(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】粘膜下組織層への流体の注入を促進するための吸引力を有する内視鏡ツール
(51)【国際特許分類】
A61B 17/34 20060101AFI20220316BHJP
【FI】
A61B17/34
(21)【出願番号】P 2020543320
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(86)【国際出願番号】 US2018050873
(87)【国際公開番号】W WO2019168564
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-09-09
(32)【優先日】2018-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519045228
【氏名又は名称】ジィ・アイ・サプライ
【氏名又は名称原語表記】GI SUPPLY
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】パトリック・リー
(72)【発明者】
【氏名】ヘザー・ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】ローガン・カスティーリョ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアンナ・ローゼンバウム
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0045825(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
1/00
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘膜下組織層への流体の注入を促進するための内視鏡ツールであって、
内視鏡の管腔内にスライド可能に配設されるように適合された第1のカニューレであって、前記第1のカニューレが吸引表面および吸引管腔を有し、前記吸引表面が粘膜組織層に接触するように前記第1のカニューレの遠位端に配設され、前記吸引管腔が前記吸引表面と前記第1のカニューレの近位端との間で前記第1のカニューレ内に形成されている、第1のカニューレと、
前記粘膜組織層の下の粘膜下組織層に送達される流体の供給源に連結されるように適合された第2のカニューレであって、前記第2のカニューレの遠位端で針を担持する、第2のカニューレと、
前記第1のカニューレに連結された針安定化構造体であって、前記針安定化構造体が、流体管腔および前記吸引管腔を画定し、前記流体管腔は前記吸引管腔から分離されており、前記第2のカニューレが前記流体管腔内にスライド可能に配設されている、針安定化構造体と、
前記吸引管腔内に負圧を生成して、前記粘膜組織層を引き寄せて前記吸引表面に接触させ、前記粘膜組織層を前記吸引表面に対して保持するように前記第1のカニューレに連結された吸引源であって、前記粘膜組織層が前記吸引表面に接触するのに応答して、前記第2のカニューレが前記粘膜下組織層に向かって移動可能であり、前記針が前記粘膜組織層を突き刺し、前記流体を前記粘膜下組織層に送達するようにする、吸引源と、を備える、内視鏡ツール。
【請求項2】
前記粘膜組織層を前記吸引表面に対して保持するために、前記吸引表面に塗布された接着剤をさらに含む、請求項1に記載のツール。
【請求項3】
前記針安定化構造体が、環状壁と、前記第1のカニューレの内部表面と前記環状壁との間に延在するリブと、を備える、請求項1に記載のツール。
【請求項4】
前記針安定化構造体が、環状壁と、前記第1のカニューレの内部表面と前記環状壁との間に延在する一対のリブと、を備える、請求項1に記載のツール。
【請求項5】
前記第1のカニューレ、前記針安定化構造体、および前記第2のカニューレが、弾性材料から作製されている、請求項1に記載のツール。
【請求項6】
前記針安定化構造体が、前記第1のカニューレと一体的に形成されている、請求項1に記載のツール。
【請求項7】
前記針が、摩擦嵌合または圧着を介して、前記第2のカニューレに固定して取り付けられている、請求項1に記載のツール。
【請求項8】
前記針安定化構造体が、
前記第1のカニューレの長さ全体に沿って延在している、請求項1に記載のツール。
【請求項9】
前記針安定化構造体が、
前記第1のカニューレの長さに沿って部分的に延在している、請求項1に記載のツール。
【請求項10】
前記第1のカニューレの前記吸引管腔が、前記流体管腔を取り囲む複数の吸引管腔を備える、請求項1に記載のツール。
【請求項11】
前記第1のカニューレの前記近位端に連結されたTコネクタをさらに備え、前記Tコネクタが、前記第1のカニューレに連結された第1のポート、前記吸引源に連結されるように適合された第2のポート、および前記流体の供給源に連結されるように適合された第3のポートを有する、請求項1に記載のツール。
【請求項12】
前記第2のカニューレによって担持され、前記吸引源と前記第1のカニューレの前記近位端との間で前記第1のカニューレ内に配設されたストッパーと、前記ストッパーに動作可能に連結されたばねと、前記流体の前記供給源と、前記流体の前記供給源内に移動可能に配設されたプランジャーと、をさらに備える、請求項1に記載のツール。
【請求項13】
前記ストッパーが、前記第1のカニューレの内部表面および前記第2のカニューレの外部表面と密封係合している、請求項12に記載のツール。
【請求項14】
前記吸引表面が、前記第1のカニューレの長さに対して垂直である、請求項1に記載のツール。
【請求項15】
粘膜下組織層への流体の注入を促進するための内視鏡ツールであって、
内視鏡の管腔内に配設されるように適合された第1のカニューレであって、粘膜組織層に接触するように前記第1のカニューレの遠位端に配設された吸引表面を有する、前記第1のカニューレにおいて、前記吸引表面が、前記第1のカニューレの長さに対して垂直である、第1のカニューレと、
前記粘膜組織層の下の粘膜下組織層に送達される流体の供給源に連結されるように適合された第2のカニューレと、
前記第1のカニューレに連結された針安定化構造体であって、前記針安定化構造体が、少なくとも1つの吸引管腔および
前記少なくとも1つの吸引管腔から分離した流体管腔を画定し、前記流体管腔が前記第1のカニューレ内の中央に配設され、前記第2のカニューレが前記流体管腔内にスライド可能に配設されている、針安定化構造体と、
前記第2のカニューレによって担持された針であって、前記第2のカニューレが、前記針が前記流体管腔内に配設される第1の位置と、前記針が前記流体管腔の外側に配設される第2の位置との間で移動可能である、針と、
