(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】軟磁性金属扁平粉末およびそれを用いた樹脂複合シート並びに成形加工用樹脂複合コンパウンド
(51)【国際特許分類】
H01F 1/147 20060101AFI20220317BHJP
H01F 1/26 20060101ALI20220317BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20220317BHJP
B22F 3/00 20210101ALI20220317BHJP
C22C 38/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
H01F1/147 191
H01F1/26
B22F1/00 Y
B22F3/00 B
C22C38/00 303T
(21)【出願番号】P 2020013007
(22)【出願日】2020-01-11
【審査請求日】2021-03-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594020961
【氏名又は名称】株式会社メイト
(72)【発明者】
【氏名】安井 宏
(72)【発明者】
【氏名】日笠 信彦
(72)【発明者】
【氏名】西山 信一
(72)【発明者】
【氏名】行吉 直也
【審査官】井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-022869(JP,A)
【文献】特開2018-142618(JP,A)
【文献】特開2009-266960(JP,A)
【文献】特開2010-196123(JP,A)
【文献】特開2002-093612(JP,A)
【文献】相川 芳和,Fe-Si-Al系圧粉磁心の損失に及ぼす組成の影響,山陽特殊製鋼技報,第7巻,日本,2000年,p.29-34
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 1/147
H01F 1/26
H01F 1/20
B22F 1/00
B22F 3/00
C22C 38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Al=6~7.5wt%、Si=8.5~9.5wt%含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなるとともに、AlとSiの合計含有量が15~16.5wt%である成分組成を持ち、かつ、保磁力が70A/m以下である軟磁性金属扁平粉末であって、該軟磁性金属扁平粉末を使用した、樹脂複合シート、または樹脂複合組成物を成形した物の透磁率の温度係数Kが、-40℃~85℃の範囲で下記式(1)(2)(3)を満たすことを特徴とする、軟磁性金属扁平粉末。
K=(μ(0℃)-μ(-40℃))/μ(-40℃)>0 (1)
K=(μ(40℃)-μ(0℃))/μ(0℃)>0 (2)
K=(μ(85℃)-μ(40℃)/μ(40℃)>0 (3)
K:温度係数、μ:透磁率(μ’:実数透磁率、μ’’:虚数透磁率)
【請求項4】
請求項1と2のいずれかに記載の軟磁性金属扁平粉末と樹脂よりなることを特徴とする、射出成形用および押出成形用の樹脂複合組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信機器や各種電子機器において発生する不要電磁波の外部への漏洩や内部回路間での干渉、また外部電磁波による誤動作などの影響を防止するために使用するノイズ抑制部品や、電磁誘導を利用したモバイル機器のペン入力や、非接触充電モジュールにおいて使用する磁気シールド部品に用いられる軟磁性金属扁平粉末と、それを用いた樹脂複合シート並びに成形加工用樹脂複合組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器や各種電子機器から不要電磁波が発生し、外部および内部干渉による機器の誤動作や通信障害が問題となり、各種の対策が行われているが、5G、WiFi6通信方式の普及で問題がさらに顕在化しつつある。
