(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-15
(45)【発行日】2022-03-24
(54)【発明の名称】電力線障害の決定
(51)【国際特許分類】
G01R 31/08 20200101AFI20220316BHJP
【FI】
G01R31/08
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021133480
(22)【出願日】2021-08-18
【審査請求日】2021-11-25
(32)【優先日】2020-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヨウイー・リー
(72)【発明者】
【氏名】ジエンピン・ワン
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0004103(US,A1)
【文献】特表2018-535633(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0142964(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0293705(US,A1)
【文献】特開昭60-204219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/08
G01R 31/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力線(PL)の保護領域(領域1)の障害を決定する方法であって、
-前記電力線(PL)の一端の測定点(L)における電圧および電流の測定値(u(t)、i(t))を取得すること(20)と、
-少なくとも2つの並列処理ブランチを含むいくつかの並列処理ブランチにおいて前記測定値を処理することと、を含み、各ブランチにおける前記処理は、
-フィルタリングされた測定値の対応するセットを取得するために、対応するローパスフィルタ(LPF
1、LPF
2、LPF
N)で前記測定値をフィルタリングする(22、24、26)ことであって、これらの並列処理ブランチにおける前記ローパスフィルタのカットオフ周波数(f
1、f
2、f
N)は互いに異なる、フィルタリングする(22、24、26)ことと、
-対応する到達点量(QSQ
1、QSQ
2、QSQ
N)を取得するために、前記フィルタリングされた測定値に対して到達計算を実行する(28、30、32)ことと、
-前記到達点量(QSQ
1、QSQ
2、QSQ
N)を対応する閾値(S
1、S
2、S
N;PG
1、SG
1、PG
2、SG
2、PG
N、SG
N)と比較する(34、36、38;34A、34B、36A、36B、38A、38B)こととを含み、前記方法は、
-前記並列処理ブランチのいずれかにおいて前記閾値のいずれかを超えた場合に、前記電力線の前記保護領域(領域1)内に障害があると決定する(40;40A、40B)ことを含む、方法。
【請求項2】
前記到達計算は、前記電力線(PL)の到達点(q)における増分到達点量の時間領域における計算である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記並列ブランチにおける前記処理の開始は、互いに関連して0~100μsの時間スパン内に行われ、次いで、前記ブランチにおける前記処理は、障害決定が行われるまで続行する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
障害の第1のタイプ(FT
1)に対する1次閾値のグループ(PG
1、PG
2、PG
N)を含む各ブランチ内の閾値のセットがある
、請求項
1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記各ブランチ内の閾値のセットは、障害の第2のタイプ(FT
2)に対する2次閾値のグループ(SG
1、SG
2、SG
N)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記障害の第1のタイプ(FT
1)は相対接地障害であり、前記障害の第2のタイプ(FT
2)は相対相障害である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
各ブランチにおける前記到達計算は、相対接地ループ計算および相対相ループ計算を含み、特に、前記到達点量(QSQ
1、QSQ
2、QSQ
N)を対応する閾値(S
1、S
2、S
N;PG
1、SG
1、PG
2、SG
2、PG
N、SG
N)と比較することは、前記相対接地ループ計算を対応する1次閾値と比較することと、前記相対相ループ計算を対応する2次閾値と比較することと、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
相対接地ループ量比(R
A、R
B、R
C)および相対相ループ量比(R
AB、R
BC、R
CA)を計算する(50)ことと、前記比(R
A、R
B、R
C、R
AB、R
BC、R
CA)を対応する閾値(TPQR1、TPQR2、TIQR1、TIQR2)と比較することと、前記比の前記比較に基づいて障害のタイプを決定することと、をさらに含む
、請求項
1から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記比を計算することは、相対接地ループ量を前記相対接地ループ量の最小値で割ることと、相対相ループ量を前記相対相ループ量の最小値で割ることと、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
いくつかの相対接地ループ量の各々およびいくつかの相対相ループ量の各々を対応する超過量閾値(EQT)と比較する(48)ことと、前記超過量閾値のうちの少なくとも1つを超えたと決定することと、をさらに含む、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記相対接地ループ量比(R
A、R
B、R
C)がすべて第1の相対接地ループ閾値(TPL1)を下回り、前記相対相ループ量比(R
AB、R
BC、R
CA)がすべて第1の相対相ループ閾値(TPPL1)を下回る場合、およびすべてのループ内のすべての前記計算された量がそれらの対応する超過量閾値(EQT)を超え、ゼロシーケンス量が対応するゼロシーケンス量閾値(QZT)を下回る場合、三相障害と決定される(76)、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
特定の相を含む前記相対接地ループ量比(R
A)の1つが他の相対接地ループ量比(R
B、R
C)よりも大きく、同じ相を含む前記相対相ループ量比(R
AB、R
CA)も残りの相対相ループ量比(R
BC)よりも大きい場合、ならびに前記特定の相の前記計算された相対接地ループ量および同じ相を含む前記計算された相対相ループ量がそれらの対応する超過量閾値(EQT)を超え、ゼロシーケンス量(QZ)が対応するゼロシーケンス量閾値(QZT)を超える場合、単相対接地障害と決定される(78)、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記相対接地ループ量比(R
A)の1つが他の2つの相対接地ループ量比(R
B、R
C)よりも小さく、すべての前記相対相ループ量比(R
AB、R
BC、R
CA)が対応する第2の相対相ループ閾値よりも小さい場合、ならびにすべての計算された増分相対相ループ量および前記他の2つの相対接地ループ量比に関連する前記計算された相対接地ループ量がそれらの対応する超過量閾値(EQT)を超え、ゼロシーケンス量(QZ)が対応するゼロシーケンス量閾値(QZT)を超える場合、二相対接地障害と決定される(80)、請求項10から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記相対接地ループ量比(R
B、R
C)の2つが残りの相対接地ループ量比(R
A)よりも大きく、すべての前記相対相ループ量比(R
AB、R
BC、R
CA)が対応する第2の相対相ループ閾値よりも小さい場合、ならびにすべての計算された増分相対相ループ量および前記2つの相対接地ループ量比に関連する前記計算された相対接地ループ量がそれらの対応する超過量閾値(EQT)を超え、ゼロシーケンス量(QZ)が対応するゼロシーケンス量閾値(QZT)を下回る場合、二相障害と決定される(82)、請求項10から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
