(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】取引データの解析による最適化された配達システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/08 20120101AFI20220317BHJP
G06Q 30/06 20120101ALI20220317BHJP
【FI】
G06Q10/08 300
G06Q30/06 300
(21)【出願番号】P 2019140062
(22)【出願日】2019-07-30
【審査請求日】2019-07-30
【審判番号】
【審判請求日】2020-09-23
(31)【優先権主張番号】P 2019030784
(32)【優先日】2019-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】515239711
【氏名又は名称】BHI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002790
【氏名又は名称】One ip特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】日昔 靖裕
【合議体】
【審判長】渡邊 聡
【審判官】松田 直也
【審判官】関口 明紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-195206(JP,A)
【文献】特開2018-206045(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配達システムであって、
外部サービスから取引データを取得する取引データ取得部と、
前記取引データ取得部で取得した取引データを記憶する取引データ記憶部と、
前記取引データ記憶部に記憶された取引データを解析し、
配達日時、配達先又は配達方法の少なくともいずれかを抽出するとともに、再配達が発生したか否かを検出し、過去の前記取引データから抽出された前記配達日時、前記配達先又は前記配達方法の少なくともいずれかを学習データの少なくとも一部として用い、最初の配達又は現在の配達にて前記再配達が発生する可能性を低めるように、前記配達日時、前記配達先又は前記配達方法の少なくともいずれかを含む、配達に関するリコメンドを生成する解析部と、
前記解析部で生成した配達に関するリコメンドをユーザ端末に表示する表示部と、
を備え
る、前記配達システム。
【請求項2】
配達システムであって、
外部サービスから取引データ及びカレンダーの予定を取得する取引データ取得部と、
前記取引データ取得部で取得した取引データを記憶する取引データ記憶部と、
前記取引データ記憶部に記憶された取引データ及びカレンダーの予定を解析し、
配達日時、配達先又は配達方法の少なくともいずれかを抽出するとともに、再配達が発生したか否かを検出し、過去の前記取引データから抽出された前記配達日時、前記配達先又は前記配達方法の少なくともいずれかを学習データの少なくとも一部として用い、最初の配達又は現在の配達にて前記再配達が発生する可能性を低めるように、前記配達日時、前記配達先又は前記配達方法の少なくともいずれかを含む、配達に関するリコメンドを生成する解析部と、
前記解析部で生成した配達に関するリコメンドをユーザ端末に表示する表示部と、
を備え
る、前記配達システム。
【請求項3】
前記取引データ取得部は、前記外部サービスにおいてやり取りされるメッセージをフィルタリングして商品又はサービスの取引に関するメッセージのみを抽出し、前記商品又はサービスの取引に関するメッセージを取引データとして取得することを特徴とする、請求項1又は2に記載の配達システム。
【請求項4】
前記メッセージは、電子メールのメッセージ、クラウド上に記憶されたメッセージ又はSNSでやり取りされるメッセージであることを特徴とする、請求項3に記載の配達システム。
【請求項5】
前記解析部は、前記取引データ記憶部に記憶された過去の取引データに加えてカレンダーの予定を学習データの少なくとも一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成することを特徴とする、請求項1~
4のいずれか一項に記載の配達システム。
【請求項6】
前記解析部は、前記取引データ記憶部に記憶されたユーザの過去の行動履歴からユーザの現在の行動ステータスが、日常であるか非日常であるかを予測し、予測されたユーザの現在の行動ステータスを学習データの少なくとも一部として用いることにより、前記配達に関するリコメンドを生成することを特徴とする、請求項1~
