(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】美容シート
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20220317BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20220317BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220317BHJP
A61K 8/42 20060101ALI20220317BHJP
A61K 8/84 20060101ALI20220317BHJP
A61K 8/87 20060101ALI20220317BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20220317BHJP
A45D 44/22 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A61K8/02
A61K8/64
A61Q19/00
A61K8/42
A61K8/84
A61K8/87
A61K8/81
A45D44/22 C
(21)【出願番号】P 2020006433
(22)【出願日】2020-01-18
【審査請求日】2020-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500147805
【氏名又は名称】株式会社 きものブレイン
(73)【特許権者】
【識別番号】517008858
【氏名又は名称】株式会社ナフィアス
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】岡元 松男
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 圭
(72)【発明者】
【氏名】大澤 道
【審査官】山中 隆幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-255743(JP,A)
【文献】特開2011-084542(JP,A)
【文献】特開2014-129313(JP,A)
【文献】特開2014-129312(JP,A)
【文献】特表2013-540460(JP,A)
【文献】特開2006-316002(JP,A)
【文献】特開2002-114664(JP,A)
【文献】特開2019-017264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性素材から
なるナノファイバー不織布
に美容液が塗工され、乾燥状態に
した美容シートであって、前記疎水性素材は、ポリウレタン若しくはポリフッ化ビニリデンであり、また、前記ナノファイバー不織布は、繊維径が250nm~500nm,厚さが2μm~10μmに設定され、さらに、このナノファイバー不織布は、目付量が30g/m
2
以上70g/m
2
未満に設定されたポリプロピレン製不織布からなる基材上に積層された構成であり、また、前記美容液は、みどり繭から得られたセリシンと水と尿素とを含む加水分解セリシンを主成分とし、粘度が15,000mPa・s~18,000mPa・s(20℃~25℃)であり、また、前記ナノファイバー不織布は、前記美容液が15g/m
2
~20g/m
2
塗工されていることを特徴とする美容シート。
【請求項2】
請求項1記載の美容シートにおいて、前記ナノファイバー不織布は、
前記基材上に剥離自在に設けられていることを特徴とす
る美容シート。
【請求項3】
請求項1,2いずれか1項に記載の美容シートにおいて、前記基材は、スパンボンド不織布であることを特徴とす
る美容シート。
【請求項4】
請求項1~3いずれか1項に記載の美容シートにおいて、前記基材
の目付量
は、30g/m
2
~40g/m
2
に設定されていることを特徴とす
る美容シート。
【請求項5】
請求項1~4いずれか1項に記載の美容シートにおいて、前記ナノファイバー不織布は、厚さが4μmに設定されていることを特徴とする美容シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美容シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蚕の繭から得ることができるセリシンは、保湿性に優れ、皮膚の皺を防ぐ効果があるとして、従来、化粧液や美容シート(パック)などの美容製品に含有される美容成分として用いられており、本出願人もこのセリシンを用いた美容シートの開発を進めてきている。
【0003】
ところで、上記美容シートに関し、従来、特許文献1~3に示すような様々な製品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-64734号公報
【文献】特開2017-52532号公報
【文献】特開2006-56543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献に記載される美容シートのように、従来の美容シートは製品形態が湿潤状態になっていて、容器(包装)から取り出し、そのまま使用することができるようになっている。
【0006】
しかしながら、このような従来の美容シートは上記特許文献にも記載されるように、湿潤状態を保持するため、シート部材に吸湿性に優れた素材のものが採用されている。
【0007】
そのため、この美容シートを長時間使用すると逆浸透現象が生じ、肌の水分がこの美容シートに吸い取られてしまうことから、長時間使用することができず(長時間肌につけておくことができず)、美容成分を肌に十分に浸透させることができない問題がある。
【0008】
さらに、従来の美容シートは、製造後から使用者が使用するまでの間、良好な湿潤状態を保持しなければならないため密閉性に優れた容器に収納しなければならず、これにより、包装コスト(容器のコスト)が掛かってしまうため、製品を市場に安価に提供することができない問題もある。
【0009】
本発明はこのような現状に鑑みなされたものであり、逆浸透現象が生じず長時間使用することができ(肌に貼着することができ)、優れた美容成分であるセリシンを十分に肌に浸透させることができ、しかも、簡易に保管でき包装コストも掛からず製品を安価に提供することができる画期的な美容シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0011】
