(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】草刈機のブレード伝動装置
(51)【国際特許分類】
A01D 34/86 20060101AFI20220317BHJP
A01D 34/64 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A01D34/86
A01D34/64 C
(21)【出願番号】P 2018129312
(22)【出願日】2018-07-06
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000144980
【氏名又は名称】株式会社アテックス
(72)【発明者】
【氏名】重見 和男
(72)【発明者】
【氏名】仲田 利通
【審査官】吉田 英一
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-128952(JP,A)
【文献】特開2017-87783(JP,A)
【文献】特開平8-37875(JP,A)
【文献】特開平10-250638(JP,A)
【文献】特開平8-37876(JP,A)
【文献】米国特許第4750751(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/86
A01D 34/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
草刈ブレード(1)のブレード軸(2)を軸装した草刈デッキ(3)を、左右一対のクローラ(4)を有して走行する走行車体(5)に対して、リンク前端部を車体(5)側のリンク軸(6),(7)周りに、リンク後端部を草刈デッキ(3)側のリンクピン(36),(37)周りに上下回動自在に枢支する前後二対の前方登り傾斜形態の平行リンク(8),(9)を介して昇降可能に装着し、草刈デッキ(3)上側にはエンジンベース(15)を設け、エンジンベース(15)には、ブレード軸(2)の前方位置にエンジン(E)を搭載し、エンジンベース(15)の下側へ向け突出させた駆動軸(11)に上下二段の駆動プーリ(12)を取着し、エンジン(E)の後方に、電動モータによる走行駆動の場合にはオルタネータ(25)を、油圧モータによる走行駆動の場合には油圧ポンプを配設し、エンジンベース(15)下方に向け突出させた回転軸(56)にVプーリ(57)を取着し、ブレード軸(2)の草刈デッキ(3)側後方には、上下二段のカウンタプーリ(13)を取着したカウンタ軸(14)を立設し、草刈デッキ(3)上方へ突設のブレード軸(2)にブレードプーリ(17)を取着し、前記駆動プーリ(12)の上部Vプーリ(55)とVプーリ(57)間にVベルト(58)を張設すると共に、下部駆動プーリ(12b)と上部カウンタプーリ(13a)間に駆動ベルト(10)を張設し、カウンタプーリ(13)の下部プーリ(21)とブレードプーリ(17)間に、テンションプーリ(18)で張圧、弛緩可能の刈取クラッチ(20)を有する刈取ベルト(19)を掛け渡し、エンジンベース(15)を、該エンジンベース(15)前端部、及び後端部の、エンジン(E)搭載面よりも所定高さ(H)低い位置、且つ、左右中央に設けた支持部材(16)周りに左右傾斜回動可能に構成し、前、後の支持部材(16),(16)間に亘る仮想の前後方向の直線をセンタライン(L)として、側面視において略水平状態のセンタライン(L)と、草刈デッキ(3)を最高位高さに上昇させた際の駆動ベルト(10)ベルトライン(A1)とを略一致させて設定すると共に、この位置を上限として草刈デッキ(3)の昇降移動による草の刈高さ調節を可能に構成したことを特徴とする草刈機のブレード伝動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、傾斜地面での草刈走行するときは、草刈ブレード軸を軸装する草刈デッキを装着した草刈機車体に対して、このブレード軸を連動駆動するエンジンを、車体に対して傾斜回動して、垂直状形態の姿勢に回動させて、草刈取の重心位置を安定させる草刈機において、エンジンの搭載姿勢の回動変更に拘らず、エンジン側の駆動軸から草刈デッキのブレード軸への伝動機構を簡単にして、正確で円滑な伝動を行わせるブレード伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