【0003】
また、通信機器や各種電子機器の薄型化、小型化が進み、電子部品の実装密度が飛躍的に高まったことで部品間や回路基板間の電磁干渉に起因する問題が頻発し、ノイズ対策用電子部品やフレキシブル磁性シート(樹脂複合シート)が使用されている。
【0004】
一方で電磁波の有効利用が進んでおり、電磁誘導方式を利用したモバイル機器のペン入力や非接触充電が普及し、金属部品との干渉防止や磁界を有効に利用するためにコイル部品との組み合わせで磁気シールド材が使用されている。
【0005】
電磁波ノイズ抑制や、磁気シールドのために使用されるフレキシブル磁性シート(樹脂複合シート)や押出、射出成形品には、軟磁性金属扁平粉末が使用されている。これは扁平状に加工することにより反磁界係数が小さくなり、面内方向の透磁率が高くなるためである。また、スネークの限界を超えてより高い周波数まで透磁率を維持できるようになる。電磁波ノイズ抑制のためには、透磁率の磁気損失を示す虚数透磁率μ’’を利用しており、磁気シールドでは透磁率の実数透磁率μ’が利用されている。
【0006】
しかしながら、近年の装置の薄型化、小型化の進行で、電磁波ノイズ抑制や磁気シールド部品の実装スペースが限られるようになり、今まで以上に透磁率の高い軟磁性金属扁平粉末とフレキシブル磁性シート(樹脂複合シート)並びに成形加工用樹脂複合組成物への要求が高まっている。
【0007】
従来よりFe基合金粉末を用いた軟磁性金属扁平粉末として、センダストと呼ばれるFe-Al-Si組成の扁平粉末の透磁率が高いことが知られている。特に結晶磁気異方性と磁歪がともにゼロであるFe-Al-Si組成はAl:5.4wt%、Si:9.6wt%付近で残部がFeと不可避の不純物である。このため、扁平粉末表面酸化を加味して組成を調整する特許第3722391(特許文献1)がある。一方で、特許第6592424(特許文献2)、特開2005-281783(特許文献3)ではAl、Siの組成を積極的に調整することで、より高い透磁率を得ることができることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特許第3722391
【文献】特許第6592424
【文献】特開2005-281783
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
通信機器や各種電子機器が実際に使用される際には周辺温度の変化や発熱があり、自動車では-40~150℃、その他では-40~85℃での性能保証の要求がある。このため、最低でも-40~85℃の温度域で安定した電磁波ノイズ抑制や磁気シールド性能を確保する必要がある。しかしながら、一般的に透磁率の測定は常温でしか行われておらず、特許文献1および2および3では本発明でいう実際の使用温度範囲で安定して高い透磁率を得ることに関しての記載はない。
【0010】
また、特許文献2ではFe-5.4wt%Al-9.6wt%Siから組成を調整することで透磁率が向上すると記載されている。一般的には透磁率を高めるためにはアスペクト比を大きくして反磁界を減らすことと、保磁力を低くすることが有効であるが、組成を調整することで保磁力は100A/m(印可磁場144kA/m)以上にまで増加しており、従来技術ではさらなる高透磁率化の要求に対応することが困難な状況になっている。さらに特許文献2および3の実施例には、本発明でいうAl+Siの合計含有量と保磁力を満たすものは記載されていない。また、アスペクト比は測定する粉末毎に扁平加工度が異なるため、測定する粉末の長手方向のサイズを規定しないと何ら意味を持たないがこれらに関する記載がない。さらにアスペクト比のみに注目すると、過粉砕となって微粉の割合が増え、保磁力が増加する問題があるがこれに関する記載もない。
【0011】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、-40℃~85℃の範囲内で透磁率が正の温度係数を示し、かつ保磁力を低く維持することで透磁率の高い軟磁性金属扁平粉末と樹脂複合シート並びに成形加工用樹脂複合組成物を提供しようというものである。
