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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】点火プラグ装置
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/54 20060101AFI20220317BHJP
   H01T 13/20 20060101ALI20220317BHJP
   H01T 13/32 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
H01T13/54
H01T13/20 B
H01T13/32
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017212702
(22)【出願日】2017-11-02
(65)【公開番号】P2019087333
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(73)【特許権者】
【識別番号】503116899
【氏名又は名称】株式会社IHI原動機
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100114937
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】梅沢 修一
(72)【発明者】
【氏名】杉田 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】大畑 博直
(72)【発明者】
【氏名】氏家 康成
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
【審査官】片岡 弘之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-143371(JP,A)
【文献】特開2017-004882(JP,A)
【文献】特開2015-130302(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/54
H01T 13/20
H01T 13/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒状の中心電極と、前記中心電極を囲むドーム型のプラグカバーとを備える点火プラグ装置であって、
前記中心電極の軸芯方向から見て隙間を設けて前記中心電極を囲む平板状の接地電極を備え
前記プラグカバーは、内壁面が少なくとも1つの焦点を有する三次元形状に設定され、 前記中心電極は、前記軸芯方向から見て前記焦点と重なる位置に設けられ、
前記プラグカバーの内部に形成された点火室にて、前記プラグカバーの前記内壁面と前記中心電極の先端部との間であって前記内壁面よりも前記中心電極の前記先端部寄りに前記焦点が配置されている
ことを特徴とする点火プラグ装置。
【請求項2】
前記接地電極は、前記プラグカバーとの間に隙間が形成されることを特徴とする請求項1記載の点火プラグ装置。
【請求項3】
前記プラグカバーは、開口を有し、
前記接地電極は、前記プラグカバーとの隙間が前記開口と前記中心電極の軸芯方向から見て対応する位置に設けられる
ことを特徴とする請求項2記載の点火プラグ装置。
【請求項4】
前記接地電極と前記プラグカバーとの隙間の面積は、前記中心電極と前記接地電極との隙間の面積よりも大きいことを特徴とする請求項2または3に記載の点火プラグ装置。
【請求項5】
前記接地電極と前記プラグカバーとの隙間が複数設けられ、
全ての前記接地電極と前記プラグカバーとの隙間の面積の総和は、前記中心電極と前記接地電極との隙間の面積よりも大きいことを特徴とする請求項4に記載の点火プラグ装置。
【請求項6】
前記プラグカバーには、前記接地電極に対してドーム頂部と反対側の空間と外部空間とを連通する気体導入口が形成されることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の点火プラグ装置。
【請求項7】
前記接地電極は、係合片を有し、
前記プラグカバーには、前記係合片が係合されるスリットが形成され、
前記スリットは、一部が前記気体導入口である
ことを特徴とする請求項6記載の点火プラグ装置。
【請求項8】