草刈車体に搭載のエンジンの姿勢を、傾斜草刈面における傾斜センサで検出された車体の傾斜に応じて、エンジンの出力軸を中心に鉛直姿勢に回動させて、刈取走行姿勢を安定させる技術(例えば特許文献1参照)が知られている。又、プーリとプーリ間のVベルト伝動構成において、Vベルトをねじりながらでも確実な伝動状態を維持する技術(例えば特許文献2)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-87783号公報
【文献】特開2000-136236号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
刈取車体に対して、搭載エンジン搭載姿勢を左右に傾斜回動して、エンジンの搭載姿勢を、草刈地面の左右傾斜面に応じて適宜角度傾斜回動させる草刈機形態にあっては、草刈機車体に対する重量、重心位置の偏倚、移動が大きく、草刈走行が不安定になり易いことが多い。又、エンジンの傾斜回動によって、エンジン側の駆動軸と、草刈デッキ側の伝動軸との関係位置が変化すると、伝動駆動抵抗が大きく変り易くなり、又は、刈取高さ調節時には、草刈デッキ側の伝動軸が上下動して、軸間隔が変化したり、これら駆動軸と伝動軸との間に掛け渡しているベルトラインが上下にずれたり、ねじれたりして、正確な伝動を維持し難い。特に、エンジン側の駆動軸と、草刈デッキ側のブレード軸との間を、ベルト掛け伝動する伝動形態にあっても、ベルトラインが変動し易く、伝動効率が低下し易く、草刈作業を安定して行えなかったり、又、プーリからベルトが外れ易いといった問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、草刈ブレード1のブレード軸2を軸装した刈取デッキ3を、左右一対のクローラ4を有して走行する走行車体5に対して、リンク前端部を車体5側のリンク軸6,7周りに、リンク後端部を草刈デッキ3側のリンクピン36,37周りに上下回動自在に枢支する前後二対の前方登り傾斜形態の平行リンク8,9を介して昇降可能に装着し、草刈デッキ3上側にはエンジンベース15を設け、エンジンベース15には、ブレード軸2の前方位置にエンジンEを搭載し、エンジンベース15の下側へ向け突出させた駆動軸11に上下二段の駆動プーリ12を取着し、エンジンEの後方に、電動モータによる走行駆動の場合にはオルタネータ25を、油圧モータによる走行駆動の場合には油圧ポンプを配設し、エンジンベース15下方に向け突出させた回転軸56にVプーリ57を取着し、ブレード軸2の草刈デッキ3側後方には、上下二段のカウンタプーリ13を取着したカウンタ軸14を立設し、草刈デッキ3上方へ突設のブレード軸2にブレードプーリ17を取着し、前記駆動プーリ12の上部Vプーリ55とVプーリ57間にVベルト58を張設すると共に、下部駆動プーリ12bと上部カウンタプーリ13a間に駆動ベルト10を張設し、カウンタプーリ13の下部プーリ21とブレードプーリ17間に、テンションプーリ18で張圧、弛緩可能の刈取クラッチ20を有する刈取ベルト19を掛け渡し、エンジンベース15を、該エンジンベース15前端部、及び後端部の、エンジンE搭載面よりも所定高さH低い位置、且つ、左右中央に設けた支持部材16周りに左右傾斜回動可能に構成し、前、後の支持部材16,16間に亘る仮想の前後方向の直線をセンタラインLとして、側面視において略水平状態のセンタラインLと、草刈デッキ3を最高位高さに上昇させた際の駆動ベルト10ベルトラインA1とを略一致させて設定すると共に、この位置を上限として草刈デッキ3の昇降移動による草の刈高さ調節を可能に構成したことを特徴とする草刈機のブレード伝動装置の構成とする。
【0006】
