(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】汎用、可撓性かつ生体適合性エラストマーマイクロチューブ
(51)【国際特許分類】
B81B 3/00 20060101AFI20220317BHJP
A61F 2/10 20060101ALI20220317BHJP
A61F 2/06 20130101ALI20220317BHJP
A61F 2/02 20060101ALI20220317BHJP
A61L 27/50 20060101ALI20220317BHJP
A61L 27/60 20060101ALI20220317BHJP
A61L 27/18 20060101ALI20220317BHJP
A61L 27/16 20060101ALI20220317BHJP
A61K 9/00 20060101ALI20220317BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20220317BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220317BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20220317BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20220317BHJP
A61L 31/14 20060101ALI20220317BHJP
B81B 1/00 20060101ALI20220317BHJP
B81C 99/00 20100101ALI20220317BHJP
【FI】
B81B3/00
A61F2/10
A61F2/06
A61F2/02
A61L27/50
A61L27/60
A61L27/50 300
A61L27/18
A61L27/16
A61K9/00
A61K47/34
A61K47/32
A61L31/04 110
A61L31/06
A61L31/14
B81B1/00
B81C99/00
(21)【出願番号】P 2018546580
(86)(22)【出願日】2017-03-02
(86)【国際出願番号】 US2017020443
(87)【国際公開番号】W WO2017151915
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-10
(32)【優先日】2016-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(73)【特許権者】
【識別番号】596060697
【氏名又は名称】マサチューセッツ インスティテュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】518310684
【氏名又は名称】シャンハイ チアオ トン ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】シー,ワン
(72)【発明者】
【氏名】リム,チュウィー,テック
(72)【発明者】
【氏名】コン,ファン
(72)【発明者】
【氏名】ゴン,シアオボー
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-537439(JP,A)
【文献】特開2008-248181(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01557396(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2015/0351967(US,A1)
【文献】特開平07-328127(JP,A)
【文献】特開昭62-192171(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104340956(CN,A)
【文献】Xin Heng et al.,Flexible PDMS microtubes for examining local hydrophobicity,Microsystem Technologies,2013年12月29日,477-485
【文献】Jungwook Paek et al.,Microrobotic tentacles with spiral bending capability based on shape-engineered elastomeric microtubes,Scientific Reports,米国,Springer Nature Limited,2015年06月22日,1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B81B 3/00
A61F 2/10
A61F 2/06
A61F 2/02
A61L 27/50
A61L 27/60
A61L 27/18
A61L 27/16
A61K 9/00
A61K 47/34
A61K 47/32
A61L 31/04
A61L 31/06
A61L 31/14
B81B 1/00
B81C 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーを含む可撓性マイクロチューブであって、
前記マイクロチューブは、約4μm~約1000μmの内径と
、外径とを有
し、前記マイクロチューブの内表面は、前記マイクロチューブの内径を画定するために使用される金属ワイヤテンプレートの輪郭を複製し、前記マイクロチューブは、前記金属ワイヤテンプレートにより画定されるマイクロチューブの端から端までの長さおよび一様な断面の内径を有する、マイクロチューブ。
【請求項2】
前記ポリマーが、シリコーンエラストマー、紫外線感受性ポリマー、導電性ポリマー、ポリウレタン、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ポリイミドまたは導電性ゴムである、請求項1に記載のマイクロチューブ。
【請求項3】
前記シリコーンエラストマーは、ポリジメチルシロキサン、フェニルビニルシリコーン、メチルシロキサン、白金硬化シリコーンゴムまたはフルオロシロキサンである、請求項2に記載のマイクロチューブ。
【請求項4】
前記紫外線感受性ポリマーは、
アクリレート/メタクリレート基を有するフッ素化樹脂、スチレン-アクリレート含有ポリマー、ポリアクリレートポリアルコキシシラン、ポジ型フォトレジストまたはネガ型フォトレジストである、請求項2に記載のマイクロチューブ。
【請求項5】
前記マイクロチューブ内径が約10μm~約800μmである、請求項1に記載のマイクロチューブ。
【請求項6】
前記マイクロチューブの長さが約10m以下である、請求項1に記載のマイクロチューブ。
【請求項7】
気体透過性である、請求項1に記載のマイクロチューブ。
【請求項8】
透明である、請求項1に記載のマイクロチューブ。
【請求項9】
生体適合性である、請求項1に記載のマイクロチューブ。
【請求項10】
ポリマーを含む可撓性マイクロチューブを
製造する方法であって、
熱硬化性ポリマーを含むプール内にワイヤを浸漬するステップと、
第1
の期間、前記ワイヤを加熱し、それにより、前記ワイヤの表面で前記熱硬化性ポリマーの硬化を開始するステップと、
前記プールから前記ワイヤを引き出すステップと、
第2
の期間、前記ワイヤを加熱し、それにより、追加の熱硬化性ポリマーを硬化させ、ポリマーコーティングワイヤを製造するステップと、
