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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】車両の前部構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/10 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
B62D25/10 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018138389
(22)【出願日】2018-07-24
(65)【公開番号】P2020015369
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】田中 健二
(72)【発明者】
【氏名】後田 尚希
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 尚史
(72)【発明者】
【氏名】井出 忠信
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178140(JP,A)
【文献】特開2006-306237(JP,A)
【文献】特開2008-189224(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0181803(US,A1)
【文献】特許第4857595(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フードアウタパネル及び前記フードアウタパネルの裏側に設けられたフードインナパネルを有し、車体の前部に設けられた上部開口を開閉するフードを備える車両の前部構造において、
車両前後方向における前方及び後方を前方及び後方とするとき、
前記フードインナパネルは、前記フードアウタパネルに連結された前側の外縁部から後方に向かって延在する第1延在部と、前記第1延在部の後側において屈曲して後斜め下方に向かって延在する部位を有する第2延在部とを有しており、
前記フードアウタパネルと前記フードインナパネルとの間における上下方向の間隔は、前方ほど後方よりも小さくされており、且つ、前記フードインナパネルにおける前記第1延在部の後側において屈曲している部分よりも前方には前記フードインナパネルが前記フードアウタパネルに近づくように屈曲していることで前記間隔がより小さくされている狭小部が設けられており、
前記フードの前端部のうち車幅方向の両端部の下方には、車幅方向に沿って延在する支持部材が設けられており、
前記フードの前記前端部のうち前記支持部材の上方に位置する部分における前記フードアウタパネルと前記フードインナパネルとの間には、衝撃吸収部材が設けられており、
前記衝撃吸収部材は、前記フードインナパネルに固定された固定部と、前記固定部から前方に向かって延在する延在部と、前記延在部の前側から屈曲されて延在するとともに前記フードの前端部において前記フードアウタパネルに対向する受け部と、を有しており、
前記衝撃吸収部材のうち前記延在部は、前記支持部材の上方に位置しており、
前記衝撃吸収部材のうち前記受け部は、前記支持部材の上方且つ該支持部材よりも前方に位置しており、前記狭小部に配置されている、
車両の前部構造。
【請求項2】
記固定部は、前記フードインナパネルにおける前記第2延在部にのみ設けられており、
前記受け部は、前記第1延在部の上方に設けられている、
請求項1に記載の車両の前部構造。
【請求項3】
前記受け部は、前記フードアウタパネルの前端部に固定されている、
請求項1または請求項2に記載の車両の前部構造。
【請求項4】
前記受け部は、前記フードアウタパネルの前端部に沿って延在している、
請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の車両の前部構造。
【請求項5】
前記延在部の一部には、その周辺部分よりも圧縮荷重に対して脆弱な脆弱部が設けられている、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の車両の前部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の前部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車などの車両の前部には、エンジンルームの上部開口を開閉するフードが設けられている。フードは、意匠面を構成するフードアウタパネルと、フードアウタパネルの裏側に設けられたフードインナパネルとを備えている。