車体5に搭載のモータによりクローラ4が駆動されて、草刈機が刈取走行される。エンジンEの駆動によって、駆動軸11が回転されて、駆動ベルト10、カウンタ軸14、及び刈取ベルト19、及び刈取クラッチ20等を経て、草刈デッキ3のブレード1が回転されて、草刈作業を行うことができる。該刈取クラッチ20が伝動切り位置に作動すると、刈取ベルト19の回転伝動は停止して、ブレード1の回転を停止し、草刈作用を停止する。
【0007】
草刈機を単に走行するときは、草刈デッキ3を非刈取位置へ上昇した非草刈姿勢とし(
図1、
図4参照)、草刈取作業を行うときは、この草刈デッキ3を車体5に対して下降させて(
図2、
図3、
図4参照)、この下降草刈姿勢位置では、前記刈取クラッチ20を伝動入り位置へ操作して、カウンタ軸14から刈取ベルト19、ブレード軸2、及びブレード1の駆動回転によって、草刈作業を行うことができる。
【0008】
このような草刈作業時において、刈取走行地面が、左、右に大きく傾斜しているときは、これを傾斜センサ等の検出によって、又は、人為的操作等によって、エンジンEの搭載姿勢が車体5の左、右傾斜に拘らず、常に垂直状の姿勢を維持するように、又は、エンジンEの使用限界傾斜角度を超えない角度に姿勢制御されて、草刈機体の更に大きい傾斜揺動や、横転等を防止し、刈取走行の偏倚を防止して、刈取走行の安定を維持する。
【0009】
エンジンEを草刈機の左、右に傾斜回動して、搭載姿勢を変更、制御するときは、エンジンE搭載のエンジンベース15が、センタラインL上に沿う支持軸16の周りに、車体5の左、右傾斜姿勢に伴って、傾斜の登り側へ向けて回動して姿勢制御される。
【0010】
このような伝動形態において、ブレード軸17の伝動を行う刈取クラッチ20は、カウンタ軸21と、ブレード軸17との間の刈取ベルト19をテンションプーリ18で張圧、弛緩してクラッチの入り、切りの操作する形態であるから、この草刈デッキ3が昇降しても、又、エンジンE姿勢の傾斜回動があっても、このベルトクラッチ20によるクラッチ入り、切りは円滑に、正確に、容易に行うことができる。
【0011】
前記草刈りデッキ3の車体5に対する昇降作用は、車体5に対する前後二対のリンク軸6、7で支持の前方登り傾斜形態の平行リンク8、9を介して装着し、草刈デッキ3を前後方向略水平状の姿勢を維持して昇降することができる。又、草刈デッキ3を最上限位置へ上昇させた非刈取位置において、駆動軸11の下部駆動プーリ12bとカウンタ軸14の上部プーリ21との間に掛け渡された駆動ベルト10のベルトラインA1と、エンジンベース15の左右傾斜回動支点となる前、後の支持部材16,16間に亘る仮想の前後方向直線のセンタラインLとを、側面視略一致させて設定してある。
【0012】
このような草刈デッキ3を刈取位置(
図2参照)に下げて刈取伝動を行わせるときは、駆動軸11とカウンタ軸14との間の駆動ベルト10は、草刈りデッキ3の下降に伴ってカウンタプーリ13の位置が、前方登り傾斜形態の平行リンク8,9によって下方前側寄りに回動して、この駆動ベルト10のベルトラインの上下方向ずれや、間隔張りの変化を吸収緩和するため、正確な伝動を安定して行わせる。
【発明の効果】
【0013】
車体5に対して昇降する草刈デッキ3のブレード軸2を伝動するためのエンジンEを、草刈機車体5のセンタラインLに沿う支持部材16の周りに左、右方向に傾斜回動可能に構成するため、エンジンEの左、右傾斜姿勢の制御を車体5のセンタラインLに対して左右対称状形態に行って、草刈走行方向に対して左下り傾斜地面においても、又、右下り傾斜地面においても略同様の作業操作感覚で草刈作業を行うことができる。特に草刈走行時は、草刈デッキ3が車体5に対して平行リンク8、9機構を介して下降して草刈姿勢にあるため、駆動軸11の下部駆動プーリ12bとカウンタ軸14の上部カウンタプーリ13aとの間に掛け渡された駆動ベルト10のベルトラインは、上下方向にずれていて、この状態からエンジンベース15が傾斜回動すると駆動ベルト10にはねじれの作用も加わることとなるが、平行リンク8、9の回動によって、カウンタ軸14、及びカウンタプーリ13を、若干前側下側の位置へ偏倚するように作動して、駆動ベルト10の過張圧、弛緩を吸引緩和し、駆動プーリ12、及びカウンタプーリ13からの駆動ベルト10の離脱を防止し、張圧伝動、及びブレード軸2の伝動を円滑に行わせて、安定して伝動、草刈作業を行わせることができる。