超音波処理を伴って液浴内に前記ポリマーコーティングワイヤを浸漬し、それにより、ポリマー-ワイヤ接触面を緩めるステップと、
前記ポリマーコーティングワイヤから前記ワイヤを除去し、それにより、ポリマーマイクロチューブを製造するステップと、
前記ポリマーマイクロチューブを加熱し、それにより、
約4μm~約1000μmの内径と、外径とを有し、前記内径および外径がそれらのそれぞれの直径においてマイクロチューブの長さの端から端まで一様である可撓性マイクロチューブを製造するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
前記第1
の期間の加熱が、前記ワイヤに沿っ
た電流によって行われ、
前記第2
の期間の加熱が、熱風発熱体によって行われ、
前記液浴がアセトン浴であり、
前記ポリマーマイクロチューブ
の加熱が、焼成によって行われる、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
ポリマーを含む可撓性マイクロチューブを
製造する方法であって、
プレキュア紫外線硬化性ポリマーを含むプール内にワイヤを浸漬するステップと、
前記ワイヤを前記プールから引き出してアルゴンチャンバ内に入れるステップと、
紫外線水銀灯の下で前記ワイヤの周囲にコーティングされた紫外線硬化性ポリマーの層を硬化させ、それにより、ポリマーコーティングワイヤを製造するステップと、
超音波処理を伴って液浴内に前記ポリマーコーティングワイヤを浸漬し、それにより、ポリマーワイヤ接触面を緩めるステップと、
前記ポリマーコーティングワイヤから前記ワイヤを除去し、それにより、ポリマーマイクロチューブを製造するステップと、
前記ポリマーマイクロチューブを加熱し、それにより、
約4μm~約1000μmの内径と、外径とを有し、前記内径および外径がそれらのそれぞれの直径においてマイクロチューブの長さの端から端まで一様である可撓性マイクロチューブを製造するステップと、
を含む方法。
【請求項13】
請求項
10~12のいずれか一項に記載の
方法により製造されるマイクロチューブを
含むデバイス。
【請求項14】
生物医学デバイスである、請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記生物医学デバイスが、人工皮膚、オーガン・オン・チップ、擬似血管デバイス、擬似毛細血管網デバイス、光学マイクロ流体デバイス、3Dバイオリアクタ、ドラッグデリバリデバイス、セルストレッチャ、組織工学足場、マイクロポンプまたはマイクロバルブである、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
円形、矩形、正方形、三角形、楕円形、星形または不規則な断面の形状を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロチューブ。
【請求項17】
請求項10~12のいずれか一項に記載の方法により製造される可撓性マイクロチューブ。
【請求項18】
前記ポリマーが、シリコーンエラストマー、紫外線感受性ポリマー、導電性ポリマー、ポリウレタン、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ポリイミドまたは導電性ゴムである、請求項17に記載の可撓性マイクロチューブ。
【請求項19】
前記ポリマーが、ポリジメチルシロキサンである、請求項17に記載の可撓性マイクロチューブ。
【請求項20】
前記ポリマーが、アクリレート/メタクリレート基を有するフッ素化樹脂である、請求項17に記載の可撓性マイクロチューブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2016年3月3日に出願された米国仮特許出願第62/302,919号明細書の利益を主張する。上記出願の教示全体が、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
ポリジメチルシロキサン(PDMS)等のエラストマー材料から作製されたマイクロ流体工学デバイスは、通常、生体分子、細胞および粒子等、微小かつナノスケールのもののマイクロスケール操作、分析および選別等の作業を行うように特に設計されたマイクロ流体チャネルからなる。しかしながら、マイクロ流体工学の従来の製造は、常に、複雑なフォトリソグラフィプロセスを伴い、それは、費用がかかり、マイクロ流体チャネルの形状を矩形断面に限定し、複雑な3次元(3D)微細構造を形成することが困難である。これらはすべて、この技法のより広い採用に対する妨げとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
種々のエラストマー材料からマイクロ流体チューブ(マイクロチューブ)を製造する、新規な、費用のかからないかつ効率的な方法について記載する。これらのマイクロチューブは、約4μm~約1000μmの範囲であり得る内径と、可変であり必要に応じて制御することができる外径とを有する。マイクロチューブの長さは、最終用途に応じて変更することができる。マイクロチューブは、任意の所望の断面形状、たとえば、円形、矩形、正方形、三角形、楕円形、星形または不規則な形状を有することができる。基本構成ブロックとしてこれらのエラストマーマイクロチューブを使用することにより、フォトリソグラフィを必要とすることなく、マイクロ流体デバイスを設計し製造することが可能となる。これにより、マイクロ流体デバイスを設計し構築する方法が根本的に変化するだけではなく、マイクロ流体デバイス全体を再度再設計し再製造する必要なしに、マイクロ流体デバイスの設計を随意に変更する汎用性も提供される。代わりに、構成が2次元(2D)またはさらには3Dであり得るマイクロ流体デバイスの設計に対して変更を行うように、これらのマイクロチューブを追加しまたは除去することができる。これらの弾性マイクロチューブを組み立てかつ分解することができることにより、必要に応じてかつ所望の場合に、マイクロチャネルの略任意のアーキテクチャへの高速パターニングが可能になる。したがって、コストの著しい削減とともに、これらのマイクロ流体デバイスを設計し、構築し、試験するためにかかる時間の著しい削減が見られた。さらに、マイクロチューブは、生体適合性であり、可撓性があり、気体透過性でありかつ透明度が高く、さまざまな応用、たとえば、特に、フレキシブルマイクロ流体工学、人工皮膚、オーガン(臓器)・オン・チップ(organ-on-chip)、擬似血管および毛細血管網、光学マイクロ流体工学(opto-microfluidics)および3Dバイオリアクタに対する生物医学デバイスを製造するための優れた候補になることができる。
【0004】
第1態様では、本発明は、ポリマーを含む可撓性マイクロチューブであって、約4μm~約1000μmの内径とさまざまな外径とを有する。マイクロチューブの断面形状は、たとえば、円形、矩形、正方形、三角形、楕円形、星形または不規則であり得る。
【0005】
第1態様の実施形態では、ポリマーは、シリコーンエラストマー、紫外線感受性ポリマー、導電性ポリマー、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ポリイミド、導電性ゴムまたはポリウレタンである。シリコーンエラストマーは、たとえば、ポリジメチルシロキサン、フェニルビニルシリコーン、メチルシロキサン、フルオロシロキサンまたは白金硬化シリコーンゴムであり得る。紫外線感受性ポリマーは、たとえば、MYpolymer(登録商標)(MY Polymers Ltd.製のアクリレート/メタクリレート基を含むフッ素化樹脂)、スチレン-アクリレート含有ポリマー、ポリアクリレートポリアルコキシシラン、ポジ型フォトレジスト(たとえば、ジアゾナフトキノン系ポジ型フォトレジスト)またはネガ型フォトレジスト(たとえば、エポキシ樹脂系ネガ型フォトレジスト)であり得る。
