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<図1>
  • 特許-粉粒体用振動処理装置 図1
  • 特許-粉粒体用振動処理装置 図2
  • 特許-粉粒体用振動処理装置 図3
  • 特許-粉粒体用振動処理装置 図4
  • 特許-粉粒体用振動処理装置 図5
  • 特許-粉粒体用振動処理装置 図6
  • 特許-粉粒体用振動処理装置 図7
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】粉粒体用振動処理装置
(51)【国際特許分類】
   F26B 17/32 20060101AFI20220317BHJP
   F26B 5/04 20060101ALI20220317BHJP
   F26B 25/12 20060101ALI20220317BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F26B17/32 S
F26B5/04
F26B25/12 Z
B01J2/00 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018044742
(22)【出願日】2018-02-22
(65)【公開番号】P2019143956
(43)【公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】390008084
【氏名又は名称】中央化工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】千賀 昭
(72)【発明者】
【氏名】加藤 寿紀
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-248349(JP,A)
【文献】特開平11-153384(JP,A)
【文献】特開2006-084143(JP,A)
【文献】特開平04-217779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 17/32
F26B 5/04
F26B 25/12
B01J 2/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉粒体の又は投入後粉粒体となる被処理物が粉砕媒体を伴わずに投入され、軸線が略水平となるように弾性体上に配される筒状の処理容器と、該処理容器に振動を付与する発振機(駆動手段)と、及び製品排出手段とを備え、
該発振機が、前記処理容器に主として軸線回りの円振動(楕円振動を含む。)を付与させるものであり、
前記処理容器は、中間膨出の二連円錐台形である粉粒体用振動処理装置において、
前記二連円錐台形のテーパ角度(前記軸線に対する交差角度)が4~15°であるととともに、
前記製品排出手段は、前記二連円錐台形の中央縦断面内周の底部側で、前記発振機の前記中央縦断面内周の中心垂直線からの偏心角度θ:2°以上15°未満の範囲で前記円振動の回転方向側に偏心させて製品排出部位(排出口)を備えている、
ことを特徴とする粉粒体用振動処理装置。
【請求項7】
前記排気口に真空吸引手段が連結されていることを特徴とする請求項5記載の粉粒体用振動乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、粉粒体用振動処理装置に関する。特に、粉粒体用振動乾燥装置として好適な発明である。より具体的には、特許3996256号に係る特許発明の改良に係るものである。
【0002】
ここでは、粉粒体用振動加熱乾燥装置を、主として、例に採り説明する。本願発明はこれに限られない。例えば、減圧乾燥装置、凍結乾燥装置、更には、造粒装置、反応装置、発酵装置、等にも本願発明を適用可能である。
【0003】
「粉粒体」とは、狭義の粒径0.1μm以下の粉末ばかりでなく、0.1μmを越える粒体、顆粒体も含む(化学工学協会編「化学工学辞典」(昭和49年5月30日)丸善、p415参照)。
【背景技術】
【0004】
ファインケミカルの分野における粉状薬剤の最終工程に使用する乾燥装置として、特許3996256号(特許文献1)に係る下記構成の特許発明がある〔請求項1〕。
【0005】
「粉粒体の又は投入後粉粒体となる被処理物が投入され、軸線が略水平となるように弾性体上に配される筒状の処理容器と、該処理容器に振動を付与する発振機とを備えた振動処理装置において、
