(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】基板処理装置のプロセス判定装置、基板処理システム、基板処理装置のプロセス判定方法、学習モデルの生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20220316BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20220316BHJP
【FI】
H01L21/02 Z
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2021088496
(22)【出願日】2021-05-26
【審査請求日】2021-06-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】511265154
【氏名又は名称】SPPテクノロジーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001748
【氏名又は名称】特許業務法人まこと国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 佑揮
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/179729(WO,A1)
【文献】特表2008-536221(JP,A)
【文献】特表2009-520948(JP,A)
【文献】特表2008-536220(JP,A)
【文献】特表2020-500420(JP,A)
【文献】特開2015-166962(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板処理装置のプロセスの成否を判定する装置であって、
前記基板処理装置のプロセスログに基づき入力データを作成し、前記入力データに基づき、前記プロセスの成否を判定する判定部を備え、
前記判定部は、前記入力データが入力され、前記基板処理装置のプロセスの成否を出力する、学習モデルを具備し、
前記判定部は、
予め記憶された前記基板処理装置のプロセスが正常である場合のプロセスログである基準プロセスログと、前記基板処理装置の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、プロセスログを構成するパラメータのうち前記入力データを作成するために選択して用いるパラメータである選択パラメータを決定する選択パラメータ決定工程と、
前記基準プロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いて前記学習モデルの機械学習を行う学習工程と、
前記学習工程後の学習モデルに対し、前記判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成された入力データを入力することで、前記判定対象プロセスの成否を判定する判定工程と、を実行する、
ことを特徴とする基板処理装置のプロセス判定装置。
【請求項2】
前記基板処理装置のプロセスログを取得するプロセスログ取得部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の基板処理装置のプロセス判定装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記選択パラメータ決定工程において、前記基準プロセスログを構成するパラメータと、前記判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータとの相関係数を算出し、前記相関係数の絶対値が所定の閾値よりも大きいパラメータを前記選択パラメータとして決定する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置のプロセス判定装置。
【請求項4】
前記判定部には、前記基板処理装置のプロセスの条件であるレシピ毎に前記基準プロセスログが予め記憶されており、
前記判定部は、前記選択パラメータ決定工程において、前記レシピ毎に記憶された基準プロセスログのうち前記判定対象プロセスのレシピに応じた基準プロセスログを選択して、前記判定対象プロセスのプロセスログと比較する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基板処理装置のプロセス判定装置。
【請求項5】
基板処理装置と、請求項1から4の何れかに記載のプロセス判定装置と、
を備えることを特徴とする基板処理システム。
【請求項6】
学習モデルを用いて基板処理装置のプロセスの成否を判定する方法であって、
前記基板処理装置の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスのプロセスログを取得するプロセスログ取得工程と、
予め用意された前記基板処理装置のプロセスが正常である場合のプロセスログである基準プロセスログと、前記判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、プロセスログを構成するパラメータのうち、前記学習モデルへの入力データを作成するために選択して用いるパラメータである選択パラメータを決定する選択パラメータ決定工程と、
前記基準プロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成した入力データを教師データの入力として用いて前記学習モデルの機械学習を行う学習工程と、
前記判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて入力データを作成し、前記入力データを前記学習工程後の学習モデルに入力することで、前記判定対象プロセスの成否を判定する判定工程と、を含む、
ことを特徴とする基板処理装置のプロセス判定方法。
【請求項7】
基板処理装置のプロセスログに基づき作成された入力データが入力され、前記基板処理装置のプロセスの成否を出力する、学習モデルを生成する方法であって、
予め用意された前記基板処理装置のプロセスが正常である場合のプロセスログである基準プロセスログと、前記基板処理装置の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、プロセスログを構成するパラメータのうち前記入力データを作成するために選択して用いるパラメータである選択パラメータを決定する選択パラメータ決定工程と、
前記基準プロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いて機械学習を行うことで、前記学習モデルを生成する学習工程と、を含む、
ことを特徴とする学習モデルの生成方法。
【請求項8】
請求項6に記載の基板処理装置のプロセス判定方法が含む前記プロセスログ取得工程、前記選択パラメータ決定工程、前記学習工程及び前記判定工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置のプロセスの成否を判定する基板処理装置のプロセス判定装置、これを備えた基板処理システム、基板処理装置のプロセス判定方法、学習モデルの生成方法及びプログラムに関する。特に、本発明は、高い判定精度を得ることが可能な基板処理装置のプロセス判定装置、基板処理システム、基板処理装置のプロセス判定方法、学習モデルの生成方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置等の基板処理装置のプロセス(製造プロセス)の成否(正常又は異常)を判定する際、基板処理装置における基板の処理に関わる各種の測定値の履歴であるプロセスログが用いられている。
基板処理装置のプロセスの成否を判定する際には、プロセスログを構成する各パラメータに対する閾(しきい)値を、レシピと称されるプロセスの条件毎に予め設定しておき、判定対象とするプロセスのプロセスログを構成する各パラメータが、このレシピに応じて設定された閾値を超えるか否かで、このプロセスの成否を判定している。
【0003】
しかしながら、プロセスログを構成する各パラメータの数やレシピの数は多いため、全てのパラメータのうちプロセスの成否の判定に用いる適切なパラメータを選択したり、適切な閾値を決めるのは困難である。適切なパラメータを選択できなかったり、適切な閾値を決めることができなければ、自ずとプロセスの成否を判定する精度も低下することになる。
【0004】
上記の閾値の設定のようなオペレータの手間を軽減しつつ、プロセスログを用いてレシピを最適化する装置として、例えば、機械学習を利用した特許文献1に記載の装置が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、プロセスの成否を判定するものではない。
【0005】
また、上記の閾値の設定のようなオペレータの手間を軽減しつつ、プロセスログを用いてプロセスの異常度を判定する装置として、例えば、機械学習を利用した特許文献2に記載の装置が提案されている。