【0006】
第1態様の別の実施形態では、マイクロチューブ内径は、約10μm~約800μmである。
【0007】
第1態様の別の実施形態では、マイクロチューブの長さは約10m以下である。
【0008】
第1態様の別の実施形態では、マイクロチューブは気体透過性である。
【0009】
第1態様の別の実施形態では、マイクロチューブは透明である。
【0010】
第1態様の別の実施形態では、マイクロチューブは生体適合性である。
【0011】
第2態様では、本発明は、ポリマーを含む可撓性マイクロチューブを作製する方法であり、本方法は、熱硬化性ポリマーを含むプール内にワイヤを浸漬するステップと、第1期間、ワイヤを加熱し、それにより、ワイヤの表面で熱硬化性ポリマーの硬化を開始するステップと、プールからワイヤを引き出すステップと、第2期間、ワイヤを加熱し、それにより、追加の熱硬化性ポリマーを硬化させ、ポリマーコーティングワイヤを製造するステップと、超音波処理を伴って液浴内にポリマーコーティングワイヤを浸漬し、それにより、ポリマー-ワイヤ接触面を緩めるステップと、ポリマーコーティングワイヤからワイヤを除去し、それにより、ポリマーマイクロチューブを製造するステップと、ポリマーマイクロチューブを加熱し、それにより、第1態様の可撓性マイクロチューブを製造するステップとを含む。
【0012】
第2態様の実施形態では、第1期間の加熱は、ワイヤに沿って電流によって行われ、第2期間の加熱は、熱風発熱体によって行われ、液浴はアセトン浴であり、ポリマーマイクロチューブの加熱は、焼成によって行われる。
【0013】
第2態様の別の実施形態では、可撓性マイクロチューブを作製する方法は、プレキュア紫外線硬化性ポリマーを含むプール内にワイヤを浸漬するステップと、ワイヤをプールから引き出してアルゴンチャンバ内に入れるステップと、紫外線水銀灯の下でワイヤの周囲にコーティングされた紫外線硬化性ポリマーの層を硬化させ、それにより、ポリマーコーティングワイヤを製造するステップと、超音波処理を伴って液浴内にポリマーコーティングワイヤを浸漬し、それにより、ポリマーワイヤ接触面を緩めるステップと、ポリマーコーティングワイヤからワイヤを除去し、それにより、ポリマーマイクロチューブを製造するステップと、ポリマーマイクロチューブを加熱し、それにより、第1態様の可撓性マイクロチューブを製造するステップとを含む。
【0014】
第3態様では、本発明は、第1態様のマイクロチューブを備えるデバイスである。
【0015】
第3態様の実施形態では、デバイスは、生物医学デバイスである。
【0016】
第3態様の別の実施形態では、生物医学デバイスは、人工皮膚、オーガン・オン・チップ、擬似血管デバイス、擬似毛細血管網デバイス、光学マイクロ流体デバイス、3Dバイオリアクタ、ドラッグデリバリデバイス、セルストレッチャ、組織工学(ティッシュエンジニアリング)足場、マイクロポンプまたはマイクロバルブである。
【0017】
上述したことは、添付図面に示すように、本発明の実施形態例の以下のより詳細な説明から明らかとなろう。添付図面では、同様の参照符号は、種々の図を通して同じ部分を指す。図面は必ずしも正確な縮尺ではなく、代わりに、本発明の実施形態を例示することに重きが置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】PDMSマイクロチューブ製造用の実験装備の概略図である。
【
図1B】種々の内径の円形断面を有するPDMSマイクロチューブの画像を示す(側面図、IDは、各図の最上部に文字によって識別されている、スケールバー:ID(Φ)=10μmに対して30μm、Φ=25μmに対して75μm、残りに対して100μm)。
【
図1C】さまざまな断面形状のチューブの横断面を示す(スケールバー:250μm)。
【
図2A】直径が10μmのタングステンワイヤを示すSEM画像を示す。
【
図2B】タングステンワイヤの表面を提示するAFMトポグラフィを示す。
【
図2C】マイクロチューブの内面および内径の平滑性を示す。
【
図2D】ワイヤから製造されたPDMSマイクロチューブのワイヤ径と内径との比較を示す。
【
図3A】種々の直径(左から右に、25μm、50μm、100μm、250μmおよび400μm)のPDMSマイクロチューブを示す。
【
図3B】ID=50μmの50cm長のPDMSマイクロチューブを示す。
【
図4】内径が250μmのMYpolymerマイクロチューブの光学画像を示す(スケールバー:150μm)。
【
図5A】腔内圧の関数としてさまざまなマイクロチューブの内径の正規化された膨張を示すグラフである(マイクロチューブの内径は右下隅に列挙されており、OD/ID比は、マイクロチューブすべてに対して、管膨張に影響を与える1つの主な要素であり、OD/ID=2:1である)。
【
図5B】腔内圧が上昇するに応じての1つのPDMSマイクロチューブ(ID=50μmおよびOD/ID=2:1)の内径の膨張を明らかにする光学画像を示す。スケール50μm。
【
図6A】ID=100μmのPDMSマイクロチューブを用いるオン-オフ弁の概略図である。
【
図6B】ID=100μmのPDMSマイクロチューブを用いるオン-オフ弁の写真であり、弁は、ピンチャ(0.5mm幅、(
図6B)において白色のみの矢印によって示す)によりPDMSマイクロチューブ(黒色矢印によって示す)を周期的に押圧して内部の流れ(黒色で輪郭が描かれた白色矢印によって示す)を妨げることにより、具現化される。
【
図6C】
図6Bに具現化されているように、オフ弁およびオン弁をそれぞれ表す蛍光画像を示す。
【
図6D】種々の周波数での弁(100μm内径)の開閉の、時間応答のグラフであり、弁の開閉は、チューブ内部の蛍光(
図6C)の強度によって示され、時間の関数として変化する正規化された蛍光強度が示されており、蛍光信号の急な増減は、最小の遅延での機械的圧縮に対するマイクロチューブの高速な応答を示し、弁は、75Hz(ハードウェアの限界)まで適度に十分機能する。
【
図7A】IDが100μmのPDMSマイクロチューブ(白色のみの矢印によって示す)を圧縮する蠕動ポンプの概略図であり、ロータ(黒色矢印によって示す)が、可撓性マイクロチューブを閉塞し、回転する(円形矢印)際に、圧送される流体を、チューブを通して移動させ(黒色で輪郭が描かれた白色矢印)、ポンピング速度の差は、さまざまな速度でロータを回転させることによって達成された。
【
図7B】
図7Aに概略的に提示する装置の写真であり、ID=100μmのPDMSマイクロチューブ(黒色矢印によって示す)は、モータの周囲に巻き付けられており、白色矢印は、チューブ内部の流れ方向を示す。
【
図7C】
図7Bに示す蠕動ポンプの出口における5分の期間での前進する流体フロントの時間経過画像を示す。
【
図7D】蠕動ポンプのポンピング速度対回転速度(ID=100μmマイクロチューブによる)を示すグラフであり、市販の小径チューブ(380μmIDチューブ、INSTECHポンプユーザマニュアル)を用いる同じ蠕動ポンプより1桁~2桁低い、約100pL/s以下の流量を容易に達成することができる。
【
図8A】24時間、PDMSマイクロチューブ(ID:上、50μm、および下、100μm)内で成長した上皮細胞の細胞核の蛍光画像を示す(左;側面図、右;断面図、スケールバー:50μm)。
【