【0012】
本発明は、上述した従来のFe-Al-Si組成の軟磁性金属扁平粉末および該材料を用いた樹脂複合シート並びに成形加工用樹脂複合組成物が有する課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、Fe-Al-Si組成の軟磁性金属扁平粉末の透磁率の温度係数Kが-40℃~85℃の範囲で下記式(1)(2)(3)を満たし、保磁力が70A/m以下であることを特徴とする軟磁性金属扁平粉末が得られる。
K=(μ(0℃)-μ(-40℃))/μ(-40℃)>0 (1)
K=(μ(40℃)-μ(0℃))/μ(0℃)>0 (2)
K=(μ(85℃)-μ(40℃))/μ(40℃)>0 (3)
K:温度係数、μ:透磁率(μ’:実数透磁率、μ”:虚数透磁率)
【0014】
また本発明によれば、前記軟磁性金属扁平粉末で、平均粒子径D50付近の粒径の粉末におけるアスペクト比が20~200の扁平状であり、Al:6~7.5wt%、Si:8.5~9.5wt%含有し、残部:Feおよび不可避不純物からなる成分組成を持ち、AlとSiの合計含有量が15~16.5wt%であることを特徴とする軟磁性金属扁平粉末が得られる。
【0015】
また本発明によれば、前記軟磁性金属扁平粉末と樹脂よりなり保磁力が80A/m以下であることを特徴とする、樹脂複合シートが得られる。
【0016】
また本発明によれば、前記軟磁性金属扁平粉末と樹脂よりなることを特徴とする、射出成形用および押出成形用の樹脂複合組成物が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、高い透磁率を持ちかつ透磁率の温度係数を調整した軟磁性金属扁平粉末と樹脂複合シート並びに成形加工用樹脂複合組成物を提供しようというものである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】Fe-5.4wt%Al-9.6wt%Si組成の軟磁性金属扁平粉末で、透磁率の異なるグレードの軟磁性金属扁平粉末を50vol%配合した樹脂複合シートの実数透磁率の温度依存性を示した図である。
【
図2】軟磁性金属扁平粉末で、Fe-5.4wt%Al-9.6wt%Si組成とFe-4.5wt%-9.0wt%Si組成の場合の実数透磁率の温度依存性を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について具体的な最良の形態について説明する。
【0020】
Fe-Al-Si組成の軟磁性合金原料粉末は、水アトマイズ法、ガスアトマイズ法、インゴット粉砕法など一般に知られている各種の方法により作製することができるが特に限定するものではない。
【0021】
Fe-Al-Si組成の軟磁性合金原料粉末は、Al:6~7.5wt%、Si:8.5~9.5wt%含有しAlとSiの合計含有量が15~16.5wt%であることが望ましい。さらに好ましくは15.5~16wt%の範囲である。AlとSiの合計含有量が15wt%未満の場合には保磁力が増加するために透磁率が低くなり、16.5wt%を超えると透磁率の85℃での温度係数が負になる。また、軟磁性合金原料粉末はFe-Al-Si以外に、必要に応じてMn、Mo、Ca、O、C等の微量成分を添加してもよい。
【0022】
扁平加工は特に制限はないが、アトライター、ボールミル、振動ミルなどを用いて蒸留水もしくは有機溶剤の存在下で実施することができる。有機溶剤としてはトルエン、ヘキンサン、アルコール、エチレングリコールなどを使うことができ、加工中は装置内の雰囲気を調整してもよい。また、扁平化助剤としてステアリン酸などを加えてもよい。さらに、扁平加工を行う前に軟磁性合金原料粉末は熱処理を行ってから使用してもよい。
【0023】
扁平化処理後は、加工中に生じた結晶の歪を取るために、不活性雰囲気中で熱処理することが望ましく、熱処理温度は500~900℃が望ましい。500℃以下では歪取りが十分でなく、900℃を超えると部分的に凝集や焼結が発生するためである。
【0024】