電力線(PL)の保護領域(領域1)の障害を決定するための装置(10)であって、前記装置(10)は、
-前記電力線(PL)の一端の測定点(L)における電圧および電流の測定値(u(t)、i(t))を取得し、
-少なくとも2つの並列処理ブランチを含むいくつかの並列処理ブランチにおいて前記測定値を処理するように構成され、各ブランチにおける前記処理は、
-フィルタリングされた測定値の対応するセットを取得するために、対応するローパスフィルタ(LPF
1、LPF
2、LPF
N)で前記測定値をフィルタリングすることであって、これらの並列処理ブランチにおける前記ローパスフィルタのカットオフ周波数(f
1、f
2、f
N)は互いに異なる、フィルタリングすることと、
-対応する到達点量(QSQ
1、QSQ
2、QSQ
N)を取得するために、前記フィルタリングされた測定値に対して到達計算を実行することと、
-前記到達点量(QSQ
1、QSQ
2、QSQ
N)を対応する閾値(S
1、S
2、S
N;PG
1、SG
1、PG
2、SG
2、PG
N、SG
N)と比較することと、を含み、
-前記並列処理ブランチのいずれかにおいて前記閾値のいずれかを超えた場合に、前記電力線の前記保護領域(領域1)内に障害があると決定することを含む、装置(10)。
【請求項16】
電力線(PL)の保護領域(領域1)の障害を決定するためのコンピュータプログラム製品であって、前記コンピュータプログラム製品はコンピュータプログラムコード(86)を含むデータキャリア(84)に提供され、前記コンピュータプログラムコード(86)は、プロセッサ(17)によって操作されているときに前記プロセッサ(17)に、
-前記電力線(PL)の一端の測定点(L)における前記電力線(PL)の電圧および電流の測定値(u(t)、i(t))を取得させ、
-少なくとも2つの処理ブランチを含むいくつかの並列処理ブランチにおいて前記測定値を処理させるように構成され、各ブランチにおける前記処理は、
-フィルタリングされた測定値の対応するセットを取得するために、対応するローパスフィルタ(LPF
1、LPF
2、LPF
N)で前記測定値をフィルタリングすることであって、これらの並列処理ブランチにおける前記ローパスフィルタのカットオフ周波数(f
1、f
2、f
N)は互いに異なる、フィルタリングすることと、
-対応する到達点量(QSQ
1、QSQ
2、QSQ
N)を取得するために、前記フィルタリングされた測定値に対して到達計算を実行することと、
-前記到達点量(QSQ
1、QSQ
2、QSQ
N)を対応する閾値(S
1、S
2、S
N;PG
1、SG
1、PG
2、SG
2、PG
N、SG
N)と比較することとを含み、
-前記並列処理ブランチのいずれかにおいて前記閾値のいずれかを超えた場合に、前記電力線の前記保護領域(領域1)内に障害があると決定することを含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、一般に、電力線障害の決定に関する。本発明は、より詳細には、電力線障害を決定するための方法、装置、およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術
電力線の障害の決定は、送電および配電システムにおける重要な側面である。これを行うために、フェーザ領域ベースの距離保護を使用するなど、いくつかの異なる方法が存在する。
【0003】
使用するのに興味深い方式の1つのタイプは、国際公開第2017/177424号パンフレットに記載されている時間領域距離保護方式である。この方式は、フェーザ領域ベースの保護方式と比較して高速であるという利点を有する。しかしながら、未だ改善の余地がある。
【0004】
本発明の態様は、時間領域距離保護方式を改善することを対象とする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明の1つの目的は、時間領域距離保護方式を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、電力線の保護領域における障害を決定する方法によって達成される第1の態様による。方法は、
-電力線の一端の測定点における電圧および電流の測定値を取得することと、
-少なくとも2つの並列処理ブランチを含むいくつかの並列処理ブランチにおいて測定値を処理することと、を含み、各ブランチにおける処理は、
-フィルタリングされた測定値の対応するセットを取得するために、対応するローパスフィルタで測定値をフィルタリングすることであって、これらの並列処理ブランチにおけるローパスフィルタのカットオフ周波数は互いに異なる、フィルタリングすることと、
-対応する到達点量を取得するために、フィルタリングされた測定値に対して到達計算を実行することと、
-到達点量を対応する閾値と比較することとを含み、方法は、
-並列処理ブランチのいずれかにおいて閾値のいずれかを超えた場合に、電力線の保護領域内に障害があると決定すること、を含む。
【0007】
この目的は、電力線の保護領域における障害を決定するための装置を通じて達成される第2の態様によるものであり、ここで、装置は、
-電力線の一端の測定点における電圧および電流の測定値を取得し、
-少なくとも2つの並列処理ブランチを含むいくつかの並列処理ブランチにおいて測定値を処理するように構成され、各ブランチにおける処理は、
-フィルタリングされた測定値の対応するセットを取得するために、対応するローパスフィルタで測定値をフィルタリングすることであって、これらの並列処理ブランチにおけるローパスフィルタのカットオフ周波数は互いに異なる、フィルタリングすることと、
-対応する到達点量を取得するために、フィルタリングされた測定値に対して到達計算を実行することとを含み、装置は、
-並列処理ブランチのいずれかにおいて閾値のいずれかを超えた場合に、電力線の保護領域内に障害があると決定するように構成される。
【0008】
この目的は、電力線の保護領域における障害を決定するためのコンピュータプログラム製品を通じて達成される第3の態様によるものであり、ここで、コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムコードを含むデータキャリア上で提供され、コンピュータプログラムコードは、コンピュータプログラムコードがプロセッサによって操作されているときに、プロセッサに、
-電力線の一端の測定点における電圧および電流の測定値を取得させ、
-少なくとも2つの並列処理ブランチを含むいくつかの並列処理ブランチにおいて測定値を処理させるように構成され、各ブランチにおける処理は、
-フィルタリングされた測定値の対応するセットを取得するために、対応するローパスフィルタで測定値をフィルタリングすることであって、これらの並列処理ブランチにおけるローパスフィルタのカットオフ周波数は互いに異なる、フィルタリングすることと、
-対応する到達点量を取得するために、フィルタリングされた測定値に対して到達計算を実行することとを含み、プロセッサに、
-並列処理ブランチのいずれかにおいて閾値のいずれかを超えた場合に、電力線の保護領域内に障害があると決定させるように構成される。
【0009】
電力線の保護領域における障害の決定は、時間領域距離保護方式を使用して行われ得る。この方式Aは、所与の電力線上の保護領域におけるすべての障害を検出するように設計することができる。保護された領域は、領域1と呼ぶことができ、領域1は、電力線の一端の測定位置と、領域1の境界として知られる到達点との間の長さである。到達点は、通常、電力線長の80%に設定される。領域1内のすべての障害は内部障害として定義されているため、領域1保護機能はこれらの障害を検出してトリップする必要がある。領域1の外のすべての障害は外部障害と見なされるため、領域1の保護方式はトリップしない。
【0010】
異なるブランチで決定される到達点量は同じであってもよい。しかしながら、これらの到達点量の値は、ブランチ間で異なり得る。それにより、フィルタリングされた測定値のセットに対応する到達点量は、互いに異なるブランチの到達点量値を介して、フィルタリングされた測定値の別のセットに対応する到達点量とは異なり得る。
【0011】
各並列ブランチで使用されるカットオフ周波数は、低周波値から高周波値まで互いに異なる。より低いカットオフ周波数フィルタを有する到達計算ループの閾値は、より高いカットオフ周波数フィルタを有する到達計算ループの対応する閾値より低くてもよい。
【0012】
