル;前記ベゼルに連結された第1レンズ;及び、前記ベゼルに連結された任意選択の第2レンズ;を備え、前記ベゼルが、前記第1レンズと前記任意選択の第2レンズの両方の外辺部の回りに延び、前記ベゼル及び前記第1レンズの少なくとも1つが、相変化材料を含む、ランプエンクロージャ。
【0096】
実施形態28:実施形態26及び27の前記エンクロージャであって、前記ランプエンクロージャが、実施形態1~21のいずれか1つの前記エンクロージャであり、前記ベゼルが、前記結露性要素を備え、前記レンズが前記抑止性要素を備える、エンクロージャ。
【0097】
一般に、本発明は、本明細書に開示された適切な任意の構成要素(components)を、代替的に、含む、それらからなる、又は本質的にそれらからなってもよい。本発明は、さらに又は代わりに、先行技術の組成物において使用されたか、さもなければ、本発明の機能及び/又は目的の達成に必要ではない任意の構成要素、材料、成分、補助剤又は化学種を欠いている又は実質的に含まないように処方してもよい。
【0098】
本明細書において開示された全ての範囲は、端点を含んでおり、端点は、独立に、互いに組合せ可能である(例えば、「25wt%まで、又は、より詳細には、5から20wt%」は、端点、及び「5から25wt%」の範囲の全ての中間値を含んでいる、など)。「組合せ」は、ブレンド、混合物、合金、反応生成物などを含んでいる。さらに、本明細書において、用語「第1」、「第2」などは、如何なる順序、量、又は重要性も示しておらず、むしろ、別のものの中から1つの要素を示すために使用されている。本明細書における用語「ある(1つの)」及び「その(この)」は、量の限定を示しておらず、本明細書において特に断らなければ、又は前後の内容と明瞭に矛盾するのでなければ、単数と複数の両方を包含すると解釈されるべきである。本明細書で用いられる場合、添え字「(複数可)」は、それが修飾する用語の単数と複数の両方を含むので、1つ又は複数のその用語を含むことが意図されている(例えば、フィルム(複数可)は、1つ又は複数のフィルムを含む)。明細書の全体を通して「一実施形態」、「別の実施形態」、「実施形態」などへの言及は、その実施形態に関連して説明された特定の要素(例えば、特徴、構造、及び/又は特性)が、本明細書に記載された少なくとも1つの実施形態に含まれ、別の実施形態には、存在することも、しないこともあり得ることを意味する。「又は(若しくは、或いは)」は、「及び/又は」を意味する。さらに、記載された要素は、様々な実施形態において、適切な何らかの仕方で、組み合わせられ得ることが理解されるべきである。
【0099】
特定の実施形態が説明されたが、予期されていない、又は現在は予期されていない可能性のある代替、修飾、変形、改善、及び実質的な等価物が、出願人又は他の当業者に思い浮かび得る。したがって、出願された通りの、また修正され得るものとしての添付の特許請求の範囲は、このような全ての代替、修飾、変形、改善、及び実質的な等価物を包含するものとする。
【0100】
化合物は、標準的な命名法を用いて記載されている。例えば、示された何らかの基によって置換されていない任意の位置は、示された結合、又は水素原子によって充足されたその原子価を有すると理解されている。2つの文字又は記号の間にあるのではないダッシュ(「-」)は、置換基の結合箇所を示すために使用されている。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素を通じて結合している。さらに、記載された要素は、様々な実施形態において、適切な何らかの仕方で組み合わせられてもよいことが理解されるべきである。
【0101】
図に関連して、これらの図(本明細書では「図」と呼ばれる)は、本開示を例示する便宜及び容易さに基づく単なる概略的な表現であり、したがって、装置又はそれらのコンポーネントの相対的な大きさ及び寸法を示すこと、及び/又は、例示的実施形態の範囲を規定する又は限定すること、は意図されていないことが指摘される。具体的用語が、明快さのために、説明において使用されているが、これらの用語は、図による例示のために選択された実施形態の特定の構造のみを表そうとするものであり、本開示の範囲を規定する又は限定しようとするものではない。本明細書における図及び説明において、類似の数値呼称は、類似の機能の構成要素を表すことが理解されるべきである。
【0102】
より広い範囲に加えられた、より狭い範囲の開示は、より広い範囲の否認ではない。特に断らなければ、本明細書において用いられている技術的及び科学的用語は、本発明が属する当業者によって普通に理解されているものと同じ意味を有する。「任意選択の」又は「任意選択で」は、続いて記載される事象又は状況が、起こることも起こらないこともあること、及び、その記述が、その事象が起こる場合の事例、及びそれが起こらない場合の事例を含むことを意味する。
【0103】
全ての引用された特許、特許出願、及び他の参考文献は、それらの全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。しかし、本出願における用語が、組み込まれた参考文献における用語に矛盾する、又は相いれない場合、本出願による用語が、組み込まれた参考文献による相いれない用語に優先される。
【0104】
本出願は、2014年11月24日に出願された米国特許仮出願第62/083,451号の優先権を主張する。この関連出願は、参照によって本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7