5のいずれか一項に記載の配達システム。
【請求項7】
前記解析部は、環境情報を学習データの少なくとも一部として用いることにより、前記配達に関するリコメンドを生成することを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載の配達システム。
【請求項8】
前記解析部は、前記取引データ及び前記カレンダーの予定を解析し、配達時間の最適化を行うことを特徴とする、請求項2又は請求項2に従属する場合の請求項3~
7のいずれか一項に記載の配達システム。
【請求項9】
前記取引データ取得部は、1つ又は複数の前記外部サービスから取得した前記取引データに基づいて、同一の商品の配達に関する取引データの名寄せを行うことを特徴とする、請求項1~
8のいずれか一項に記載の配達システム。
【請求項10】
前記取引データ取得部は、1つ又は複数の前記外部サービスから取得した前記取引データに基づいて、同一の配達案件に関する取引データの名寄せを行うことを特徴とする、請求項1~
9のいずれか一項に記載の配達システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された配達システムに関し、特に、電子メール等のメッセージから抽出された取引データの解析に基づき最適化される配達システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、オンラインストアでの商品の購入が盛んに行われている。オンラインストアの数は増加し続けており、ユーザの利便性が高まる一方で、オンラインストアで購入された商品を配達する配達人員は2027年には24万人不足すると言われている。また、再配達による配達人員への負担が社会問題となっている。
【0003】
配達人員の不足の問題や配達の効率化については、個々の配達業者がそれぞれ自社の取得しているデータを分析することで、対応が試みられている。しかしながら、一人のユーザが複数のオンラインストアを利用する状況の中で、利用するオンラインストア毎、又は商品購入の取引毎に利用する配達業者が異なることも多い。
【0004】
そのため、あるユーザについて一社の利用状況のみを分析したのでは、そのユーザにとっての最適な配達日時や配達方法等を決定し、不在等による再配達を防止するためには、十分なデータが得られない場合もある。
【0005】
また、配達日時や配達方法の指定は、ユーザ自身が選択する等、ユーザ側に委ねられているが、ユーザが選択した配達日時や配達方法が配達の効率面で必ずしも最適とは限らず、配達業者側の都合が考慮されないという問題もある。
【0006】
また、急な予定変更等により、希望された配達日時にユーザが不在であることもある。さらに、配達日時の希望がない場合や細かな日時の選択ができない場合等には、再配達のリスクがより高まる。
【0007】
このように、再配達のリスクを回避し、配達の効率を高めるためには、配達業者の一社内のみでの分析やユーザに依存した配達日時や配達方法の設定では足りず、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データを横断的に分析することが可能な最適化された配達システムが求められる。
【0008】
配達の効率を上げるためのシステムに関し、特許文献1は、貨物車両の運搬状況を管理するために取得した情報を使用して、物流管理を行うとともに、当該情報から荷主毎に現在の荷物の配送状況情報を作成し、荷主に通知することを可能とする物流クラウドシステムを提案している。
【0009】
また、特許文献2は、配達先在宅状況の情報を機微情報として適切に取り扱いつつ、宅配業務の効率向上やコスト低減を可能とする技術として、在宅情報を当該配達先の地域別に集計して、各地域において在宅予定である配達先の割合を算定し、当該算定した地域別の在宅割合の情報である輸送支援情報を所定装置に出力する演算装置を備えた輸送業務支援システムを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開2014-160474号公報
【文献】特開2017-33341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1は、運搬状況の管理と荷物の配送状況情報の荷主への通知を行うことにより、荷主が配達時刻に不在となることを避けるものである。また、特許文献2は、在宅割合の情報を利用して不在時の配達を避けやすくし効率向上を図るものである。しかしながら、特許文献1及び2はいずれも複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データを横断的に分析することに着目したものではなく、複数の配達業者や複数のオンラインストアに情報が分散している状況について具体的な解決策を与えるものではない。