【0003】
例えば特許文献1には、フードアウタパネルとフードインナパネルとの間に、衝撃力を吸収する衝撃吸収部材を配置した構造が開示されている。
同文献1に記載の車両の前部構造においては、フードインナパネルの下方に、フードを支持するストッパなどのフードインナパネルの下方への変形を妨げる障害物が配置されている。また、フードインナパネルには、フードインナパネルにおける上記障害物に対応した部分である対応部を上側から覆う衝撃吸収部材が固定されている。衝撃吸収部材は、上記対応部から上側へ離間した本体部と、本体部から車両の前方及び後方にそれぞれ延びてフードインナパネルに固定された前後の脚部とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4857595号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両の前部に対して、子供などの身長の低い歩行者が衝突した場合、歩行者の頭部は、フードの前端部に衝突しやすい。また一般に、車両の前端部は、車幅方向の内側ほど前側に位置し、車幅方向の外側ほど後側に位置している。そして、エンジンルーム内には、ラジエータサポートや、車幅方向に沿って延在するとともにラジエータサポートとエプロンアッパメンバとを互いに連結する支持部材などの障害物が配置されている。そのため、車幅方向の両端部においては、車両の前端と障害物との距離が近くなり、障害物がフードの前端部の直下に位置することとなる。こうした車両のフードの前端部に歩行者の頭部が衝突した場合、当該頭部が障害物に早期に底付きするおそれがある。これらのことから、フードの前端部のうち車幅方向の端部に歩行者の頭部が衝突した場合には、当該頭部に作用する衝撃力が大きくなりやすい。
【0006】
これに対して、特許文献1に記載の前部構造を備えた車両の場合、衝撃吸収部材の本体部がフードの前端部よりも後側の部分に対応して設けられている。そのため、フードの前端部のうち車幅方向の端部に歩行者の頭部が衝突した場合に、その衝撃力が衝撃吸収部材によって吸収されにくい。また、フードの前端部においては、フードアウタパネルとフードインナパネルとの距離が短いために、歩行者の頭部がフードアウタパネルに衝突してから、衝突により変形されるアウタパネルを介してフードインナパネルに到達するまでに要する時間が短い。そのため、この点においても、歩行者の頭部に作用する衝撃力が吸収されにくくなる。
【0007】
本発明の目的は、衝撃力を好適に吸収することのできる車両の前部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための車両の前部構造は、フードアウタパネル及び前記フードアウタパネルの裏側に設けられたフードインナパネルを有し、車体の前部に設けられた上部開口を開閉するフードを備える車両の前部構造において、車両前後方向における前方及び後方を前方及び後方とするとき、前記フードの前端部のうち車幅方向の両端部の下方には、車幅方向に沿って延在する支持部材が設けられており、前記フードの前記前端部のうち前記支持部材の上方に位置する部分における前記フードアウタパネルと前記フードインナパネルとの間には、衝撃吸収部材が設けられており、前記衝撃吸収部材は、前記フードインナパネルに固定された固定部と、前記固定部から前方に向かって延在する延在部と、前記延在部の前側から屈曲されて延在するとともに前記フードの前端部において前記フードアウタパネルに対向する受け部と、を有している。
【0009】
同構成によれば、子供などの背の低い歩行者の頭部がフードの前端部のうち車幅方向の端部に衝突した場合、当該頭部の衝突による衝撃力がフードアウタパネルを介して衝撃吸収部材の受け部に伝達されるようになる。
【0010】
ここで、衝撃吸収部材は、フードインナパネルに固定された固定部を有しており、受け部は、固定部から延在した延在部の前側から屈曲して延在している。これにより、当該頭部が衝突されたフードアウタパネルは、衝撃吸収部材の受け部や延在部を変形させながらフードインナパネルに到達することとなる。このため、当該頭部がフードアウタパネルに衝突してから、フードアウタパネル及び衝撃吸収部材を介してフードインナパネルに到達するまでに要する時間が長くなり、その間に衝撃力を好適に吸収することができる。