【0014】
又、草刈デッキ3におけるブレード軸2伝動力を変化するものとして、このブレード軸2の伝動回転を入り、切りする刈取クラッチ20があるが、この発明における刈取クラッチ20は、センタラインL上において前、後に並ぶカウンタ軸14上のカウンタプーリ13と、ブレード軸2上のブレードプーリ17との間に亘って掛け渡す刈取ベルト19を、テンションプーリ18で張圧、弛緩して、伝動を入り、切りするもので、刈取デッキ3の上下動や、エンジンEの昇降傾斜変動等の影響を受けることがなく、安定した刈取作業を行うことができる。
【0015】
又、エンジンベース15はカウンタプーリ13上方位置で支持部材16,16を中心に左右傾斜回動する構成のため、カウンタプーリ13とエンジンベース15との間には所定間隔の回動スペースが必要であり、このスペースに駆動軸11の上部プーリ55と、オルタネータ25、又は油圧ポンプのVプーリ57とのVベルト58伝動を配置し、上からVベルト58、駆動ベルト10、刈取ベルト19の順に配設伝動してあるので、エンジンベース15の高さを低く構成することが可能で、車体5を低重心で安定した状態に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】その草刈デッキの草刈位置、及び刈取伝動状態を示す草刈機の側面図。
【
図3】その草刈デッキの平行リンクによる取付状態を示す草刈機の側面図。
【
図4】その草刈デッキの昇降状態を示す草刈機の側面図。
【
図5】そのブレード軸部のベルト伝動機構を示す草刈機の平面図。
【
図6】その刈取クラッチのベルト伝動機構、及び操作機構を示す一部の平面図。
【
図7】オルタネータの伝動機構部を示す草刈機の平面図。
【
図8】傾斜面走行の車体に対するエンジンの左、右傾斜回動状態を示す背面図。
【
図9】車体に対するエンジンの左、右傾斜回動状態を示す背面図。
【
図11】その草刈機による草刈作業を行うためのコントローラのブロック図。
【
図12】その草刈機による草刈作業を行わせるコントローラへの制御信号を発信する送信器の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図面に基づいて、草刈機は、ゴム材を主体とする左右一対の走行クローラ4を装備して走行する車体5の上部後端部に、該クローラ4を駆動する走行モータMや、伝動ケース22、走行、草刈操作、制御を行うコントローラ23を設け、前端部には、草刈デッキ3のブレード軸2を駆動するためのエンジンEを搭載し、前後中央部には、エンジンE始動用のバッテリ24aや、燃料タンク26、モータMを駆動するためのバッテリ24bやこのバッテリ24bを充電するためのオルタネータ25等を搭載している。これらの車体5の上方部には、前、後端のガードパイプ27間にアーチ状形態に連結のガードフレーム28を設け、前記各種搭載機器の上側部を覆うようにカバー29を設けて保護する。
【0018】
前記クローラ4は、車体5の左、右両側端部から下方に立設する支脚30に装着した左、右トラックフレーム31の前後方向に亘って配置の端部転輪32、中間転輪33、及び後端部の駆動スプロケット34等に掛け渡して、前記各左、右走行モータMで伝動ケース22の伝動ギヤ等を経てスプロケット軸35を伝動回転することにより、左、右各クローラ4を回転して、走行、乃至操向することができる。
【0019】
前記車体5の底部で、右のクローラ4、4間隔部(トレッド部)に、草の刈取を行うブレード1のブレード軸2を軸装した草刈デッキ3を、上下に昇降する平行リンク8、9の後端部に、リンクピン36、37で枢着して着脱可能に取付ける。又、この平行リンク8、9は、前端部を車体5の左、右両側の前端部に形成の軸受ブラケットに設けられた横方向のリンク軸6、7周りに回動自在に設けられ、左、右4本の平行リンク8、9の後端部に、リンクピン36、37で枢着されて、電動シリンダ50の伸縮によって回動されるリフトアーム38の回動により、リフトリンク39を介して、草刈デッキ3が刈取地面に平行状の姿勢を維持して昇降される。この草刈デッキ3の最上昇位置では、草刈デッキ3の天井上面が車体5の底面に接近して、草刈高さの上限位置、乃至非刈取高さ域にあるように設定している。又、草刈デッキ3が最下降された状態では、この草刈デッキ3内で回転されるブレード1によって刈られる草の刈取高さが最低位置となり、又、草刈デッキ3の前、後端部等にゲージホイルを装着している形態では、この最低刈取高さ位置を接地保持することができる。