【0012】
そのため、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データを横断的に分析し、再配達のリスクを低減し、配達の効率をさらに高めることが可能な配達システムが望まれる。
【0013】
そこで、本発明は、上記課題を解決し、再配達のリスクを低減し、配達の効率を高めるため、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データを横断的に分析することが可能な最適化された配達システムを提供するものである。本発明は、このような最適化された配達システムを提供することにより、社会問題化する再配達を削減することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明では、外部サービスから取得した取引データを解析に解析結果に基づいてユーザ端末に配達に関するリコメンドを表示する配達システムを提供する。本発明では、特に、取引データとして、複数の配達業者や複数のオンラインストアとの取引においてやり取りされる電子メール等のメッセージを解析し、配達に関するリコメンドを生成することを特徴としている。
【0015】
本発明による配達システムは、外部サービスから取引データを取得する取引データ取得部と、取引データ取得部で取得した取引データを記憶する取引データ記憶部と、取引データ記憶部に記憶された取引データを解析し、配達に関するリコメンドを生成する解析部と、解析部で生成した配達に関するリコメンドをユーザ端末に表示する表示部とを備える。
【0016】
本発明の他の例による配達システムは、外部サービスから取引データ及びカレンダーの予定を取得する取引データ取得部と、取引データ取得部で取得した取引データを記憶する取引データ記憶部と、取引データ記憶部に記憶された取引データ及びカレンダーの予定を解析し、配達に関するリコメンドを生成する解析部と、解析部で生成した配達に関するリコメンドをユーザ端末に表示する表示部とを備える。
【0017】
本発明による配達システムにおいて、取引データ取得部は、外部サービスにおいてやり取りされるメッセージをフィルタリングし、商品又はサービスの取引に関するメッセージを取引データとして取得することを特徴とする。
【0018】
本発明による配達システムにおいて、メッセージは、電子メールのメッセージ、クラウド上に記憶されたメッセージ又はSNSでやり取りされるメッセージであることを特徴とする。
【0019】
本発明による配達システムにおいて、解析部は、取引データを解析し、再配達が発生したか否かを検出することを特徴とする。
【0020】
本発明による配達システムにおいて、解析部は、取引データ記憶部に記憶された過去の取引データを学習データの少なくとも一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成することを特徴とする。
【0021】
本発明による配達システムにおいて、解析部は、取引データ記憶部に記憶された過去の取引データ及びカレンダーの予定を学習データの少なくとも一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成することを特徴とする。
【0022】
本発明による配達システムにおいて、解析部は、取引データ記憶部に記憶されたユーザの過去の行動履歴からユーザの現在の行動ステータスが、日常であるか非日常であるかを予測し、予測されたユーザの現在の行動ステータスを学習データの少なくとも一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成するようにしてもよい。
【0023】
本発明による配達システムにおいて、解析部は、環境情報を学習データの少なくとも一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成するようにしてもよい。
【0024】
本発明による配達システムにおいて、リコメンドは、配達日時、配達先又は配達方法のうちの少なくとも1つ以上を含むことを特徴とする。
【0025】
本発明による配達システムにおいて、解析部は、取引データ及びカレンダーの予定を解析し、配達時間の最適化を行うことを特徴とする。
【0026】