本発明の文脈において、いくつかの並列処理ブランチにおける処理は、各ブランチにおける処理、例えばそれぞれの測定値のフィルタリングが、互いに対して同時に、または互いに対して最大100μsの遅延内で開始することを意味し得る。これにより、並列ブランチにおける処理は、互いに対して0~100μsの時間スパン内で開始され得る。処理の開始後、すなわちフィルタリングの後、各ブランチにおける処理は、障害決定が行われるまで、互いに非同期または同期して続行することができる。さらに、対応する閾値を最初に超えた比較について、障害があると決定される可能性がある。
【0013】
到達計算は、電力線の到達点における量の時間領域における計算であってもよい。この量は、到達点量であってもよい。さらに、到達点量は、周期性を伴って繰り返される正弦波波形などの波形の量であってもよい。したがって、それらは、波形の基本周波数に対応する周期を有することができる。到達点量は、特に、時間領域における増分到達点量であってもよい。量は、現在の到達点量値と前の期間の対応する到達点量値との間の差であってもよい。到達点量は電圧であってもよい。
【0014】
到達点量は、相対接地ループ量または相対相ループ量として計算することができ、ここで、相対接地ループ量は、相対接地ループの電圧などの量であり、相対相ループ量は、相対相ループの電圧などの量である。各処理ブランチはさらに、電力線のすべての相対接地ループおよびすべての相対相ループについて到達計算を実行することができる。
【0015】
電力線障害を決定する電力線の一端における測定点は、電力線のこの端に設けられた保護リレーのローカル点である。異なるカットオフ周波数を有するすべての並列ブランチは、電力線全体の意図される到達長に関連付けられる。
【0016】
対応するカットオフ周波数を有する各並列処理ブランチにおける各到達点量の絶対値が、内部障害を検出するために対応する閾値と比較されることも可能である。
【0017】
ブランチで使用される閾値は、互いに同じであっても異なっていてもよく、1つの有利な変形例によれば、フィルタリングされた測定値の第1のセットが、フィルタリングされた測定値の第2のセットよりも高いカットオフ周波数でフィルタリングされている場合、第1のブランチで使用される閾値は、第2のブランチで使用される対応する閾値よりも高くてもよい。
【0018】
到達点量およびその対応する閾値は、電力線の特定の相対接地ループまたは特定の相対相ループに対して設けられてもよい。したがって、到達計算は、相対接地ループ計算および相対相ループ計算を含む。
【0019】
各ブランチに閾値のセットが存在してもよく、ここで、各セットは、第1のタイプの障害のための1次閾値のグループおよび/または第2のタイプの障害のための2次閾値のグループを含んでもよい。第1のタイプの障害は相対接地障害であってもよく、第2のタイプの障害は相対相障害であってもよい。
【0020】
それにより、各ブランチにおける到達計算は、相対接地ループ計算および相対相ループ計算を含むことができる。特に、到達点量を対応する閾値と比較することは、相対接地ループ計算を対応する1次閾値と比較することと、相対相ループ計算を対応する2次閾値と比較することと、を含むことができる。1次閾値のグループ内の閾値は、2次閾値のグループ内の閾値とは異なる値をさらに有してもよい。
【0021】
方法は、障害タイプが検出される相選択方式をさらに含むことができる。
相選択方式は、相対接地ループ量および相対相ループ量の比を計算すること、すなわち、相対接地ループ量比および相対相ループ量比を決定することと、比を対応する閾値と比較することと、比の比較に基づいて障害のタイプを決定することと、を含むことができる。
【0022】
比を計算することは、相対接地ループ量を相対接地ループ量の最小値で割ることと、相対相ループ量を相対相ループ量の最小値で割ることと、を含むことができる。
【0023】
比は、増分相対接地ループ量および増分相対相ループ量の比であってもよい。したがって、それらは、増分量比であると考えることもできる。
【0024】
増分量は、現在の量の値と前の期間の対応する量の値との差であってもよい。増分量の計算は、電流にさらに基づくことができる。しかしながら、増分量の計算は電圧に基づくこともできる。
【0025】
方法は、いくつかの相対接地ループ量の各々およびいくつかの相対相ループ量の各々を対応する超過量閾値と比較するステップをさらに含むことができる。比の計算に先行して、相対接地ループ量および相対相ループ量を対応する超過量閾値と比較することが有利であり得る。
【0026】
超過量閾値のいずれかを超えた場合、相選択方式の実行はさらに行われてもよい。これにより、比の計算に先行して起動機能を実行することができ、ここで、起動機能は、いくつかの相対接地ループ量の各々およびいくつかの相対相ループ量の各々を対応する超過量閾値と比較することを含む。これにより、起動機能は、超過量閾値のうちの少なくとも1つを超えたと決定し、その後、相セクション方式を開始することができる。
【0027】
したがって、相選択方式は、起動機能によって先行されてもよく、ここで、起動機能における処理の特定の結果は、相選択方式の実行をトリガしてもよい。起動機能が電力線上に障害または外乱があることを示すように動作する場合にのみ、装置または方法は、障害タイプを検出するための相選択方式をさらに実行することができる。
【0028】
方法は、ゼロシーケンスまたはゼロモード量が存在するかどうかを決定するステップをさらに含むことができ、装置は、接地ループを用いて障害タイプを検出するためのゼロシーケンス電流が存在するかどうかを決定するようにさらに構成することができる。ゼロシーケンスまたはゼロモード量があるかどうかの決定は、ゼロシーケンスまたはゼロモード量をゼロシーケンス量閾値と比較することを含み得る。
【0029】
相対接地ループ量比がすべて第1の相対接地ループ閾値を下回り、相対相ループ量比がすべて第1の相対相ループ閾値を下回る場合、およびすべてのループ内のすべての計算された量がそれらの対応する超過量閾値を超え、ゼロシーケンス量がゼロシーケンス量閾値を下回る場合、三相障害と決定され得る。
【0030】
特定の相を含む相対接地ループ量比が他の相対接地ループ量比よりも大きく、同じ特定の相を含む相対相ループ量比も残りの相対相ループ量比よりも大きい場合、ならびに前記特定の相の計算された相対接地ループ量および同じ特定の相を含む計算された相対相ループ量がそれらの対応する超過量閾値を超え、ゼロシーケンス量がゼロシーケンス量閾値を超える場合、単相対接地障害と決定され得る。
【0031】
相対接地ループ量比のうちの1つが他の2つの相対接地ループ量比よりも小さく、すべての相対相ループ量比が対応する第2の相対相ループ閾値よりも小さい場合、ならびにすべての計算された相対相ループ量および他の2つの相対接地ループ量比に関連する計算された相対接地ループ量がそれらの対応する超過量閾値を超え、ゼロシーケンス量がゼロシーケンス量閾値を超える場合、二相対接地障害と決定され得る。
【0032】
相対接地ループ量比のうちの2つが残りの相対接地ループ量比よりも大きく、すべての相対相ループ量比が対応する第2の相対相ループ閾値よりも小さい場合、ならびにすべての計算された相対相ループ量および2つの相対接地ループ量比に関連する計算された相対接地ループ量がそれらの対応する超過量閾値を超え、ゼロシーケンス量がゼロシーケンス量閾値を下回る場合、二相障害と決定され得る。
【0033】
本発明は、いくつかの利点を有する。これにより、電力線の障害を迅速かつ確実に決定することができる。
【0034】
図面の簡単な説明
本発明は、以下において、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】変流器および変圧器を介して保護リレーに接続された電力線を概略的に示す。
【
図2】到達計算モジュールと、相選択モジュールと、トリッピングモジュールとを含む保護リレーを概略的に示す。
【
図3】到達計算モジュールと、相選択モジュールと、トリッピングモジュールとを実装するための保護リレーの代替的な実現を概略的に示す。
【
図4】到達点が示された電力線の三相伝送線図を示す。
【
図5】到達計算モジュールによって実行されている電力線障害を決定する方法の第1の変形例におけるいくつかの要素のフローチャートを概略的に示す。
【
図6】到達計算モジュールによって実行されている電力線障害を決定する方法の第2の変形例におけるいくつかの要素のフローチャートを概略的に示す。
【
図7】1つまたは複数の障害相を示すための相選択方式において相選択モジュールによって実行されているいくつかの要素のフローチャートを概略的に示す。
【
図8】相セクション方式で障害のタイプを決定する方法を概略的に示す。
【
図9】到達計算モジュールおよび相選択モジュールを実装するための、CD-ROMディスクの形態の、コンピュータプログラムコードを有するデータキャリアを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
