(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】RFIDタグ及び電子レンジ加熱用容器
(51)【国際特許分類】
H01Q 9/26 20060101AFI20220317BHJP
H05B 6/64 20060101ALI20220317BHJP
F24C 7/02 20060101ALI20220317BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20220317BHJP
G06K 19/077 20060101ALI20220317BHJP
H01Q 1/50 20060101ALI20220317BHJP
H01Q 1/22 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
H01Q9/26
H05B6/64 J
H05B6/64 Z
F24C7/02 551J
A47J27/00 107
G06K19/077 280
H01Q1/50
H01Q1/22 Z
(21)【出願番号】P 2017209805
(22)【出願日】2017-10-30
【審査請求日】2020-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】502350504
【氏名又は名称】学校法人上智学院
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】堀越 智
(72)【発明者】
【氏名】須田 保
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/162499(WO,A1)
【文献】特開2011-182392(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02675014(EP,A1)
【文献】特開2010-081007(JP,A)
【文献】特開2012-217042(JP,A)
【文献】特開2006-203852(JP,A)
【文献】特開2010-225168(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/26
H05B 6/64
F24C 7/02
A47J 27/00
G06K 19/077
H01Q 1/50
H01Q 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ及びICチップを備え、無線通信を行うRFIDタグであって、
前記アンテナは、インピーダンスステップを備え、
前記アンテナが前記RFIDタグの無線通信用の周波数と異なるマイクロ波加熱用又はマイクロ波乾燥用の周波数を有する電磁波を照射されるときに、前記アンテナが前記インピーダンスステップを備えないとするときより、
前記インピーダンスステップで反射波が生成され、複数の反射波が合成され、前記ICチップに流れる電流が減少する
ことを特徴とするRFIDタグ。
【請求項2】
前記ICチップに流れる電流が減少するように、前記インピーダンスステップが配置される個数及び位置が設定されることを特徴とする、請求項1に記載のRFIDタグ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のRFIDタグを備えることを特徴とする電子レンジ加熱用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンテナ及びICチップを備え無線通信を行うRFIDタグが、マイクロ波加熱又はマイクロ波乾燥により焼損する恐れをなくす技術に関する。
【背景技術】
【0002】
食品に関する様々な情報を収容するために、食品容器にバーコードを貼付している。食品に関する様々な情報として、例えば、食品管理情報(食品を保存する方法等)、食品価格情報及び食品加熱情報(電子レンジ加熱を行う方法等)が挙げられる。
【0003】
最近は、食品に関する様々な情報が膨大になっている。すると、食品容器にバーコードを貼付したとしても、食品に関する様々な情報をバーコードに収容しきれなくなっている。そこで、食品容器にRFIDタグを貼付することにより、食品に関する様々な情報をRFIDタグに十分に収容することができる(例えば、非特許文献1等を参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】“「コンビニ電子タグ1000億枚宣言」を策定しました~サプライチェーンに内在する社会課題の解決に向けて~” 、[online]、平成29年4月18日、経済産業省商務情報政策局、[平成29年10月20日検索]、インターネット<URL:http://www.meti.go.jp/press/2017/04/20170418005/20170418005.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、RFIDタグは、アンテナ等に導電性物質(例えば、金属材料、炭素材料及び導電性高分子材料等)を含み、ICチップに半導体を含む。すると、食品が電子レンジ加熱されるときに、RFIDタグが焼損する恐れがある。そして、食品容器が焼損の発熱で融解する恐れがあり、導電性物質や半導体が電子レンジ内で飛散する恐れがある。むろん、食品を電子レンジに入れる前に、RFIDタグを食品容器から外すならば、RFIDタグが焼損する恐れはなくなる。しかし、RFIDタグを食品容器から外す手間がかかり、RFIDタグを食品容器から外し忘れる恐れがある。
【0006】
そこで、前記課題を解決するために、本開示は、アンテナ及びICチップを備え無線通信を行うRFIDタグが、マイクロ波加熱又はマイクロ波乾燥により焼損する恐れをなくすことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、アンテナがRFIDタグの無線通信用の周波数と異なるマイクロ波加熱用又はマイクロ波乾燥用の周波数を有する電磁波を照射されるときに、アンテナがインピーダンスステップを備えることにより、ICチップに流れる電流が減少するようにした。つまり、インピーダンスステップを配置することにより、反射波が生成され、複数の反射波が合成されることにより、ICチップに流れる電流を制御するのである。