【0020】
前記草刈デッキ3は、中央部に上下方向のブレード軸2を回転自在に軸装し、このブレード軸2の下端部に、外周部にブレード1を配設したブレードステイ40の中心部を取付ける。この草刈デッキ3の上側部には、該ブレード軸2の上端にV字形断面のVベルトからなる刈取ベルト19を嵌合させて回転案内するVプーリ形態のブレードプーリ17を取付ける。
【0021】
前記草刈デッキ3の上側には、該ブレード軸2の直後方位置に上下方向平行状態のカウンタ軸14を回転自在に立設し、このカウンタ軸14にはVプーリ形態のカウンタプーリ13を設け、該カウンタプーリ13は、上部に上部カウンタプーリ13aを、下部に下部プーリ21を設けてある。このカウンタ軸14の下部プーリ21と、前側のブレード軸2のブレードプーリ17との間に、Vベルト形態の刈取ベルト19を掛け渡し、この刈取ベルト19の回転外周面にテンションプーリ18を張圧、弛緩することによって、カウンタ軸14からブレード軸2への伝動を入り、切り可能な構成としている。該下部プーリ21の外周部の草刈デッキ3上面の枢着軸42に、テンションプーリ18のクラッチアーム41を枢着して、このクラッチアーム41に連結の操作ワイヤー43を、電動で伸縮される刈取クラッチ20、及びブレード軸2ブレーキ用の電動シリンダ44によってアーム軸46周りに回動される操作アーム45に連結して、この電動シリンダ44の伸縮作動によって、テンションプーリ18による刈取クラッチ20を入り、切りする形態である。(
図5、
図6参照)
【0022】
又、前記ブレードプーリ17の周りの草刈デッキ3の上面には、このブレードプーリ17のV溝部に嵌合摺接してブレード軸2の回転にブレーキを効かせるブレーキアーム47を、アーム軸48周りに回動可能に設け、前記電動シリンダ44によってアーム軸46周りに回動される操作アーム45との間を操作ワイヤ49で連結して、該電動シリンダ44の押出回動によって操作アーム45を、刈取クラッチ20切り位置bから入り位置aへ回動して、ワイヤー43を引っ張って、刈取クラッチ20のテンションプーリ18、クラッチアーム41を刈取ベルト19に張圧させて、刈取クラッチ20を伝動入りの位置、状態にすることができる。又、このとき、操作アーム45がブレード位置fからブレーキ解除位置eへ回動されることによって、操作ワイヤ49が引かれて、ブレーキアーム47をアーム軸48周りに回動して、ブレードプーリ17のVプーリ溝に嵌合押圧しているブレーキシュー47sを、外周方向へ離間させて、ブレーキ力を解除して、前記カウンタ軸14からブレード軸12への刈取ベルト19による刈取伝動を円滑に行わせる。
【0023】
又、前記電動シリンダ44、及び操作アーム45、操作ワイヤ43、49、及びクラッチアーム41、ブレーキアーム47等を介して作動される刈取クラッチ20や、ブレーキアーム47は、この電動シリンダ44を短縮作動させて、操作アーム45をクラッチ入り位置aから切り位置bへ回動することにより、操作ワイヤ43、49を介して、刈取クラッチ20が、刈取ベルト19から離間して伝動解除位置となり、ブレーキアーム47のブレーキシュー47sがブレード軸2のブレードプーリ17のV溝部に摺接して、ブレード軸2を制動状態にする。
【0024】