前記処理容器は、前記軸線の略直下に少なくとも1個の処理済物排出口を備えているとともに、前記被処理物排出口を大径側端に有する錐台筒状であり、さらに、
該錐台筒状のテーパ角度(前記軸線に対する交差角度)が5°~30°であることを特徴とする粉粒体用振動処理装置。」
【0006】
本特許発明は、内部に部材を配設する手段によらずに、粉粒体の混合流動性を向上させることのできる粉粒体用振動処理装置を提供するとともに、粉粒体の混合流動性を向上させて、乾燥効率を向上させることができる粉粒体用振動乾燥装置を提供することを目的とするものである(特許文献I[0013]、[0014])。
【0007】
なお、本願発明の特許性に影響を与えるものではないが、関連先行技術文献として、特許文献2が存在する。特許文献2には、処理容器の排出口を偏心させた下記構成の横型振動乾燥機が記載されている(請求項1等参照)。
【0008】
「横置きされた円筒部と、該円筒部の一方の端面に設けられた一端側端面部と、該円筒部の他方の端面に設けられた他端側端面部と、該円筒部の内壁縁部と接するように該一端側端面部に設けられた排出口と、を具備する乾燥容器を備え、該乾燥容器に粉砕媒体が投入された状態で、該乾燥容器を振動させて粉末を含有する被乾燥物を乾燥させる横型振動乾燥機において、
該乾燥容器の該一端側端面部からみたときに、該円筒部の中心軸線から下ろした垂線を基準とし、該円筒部の該中心軸線と該排出口の中心とを結ぶ直線がなす角Rが15≦R≦75°であることを特徴とする横型振動乾燥機。」
【0009】
当該振動乾燥機と本願発明に係る振動乾燥機とは、前提において下記の如く異質的であり、本願発明の特許性(進歩性)に影響を与えるものではない。
処理態様が、前者が粉体媒体を伴うのに対し後者は粉砕媒体を伴わない。また、処理容器形状も前者中間膨出の二連円錐台形でありその中央縦断面内周の底部側に排出部位(排出口)を備えるのに対し、後者は水平円筒状でその一端側端面部の下端側に排出口を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特許3996256号公報
【文献】特開2006-84143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そして、本願出願人は、上記特許発明に係る乾燥機のうち、「隅部がなく、前記軸方向を往復するうねり運動がより円滑に行える、処理容器が中間膨出の二連円錐台形で、かつ、両端が鏡板で形成されている構成」もの(例えば、「振動乾燥機VH25型センター排出」を製造販売している。その結果、当該機種等において、需要者(使用者)から、当該構成の効果(長所)である「処理容器から処理済物の排出が迅速かつ円滑となる」に加えて「排出後容器内残量の減少」が要望されるようになってきた。すなわち、ファインケミカルの分野における粉状薬剤は、非常に高価なものが多い。このため、他の薬剤に比して、「排出後容器内残量」が可及的に少ないことが要求される。換言すれば、清掃に伴う廃棄も最小限として、被処理物替えに伴う新たな被処理物に対する汚染(コンタミ)も可及的に少なくすることが望ましいためである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本願発明者らは、上記需要者の要望に応えるべく、鋭意開発に努力をした。その結果、製品排出手段は、前記二連円錐台形の中央縦断面内周の底部側で、前記発振機の前記中央縦断面内周の中心垂直線から前記円振動の回転方向側に若干偏心させて製品排出部位(排出口)を備えた構成とすれば、上記需要者の要望「排出後容器内排出残量の減少」に応えることができることを知見して、下記構成の粉粒体用振動処理装置に想到した。
【0013】
粉粒体の又は投入後粉粒体となる被処理物が粉砕媒体を伴わずに投入され、軸線が略水平となるように弾性体上に配される筒状の処理容器と、該処理容器に振動を付与する発振機(駆動手段)と、及び製品排出手段とを備え、
該発振機が、前記処理容器に主として軸線回りの円振動(楕円振動を含む。)を付与させるものであり、
前記処理容器は、中間膨出の二連円錐台形である粉粒体用振動処理装置において、
前記二連円錐台形のテーパ角度(前記軸線に対する交差角度)が4°~15°であるととともに、