前記中心電極の端面は、前記接地電極の前記プラグカバー側の面と同一面上に配置されることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の点火プラグ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火プラグ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ハウジングと、ハウジングに接触して固定されたプラグカバーとにより副燃焼室(点火室)が形成されたスパークプラグ(点火プラグ装置)が開示されている。このようなスパークプラグは、内燃機関の燃焼室に取り付けられ、ハウジングの内部に設けられた中心電極に高電圧を印加することにより、中心電極と、プラグカバーに設けられた接地電極との間に火炎核を発生させる。スパークプラグは、この火炎核により燃焼室に充満された燃料と空気との混合気に点火を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-130302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように、プラグカバーに接地電極が設けられる点火プラグ装置では、接地電極が1箇所に設けられており、スパークを発生させる際に接地電極及び中心電極の先端に大きな負荷がかかるため、接地電極が消耗しやすい。上述のような接地電極を有する点火プラグ装置において、接地電極が損傷すると、スパークを発生させることができず、点火させることができなくなる。
【0005】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、接地電極及び中心電極に加わる負荷を軽減し、点火プラグ装置を長寿命化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、第1の手段として、棒状の中心電極と、上記中心電極を囲むドーム型のプラグカバーとを備える点火プラグ装置であって、上記中心電極の軸芯方向から見て隙間を設けて上記中心電極を囲む平板状の接地電極を備える、という構成を採用する。
【0007】
第2の手段として、上記第1の手段において、上記接地電極は、上記プラグカバーとの間に隙間が形成される、という構成を採用する。
【0008】
第3の手段として、上記第2の手段において、上記プラグカバーは、開口を有し、上記接地電極は、上記プラグカバーとの隙間が上記開口と上記中心電極の軸芯方向から見て対応する位置に設けられる、という構成を採用する。
【0009】
第4の手段として、上記第2または第3の手段において、上記接地電極と上記プラグカバーとの隙間の面積は、上記中心電極と上記接地電極との隙間の面積よりも大きい、という構成を採用する。
【0010】
第5の手段として、上記第4の手段において、上記接地電極と上記プラグカバーとの隙間が複数設けられ、全ての上記接地電極と上記プラグカバーとの隙間の面積の総和は、上記中心電極と上記接地電極との隙間の面積よりも大きい、という構成を採用する。
【0011】
第6の手段として、上記第1~5のいずれかの手段において、上記プラグカバーには、上記接地電極に対してドーム頂部と反対側の空間と外部空間とを連通する気体導入口が形成される、という構成を採用する。
【0012】
第7の手段として、上記第6の手段において、上記接地電極は、係合片を有し、上記プラグカバーには、上記係合片が係合されるスリットが形成され、上記スリットは、一部が上記気体導入口である、という構成を採用する。
【0013】
第8の手段として、上記第1~7のいずれかの手段において、上記中心電極の端面は、上記接地電極の上記プラグカバー側の面と同一面上に配置される、という構成を採用する。
【0014】
第9の手段として、上記第1~8のいずれかの手段において、上記プラグカバーは、内壁面が少なくとも1つの焦点を有する三次元形状に設定され、上記中心電極は、上記軸芯方向から見て上記焦点と重なる位置に設けられる、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る点火プラグ装置は、ドーム型のプラグカバーと、中心電極を囲む平板状の接地電極とを備えている。中心電極と接地電極との間においてスパークが発生する際に、中心電極と接地電極との間において放電によるエネルギが放出される。このエネルギを、プラグカバーの内壁面により中心電極側に向けて反射することで、中心電極の近傍においてエネルギ密度を高めることができ、中心電極に印加する電圧を低減させることができる。さらに、接地電極を平板状とすることにより、接地電極及び中心電極の放電面積が広くなるため、接地電極及び中心電極において一点に負荷がかかることがない。