本発明による配達システムにおいて、取引データ取得部は、1つ又は複数の外部サービスから取得した取引データに基づいて、同一の商品の配達に関する取引データの名寄せを行うようにしてもよい。
【0027】
本発明による配達システムにおいて、取引データ取得部は、1つ又は複数の外部サービスから取得した取引データに基づいて、同一の配達案件に関する取引データの名寄せを行うようにしてもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データを横断的に分析することが可能な最適化された配達システムを提供することにより、再配達のリスクを低減し、配達の効率を高めることができる。
【0029】
また、本発明によれば、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データに加えカレンダーの予定についても横断的に分析することが可能な最適化された配達システムを提供することにより、再配達のリスクを低減し、配達の効率を高めることができる。
【0030】
また、本発明によれば、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データ等を学習データの少なくとも一部として用いることにより、最初の配達又は現在の配達にてユーザが荷物を受け取る可能性を高め、あるいは再配達の可能性を低くすることができる。 本発明の他の目的、特徴及び利点は添付図面に関する以下の本発明の実施例の記載から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、本発明による配達システム全体を示す概念図である。
【
図2】
図2は、本発明による配達システムの取引データ取得部の処理を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明による配達システムの解析部の処理を示す図である。
【
図4】
図4は、本発明による配達システムの表示部の処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0032】
図1は、本発明による配達システム全体を示す概念図である。
本発明による配達システム1は、外部サービス2から取引データを取得する取引データ取得部10と、取引データ取得部10で取得した取引データを記憶する取引データ記憶部20と、取引データ記憶部20に記憶された取引データを解析する解析部30と、解析部30での解析結果に基づいてユーザ端末50に配達に関するリコメンドを表示する表示部40とを備える。
【0033】
ここで、外部サービス2とは、例えば、電子メールサービス、クラウドサービス、SNSサービス、カレンダーサービス等のメッセージの送受信が可能な各種サービスを指す。外部サービス2には、既に市場で展開されている複数の外部サービスが含まれるだけでなく、将来追加される各種のメッセージの送受信が可能なサービスも含み得る。
【0034】
これらの外部サービス2は、オンラインストア、オンラインストアを利用するユーザ、及び配達業者の間で利用される。例えば、商品の購入や予約、配達に関する電子メールのやり取りやSNS等のメッセージのやり取りが外部サービス2を介して行われる。
【0035】
取引データ取得部10は、外部サービス2においてやり取りされる電子メール等のメッセージをフィルタリングし、商品又はサービスの取引に関するメッセージを取引データとして取得する。外部サービス2においてやり取りされる電子メールやメッセージには、商品の購入や予約、配達等の取引に関係しないものが含まれるが、取引データ取得部10は、フィルタリングによりその中から商品の購入や予約、配達等の取引に関係するもののみを抽出する。取引データ取得部10は、複数の外部サービス2から取得した取引データを取引データ記憶部20に記憶する。
【0036】
また、取引データ取得部10は、1つ又は複数の外部サービス2から取得した取引データに基づいて、同一の商品の配達に関する取引データの名寄せを行うようにしてもよい。例えば、取引データ取得部10は、複数の外部サービス2から取得した取引データに含まれる注文番号や伝票番号等の商品を識別するための識別番号に基づいて、同一の商品の配達に関する取引データの名寄せを行うようにしてもよい。取引データ取得部10は、同一の商品の配達に関する取引データとして名寄せされた名寄せ後の取引データを取引データ記憶部20に記憶する。その際、複数の名寄せ前の取引データを名寄せ後の取引データに関連付けて取引データ記憶部20に記憶するようにしてもよい。また、新たに取得した取引データを既に取引データ記憶部20に記憶されている名寄せ後の取引データに関連付けて取引データ記憶部20に記憶するようにしてもよい。このように、同一の商品の配達に関する取引データの名寄せを行うことにより、解析部30において、取引データを解析、又は学習データの少なくとも一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成する際に、リコメンドの精度をより高めることが可能となる。