前記製品排出手段は、前記二連円錐台形の中央縦断面内周の底部側で、前記発振機の前記中央縦断面内周の中心垂直線からの偏心角度θ=2°以上15°未満の範囲で前記円振動の回転方向側に偏心させて製品排出部位(排出口)を備えている、ことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願発明の振動処理装置内に処理容器内における粉粒体の混合流動性を示す横断面説明図(a)、同じく縦断面説明図(b)
図2】本願発明の一実施形態における横形振動乾燥機の概略平面図
図3】同じく概略側面断面図
図4】同じく概略正面断面図
図5図4において製品排出口と、排出時における製品(粉粒体)の持ち上がり部位との位置関係を示す概略平面断面図
図6】本願発明の処理装置を用いて処理物を乾燥処理した場合の乾燥概念グラフ図
図7図4において排出機構を吸引排出構造とした例を示す概略正面断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本願発明の実施形態を図例に基づいて説明する。
【0029】
(1)図2~5は、本願発明の一実施形態を示す横形振動加熱乾燥装置の一例を示す(前提部分は、特許文献1における記載を一部編集して引用)。
【0030】
本装置の基本構成は、粉粒体のまたは投入後粉体となる被処理物が投入され、軸線Lが略水平となるように弾性体、図例ではコイルばね14上に配される筒状の処理容器12と、該処理容器12に振動を付与する発振機(駆動手段)16とを備えたものである。
【0031】
ここで、投入後粉粒体となるとは、特公昭63-63241号の如く、溶質を含む液状体(泥状体を含む。)が、投入後乾燥(溶剤揮散)して粉粒体になる場合や、液状体が反応、更には凍結して粉粒体になる場合、更には、粉末体が造粒作用により顆粒体になる場合を含む。
【0032】
また、投入口18は、天井壁側に形成されている。投入口18の位置は、これに限られず、粉粒体を投入可能な位置なら、両端壁面上側部等、任意である。
【0033】
弾性体は、コイルばね14であり、架台32の支持柱32a上に配され、ブラケット34を介して処理容器12を支持している。該弾性体は、処理容器12に付与される振動を吸収できる弾性及び強度を有するものなら、特に限定されない。
【0034】
このような弾性体としては、板ばね、エアばね、ゴム状弾性体等を使用可能である。なお、コイルばねのとき、該コイルばねをエラストマー材料で包んだものが、ばね弾性に加えて、ゴム状弾性の減衰性能を利用できて望ましい。
【0035】
発振機16は、図例では、不平衡錘22が両側に配された発振部24を、ユニバーサルジョイント26により原動機(モータ)28で回転させる機械式である。処理量、必要振動数、振動のタイプに応じて、機械式に限らず、電磁石方式、振動モータ方式も、単独、又は、必要により機械式に組み合わせて使用できる。また、発振機16と処理容器12との連結は、発振機16の発振部24をブラケット34の下方延設部34aに取付けて行っている。
【0036】
このとき、処理容器12に付与する振動は、主として軸線回りの円振動ないし楕円振動を付与させるものとする。
【0037】
なお、図2~5・7では、発振機16の取付位置は、通常、処理容器12の略直下としてある。しかし、軸線Lの高さで処理容器の一側に、発振器16を設けてもよい(特許文献1、図5参照)。
【0038】
また、発振機16は、処理容器12の両側に一対設けてもよく、清掃性等が阻害されるが、処理容器12の軸芯位置に設けてもよい。
【0039】
また、振動数・振動ピッチは、処理容量及び要求される混合流動性等により異なるが、例えば、粉体加熱乾燥に使用する場合、振動数:500~1800cpm、振動ピッチ:10~0.5mmとする。ここで通常、振動数の増大に比して振動ピッチは小さく設定する。
【0040】
温調手段は、蒸気(スチーム)又は冷媒等の熱媒体を通過可能に配管されたジャケット30とされている。ジャケットへの蒸気流入口31の位置は、特に限定されないが、本実施形態では、後述の集塵筒部38の周璧部位に設けてある。温調手段としては、これに限られず、抵抗加熱、誘導加熱用のコイルを処理容器12に巻き付けたり、また、マイクロ波発振器を天井に取付けてマイクロ波加熱と併用したり、更に、面状の化学反応発熱体を処理容器に巻付けてもよい。
【0041】
本処理容器は、乾燥装置であるため、排気口36を備えている。具体的には、粉体(粉塵)の処理系外への漏出を防止するため、処理容器12の天井側中央に形成された集塵筒部38には排気口36を形成してある。
【0042】