しかしながら、特許文献2には、プロセスログを構成するパラメータのうち、判定に用いる適切なパラメータを如何にして選択するかについて、何ら提案されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2020-38888号公報
【文献】特開2020-47078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、基板処理装置のプロセスの成否を高い判定精度で判定することが可能な基板処理装置のプロセス判定装置、これを備えた基板処理システム、基板処理装置のプロセス判定方法、学習モデルの生成方法及びプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置のプロセスの成否を判定する装置であって、前記基板処理装置のプロセスログに基づき入力データを作成し、前記入力データに基づき、前記プロセスの成否を判定する判定部を備え、前記判定部は、前記入力データが入力され、前記基板処理装置のプロセスの成否を出力する、学習モデルを具備し、前記判定部は、予め記憶された前記基板処理装置のプロセスが正常である場合のプロセスログである基準プロセスログと、前記基板処理装置の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、プロセスログを構成するパラメータのうち前記入力データを作成するために選択して用いるパラメータである選択パラメータを決定する選択パラメータ決定工程と、前記基準プロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いて前記学習モデルの機械学習を行う学習工程と、前記学習工程後の学習モデルに対し、前記判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成された入力データを入力することで、前記判定対象プロセスの成否を判定する判定工程と、を実行する、ことを特徴とする基板処理装置のプロセス判定装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、基板処理装置のプロセスの成否を判定する判定部が、学習モデルを具備する。この学習モデルは、機械学習を行うことで生成されるため、従来のように、プロセスログを構成する多くのパラメータに対する閾値を多くのレシピ毎に定める必要が無く、手間が軽減するという利点が得られる。
また、本発明によれば、判定部は、予め記憶された基板処理装置のプロセスが正常である場合のプロセスログである基準プロセスログと、基板処理装置の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、プロセスログを構成するパラメータのうち、学習モデルに入力される入力データを作成するために選択して用いるパラメータである選択パラメータを決定する。例えば、判定対象プロセスに異常が生じていることで、判定対象プロセスのプロセスログを構成する特定のパラメータの値が、基準プロセスログを構成する同じパラメータの値と大きく異なる場合、このパラメータは判定対象プロセスの成否を判定する上で有効であると考えられる。このように、基板処理装置のプロセスが正常である場合の基準プロセスログと、判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、判定対象プロセスの成否を判定する上で有効な選択パラメータを決定することが可能である。この選択パラメータは判定対象プロセス毎に変わり得る。
そして、学習モデルは、基準プロセスログを構成するパラメータのうち選択パラメータを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いた機械学習を行うことで生成され、この学習モデルに対して判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち選択パラメータを用いて作成された入力データが入力されるため、判定対象プロセスの成否を高い判定精度で判定することが可能である。
【0010】
好ましくは、本発明に係るプロセス判定装置は、前記基板処理装置のプロセスログを取得するプロセスログ取得部を更に備える。
プロセスデータの取得は、本発明に係るプロセス判定装置とは別の装置で行ない、取得したプロセスログを本発明に係るプロセス判定装置の判定部に自動的に又は手動で入力してもよい。
しかしながら、上記の好ましい構成によれば、本発明に係るプロセス判定装置自体がプロセスログ取得部を備えてプロセスログを取得するため、別の装置が取得する場合に比べて、プロセスログの取得に要する時間、ひいては、判定対象プロセスの成否の判定に要する時間が短縮されることが期待できる。
【0011】
好ましくは、前記判定部は、前記選択パラメータ決定工程において、前記基準プロセスログを構成するパラメータと、前記判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータとの相関係数を算出し、前記相関係数の絶対値が所定の閾値よりも大きいパラメータを前記選択パラメータとして決定する。
【0012】
判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータの値が、基準プロセスログを構成する同じパラメータの値と大きく異なる場合、このパラメータ間の相関係数の絶対値は大きくなる。このため、上記の好ましい構成のように、相関係数の絶対値が所定の閾値よりも大きいパラメータを選択パラメータとして決定することで、判定対象プロセスの成否を判定する上で有効な選択パラメータを決定することが可能である。
【0013】
好ましくは、前記判定部には、前記基板処理装置のプロセスの条件であるレシピ毎に前記基準プロセスログが予め記憶されており、前記判定部は、前記選択パラメータ決定工程において、前記レシピ毎に記憶された基準プロセスログのうち前記判定対象プロセスのレシピに応じた基準プロセスログを選択して、前記判定対象プロセスのプロセスログと比較する。
【0014】
上記の好ましい構成によれば、判定部が、レシピ毎に記憶された基準プロセスログのうち判定対象プロセスのレシピに応じた基準プロセスログを選択して、判定対象プロセスのプロセスログと比較するため、判定対象プロセスのレシピに応じた有効な選択パラメータを決定することが可能である。
なお、判定対象プロセスのレシピに応じた基準プロセスログの選択は、判定部にレシピが入力されるように構成し、この入力されたレシピに応じて、判定部が自動的に選択することも可能であるし、オペレータが手動で判定部への基準プロセスログの選択指示を行うことも可能である。
【0015】
また、前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置と、前記の何れかに記載のプロセス判定装置と、を備えることを特徴とする基板処理システムとしても提供される。
【0016】
また、前記課題を解決するため、本発明は、学習モデルを用いて基板処理装置のプロセスの成否を判定する方法であって、前記基板処理装置の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスのプロセスログを取得するプロセスログ取得工程と、予め用意された前記基板処理装置のプロセスが正常である場合のプロセスログである基準プロセスログと、前記判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、プロセスログを構成するパラメータのうち、前記学習モデルへの入力データを作成するために選択して用いるパラメータである選択パラメータを決定する選択パラメータ決定工程と、前記基準プロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成した入力データを教師データの入力として用いて前記学習モデルの機械学習を行う学習工程と、前記判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて入力データを作成し、前記入力データを前記学習工程後の学習モデルに入力することで、前記判定対象プロセスの成否を判定する判定工程と、を含む、ことを特徴とする基板処理装置のプロセス判定方法としても提供される。
【0017】
また、前記課題を解決するため、本発明は、基板処理装置のプロセスログに基づき作成された入力データが入力され、前記基板処理装置のプロセスの成否を出力する、学習モデルを生成する方法であって、予め用意された前記基板処理装置のプロセスが正常である場合のプロセスログである基準プロセスログと、前記基板処理装置の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、プロセスログを構成するパラメータのうち前記入力データを作成するために選択して用いるパラメータである選択パラメータを決定する選択パラメータ決定工程と、前記基準プロセスログを構成するパラメータのうち前記選択パラメータを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いて機械学習を行うことで、前記学習モデルを生成する学習工程と、を含む、ことを特徴とする学習モデルの生成方法としても提供される。