【0037】
また、取引データ取得部10は、1つ又は複数の外部サービス2から取得した取引データに基づいて、同一の配達案件に関する取引データの名寄せを行うようにしてもよい。例えば、取引データ取得部10は、複数の外部サービス2から取得した取引データに含まれる注文番号や伝票番号等の1つの配達案件を識別するための識別番号に基づいて、同一の配達案件に関する取引データの名寄せを行うようにしてもよい。例えば、1つの配達案件に関する1回目の配達に関する通知メール等のメッセージと2回目以降の再配達に関する通知メール等のメッセージとは、同一の配達案件に関する取引データとして名寄せされる。取引データ取得部10は、同一の配達案件に関する取引データとして名寄せされた名寄せ後の取引データを取引データ記憶部20に記憶する。このように、同一の配達案件に関する取引データの名寄せを行うことにより、解析部30において、取引データを解析、又は学習データの少なくとも一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成する際に、リコメンドの精度をより高めることが可能となる。
【0038】
同一の商品の配達に関する取引データの名寄せや、同一の配達案件に関する取引データの名寄せを行う際に、取引データ取得部10は、複数の名寄せ前の取引データを名寄せ後の取引データに関連付けて取引データ記憶部20に記憶するようにしてもよい。また、新たに取得した取引データを既に取引データ記憶部20に記憶されている名寄せ後の取引データに関連付けて取引データ記憶部20に記憶するようにしてもよい。
【0039】
ここで、メッセージとは、電子メールのメッセージ、クラウド上に記憶されたメッセージ又はSNSでやり取りされるメッセージである。例えば、複数の電子メールサービス3においてやり取りされる電子メールのメッセージがクラウドサービス4上に集約され、集約された電子メールのメッセージが取引データ取得部10によって取得される。電子メールのメッセージ等をクラウドサービス4上に集約する際には、予めユーザからの同意を得て行われる。電子メールのメッセージは、取引データ取得部10により電子メールサービス3から直接取得されるようにしてもよい。
【0040】
取引データ記憶部20は、取引データ取得部10で取得した取引データを記憶する。取得された取引データは、データベース又はテーブルの形式で記憶される。例えば、電子メールの送信者、受信者、送信日時、受信日時、タイトル、本文等が取引データ記憶部20に記憶される。取引データ取得部10及び取引データ記憶部20は、クラウド上に構築するようにしてもよい。また、取引データ取得部10と取引データ記憶部20とを合わせて1つのサーバとして構築するようにしてもよい。取引データには、注文番号や伝票番号等の商品又はサービスを識別するための識別番号や、1つの配達案件を識別するための識別番号が含まれ得る。
【0041】
解析部30は、取引データ記憶部20に記憶された取引データを解析する。取引データを解析することで得られた情報は、再配達の有無の判定や配達に関するリコメンドの生成等に用いられる。また、取引データを解析することで得られた情報は、最初の配達又は現在の配達にてユーザが荷物を受け取る可能性を高めるため、あるいは再配達の可能性を低くするための学習に利用し得る。
【0042】
再配達が発生した場合、外部サービス2により配達業者から再配達に関する電子メール等のメッセージがユーザに送信される。再配達に関する電子メール等のメッセージは、取引データ取得部10でフィルタリングされ、取引データとして取引データ記憶部20に記憶される。解析部30は、取引データ記憶部20に記憶された取引データを解析し、再配達が発生したか否かを検出する。解析部30は、取引データに含まれるメッセージの送信者、受信者、送信日時、受信日時、タイトル、本文等からそのメッセージが再配達に関するものであるか否かを判定し、再配達が発生したか否かを検出する。また、解析部30は、取引データから抽出した配達業者、オンラインストア、商品、配送先、配達方法、日時、場所等の掛け合わせにより、再配達が発生したか否かを検出するようにしてもよい。
【0043】
また、解析部30は、取引データを解析し、配達に関するリコメンドを生成する。ここで、リコメンドとは、配達に関してユーザに対して提案されるものを指す。