【0008】
具体的には、本開示は、アンテナ及びICチップを備え、無線通信を行うRFIDタグであって、前記アンテナは、インピーダンスステップを備え、前記アンテナが前記RFIDタグの無線通信用の周波数と異なるマイクロ波加熱用又はマイクロ波乾燥用の周波数を有する電磁波を照射されるときに、前記アンテナが前記インピーダンスステップを備えないとするときより、前記ICチップに流れる電流が減少することを特徴とするRFIDタグである。
【0009】
この構成によれば、アンテナ及びICチップを備え無線通信を行うRFIDタグが、マイクロ波加熱又はマイクロ波乾燥により焼損する恐れをなくすことができる。
【0010】
また、本開示は、前記ICチップに流れる電流が減少するように、前記インピーダンスステップが配置される個数及び位置が設定されることを特徴とするRFIDタグである。
【0011】
この構成によれば、インピーダンスステップが配置される個数及び位置を適切に設定することにより、ICチップに流れる電流を制御することができる。
【0012】
また、本開示は、上記のRFIDタグを備えることを特徴とする電子レンジ加熱用容器である。
【0013】
この構成によれば、アンテナ及びICチップを備え無線通信を行うRFIDタグが、マイクロ波加熱又はマイクロ波乾燥により焼損する恐れをなくすことができる。
【発明の効果】
【0014】
このように、本開示は、アンテナ及びICチップを備え無線通信を行うRFIDタグが、マイクロ波加熱又はマイクロ波乾燥により焼損する恐れをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の電子レンジ加熱用容器の構成を示す図である。
【
図2】比較例のRFIDタグのアンテナの構成及び誘起電流を示す図である。
【
図3】本開示のRFIDタグのアンテナの構成及び誘起電流を示す図である。
【
図4】本開示のRFIDタグのアンテナの構成及び誘起電流を示す図である。
【
図5】本開示のRFIDタグのアンテナの構成及び誘起電流を示す図である。
【
図6】本開示のRFIDタグのアンテナの構成及び誘起電流を示す図である。
【
図7】変形例のRFIDタグのアンテナの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
添付の図面を参照して本開示の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本開示の実施の例であり、本開示は以下の実施形態に制限されるものではない。
【0017】
本開示の電子レンジ加熱用容器の構成を
図1に示す。電子レンジ加熱用容器Cは、RFIDタグR及び内容物3を収容する容器2から構成される。RFIDタグRは、アンテナパターン1及びプラスチックフィルム1’から構成される。
【0018】
RFIDタグRのアンテナパターン1は、
図3から
図7までで後述するアンテナ11及びICチップ12を備え、無線通信を行う。ここで、RFIDタグRのアンテナパターン1は、マイクロ波を吸収しない部材(
図1では、プラスチックフィルム1’)に印刷される。よって、RFIDタグRのアンテナパターン1を簡便に製造することができる。そして、プラスチックフィルム1’付きのRFIDタグRは、容器2の表面に貼付される。
【0019】
ここで、アンテナ11は、インピーダンスステップを備える。そして、アンテナ11がRFIDタグRの無線通信用の周波数920MHzと異なる電子レンジ加熱用の周波数2.45GHzを有する電磁波を照射されるときに、アンテナ11がインピーダンスステップを備えないとするときより、ICチップ12に流れる電流が減少する。
【0020】
つまり、インピーダンスステップを配置することにより、反射波が生成され、複数の反射波が合成されることにより、ICチップ12に流れる電流を制御する。
【0021】
さらに、ICチップ12に流れる電流が減少するように、インピーダンスステップが配置される個数及び位置が設定されることが望ましい。
【0022】
比較例のRFIDタグのアンテナの構成及び誘起電流を
図2に示す。本開示のRFIDタグのアンテナの構成及び誘起電流を
図3から
図6までに示す。周波数2.45GHz及び電力500Wを有する球面波状の電磁波が、アンテナパターン1の上30cmから照射されたときの、アンテナ11の誘起電流のシミュレーションを行った。
【0023】
図2から
図6までに示したアンテナ11は、無線通信用の周波数920MHzにおいて設計された半波長ダイポールアンテナであり、アンテナ11中心から図面上の±x方向にそれぞれ9回ずつ折り曲げられ、図面上のx方向に小型化が図られている。
【0024】
図2に示した比較例のアンテナ11は、インピーダンスステップを備えない。アンテナ11の伝送線路の直径は、アンテナ全体において3mmである。すると、
図2上のx=±37.0mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は234.0mAであった。そして、ICチップ12が配置される位置の近傍である
図2上のx=0.0mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は113.0mAであった。よって、アンテナ11及びICチップ12を備え無線通信を行うRFIDタグRが、電子レンジ加熱により焼損する恐れがある。
【0025】
図3に示した本開示のアンテナ11は、インピーダンスステップを備える。インピーダンスステップは、アンテナ11中心から
図3上の±x方向にそれぞれ9個ずつの折り曲げ箇所のうち、アンテナ11中心から最も離れた
図3上の±x方向のそれぞれ8個ずつに配置される。アンテナ11の伝送線路の直径は、高インピーダンス線路において1mmであり、低インピーダンス線路において3mmである。すると、
図3上のx=±35.7mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は173.0mAであった。そして、ICチップ12が配置される位置の近傍である
図3上のx=0.0mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は76.7mAであった。つまり、