前記エンジンベース15は、底部の前、後端縁部に台形状のブラケットアーム51を形成して、エンジンE等の支持構成を補強すると共に、車体5に対してセンタラインL上の支持部材16の周りに左右回動域の設定を行い易く構成している。車体5の前、後部において左、右横方向に亘る横桟52の、横幅方向の中央部位置に支持メタル53を設け、この前、後の支持メタル53間に、該ブラケットアーム51の中央下端部に設けた支持部材16を嵌合支持させて、通常左右方向水平状姿勢に位置するエンジンベース15が、車体5の垂直方向線Yに対して、左、右適宜角度θ域に亘って回動自在の構成としている。このエンジンベース15の回動は、車体5の走行する草刈地面の左、右傾斜角度αを検出する傾斜センサS1と、車体5に対してエンジンベース15を左、右回動する伝動シリンダ54とによって制御するもので、左、右各有効角度θ域を、数段階の角度(例えば、制御角度θを、10°、18°、25°のように)に予め決めておいて、手動、又は自動的に角度制御が行われて、傾斜刈取地面でのエンジンEの搭載姿勢が常に鉛直状姿勢Y、又はエンジンEの傾斜許容範囲の角度以下に維持できる構成としている。
【0025】
前記エンジンベース15の前部上には、エンジンEを搭載し、この後部には、このエンジンEを始動したり、モータMを駆動するバッテリ24a,24bや、燃料タンク26、及びオルタネータ25等を搭載しているが、これら全体の車体重量が支持部材16に対して左右対称状形態に分布するように配置、装着している。エンジンEの駆動軸11は、エンジンベース15の前部位置において下側へ垂直状に突出し、この駆動軸11には、上下二段のV型ベルト溝付きのプーリを形成し、下側の下部駆動プーリ12bと草刈デッキ3後部のカウンタプーリ13の上部カウンタプーリ13aとの間に駆動ベルト10を掛け渡して、テンションプーリ60を張圧させて、常時回転伝動する形態としている。又、エンジンベース15底部の前後支持部材16、16間に亘る仮想の前後方向の直線をセンタラインLとして、草刈機車体5の左右中央位置に設定し、このセンタラインLと、草刈デッキ3最上昇位置における駆動ベルト10の上下中央部のベルトラインA1とを側面視において略同高さの平行状形態に設定している。駆動プーリ12の上側には、前記オルタネ―タ25を駆動するための上部Vプーリ55を設けて、この後部に搭載のオルタネタ―タ25の回転軸56に取付けられたVプーリ57との間にVベルト58を掛け渡して、テンションプーリ59を張圧させて、常時回転伝動する形態にある。
【0026】
草刈機車体5の腹部においては、エンジンベース15の上側からは、駆動軸11と、オルタネータ25の回転軸56が垂下し、底部の草刈デッキ3の上側には、ブレード軸2の上端部が突出すると共に、カウンタ軸14が立設されて、前後方向のセンタラインL上において前後間隔をおいて並列し、立設している。草刈デッキ3の上限位置(
図1参照)に上昇させた状態では、カウンタ軸14の上部カウンタプーリ13aが、駆動軸11下端の下部駆動プーリ12bと略同高位置にあって、これら下部駆動プーリ12b、上部カウンタ13a間に張設する駆動ベルト10が、前後略水平状形態に掛け渡されるように構成設定している。この状態においては、駆動ベルト10、及び刈取ベルト19、Vベルト58が水平、平行状に掛け渡されていて、上下間隔を接近し、ブレード1の位置を高い位置に上昇することができる。尚、平面視における駆動軸11、ブレード軸2、カウンタ軸14の並設配置は、全ての軸をセンタラインLと一致させても良いが、駆動軸11については必ずしも車体5の左右中央位置に配置する必要はなく、エンジンEの駆動軸11の配置によっては左右に偏倚させても良く、左右一対のブレード軸11を設ける場合には、ブレード軸11を平面視センタラインLの左右に振り分け配置させても良い。
【0027】
前記下部駆動プーリ12bと上部カウンタプーリ13aとの間に掛け渡すV形ベルトからなる駆動ベルト10は、下部駆動プーリ12b外周部近くにテンションプーリ60を設けて、駆動ベルト10を常時伝動形態に張圧している。このテンションプーリ60は、上方のエンジンベース15の枢支軸91に枢支されたテンションアーム92の先端部に回転自在に設けられて、スプリング93によって駆動ベルト10へ張圧される。又、このテンションプーリ60は、V形駆動ベルト10の背面に接圧するもので、平プーリ(ロール形態)に構成され、プーリ60の上下端縁に適宜高さのガイドリブ64を形成し、V形プーリからなる下部駆動プーリ12bと上部カウンタプーリ13aとの間に掛け渡されて回転案内されるV形ベルトからなる駆動ベルト10の、これら下部駆動プーリ12b、上部カウンタプーリ13aからの脱線回転を防止する。このテンションプーリ60の上下ガイドリブ64間隔は、駆動ベルト10の接圧転動幅よりも若干広く形成して、草刈デッキ3を昇降させた際に駆動ベルト10が若干上下に偏倚し、更に、エンジンベース15が左右に揺動しても、駆動ベルト10の、前、後端部が下部駆動プーリ12b、上部カウンタプーリ13aのV形溝部に深く嵌合して伝動案内されるため、駆動ベルト10の外れ、脱線は生じ難い。