図8B】ID=25μmの円形マイクロチューブにおけるマージネーション(縁取り)効果を示す典型的な光学画像であり、上皮細胞は、40%ヘマトクリットの赤血球と混合されており、白色矢印は、流れ方向とチューブの中央における濃縮赤血球とを示し、チューブ壁の近くの、RBCのないゾーン(2つの白色破線の間)に流れる白血球が示されている(スケールバー:25μm)。
【
図9A】それぞれ円形、矩形、正方形および五角形の形状(左から右)を有する2Dマイクロチャネルの蛍光画像を示し、使用されるPDMSマイクロチューブは、50μmのIDを有する(スケールバー:400μm)。さまざまな2D形状のマイクロチャネルは、PDMSマイクロチューブを曲げることによって容易に生成することができ、マイクロチューブは、フルオレセインの水溶液で充填され、(機械的切断または3D印刷のいずれかにより)事前に製造された枠組みを用いて巻き上げられ、共焦点顕微鏡によって撮像された。
【
図9B】8の字結び(左)、キャリックベンド(中央)および二重らせん(右)の形状を有する擬似3D微細構造の光学顕微鏡写真を示す(スケールバー:150μm)。さまざまな擬似3D形状のマイクロチャネルは、PDMSマイクロチューブを曲げることによって容易に生成することができ、マイクロチューブは、フルオレセインの水溶液で充填され、(機械的切断または3D印刷のいずれかにより)事前に製造された枠組みを用いて巻き上げられ、共焦点顕微鏡によって撮像された。
【
図10A】PDMSマイクロチューブから作製されたらせん状マイクロチャネルの概略図を示す(左は上面図であり、右は側面図である)。
【
図10B】内径が100μmのPDMSマイクロチューブから作製されたらせん状マイクロ流体チャネルを示す光学画像である。
【
図11A】粒子フォーカシングを具現化するマイクロ流体チップを形成するマイクロチューブの4つの異なる構成を示し、100μmIDのマイクロチューブは、平面で2Dらせん形状、円筒体の周囲で3Dらせん形状、3Dねじれ形状および2D蛇行形状に構成された(黒色矢印は入口を示し、黒色文字は出口を示す)。挿入写真は、チャネルの写真である。
【
図11B】種々の直径(各画像の底部における白色文字)の微粒子が、
図11Aに示すデバイスを流れた後にフォーカスされた(白色矢印によって示す)ことを示し、対照実験は、いかなる特別なパターンもない直線状チューブを流れる粒子を示す(流速は、それぞれ直径が25μm、20μmおよび15μmの粒子に対して、800μl/min、500μl/minおよび400μl/minであった、スケールバー:150μm)。
【
図11C】直径が10μmおよび25μmの粒子が、3Dらせん状チップの出口において別個の軌道に流れることを示す光学画像である(流速は200μl/minであった)。
【
図12A】マイクロチューブを用いる液滴生成を示す。マイクロチューブ(50μmのID)は、事前に作製されたT字合流部(T-junction)に挿入され、そこでは、油が水平チャネルを通して流れており、水がマイクロチューブから流れ出ており(黒色矢印によって示す)、この構成により、高スループットモードで単分散微小液滴(ここでは、白色矢印によって示す水滴)を生成することが可能になる(スケールバー:200μm)。
【
図12B】マイクロチューブを用いる液滴生成を示す。連続した油の流れにおける直径が均一な水滴(左画像)と、断続的な油の流れにおける直径が変化する水滴(右画像)とを示す光学画像であり、白色矢印は流れの方向を示す(スケールバー:100μm)。
【発明を実施するための形態】
【0019】
市販のシリコーン管は、通常、架橋反応(硬化)を用いて3Dエラストマーに容易に転化される、複合エラストマー混合物の押し出しによって作製される。2つの反応、すなわち、1)過酸化物開始反応および2)白金触媒反応が好ましい1。両方の場合で、前駆物質は、室温で押し出し前の使用の時点で混合され、それに続いて、高温炉において連続的な硬化が施される。(外径/内径、すなわちOD/IDによって定義される)種々のサイズおよび壁厚さの単腔管を製造するために、種々のダイおよびマンドレルが使用される。残りのオリゴマーまたは副産物は、換気炉において高温で数時間を要する可能性がある、注意深いポストキュアによって除去しなければならない。さらに、市場におけるシリコーン管は、通常、半透明であり、内径が300μmより大きく、したがって、微小/細胞規模の用途に対する基準を満たさない。対照的に、本発明は、入手可能なシリコン管のすべてより小さい約4μmまで低減する内径の微小径チューブを提供する。
【0020】
何年もの間、市場では、シリコンマイクロチャネルおよび溶融石英微小管が商品化されてきた。マイクロ流体システムにおける最も初期の作業のいくつかは、実際において、シリコンおよびガラスを使用していたが、これらの材料は、プラスチックに大きく取って代わられた。水溶液における生物関連用途の場合、シリコンおよびガラスの使用は、通常、不要かつ不適切である。たとえば、シリコンは、高価であり、かつ可視光および紫外線に対して不透明であり、そのため、従来の光学検出方法で使用することができない。さらに、両材料は、気体に対して透過性でなくかつ非常に剛性があり、したがって、蠕動ポンピングによる弁調節および作動等の対応する装置が可能ではない。対照的に、本発明は、本明細書に提示するエラストマーマイクロチューブの機械的拘束および変形(これらのチューブの弾性変形可能性による)によって容易に具現化することができる、弁調節を提供する。
【0021】
研究者は、以下のように、PDMSで円形マイクロチャネルを製造するいくつかの手法を開発した。1)標準のソフトリソグラフィと組み合わせて2、PDMS充填マイクロチャネルの内側に加圧空気流を導入することにより、矩形マイクロチャネルの壁に液体PDMSのコーティングが施される。そして、液体PDMSの表面張力により、コーティングが強制的に円形断面をとり、これは、圧力下で硬化するまでデバイスを焼成することにより維持される。この方法は、マイクロチャネル網に対してかつ直線状チャネルにおいても有効であることが実証され、設計された直径は、適切な硬化条件を介して達成することができる。しかしながら、リソグラフィ製造法の限界として、それは複雑な手順が必要であり、3D網チャネルを製造するのが困難である。2)Kimらは、スクロース繊維の成形、結合および組み立てに基づいてPDMSで円筒状マイクロチャネルを製造する方式を報告している3。それは、単純であり、クリーンルームが不要であり、環境にやさしく、複雑な3Dマイクロチャネルアーキテクチャを作製することができる。しかしながら、事前成形されたスクロース繊維テンプレートは、個々の繊維を用いて1つずつ接合され、それは、うんざりするようなかつ非効率的なプロセスである。それはまた、繊維径が30μmより小さくなると、取り扱いがより困難になる。親水性/疎水性のパターニングされた表面に形成された液体シリンダを用いる成形4等、他の手法では、半円筒状のPDMSチャネルしかもたらすことができず、それは、円形チャネルを完成するための、2つの半チャネルの正確な位置合わせの問題を引き起こす。対照的に、本発明は、マイクロ流体デバイス用の基本構成ブロックとしてマイクロチューブを製造するのがより単純であり、安価であり、はるかに高効率である方法を提供する。
【0022】