発明を実施するための形態
本発明の実施形態を以下に詳細に説明する。実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語が使用される。しかしながら、本発明は、そのように選択された特定の専門用語に限定されることを意図しない。特定の例示的な実施形態が説明されているが、これは例示のみを目的として行われることを理解されたい。当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、他の構成要素および構成を使用できることを認識するであろう。
【0037】
本発明は、一般に、電力線における障害の処理に関する。
図1は、2つの電圧源、すなわちローカル点Lにある第1のローカル電圧源V
Lと遠隔点Rにある第2の電圧源V
Rとの間に接続された電力線PLを概略的に示す。ローカル点Lには、電力線障害を決定するための装置もある。この例では、装置は、電力線の一端の測定点において変流器CTおよび変圧器VTを介して電力線PLに接続された保護リレー10として実装され、この測定点は上述のローカル点Lである。保護リレー10は、多くの場合サンプリング時間で示される離散的な時点または時間インスタンスにおいて、電力線PLの電流i(t)および電圧v(t)を測定する。図には、ローカル点Lと遠隔点Rとの間の電力線上の第1の障害F1、および遠隔点Rと第2の電圧源V
Rとの間の第2の障害F2も示されている。第1の障害F1と遠隔点Rとの間にも到達点qがある。到達点qは、通常、この保護リレー10が障害を処理する、保護リレー10から最も遠い電力線PL上の点である。実際には、領域1保護範囲として知られており、これは通常、所与の電力線の線長の約80%である。これにより、到達点は上述の保護領域境界を画定する。第1の障害F1は、バスRとバスLとの間に接続された電力線に発生するため内部障害として知られ、このため通常は保護リレー10によって処理されるべきであり、一方、RとLとF2との間の電力線(PL)の外側にある第2の障害F2は外部障害として知られており、他の装置によって処理されるべきである。
【0038】
図2は、保護リレー10のいくつかの態様の1つの実現を概略的に示す。保護リレー10は、到達計算に基づいて電力線障害決定を実施するための到達計算モジュールRCM12と、相選択方式を実施するための相選択モジュールPSM14と、電力線PLのトリップのためのトリッピングモジュールTM16とを含む。トリッピングモジュール16は、電力線PLをトリップさせるための回路遮断器に接続されてもよい。場合によっては、保護リレー10がそのような回路遮断器を含むことも可能である。
【0039】
到達計算モジュール12、相選択モジュール14、およびトリッピングモジュール16の機能は、特定用途向け集積回路(ASIC)またはフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)などの少なくとも1つの集積回路に実装されてもよい。代替として、モジュールは、モジュール機能を実装する1つまたは複数のコンピュータメモリ内のコンピュータプログラム命令に作用する1つまたは複数のプロセッサとして実現されてもよい。
図3は、プロセッサPR17およびメモリ18が存在し、プロセッサ17がモジュールを実装するメモリ18内のコンピュータ命令に作用する、保護リレー10内のモジュールの代替的な実現を示す。
【0040】
到達計算モジュールは、到達計算に基づいて内部電力線障害を決定し、到達計算は、ここで、到達点qが示された電力線の三相伝送線図を示す
図4を参照して説明される。
【0041】
電力線は、a、b、およびcの3つの相を有することができ、各相は、電圧、電流、相抵抗、および相インダクタンスによってモデル化することができる。モデルは、相間の相対相インダクタンスをさらに含むことができる。到達点qに関連して、第1の相aは、抵抗Rおよび相インダクタンスLsを通じて到達点qに向かって相電流iaを駆動する、相に印加される相電圧uaによってモデル化することができる。同様に、第2の相bは、抵抗Rおよび相インダクタンスLsを通じて到達点qに向かって相電流ibを駆動する、相に印加される相電圧ubによってモデル化することができる。また、第3の相cは、抵抗Rおよび相インダクタンスLsを通じて到達点qに向かって相電流icを駆動する、相に印加される相電圧ucによってモデル化することができる。さらに、第1の相aと第2の相bとの間の相対相インダクタンスLm、第2の相bと第3の相cとの間の相対相インダクタンスLm、および第3の相cと第1の相aとの間の相対相インダクタンスLmが存在する。図中には、到達点qにおける第1の相aの到達点電圧uq_a、第2の相bの到達点電圧uq-b、第3の相cの到達点電圧uq_cも示されている。
【0042】
使用される保護方式は時間領域保護方式であり、この方式では、到達点電圧は微分方程式に基づいて計算される。相内および相間の到達点における6つの電力線量が計算される。一例として、相内および相間の6つの電圧が計算され、ここではループ電圧とも示される。したがって、到達点またはループ電圧uq_a(t)、uq_b(t)、uq_c(t)、uq_ab(t)、uq_bc(t)、uq_ca(t)が計算される。以下の式は、これらの6ループ電圧を一般的な微分方程式に基づいて時間領域で直接計算することができる1つの方法を説明する。
【0043】
【0044】
uq_ab(t)=uq_a(t)-uq_b(t)・・・(4)
uq_bc(t)=uq_b(t)-uq_c(t)・・・(5)
uq_ca(t)=uq_c(t)-uq_a(t)・・・(6)
時間領域保護において、到達点qにおける増分電圧は、以下の式に基づいてさらに計算することができる。
【0045】
Δuq_a(t)=uq_a(t)-uq_a(t-T)・・・(7)
Δuq_b(t)=uq_b(t)-uq_b(t-T)・・・(8)
Δuq_c(t)=uq_c(t)-uq_c(t-T)・・・(9)
式(7)、(8)、(9)と同じ計算方法を相対相ループに適用して、Δuq_ab(t)、Δuq_bc(t)、Δuq_ca(t)を得ることができる。ここで、Tは1基本周波数期間の時間である。50Hz電力システムの場合、Tは20ミリ秒である。
【0046】
保護トリップ基準は、一般的な形式で、相対接地ループについての式(10)および相対相ループについての式(11)で以下のように表すことができる。
【0047】
|Δuq_φ(t)|>Krel1*|Uset1|(10)
|Δuq_φφ(t)|>Krel2*|Uset2|(11)
ここで、Δuq_φ(t)は、到達点qにおける増分相電圧の1つを表し、Δuq_φφ(t)は、到達点qにおける増分相対相電圧の1つを表す。Krel1およびKrel2は、1.0以上であり得る信頼度係数であり、一方、Uset1およびUset2は、相対接地ループおよび相対相ループの2つの設定閾値である。
【0048】
前述のように、時間領域保護の1つの中心部分は、電力線の電気量の計算に基づく到達計算であってもよく、上記の例ではその量は電圧である。ただし、代わりに電流を使用することも可能であることを理解されたい。到達点qの電圧は、式(1)~(6)のように決定される。電圧は、周期的に繰り返される正弦波波形などの波形である。したがって、それらは基本周波数に対応する期間Tを有し、ここで、基本周波数は、用途または電力システムのタイプに応じて50Hzまたは60Hzであり得る。
【0049】
上記の式(7)、(8)、および(9)に見られるように、この場合には相内および相間の到達点電圧である増分到達点量は、現在の到達点量値と前の期間の対応する到達点量値との間の差として決定される。
【0050】
微分アルゴリズムの計算誤差は、高周波過渡現象の影響を受ける可能性がある。したがって、高周波スペクトル内のノイズ信号を除去するために、到達計算が実行される前に、すべての並列に対してローパスフィルタが必要になる場合がある。
【0051】