【0018】
さらに、前記課題を解決するため、本発明は、前記基板処理装置のプロセス判定方法が含む前記プロセスログ取得工程、前記選択パラメータ決定工程、前記学習工程及び前記判定工程をコンピュータ(CPU)に実行させるためのプログラムとしても提供される。
なお、上記のプラグラムを記憶させた、コンピュータ(CPU)で読み取り可能な記憶媒体として提供することも可能である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、基板処理装置のプロセスの成否を高い判定精度で判定することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る基板処理システムの概略構成を模式的に示す図である。
【
図2】測定されるパラメータであるV
pp及びV
DCを説明する説明図である。
【
図3】
図1に示す正規化部23の動作を説明する説明図である。
【
図4】
図1に示す判定部22が実行する各工程を概略的に示すフロー図である。
【
図5】
図1に示すプロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面の表示例を模式的に示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る基板処理システムが備えるプロセス判定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る基板処理システムが備えるプロセス判定装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係る基板処理システムを用いた試験において、基準プロセスログ25(第1基準プロセスログ25a)を構成するパラメータと、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータとの相関係数を算出した結果の一例を示す図である。
【
図9】
図8(c)の横軸に示すパラメータのうち、V
DC及び温度No.1-2についての、基準プロセスログの値及び判定対象プロセスのプロセスログの値を示す図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る基板処理システムを用いた試験における機械学習の結果及び判定結果を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態に係るプロセス判定装置及びこれを備えた基板処理システムについて説明する。本実施形態(第1実施形態~第3実施形態)では、基板処理装置がプラズマ処理装置である場合を例に挙げて説明する。
【0022】
最初に、本明細書で用いる語句の意味について説明する。
本明細書において、「基板処理装置のプロセス」とは、基板処理装置の製造プロセス(基板処理装置における基板の製造プロセス)を意味する。そして、「基板処理装置のプロセスの成否を判定する」とは、基板処理装置の製造プロセスが正常であるか異常であるかを判定することを意味する。基板処理装置の製造プロセスとは、基板処理装置内で、基板を処理する間及び処理の前後に行われるプロセスを意味する。本実施形態に係るプロセス判定装置は、基板処理装置のプロセスの成否を判定するため、その判定結果が、基板処理装置で処理した後の基板の性能向上や良品率向上などに直接寄与し得る。
また、本明細書において、「基板処理装置のプロセスログ」とは、基板処理装置における基板の処理に関わる各種の測定値の履歴や、処理の経過時間(プロセス時間)を意味し、基板処理装置の稼働時に逐次得られるものが一般的である。ただし、プロセスログには、処理後の基板の検査(基板処理装置外に搬出された基板の検査)に関わる測定値が含まれてもよい。基板の処理の良否に応じて基板の検査結果も変わり得るため、処理後の基板の検査に関わる測定値も、基板処理装置における基板の処理に関わる測定値といえるからである。
また、本明細書において、「学習モデル」としては、サポートベクタマシンや、ニューラルネットワーク、マハラノビス距離を用いた分類器など、機械学習を用いて生成できる限りにおいて種々の構成を採用可能である。
また、本明細書において、「教師データ」とは、学習モデルへの既知の入出力の組み合わせを意味する。
【0023】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る基板処理システムの概略構成を模式的に示す図である。
図1(a)は、基板処理システムの全体構成図である。
図1(b)は、プロセス判定装置の概略構成を示すブロック図である。なお、
図1(a)では、プロセスログとして測定されるパラメータを破線の矩形で囲って図示している。
図2は、測定されるパラメータであるV
pp及びV
DCを説明する説明図である。
図1(a)に示すように、第1実施形態に係る基板処理システム100は、基板処理装置10と、プロセス判定装置20と、を備えている。
【0024】
第1実施形態の基板処理装置10は、チャンバ1と、チャンバ1内に配置された載置台2と、を具備し、載置台2に載置された基板Wにプラズマ処理を施す装置である。より具体的には、第1実施形態の基板処理装置10は、基板Wにプラズマ処理としてのエッチングを施す誘導結合プラズマ(ICP)方式のプラズマエッチング装置である。
【0025】
基板処理装置10のチャンバ1内には、ガス供給源(図示せず)からプラズマを生成するための処理ガスが供給される。
図1(a)では、ガスNo.1~ガスNo.6までの6種類の処理ガスを供給可能とした構成が図示されている。しかしながら、エッチング処理を実行する際、6種類の処理ガスの全てを使用する場合に限るものではなく、何れか1種類以上の処理ガスを用いてエッチングを行うことが可能である。なお、供給する各処理ガスの流量は、ガス供給源からチャンバ1までの流路に設けられたマスフローコントローラ(Mass Flow Controller、MFC)11によって測定される。また、チャンバ1には、チャンバ1の壁面を加熱するヒータ(図示せず)が適宜の箇所に設けられており、各箇所のヒータの温度(
図1(a)に示す温度No.1-1~No.1-4)が、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。さらに、チャンバ1内の圧力が、真空計12によって測定される。
【0026】
基板処理装置10は、チャンバ1を囲うようにチャンバ1に配置されたコイル3を具備する(
図1(a)では、便宜上、左側に位置するコイル3の断面のみを図示している)。コイル3には、上部高周波電源4から上部マッチングユニット5を介して高周波電力(上部高周波電力)が印加される。コイル3に上部高周波電力を印加することで、チャンバ1内に供給された処理ガスがプラズマ化される。なお、上部高周波電源4が印加する上部高周波電力と、上部マッチングユニット5の整合位置(上部マッチングユニット5が具備する可変コンデンサや可変コイルなどの可変素子の定数)とが、それぞれ公知の測定器(図示せず)によって測定される。具体的には、第1実施形態では、上部高周波電力として、進行波電力及び反射波電力が測定される。また、上部マッチングユニット5の整合位置として、2つの可変素子の定数である上部マッチングユニット整合位置No.1及び上部マッチングユニット整合位置No.2が測定される。
【0027】
載置台2には、下部高周波電源6から下部マッチングユニット7を介して高周波電力(下部高周波電力)が印加される。載置台2に下部高周波電力を印加することで、載置台2とチャンバ1内のプラズマとの間にバイアス電位を与え、プラズマ中のイオンを加速して載置台2に載置された基板Wに引き込む。これにより、基板Wにエッチングが施される。なお、下部高周波電源6が印加する下部高周波電力と、下部マッチングユニット7の整合位置(下部マッチングユニット7が具備する可変コンデンサや可変コイルなどの定数)とが、それぞれ公知の測定器(図示せず)によって測定される。具体的には、第1実施形態では、下部高周波電力として、進行波電力及び反射波電力が測定される。また、下部マッチングユニット7の整合位置として、2つの可変素子の定数である下部マッチングユニット整合位置No.1及び下部マッチングユニット整合位置No.2が測定される。
また、載置台2に印加される高周波電力の電圧が、電圧計18によって測定される。そして、
図2に示すように、その電圧の大きさ(peak to peak)がV
ppとして測定され、載置台2がプラズマ中の電子を引き込むことで載置台2に生じる帯電が生み出す電圧成分(直流成分)の大きさがV
DCとして測定される。
【0028】
プラズマ処理の実行中、載置台2は、チラー8によって冷却される。チラー8の温度が、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。また、プラズマ処理の実行中、基板Wの裏面にHeガスが供給され、このHeガスによって基板Wが冷却される。この際、供給するHeガスの圧力・流量が、Heガス供給源(図示せず)から基板Wの裏面(載置台2の上面)までの流路に設けられた圧力・流量計9によって測定される。