前記少なくとも1つの吸引管腔内に負圧を生成して、前記粘膜組織層を引き寄せて前記吸引表面に接触させ、前記粘膜組織層を前記吸引表面に対して保持するように前記第1のカニューレに連結された吸引源であって、前記粘膜組織層が前記吸引表面に接触するのに応答して、前記第2のカニューレが前記第1の位置から前記第2の位置に移動可能であり、前記針が前記粘膜組織層を突き刺し、前記流体を前記粘膜下組織層に送達するようにする、吸引源と、を備える、内視鏡ツール。
【請求項16】
前記針安定化構造体が、複数の吸引管腔を画定
し、
前記流体管腔が、前記複数の吸引管腔のそれぞれから分離されている、請求項
15に記載のツール。
【請求項17】
前記針安定化構造体が、環状壁と、前記第1のカニューレの内部表面と前記環状壁との間に延在する一対のリブと、を備え、前記環状壁が前記流体管腔を前記複数の吸引管腔から分離し、前記一対のリブが前記複数の吸引管腔を互いに分離している、請求項
16に記載のツール。
【請求項18】
前記針安定化構造体が、環状壁と、前記第1のカニューレの内部表面と前記環状壁との間に延在するリブと、を備える、請求項
15に記載のツール。
【請求項19】
前記第1のカニューレ、前記針安定化構造体、および前記第2のカニューレが、弾性材料から作製されている、請求項
15に記載のツール。
【請求項20】
前記針安定化構造体が、前記第1のカニューレと一体的に形成されている、請求項
15に記載のツール。
【請求項21】
前記針が、摩擦嵌合または圧着を介して、前記第2のカニューレの遠位端に固定して取り付けられている、請求項
15に記載のツール。
【請求項22】
前記第1のカニューレの近位端に連結されたTコネクタをさらに備え、前記Tコネクタが、前記第1のカニューレに連結された第1のポート、前記吸引源に連結された第2のポート、および前記流体の供給源に連結された第3のポートを有する、請求項
15に記載のツール。
【請求項23】
前記第2のカニューレによって担持され、前記吸引源と前記第1のカニューレの近位端との間で前記第1のカニューレ内に配設されたストッパーと、前記ストッパーに動作可能に連結されたばねと、前記流体の前記供給源と、前記流体の前記供給源内に移動可能に配設されたプランジャーと、をさらに備える、請求項
15に記載のツール。
【請求項24】
前記ストッパーが、前記第1のカニューレの内部表面および前記第2のカニューレの外部表面と密封係合している、請求項
23に記載のツール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2018年2月28日に出願された米国仮出願第62/636,643号の優先権の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、内視鏡ツールに関し、より具体的には、粘膜下組織層への流体の注入を促進するための吸引力を有する内視鏡ツールに関する。
【背景技術】
【0003】
医師は、患者が受ける可能性のある様々な内視鏡手技を行うために、様々な機能を備えた内視鏡を必要とする。一例として、医師は、流体または別の医療デバイスを粘膜下組織層、すなわち、粘膜と、例えば大腸などの身体部分の筋肉との間で組織層に注入する必要がある場合がある。例えば、インクを使用して、他の医師が胃腸管内に位置する対象となる領域を容易に識別できるように、標的領域をマークする(例えば、入れ墨する)場合がある。粘膜下組織層に液体を注入するための方法は数多く知られているが、これらの方法はすべて、細部に対する精密な注意と、針が粘膜下層に注入されるが、粘膜下層を越えて筋肉または胃腸管の他の部分に注入されないことを確実にする技術とを必要とする。例えば、針が粘膜下層に注入されない場合、または粘膜下層を越えて注入された場合、医師は、流体を誤った場所に注入し、その領域を適切にマークしないか、または腹腔などの組織の別の領域を誤ってマークすることになる。さらに、流体を粘膜下層に不適切に注入すると、注入される流体の効力が低下する可能性がある。追加的に、これらの方法は、常に露出している針を用いており、これは、胃腸管内の組織の不注意による突き刺しにつながり、出血および手技の延長を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【0004】
本開示の第1の例示的な態様によると、粘膜下組織層への流体の注入を促進するための内視鏡ツールが開示されている。内視鏡ツールは、内視鏡の管腔内にスライド可能に配設されるように適合された第1のカニューレと、粘膜組織層の下の粘膜下組織層に送達される流体の供給源に連結されるように適合された第2のカニューレと、第1のカニューレおよび第2のカニューレに連結された針安定化構造体と、を含む。第1のカニューレは、吸引表面および吸引管腔を含む。吸引表面は、粘膜組織層に接触するように第1のカニューレの遠位端に配設されている。吸引管腔は、吸引表面と第1のカニューレの近位端との間で第1のカニューレ内に形成されている。第2のカニューレは、針安定化構造体によって画定され、吸引管腔から分離された流体管腔内にスライド可能に配設されている。第2のカニューレは、第2のカニューレの遠位端で針を担持する。第1のカニューレに連結された吸引源は、吸引管腔内に負圧を生成して、粘膜組織層を引き寄せて吸引表面に接触させる。粘膜組織層が吸引表面に接触するのに応答して、第2のカニューレは、粘膜下組織層に向かって移動可能であり、針が粘膜組織層を突き刺し、流体を粘膜下組織層に送達するようにする。
【0005】
本開示の第2の例示的な態様によると、粘膜下組織層への流体の注入を促進するための内視鏡ツールが開示されている。内視鏡ツールは、内視鏡の管腔内に配設されるように適合された第1のカニューレと、流体管腔内に配設され、粘膜下組織層に送達される流体の供給源に連結されるように適合された第2のカニューレと、第1のカニューレまたは第2のカニューレに連結された針安定化構造体と、第2のカニューレによって担持された針と、を含む。第1のカニューレは、第1のカニューレの遠位端に配設され、粘膜組織層に接触するように構成された吸引表面を含む。針安定化構造体は、少なくとも1つの吸引管腔と、吸引管腔から分離し、第1のカニューレ内の中央に配設された流体管腔と、を画定する。第2のカニューレは、針が流体管腔内に配設される第1の位置と、針が流体管腔の外側に配設される第2の位置との間で移動可能である。第1のカニューレの近位端に連結された吸引源は、複数の吸引管腔内に負圧を生成して、吸引表面に対して粘膜組織層を引き寄せる。粘膜組織層が吸引表面に接触するのに応答して、第2のカニューレは、第1の位置から第2の位置に移動可能であり、針が粘膜組織層を突き刺し、流体を粘膜下組織層に送達するようにする。