より高いカットオフ周波数フィルタを用いる到達計算ループは、通常、より低いカットオフ周波数フィルタを用いる到達計算ループと比べてトリッピング速度が速くなる。一方、より高いカットオフ周波数フィルタを用いる到達計算ループは、より低いカットオフ周波数フィルタを用いる到達計算ループと比べてそれぞれ計算誤差が大きくなる可能性がある。到達計算機能全体が、高いカットオフ周波数ループと低いカットオフ周波数ループの両方を用いる到達計算ループを利用し、同時に良好なセキュリティ、速度、およびカバレッジを利用できるようにするために、到達計算の組み合わせを使用することができる。本明細書で説明される1つの基本的な考え方は、同じ到達計算ループのための到達計算処理ブランチのグループを並列に使用することであり、ローパスフィルタのグループのカットオフ周波数は互いに異なる。そのため、時間領域保護の最良の性能を得ることができた。したがって、異なるカットオフ周波数を用いる対応するローパスフィルタに基づいて並列に動作するマルチ到達計算ループを含む到達計算機能が提供され得る。ここで、通常、より低いカットオフ周波数フィルタを用いる到達計算ループは、より低い閾値を使用してもよい。また、より高いカットオフ周波数フィルタを用いる到達計算ループは、より高い閾値を使用してもよい。通常の伝送線路システムの場合、2つまたは3つのカットオフ周波数が到達計算機能で使用されてもよい。また、異なるカットオフ周波数を用いる到達計算ブランチを使用して、電力線の異なるセクションまたは電力線の同じセクションをカバーすることができる。より低いカットオフ周波数フィルタに基づく到達計算がより高いカットオフ周波数フィルタに基づくものよりも良好な計算精度を有することを考慮して、より低いカットオフ周波数フィルタに基づく到達計算を、より高いカットオフ周波数フィルタに基づくものよりも長いカバレッジを有するように設定することができ、その結果、到達計算機能全体で、近接障害のための高速動作と遠隔障害のための安全な動作との両方を同時に実現できる。
【0052】
その最も単純な形態では、第1のカットオフ周波数f1を有する第1のローパスフィルタLPF1と、第2のカットオフ周波数f2を有する第2のローパスフィルタとの2つのローパスフィルタのみが存在してもよく、第1のローパスフィルタLPF1は、電力線の0~40%を形成するセクションなどの電力線の第1のセクションに関連付けられ、第2のローパスフィルタLPF2は、電力線の0~80%を形成するセクションなどの電力線の第2のセクションに関連付けられる。これにより、第1のセクションは、第2のセクションよりもローカル点Lの保護リレー位置に近い。また、第1のローパスフィルタのカットオフ周波数f1は、第2のローパスフィルタのカットオフ周波数f2よりも高い。
【0053】
ただし、前述のように、より多くのフィルタが存在してもよい。典型的には、N個のフィルタが存在してもよく、ここで、Nは2以上の整数である。一例として、Nは3または4であり得る。
【0054】
ここで、電力線障害を決定する方法においてN個のローパスフィルタを使用することができる1つの方法を、
図5も参照して説明する。
図5は、保護リレー10内の到達計算モジュール12によって実行されている電力線障害の決定の第1の変形例におけるいくつかの要素を概略的に示す。
【0055】
到達計算モジュール12は、まず、電力線PLの一端の測定点における電力線PLの電圧および電流の測定値u(t)およびi(t)を取得し(要素20)、これは、測定点Lにおいて、電力線PL内の電流を測定する変流器CTおよび電力線内の電圧を測定する変圧器VTに基づいて行われてもよい。さらに、この場合に到達計算モジュール12によって取得される電力線量、ここでは電流i(t)および電圧v(t)は、現在の時間インスタンスtの電気量ならびに以前の期間Tにおける対応する時間インスタンス(t-T)の以前の電気量を含む。これにより、現在および以前の量測定値は、連続する期間において同じ位相角について取得することができる。
【0056】
次に、到達計算モジュール12は、少なくとも2つの処理ブランチを含むいくつかの並列処理ブランチで取得された量を処理し、ここで、
図5は、第1、第2、および第Nの並列ブランチを示す。N個の並列処理ブランチにおける処理は、各ブランチにおける処理、例えばそれぞれの測定値のフィルタリングが、互いに対して同時に、または互いに対して最大100μsの遅延内で開始することを意味し得る。これにより、並列ブランチにおける処理は、互いに対して0~100μsの時間スパン内で開始することができ、0が好ましい場合がある。これは、第1のブランチの処理を最初に開始してから100μs以内に「遅い」ブランチの処理を開始しなければならないことを意味する。処理の開始後、各ブランチにおける処理は、障害決定が行われるまで、互いに非同期または同期して続行することができる。
【0057】
各ブランチにおける処理は、対応するフィルタリングされた測定値のセットを取得するためにローパスフィルタで測定値をフィルタリングすることであって、ローパスフィルタのカットオフ周波数は互いに異なる、フィルタリングすることと、対応する到達点量を取得するために、フィルタリングされた測定値に対して到達計算を実行することと、到達点量を対応する閾値と比較することと、を含む。
【0058】
第1のブランチにおいて、到達計算モジュール12は、第1のカットオフ周波数f1を有する第1のローパスフィルタLPF1で測定値をフィルタリングする(要素22)。これにより、フィルタリングされた測定値の第1のセットを取得する。次いで、到達計算モジュール12は、到達点量の第1のセットQSQ1を取得するために、フィルタリングされた測定値の第1のセットに対して到達計算を実行する(要素28)。その後、到達計算モジュール12は、到達点量の第1のセットQSQ1を対応する閾値の第1のセットS1と比較する(要素34)。したがって、到達点量の第1のセットの各到達点量を、閾値の第1のセットS1の閾値と比較する。これらの比較を実行すると、第1のブランチが完了する。
【0059】
第2のブランチでは、到達計算モジュール12は、第2のカットオフ周波数f2を有する第2のローパスフィルタLPF2で測定値をフィルタリングし(要素24)、それによってフィルタリングされた測定値の第2のセットを取得する。フィルタリングされた測定値の各セットは、現在および以前のサンプリング時間インスタンスtおよび(t-T)の3つの相の電流および電圧を含む。
【0060】
これはまた、到達点量の第2のセットQSQ2を取得するために、フィルタリングされた測定値の第2のセットに対して到達計算を実行する(要素30)。到達計算モジュール12は、到達点量の第2のセットQSQ2を対応する2次閾値と比較する(要素32)。したがって、第2のセットの各到達点量を、閾値の第2のセットS2の対応する閾値と比較する。これらの比較を実行すると、第2のブランチが完了する。
【0061】
第Nのブランチにおいて、到達点計算モジュール12は、第Nのカットオフ周波数fNを有する第NのローパスフィルタLPFNで測定値をフィルタリングする(要素26)。これにより、フィルタリングされた測定値の第Nのセットを取得する。次いで、到達点計算モジュール12は、到達点量の第NのセットQSQNを取得するために、フィルタリングされた測定値の第Nのセットに対して到達点計算を実行する(要素32)。その後、到達点計算モジュール12は、到達点量の第NのセットQSQNを対応する閾値の第NのセットSNと比較する(要素38)。したがって、到達点量の第Nのセットの各到達点量を、閾値の第NのセットSNの対応する閾値と比較する。これらの比較を実行すると、第Nのブランチが完了する。
【0062】
この場合、各処理ブランチは、電力線のすべての相対接地ループおよびすべての相対相ループについて到達点計算を実行することができる。
【0063】
異なるブランチで決定される到達点量は同じになる。しかしながら、これらの到達点量の値は、ブランチ間で異なり得る。それにより、フィルタリングされた測定値のセットに対応する到達点量は、互いに異なるブランチの到達点量値を介して、フィルタリングされた測定値の別のセットに対応する到達点量とは異なり得る。
【0064】
カットオフ周波数は、通常互いに異なる。第2のカットオフ周波数f2は、通常、第1のカットオフ周波数f1とは異なり、第Nの周波数は、通常、第1の周波数および第2の周波数の両方とは異なる。ブランチで使用される閾値は、互いに同じであっても異なっていてもよい。有利な一実施形態では、フィルタリングされた測定値の第1のセットは、フィルタリングされた測定値の第2のセットよりも高いカットオフ周波数でフィルタリングされている。この場合、第1のセットの各閾値は、第2のセットの対応する閾値よりも高い。フィルタリングされた測定値の第2のセットがフィルタリングされた測定値の第Nのセットよりも高いカットオフ周波数でフィルタリングされている場合、第2のセットの各閾値も第Nのセットの対応する閾値よりも高い。
【0065】
次に、到達計算モジュール12は、閾値のいずれかを超えた場合、保護領域に障害があると決定する(要素40)。これは、第1のセットQSQ1の到達点量のいずれかが閾値の第1のセットS1の閾値のいずれかを超える場合、第2のセットQSQ2の到達点量のいずれかが閾値の第2のセットS2の2次閾値のいずれかを超える場合、または第NのセットQSQNの到達点量のいずれかが閾値の第NのセットSNの閾値のいずれかを超える場合に、保護領域に障害があると決定することを含むことができる。