3Dマイクロ流体チャネルを作製する別の代替的かつ競合する手法は、3D印刷技術に基づく5、7。一般に、3D微小空洞網は、プロトタイプを作製した後、後に除去される3D犠牲フィラメントテンプレートを印刷することにより7b、または、チャネル空洞の壁を重合させ、その後の未硬化感光性樹脂前駆物質の排出により7c、形成される。特に、ステレオリソグラフィを利用する1つの手法では、チャネルの3Dルーティングの迅速な組み立てを可能にするために、流体要素を収容するモジュール式かつ再構成可能な構成要素が製造される6。これらの技法は、精密で簡潔であるが、「印刷された」特徴の寸法が、ノズルのサイズおよび印刷圧により、または、レーザビーム径により制限されるため、低印刷解像度という限界があり、それにより、100μmより小さい特徴を製造することが目下主な難題となる7a。印刷されたデバイスの粗い表面は、チャネルにおける高解像度撮像に対する懸念ももたらす7a。さらに、3D印刷による剛性材料の使用により、既存の多種多様なPDMSマイクロバルブおよびマイクロポンプ設計を複製することが困難になる。いずれの場合も、3D印刷法は、比較的高価な機械に依存し、単一設計製品を製造するのに必要なコストおよび時間は依然として高い(デバイス毎に約200米ドル)7a。対照的に、本発明では、総製造費用および材料費用は、2米ドル未満であり、3D印刷法に比較して製造コストの2桁の削減を表す。
【0023】
マイクロ/ナノチューブは、無機/有機材料の固体薄膜から、これらの膜がそれらの基体から放出されると、種々の位置で形成する(たとえば、巻き上げる)ことができる8。これらのマイクロチューブは、3D細胞培養足場9および光流体センサ10として使用されてきた。しかしながら、マイクロチューブの製造とマイクロ流体システムへの組み込みとはともに、電子ビーム蒸着およびフォトリソグラフィ設備のような複雑かつ費用のかかる熱蒸着を必要とする。対照的に、本発明は、コストを節約して単純な製造方法を提供する。
【0024】
PDMSから作製される従来のマイクロ流体システムは、通常、従来のソフトリソグラフィ技法によって製造される。それらは、ミリメートル未満の長さ尺度で流体の研究および取り扱いにおいて広く使用されてきた。アッセイにおける迅速な試料の処理および正確な流体の制御等、マイクロ流体技術のいくつかの特性により、それらは、診断および生物学研究において従来の実験手法に取って代わる魅力ある候補となった。たとえば、特に、「クエイクの弁(Quake’s valve)」11の発明により、生体外モデル「オーガン・オン・チップ」12および「ディジーズ・オン・チップ(disease-on-a-chip)」13を含む、過多のマイクロ流体設計および刊行物がもたらされた。対照的に、本発明は、従来のソフトリソグラフィ技法に制限された製造方法により妨げられない。
【0025】
マイクロ流体の研究および使用は近年増大しているにも関わらず、従来の製造プロトコルのコストを削減する斬新な技術の開発14は、過去数十年間、実現されていない。高いコストは、フォトリソグラフィプロセスを通してシリコンウェアを使用する必要があるためである。製造、試験および再設計期間は比較的長い。さらに、複雑な多層チップは、ラブ・オン・チップ(lab-on-chip)およびオーガン・オン・チップシステムにおける流量制御に対して開発を行うために高度な技能を持つ人を必要とする、複雑なプロセスを必要とし12、15、したがって、生物医学分野および業界における広い採用に対して技術障壁をもたらす。
【0026】
本発明の実施形態例の説明が続く。既存の技術から本発明を識別する特有な特徴の説明も続く。
【0027】
本発明のPDMSマイクロチューブは、マイクロ流体デバイス用の基本的な構成要素として特に使用することができる。製造手順が必要とするのは、研究室で容易に入手可能な、単純な機械装置および安価な一般的な材料である。生体適合性、一意の機械的弾性および化学的不活性等、シリコーン管と同じ利点を除き、本発明によるPDMSマイクロチューブは、マイクロメートルからミリメートル未満のサイズであり、より複雑なデバイスに容易に組み込むことができる。マイクロチューブは、マイクロ流体工学システムの設計、製造および組み立てに対するコストおよび時間を劇的に削減するのに役立つことができる。さらに、弾性マイクロチューブの、組み付け性の汎用性のメリットにより、複雑なマイクロ流体工学を、組織化可能な機能モジュールに分解することができ、それにより、費用のかかる微細加工研究所へのアクセスが不要となるため、より多くのエンドユーザに対してこのマイクロ流体工学研究に参加するための技術障壁を著しく低下させるかまたはさらにはなくすことができる。
【0028】
円形断面形状を有するPDMSマイクロチャネルは、それらの細胞研究における応用の可能性16にも関わらず、目下、市場ではまれである。血管網を生成することができないことが、何年もの間、心血管組織工学およびオーガン・オン・チップシステムにおける普及を妨げてきた5。現行のPDMSマイクロチャネルは、通常、従来の製造方法を用いて製造される場合、矩形断面を有する。こうしたチャネルの内部を移動する流体は、血管のチャネル等、円形断面チューブのチャネルで見られる放物線状流れプロファイルの流体を再現しない17。レイノルズ数の低い流れでは、速度およびせん断応力分布は、直線状の急な壁を有する矩形のチャネルより、円形管状チャネルにおいての方が等方性であることが予期される。矩形のチャネルの内側を流れる細胞は、断面のそれらの相対位置に応じてかつ異方性の流れ場により、異なる機械的応力を受け、異なる細胞活動をもたらす。本発明のPDMSマイクロチューブは、内径が約10μm~約400μmの範囲である円形形状を含む広範囲の断面形状を有することができる。規模のさらなる拡大および縮小に対する余地がある。こうしたPDMSマイクロチューブ内の細胞は、立方体チャネルの応力状態より本来の循環系のはるかに同様の応力状態を受けることになる。さらに、円形マイクロチューブ内の速度および渦度場は、均一な周壁硬化のためにいかなる隅または特異な領域も有さない。
【0029】
従来の方法から作製されるマイクロチャネルは、PDMSブロックまたは層の上に成形され、剛性ガラス基板の上に取り付けられるという点で、固定される。弁調節および作動のためにPDMSの弾性を使用する目下の最新技術は、「クエイクの弁」によって代表される11。クエイクの空気弁は、流体チャネルの開閉を、空気圧を用いて隣接するチャネルにより制御する。しかしながら、こうした複雑な設計には、高レベルのソフトリソグラフィ製造の専門技術が必要であり、最終使用者に対して難題を提示し、製造プロセスは、大量生産に対して自動化するのが非常に困難である。
【0030】
本発明のPDMSマイクロチューブは、マイクロ流体デバイスにおける弁調節および作動のための一意の解決法を提供する。PDMSマイクロチューブは、優れた機械的弾性を有する、固有の自立したチャネルである。PDMSマイクロチューブ内の流れは、単に機械的変形によって容易にオンまたはオフすることができる。管状壁の厚さは、制御可能であり、観察のために光学的に透明であり、酸素/二酸化炭素に対して気体透過性である。これらの利点により、PDMSマイクロチューブは、「オーガン・オン・チップ」および組織工学応用を具現化するための足場としての優れた候補となる。
【0031】
本発明は、マイクロ流体システムに使用することができる生体適合性マイクロチューブの非常にスケーラブルな製造に対する差し迫った必要を満たすことができると考えられる。マイクロ流体工学の分野における目下の最も有力なソフトリソグラフィ技術は、必要なコストが高くかつ時間がかかることにより、工業用の採用に対するボトルネックとなるだけではないため、PDMSマイクロ流体システムに対する基本構成ブロックとして本発明を使用することにより、製造のコストとともに、製造の期間を何週間および何日から何時間まで大幅に削減することができる。したがって、本発明のエラストマーマイクロチューブは、市場における管状マイクロチャネルに対する需要を満たすことができる。