軟磁性金属扁平粉末の平均粒径D50付近の粉末におけるアスペクト比は20~200であることが好ましく、30~150であることがより好ましい。アスペクト比が20未満では反磁界の影響で樹脂複合シート並びに成形加工用樹脂複合組成物にした時に透磁率が低下し、200を超えると加工性が低下する。
【0025】
さらに、かさ密度/真密度は0.036~0.086の範囲であることが望ましい。0.036より小さくなると扁平化が進みすぎ、取り扱いが困難となる。一方0.086を超えると扁平化が不十分なため、透磁率が低下する。かさ密度の測定はJISZ2504に基づいて実施した。真密度は島津製作所製のAccuPyc1330を用いて測定した。
【0026】
扁平粉末の平均粒子径D50の測定は、Sympatec社製のHELOS/BR-multiでR4を用いて測定を行った。得られた平均粒径D50に対して、±10%の粒径範囲の扁平粉末を空気分級で抽出し、エポキシ樹脂に埋め込み鏡面研磨して厚み測定用のサンプルを得た。アスペクト比は扁平粉末の長径/厚みであるが、長径は平均粒径D50の値とし、粉末扁平粉末の厚みを走査型電子顕微鏡で計測してアスペクト比を求めた。アスペクト比は、樹脂複合磁性シートもしくは成形品をエポキシ樹脂に埋め込み、平均的な長径と厚みを走査型電子顕微鏡で計測して求めても良い。
【0027】
保磁力は東北特殊鋼製の自動計測保磁力計K-HC1000を用い印可磁場148kA/mで測定した。扁平粉末約10mgを、飛散しないように非磁性のテープで被覆し測定用サンプルとした。樹脂複合シートと樹脂組成物の成形品の保磁力測定は透磁率測定用のサンプルを用いた。
【0028】
透磁率の測定は、Keysight社製のインピーダンスアナライザーE4991Bと磁性材料テストフィクスチャー16454Aと耐熱テストキットを用いて、恒温恒湿機中で-40℃~85℃の温度範囲で行った。
測定用サンプルは、樹脂複合シートと成形加工用樹脂複合組成物を射出成形した物を使用した。
【0029】
樹脂複合シートは、軟磁性金属扁平粉末と高分子材料とを配合し、公知の種々の方法でインク状にしてドクターコーティング、コンマコーティング、スクリーン印刷等でシート状の物を作製し、さらにこれを各種のロールや、プレスで圧縮してもよい。また、ニーダー等で混練してロール成形して作製してもよく、さらにこれをプレスで圧縮してもよい。シート作製時には磁場を印加して、軟磁性金属扁平粉末の配向を制御することで、透磁率を高めることができる。
【0030】
樹脂複合シートは、保磁力が80A/m以下であることが望ましい。より好ましく70A/m以下である。全固形分に対して軟磁性金属扁平粉末の含有量が35vol%~65vol%であることが望ましい。より好ましくは、40vol%~55vol%である。35vol%未満の場合には保磁力が80A/m以下でも透磁率が低くなり、65vol%を超えるとシート化が困難となり、透磁率が低下する。
【0031】
高分子樹脂として、ポリウレタン系、アクリル系、シリコン系、エポキシ系、塩素化ポリエチレン系、クロロプレン系ゴム等を単独もしくは組み合わせて使用することができるが、これに限定するものではない。熱可塑性、熱硬化性についても限定するものではない。また、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてカップリング剤、分散剤、防錆剤などによる各種表面処理や、酸化防止剤、顔料、非磁性充填剤、熱伝導性充填剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0032】
樹脂複合組成物は、軟磁性金属扁平粉末と高分子樹脂とを混合し、ニーダーや二軸混練機で混練するが特に限定されるものではなく、公知の種々の方法で行うことができるが、全固形分に対して軟磁性金属扁平粉末の含有量が35vol%~65vol%であることが望ましい。より好ましくは45vol%~55vol%である。35vol%未満の場合には成形物の透磁率が低くなり、65vol%を超えると成形が困難となり、透磁率が低下する。
【0033】