【0029】
プラズマ処理を実行することでチャンバ1内に生成された反応生成物等は、チャンバ1内に連通する排気管17を通じてチャンバ1外に排気される。排気管17には、バルブ開度を調整することにより、チャンバ1内の圧力を制御する自動圧力制御装置(Auto Pressure Controller,APC)13、反応生成物を排気するための第1ポンプ(ターボ分子ポンプ)14、及び、第1ポンプ14を補助する第2ポンプ(ドライポンプやロータリーポンプなど)15が設けられている。なお、必要に応じて、自動圧力制御装置13の温度(
図1(a)に示す温度No.1-5)と、第1ポンプ14の温度(
図1(a)に示す温度No.1-6)とが、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。また、排気管17には、排気管17を加熱するヒータ(図示せず)が適宜の箇所(例えば、第1ポンプ14と第2ポンプ15との間)に設けられており、必要に応じて、各箇所のヒータの温度(
図1(a)に示す温度No.1-7、No.1-8)が、熱電対等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。また、自動圧力制御装置13のバルブ開度(APC開度)が、エンコーダ等の公知の測定器(図示せず)によって測定される。さらに、第1ポンプ14と第2ポンプ15との間に位置する排気管17内の圧力(フォアライン圧力)が、真空計16によって測定される。
【0030】
第1実施形態のプロセス判定装置20は、上記の構成を有する基板処理装置10に電気的に接続されており、基板処理装置10のプロセスの成否を判定する装置である。
【0031】
図1(b)に示すように、プロセス判定装置20は、プロセスログ取得部21と、判定部22と、を備え、例えば、コンピュータから構成されている。
プロセス判定装置20が、基板処理装置10の稼働を制御するために一般的に用いられる制御装置としての機能も有する場合(制御装置がプロセス判定装置20としても兼用される場合)、プロセスログ取得部21は、
図1(a)を参照して前述した各測定値を測定する測定器(例えば、マスフローコントローラ11)と有線又は無線で電気的に接続されており(
図1(a)では、便宜上、圧力・流量計9、マスフローコントローラ11及び真空計12だけに有線で接続されている状態を図示している)、各測定器から逐次入力された測定データを所定のサンプリング周期(例えば、1秒)で取得(A/D変換)し、プロセスログとして記憶する機能を有する。
【0032】
プロセスログ取得部21は、例えば、コンピュータに搭載されたA/D変換ボードや、コンピュータが具備するROM、RAM等のメモリや、該メモリに記憶され、プロセスログ取得部21としての動作をCPUに実行させるプログラムによって構成される。後述の判定部22、正規化部23、選択部24、学習モデル26、論理和演算部27及び多数決決定部28も同様に、コンピュータが具備するROM、RAM等のメモリや、該メモリに記憶され、各部としての動作をCPUに実行させるプログラムによって構成される。
動作をCPUに実行させるプログラムは、プロセス判定装置20が備える記憶媒体であるハードディスク29に記憶され、ハードディスク29からRAMに読み込む態様であってもよい。また、ハードディスク29がプロセスログ取得部21の一部を構成し、プロセスログをハードディスク29に記憶させる態様であってもよい。
図1(a)では、ハードディスク29が外付けである場合を図示しているが、コンピュータに内蔵されたハードディスクでもよい。以上のようにして取得されたプロセスログは、判定部22に入力される。
なお、プロセス判定装置20が上記の制御装置と別体である場合には、測定器と電気的に接続された制御装置によってプロセスログが取得され、制御装置に記憶される。そして、制御装置に記憶されたプロセスログが、制御装置と電気的に接続されたプロセス判定装置20のプロセスログ取得部21に送信されることになる。
【0033】
判定部22は、プロセスログ取得部21によって逐次(例えば、1秒毎に)取得したプロセスログから入力データを作成し、この入力データに基づき、基板処理装置10のプロセスの成否を判定する部分である。
判定部22は、正規化部23、選択部24及び学習モデル26を具備する。また、判定部22には、基板処理装置10のプロセスが正常(実際に正常)である場合のプロセスログである基準プロセスログ25が予め記憶されている。第1実施形態では、プロセス終了後に、基板Wに施されたエッチングの深さを測定し、この測定結果に応じてプロセスの実際の成否を区別している。具体的には、この測定した深さが所望する範囲内にあった場合を正常とし、範囲外であった場合を異常としている。したがって、基準プロセスログ25は、基板Wのエッチングの深さが所望する範囲内となったプロセスに関するプロセスログである。なお、本発明は、基板Wに施されたエッチングの深さが所望する範囲内にあったか否かによってプロセスの実際の成否を区別する態様に限られるものではなく、例えば、プロセス終了後の基板Wの性能の良否に応じて、プロセスの実際の成否を区別する態様を採用することも可能である。
【0034】
第1実施形態の判定部22には、単一の基準プロセスログ25が記憶されているのではなく、基板処理装置10のプロセスの条件であるレシピ毎に基準プロセスログ25が記憶されている。後述の第2実施形態の判定部22A及び第3実施形態の判定部22Bについても同様である。
図1(b)に示す例では、判定部22には、レシピR1に応じた第1基準プロセスログ25aと、レシピR2に応じた第2基準プロセスログ25bとが記憶されている。第1基準プロセスログ25aは、レシピR1で実行されたプロセスが正常であった場合に得られたプロセスログであり、第2基準プロセスログ25bは、レシピR1と異なるレシピR2(例えば、レシピR2を構成するパラメータのうちの何れかのパラメータの値がレシピR1と異なる)で実行されたプロセスが正常であった場合に得られたプロセスログである。ただし、本発明はこれに限るものではなく、単一の基準プロセスログ25が記憶されている態様や、3つ以上のレシピに応じた3つ以上の基準プロセスログ25が記憶されている態様を採用することも可能である。
【0035】
図3は、正規化部23の動作を説明する説明図である。
図3の左図は、プロセスログ取得部21によって取得したプロセスログを模式的に示す図である。
図3に示すパラメータ1~Nは、例えば、パラメータ1が
図1(a)に示す下部マッチングユニット7について測定した下部マッチングユニット整合位置No.1であり、パラメータNが
図1(a)に示す電圧計18で測定したV
DCである等、プロセスログの種類を意味する。
図3の左図に示すX
ij(i=1~N、j=1~M)は、パラメータiについてプロセス時間(エッチング開始からの経過時間)がj[sec]のときに取得されたプロセスログの値を意味する。例えば、X
11は、パラメータ1についてプロセス時間が1[sec]のときに取得されたプロセスログの値であり、X
NMは、パラメータNについてプロセス時間がM[sec]のときに取得されたプロセスログの値である。
【0036】
正規化部23は、プロセスログの種類毎(パラメータi毎)に、全プロセス時間(1~M[sec])でのプロセスログの最大値MAXi、最小値MINiを予め算出する。例えば、パラメータ1についての最大値はMAX1、最小値はMIN1であり、パラメータNについての最大値はMAXN、最小値はMINNである。なお、これらの最大値MAXi及び最小値MINiは、成否の判定対象とするプロセスである判定対象プロセスにおいて1つの基板Wをエッチングする際に取得されたプロセスログを用いて算出するのではなく、同じレシピでエッチングされた複数の基板Wについて取得されたプロセスログを用いて予め算出しておくことが好ましい。算出したプロセスログの種類毎(パラメータi毎)の最大値MAXi及び最小値MINiは、正規化部23に記憶される。
【0037】
そして、正規化部23は、プロセスログ取得部21によって逐次取得したプロセスログX
ijに対して、プロセスログの種類毎(パラメータi毎)に最大値が1となり最小値が0となり得る正規化を行う。
具体的には、以下の式(1)に基づき、
図3の右図に示すように、正規化後のプロセスログY
ijを算出する。
Y
ij=(X
ij-MIN
i)/(MAX
i-MIN
i) ・・・(1)
上記の式(1)において、i=1~Nであり、j=1~Mである。
上記の式(1)から、X
ij=MAX
iのとき、Y
ij=1となり、X
ij=MIN
iのとき、Y
ij=0となるように正規化されることは明らかである。
【0038】
プロセスログXijの値は、電圧、圧力、温度、流量など、プロセスログXijの種類に応じて大きく異なる。また、どのような単位で表すかによっても異なる値となる。このため、プロセスの成否を判定するに際し、各種類のプロセスログXijの値をそのまま用いると、判定精度に影響を及ぼす可能性がある。これを避けるには、上記のように正規化して、正規化後の各種類のプロセスログYijの値が何れも一定の範囲内で変動するようにすることが好ましい。