【0044】
リコメンドは、例えば、配達日時、配達先又は配達方法のうちの少なくとも1つ以上を含む。配達方法とは、例えば、自宅や職場等の配達先に届ける通常の配達の他、街中に設置された宅配ボックス等に配達が行われる、いわゆる「置き配」や、コンビニに配達が行われる、いわゆる「コンビニ受け取り」等の配達方法を指す。配達方法はこれらに限られず、他の種類の任意の配達方法であってもよい。また、リコメンドの内容もこれらに限られず、他の種類の任意の提案内容であってもよい。リコメンドは、配達先に直接配達する通常の配達の他にも様々な配達方法があることをユーザに対して周知し、より適切な配達方法をユーザが認識し選択できるように促す効果もある。
【0045】
表示部40は、解析部30での解析結果に基づいてユーザ端末50に配達に関するリコメンドを表示する。表示部40によって表示されるリコメンドは、ユーザがどのオンラインストア、あるいはどの配達業者を利用していたとしても同じインターフェースにて統一的なデザイン又は表示形式で表示されるため、複数のオンラインストアや配達業者間でリコメンドの通知の形式が異なることによる煩わしさが軽減される。
【0046】
ユーザ端末50は、例えば、好ましくはスマートフォンであるが、タブレット、ラップトップ又はスタンドアロン型のコンピュータ等、ユーザ側で使用するあらゆる任意の端末であってもよい。
【0047】
また、本発明の他の例による配達システム1は、外部サービス2から取引データ及びカレンダーの予定を取得する取引データ取得部10と、取引データ取得部10で取得した取引データを記憶する取引データ記憶部20と、取引データ記憶部20に記憶された取引データ及びカレンダーの予定を解析する解析部30と、解析部30での解析結果に基づいてユーザ端末50に配達に関するリコメンドを表示する表示部40とを備える。
【0048】
本発明の他の例による配達システム1においては、取引データ取得部10において電子メール等の取引データの他、カレンダーの予定が取得される。取引データ取得部10で取得されたカレンダーの予定は、解析部30において取引データとともに解析され、リコメンドの生成に利用される。
【0049】
本発明の他の例による配達システム1において、解析部30は、取引データ及びカレンダーの予定を解析し、配達に関するリコメンドを生成する。例えば、オンラインで利用されるカレンダーの予定を解析し、ユーザが自宅や職場にいないことを確認し、配達時間の最適化を行い、ユーザに対して最適な配達時間をリコメンドすることができる。また、電子メール等のメッセージの中に含まれる未来の予定からユーザが自宅や職場にいないことを確認し、配達時間の最適化を行い、ユーザに対して最適な配達時間をリコメンドすることができる。
【0050】
未来の予定には、例えば、旅行や出張の予定、電車、飛行機、船舶等の交通機関を利用する予定、レストランの予約、映画、舞台、コンサートを鑑賞する予定、イベントに参加する予定等が含まれる。カレンダーの予定には、このような開始時間や終了時間等のあるあらゆる種類の予定が含まれる。
【0051】
本発明による他の配達システム1において、解析部30は、取引データ及びカレンダーの予定を解析し、配達時間の最適化を行う。
【0052】
図2は、本発明による配達システムの取引データ取得部の処理を示す図である。
取引データ取得部10は、外部サービス2から商品又はサービスの取引に関するメッセージを取引データとして取得する。取引データ取得部10において取得される取引データには、例えば、オンラインストアの購入メールや、配達業者の配達メール、カレンダーの予定等が含まれる。取引データには、例えば、オンラインストアAで購入された商品Bが、配達業者Cによって、東京都江東区に14:00に配達された等の情報が含まれ、これらの情報は外部サービス2から取得された電子メール等のメッセージの内容から抽出される。
【0053】
ここで、オンラインストアの購入メールとは、例えば、オンラインストアで商品の購入が成立した際に、商品を購入したユーザに対して購入手続が完了したことを通知するメールである。配達業者の配達メールとは、例えば、オンラインストアで商品を購入したユーザに対し、商品の配達日時や配達先、配達方法等の配達に関する情報を通知するメールである。購入メールや配達メールは、例えば、オンラインストアで商品を購入後、オンラインストアや配達業者から自動的に配信される電子メールやSNS等のメッセージである。カレンダーの予定とは、例えば、カレンダーサービス6においてカレンダーに記録されている外出等の予定である。