該集塵筒部38は、中間高さ位置の保持板40から複数のバッグフィルタ42を吊り下げた構成である。この集塵筒部38の内径は、40~50cmとする。この排気口36には、集塵筒部38を介さない場合は、必然的ではないが、真空ポンプ、コンプレッサ等の真空吸引手段(図示せず)が連結可能となっている。このときの、真空吸引能力は、1~1.5Nm/分の吸引容量、又は、処理容器12内に絶対圧5~10Torr(0.5~1kPa)の真空度が得られるものとする。
ここまでは、特許文献1に記載の特許発明に係る振動乾燥機と同様である。
【0043】
(2)本願発明は上記従来構成において、本実施形態の処理容器12の二連円錐台形のテーパ角度(軸線に対する交差角度)を、特許文献1では5°~30°としていたのを、4°~15°、望ましくは、4°~10°(実施例に整合)とする。テーパ角度が小さ過ぎても大き過ぎても、本願発明の混合流動性の向上が期待できず、また、排出口からの排出速度(排出性)も低下する。なお、テーパ角度の下限値を特許発明より若干小さく4°としたのは、当該テーパ角度でも本願発明の効果(混合流動性乃至排出速度の増大)を奏することを確認したためである。また、特許発明より、テーパ角度の上限値を30°から15°と小さくしたのは、本願発明では混合流動性乃至排出速度の増大は二次目的であり、「排出後容器内残量の減少」を一次目的とするためである。
【0044】
テーパ角度が大き過ぎると排出工程終期における製品(粉粒体)が再下端位置(垂線位置)に集中し易い。このため、後述の排出工程終期の偏心位置への製品の持ち上がりさらには至偏心位置での跳ね上がりが円滑に行われず排出後残量が増大し易い。
【0045】
本願実施形態においては、さらに、その二連円錐台形の中央縦断面内周の底部側で、従来、軸線Lから下した中心垂直線位置にあった製品排出口44を、垂直線Vから偏心角度θ:略1.5°以上15°未満、望ましくは略2°以上10°未満、さらに望ましくは略4~8°の範囲となるように円振動の回転方向(図例では右回転)R側に偏心させて位置させている。これらの偏心角度θは、小さすぎても大きすぎても本願発明の本質的効果(排出後容器内残量の低減)を奏し難くなる。
【0045】
そして、処理済物排出口44は、排出バルブ46を介した蛇腹ホース48で形成されている。
【0046】
また、必然的ではないが、両端を鏡板12aで形成することにより、角ばった内角隅部が発生せず、混合流動性がより良好となるとともに角部に製品が付着残留し難くなり排出後の容器内残量の低減効果がさらに担保し易くなる。
【0047】
このとき、処理容器12の二連円錐台形のテーパ角度(軸線に対する交差角度)は、処理容器12の容量(即ち、円錐台形の平均径及び長さ)にもよるが、4°~15°、望ましくは、4°~10°とする。テーパ角度が小さ過ぎても大き過ぎても、本願発明の混合流動性の向上が期待できず、また、排出口からの排出速度(排出性)も低下する。特許発明より、テーパ角度の上限値を30°から15°と小さくしたのは、本願発明では混合流動性乃至排出速度より、排出残量減少を目的とするためである。すなわち、テーパ角度が大過ぎるとセンター排出に際して、中央部に製品が集中しすぎて、後述の偏心位置への製品の持ち上がりが円滑に行われず排出後残量が増大し易い。
【0047】
なお、二連円錐台形処理容器の寸法仕様は、例えば、呼称容量25Lの場合、中央内径:250mm、内側全長:500mm、テーパ角度:7°する。
【0048】
なお、図例中、52は掃除等のためのマンホールであり、54は、内部確認のための覗き窓である。
【0049】
(3)次に、上記横置き形振動乾燥装置の、使用態様を説明する。
【0050】
まず、投入口18から、被処理物を、処理容器12の容量の50~80容量%、望ましくは、60~70容量%を投入する。投入量が少なすぎると、錐台形にしたことによる本願発明の混合流動性向上の効果を得難い。また、粉粒体の径は、略1μm~5mm、望ましくは、略0.1~1mmが、混合流動性向上の効果が得易い。粉粒体は、真比重が0.5~10、望ましくは0.8~2とすることが、混合流動性向上の見地から望ましい。
【0051】
次に、モータ28を起動させて発振機16を駆動させ、処理容器12に振動を付与するとともに、所定温度の蒸気(加圧・減圧)をジャケット30に蒸気流入口31を介して流入させる。所定温度を維持するために、ジャケット30には図示しないが所定圧で開閉するドレン弁を備えた配管が耐圧ゴムホース等を介して接続されている。該蒸気は処理物(粉体)の材質によっては、蒸気は、被処理物投入前に通過させて、処理容器12を加熱しておいても良い。また、蒸気の代わりに、処理温度に応じて温水、さらには高温用(200℃以上)や低温用(氷点下)の熱媒体を使用することができる。