図3に示した本開示のアンテナ11では、
図2に示した比較例のアンテナ11より、ICチップ12に流れる電流が減少していた。
【0026】
図4に示した本開示のアンテナ11も、インピーダンスステップを備える。インピーダンスステップは、アンテナ11中心から
図4上の±x方向にそれぞれ9個ずつの折り曲げ箇所のうち、アンテナ11中心から最も離れた
図4上の±x方向のそれぞれ6個ずつに配置される。アンテナ11の伝送線路の直径は、高インピーダンス線路において1mmであり、低インピーダンス線路において3mmである。すると、
図4上のx=±30.0mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は117.0mAであった。そして、ICチップ12が配置される位置の近傍である
図4上のx=0.0mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は34.8mAであった。つまり、
図4に示した本開示のアンテナ11では、
図3に示した本開示のアンテナ11より、ICチップ12に流れる電流が減少していた。
【0027】
図5に示した本開示のアンテナ11も、インピーダンスステップを備える。インピーダンスステップは、アンテナ11中心から
図5上の±x方向にそれぞれ9個ずつの折り曲げ箇所のうち、アンテナ11中心から最も離れた
図5上の±x方向のそれぞれ4個ずつに配置される。アンテナ11の伝送線路の直径は、高インピーダンス線路において1mmであり、低インピーダンス線路において3mmである。すると、
図5上のx=±31.6mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は121.0mAであった。そして、ICチップ12が配置される位置の近傍である
図5上のx=0.0mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は29.4mAであった。つまり、
図5に示した本開示のアンテナ11では、
図4に示した本開示のアンテナ11より、ICチップ12に流れる電流が減少していた。
【0028】
図6に示した本開示のアンテナ11も、インピーダンスステップを備える。インピーダンスステップは、アンテナ11中心から
図6上の±x方向にそれぞれ9個ずつの折り曲げ箇所のうち、アンテナ11中心から最も離れた
図6上の±x方向のそれぞれ2個ずつに配置される。アンテナ11の伝送線路の直径は、高インピーダンス線路において1mmであり、低インピーダンス線路において3mmである。すると、
図6上のx=±37.5mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は176.9mAであった。そして、ICチップ12が配置される位置の近傍である
図6上のx=0.0mmにおいて、アンテナ11の誘起電流は56.8mAであった。つまり、
図6に示した本開示のアンテナ11では、
図2に示した比較例のアンテナ11より、ICチップ12に流れる電流が減少していた。
【0029】
ここで、
図2に示した比較例のアンテナ11に対して、単にインピーダンスステップを配置するのみでは、
図3から
図6までに示した本開示のアンテナ11において、無線通信用の周波数920MHzでのVSWR、利得及び指向性を最適化することはできない。しかし、
図2に示した比較例のアンテナ11に対して、さらに伝送線路の長さを微調整することにより、
図3から
図6までに示した本開示のアンテナ11において、無線通信用の周波数920MHzでのVSWR、利得及び指向性を最適化することができる。
【0030】
そして、
図3から
図6までに示した本開示のアンテナ11においては、計算時間を低減するために、円柱状の導体を使用している。しかし、
図3から
図6までに示した本開示のアンテナ11を応用して、フィルム上に印刷するために、平板状の導体を使用してもよい。ここで、平板の幅が円柱の直径の約2倍であれば、平板状の導体を使用したアンテナ11の電気特性は、円柱状の導体を使用したアンテナ11の電気特性と等価となる。
【0031】
変形例のRFIDタグのアンテナの構成を
図7に示す。ICチップ12に流れる電流が最も減少していた
図5に示したアンテナ11に対して、折れ曲がりをなくすことにより、
図7に示したアンテナ11を製造することができる。
【0032】
このように、アンテナ11及びICチップ12を備え無線通信を行うRFIDタグRが、電子レンジ加熱により焼損する恐れをなくすことができる。そして、
図3から
図7までに示した実施形態に限定されることなく、インピーダンスステップが配置される個数及び位置を適切に設定することにより、ICチップ12に流れる電流を制御することができる。
【0033】
さらに、RFIDタグRが電子レンジ加熱により焼損する恐れがないため、容器2の廃棄処理時にRFIDタグRから容器2の廃棄方法を読み取ることができ、内容物3の温め直し時にRFIDタグRから内容物3の調理方法を読み取ることができる。
【0034】
図1から
図7まででは、アンテナ11をRFIDタグRの無線通信用の周波数920MHzと異なる電子レンジ加熱用の周波数2.45GHzを有する電磁波で照射するときに、アンテナ11がインピーダンスステップを備えないとするときより、ICチップ12に流れる電流を減少させている。
図1から
図7までを一般化して、アンテナ11をRFIDタグRの無線通信用の任意の周波数と異なるマイクロ波加熱用又はマイクロ波乾燥用の任意の周波数を有する電磁波で照射するときに、アンテナ11がインピーダンスステップを備えないとするときより、ICチップ12に流れる電流を減少させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示のRFIDタグ及び電子レンジ加熱用容器を用いて、アンテナ及びICチップを備え無線通信を行うRFIDタグが、マイクロ波加熱又はマイクロ波乾燥により焼損する恐れをなくすことができる。
【符号の説明】
【0036】
C:電子レンジ加熱用容器
R:RFIDタグ
1:アンテナパターン
1’:プラスチックフィルム
2:容器
3:内容物
11:アンテナ
12:ICチップ