【0011】
上記車両の前部構造において、前記フードインナパネルは、前記フードアウタパネルに連結された前側の外縁部から後方に向かって延在する第1延在部と、前記第1延在部の後側において屈曲して後斜め下方に向かって延在する部位を有する第2延在部とを有しており、前記固定部は、前記フードインナパネルにおける前記第2延在部にのみ設けられており、前記受け部は、前記第1延在部の上方に設けられていることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、衝撃吸収部材の固定部がフードインナパネルの第2延在部にのみ設けられているため、例えば、固定部が第1延在部に設けられている構成と比較して、受け部や延在部の変形を許容するスペースを確保することができ、受け部や延在部の変形量を増やすことができる。これにより、当該頭部がフードアウタパネルに衝突してから、フードアウタパネル及び衝撃吸収部材を介してフードインナパネルに到達するまでの時間が一層長くなり、その間に衝撃力を一層好適に吸収することができる。したがって、フードの前端部における衝撃吸収性能を一層向上させることができる。
【0013】
上記車両の前部構造において、前記受け部は、前記フードアウタパネルの前端部に固定されていることが好ましい。
同構成によれば、受け部がフードアウタパネルの前端部に固定されることから、フードアウタパネルとフードインナパネルとの上下方向の距離が短くスペースの制限されたフードの前端部に対して、衝撃吸収部材を安定して設けることができる。
【0014】
上記車両の前部構造において、前記受け部は、前記フードアウタパネルの前端部に沿って延在していることが好ましい。
同構成によれば、衝撃吸収部材の受け部がフードアウタパネルの前端部に沿って延在しているため、衝撃力が受け部を介して効率良く延在部に伝達されるようになるとともに、延在部が適切に変形されるようになる。したがって、衝撃力を一層好適に吸収することができる。
【0015】
上記車両の前部構造において、前記延在部の一部には、その周辺部分よりも圧縮荷重に対して脆弱な脆弱部が設けられていることが好ましい。
同構成によれば、脆弱部の大きさや形状を適宜設定することにより、延在部の変形量を容易に調節することができる。延在部の変形量を適切に設定することで、歩行者の頭部のフードへの衝突度合に応じて延在部が変形されるようになる。これにより、歩行者の頭部が急激に減速されることが抑制され、歩行者に作用する衝撃力の最大値を低減することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、衝撃力を好適に吸収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】車両の前部構造の一実施形態について、フードの前部の一部を破断して示す車両前部の平面図。
図2図1を拡大して示す図であって、フードアウタパネルの前部の一部を破断して示す車両前部の平面図。
図3図2の3-3線に沿った断面図。
図4】同実施形態の衝撃吸収部材を示す斜視図。
図5図3に対応する図であって、フードの前端部に歩行者が衝突する直前の状態を示す断面図。
図6図3に対応する図であって、フードの前端部に歩行者が衝突した状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図1図6を参照して、一実施形態について説明する。
なお、以降において、車両の前後方向を単に前後方向Lと称し、前後方向Lの前側及び後側を単に前側及び後側として説明する。また、本実施形態の車両の前部構造は、基本的に車幅方向Wにおいて対称な形状をなしているため、車幅方向Wにおける一方側の構造について説明することにより、他方側の構造についての説明は省略する。
【0019】
図1に示すように、車両の前部における車幅方向Wの中央部には、ラジエータ10を支持する四角枠状のラジエータサポート11が設けられている。また、車両の前部における車幅方向Wの外側には、前後方向に沿って延在するエプロンアッパメンバ12が設けられている。
【0020】
ラジエータサポート11の上部を構成するラジエータサポートアッパ11aとエプロンアッパメンバ12とは、車幅方向Wに延在する支持部材13(ラジエータサポートアッパサイドとも称される)により連結されている。支持部材13の上面には、弾性部材からなる円柱状のストッパ14が突設されている。