【0039】
第1実施形態の判定部22は、プロセスログ取得部21で取得した全てのプロセスログX
ijを正規化部23でY
ijに正規化した後、これを用いて判定対象プロセスの成否を判定する。具体的には、判定部22は、選択パラメータ決定工程と、学習工程と、判定工程と、を実行する。
図4は、判定部22が実行する各工程を概略的に示すフロー図である。なお、
図4では、基板処理装置10及びプロセスログ取得部21の動作も含めて図示しており、
図4の破線で囲った領域が判定部22の動作である。
以下、判定部22が実行する各工程について説明する。
【0040】
<選択パラメータ決定工程S1>
図4に示すように、判定対象プロセスの成否を判定する際には、基板処理装置10で実行する判定対象プロセスのレシピを選択し、このレシピに従って、判定対象プロセスを開始する。この際、前述のように、プロセスログ取得部21が逐次プロセスログを取得する。そして、第1実施形態では、判定対象プロセス終了後に、判定部22が選択パラメータ決定工程S1を実行する。
選択パラメータ決定工程S1では、判定部22の選択部24が、判定部22に予め記憶された基準プロセスログ25と、判定対象プロセスのプロセスログ(正規化後のプロセスログ)とを比較する。この比較の際、基準プロセスログ25も正規化部23で正規化された後に比較されるか、或いは、予め正規化された後に記憶された基準プロセスログ25が用いられる。
【0041】
第1実施形態では、前述のように、レシピ毎に基準プロセスログ25(第1基準プロセスログ25a、第2基準プロセスログ25b)が記憶されている。前述の比較の際、選択部24は、レシピ毎に記憶された基準プロセスログ25のうち判定対象プロセスのレシピに応じた基準プロセスログ25を選択して、判定対象プロセスのプロセスログと比較する。例えば、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合、選択部24は、第1基準プロセスログ25aを選択し、判定対象プロセスのプロセスログと比較する。判定対象プロセスのレシピがレシピR2である場合、選択部24は、第2基準プロセスログ25bを選択し、判定対象プロセスのプロセスログとを比較する。
図1(b)に示す例では、第1基準プロセスログ25aが選択されて、判定対象プロセスのプロセスログと比較する状態を図示している。
【0042】
基準プロセスログ25の選択は、選択部24が自動的に行うように構成してもよいし、オペレータが手動で選択部24への選択指示を行なってもよい。
選択部24が自動的に選択する場合には、例えば、プロセスのレシピに応じた識別子(ID)を付し(例えば、レシピR1に「A」という識別子を付し、レシピR2に「B」という識別子を付す)、各基準プロセスログ25をこの識別子に紐付けて記憶させておけばよい。具体的には、例えば、第1基準プロセスログ25aを識別子Aに紐付けて記憶させ、第2基準プロセスログ25bを識別子Bに紐付けて記憶させておけばよい。そして、判定対象プロセスのレシピにも識別子(A又はB)を付し、予め選択部24に記憶されているか、或いは、前述の制御装置から送信された、この判定対象プロセスのレシピの識別子に応じて、選択部24がこの識別子に紐付けられた基準プロセスログ25を自動的に選択すればよい。
【0043】
図5は、プロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面の表示例を模式的に示す図である。
第1実施形態では、プロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面に、選択される基準プロセスログ25が表示されるように構成されている。具体的には、選択部24への基準プロセスログ25の選択指示を手動で行う場合には、例えば、
図5(a)に示すように、第1基準プロセスログ25a及び第2基準プロセスログ25bの選択ボタン20bがそれぞれモニタ画面に表示される。そして、キーボードやマウスを使って何れかの選択ボタン20bを選んだり、モニタがタッチパネル式の場合には指で何れかの選択ボタン20bを選ぶことで、選択された基準プロセスログ25が他の基準プロセスログ25と識別可能に表示される態様を採用可能である。例えば、
図5(a)に示す例では、選択された基準プロセスログ25aの表示欄20aがモニタ画面に点灯表示されている。点灯表示に限らず、点滅表示やカラー表示など、選択された基準プロセスログ25を識別可能な限り、種々の態様を採用可能である。
【0044】
また、選択部24が基準プロセスログ25の選択を自動的に行う場合には、例えば、
図5(a)に示す例と同様に(ただし、この場合は、選択ボタン20bは不要)、全ての表示欄20aのうち、選択された基準プロセスログ25の表示欄20aをモニタ画面に点灯表示等することによって、他の基準プロセスログ25と識別可能にする態様を採用可能である。或いは、選択された基準プロセスログ25の表示欄20aのみをモニタ画面に表示(選択されていない基準プロセスログ25の表示欄20aは非表示)することも可能である。なお、選択部24が基準プロセスログ25の選択を自動的に行う場合において、判定対象プロセスのレシピに応じた基準プロセスログ25が存在しないために選択できないときには、プロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面に、選択不能である旨や、判定対象プロセスのレシピに応じた基準プロセスログ25を用意することを指示するメッセージ等を表示させる態様を採用することも可能である。
【0045】
なお、
図5(a)に示すように、選択される基準プロセスログ25を直接的に表示する態様ではなく、選択される基準プロセスログ25に対応するレシピの種類を表示することで、選択される基準プロセスログ25を間接的に表示する態様を採用することも可能である。
【0046】
上記のように、選択される基準プロセスログ25が表示される構成にすることで、例えば、判定結果を解析するとき(例えば、判定精度が低下した原因を調査するとき)等に有効である。特に、選択部24が基準プロセスログ25の選択を自動的に行う場合には、選択される基準プロセスログ25が表示されないと、どれを用いて後述の選択パラメータを決定しているかが一見しただけでは分からないブラックボックスの状態になるため、上記のように表示される構成にすることが有効である。
【0047】
選択部24は、以上のようにして選択した基準プロセスログ25と、判定対象プロセスのプロセスログとを比較するが、具体的には、基準プロセスログ25を構成するパラメータと、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータとの相関係数rを算出する。
例えば、基準プロセスログ25を構成するパラメータNのプロセス時間1~Mで得られたデータをD1={YN1’,YN2’,・・・YNM’}とし、判定対象プロセスのプロセスログを構成する同じパラメータNのプロセス時間1~Mで得られたデータをD2={YN1,YN2,・・・YNM}とし、D1とD2それぞれの分散をVD1、VD2とし、標準偏差をSD1、SD2とし、共分散をSD1D2とすれば、相関係数rは、以下の式(2)で表される。
r=SD1D2/(VD1・VD2)0.5=SD1D2/(SD1・SD2) ・・・(2)
選択部24は、この相関係数rをプロセスログを構成する全てのパラメータについて算出する。そして、選択部24は、プロセスログを構成するパラメータのうち、算出した相関係数rの絶対値が所定の閾値よりも大きいパラメータを選択パラメータとして決定する。
【0048】
図4に示す例では、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合、選択された第1基準プロセスログ25aと、判定対象プロセスのプロセスログとを比較する(相関係数rを算出する)ことで、選択パラメータP1を決定(相関係数rの絶対値が所定の閾値よりも大きいパラメータを選択パラメータP1として決定)している。同様に、判定対象プロセスのレシピがレシピR2である場合、選択された第2基準プロセスログ25bと、判定対象プロセスのプロセスログとを比較する(相関係数rを算出する)ことで、選択パラメータP2を決定(相関係数rの絶対値が所定の閾値よりも大きいパラメータを選択パラメータP2として決定)している。相関係数rの絶対値と比較する閾値に応じて、各選択パラメータP1、P2として、複数のパラメータが選択される場合もあるし、単数のパラメータが選択される場合もある。また、選択パラメータP1、P2として、互いに完全に同じパラメータが選択される場合もあるし、一部重複するパラメータが選択される場合もあるし、互いに完全に異なるパラメータが選択される場合もある。
【0049】
<学習工程S2>