【0006】
本開示の第3の例示的な態様によると、内視鏡ツールを使用して粘膜下組織層に流体を注入するための方法が開示されている。本方法は、内視鏡の管腔内に第1のカニューレを配設することを含み、第1のカニューレは、第1のカニューレの遠位端に配設された吸引表面を有し、吸引表面と第1のカニューレの近位端との間に吸引管腔を画定する。本方法は、針安定化構造体によって吸引管腔から分離された流体管腔内に針を担持する第2のカニューレを配設することと、第1のカニューレを、吸引表面が内視鏡の管腔内に配設される第1の位置から、吸引表面が内視鏡の管腔の外側に、患者内の標的領域に近接して配設される第2の位置に移動させることと、を含む。本方法は、第1のカニューレに連結された吸引源を介して吸引管腔内に負圧を生成することを含む。負圧により、標的領域で粘膜組織層を引き寄せて吸引表面に接触させる。本方法は、第1のカニューレを標的領域から離れるように移動させ、それにより標的領域で粘膜組織層の下の粘膜下組織層を拡大させることを含む。本方法は、第2のカニューレを、針が流体管腔内に配設される第1の位置から、針が流体管腔の外側に配設される第2の位置に移動させ、それにより針が粘膜組織層を突き刺すことを含む。流体は、針を介して粘膜下組織層に注入され、それにより標的領域で粘膜組織層の一部分を隆起させる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
新規であると考えられるこの開示の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本開示は、添付の図面と組み合わせて以下の説明を参照することによって最も良く理解することができ、添付の図面中、いくつかの図における同様の参照番号は、同様の要素を識別する。
【0008】
【
図1】本開示の教示に従って構成され、内視鏡の管腔内に配設された内視鏡ツールの一部分の例である。
【
図3】
図2の内視鏡ツールの斜視図であるが、分かりやすくするために針を取り外している。
【
図4】組織の標的領域の近くに位置付けられた
図1の内視鏡ツールを例示する。
【
図5】組織の標的領域に対して位置付けられた
図1の内視鏡ツールを例示する。
【
図6】組織の標的領域と相互作用する
図1の内視鏡ツールを例示する。
【
図7】組織の標的領域で粘膜下組織層に流体を注入する
図1の内視鏡ツールを例示する。
【
図8】本開示の教示に従って構成された内視鏡ツールの別の例の一部分の斜視図である。
【
図10】本開示の教示に従って構成された内視鏡ツールの別の例の断面図である。
【
図11】本開示の教示に従って構成された内視鏡ツールの別の例の一部分の断面図である。
【
図12】本開示の教示に従って構成された内視鏡ツールの別の例の一部分の断面図である。
【
図13】本開示の教示に従って構成された内視鏡ツールの別の例の一部分の断面図である。
【
図14】本開示の教示に従って構成された内視鏡ツールの別の例の断面図である。
【
図15】本開示の教示による、吸引源および流体源を単一のハウジング内に実装するデバイスの一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示は、概して、粘膜下組織層への流体の注入を促進するための内視鏡ツールに関する。本明細書に開示されている内視鏡ツールは、ツールによって担持された針が組織の標的領域に適切に挿入されない(例えば、針を粘膜組織層または筋肉層を越えて挿入し、マーキング流体が粘膜下組織層に注入されるのではなく、こぼれ出るようにする)可能性を実質的に軽減する。本明細書に開示されている内視鏡ツールは、標的領域で組織に吸引力を加え、組織を引き寄せて内視鏡ツールに対して保持することによって、その可能性を実質的に軽減し、それにより組織を操作して針を受容するのに好適な組織の拡大部分を生成することができる。
【0010】
図1~7は、本開示の原理に従って構成された内視鏡ツール100の一例を図示している。この例における内視鏡ツール100は、患者に対して行われる内視鏡手技中に患者の組織の標的領域、この場合は粘膜下組織層108の一部分をマークするために内視鏡104と共に使用するように特に設計されている。より具体的には、この例における内視鏡ツール100は、内視鏡104の作業チャネル122に部分的に挿入されるように特に設計されている。内視鏡ツール100は、吸引力を使用して、粘膜下組織層108の一部分の上に位置する粘膜組織層112を引き寄せて、粘膜下組織層108の一部分の下に位置する筋肉の層116から離れて保持することによって、粘膜下組織層108の所望の部分を効果的にマークし、それにより粘膜下層108の一部分120を拡大させ、次に、流体121を拡大部分120に注入する。この例では、流体は、マーキング流体(例えば、インク、入れ墨剤)である。しかしながら、他の例では、内視鏡ツール100は、例えば、異なる種類の流体(例えば、生理食塩水、エピネフリン、リフティング剤)、治療剤、または他の診断剤を、他の種類の手技で、粘膜下組織層108に注入するために、他の方法で利用することができる。
【0011】
内視鏡ツール100は、好ましくは、ポリ塩化ビニル(「PVC」)から作製されているが、内視鏡ツール100は、代わりに、ラテックスゴム、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」または「テフロン(登録商標)」)コーティングされたラテックス、ポリエーテルエーテルケトン(「PEEK」)、ポリエーテルブロックアミド、またはポリプロピレンなどの異なるポリマーから製造され得ることが理解されるであろう。この例では円筒形状を有する作業チャネル122は、好ましくは、2.8ミリメートル(「mm」)、3.7mm、または4mmの内径を有するが、異なるサイズの作業チャネルを有する他の内視鏡が使用されてもよい。
【0012】
この例における内視鏡ツール100は、概して、流体管腔132を有する第1のカニューレ124と、第1のカニューレ124に連結された吸引源128と、流体管腔132内に配設され、マーキング流体121の供給源138に連結されるように適合された第2のカニューレ136(供給源138は、第2のカニューレ136によって担持され得るか、またはそこから分離し得る)と、第2のカニューレ136によって担持され、マーキング流体121を供給源138から粘膜下層108の所望の部分に送達するように構成された針140と、を含む。しかしながら、他の例では、内視鏡ツール100は、異なる、追加の、またはより少ない構成要素を含み得る。