これにより、接地電極及び中心電極の消耗を抑制でき、接地電極及び中心電極の一部が損傷した場合にも、他の部位で放電させることができる。したがって、接地電極及び中心電極に加わる負荷を軽減し、点火プラグ装置を長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る点火プラグ装置の部分断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る点火プラグ装置のプラグカバーを含む拡大断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る点火プラグ装置のプラグカバーを含む正面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る点火プラグ装置の一部の斜視図である。
図5】本発明の一実施形態に係る点火プラグ装置の備える接地電極の中心軸線に直交する方向における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明に係る点火プラグ装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0018】
図1は、本実施形態に係る点火プラグ装置1の部分断面図である。また、図2は、本実施形態に係る点火プラグ装置1のプラグカバー4を含む拡大断面図である。
本実施形態に係る点火プラグ装置1は、例えば内燃機関等の燃焼室に設けられ、図1及び図2に示すように、ハウジング部2と、絶縁碍子3と、プラグカバー4と、中心電極5と、接地電極6と、ターミナル7とを備えている。この点火プラグ装置1は、プラグカバー4の内部に点火室Aが形成されている。この点火室Aは、焦点A1を中心とした空間であり、内燃機関の燃焼室の内部に配置されている。
【0019】
ハウジング部2は、中心電極5の外周に設けられており、中心電極5を保持する部材である。このハウジング部2は、ハウジング2aと、ハウジング2aの外周に固定されたガスケット2bとを有している。ハウジング2aは、外周の直径が日本工業規格に規定されるM14またはM18のボルトと略等しく、中心軸線Lを中心とした円筒状であり、一方の端部にプラグカバー4が取り付けられている。
また、ハウジング2aの他方の端部側は外径が拡径されており、図2に示すように、中心軸線L方向から見て略六角形形状とされている。ガスケット2bは、内燃機関に対して点火プラグ装置1を取り付ける際に、内燃機関に対して隙間を封止する部材である。
【0020】
絶縁碍子3は、図1に示すように、ハウジング2aと、中心電極5との間に配設され、中心軸線Lを中心とした略円筒状であり、セラミック等により形成される部材である。このような絶縁碍子3は、ハウジング2aと中心電極5との間、及び、ハウジング2aとターミナル7との間を絶縁している。
【0021】
プラグカバー4は、図1~4に示すように、半球ドーム状の底部を有する有底円筒状の金属部材であり、開放端がハウジング2aの端部に固定されている。また、プラグカバー4には、点火開口4aが形成されている。図3は、本実施形態に係る点火プラグ装置1のプラグカバー4を含む正面図である。点火開口4aは、図3に示すように、中心軸線Lの頂点を中心として120°間隔で3カ所に形成されている。この点火開口4aは、内燃機関の燃焼室に充満された混合気を、点火室Aに流入させるための開口である。図4は、点火プラグ装置1の一部の斜視図である。プラグカバー4は、図4に示すように、半球ドーム状の底部と反対側の端部において、120度間隔で3箇所に、中心軸線Lに沿う方向に接地電極6が係合されるスリットが形成されている。接地電極6が係合された状態でプラグカバー4がハウジング2aに取り付けられると、プラグカバー4には、図1に示すように、スリットにおいて、接地電極6とハウジング2aとの間に、気体導入口4cが形成される。すなわち、プラグカバー4は、スリットの接地電極6が配置されるよりもハウジング2a側(頂部と反対側)の領域が、ハウジング2aの内側と燃焼室(外部空間)とを連通する気体導入口4cとなっている。
【0022】
プラグカバー4の内壁面4bは、中心軸線L上に形成される焦点A1を中心とした球面形状とされている。このようなプラグカバー4の球面形状の内壁面4bと、ハウジング2aの端面2a1と、絶縁碍子3の端面3aとにより、焦点A1を中心とした略球状の点火室Aが形成されている。また、内壁面4bは、焦点A1を超えてハウジング2aと接触する位置まで球面形状とされている。すなわち、内壁面4bは、焦点A1を中心とする球面の少なくとも半分を超えた範囲により形成されている。