学習工程S2では、判定部22において、基準プロセスログ25を構成するパラメータのうち選択パラメータを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いた機械学習を行うことで、学習モデル26を生成する。学習モデル26は、入力データが入力された場合に、基板処理装置10のプロセスの成否を出力する構成である。第1実施形態では、プロセスの異常の程度を表す異常度(0~1の値であり、完全に正常である場合には0、完全に異常である場合には1である)が学習モデル26から出力される構成になっている。
第1実施形態の学習モデル26としては、マハラノビス距離を用いた分類器が生成される。マハラノビス距離を用いた分類器の構成は公知の内容と同様であるため、その詳細な説明は省略する。
【0050】
図4に示す例では、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合、第1基準プロセスログ25aを構成するパラメータのうち選択パラメータP1を用いて作成された入力データを教師データの入力として用いた機械学習を行うことで、学習モデル26を生成する。
具体的には、選択部24が、教師データとして、第1基準プロセスログ25aの選択パラメータP1についてプロセスの開始から終了(エッチングの開始から終了)までの間の適宜の時間帯に逐次得られた(例えば、1秒毎に得られた)正規化後のプロセスログを入力とし、異常度が0又は0に近い小さな値を出力としたデータを作成し、判定部22において、この教師データを用いた学習モデル26の機械学習を行うことで、学習モデル26(機械学習後の学習モデル)を生成する。
同様に、判定対象プロセスのレシピがレシピR2である場合、第2基準プロセスログ25bを構成するパラメータのうち選択パラメータP2を用いて作成された入力データを教師データの入力として用いた機械学習を行うことで、学習モデル26を生成する。具体的には、選択部24が、教師データとして、第2基準プロセスログ25bの選択パラメータP2についてプロセスの開始から終了(エッチングの開始から終了)までの間の適宜の時間帯に逐次得られた(例えば、1秒毎に得られた)正規化後のプロセスログを入力とし、異常度が0又は0に近い小さな値を出力としたデータを作成し、判定部22において、この教師データを用いた学習モデル26の機械学習を行うことで、学習モデル26(機械学習後の学習モデル)を生成する。
【0051】
上記の機械学習により、概念的には、例えば、後述の
図10に示すように、選択パラメータを横軸及び縦軸とする座標空間が学習モデル26に生成され、
図10に「d
m=5.0」で示す楕円で囲まれた領域(正常領域)がこの座標空間に描かれることになる。
図10に示す例では、横軸が下部マッチングユニット整合位置No.1であり、縦軸がV
DCである。なお、d
mはマハラノビス距離を意味し、「d
m=5.0」で示す楕円で囲まれた正常領域にプロットされた点は、マハラノビス距離d
mが5.0以下であることを示している。
図10に示す座標空間や楕円は、学習モデル26の機械学習後の状態を概念的に表したものであるものの、このような図をプロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面に実際に表示させる構成を採用すれば、学習結果や判定結果を解析するとき等に有効である。
なお、学習モデル26は、一度の機械学習を行うことで生成されたものに限られない。必要に応じて、新たな教師データを用いて学習モデル26の再学習を行ったり、従来の教師データに新たな教師データを追加して学習モデル26の再学習を行うことも可能である。
【0052】
<判定工程S3>
判定工程S3では、選択部24が、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち選択パラメータを用いて入力データを作成する。
具体的には、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合、選択部24は、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち選択パラメータP1を用いて入力データを作成する。より具体的には、選択部24は、判定対象プロセスのプロセスログの選択パラメータP1についてプロセスの開始から終了(エッチングの開始から終了)までの間の適宜の時間帯に逐次得られた(例えば、1秒毎に得られた)正規化後のプロセスログを入力データとして作成する。
同様に、判定対象プロセスのレシピがレシピR2である場合、選択部24は、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち選択パラメータP2を用いて入力データを作成する。具体的には、選択部24は、判定対象プロセスのプロセスログの選択パラメータP2についてプロセスの開始から終了(エッチングの開始から終了)までの間の適宜の時間帯に逐次得られた(例えば、1秒毎に得られた)正規化後のプロセスログを入力データとして作成する。
【0053】
選択部24は、作成した入力データを学習工程S2後(機械学習後)の学習モデル26に入力する。これにより、概念的に、学習モデル26において、入力データを構成する選択パラメータ(
図10に示す例では、下部マッチングユニット整合位置No.1及びV
DC)の値が、学習時に生成された座標空間にプロットされる。学習モデル26は、プロットされた各点が座標空間に描かれた正常領域内にあるか否かを判定する。そして、学習モデル26は、全ての点の個数に対する正常領域外にある点の個数の割合を異常度として算出し、出力する。
【0054】
第1実施形態の判定部22には、予め閾値Thが設定されている。判定部22は、学習モデル26から出力された異常度が閾値Th未満であれば、判定対象プロセスは正常であると判定し、異常度が閾値Th以上であれば、判定対象プロセスは異常であると判定し、これを最終的な判定結果として出力する。具体的には、最終的な判定結果が正常であれば、出力値=0を出力し、異常であれば、出力値=1を出力する。
そして、例えば、プロセス判定装置20を構成するコンピュータのモニタ画面に、最終的な判定結果が正常であれば、「正常に処理終了しました」、異常であれば、「異常終了しました。処理基板に異常がないか確認して下さい」というような判定結果を表示させたり、異常と判定した場合に警告音を出力する等の態様を採用可能である。判定部22による判定に要する時間は数秒以下であるため、これらの表示や警告音の出力は、判定対象プロセスの終了毎に行ってもよいし、同一のレシピで基板Wを処理する製造ロットの終了毎に行ってもよい。表示や警告音の出力を判定対象プロセスの終了毎に行う場合、オペレータがこれを確認して、最終的な判定結果が異常であれば、次の基板Wを処理しない運用が可能である。また、表示や警告音の出力を製造ロットの終了毎に行う場合、オペレータがこれを確認して、最終的な判定結果が異常であれば、次の製造ロットの基板Wを処理しない運用が可能である。
【0055】
以上に説明した第1実施形態に係る基板処理システム100(プロセス判定装置20)によれば、基板処理装置10のプロセスが正常である場合の基準プロセスログ25と、判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、判定対象プロセスの成否を判定する上で有効な選択パラメータを決定することが可能である。そして、学習モデル26は、基準プロセスログ25を構成するパラメータのうち選択パラメータを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いた機械学習を行うことで生成され、この学習モデル26に対して判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち選択パラメータを用いて作成された入力データが入力されるため、判定対象プロセスの成否を高い判定精度で判定することが可能である。
【0056】
<第2実施形態>
第2実施形態に係る基板処理システムは、製造プロセス判定装置が具備する判定部の構成のみが第1実施形態と異なり、その他の構成は第1実施形態と同様である。
したがって、以下の説明では、第2実施形態に係る基板処理システムが備えるプロセス判定装置について、第1実施形態と異なる点を説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0057】
図6は、第2実施形態に係る基板処理システムが備えるプロセス判定装置の概略構成を示すブロック図である。なお、
図6では、基準プロセスログ25(
図1参照)の記載や、学習モデル26の機械学習に用いる教師データの記載を省略している。
図6に示すように、第2実施形態のプロセス判定装置20Aの判定部22Aは、学習モデル26として、複数個の学習モデルを具備する。
図6に示す例では、判定部22Aは、3個の学習モデル26(学習モデル26a、学習モデル26b、学習モデル26c)を具備する。すなわち、第1実施形態では、生成される学習モデル26が単一の学習モデルであったのに対し、第2実施形態では複数個の学習モデルが生成されている。より具体的には、第1実施形態では、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合、第1基準プロセスログ25aを構成するパラメータのうち選択パラメータP1を用いて作成された入力データを教師データの入力として用いた機械学習を行うことで、単一の学習モデル26が生成されるが、第2実施形態では、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合に、3個の学習モデル26(学習モデル26a、学習モデル26b、学習モデル26c)が生成される。各学習モデル26は、学習工程S2において、例えば、互いに異なる教師データを用いた機械学習によって生成されたものとされる。