【0032】
最後に、300μm未満の透明なシリコーン管は、目下市場では入手可能ではない。
【0033】
本発明の最大の利点は、たとえば、使用の容易さ、費用効率、さまざまな断面形状、再構成可能性、および複雑な2Dおよび3Dマイクロ流体システムを容易に組み立てることができるということである。
【0034】
本発明のマイクロチューブのあり得る応用としては、以下が挙げられる。
【0035】
細胞選別。微小循環血流における転移性癌細胞のマージネーション効果は、十分に研究されてきた。本発明者らは、円形かつ可撓性マイクロチューブの内部に白血球の同様のマージネーションを観察した。したがって、本発明者らは、血中循環腫瘍細胞(CTC)、細菌、鎌状赤血球貧血とともに、マラリアに感染した赤血球等の罹患細胞を血液から分離するために、マイクロチューブ内部のマージネーション効果を利用するように提案した。この応用は、罹患診断、予後、治療および処置等、生物医学分野において可能性を開くことになる。
【0036】
複雑な2Dおよび3Dマイクロ流体システム用の基本構成要素。機能的なマイクロ流体システムは、比較的容易に事前設計されたテンプレートを用いてマイクロチューブから構成することができる。
【0037】
異なる材料を含むことができるかまたは多層である複合マイクロチューブ、たとえば、使用者の必要に応じてこれらのマイクロチューブのコーティングを可能にすることができる、コア-シェルマイクロチューブ。
【0038】
本発明のマイクロチューブのさらなるあり得る応用としては、限定されないが、光学マイクロ流体工学デバイス、オーガン・オン・チップシステム、流体制御用のマイクロポンプ/バルブ、制御されたドラッグデリバリシステム、セルストレッチャおよび組織工学足場が挙げられる。
【実施例】
【0039】
実施例1-シリコーンエラストマー系マイクロチューブを作製する方法
本方法は、
図1Aに示すように、金属ワイヤ(通常、銅またはタングステン製)を、新たに混合されたPDMS(Sylgard 184シリコーンエラストマーベースとSylgard 184シリコーンエラストマー硬化剤の混合物、重量で10:1)またはUV感受性ポリマー(MYpolymer、MY-134-XP8、MY Polymers Ltd.)プール内に垂直に浸漬することを含む。PDMSマイクロチューブを製造するために、その後、金属ワイヤを可変電源に接続し、3分~5分間、電気により約100度まで加熱した。これにより、金属ワイヤに近接して、PDMS硬化を開始する熱場が発生する。ワイヤの表面に硬化したPDMSの薄層が形成され、その厚さは、加熱期間によって決まる。そして、PDMSプールから約200μm/sの速度で、リニアステッピングモータにより流体レベルの上方に垂直に、金属ワイヤを引き出し、ワイヤの周囲に、粘性の未硬化PDMSの第2薄層が形成され、それを、長さ10cmかつ直径2cmの円筒状加熱ユニットにおいて、約90℃~100℃の熱風でさらに硬化させる(
図1A)。引き出し中のPDMSのビーディング傾向
18は、このインサイチュ熱凝固によって有効に抑制され(
図1A)、均一な外径(OD)のPDMSマイクロチューブの製造が可能となった(
図1B)。そして、ワイヤの引き出し速度と液体PDMSの粘性および表面張力とにより、この第2層の厚さが決まる。PDMSマイクロチューブの内径(ID)および断面形状は、埋め込まれた金属ワイヤの直径および断面(
図1Bおよび
図1C)によって設定され、一方、外径は、引き出し速度、PDMSの粘性とともに、加熱期間を変更することによって制御することができる。PDMSコーティングされた金属ワイヤを、引き出すと、約数10センチメートルに切断し、20分間、超音波処理を伴ってアセトン溶液内に完全に浸漬した(いかなる未反応エラストマー硬化剤をも抽出し、ポリマーにおけるわずかな膨張をもたらし、PDMS-金属接触面を緩めるプロセス)。そして、アセトン処理の後、PDMSマイクロチューブは金属ワイヤから容易に外れた。これに続き、いかなるアセトン残存物も除去するために、100℃の炉内で1時間焼成した。
【0040】
このプロセスは、溶解性テンプレートを必要とするプロセス3、
19より単純であり、清浄であり、かつ高速である。PDMSは、金属ワイヤテンプレートの輪郭を正確に複製し、同じ断面のマイクロチューブを形成する(
図1Cおよび
図2)。したがって、金属ワイヤの輪郭により、マイクロチューブの内面の平滑性を評価することができる。
図2Aおよび
図2Bは、Φ=10μmのタングステンワイヤのそれぞれSEM画像およびAFMトポグラフィであり、およそ20nm~25nmの内側粗さ(
図2C)および優れた光学透明性を有する(
図1Bおよび
図3A)同じID(
図2D)のPDMSマイクロチューブを示すワイヤの表面を示す。円形チューブの場合、典型的なIDは、10μm~400μmの範囲であり(
図1B)、それらのODは、いくつかの実験に基づくパラメータ(上記を参照)を変更することにより制御可能である。OD/ID=3:1、2:1および1:1の円形マイクロチューブを繰り返し製造した。それらの高アスペクト比(最大4000)および薄壁にも関わらず、マイクロチューブは、中央でたるむこともつぶれることもなく、優れた自立性を示す。この汎用技法により、適切な長さ(本発明者らの研究所装備を用いて、少なくとも1/2メートル、
図3B)ならびにさまざまな内径および別個の断面形状(
図1C)の自立したマイクロチャネルの製造が可能になる。
【0041】
特に、この方法は、他のポリマーのマイクロチューブを製造するために容易に適用される。
【0042】
実施例2-UV感受性ポリマー系マイクロチューブ
MYpolymerマイクロチューブを製造するために、金属ワイヤをプレキュアUV硬化性MYpolymerプールから引き出し、Arチャンバに入れた。そして、金属ワイヤの周囲にコーティングされた薄いMYpolymer層を、放射照度が0.2W/cm
2の300Wで動作するUV水銀灯(350nm~460nm、Newport Oriel Product Line System)の下で、現場で硬化させた。そして、MYpolymerコーティングされた金属ワイヤを、純エタノール浴内に移し、30分間超音波処理して、拡散している光開始剤を除去した。そして、MYpolymerマイクロチューブ(
図4)は、エタノール処理の後、金属ワイヤから外れることができ、それに続き、100℃炉で1時間焼成していかなるエタノール残存物も除去する。
【0043】
市販のシリコーン管と比較した場合のPDMSマイクロチューブの機械的特性を、以下に特徴づけ列挙する。
【0044】
【0045】
PDMSマイクロチューブは、直径がはるかに小さいが、市販のシリコン管と同様の特性をわずかに優れた引張強度とともに示す。自立の特性により、中空マイクロチューブは、流れることができる物質、すなわち液体および気体を運ぶことができる。特に、腔内圧が10バールを超えるまで上昇すると、PDMSマイクロチューブ(OD/ID=2:1)は、破裂することなく、IDが約2倍膨張し(
図5)、変形した後に可逆的にそれらの元の形状に戻ることができる(優れた弾性を示す)。
【0046】
応用の論証のために、例としてPDMSマイクロチューブを使用した。原則的に、MYpolymerマイクロチューブは、PDMSマイクロチューブと同様の応用性がある。
【0047】
実施例3-基本マイクロ流体構成要素としてのPDMSマイクロチューブ(パイプ、弁およびポンプ)