【0013】
具体的には、第1のカニューレ124は、カニューレ本体142と、本体142に連結され(例えば、それと一体的に形成され、それに取り外し可能に連結され)、かつ安定化するように構成された安定化構造体168と、を含み、場合によっては、中央にある第2のカニューレ136と、ツール100の使用中には針140と、を含む。カニューレ本体142は、内視鏡104の作業チャネル122内に少なくとも部分的に配設されるようにサイズ決めされている。したがって、少なくともこの例では、カニューレ本体142は、円筒形状を有する。第1のカニューレ124は、カニューレ本体142の遠位端146に配設され、少なくともこの例では、カニューレ本体142の長さに対して垂直な方向に配向されている吸引表面144を有する。吸引表面144をこのように配向することにより、粘膜層112が吸引表面144に対して引き寄せられたときに、粘膜層112が吸引表面144と面一に置かれ、第1のカニューレ124の内側には引き寄せられないように、粘膜組織層112が平坦な表面に対して均一に引き寄せられることが可能になる。しかしながら、他の例では、吸引表面144は、カニューレ本体142の遠位端146に近接するが、それから離間して配設され得る。一例として、吸引表面144は、カニューレ本体142の遠位端146に固定される二次的な先端または管に配設され得る。さらに、他の例では、吸引表面144は、カニューレ本体142の長さに対して垂直ではなく、角度が付けられた方向に配向され得る。
【0014】
粘膜組織層112を吸引表面144に対して直接面一に置くことにより、有益なことに、針140が粘膜下組織層108に挿入される距離に対する、より大きな制御をユーザに与え、ユーザが組織の標的領域で妨げられない視野を有することを可能にする。さらに、この構成は、粘膜組織層112と吸引表面144との間で界面を不利に妨害する、吸引表面144を超えて延在する構造的特徴(例えば、フード、細長い突起など)を利用しない。例えば、粘膜層112を吸引表面144の外側に延在しているフードに引き寄せることにより、粘膜層112が、吸引表面114に対して完全に静止するのではなく、吸引表面144に点または先端を形成するようにすることができる。フード内でのこの種の形成は、針140が粘膜下層108に完全に挿入されず、それによりマーキング流体121が組織からこぼれ出る原因となる可能性があるため、望ましくない。これらの種類の構造的特徴はまた、本明細書に開示される内視鏡ツールと組み合わせて使用される撮像器具のユーザの視界を妨害し、針の場所に関してある程度の不確実性を引き起こす。
【0015】
第1のカニューレ124はまた、上述の少なくとも1つの吸引管腔148および流体管腔132を含み、それらのそれぞれが、安定化構造体168によって少なくとも部分的に画定される。この例では、安定化構造体168は、互いに離間した(例えば、互いに180度離れた)環状壁156および一対のリブ160の形態を取っている。環状壁156は、カニューレ本体142の中央に配設され、リブ160は、それぞれ、カニューレ本体142の内部表面164と環状壁156の外部表面166との間に延在している。例示されているように、環状壁156およびリブ160は、カニューレ本体142の長さに沿ってこのように延在している。したがって、この例では、第1のカニューレ124は、2つの吸引管腔148を含み、各吸引管腔148は、断面が半円形の形状を有し、カニューレ本体142の内部表面164の一部分と、環状壁156の外部表面166の一部分と、リブ160との間に画定されている。他の例では、第1のカニューレ124は、製造の必要性を説明するために、多かれ少なかれ、かつ/または異なって配列された吸引管腔148を含み得る。追加的に、この例では、
図3に図示されるように、第1のカニューレ124は、吸引表面144に形成され、吸引管腔148へと開く複数の開口152を含み、これらは、カニューレ本体142の全長のかなりの部分に沿って延在している。
【0016】
さらにこの例では、流体管腔132は、流体管腔132が第1のカニューレ124の中心軸123に沿って配設されるように、中央に位置する環状壁156によって画定されている。流体管腔132は、カニューレ本体142の遠位端146から近位端145まで延在している。したがって、流体管腔132は、第1のカニューレ124の近位端145と遠位端146との間で吸引管腔148および中央に位置する環状壁156によって囲まれている。追加的に、流体管腔132および吸引管腔148は、流体管腔132を通って流れ、粘膜下層108に注入されるマーキング流体121が吸引管腔148に流れ込まないように位置付けおよびサイズ決めされている。
【0017】
そのように構成されると、第1のカニューレ124は、第2のカニューレ136が流体管腔132を通して移動可能(例えば、スライド可能)になるように、流体管腔132の近位端145に位置する開口部を通して第2のカニューレ136を受容するように構成される。第2のカニューレ136は、近位端137と、近位端137の反対側の遠位端139と、を有する。例示されるように、第2のカニューレ136の近位端137は、粘膜下組織層108に注入されるマーキング流体121の供給源138に連結されるように適合されている。第2のカニューレ136はまた、遠位端139によって担持され、そこから外向きに延在する針140を含む。針140は、粘膜組織層112を突き刺し、針140が粘膜下組織層108に入るとマーキング流体121を送達するように構成されている。この例では、針140は、摩擦嵌合を介して第2のカニューレ136の遠位端139にしっかりと固定されている。代替的に、他の例では、針140は、例えば、圧着またはクランプを介して、第2のカニューレ136の遠位端139にしっかりとまたは取り外し可能に固定され得る。さらに、第2のカニューレ136は、好ましくは、200~240センチメートル(「cm」)長の長さを有する。またさらに、針140は、好ましくは、1~5mm、より好ましくは、1~2.5mm長の23または25ゲージの針である。
【0018】