高分子材料としては熱硬化性のエポキシ系、アクリル系、尿素系樹脂等や熱可塑性のポリアミド系、芳香族ポリアミド系、ポリフェニレンサルファイド系、フッ素系、ポリエーテル系、ポリエステル系樹脂等を単独もしくは組み合わせて使用することができるが、これに限定するものではない。また、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じてカップリング剤、分散剤、防錆剤などによる各種表面処理や、酸化防止剤、顔料、非磁性充填剤、熱伝導性充填剤等の各種添加剤を必要に応じて添加することができる。
【0034】
樹脂複合組成物は押出成形機、押出成形機等を用いて各種の形状に成形加工することができる。成形の時には、磁場をかけながら成形してもよい。
【実施例】
【0035】
以下、本発明について実施例により具体的に説明する。
【0036】
実施例1~14、比較例1~8で使用した軟磁性金属扁平粉末は、インゴット粉砕法により作製した平均粒径D50=100μmのFe-Al-Si組成の原料粉末を用い、アトライターで所定のかさ密度/真密度になるように扁平加工を行った。実施例1~14は保磁力が70A/m以下になるように加工条件を調整した。扁平加工はエタノールを用いて湿式条件で行った。扁平加工後は、エタノールを乾燥除去し、Ar雰囲気中800℃で2時間の歪取りのための熱処理を行った。
【0037】
実施例1~12、比較例1~6では得られた軟磁性金属扁平粉末を用い、全固形分に対して50vol%となるように熱硬化型ポリウレタン樹脂をトルエンで希釈した樹脂溶液に配合して分散させた。この分散液をコンマコーターで100μm厚みに塗布し、磁場配向を行った後に50℃で乾燥し溶剤を除去した。乾燥後のシートを積層して150℃で10MPaの圧力で熱プレスし、厚み200μmの性能評価用の樹脂複合シートを得た。次に外形20mm、内径10mmのドーナツ状に切り出し、保磁力と透磁率を測定した。
【0038】
以上の実施例1~12と比較例1~6の、扁平粉末の組成、保磁力、平均粒子径D50、アスペクト比、かさ密度/真密度と樹脂複合シートでの保磁力、0℃での実数透磁率、0℃での虚数透磁率、各温度幅での温度係数を表1にまとめて示す。実数透磁率は1MHz、虚数透磁率は500MHzでの値とした。
【0039】
実施例13~14、比較例7~8では得られた軟磁性金属扁平金属とポリアミド12を用い、二軸混練機を用いて加熱混練することで樹脂複合組成物を得た。軟磁性扁平粉末はシランカップリング剤で事前に表面処理した物を使用した。次いで、射出成形機を用いて外形20mm、内径10mm、厚み1mmのリング状に成形し、保磁力と透磁率を測定した。
【0040】
以上の実施例13~14、比較例7~8の樹脂複合組成物で用いた扁平粉末組成、保磁力、アスペクト比と樹脂複合組成物中の扁平粉末配合量、成形体での保磁力、0℃での実数透磁率、0℃での虚数透磁率と各温度幅での温度係数を表2と3にまとめて示す。
【0041】
【0042】
表1より、実施例1~12はいずれも実数および虚数透磁率の温度係数Kが-40℃~85℃で正であり、比較例1~5より高い実数および虚数透磁率を0℃で有している。比較例6のFe-5.4wt%Al-9.6wt%Si組成では0℃での実数および虚数透磁率は高いが、温度係数が0℃を越えると負になり、実数および虚数透磁率は急激に低下する。さらに、Fe-5.4wt%Al-9.6wt5%Si組成では
図1に示すように0℃での実数透磁率が高いほど、85℃での実数透磁率の低下が顕著になる。
【0043】
85℃での実数透磁率を比較すると、実施例1~12はいずれも200以上になるが、比較例6の実数透磁率は145で大きな差がある。また、
図2に示すようにFe-Al-Si合金組成を本実施例の範囲外で調整しても、実数透磁率の温度係数を調整できるが、0℃での実数透磁率が低くなりすぎて、高透磁率化の要求に応えることができない。
【0044】
【0045】
【0046】
表2および3より樹脂複合組成物の射出成形体においても実施例13~14は実数および虚数透磁率の温度係数Kが-40℃~85℃で正である。また比較例7のFe-5.4wt%Al-9.6wt%Siは0℃を越えると負の温度係数を示すため、85℃での透磁率は70に低下する。比較例8は粉末配合量が多すぎたため成形ができず、成形不能としている。