【0054】
取引データ取得部10は、外部サービス2においてやり取りされる電子メール等のメッセージをフィルタリングする。取引データ取得部10は、フィルタリングによりその中から商品の購入や予約、配達等の取引に関係するもののみを抽出する。取引データ取得部10は、フィルタリングにより抽出した商品又はサービスの取引に関するメッセージを取引データとして取引データ記憶部20に記憶する。
【0055】
図3は、本発明による配達システムの解析部の処理を示す図である。
解析部30は、取引データ記憶部20に記憶された取引データを解析する。解析部30は、好ましくは解析結果をリコメンド又はレポートとして、表示部40に送るとともに、取引データ記憶部20に記憶する。解析結果は、過去の取引データとして取引データ記憶部20に蓄積される。取引データ記憶部20に蓄積された過去の取引データは、解析部30での解析のための学習データ又は学習データの一部として用いることもできる。
【0056】
また、解析部30は、取引データを解析し、再配達が発生したか否かを検出する。再配達が発生したことは、一例では、取引データに含まれるメッセージの送信者、受信者、送信日時、受信日時、タイトル、本文等からそのメッセージが再配達に関するものであるか否かを判定することにより検出される。また、他の例では、再配達が発生したことは、配達業者、オンラインストア、商品、配送先、配達方法、日時、場所の掛け合わせにより検出されるようにしてもよい。
【0057】
また、解析部30は、取引データを解析し、配達に関するリコメンドを生成する。例えば、ユーザが出張の予定として月曜日から火曜日までが埋まっており、水曜日は14:00から16:00に会議の予定があり、20:00からレストラン予約を入れていたとする。この場合、消去法により予定のある時間帯を避けて、配達日時として水曜日の17:00~19:00をリコメンドすることができる。
【0058】
また、解析部30は、取引データ記憶部20に記憶された過去の取引データを学習データ又は学習データの一部として用いることにより、最初の配達又は現在の配達にてユーザが荷物を受け取る可能性を高め、あるいは再配達の可能性を低くすることが可能な配達に関するリコメンドを生成することができる。また、解析部30は、取引データ記憶部20に記憶された過去の取引データに加えて、カレンダーの予定を学習データ又は学習データの一部として用いることにより、配達に関するリコメンドを生成することができる。取引データ記憶部20には、荷物の受け取りや持ち戻り、カレンダーのイベント等の情報が記憶され蓄積される。これらの情報はユーザの過去の行動履歴あるいはユーザの現在の行動ステータスとして記憶され蓄積される。
【0059】
ユーザの現在の行動ステータスとは、ユーザの現在の状況を示すものであり、例えば、ユーザの現在の状況が「日常」であるか「非日常」であるか等を示すものである。「日常」とは、職場、学校、自宅等においてユーザが日々のルーチンの行動パターンをとっている状況を指す。「非日常」とは、旅行先や出張先等においてユーザが通常とは異なる行動パターン、即ち、日々のルーチンの行動パターンとは異なる行動パターンをとっている状況を指す。
【0060】
解析部30は、取引データ記憶部20に記憶され蓄積されたユーザの過去の行動履歴から、ユーザの現在の行動ステータスを予測する。例えば、解析部30は、取引データ記憶部20に記憶され蓄積されたユーザの過去の行動履歴から、ユーザの現在の行動ステータスが「日常」であるか「非日常」であるかを予測する。予測された「日常」であるか「非日常」であるか等のユーザの現在の行動ステータスは、配達に関するリコメンドを生成するための学習データ又は学習データの一部として用いることができる。
【0061】
解析部30は、取引データ記憶部20に記憶され蓄積された取引データ、ユーザの過去の行動履歴、ユーザの現在の行動ステータス等に加えて、例えば、時間帯、曜日、気象情報、国民的行事、ユーザ個人の記念日、ユーザが好むイベントの開催等の環境情報を、配達に関するリコメンドを生成するための学習データの1つとして用いることができる。これにより、最初の配達又は現在の配達にてユーザが荷物を受け取る可能性をより高め、あるいは再配達の可能性をより低くすることが可能な配達に関するリコメンドを生成することができる。
【0062】