この例では、吸引源128は、第1のカニューレ124の近位端145で第1のカニューレ124に連結されている。より具体的には、この例では、吸引源128は、「T」コネクタ150の形態のコネクタを介して第1のカニューレ124に連結され、3つのポートが第1のカニューレ124の近位端145に配設および連結されている。「T」字型コネクタ150の第1のポート149は、第1のカニューレ124の近位端145でポートに挿入されている。コネクタ150の第2のポート151は、第1のポート149と同軸上にあり、第2のカニューレ136をスライド可能に受容する。本明細書では例示されていないが、少なくともこの例では、第2のポート151に密封要素(例えば、Oリング、密封グリース)が配設されて、吸引管腔148を作動管腔132および大気から流体的に隔離し、第1のカニューレ124内に真空が生成されることを確実にする。コネクタ150の第3のポート153は、第1および第2のポート149、151に対して垂直であり、吸引管腔148が吸引源128と流体連通するように、吸引源128を受容するように構成されている。この例では、吸引源128は、第3のポート153に通されている。しかしながら、吸引源128は、他の方法(例えば、摩擦嵌合、ツイストロックなど)で第3のポート153に取り付けられ得ることが理解されるであろう。吸引源128は、真空ポンプ、病院壁吸引出口、手回しクランク、または内視鏡タワーであり得ることが理解されるであろう。
【0019】
いずれの場合でも、このように第1のカニューレ124を吸引源128に連結させることによって、吸引源128は、複数の吸引管腔148内に負圧を生成することができる。この負圧、すなわち、吸引力が、粘膜層112を吸引表面144に引き寄せ、これに対して保持する。粘膜層112を吸引表面144に対して保持することによって、内視鏡ツール100は、ユーザが粘膜層112を操作して、例えば、粘膜層112との接触を失うことなく粘膜下層108の一部分を拡大させることを可能にし、それによりマーキング流体121の粘膜下層108への迅速かつ正確な注入を促進する。
【0020】
これより、
図4~6を参照して、内視鏡ツール100の動作をより詳細に考察する。動作中、内視鏡ツール100は、内視鏡104の作業チャネル122に挿入され、内視鏡104は、胃腸管(「GI管」)の標的領域に到達するまで、GI管を通して前進される。標的領域は、例えば、腫瘍の場所またはポリープの場所であり得る。
図4に図示されるように、内視鏡ツール100は、吸引表面144が組織の標的領域に近接して位置するまで、その標的領域内の粘膜組織層112に向かって移動される。
図5に図示されるように、ツール100が標的領域に到達すると、吸引源128によって、吸引管腔148内に生成された負圧が、粘膜層112を吸引表面144に、かつ吸引表面144に対して引き寄せる。吸引管腔148内に生成された負圧は、粘膜層112を引き寄せて、粘膜層112を吸引表面144に対して保持するのに十分強力であるが、粘膜層112を損傷するか、または粘膜層112を吸引管腔148へと、もしくはその内部に(すなわち、カニューレ本体142の内側内に)引っ張るのに十分強力ではない。
【0021】
吸引管腔148内の負圧が吸引表面144に対して粘膜組織層112を保持するため、第1のカニューレ124は、内視鏡104に向かって移動し、粘膜下層108から離れ、粘膜層112および粘膜下層108を、筋肉層116から離れるように引っ張り、例えば、
図6に図示されるように、粘膜下層108の一部分120を拡大させることができる。これは、針140を、粘膜下層108を超えて筋肉層116に挿入する可能性を軽減する。追加的に、粘膜組織層112を吸引表面144に対して保持したままにすることによって、針140が第1のカニューレ124の吸引表面144を超えて延在されたときのみ、針140が粘膜層112を突き刺すため、針140が粘膜層112を突き刺す時期に関して、ツール100は、より良い制御を促進する。
【0022】
一部分120が十分に拡大されると、流体管腔132内に配設された第2のカニューレ136は、針140が流体管腔132内に配設される第1の位置から、針140が流体管腔132の外側に配設される第2の位置に移動されて、粘膜層112を突き刺す。このようにして、内視鏡ツール100がGI管内の標的領域に到達するまで、針140は露出されない。そうすることで、標的領域の外側での針140による組織の不注意による突き刺しが排除される。いくつかの例では、第2のカニューレ136は、第2のカニューレ136の近位端137を内視鏡104に向かって押すことによって、第2の位置に手動で移動可能である。他の例では、第2のカニューレ136は、第2の位置に(および第1の位置に戻るように)自動的に移動可能である。針140は、手動でまたは自動的に2mm以下前進されて、粘膜組織層112を突き刺すことができる。別の例では、針140は、粘膜組織層112を突き刺すために、4~5mm、手動でまたは自動的に前進され得る。本明細書では例示されていないが、ツール100は、針140を(粘膜層112を突き刺しするための)適切な位置に誘導し、針140がこの位置を超えて前進するのを防止すのに役立つ針止めを含み得る。
【0023】
いずれの場合でも、第2のカニューレ136が第2の位置に移動された後、針140は、
図6に示されるように拡大部分120内に配設されることになる。針140が所望の場所に配置されると、マーキング流体121は、針140から第2のカニューレ136を通過して、粘膜下層108に入る。マーキング流体121を粘膜下層108の拡大部分120に注入すると、周囲の組織が隆起し、注入が適切に行われたことについてのツール100のユーザに対する視覚的インジケータとして機能する。所望の量のマーキング流体121が注入された後、第2のカニューレ136は、流体管腔132内に引き込まれ得て、第1のカニューレ124もまた、内視鏡104の作業チャネル122内に引き込まれ得る。
【0024】
図8および9は、粘膜下組織層108への流体注入を促進するための内視鏡ツール200の別の例を図示している。
図8および9に図示される内視鏡ツール200は、
図1および2に図示される内視鏡ツール100と同様であり、共通の構成要素は共通の参照番号を使用して図示されているが、内視鏡ツール200が、そうでなければ同様である、安定化構造体168とは異なる安定化構造体268を有する第1のカニューレ224を含むという点で異なっている。安定化構造体168と同様に、安定化構造体268は、第1のカニューレ224の中心軸123に沿って配設されるように、流体管腔132内にスライド可能に配設された第2のカニューレ136を配置および固定する。しかしながら、安定化構造体168とは異なり、安定化構造体268は、単一のリブ260および環状壁256から形成されている。したがって、安定化構造体268は、第1のカニューレ224内に単一の吸引管腔248を生成する。
【0025】
安定化構造体168と同様に、安定化構造体268は、第1のカニューレ224の全長に延在し得るか、または