【0023】
中心電極5は、絶縁碍子3の内側に中心軸線L上に設けられた略円柱形(棒状)の金属部材であり、絶縁碍子3の端部から先端部5aが突出している。すなわち、中心電極5は、点火室Aに向けて先端部5aが突出している。なお、先端部5aは、イリジウムやルテニウム等の高融点金属により構成され、焦点A1よりも絶縁碍子3側に配置されている。また、この中心電極5は、先端部5aと反対側の端部がターミナル7と接触している。この中心電極5にターミナル7を介して電圧が印加されることで、接地電極6との間で放電現象が生じる。
【0024】
図5は、接地電極6の中心軸線Lに直交する方向における断面図である。接地電極6は、図5に示すように、中心に中心開口6aが形成された平板状の部材であり、中心軸線Lを中心として120度間隔で3箇所より径方向外側に向けて係合片が突出している。なお、接地電極6は、ニッケル系耐熱合金により全体が構成され、中心開口6aの外側の部位にイリジウムやルテニウム等により構成された略環状高融点金属部材が埋め込まれている。接地電極6の係合片は、プラグカバー4のスリットに係合する。また、図2に示すように、接地電極6のプラグカバー4側の面と、中心電極5の先端部5aの端面とは、同一面上に配置される。接地電極6は、中心電極5に対して負極側の電極となっている。接地電極6に流れた電流は、プラグカバー4及びハウジング2aを介して、内燃機関のシリンダヘッドに放電される。
【0025】
また、接地電極6の中心開口6aには、中心軸線L方向(軸芯方向)から見て間隙S1を空けて中心電極5の先端部5aが配置されている。中心軸線L方向から見て接地電極6とプラグカバー4との間に形成される3つの間隙S2の面積の総和は、接地電極6と中心電極5との間の間隙S1の面積の総和よりも大きく設定されている。また、間隙S2は、中心軸線Lに沿う方向から見て、点火開口4aと重なる位置(対応する位置)に設けられている。
【0026】
ターミナル7は、中心電極5の先端部5aと反対側の端部に接触すると共に、中心軸線L上において絶縁碍子3の内側に配設された端子である。このターミナル7は、不図示のイグニッションコイル等に接続され、イグニッションコイル等により生成された電流を中心電極5へと流している。
【0027】
このような本実施形態に係る点火プラグ装置1の着火動作を説明する。
イグニッションコイル等によって発生した電流は、ターミナル7を介して中心電極5に流れる。これにより、中心電極5と接地電極6との間で放電現象が発生し、火炎核が形成される。このとき、点火室Aにおいて、中心電極5と接地電極6との間隙S1を中心として放射状に衝撃波が発生する。この衝撃波は、プラグカバー4の内壁面4bと、ハウジング2aの端面2a1と、絶縁碍子3の端面3aとにより反射され、焦点A1方向へと集められる。これにより、点火室Aにおいて、焦点A1の周囲に衝撃波のエネルギが集中し、混合気が断熱圧縮され、温度が急激に上昇する。なお、この温度の上昇までの期間は、放電期間と比較して極めて短い。このため、点火室A内の混合気は、温度が上昇することで、より点火しやすい状態となる。したがって、点火プラグ装置1は、与えられる点火エネルギが小さくとも、点火させることが可能となる。
【0028】
また、燃焼室等(外部)の混合気は、点火開口4aを介して点火室Aへと流入すると共に、気体導入口4cから流入する。点火開口4aから流入した混合気は、間隙S2を通ってハウジング2aと接地電極6との間の空間へと流入し、さらに、間隙S1を通って、点火室Aへと戻される。また、気体導入口4cから流入した混合気は、間隙S1を通って点火室Aへと流入する。このような点火プラグ装置1における混合気の流れにより、間隙S1において生成された火炎核が、早期に中心電極5及び接地電極6から離れる。さらに、火炎核が点火室A内において成長し、高温高圧となった火炎が点火開口4aを通って燃焼室へと広がる。
【0029】
本実施形態によれば、点火プラグ装置1は、ドーム型のプラグカバー4と、中心電極5を囲む平板状の接地電極6とを備えている。プラグカバー4により、中心電極5と接地電極6との間において放電時に発生する衝撃波を中心電極5の周囲へと戻すことができ、火炎核の周囲を高温にすることができる。したがって、中心電極5に印加する電圧を従来よりも下げても、点火することができる。さらに、接地電極6が平板状であることにより、接地電極6の一部に大きな負荷がかかることなく、また、接地電極6の一部が損傷した場合にも、接地電極6の他の部位により放電させることができる。したがって、接地電極6及び中心電極5に加わる負荷を軽減し、点火プラグ装置1を長寿命化することができる。また、先端部5aを円柱形とすることにより、中心電極5の放電面積を大きくすることができ、中心電極5を長寿命化できる。