異なる教師データの作成方法としては、例えば、判定部22Aに3つの異なる第1基準プロセスログ25aを予め記憶しておき、学習モデル26a、学習モデル26b及び学習モデル26cの機械学習に用いる教師データを、3つの第1基準プロセスログ25aからそれぞれ作成することが考えられる。また、例えば、相関係数rの絶対値と比較する異なる閾値を3つ用意しておき、各閾値を用いて判定部22Aに予め記憶された単一の第1基準プロセスログ25aの選択パラメータP1を別個に決定することで、3つの異なる教師データを作成することも考えられる。さらには、相関係数rの絶対値が大きいパラメータから順に3つの異なる選択パラメータP1を決定し(例えば、後述の
図8(c)に示す例では、「下部マッチングユニット整合位置No.1」、「V
DC」及び「下部高周波電力(反射波電力)」を選択パラメータP1として決定し)、これら3つの選択パラメータP1を用いて、3つの異なる教師データを作成することも考えられる。
また、判定部22Aは、論理和演算部27を具備する。
【0058】
なお、
図6に示す例では、判定部22Aは、3個の学習モデル26を具備するが、これに限るものではなく、2個又は4個以上の学習モデル26を具備することも可能である。また、例えば、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合に3個の学習モデル26を生成し、判定対象プロセスのレシピがレシピR2である場合に2個の学習モデル26を生成するなど、レシピに応じて異なる個数の学習モデル26を具備する構成を採用することも可能である。さらには、特定のレシピについてのみ、複数個の学習モデル26を具備する構成を採用することも可能である。具体的には、例えば、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合に、第1実施形態と同様に単一の学習モデル26を生成し、判定対象プロセスのレシピがレシピR2である場合に3個の学習モデル26を生成する構成を採用することも可能である。ただし、この場合、単一の学習モデル26を具備するレシピR1については、論理和演算部27は用いられず、その単一の学習モデル26の出力が最終的な判定結果となる。
【0059】
第2実施形態では、判定工程S3において、判定部22Aが、複数個の学習モデル26を用いて判定対象プロセスの成否を判定する。
図6に示す例では、学習モデル26a、学習モデル26b及び学習モデル26cのそれぞれに、選択部24で作成した入力データを入力して、判定対象プロセスの成否を判定する。各学習モデル26に入力する入力データは、各学習モデル26の機械学習に用いた選択パラメータと同じ選択パラメータを用いて作成される。
【0060】
図6に示す学習モデル26a~学習モデル26cのそれぞれからは、第1実施形態の学習モデル26と異なり、算出した異常度を所定の閾値Thと比較した結果を論理和演算部27に対して出力する。すなわち、算出した異常度が閾値Th未満であれば、出力値=0を出力し、閾値Th以上であれば、出力値=1を出力するように構成されている。
図6に示す例では、論理和演算部27は、学習モデル26a、学習モデル26b及び学習モデル26cの出力値の論理和を演算し、その結果を最終的な判定結果として出力する。すなわち、学習モデル26a、学習モデル26b及び学習モデル26cの出力値のうち、少なくとも1つの学習モデルの出力値=1であれば、出力値=1を最終的な判定結果として出力する。換言すれば、学習モデル26a、学習モデル26b及び学習モデル26cの判定結果のうち、少なくとも1つの判定結果が異常(出力値=1)であれば、異常であることを最終的な判定結果として出力する。
【0061】
以上に説明した第2実施形態に係る基板処理システム(プロセス判定装置20A)によれば、複数個の学習モデル26を用いて判定対象プロセスの成否を判定する(複数個の学習モデル26のそれぞれから出力される判定対象プロセスの成否に応じて、最終的な判定対象プロセスの成否を判定する)ため、単一の学習モデル26を具備する第1実施形態の構成に比べて、判定精度の信頼性を高めることが可能である。
特に、第2実施形態では、論理和演算部27によって、少なくとも1つの学習モデル26の判定結果が異常であれば、残りの学習モデル26の判定結果が正常であったとしても、最終的な判定結果が異常となるため、異常を見逃す可能性が低減するという利点を有する。
【0062】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る基板処理システムは、プロセス判定装置が具備する判定部の構成のみが第2実施形態と異なり、その他の構成は第2実施形態と同様である。
したがって、以下の説明では、第3実施形態に係る基板処理システムが備えるプロセス判定装置について、第2実施形態と異なる点を説明し、同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0063】
図7は、第3実施形態に係る基板処理システムが備えるプロセス判定装置の概略構成を示すブロック図である。なお、
図7では、基準プロセスログ25(
図1参照)の記載や、学習モデル26の機械学習に用いる教師データの記載を省略している。
図7に示すように、第3実施形態のプロセス判定装置20Bの判定部22Bも、第2実施形態のプロセス判定装置20Aの判定部22Aと同様に、学習モデル26として、複数個の学習モデルを具備する。
図7に示す例では、判定部22Bは、3個の学習モデル26(学習モデル26a、学習モデル26b、学習モデル26c)を具備する。
しかしながら、第3実施形態の判定部22Bは、第2実施形態の判定部22Aが具備する論理和演算部27に代えて、多数決決定部28を具備する点が相違する。
【0064】
図7に示す例では、多数決決定部28は、学習モデル26a、学習モデル26b及び学習モデル26cの出力値の多数決を最終的な判定結果として出力する。例えば、学習モデル26aの出力値=0(正常)であり、学習モデル26bの出力値=0(正常)であり、学習モデル26cの出力値=1(異常)であれば、多数決決定部28は、出力値=0(正常)を最終的な判定結果として出力することになる。
【0065】
なお、複数個の学習モデル26が偶数個の学習モデル26である場合、同じ判定結果を出力する学習モデル26の個数が同数になる可能性がある。同数になった場合には、予め決めた判定結果を最終的な判定結果として出力することが考えられる。例えば、判定部22Bが4個の学習モデル26を具備し、何れか2個の学習モデル26が正常であると判定し、残りの2個の学習モデル26が異常であると判定した場合には、同数であるため、最終的な判定結果を異常とすることを予め決めておけばよい。
【0066】
以上に説明した第3実施形態に係る基板処理システム(プロセス判定装置20B)によれば、第2実施形態と同様に、複数個の学習モデル26を用いて判定対象プロセスの成否を判定する(複数個の学習モデル26のそれぞれから出力される判定対象プロセスの成否に応じて、最終的な判定対象プロセスの成否を判定する)ため、単一の学習モデル26を具備する第1実施形態の構成に比べて、判定精度の信頼性を高めることが可能である。
特に、第3実施形態では、多数決決定部28によって、複数個の学習モデル26の判定結果の多数決を最終的な判定結果とするため、複数個の学習モデル26の中に、仮に判定精度の低い学習モデル26が含まれていたとしても、最終的な判定結果の判定精度に信頼性をもたせることが可能である。
【0067】
以下、第1実施形態に係る基板処理システム100の基板処理装置10によって基板Wをエッチングし、プロセス判定装置20によってプロセスの成否を判定する試験を行った結果の一例について説明する。
【0068】
図8は、本試験において、基準プロセスログ25(第1基準プロセスログ25a)を構成するパラメータと、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータとの相関係数を算出した結果の一例を示す図である。
図8(a)は、基準プロセスログ25を取得したプロセス及び判定対象プロセスのレシピを示す図である。
図8(b)は、基準プロセスログ25を取得したプロセス及び判定対象プロセスの説明図である。
図8(c)は相関係数の算出結果を示す図である。
本試験では、
図8(a)に示すレシピR1によって基板Wをエッチングし、
図8(b)に示すように、何れも正常であることをオペレータが確認(基板Wに施されたエッチングの深さが所望する範囲内にあったことをオペレータが確認)した製造ロットNo.1(計6枚の基板W)及びNo.2(計6枚の基板W)について得られたプロセスログを基準プロセスログ25として用いた。また、