図9に図示されるように、安定化構造体268は、第1のカニューレ224の長さの一部分のみに延在し得る。しかしながら、両方の場合において、安定化構造体168、268は、第2のカニューレ136が使用中に移動する可能性が低くなるように、吸引表面144にすぐ隣接して位置付けられている。本明細書では例示されていないが、安定化構造体268は、第1のカニューレ224内に凹陥され得る(すなわち、吸引表面144から離間され得る)ことが理解されるであろう。
【0026】
この例では、環状壁256は、第1のカニューレ224のカニューレ本体242の中央に配設され、リブ260は、カニューレ本体242の内部表面264と環状壁256の外部表面266との間に延在している。したがって、この例では、第1のカニューレ224は、単一の吸引管腔248を含み、吸引管腔248は、断面が略円形の形状であり、カニューレ本体242の内部表面264の実質的な部分と、環状壁256の外部表面266の実質的な一部分と、リブ260の対向する表面との間に画定されている。追加的に、この例では、第1のカニューレ224は、吸引表面144に形成され、吸引管腔248へと開いた開口252を含む。
【0027】
図10は、粘膜下組織層108への流体注入を促進するための内視鏡ツール300の別の例の一部分を図示している。
図10の内視鏡ツール300は、
図1および2に図示される内視鏡ツール100と同様であり、共通の構成要素は共通の参照番号を使用して図示されているが、内視鏡ツール300が、安定化構造体168とは異なる安定化構造体368を有する第1のカニューレ324を含むという点で異なっている。安定化構造体168と同様に、安定化構造体368は、第2のカニューレ136が第1のカニューレ324の中心軸123に沿って配設されるように、第1のカニューレ324内にスライド可能に配設された第2のカニューレ136を配置および固定する。しかしながら、安定化構造体168とは異なり、安定化構造体368は、第1のカニューレ324の内壁と一体的に形成されている。この例では、安定化構造体368は、第1のカニューレ324の内壁から径方向内側に延在する複数のリブ370の形態を取っている。複数のリブ370は、リブ370のそれぞれの間に凹状の空間372を形成し、これが次に、吸引管腔348を画定する。安定化構造体368はまた、吸引管腔348の径方向内側にあり、これから空間的に分離された流体管腔332を画定する。したがって、第2のカニューレ136が流体管腔332内にスライド可能に配設されると、吸引源は、吸引管腔348内に負圧を生成し得る。
【0028】
図11は、粘膜下組織層108への流体注入を促進するための内視鏡ツール400のさらに別の例を図示している。
図11の内視鏡ツール400は、
図1および2に図示される内視鏡ツール100と同様であり、共通の構成要素は共通の参照番号を使用して図示されているが、内視鏡ツール400が、安定化構造体168とは異なる安定化構造体468を含むという点で異なっている。安定化構造体168と同様に、安定化構造体468は、第2のカニューレ136が第1のカニューレ124の中心軸123に沿って配設されるように、第1のカニューレ168内にスライド可能に配設された第2のカニューレ136を配置および固定する。しかしながら、安定化構造体168とは異なり、安定化構造体468は、第1のカニューレ124の代わりに第2のカニューレ136に連結されている。具体的には、安定化構造体468は、複数の円周方向に配列されたリブ460と、リブ460によって画定され、第2のカニューレ136を受容するようにサイズ決めされた流体管腔432と、を含む。リブ460は、
図11に示されるように、第1のカニューレ124に向かって径方向外側に延在している。この例では、リブ460は、安定化構造体468(図示せず)の断面を見たときに「+」の形状を生成するが、他の例では、リブ460は、異なる断面形状を画定し得る。追加的に、安定化構造体468は、第2のカニューレ136と一体的に形成され得るか、または別個に製造され、それに連結され得る。いずれの場合でも、安定化構造体468は、流体管腔432をツール400の吸引管腔448から構造的に分離していることが理解されるであろう。
【0029】
図12は、粘膜下組織層108への流体注入を促進するための内視鏡ツール500のさらに別の例の一部分を図示している。
図12の内視鏡ツール500は、
図1および2に図示される内視鏡ツール100と同様であり、共通の構成要素は共通の参照番号を使用して図示されているが、内視鏡ツール500が、上記に記載の第1のカニューレ124とは異なる第1のカニューレ524を含むという点で異なっている。第1に、第1のカニューレ524は、安定化構造体168とは異なる安定化構造体568を有する。安定化構造体168と同様に、安定化構造体568は、第1のカニューレ524内にスライド可能に配設された第2のカニューレ136を配置および固定する。しかしながら、安定化構造体168とは異なり、安定化構造体568は、第1のカニューレ524の異なる部分の間に延在して、それらを接続する湾曲した実質的に半円形の壁570の形態を取っている。したがって、安定化構造体568は、流体管腔532と、流体管腔532から構造的に分離された吸引管腔548と、を画定する一方で、壁570は、吸引管腔548が断面において三日月の形状を有するように位置付けられ、流体管腔532は、断面が円形の形状であり、流体管腔532は、第1のカニューレ524の中心軸123からオフセットされている。次に、安定化構造体568は、第2のカニューレ136を第1のカニューレ524内に配置および固定する一方で、第2のカニューレ136は、(中心軸123に沿って配設されているのではなく)中心軸123からオフセットされた軸572に沿って配設されている。
【0030】
図13は、粘膜下組織層108への流体注入を促進するための内視鏡ツール600のさらに別の例を図示している。
図13の内視鏡ツール600は、
図1および2に図示される内視鏡ツール100と同様であり、共通の構成要素は共通の参照番号を使用して図示されているが、内視鏡ツール600が、流体管腔132の周りに円周方向に配列された3つの吸引管腔648を含むという点で異なっている。3つの吸引管腔648のそれぞれが、好ましくは、例示されるように、断面が弓形の形状を有する。
【0031】
図14は、粘膜下組織層108への流体注入を促進するための内視鏡ツール700の別の例を図示している。
図14の内視鏡ツール700は、
図1および2に図示される内視鏡ツール100と同様であり、共通の構成要素は共通の参照番号を使用して図示されているが、内視鏡ツール700が、第1のカニューレ124とは異なる第1のカニューレ724と、粘膜下層108へのマーキング流体121の迅速かつ容易な送達を促進する流体注入システム778と、を有するという点で異なっている。具体的には、流体注入システム778は、第2のカニューレ136を、その第2の位置まで前方に並進させるように作用する一方で、マーキング流体121は、粘膜下層108に同時に注入される。