時間帯は、例えば、午前、午後、日中、夜間、ユーザの勤務時間内又は勤務時間外、学校等の授業時間中又は放課後、ユーザの外出中又は在宅中等、任意の時間帯であってもよい。曜日は、例えば、平日、土日祝日、金曜日等の任意の曜日であってもよい。国民的行事は、例えば、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆、クリスマス等の任意の日付又は期間であってもよい。ユーザ個人の記念日は、例えば、ユーザ本人、家族又は友人等の誕生日やユーザが設定した任意の記念日等であってもよい。ユーザが好むイベントは、例えば、スポーツの試合や大会、コンサート、祭り、花火大会等の任意のイベントであってもよい。
【0063】
このように、解析部30は、取引データ記憶部20に記憶され蓄積された取引データ、ユーザの過去の行動履歴、ユーザの現在の行動ステータス、又は環境情報のうちの少なくとも1つ又は少なくとも2つ以上の組み合わせを学習データ又は学習データの一部として用いることにより、最初の配達又は現在の配達にてユーザが荷物を受け取る可能性をより高め、あるいは再配達の可能性をより低くすることが可能な配達に関するリコメンドを生成することができる。
【0064】
図4は、本発明による配達システムの表示部の処理を示す図である。
表示部40は、解析部30での解析結果に基づいてユーザ端末50に配達に関するリコメンドを表示する。配達に関するリコメンドには、例えば、配達日時、配達先、配達方法等が含まれる。表示部40は、配達に関するリコメンドとして、例えば、受け取り日時の候補の表示、配達先の候補の表示、「置き配」や「コンビニ受け取り」等の推奨する配達方法の表示、複数の荷物をまとめて受け取ることを推奨するメッセージの表示、設定した受け取り日時に受け取れない可能性のアラートの表示等を行う。
【0065】
表示部40は、ユーザ端末50の画面に表示される予定やToDoリスト等の未来の行動リストを示す一覧と併せて、又は一覧内に組み入れて、配達に関するリコメンドを表示する。また、表示部40は、外部サービス2や外部アプリを介して、配達に関するリコメンドを電子メールやSNS等のメッセージとしてユーザ端末50に通知するようにしてもよい。例えば、解析部30が外部サービス2から取得したカレンダーの情報から、配達予定日や配達時間帯に、ユーザが不在となるような情報を検知した場合に、アラートを電子メールやSNS等のメッセージとしてユーザ端末50に通知するようにしてもよい。
【0066】
上述の通り、本発明による配達システムは、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データやカレンダーの予定について横断的に分析することにより、再配達のリスクを低減し、配達の効率を高めることができる。また、本発明による配達システムは、複数の配達業者や複数のオンラインストアでの取引データ等を学習データの少なくとも一部として用いることにより、最初の配達又は現在の配達にてユーザが荷物を受け取る可能性を高め、あるいは再配達の可能性を低くすることができる。
【0067】
上記に説明した各部の構成は、任意に組み合わせることが可能である。例えば、(i)解析部30において、取引データ記憶部20に記憶された過去の取引データを学習データの少なくとも一部として用いること、(ii)過去の取引データ及びに加えてカレンダーの予定を解析し学習データの少なくとも一部として用いること、(iii)ユーザの過去の行動履歴からユーザの現在の行動ステータスが、日常であるか非日常であるかを予測し、予測されたユーザの現在の行動ステータスを学習データの少なくとも一部として用いることにより、前記配達に関するリコメンドを生成すること、(iv)環境情報を学習データの少なくとも一部として用いることにより、前記配達に関するリコメンドを生成することは、これら単体のみでなく、任意の1つ以上の構成を組み合わせて用いることができる。
【0068】
また、取引データ取得部10において名寄せを行う際にも、同一の商品の配達に関する取引データの名寄せを行うとともに、同一の配達案件に関する取引データの名寄せを行うようにしてもよい。
【0069】
本発明による配達システムは、配達業者へ提供されるシステムとして利用できる。また、配達業者に対し配達状況等のレポートを提供するために利用できる。また、本発明による配達システムの一部を匿名化したデータ連携エンジンやリコメンドエンジンとして利用できる。このように、本発明による配達システムの一部の機能を切り出して利用することも可能である。
上記記載は実施例についてなされたが、本発明はそれに限らず、本発明の原理及び添付の請求の範囲の範囲内で種々の変更および修正をすることができることは当業者に明らかである。
【符号の説明】
【0070】
1 配達システム
2 外部サービス
10 取引データ取得部
20 取引データ記憶部
30 解析部
40 表示部
50 ユーザ端末