【0066】
したがって、第1のローパスフィルタLPF1でのフィルタリング、フィルタリングされた測定値の第1のセットに対する到達計算の実行、および到達点量の第1のセットQSQ1と閾値の第1のセットとの比較は第1の処理ブランチで実行され、第2のローパスフィルタLPF2でのフィルタリング、フィルタリングされた測定値の第2のセットに対する到達計算の実行、および到達点量の第2のセットQSQ2と閾値の第2のセットS2との比較は第2の処理ブランチで実行され、第NのローパスフィルタLPFNでのフィルタリング、フィルタリングされた測定値の第Nのセットに対する到達計算の実行、および到達点量の第NのセットQSQ2と閾値の第NのセットSNとの比較は第Nの処理ブランチで実行され、ここで、ブランチにおける処理は同時に開始され、その後、障害決定が行われるまで互いに独立して続行する。
【0067】
保護領域に障害があると決定することは、閾値のいずれかを超えるとすぐに障害があると決定することを含むことができる。したがって、障害があると決定することは、対応する閾値を最初に超えた比較について行われ得る。各到達点量の絶対値を閾値と比較することも可能である。次いで、到達計算モジュールは、トリッピングモジュール16に障害を通知することができ、次いで、このモジュールは、続行し、障害決定に基づいて電力線の相のうちの1つまたは複数をトリップさせることができる。
【0068】
電力線の特定の相に対して到達点量およびその対応する閾値を設けることができる。したがって、到達点計算は、対応する1次閾値と比較される相対接地ループ計算を含むことができる。例えば、閾値のセット内の各閾値は、相A、相B、または相Cなどの電力線の特定の相の対応する到達点量に対して設けることが可能である。フィルタリングされた測定値の各セットに対する到達計算の実行は、現在および以前のサンプリングインスタンスtおよび(t-T)についての式(1)~(3)による到達点電圧の決定、ならびに式(7)~(9)による各相の増分相電圧の決定であり得る。この場合、閾値の各セットには1次閾値のグループのみが存在し得る。この場合、比較は、到達点量の第1のセットQSQ1の増分相電圧を閾値の第1のセットS1の1次閾値のグループと比較することと、到達点量の第2のセットQSQ2の増分相電圧を閾値の第2のセットS2の1次閾値のグループと比較することと、到達点量の第NのセットQSQNの増分相電圧を閾値の第NのセットSNの1次閾値のグループと比較することとを含むことができ、ここで、閾値の第1のセットS1の各1次閾値は、閾値の第2のセットS2の対応する1次閾値よりも高くてもよく、閾値の第2のセットS2の各1次閾値は、閾値の第NのセットSNの対応する1次閾値よりも高くてもよい。次いで、到達点量の第1のセットQSQ1、第2のセットQSQ2、および第Nのセットのいずれかにおける増分相電圧が対応する1次閾値を超える場合、特定の相について相対接地障害と決定され得る。この例では、特定の相を含む特定のタイプの障害は、その相の閾値のいずれかを超えた場合に決定され得る。
【0069】
電力線の相の特定の組み合わせに対して、到達点量およびその対応する閾値を代替として設けることができる。したがって、到達点計算は、対応する2次閾値と比較される相対相ループ計算を含むことができる。例えば、閾値のセット内の各閾値は、相Aおよび相B、相Bおよび相C、または相Cおよび相Aのような電力線の2つの相の組み合わせなど、特定の相の組み合わせの対応する到達点量に対して設けられることが可能である。この場合、到達計算は、現在および以前のサンプリングインスタンスtおよび(t-T)についての式(4)~(6)による到達点電圧の決定、ならびに式(7)~(9)で概説された原理を用いた増分相対相電圧の決定を含むことができる。この場合、閾値の各セットには2次閾値のグループのみが存在し得る。この場合、比較は、到達点量の第1のセットQSQ1の増分相対相電圧を閾値の第1のセットS1の2次閾値のグループと比較することと、到達点量の第2のセットQSQ2の増分相対相電圧を閾値の第2のセットの2次閾値のグループと比較することと、到達点量の第NのセットQSQNの増分相対相電圧を閾値の第NのセットSNの2次閾値のグループと比較することとを含むことができ、ここで、閾値の第1のセットS1の各2次閾値は、閾値の第2のセットS2の対応する2次閾値よりも高くてもよく、閾値の第2のセットS2の各2次閾値は、閾値の第NのセットSNの対応する2次閾値よりも高くてもよい。次いで、到達点量の第1、第2、および第Nのセットのいずれかにおける増分相対相電圧が対応する2次閾値を超える場合、2つの相について相対相障害と決定され得る。この例では、2つの相を含む特定のタイプの障害は、この相の組み合わせに対して2次閾値のいずれかを超えた場合に決定され得る。
【0070】
上記で分かるように、閾値のセットは、閾値の1次グループまたは閾値の2次グループから構成されることが可能である。代替として、閾値の各セットは、閾値の1次グループおよび閾値の2次グループの両方を含むことが可能である。これらはさらに同時に使用することができる。したがって、第1、第2、および第Nの並列ブランチを有する例では、1次閾値の第1のグループおよび2次閾値の第1のグループ、1次閾値の第2のグループおよび2次閾値の第2のグループ、ならびに1次閾値の第Nのグループおよび2次閾値の第Nのグループが同時に存在してもよい。第1のカットオフ周波数f1が第2のカットオフ周波数f2よりも高く、第2のカットオフ周波数f2が第Nのカットオフ周波数fNよりも高い場合、1次閾値の第1のグループの各閾値は、この場合、1次閾値の第2のグループの対応する閾値よりも高くてもよく、1次閾値の第2のグループの各閾値は、1次閾値の第Nのグループの対応する閾値よりも高くてもよい。同様に、2次閾値の第1のグループの各閾値は、2次閾値の第2のグループの対応する閾値よりも高くてもよく、2次閾値の第2のグループの各閾値は、2次閾値の第Nのグループの対応する閾値よりも高くてもよい。閾値の第1のグループの閾値は、閾値の第2のグループの閾値とは異なる値を有してもよい。1次閾値の第1のグループの閾値は、2次閾値の第1のグループの対応する閾値よりもさらに高くてもよく、1次閾値の第2のグループの閾値は、2次閾値の第2のグループの対応する閾値よりも高くてもよく、1次閾値の第Nのグループの閾値は、2次閾値の第Nのグループの対応する閾値よりも高くてもよい。
【0071】
次に、これらの閾値の処理方法を、電力線障害を決定する際の第2の変形例のフローチャートを示す
図6を参照して説明する。
【0072】
到達計算モジュール12は、
図5の要素20に関連して前述したのと同じ方法で、電力線PLの電圧および電流の測定値v(t)およびi(t)を取得する。また、これらの電力線量をN個の別々のブランチで処理し、ここで、Nは少なくとも2である。
【0073】
したがって、第1の処理ブランチでは、到達計算モジュール12は、第1のカットオフ周波数f1を有する第1のローパスフィルタLPF1で測定値をフィルタリングし(要素22)、到達点量の第1のセットQSQ1を取得するために、フィルタリングされた測定値の第1のセットに対して到達計算を実行し(要素28)、到達点量の第1のセットを閾値の第1のセットの1次閾値の第1のグループPG1と比較し(要素34A)、閾値の第1のセットの2次閾値の第1のグループSG1と比較し(要素34B)、第1のブランチを完了する。
【0074】
第2の処理ブランチでは、到達計算モジュール12は、第2のカットオフ周波数f2を有する第2のローパスフィルタLPF2で測定値を同時にフィルタリングし(要素24)、到達点量の第2のセットQSQ2を取得するために、フィルタリングされた測定値の第2のセットに対して到達計算を実行し(要素30)、到達点量の第2のセットを閾値の第2のセットの1次閾値の第2のグループPG2と比較し(要素36A)、閾値の第2のセットの2次閾値の第2のグループSG2と比較し(要素36B)、第2のブランチを完了する。
【0075】
第Nの処理ブランチでは、到達計算モジュール12は、第Nのカットオフ周波数fNを有する第NのローパスフィルタLPFNで測定値を同時にフィルタリングし(要素26)、到達点量の第NのセットQSQNを取得するために、フィルタリングされた測定値の第Nのセットに対して到達計算を実行し(要素32)、到達点量の第Nのセットを閾値の第Nのセットの1次閾値の第NのグループPGNと比較し(要素38A)、閾値の第Nのセットの2次閾値の第NのグループSGNと比較し(要素38B)、第Nのブランチを完了する。
【0076】