【0032】
この例における第1のカニューレ724は、上記に記載の第1のカニューレ124と略同様であるが、近位端145で、またはこれに近接してカニューレ本体142から外側に突出する環状フランジ770も含む。本明細書では図示されていないが、環状フランジ770は、内視鏡100の一部分に係合して内視鏡100内にツール700を適切に着座させるように配列され、ツール700のユーザが流体注入システム778を介してマーキング流体121を粘膜下層108へと送達するのを助ける把持表面として機能する。
【0033】
一方、流体注入システム778は、第2のカニューレ136の近位端137に連結されて、所望に応じてマーキング流体121を供給する。この例では、流体注入システム778は、ストッパー784と、ばね782と、アダプタ774、プランジャー786、および作動要素790を介して第2のカニューレ136に流体的に連結されたマーキング流体121を含有する流体源788と、を含む。第1のカニューレ724内に移動可能に配設され、吸引源728(吸引源128と同一)と第1のカニューレ724の近位端145との間で第2のカニューレ136によって担持されるストッパー784は、第1のカニューレ724の内側を密封し、それにより吸引管腔148を大気から流体的に隔離する。ばね782は、ばね782がストッパー784に動作可能に連結されるように、ストッパー784とアダプタ774に対して着座され、それらの間に配設されている。流体源788は、アダプタ774を介して第2のカニューレ136の近位端137に流体的に連結されている。この例では、流体源788は、マーキング流体121を含有するシリンジであるが、他の例では、流体源788は、異なる形態を取り得る。プランジャー786は、シリンジ788内に移動可能に配設されて、所望に応じてシリンジ788からマーキング流体121を排出するのを助ける。最後に、この例における作動要素790は、プランジャー786と一体的に形成されるが、シリンジ788の外側に延在するハンドルの形態を取っており、ユーザが流体注入システム778を作動させて、マーキング流体121を送達することを可能にする。
【0034】
動作中、針140を粘膜下層108に注入し、マーキング流体121を注入するために、ユーザは、例えば、指をフランジ770に置き、親指を作動要素790に置き、作動要素790を移動させ、次に、プランジャー786を前方に(すなわち、吸引表面144に向かって)移動させることによって、流体注入システム778を作動させることができる。作動要素790を前方に移動させると、プランジャー786がシリンジ788内で前方に移動し、それによりシリンジ788内のマーキング流体121が、シリンジ788を通して外に出て、第2のカニューレ136を通して内に入るように促される。このようにして作動要素790を前方に移動させると、同時に、ばね782がストッパー784を圧縮して吸引表面144に向かって前方に駆動し、次に、第2のカニューレ136をその第2の位置に駆動し、それにより針140が拡大部分120内に配設され、マーキング流体121が粘膜下組織層108に送達される。
【0035】
図15~17は、内視鏡ツール100(ならびに本明細書に開示されている他の内視鏡ツールのうちのいずれか)と関連して使用され得るデバイス900の一例を図示している。デバイス900は、吸引源904と、流体源912を含む流体注入システム908と、を単一のユニットに実装し、それによりデバイス900は、吸引源904、および内視鏡ツール100(または他の所望の内視鏡ツール)を介したマーキング流体121の粘膜下層108への迅速かつ容易な送達を促進するための手段として同時に機能することができる。具体的には、デバイス900は、流体注入システム908を介して、第2のカニューレ136を前方に、その第2の位置まで並進させるように作用する一方、マーキング流体121は、粘膜下層108に同時に注入される。
【0036】
この例では、デバイス900は、単一または一体型のハウジング916と、デバイス900の長手方向軸922に沿ってハウジング916によって担持されるカニューレ920と、を含む。ハウジング916は、概して、デバイス900の操作者がデバイス900を容易かつ快適に把持および操作することを可能にする形状およびサイズを有する。この例では、ハウジング916は、
図15~17に示される形状およびサイズを有するが、形状および/またはサイズは変化し得ることが理解されるであろう。カニューレ920は、概して、吸引源904および流体源912を内視鏡ツール100(または他の所望の内視鏡ツール)に動作可能に結合するように構成されている。本明細書では例示されていないが、カニューレ920は、内視鏡ツール100に直接連結(例えば、直接挿入)され得るか、または(例えば、アダプタを介して)間接的に内視鏡ツール100に連結され得ることが理解されるであろう。いずれの場合でも、カニューレ920は、カニューレ920が内視鏡ツール100に連結されたときに複数の吸引管腔148と流体連通するように配列される第1のチャンバ924と、第1のチャンバ924によって囲まれ、カニューレ920がそのように連結されたときに第2のカニューレ136と流体連通するように配列される第2のチャンバ928と、を有する。吸引源904を流体源912から(およびその逆)流体的に隔離するために、第2のチャンバ928は、第1のチャンバ924から(およびその逆)流体的に隔離されていることが理解されるであろう。
【0037】
この例における吸引源904は、例えば、ツール100に連結されたときに、第1のチャンバ924を介して複数の吸引管腔148内に負圧を生成するように構成される手押しポンプの形態を取っている。手押しポンプは、弁プラグ932、弁プラグ932に連結された弁棒936、および弁棒936に連結されたハンドル940を含む。弁プラグ932は、複数の吸引管腔148内に生成される負圧を制御するために、ハウジング916に移動可能に配設されている。具体的には、弁プラグ932は、弁プラグ932が環状チャンバ944とカニューレ920の第1のチャンバ924との間に延在する流体流路948を密封する、