本発明者らの実験条件の下で硬化したPDMSは、通常、1.5MPa~2.0MPaのヤング率を有し、適度な作動力で著しいたわみを可能にする。そして、この特性は、マイクロチューブベースのマイクロ流体デバイスのための弁調節および作動に対して一意の解決法を提供する。これらのマイクロチューブ内の流れは、パイプライン上の市販の機械的ピンチャにより、それらに対する機械的圧縮および解放を介して容易に制御することができる(
図6Aおよび
図6B)。弁調節の実施態様に対して、円形断面のマイクロチューブを使用した。それは、丸いチャネルは、外部圧縮力により縁から中心まで閉鎖し、したがって、矩形および正方形チャネルと比較してより低い圧力で完全に封止するという事実による
11。オン-オフ弁による流れの制御を、
図6Aに実証する。マイクロチューブを横切る機械的ピンチ点は、通常、幅が0.5mmであり、ID=100μmのマイクロチューブの場合、切換弁は、約π×50μm×50μm×500μm=3950plの死容積を有し、それは、ソフトリソグラフィ法によって製造されたPDMS弁
11に匹敵し、3D印刷弁
20より約4桁小さい。弁は、空気弁
11、2
0に固有である制御信号からのいかなる遅延もなしに、機械的スイッチのオンおよびオフに即座に応答する。この利点により、弁は、略75Hz(ハードウェアの限界)で動作することができ、20000サイクルを超える作動の後に、破壊または疲労のいかなる徴候も観察されなかった。弁を閉鎖させる典型的な圧力は、約100kPaであり、加えられるピンチャ圧力を単に上昇させることにより、より高い背圧を阻止することができる。
【0048】
同様に、圧送チューブをID=100μmの単一の円形PDMSマイクロチューブと置き換えることにより、蠕動ポンプを具現化した(
図7Aおよび
図7B)。出口管(0.5mmID)における水柱の動きを用いて、ポンピング速度を計算し、100pl/sの最大ポンピング速度が達成され、それは、以前に文献で発表されたマイクロ流体ポンプ
11に匹敵する。本発明のシステムの最大の利点は、その製造の容易さである。ソフトリソグラフィ
11、2
1およびステレオリソグラフィ
20、2
2によって製造された複雑かつ多層のマイクロバルブおよびマイクロポンプシステムとは対照的に、本発明の弁およびポンプは、はるかに単純な構造を有し、市販の機械的スイッチに容易に組み付けることができる。さらに、本発明の弁およびポンプは、いかなる著しい技術専門知識も余分な水占い圧力システムを機能させることも不要である。
【0049】
実施例4-3D細胞培養足場としてかつ血液の生体内流れプロファイルを再現するためのPDMSマイクロチューブ
PDMSマイクロチューブは、生体適合性かつ気体に対して透過性であり、したがって、生体外3D培養足場として使用することができる。円形マイクロチューブ(ID=50μmおよび100μm)の内面をフィブロネクチンでコーティングし、そうした内面は、内側で粘着性の上皮細胞を成長させる。
図8Aは、マイクロチューブの内面に付着して、管状細胞シートを形成する細胞の蛍光画像を示す。マイクロチューブの透明性、生体適合性および可撓性というメリットにより、応力および生体内の同様の微環境下での精密な細胞プロセスの調査がさらに可能になる(一歩前進した組織工学マイクロ流体オーガン・オン・チップ)。
【0050】
組織工学および薬物スクリーニング用のプラットフォームとしてマイクロ流体工学を使用する利点は、それが、流量、せん断応力および脈動流を含む流体流状態を微細に調節することができる一方で、血管網、内壁の表面のタイプを変更する手段、および細胞で内側が覆われた内腔壁の生成を含む、3D組織のようなアーキテクチャにおいて細胞をパターニングする手段も提供するということである。種々の断面形状のマイクロチューブにより、本発明は、心血管流状態を再現することができる。本発明の可撓性円形マイクロチューブ内に全血を流すことにより、小径の毛細血管を通る細胞の流れプロファイルを再現することができる(
図8B)。流れにおいて壁に向かう相対的に大きい細胞(ここでは、白血球)のマージネーション(
図8B)が明確に観察された(生体内状態と同様の現象
23)。粒子マージネーションは、壁との流体力学的相互作用(揚力)により血管中心に移動する傾向がある赤血球(RCB)によって影響され、その結果、壁の近くにRCBのない層がもたらされる
24。簡単に、マージネーションは、RBCおよび懸濁粒子に対する揚力と流れにおけるそれらの相互作用との間の競合の結果であり
25、その特徴を理解することは、効率的なドラッグデリバリにおける重要な意味を有する。可撓性かつ円形のマイクロチューブにより、毛細血管を通る細胞の流れを正確に再現し、動的条件下で個々の細胞および細胞懸濁液の挙動を研究することができる。
【0051】
実施例5-可撓性PDMSマイクロチューブを用いる2Dおよび3D機能的マイクロ流体チャネルの高速組み立て
本発明の優れた弾性により、PDMSマイクロチューブを略任意の2Dおよび3D形状に曲げることができる(
図9)。
図9Aは、円形、三角形、矩形および五角形の形状の2Dマイクロチャネル(円形断面、ID=50μm)を提示する。さらに、本発明の手法により、(機械的切断または3D印刷により)事前製造された枠組みを用いて3Dマイクロチャネルの高速パターニングが可能になる。
図9Bは、マイクロチューブを3D形状に単にまげて固定することにより、マイクロチューブによる擬似3Dチャネルの形成を実証している。
図9B左は、8の字結びの形状で結ばれたID=50μmチューブから作製されたチャネルを示す。最小結び目のサイズは、マイクロチューブの実際のサイズ(OD)によって決まり、
図9Bにおける結び目は、0.5×0.85×0.3mm
3の容積を占有した。テンプレートありまたはなしで同様の方法により、キャリックベンドおよび二重らせん等の他の擬似3Dチャネル(
図9B)を製造することができる。テンプレートの使用は、具体的な3D配向においてマイクロチューブを位置決めするのに役立つことができ、曲げによるチューブの中央におけるつぶれまたはたるみは観察されなかった。
【0052】
マイクロチューブの応用に対する概念実証として、微粒子または細胞の選別に対する応用の可能性があるらせん状マイクロチャネルデバイスを製造した(
図10および
図11)。らせん状チャネルマイクロ流体工学は、最初に、本発明者の1人であるLim Chwee教授のグループによって導入され、少量の血中循環腫瘍細胞(CTC)が何十億もの血球からうまく分離された
26。彼らは、より優れた選別効率のために、チャネルの断面を立方形断面から傾斜断面に変更することにより、らせん状チップをさらに改善した。それにも関わらず、Kalpakliら
28によれば、円形断面の湾曲したチャネルは、矩形または傾斜形状のマイクロチャネルよりはるかに選別の効率が高い明白な異なる渦度領域による最高スループットを有する。
【0053】
円形の曲線チャネルにおいてせん断/壁によって引き起こされる揚力と横方向ディーン抗力とのバランスを注意深くとることにより
29、ID=100μmのPDMSマイクロチューブを用いるいくつかのマイクロ流体チップ(
図11A)を設計し製造した。それらは、(直径が15um~25umの範囲の)微粒子が200μl/min~1200μl/minの流量でフォーカスされる可能性を示す(
図11B)。非対称チャネルの設計(チャネルのIDおよび曲率半径)は、a/D
h>0.07かつD
e>20という前提条件を満足させ、式中、aは粒子径であり、D
hは水力直径であり、D
eはディーン数である
29。円筒状チューブでは、粒子は、チューブ中心および壁から離れる方向に移動してフォーカス環を形成するように観察されたが、非対称曲線チャネルでは、横方向ディーン抗力流により、環が単一粒子流まで低減することになる