図8(a)に示すレシピR1によって基板Wをエッチングした、
図8(b)に示す製造ロットNo.3(計8枚の基板W)のうち、6枚目の基板Wについて得られたプロセスログを判定対象プロセスのプロセスログとして用いた。
そして、基準プロセスログ25を構成するパラメータと、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータとの相関係数rを算出したところ、
図8(c)に示す結果が得られた。
【0069】
図9は、
図8(c)の横軸に示すパラメータのうち、V
DC及び温度No.1-2についての、基準プロセスログ25の値及び判定対象プロセスのプロセスログの値を示す図である。
図9(a)はV
DCについての基準プロセスログ25の値及び判定対象プロセスのプロセスログの値を示す図であり、
図9(b)は温度No.1-2についての基準プロセスログ25の値及び判定対象プロセスのプロセスログの値を示す図である。
図9(a)に示すV
DCのように、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータの値が、基準プロセスログ25を構成する同じパラメータの値と大きく異なる(パラメータの値の分布が大きく異なる)場合、このパラメータ間の相関係数rの絶対値は大きくなる。一方、
図9(b)に示す温度No.1-2のように、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータの値が、基準プロセスログ25を構成する同じパラメータの値と同等である(パラメータの値の分布が同等である)場合、このパラメータ間の相関係数rの絶対値は小さくなる。このため、相関係数rの絶対値が所定の閾値よりも大きいパラメータを選択パラメータとして決定することで、判定対象プロセスの成否を判定する上で有効な選択パラメータを決定することが可能である。
【0070】
本試験では、
図8(c)の横軸に示すパラメータのうち、相関係数rの絶対値が所定の閾値よりも大きな(相関係数rの絶対値が1番目及び2番目に大きな)下部マッチングユニット整合位置No.1及びV
DCを選択パラメータとして決定した。そして、基準プロセスログ25を構成するパラメータのうち、選択パラメータである下部マッチングユニット整合位置No.1及びV
DCを用いて作成された入力データを教師データの入力として用いて学習モデル26の機械学習を行った。具体的には、下部マッチングユニット整合位置No.1及びV
DCの正規化後のプロセスログを入力とし、異常度=0を出力とした教師データを用いて学習モデル26の機械学習を行った。
図10は、本試験における機械学習の結果及び判定結果を説明する説明図である。
図10に「●」でプロットした点が教師データとして用いたプロセスログであり、「×」でプロットした点が判定対象プロセスのプロセスログである。
図10に示すように、学習モデル26の機械学習の結果、概念的に、横軸を下部マッチングユニット整合位置No.1とし、縦軸をV
DCとする座標空間が学習モデル26に生成され、
図10に楕円で示すように、正常であると考えられる領域(正常領域)がこの座標空間に描かれた。この座標空間にプロットされた「●」の点は、全て正常領域である楕円の内側に位置しており(すなわち、異常度=0)、機械学習が適切に行われたことが分かる。
【0071】
そして、機械学習後の学習モデル26に対し、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータのうち、選択パラメータである下部マッチングユニット整合位置No.1及びV
DCの正規化後のプロセスログを入力データとして入力することで、判定対象プロセスの成否を判定した。
図10に示すように、概念的に生成される座標空間にプロットされた「×」の点のほぼ全てが、正常領域である楕円の外側に位置しており、異常度≒1(すなわち、異常)と正しく判定されることが分かった。
【0072】
なお、以上に説明した第1実施形態~第3実施形態では、判定対象プロセス終了後に、判定部22、22A、22Bが選択パラメータ設定工程S1~判定工程S3を実行する態様について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、判定対象プロセスの途中で各工程S1~S3を実行することも可能である。例えば、判定部22、22A、22Bの各工程S1~S3を実行するのに要する時間が許す限りにおいて、プロセスログ取得部21でプロセスログを逐次取得するタイミングで(例えば、1秒毎に)、或いは、その数倍のピッチで(例えば、数秒毎に)、各工程S1~S3を実行する態様が考えられる。判定対象プロセスの途中で各工程S1~S3を実行する場合には、
図4に示す「判定対象プロセス終了」が「終了」の一つだけ上流側の位置(判定工程S3の一つだけ下流側の位置)に移動する動作手順となる。判定対象プロセスの途中で各工程S1~S3を実行する場合、判定結果が異常であれば、その直後、すなわち、判定対象プロセスの途中で基板Wの処理を中止することができ、基板Wの歩留まりが向上することが期待できる。
【0073】
また、第1実施形態~第3実施形態では、何れの学習モデル26もマハラノビス距離を用いた分類器である態様について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、学習モデル26として、サポートベクタマシンや、ニューラルネットワーク(オートエンコーダを含む)を用いることも可能である。また、判定対象プロセスのレシピがレシピR1である場合には、学習モデル26としてマハラノビス距離を用いた分類器を生成し、判定対象プロセスのレシピがレシピR2である場合には、学習モデル26としてサポートベクタマシンを用いるなど、判定対象プロセスのレシピに応じて異なる形式の学習モデル26を生成することも可能である。
【0074】
また、第1実施形態~第3実施形態では、判定部22、判定部22A及び判定部22Bが、何れも正規化部23を具備する構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。判定部22、判定部22A及び判定部22Bが正規化部23を具備せず、プロセスログ取得部21によって取得したプロセスログを正規化せずに、そのまま用いて入力データを作成することも可能である。
【0075】
また、第1実施形態~第3実施形態では、選択部24が、基準プロセスログ25と、判定対象プロセスのプロセスログとを比較する態様として、基準プロセスログ25を構成するパラメータと、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータとの相関係数rを算出する場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、基準プロセスログ25を構成するパラメータの平均値と、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータの平均値とを比較し、両者の差が大きいパラメータを選択パラメータとして決定する態様を採用することも可能である。同様に、基準プロセスログ25を構成するパラメータの分散と、判定対象プロセスのプロセスログを構成するパラメータの分散とを比較し、両者の差が大きいパラメータを選択パラメータとして決定する態様を採用することも可能である。
【0076】
さらに、第1実施形態~第3実施形態では、プロセス判定装置20を適用する基板処理装置10が誘導結合プラズマ方式のプラズマ処理装置である場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限るものではない。例えば、容量結合プラズマ(CCP)方式のプラズマ処理装置に適用することも可能であるし、プラズマ処理装置以外の基板処理装置に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・チャンバ
2・・・載置台
10・・・基板処理装置
20、20A、20B・・・プロセス判定装置
21・・・プロセスログ取得部
22、22A、22B・・・判定部
23・・・正規化部
24・・・選択部
25・・・基準プロセスログ
26・・・学習モデル
27・・・論理和演算部
28・・・多数決決定部
100・・・基板処理システム
W・・・基板
【要約】
【課題】プロセスの成否を高い判定精度で判定することが可能な基板処理装置のプロセス判定装置等を提供する。
【解決手段】プロセス判定装置20は、プロセスの成否を判定する判定部22を備える。判定部は、機械学習を行うことで生成される学習モデル26を具備する。判定部は、基板処理装置10のプロセスが正常である場合の基準プロセスログ25と、判定対象プロセスのプロセスログとを比較することで、選択パラメータを決定し、基準プロセスログの選択パラメータを用いた入力データを教師データの入力として用いて学習モデルの機械学習を行い、学習後の学習モデルに対し、判定対象プロセスのプロセスログの選択パラメータを用いた入力データを入力することで、判定対象プロセスの成否を判定する。
【選択図】
図1