【0028】
又、主として、
図10において、61はエンジンスタータ、62は給油蓋であり、カバー29の給油口部に設けている。63は燃料タンク26の給油口キャップ、64は非常停止スイッチ、65はアワーメータ、66はスロットルレバーである。
【0029】
前記草刈機による草刈り走行制御のための、前記コントローラ(CPUを有する)23の入力側に無線送信機であるプロポ(送信機)70からの送信を受ける受信機71や、車体5の左、右傾斜角を検出する傾斜センサS1、左、右走行用モータMや、オイルネ-タ25の温度を検出する温度センサS2やS3、S4、を設け、又、エンジン傾斜シリンダ用可変抵抗器R1や、刈高さ電動シリンダ用可変抵抗器R2、刈取クラッチ電動シリンダ用可変抵抗器R3等を設けている(
図11参照)。
【0030】
又、そのコントローラ23の出力側には、各種警報灯72、バッテリ残量メータ兼用のエラー表示部73等を設けている。又、エンジンEを傾斜させる電動シリンダ54や刈取高さ調整を行うための電動シリンダ50、及び、刈取クラッチ20を入り、切りするための電動シリンダ44等を配置する。更には前記左、右のクローラ4の駆動スプロケット34を駆動するモータMの各制御回74、75等を配置している。
【0031】
前記プロポ70には、信号送受信用アンテナPを有し、中央上面には、プロポ電源用のスライドスイッチ76、及びこの左、右両側部に走行を前、後進するための前後回動操作できる前、後進レバー77と、左、右回動して走行旋回方向を操作する旋回レバー78を配置している。又、プロポ70の下部には、液晶表示79を設けて、草刈機の走行状態や、作業状態、エラー等の表示を行うことができる。この一側には液晶用のタッチセンサ80を設けている。又、上部中央部には、最高速度を任意に調整することのできるダイヤル81や、草刈取高さを調整するダイヤル82等を設けている。これらの左側部には、前記刈取クラッチ20を入り、切り操作する刈取クラッチレバー83や、各種の操作、作動を自動と、手動に切替えたり、自動とメンテナンスモードとに切替えるための切替レバー84、及び警報ブザーを発信するためのブザーレバー85等を配置している。又、右側部には、エンジンスタートスイッチ86や、エンジンストップレバー87等を設ける。該スタートスイッチ86は、押している間セルが回転し、5秒以上押したままだとセルが停止する。エンジンストップレバー87が停止位置ではセルは回転しない構成になっている。又、これらの側近位置に、手動で草刈高さを昇降できる手動刈高調整レバー88や、手動エンジン傾斜レバー89等を設け、メンテナンス作業を行い易くしている。これらの手動刈高調整レバー88や手動エンジン傾斜レバー89を操作することによって、電動シリンダ50、又は54を伸縮して、草刈デッキ3を昇降したり、エンジンEの傾斜を変更することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 ブレード
2 ブレード軸
3 草刈デッキ
4 クローラ
5 車体
6 リンク軸
7 リンク軸
8 平行リンク
9 平行リンク
10 駆動ベルト
11 駆動軸
12 駆動プーリ
12b 下部駆動プーリ
13 カウンタプーリ
13a 上部カウンタプーリ
14 カウンタ軸
15 エンジンベース
16 支持部材
17 ブレードプーリ
18 テンションプーリ
19 刈取ベルト
20 刈取クラッチ
21 下部プーリ
25 オルタネータ
36 リンクピン
37 リンクピン
55 上部Vプーリ
56 回転軸
57 Vプーリ
A1 ベルトライン
E エンジン
H 所定高さ
L センタライン
M モータ