29(
図11B)。らせん状チップの組み立ては目下手動であるが、1つのチップを製造するためにかかる時間は、通常20分未満である。ここで、約2cm
2の面積を覆うこれらのチップは、はるかに低い時間的コストおよび資源によりクリーンルームの外部で完全に製造された、ということが強調される。さらに、さまざまな直径の粒子を、同じ流れにおける特定の流線にフォーカスすることができ(
図11C)、したがって、複数の出口を使用することにより種々の純成分を収集することができる。1%粒子溶液の200μl/minの動作流量の場合、1つの手製のらせん状チップに対して、約0.125g/hrの質量選別速度が達成され、一方で、典型的な大部分のマイクロ流体システムの場合、決定論的置換に対して30mg/hrのスループットが記載されている
30。本発明のデバイスによるスループットの1桁の増大は、本発明によるPDMSマイクロチューブの診断的分離およびろ過において見込みのある応用を示す。
【0054】
さらに、迅速に組み立て、一般的なマイクロ流体回路トポロジ(液滴を生成するために使用されるT字合流部
31)を変更することができることが、実証された。マイクロ流体工学の重要なサブカテゴリは、液滴ベースのマイクロ流体工学である
32。連続流システムとは異なり、液滴ベースのデバイスは、不混和相において離散的な体積を生成することに焦点を当てる。液滴ベースのマイクロ流体工学が使用される応用としては、化学反応、治療薬送達、化学分析および診断試験が挙げられる
31。T字合流部は、単に、2つのPDMSチューブを市販のプラスチックT字形コネクタに接続することによって実施することができるが、撮像の便宜上、テンプレートとして金属ロッドを用いて一段階成形によって作製されたミリメートルサイズのPDMS T字合流部内に、2つのID=100μmマイクロチューブを挿入した(
図12A)。2つのシリンジポンプを使用して、キャリア油および水の流れを回路内に押し込んだ。回路は、1μl/minを超える水流量および500μl/minより高いキャリア流量で十分に動作し、広範囲の周波数(30Hz~500Hz、
図12A)で直径が200μm~500μmの範囲の微小水滴を生成した。さらに、油の流れを制御することにより、この単一の装備で、均一な直径または異なる直径(
図12B)の別個の水滴を生成することができる。
【0055】
本発明のエラストマーマイクロチューブは、著しい影響を与えることになり、マイクロ流体システムをいかに設計し、製造し、使用することができるかを根本的に変更することが考えられる。また、目下、300μmより小さい透明なシリコーン管は市場で入手可能ではない。マイクロ流体デバイスの研究者および開発者からこれらのマイクロチューブに対する早急な要求があるであろうと予期される。実際に、これらのマイクロチューブは、マイクロ流体力学の研究における新たな道と、ラブ・オン・チップおよびオーガン・オン・チップとともにフレキシブルマイクロ流体工学における新たな応用とを提供するであろう。
【0056】
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【0057】
本明細書で引用したすべての特許、公開出願および参照文献の教示は、それらの全体として参照により本明細書に援用される。
【0058】
本発明について、その実施形態例に関して特に示し説明したが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって包含される本発明の範囲から逸脱することなく、それらの実施形態において、形態および詳細のさまざまな変更を行うことができることが理解されよう。
本発明の態様として以下のものが挙げられる。
[1]ポリマーを含む可撓性マイクロチューブであって、約4μm~約1000μmの内径とさまざまな外径とを有するマイクロチューブ。
[2]前記ポリマーが、シリコーンエラストマー、紫外線感受性ポリマー、導電性ポリマー、ポリウレタン、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、ポリイミドまたは導電性ゴムである、[1]に記載のマイクロチューブ。
[3]前記シリコーンエラストマーは、ポリジメチルシロキサン、フェニルビニルシリコーン、メチルシロキサン、白金硬化シリコーンゴムまたはフルオロシロキサンである、[2]に記載のマイクロチューブ。
[4]前記紫外線感受性ポリマーは、MYpolymer、スチレン-アクリレート含有ポリマー、ポリアクリレートポリアルコキシシラン、ポジ型フォトレジストまたはネガ型フォトレジストである、[2]に記載のマイクロチューブ。
[5]前記マイクロチューブ内径が約10μm~約800μmである、[1]に記載のマイクロチューブ。
[6]前記マイクロチューブの長さが約10m以下である、[1]に記載のマイクロチューブ。
[7]気体透過性である、[1]に記載のマイクロチューブ。
[8]透明である、[1]に記載のマイクロチューブ。
[9]生体適合性である、[1]に記載のマイクロチューブ。
[10]ポリマーを含む可撓性マイクロチューブを作製する方法であって、
熱硬化性ポリマーを含むプール内にワイヤを浸漬するステップと、
第1期間、前記ワイヤを加熱し、それにより、前記ワイヤの表面で前記熱硬化性ポリマーの硬化を開始するステップと、
前記プールから前記ワイヤを引き出すステップと、
第2期間、前記ワイヤを加熱し、それにより、追加の熱硬化性ポリマーを硬化させ、ポリマーコーティングワイヤを製造するステップと、
超音波処理を伴って液浴内に前記ポリマーコーティングワイヤを浸漬し、それにより、ポリマー-ワイヤ接触面を緩めるステップと、
前記ポリマーコーティングワイヤから前記ワイヤを除去し、それにより、ポリマーマイクロチューブを製造するステップと、
前記ポリマーマイクロチューブを加熱し、それにより、[1]に記載の可撓性マイクロチューブを製造するステップと、
を含む方法。
[11]前記第1期間の加熱が、前記ワイヤに沿って電流によって行われ、
前記第2期間の加熱が、熱風発熱体によって行われ、
前記液浴がアセトン浴であり、
前記ポリマーマイクロチューブの前記加熱が、焼成によって行われる、[10]に記載の方法。
[12]ポリマーを含む可撓性マイクロチューブを作製する方法であって、
プレキュア紫外線硬化性ポリマーを含むプール内にワイヤを浸漬するステップと、
前記ワイヤを前記プールから引き出してアルゴンチャンバ内に入れるステップと、
紫外線水銀灯の下で前記ワイヤの周囲にコーティングされた紫外線硬化性ポリマーの層を硬化させ、それにより、ポリマーコーティングワイヤを製造するステップと、
超音波処理を伴って液浴内に前記ポリマーコーティングワイヤを浸漬し、それにより、ポリマーワイヤ接触面を緩めるステップと、
前記ポリマーコーティングワイヤから前記ワイヤを除去し、それにより、ポリマーマイクロチューブを製造するステップと、
前記ポリマーマイクロチューブを加熱し、それにより、[1]に記載の可撓性マイクロチューブを製造するステップと、
を含む方法。
[13][1]に記載のマイクロチューブを備えるデバイス。
[14]生物医学デバイスである、[13]に記載のデバイス。
[15]前記生物医学デバイスが、人工皮膚、オーガン・オン・チップ、擬似血管デバイス、擬似毛細血管網デバイス、光学マイクロ流体デバイス、3Dバイオリアクタ、ドラッグデリバリデバイス、セルストレッチャ、組織工学足場、マイクロポンプまたはマイクロバルブである、[14]に記載のデバイス。
[16]円形、矩形、正方形、三角形、楕円形、星形または不規則な断面の形状を有する、[1]~[9]のいずれか一項に記載のマイクロチューブ。