【0030】
また、本実施形態によれば、接地電極6とプラグカバー4との間に間隙S2が形成されている。この間隙S2からハウジング2a側に流入した点火室Aの混合気が間隙S1より点火室Aへと戻る流れが形成されることにより、中心電極5の先端部5a近傍において形成された火炎核を早期に中心電極5及び接地電極6から離間させることができ、火炎核から中心電極5及び接地電極6への熱損失が低減する。したがって、点火プラグ装置1は、燃焼室において安定して火炎を形成することができる。
【0031】
また、間隙S2が、中心軸線Lに沿う方向から見て、点火開口4aに対応する位置に設けられることにより、点火開口4aから点火室Aへと流入した混合気が間隙S2へと流入しやすくなる。これにより、間隙S2からハウジング2a側に流入した点火室Aの混合気が間隙S1より点火室Aへと戻る流れが形成されやすくなり、燃焼室においてより安定して火炎を形成することができる。
【0032】
さらに、3つの間隙S2の面積の総和が接地電極6と中心電極5との間の間隙S1の面積の総和よりも大きく設定されていることによっても、間隙S2からハウジング2a側に流入した点火室Aの混合気が間隙S1より点火室Aへと戻る流れが形成されやすくなり、燃焼室においてより安定して火炎を形成することができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、プラグカバー4に気体導入口4cが形成されていることにより、気体導入口4cからも混合気を取り込んで、火炎核を早期に中心電極5及び接地電極6から離間させることができ、消炎現象の防止に有効である。
【0034】
また、プラグカバー4にスリットが形成され、スリットに接地電極6の係合片が係合された状態で、プラグカバー4がハウジング2aに固定される。これにより、プラグカバー4と接地電極6との固定が容易であると共に、部品点数を最小限とすることができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、中心電極5の端面は、接地電極6のプラグカバー4側の面と同一面上に配置されている。これにより、点火を繰り返し行う際に、中心電極5から放たれるスパークが、接地電極6の中心開口6aの内周面端部において1箇所に偏ることなく一様に飛ぶため、接地電極6が均一に消耗する。また、中心電極5及び接地電極6の消耗を抑制することができる。
【0036】
また、本実施形態に係る点火プラグ装置1によれば、プラグカバー4の内壁面4bが半球状であるため、点火室Aの内部で発生した衝撃波のエネルギが反射されて焦点A1へと集中する。焦点A1の周囲における混合気は、断熱圧縮されることで温度が上昇し、点火されやすくなる。これにより、本実施形態に係る点火プラグ装置1は、中心電極5に印加される電圧を小さくしても、混合気に点火させることができる。したがって、中心電極5の負荷を軽減し、長寿命化させることが可能である。
【0037】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態においては、プラグカバー4に設けられたスリットに接地電極6の係合片が係合されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。点火プラグ装置1は、接地電極6を固定する窪みを有する筒部材を別体として備え、プラグカバー4と筒部材とにより接地電極6を固定するものとしてもよい。
【0038】
(2)また、上記実施形態においては、中心電極5の端面が接地電極6のプラグカバー4側の面と同一面上に配置されるものとしたが、本発明はこれに限定されない。中心電極5の端面が接地電極6よりもプラグカバー4側に突出した状態としても良い。
【0039】
(3)また、点火開口4a及び間隙S2の位置は、3箇所に限定されるものではなく、等間隔に形成されていなくともよい。
【0040】
(4)また、プラグカバー4には、頂点(中心軸線Lとの交点)に開口を形成するものとしてもよい。この場合、組立時において中心電極5の位置を確認することができ、各部品を正確な位置に設置することができる。
【符号の説明】
【0041】
1……点火プラグ装置
4……プラグカバー
5……中心電極
6……接地電極
A……点火室
S1……間隙
S2……間隙
L……中心軸線
図1
図2
図3
図4
図5