それにより、各ブランチにおける到達計算は、相対接地ループ計算および相対相ループ計算を含む。特に、この場合の到達点量を対応する閾値と比較することは、相対接地ループ計算を対応する1次閾値と比較することと、相対相ループ計算を対応する2次閾値と比較することと、を含むことができる。
【0077】
ブランチにおける処理は、この場合、上述の時間スパン内でも開始され、障害と決定されるまで同期または非同期で続行される。
【0078】
この場合にフィルタ量の各セットに対して実行される到達計算は、式(1)~(6)に従って到達点電圧を決定することと、式(7)~(9)に従って各相の増分相電圧、および式(7)~(9)の原理を使用して増分相対相電圧を決定することとを含む。
【0079】
第1の処理ブランチでは、到達計算モジュール12は、より詳細には、到達点量の第1のセットQSQ1の増分相電圧を1次閾値の第1のグループPG1と比較する(要素34A)。また、到達点量の第1のセットQSQ1の増分相対相電圧を2次閾値の第1のグループSG1と比較する(要素34B)。第2の処理ブランチにおいて同様に、到達計算モジュール12は、到達点量の第2のセットQSQ2の増分相電圧を1次閾値の第2のグループPG2と比較する(要素36A)とともに、到達点量の第2のセットQSQ2の増分相対相電圧を2次閾値の第2のグループSG2と比較する(要素36B)。第Nの処理ブランチにおいて、到達計算モジュール12は、到達点量の第NのセットQSQNの増分相電圧を1次閾値の第NのグループPGNと比較する(要素38A)とともに、到達点量の第NのセットQSQNの増分相対相電圧を2次閾値の第NのグループSGNと比較する(要素38B)。
【0080】
次に、到達計算モジュールは、1次閾値の第1のグループのPG1、1次閾値の第2のグループのPG2、または1次閾値の第NのグループのPGNのいずれかの閾値を超えた場合、第1のタイプの障害FT1があると決定し(要素40A)、この場合、対応する増分到達点電圧がN個のグループの対応する閾値のいずれかを超える相に相対接地障害がある。到達計算モジュールはまた、2次閾値の第1のグループのSG1、2次閾値の第2のグループのSG2、または2次閾値の第NのグループのSGNのいずれかの閾値を超えた場合、第2のタイプの障害FT2があると決定し(要素40B)、この場合、N個のグループの対応する閾値のいずれかを超える増分相対相電圧に対して相対相障害が示され、ここでも閾値を超えるとすぐに決定が行われ得る。1次閾値のグループの閾値は、2次閾値のグループの閾値とは異なる値をさらに有してもよい。したがって、第1のタイプの障害の閾値は、第2のタイプの障害の閾値とは異なる値を有してもよい。一例として、より高くてもよい。
【0081】
使用されるカットオフは、サンプリングレートおよびアプリケーション要件に依存する。例えば、100Hz、150Hz、200Hz、300Hz、400Hz、500Hz、1000Hzおよび2000Hzのカットオフ周波数がある。
【0082】
保護リレーはまた、障害タイプが検出される高速相選択方式を提供する。相選択方式は、起動機能によって先行されてもよく、ここで、起動機能における処理の特定の結果は、相選択方式の実行をトリガしてもよい。起動機能が、電力線上に障害または外乱があることを示すように動作する場合にのみ、障害タイプを検出するために相選択方式が開始される。
【0083】
これが相選択モジュール14においてどのように実施され得るかを、ここで
図7を参照して一般的に説明する。
【0084】
この動作は、異なるループの電流などの増分電力線量の比較に基づいており、ここで、ループは、相対接地ループまたは相対相ループである。したがって、比較は、相対接地ループおよび相対相ループについて実行される。
【0085】
電流i(t)または電圧v(t)などの測定された種類の電力線量は、相選択モジュール14にも供給される。これにより、相選択モジュール14は、異なる相の電力量を取得し(要素42)、ここで、量は、電流または電圧などの特定のタイプのものであってもよい。
【0086】
その後、起動機能が開始される。起動機能では、いくつかの増分相対接地ループ量の各々およびいくつかの増分相対相ループ量の各々が、対応する超過量閾値と比較される。次いで、超過量閾値のいずれかを超えた場合、相選択方式が実行される。
【0087】
したがって、相選択モジュール14は、相対接地ループおよび相対相ループにおけるそのタイプの各増分量を決定する(要素44)。増分量はまた、この場合、現在の時点または時間インスタンスtにおける量と以前の時点または時間インスタンス(t-T)との間の差であり、ここで、以前の時点は、量の以前の期間の対応する時点である。
【0088】
次いで、各相対接地ループ量および相対相ループ量は、対応する超過量閾値EQTと比較され(要素46)、ここで、対応する超過量閾値EQTは、RMS値などの量の対応する平均値に依存することができ、場合によっては変流器の定格電流などの定数に基づくこともできる。超過量閾値EQTは、一例として、以下のように設定することができる。
【0089】
EQT=(K1×IN+K2×IRMS)・・・(12)
ここで、INは変流器の定格電流であり、IRMSはRMS電流であり、K1およびK2は定数である。
【0090】
これらの閾値のいずれかが超えられていない場合(要素48)、増分量は、量の次の時間インスタンスのために新たに計算され(要素44)、一方、閾値のいずれが超えられている場合(要素48)、相選択モジュール14は、続行し、相選択方式を開始する。
【0091】
相選択方式では、相選択モジュール14は、増分相対接地ループ量および増分相対相ループ量の比RA、RB、RC、RAB、RBC、RCAを計算する。したがって、電力線PLの相対接地ループおよび相対相ループにおける測定された電力線量タイプの増分量比を計算する(要素50)。これにより、比率の計算の前に、起動機能は、超過量閾値の少なくとも1つを超えたと決定する。したがって、相選択モジュール14は、各相における増分相対接地ループ量比RA、RB、RC、および各相間の増分相対相ループ量比RAB、RBC、RCAを決定する。比はさらに、相対接地ループ量または相対相ループ量を、それぞれ増分相対接地ループ量または相対相ループ量の最小値で割ったものとして決定することができる。比を計算することは、相対接地ループ量を相対接地ループ量の最小値で割ることと、相対相ループ量を相対相ループ量の最小値で割ることと、を含むことができる。これにより、特定の相の増分相対接地ループ量比は、相の増分相対接地ループ量を3つの増分相対接地ループ量のうちの最低値で割ったとものして決定することができ、増分相対相ループ量比は、相の対の増分相対相ループ量を増分相対相ループ量のうちの最低値で割ったものとして決定することができる。これにより、1つの増分相対接地ループ量比および1つの増分相対相ループ量比は、常に1に等しくなり得る。
【0092】
さらに、比RA、RB、RC、RAB、RBC、RCAは、対応する閾値と比較され、障害のタイプは、比の比較に基づいて決定される。これを行う方法について、以下で説明する。
【0093】
モジュールは、増分ゼロシーケンスまたはゼロモード量QZを計算する(要素52)。これは、測定された電気量タイプのゼロシーケンスであり得る。次いで、増分ゼロシーケンス量QZをゼロシーケンス量閾値QZTと比較し(要素54)、ここで、閾値は、その超過がゼロシーケンス量の存在に対応し、非超過がゼロシーケンス量が存在しないことに対応するようなレベルに設定され、測定誤差および計算誤差も考慮される。
【0094】
閾値QZTを超える場合(要素56)、単相対接地障害が調査され(要素58)、一方、閾値QZTを超えない場合、三相障害が調査される(要素68)。単相対接地障害と決定された場合(要素60)、これが示され(要素62)、単相対接地障害と決定されない場合(要素60)、二相対接地障害が調査される(要素64)。二相対接地障害と決定された場合(要素66)、これが示され(要素62)、二相対接地障害と決定されない場合(要素62)、相選択モジュール14は戻って、量の後続の時間インスタンスのための増分量を新たに決定する(要素44)。三相障害が調査される場合(要素68)に、障害と決定されると(要素70)、この三相障害が示される(要素62)。三相障害と決定されない場合(要素70)、次に相対相障害が調査される(要素72)。相対相障害と決定された場合(要素74)、これが示され(要素62)、相対相障害と決定されない場合(要素74)、相選択モジュールは戻って、量の後続の時間インスタンスのための増分量を新たに決定する(要素44)。
【0095】
これにより、4種類の障害を決定できることが分かる。以下に示すように、障害に関係する相も決定できる。次に、この情報は、トリッピングモジュール16に送信されてもよく、トリッピングモジュールは、先に進み、情報に基づいて電力線相の1つまたは複数をトリップさせてもよい。