【0021】
ラジエータサポートアッパ11a、エプロンアッパメンバ12、及び支持部材13によって、エンジンルーム91の上部開口92の前部が区画されている。
ラジエータサポート11、エプロンアッパメンバ12、及び支持部材13は、いずれも金属材料により形成されている。本実施形態においては、ラジエータサポート11、エプロンアッパメンバ12、及び支持部材13は、いずれも鋼材により形成されている。
【0022】
図1及び図3に示すように、車両の前端部における車幅方向Wの外側には、ヘッドランプ20が設けられている。
図3に示すように、ヘッドランプ20は、ランプ本体(図示略)と、ランプ本体が取付けられるベース21と、ベース21に取り付けられてランプ本体を前方から覆うアウタレンズ22とを備えている。
【0023】
図1に示すように、ヘッドランプ20のベース21には、後方に向かって突出されたランプステー23が取付けられている。ヘッドランプ20は、ランプステー23を介してエプロンアッパメンバ12及び支持部材13などに連結されている。
【0024】
車両の前端部は、車幅方向Wの内側ほど前側に位置し、車幅方向の外側ほど後方に位置している。そのため、車両の前端から車幅方向Wの外側に位置する支持部材13までの距離D2は、車両の前端から車幅方向Wの中央部に位置するラジエータサポートアッパ11aまでの距離D1よりも小さくなる。
【0025】
図1図3に示すように、車両には、エンジンルーム91の上部開口92を開閉するフード30が設けられている。フード30は、フード30の後端部と車体との間に設けられた一対のヒンジ(図示略)を介して傾動可能に連結されている。
【0026】
図3に示すように、フード30の前端部は、ヘッドランプ20の上方に位置している。フード30とヘッドランプ20との間には、シール部材50が設けられている。
フード30は、車両の意匠面を構成するフードアウタパネル31と、フードアウタパネル31の裏側に設けられたフードインナパネル32とを備えている。
【0027】
フードアウタパネル31及びフードインナパネル32は、共に金属板材により形成されている。本実施形態のフードアウタパネル31及びフードインナパネル32は、共に鋼板により形成されている。フードアウタパネル31の外縁部とフードインナパネル32の外縁部とは、ヘミング加工により互いに連結されている。
【0028】
フードアウタパネル31は、フードアウタパネル31の前端部をなすとともに後側ほど上側に位置するように傾斜して延在する前側傾斜部31aと、前側傾斜部31aの後側に連なるとともに前側傾斜部31aよりも緩やかな傾斜角度にて傾斜して延在する後側傾斜部31bとを有している。
【0029】
フードインナパネル32は、フードアウタパネル31に連結された前側の外縁部から後方に向かって延在する第1延在部32aと、第1延在部32aの後側において屈曲して後斜め下方に向かって延在する部位を有する第2延在部32bとを有している。
【0030】
フードアウタパネル31とフードインナパネル32との上下の間隔dは、フード30の前側ほど小さい。特に、フードインナパネル32の第1延在部32aと第2延在部32bとの屈曲部分33を境に前側と後側とで上記間隔dが急変している。以降において、フードアウタパネル31とフードインナパネル32との間のスペースのうち上記屈曲部分33よりも前側の部分、すなわち第1延在部32aの上方の部分を狭小部30aと称する。
【0031】
フードインナパネル32の前端部の裏面のうち車幅方向Wの外側の部分には、支持部材13に突設されたストッパ14の頂面に当接する断面円形状の当接部35が凹設されている(図2参照)。
【0032】
図2図4に示すように、フードアウタパネル31とフードインナパネル32との間には、衝撃吸収部材40が設けられている。衝撃吸収部材40は、フードインナパネル32に固定された固定部41と、固定部41から前方に向かって延在する延在部42と、延在部42の前側から屈曲されてフードアウタパネル31の前側傾斜部31aに沿って延在する受け部43とを有している。衝撃吸収部材40は、例えば鋼板などの金属板材をプレス加工することにより形成されている。
【0033】