図17に示される閉位置と、弁プラグ932が流体流路948から離間される、図示されていない開位置との間でハウジング916内に形成される環状チャンバ944内に移動可能に配設されている。任意の既知の方法で弁プラグ932に連結され得る弁棒936も、同様に、ハウジング916内に移動可能に配設され、弁棒936の第1の部分も、環状チャンバ944内に移動可能に配設されている。ハンドル940は、長手方向軸922に対して垂直な枢軸948の周りでハウジング916に枢動可能に連結されている。ハンドル940は、ハウジング916内に配設され、任意の既知の方法で弁棒936の端に連結された第1の端952を有する。ハンドル940はまた、ハンドル940が部分的に露出されるように、ハウジング916の外側に配設された第2の端956を有する。手押しポンプはまた、弁プラグ932を閉位置に付勢する働きをする付勢要素、この場合は、ばね958を含む。
【0038】
流体注入システム908は、カニューレ920の第2のチャンバ928を介してマーキング流体121を内視鏡ツール100に供給するように構成されている。この例では、流体注入システム908は、ストッパー960、マーキング流体121を含有する流体源912、プランジャー964、および作動要素968を含む。ストッパー960は、ハウジング916の外側の位置でカニューレ920によって担持されている。流体源912は、流体源912もハウジング916の外側に位置付けられるが、ストッパー960よりもさらに下流に位置付けられるように、カニューレ920に連結されている。言い換えると、ストッパー960は、ハウジング916と流体源912との間に配設されている。この例では、流体源912は、マーキング流体121を含有するシリンジ972であるが、他の例では、流体源912は、異なる形態を取ることができる。プランジャー964は、シリンジ972内に移動可能に配設されて、所望に応じてシリンジ972からカニューレ920の第2のチャンバ928にマーキング流体121を排出するのを助ける。最後に、この例における作動要素968は、プランジャー964と一体的に形成されるが、シリンジ972の外側に延在するハンドルの形態を取っており、ユーザが所望に応じて流体注入システム908を作動させて、マーキング流体121を送達することを可能にする。
【0039】
使用中、複数の吸引管腔148内に負圧を生成することが望まれる場合、デバイス900の操作者は、ハンドル940の露出部分を引っ張って、ハンドル940を(
図17で見たときに反時計回りの方向に)回転させる。これにより、次に、弁棒936が移動し、これにより、次に、弁プラグ932がその閉位置からその開位置に移動するようにする。
図17に例示される配向では、弁プラグ932がその閉位置からその開位置に移動するにつれて、弁プラグ932は、環状チャンバ944内で左方向に移動する。いずれの場合でも、弁プラグ932のその開位置への移動は、流体流路948を露出させ、空気を流体流路948から環状チャンバ944に引き寄せ、それによりカニューレ920の第1のチャンバ924内に負圧を生成し、次に、複数の吸引管腔148内に負圧を生成する。
【0040】
一方、針140を粘膜下層108に注入し、マーキング流体121を注入するために、ユーザは、例えば、作動要素968を移動させ、次に、プランジャー964を前方に(すなわち、吸引表面144に向かって)移動させることによって流体注入システム908を作動させることができる。作動要素968を前方に移動させると、プランジャー964がシリンジ972内で前方に移動し、それによりシリンジ972内のマーキング流体121が、シリンジ972を通して外に出て、カニューレ920の第2のチャンバ928を通して内に入り、次に、第2のカニューレ136を通して内に入るように促される。このようにして作動要素968を前方に移動させると、同時に、ストッパー960(およびストッパー960を担持するカニューレ920)を吸引表面144に向かって前方に駆動し、次に、第2のカニューレ136をその第2の位置に駆動し、それにより針140が拡大部分120内に配設され、マーキング流体121が粘膜下組織層108に送達される。
【0041】
本開示は、本明細書で明示的に考察または例示されていない他の内視鏡ツールをカバーすることも理解されるであろう。例えば、本明細書に例示されていない内視鏡ツールの別の例では、内視鏡ツールは、互いに共押し出しされた一対の管によって画定される第1のカニューレを含む場合があり、第1の管は、1つ以上の吸引管腔を画定し、第2の管は、1つ以上の吸引管腔から分離した流体管腔を画定する。他の例も、同様に想定される。
【0042】
図4~7に戻ると、マーキング流体(例えば、マーキング流体121)を粘膜下組織層(例えば、粘膜下組織層108)に注入するための方法の一例が、これより記載されるだろう。本方法は、内視鏡ツール100を利用しているが、本方法は、本明細書に開示されているツールのうちのいずれか、または異なる内視鏡ツールを利用して、粘膜下組織層へのマーキング流体の注入を促進することができることが理解されるであろう。
【0043】
本方法は、内視鏡(例えば、内視鏡104)の管腔内に第1のカニューレ(例えば、第1のカニューレ124)を配設することを含む。第1のカニューレは、粘膜組織層(例えば、粘膜組織層112)に接触するように第1のカニューレの遠位端(例えば、遠位端146)に配設された吸引表面(例えば、吸引表面144)と、吸引表面と第1のカニューレの近位端(例えば、近位端145)との間で第1のカニューレ内に形成された吸引管腔(例えば、吸引管腔148)を画定する針安定化構造体(例えば、針安定化構造体168)と、吸引管腔から分離した流体管腔(例えば、流体管腔132)と、を有する。本方法は、第1のカニューレの流体管腔内に針(例えば、針140)を担持する第2のカニューレ(例えば、第2のカニューレ136)を配設することを含む。
【0044】
本方法は、第1のカニューレを、吸引表面が内視鏡の管腔内に配設される第1の位置から、吸引表面が内視鏡の管腔の外側に、患者内の標的領域に近接して配設される第2の位置に移動させることを含む(
図4)。本方法はまた、第1のカニューレに連結された吸引源(例えば、吸引源128)を介して吸引管腔内に負圧を生成し、それにより組織の標的領域を引き寄せて吸引表面に接触させ、吸引表面に対して組織の標的領域を保持することを含む(
図5)。本方法は、第1のカニューレを標的領域から離れるように移動させ、標的領域で粘膜組織層の下の粘膜下組織層を拡大させることを含む(
図6)。本方法は、第2のカニューレを、針が流体管腔内に配設される第1の位置から、針が流体管腔の外側に配設される第2の位置に移動させることを含み、針が、粘膜組織層を突き刺すようにする。次に、マーキング流体が、針を介して粘膜下組織層に注入され、それにより組織の標的領域で粘膜組織層を隆起させる(
図7)。
【0045】
当業者であれば、本開示の範囲から逸脱することなく、上記に記載の実施形態に関して多種多様な改変、変更、および組み合わせを行うことができ、そのような改変、変更、および組み合わせが本発明の概念の範囲内にあると見られることを認識するであろう。