【0096】
次に、
図8を参照して、様々なタイプの障害の調査方法について説明する。
相対接地ループ量比R
A、R
BおよびR
Cがすべて第1の相対接地ループ閾値TPL1を下回り、相対相ループ量比R
AB、R
BCおよびR
CAがすべて第1の相対相ループ閾値TPLL
1を下回る場合、および同時にすべてのループ内のすべての計算された量がそれらの超過量閾値EQTを超え、ゼロシーケンス量QZがゼロシーケンス量閾値QZTを下回る場合、三相障害と決定され得る(要素76)。
【0097】
特定の相を含む相対接地ループ量比の1つが他の相対接地ループ量比よりも大きい場合、ならびに同時に前述の特定の相の計算された相対接地ループ量および同じ相を含む計算された相対相ループ量がそれらの超過量閾値EQTを超え、ゼロシーケンス量QZがゼロシーケンス量閾値QZTを超える場合、単相対接地障害と決定され得る(要素78)。例えば、比RAが比RBおよびRCよりも大きいことが判明した場合、ならびに比RABおよびRCAが比RBCよりも大きい場合、相Aの単相対接地障害が示される。
【0098】
相対接地ループ量比の1つが他の2つの相対接地ループ量比よりも小さく、すべての相対相ループ量比が第2の相対相ループ閾値TPPL2を下回る場合、ならびに同時にすべての計算された相対相ループ量および他の2つの相対接地ループ量比に関連するすべての計算された相対接地ループ量がそれらの超過量閾値EQTを超え、ゼロシーケンス量QZがゼロシーケンス量閾値QZTを超える場合、二相対接地障害と決定され得る(要素80)。次に、2つのより大きい相対接地ループ比に対応する相について障害が示される。
【0099】
相対接地ループ量比のうちの2つが残りの相対接地ループ量比よりも大きく、すべての相対相ループ量比が第2の相対相ループ閾値TPPL2よりも小さいかこれを下回る場合、ならびに同時にすべての計算された相対相ループ量および2つの相対接地ループ量比に関連する計算された相対接地ループ量がそれらの超過量閾値EQTを超え、ゼロシーケンス量QZがゼロシーケンス量閾値QZTを下回る場合、二相障害と決定され得る(要素82)。
【0100】
相選択方式は、以下のように説明することもできる。一般に、この方式には主に3つの重要な要素がある。すなわち、起動要素を計算すること、電流の比を計算すること、および比の比較に基づく相選択ロジックである。ここで、起動要素の計算は、増分相対接地ループ電流または増分相対相ループ電流が対応する超過量閾値を超えるという発見であり、相選択ロジックは調査であり、異なるタイプの障害を示す。
【0101】
要素は以下の通りである。
要素1-ループが起動するかどうかを確認する。起動信号があるループのみが動作し、これが障害が発生した相であるかどうかをさらに確認する。各ループの基本起動アルゴリズムは、次のとおりであり得る。
【0102】
Δi(t)>K1×IN+K2×IRMS・・・(13)
ここで、Δi(t)は増分ループ電流である。INはCT(変流器)の定格電流である。IRMSは、ループ電流のRMS値である。K1およびK2は、固定閾値および浮動閾値の設定である。
【0103】
要素2-異なる電流ループ間の比を計算する。提案された方式は、電流の代わりに電流比(または正規化電流と呼ばれる)に基づく。これにより、計算がより安定し、設定がより容易になる。同時に、感度および動作速度の向上にも役立つ。以下に定義する6つの比率がある。以下に示す比率計算における電流はすべてRMS値である。
【0104】
RA=ΔIA/min(ΔIA,ΔIB,ΔIC)・・・(14)
RB=ΔIB/min(ΔIA,ΔIB,ΔIC)・・・(15)
RC=ΔIC/min(ΔIA,ΔIB,ΔIC)・・・(16)
RAB=ΔIAB/min(ΔIAB,ΔIBC,ΔICA)・・・(17)
RBC=ΔIBC/min(ΔIAB,ΔIBC,ΔICA)・・・(18)
RCA=ΔICA/min(ΔIAB,ΔIBC,ΔICA)・・・(19)
ここで、ΔIAは相Aの増分電流であり、ΔIBは相Bの増分電流であり、ΔICは相Cの増分電流であり、ΔIABは相Aと相Bとの間の増分電流であり、ΔIBCは相Bと相Cとの間の増分電流であり、ΔICAは相Cと相Aとの間の増分電流である。増分電流は、現在の時間インスタンスtの測定された電気量と、以前の期間T(Tは基本電力システム周波数期間時間)における対応する時間インスタンス(t-T)の以前に測定された電気量とに基づいて計算することができる。例えば、相Aについて、現在の時間インスタンスtでの増分電流ΔIAは、式(20)に列挙されるように計算することができ、他の増分値は、それぞれの相の対応する測定された電気量を使用することによって同様に計算することができる。
【0105】
ΔIA(t)=IA(t)-IA(t-T)・・・(20)
実際の用途では、比の計算における増分電流は非常に小さい場合がある。比の計算(除算アルゴリズム)が安定していることを確実にするためには、上記の式における分母の絶対値(min(ΔIA,ΔIB,ΔIC)またはmin(ΔIAB,ΔIBC,ΔICA)がいくつかの閾値よりも大きくなければならない。分母が閾値よりも小さい場合、ゼロによる除算の問題を回避するために、比の関連する計算結果を事前に設定された大きな値(例えば1000)に直接設定することができる。
【0106】
要素3-比の相対的なサイズを比較し、障害のある相を検出する。
三相障害は、以下によって検出することができる。
【0107】
1.増分ゼロシーケンス電流ΔI0が十分に小さい。
ΔI0<QZT
2.6つのループ比がすべて十分に小さい。
【0108】
RA<TPL1かつRB<TPL1かつRC<TPL1かつRAB<TPPL1かつRBC<TPPL1かつRCA<TPPL1
3.6つのループすべての起動
例示的な相Aにおける単相対接地障害は、以下によって検出することができる。
【0109】
1.増分ゼロシーケンス電流ΔI0が十分に大きい。
ΔI0>QZT
2.相Aに関連する比が、相Aに関連しない他の比よりも大きい。
【0110】
RA>=TPL2かつRB<TPL2かつRc<TPL2かつRAB>=TPPL2かつRCA>=TPPL2かつRBC==1
3.関連ループの起動
例示的な相BおよびCにおける二相対接地障害は、以下によって検出することができる。
【0111】
1.増分ゼロシーケンス電流ΔI0が十分に大きい。
ΔI0>QZT
2.RAは、相対接地ループ比が最小である。また、3つの相対相ループ比間の差は大きすぎない。
【0112】
RA==1かつRB>=TPL2かつRC>=TPL2かつRAB<TPPL2かつRBC<TPPL2かつRCA<TPPL2
3.関連ループの起動
例示的な相BとCとの間の相対相障害は、以下によって検出することができる。
【0113】
1.増分ゼロシーケンス電流ΔI0が十分に小さい。
ΔI0<QZT
2.BループおよびCループの比はAループよりも大きく、3つの相対相ループ比間の差は大きすぎない。
【0114】
RA==1かつRB>=TPL2かつRC>=TPL2かつRAB<TPPL2かつRBC<TPPL2かつRCA<TPPL2
3.関連ループの起動
提案された高速相選択方式のいくつかの利点を以下に要約する。
【0115】
(1)計算は時間領域に基づいており、フェーザを計算する必要はない。
(2)高速。典型的な動作時間は、例示的な4.8kHzのサンプリングレートでは1ms未満である。
【0116】
(3)高インピーダンス障害および高ソースインピーダンス比(SIR)条件に対しても高い感度を有する。
【0117】
到達計算モジュール、相選択モジュール、およびトリッピングモジュールは、1つまたは複数のFPGAモジュールなどの1つまたは複数のハードウェアモジュールとして実装されてもよい。代替として、それらはソフトウェアモジュールとして実現されてもよい。したがって、それらは、コンピュータプログラムコードを使用して実装することができ、コンピュータプログラムコードは、そのプログラムコードが1つまたは複数のプロセッサによって操作されるか、1つまたは複数のコンピュータにロードされるときにこれらのモジュールの機能を実行する1つまたは複数のデータキャリアに提供され得る。CD-ROMディスクの形態のコンピュータプログラムコード86を有するそのようなデータキャリア84の1つが
図9に概略的に示されている。そのようなコンピュータプログラムは、代替として、メモリスティックに提供されてもよい。代替として、コンピュータプログラムは、サーバに提供され、そこから1つまたは複数のコンピュータにダウンロードされてもよい。
【0118】
上記の説明から、本発明が多くの方法で変更され得ることは明らかである。結果として、本発明は以下の特許請求の範囲によってのみ限定されるべきであることが理解されるであろう。