固定部41には、フードインナパネル32に向けて突出された凸部41aが設けられており、凸部41aの頂面がフードインナパネル32の第2延在部32bにスポット溶接にて固定されている。なお、固定部41には、製造に際して衝撃吸収部材40を支持するための一対の支持片45が設けられている。各支持片45は、第2延在部32bから上方に離間している。
【0034】
延在部42は、固定部41の前側からフードアウタパネル31に向かって延びている。延在部42の車幅方向Wにおける長さは、前側ほど大きくされている。延在部42には、前後に延びる第1貫通孔44aと、第1貫通孔44aよりも開口面積の小さい第2貫通孔44bとが車幅方向Wに並んで形成されている。延在部42のうち、これら貫通孔44a,44bが形成された一部は、その周辺部分よりも圧縮荷重に対して脆弱な脆弱部44を構成している。
【0035】
図2及び図3に示すように、延在部42は、支持部材13の上方に位置している。
より詳しくは、図2に示すように、延在部42は、フードインナパネル32のうち当接部35よりも車幅方向Wの外側の部分を覆っている。すなわち、ストッパ14は、延在部42よりも車幅方向Wの内側に位置している。
【0036】
図3に示すように、受け部43は、狭小部30aに位置しており、接着剤などによりフードアウタパネル31の前側傾斜部31aに接着されている。なお、受け部43は、フードインナパネル32に固定された状態において、支持部材13の上方且つ前方に位置している。
【0037】
本実施形態の作用について説明する。
図5に示すように、子供などの背の低い歩行者の頭部Hがフード30の前端部のうち車幅方向Wの端部に衝突した場合、頭部Hの衝突による衝撃力がフードアウタパネル31を介して衝撃吸収部材40の受け部43に伝達されるようになる。
【0038】
ここで、衝撃吸収部材40は、フードインナパネル32に固定された固定部41を有しており、受け部43は、固定部41から延在した延在部42の前側から屈曲して延在している。これにより、図6に示すように、頭部Hが衝突されたフードアウタパネル31は、衝撃吸収部材40の受け部43や延在部42を変形させながらフードインナパネル32に到達することとなる。このため、頭部Hがフードアウタパネル31に衝突してから、フードアウタパネル31及び衝撃吸収部材40を介してフードインナパネル32に到達するまでに要する時間が長くなる(以上、作用1)。
【0039】
なお、頭部Hは、フードアウタパネル31及び衝撃吸収部材40を介してフードインナパネル32に到達した後に、フードインナパネル32の直下に配置された支持部材13に底付く。このとき、フード30の前端部の厚みは、フードアウタパネル31の前側傾斜部31a、衝撃吸収部材40の受け部43、及びフードインナパネル32の第1延在部32aの厚みの総和と略同一となる。
【0040】
ところで、衝撃吸収部材40の固定部41は、フードインナパネル32の第2延在部32bにのみ設けられている。このため、例えば、固定部41が第1延在部32aに設けられている構成と比較して、受け部43や延在部42の変形を許容するスペースを確保することができ、受け部43や延在部42の変形量を増やすことができる。これにより、頭部Hがフードアウタパネル31に衝突してから、フードアウタパネル31及び衝撃吸収部材40を介してフードインナパネル32に到達するまでに要する時間が長くなり、その間に衝撃力を好適に吸収することができる(以上、作用2)。
【0041】
また、衝撃吸収部材40の受け部43は、フードアウタパネル31の前側傾斜部31aに沿って延在している。このため、受け部43を介して衝撃力が効率良く延在部42に伝達されるようになるとともに、延在部42が適切に変形されるようになる(以上、作用3)。
【0042】
本実施形態の効果について説明する。
(1)フード30の前端部のうち車幅方向の両端部の下方には、車幅方向に沿って延在する支持部材13が設けられており、フード30の前端部のうち支持部材13の上方に位置する部分におけるフードアウタパネル31とフードインナパネル32との間には、衝撃吸収部材40が設けられている。衝撃吸収部材40は、フードインナパネル32に固定された固定部41と、固定部41から前方に向かって延在する延在部42と、延在部42の前側から屈曲されて延在するとともにフード30の前端部においてフードアウタパネル31に対向する受け部43とを有している。
【0043】
こうした構成によれば、上記作用1を奏することから、衝撃力を好適に吸収することができる。