【0052】
発振機の駆動馬力は、処理量により異なるが、例えば、5.5~7.5kWとし、そして発振機16の駆動仕様は、粉粒体の種類(粒径・比重)及び充填量により異なるが、前述の如く、振動数500~1800cpm、振動ピッチ0.5~10mmとする。同時に、真空ポンプ等を作動させて、真空吸引を行って、乾燥処理を継続する。
【0053】
すると、図6に示す如く、処理物の温度及び真空圧が変化して、処理物温度が加熱温度に漸近平行状態になるとともに、処理容器12内の真空度が真空ポンプ(真空吸引手段)の能力に漸近平行状態になったときに、運転を停止して、即ち、発振機、真空ポンプを停止させ、必要により蒸気弁を閉じる。
【0054】
このとき、処理容器12内の処理物は、前述の如く、混合流動性が良好であるので、迅速かつ万遍なく乾燥処理される。
【0055】
そして、運転停止後、排出バルブ46を開として、処理済物(乾燥処理物:製品)を排出口44から排出させる。このとき、発振機16を起動させて処理容器12に振動を付与することにより、容易に乾燥処理済物を排出できる。この処理済物排出時の振動数は、粉粒体の特性(製品量、粒径、比重、安息角等)により異なるが、乾燥処理時のそれより、相対的に小さい出力・ピッチ、回転数で良い。このとき、例えば、振動数:1500~300cpm、振動ピッチ:0.5~10mmとする。
【0056】
また、振動のタイプは、円・楕円振動とする。この場合は、乾燥処理の混合用発振機とは、別の排出用発振機を処理容器に取り付けることも考えられる。
【0057】
ここで、振動の回転方向側二連円錐台形の中央縦断面内周の底部側で、中央縦断面内周の中心垂直線Vからθ=2°以上15°未満(望ましくは5~10°)の範囲で振動の回転方向側に偏心させて製品排出部位(排出口)を備えている構成の場合、排出口44を偏心させない場合に比して、「排出後容器内残量」が大幅に減少する。その理由は、微粉体の場合、その回転方向側に若干であるが製品紛体の持ち上がり上端が偏在するためと推定される(図5参照)。
【0058】
<試験例>試験機として、図4に示すタイプの下記寸法仕様の二連円錐台形の処理容器を備え、製品排出構造が自重落下方式である振動乾燥機「VH25型センター排出」を実施例・比較例の2台を準備した。
称呼容量:25L、テーパ角度:7°、センター内径:270mm、内側全長:500mm、排出口の偏心角度:実施例 5°、比較例: 0°
【0059】
そして、リチウム(含液率:6質量%、嵩比重:1.4)37.5kgを、実施例・比較例の各振動乾燥機の処理容器に投入し、下記条件で乾燥処理した。
回転数:1500rpm,振幅:3mm、加熱蒸気温度:130℃、処理時間:40分
【0060】
すると、図6に示す如く、処理物の温度及び真空圧が変化して、処理物温度が加熱温度に漸近平行状態になるとともに、処理容器12内の真空度が真空ポンプ(真空吸引手段)の能力に漸近平行状態になったときに、運転を停止して、即ち、発振機、真空ポンプを停止させ、蒸気弁を閉じた。
【0061】
そして、乾燥処理後、振幅数:1500rpm、振幅3mm、右回転方向で加振して排出した。
その結果、排出所要時間は、いずれも5分であったが、排出後容器内残量は、比較例:210gに対し実施例:150gと、約3割以上少なくなった。なお、乾燥処理製品総量は、35.43kg、含液率:0.5%あった。
【0063】
また、図7図4において、排出機構を、吸引排出パイプ(吸引排出構造)56によるものとした例である。この機構でも図4の場合と同様、排出効率、すなわち、排出工程後残留量がほとんどなくなりかつ排出時間も短縮できる。吸引排出構造の方が、落下排出に比して、吸引ホースの占有空間が必要となるが、遠方移送・冷却移送・排出弁のコンパクト化が可能となる。
【0064】
さらに、吸引排出パイプ56をコンプレッサ等に切り替え接続可能にしておけば、容器内面の付着粒子の除去を行うことが容易で、残存粒子によるコンタミの発生を抑止できる。
【符号の説明】
12 処理容器
14 弾性体(コイルばね)
16 発振機
30 温調手段(ジャケット)
36 排気口
38 集塵筒部
44 処理済物排出口
56 吸引排出バルブ
θ 容器中央縦断面内周の垂直軸線からの偏心角
V 垂直軸線
L 水平軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7