(2)フードインナパネル32は、フードアウタパネル31に連結された前縁から後方に向かって延在する第1延在部32aと、第1延在部32aの後側において屈曲して後斜め下方に向かって延在する第2延在部32bとを有している。衝撃吸収部材40の固定部41は、フードインナパネル32における第2延在部32bにのみ設けられており、受け部43は、第1延在部32aの上方に設けられている。
【0044】
こうした構成によれば、上記作用2を奏することから、フード30の前端部における衝撃吸収性能を一層向上させることができる。
(3)衝撃吸収部材40の受け部43は、フードアウタパネル31の前側傾斜部31aに接着されている。
【0045】
こうした構成によれば、受け部43がフードアウタパネル31の前端部に固定されることから、フードアウタパネル31とフードインナパネル32との上下方向の距離が短くスペースの制限されたフード30の狭小部30aに対して、衝撃吸収部材40を安定して設けることができる。
【0046】
(4)衝撃吸収部材40の受け部43は、フードアウタパネル31の前側傾斜部31aに沿って延在している。
こうした構成によれば、上記作用3を奏することから、衝撃力を一層好適に吸収することができる。
【0047】
(5)衝撃吸収部材40の延在部42の一部には、第1貫通孔44a及び第2貫通孔44bを有し、その周辺部分よりも圧縮荷重に対して脆弱な脆弱部44が設けられている。
こうした構成によれば、各貫通孔44a,44bの大きさや形状を適宜設定することにより、延在部42の変形量を容易に調節することができる。延在部42の変形量を適切に設定することで、歩行者の頭部Hのフード30への衝突度合に応じて延在部42が変形されるようになる。これにより、歩行者の頭部Hが急激に減速されることが抑制され、歩行者に作用する衝撃力の最大値を低減することができる。
【0048】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・脆弱部44における貫通孔の形状及び数は適宜変更できる。
【0049】
・各貫通孔44a,44bに代えて、延在部42の一部をその周辺部分よりも低剛性の材料にて形成することで脆弱部を構成することができる。また、延在部42の一部の板厚をその周辺部分の板厚よりも小さくすることで脆弱部を構成することもできる。
【0050】
・衝撃吸収部材40の受け部43は、フードアウタパネル31の前側傾斜部31aに沿って延在していなくてもよい。この場合、受け部43のうち先端部などの一部が前側傾斜部31aに接着されていればよい。
【0051】
・衝撃吸収部材40の受け部43は、接着剤による接着に代えて溶接などのその他の方法によりフードアウタパネル31の前側傾斜部31aに対して固定されていてもよい。
・衝撃吸収部材40の受け部43は、フードアウタパネル31の前側傾斜部31aに固定されていなくてもよい。
【0052】
・延在部42の延在方向を適宜変更することができる。例えば、延在部42が固定部41からフードアウタパネル31の前側傾斜部31aに対して直交して延在するものであってもよい。
【0053】
・ストッパ14を衝撃吸収部材40の下方に位置するように設けることもできる。この場合、歩行者の頭部がフード30に衝突して支持部材13に底付きする際に、例えばゴムなどの弾性材料からなるストッパ14が、フードインナパネル32と支持部材13との間に介在することとなる。このため、ストッパ14が弾性変形することにより歩行者の頭部に作用する衝撃力を低減させることができる。
【0054】
・本実施形態の車両の前部構造は、前部にエンジンルームを有する車両に限定されず、前部にトランクルームを有する車両に対しても同様にして適用できる。
【符号の説明】
【0055】
10…ラジエータ、11…ラジエータサポート、11a…ラジエータサポートアッパ、12…エプロンアッパメンバ、13…支持部材、14…ストッパ、20…ヘッドランプ、21…ベース、22…アウタレンズ、23…ランプステー、30…フード、30a…狭小部、31…フードアウタパネル、31a…前側傾斜部、31b…後側傾斜部、32…フードインナパネル、32a…第1延在部、32b…第2延在部、33…屈曲部分、35…当接部、40…衝撃吸収部材、41…固定部、41a…凸部、42…延在部、43…受け部、44…脆弱部、44a…第1貫通孔、44b…第2貫通孔、45…支持片、50…シール部材、91…エンジンルーム、92…上部開口。
図1
図2
図3
図4
図5
図6