疎水性素材からなるナノファイバー不織布1に美容液が塗工され、乾燥状態にした美容シートであって、前記疎水性素材は、ポリウレタン若しくはポリフッ化ビニリデンであり、また、前記ナノファイバー不織布1は、繊維径が250nm~500nm,厚さが2μm~10μmに設定され、さらに、このナノファイバー不織布1は、目付量が30g/m
2
以上70g/m
2
未満に設定されたポリプロピレン製不織布からなる基材2上に積層された構成であり、また、前記美容液は、みどり繭から得られたセリシンと水と尿素とを含む加水分解セリシンを主成分とし、粘度が15,000mPa・s~18,000mPa・s(20℃~25℃)であり、また、前記ナノファイバー不織布1は、前記美容液が15g/m
2
~20g/m
2
塗工されていることを特徴とする美容シートに係るものである。
【0012】
また、請求項1記載の美容シートにおいて、前記ナノファイバー不織布1は、前記基材2上に剥離自在に設けられていることを特徴とする美容シートに係るものである。
【0013】
また、請求項1,2いずれか1項に記載の美容シートにおいて、前記基材2は、スパンボンド不織布であることを特徴とする美容シートに係るものである。
【0014】
また、請求項1~3いずれか1項に記載の美容シートにおいて、前記基材2の目付量は、30g/m2
~40g/m
2
に設定されていることを特徴とする美容シートに係るものである。
【0015】
また、請求項1~4いずれか1項に記載の美容シートにおいて、前記ナノファイバー不織布1は、厚さが4μmに設定されていることを特徴とする美容シートに係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、逆浸透現象が生じず長時間使用することができ(肌に貼着することができ)、優れた美容成分であるセリシンを十分に肌に浸透させることができ、保湿作用や皺防止作用などの美容作用を十分に肌に及ぼすことができる画期的な美容シートとなる。
【0017】
しかも、本発明は、製品形態が乾燥状態であるから、湿潤タイプのものに比べて簡易に保管でき包装コストも掛からず製品を安価に提供することができる画期的な美容シートとなる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本実施例を示す正面図(a)及び側面図(b)である。
【
図3】本実施例の評価試験の結果(耐久性、加工性、密着性、転写性及び保水性)を示す表である。
【
図4】本実施例の評価試験における各試験品のナノファイバー不織布への美容液の付着状態を観察した結果を示すSEM画像(写真)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0020】
本発明の美容シートは、ナノファイバー不織布1の美容液塗工面に水や化粧液などで水分を付与することで肌に貼着することができ、肌に貼着すると、前記水分によりナノファイバー不織布1に塗工された美容液中のセリシンが溶出して肌に浸透していき、肌に保湿作用や皺防止作用などの美容作用を及ぼす。なお、本発明は、水や化粧液などで肌を湿らせることで、本発明を湿らせなくても貼着することができる。
【0021】
また、本発明の美容シートは、肌と接するナノファイバー不織布1が疎水性素材からなるものであり逆浸透現象が生じないので、長時間肌に貼着したままとすることができ、ゆっくりと時間をかけて肌に十分なセリシンを浸透させることができ、前記美容作用を十分に肌に及ぼすことができる。
【0022】
さらに、本発明の美容シートは、ナノファイバー不織布1の厚さが20μm以下に設定されているから、肌への密着性が高く、安定的に長時間肌に貼着することができ、また、皺の凹凸にも追従し、皺伸ばし効果も発揮する。
【0023】
またさらに、本発明の美容シートは、製品形態が乾燥状態であるから、湿潤タイプのもののように個包装にして密閉収納する必要がなく、簡易な包装で保管でき、包装コストも掛からず製品を安価に提供することができる。
【0024】
このように、本発明の美容シートは、従来にない作用効果を奏する実用性に優れた画期的な美容シートとなる。
【実施例】
【0025】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0026】
本実施例は、本発明の美容シートを目元パックシートに適用した場合である。なお、本発明は、本実施例に限らず、顔全体をパックするフェイスシートや顔以外の部位をパックする他の美容シートに適用しても良い。
【0027】
具体的には、本実施例は、不織布で構成される基材2上にセリシンを主成分とする美容液が塗工されたナノファイバー不織布1が剥離自在に設けられている構成とされている。
【0028】
また、本実施例は、製品(商品)形態においては、図示するようにナノファイバー不織布側、基材側の夫々の外面にシート状の保護材3が設けられている構成とされている。
【0029】
以下、本実施例に係る構成各部について詳述する。
【0030】
本実施例のナノファイバー不織布1は、疎水性素材からなり厚さが20μm以下に設定されている。すなわち、本実施例は、使用時に肌に接するナノファイバー不織布1を疎水性素材とすることで、肌の水分を吸収する逆浸透現象が生じないように構成されている。
【0031】
具体的には、疎水性素材としては、ポリウレタン若しくはポリフッ化ビニリデンが好適であり、本実施例においてはポリウレタンが採用されている。なお、ナノファイバー不織布1の疎水性素材に関しては、上記素材と同等の作用効果を発揮するものであれば上記素材以外でも適宜採用可能である。
【0032】
また、厚さは薄いほうが良く、2μm~10μmが好適であり、本実施例においては、美容液をナノファイバー不織布1に塗工する処理や製品形態に打ち抜き加工する際の加工作業のし易さ(生産性)、使用時に破れにくく剥がれにくいこと(耐久性及び実用性)を考慮し、4μmに設定されている。
【0033】
また、この厚さを実現するため及びシートの透明感並びに肌(皮膚)への追従性を確保するため、ナノファイバー不織布1の繊維径は細いほうが好ましい。しかしながら、繊維径は細すぎるとナノファイバー不織布1の強度(力学的強度)が低くなって破れ易くなりハンドリングしにくくなると共に、繊維径が細いほど成膜に時間を要し生産速度が低くコストアップとなることから、繊維径は2,000nm以下、具体的には、200nm~1,000nmが好適であり、本実施例においては、250nm~500nmに設定されている。
【0034】
また、本実施例のナノファイバー不織布1は、エレクトロスピニング法を用いて基材2上に剥離自在に積層され、使用時に基材2から剥離し肌(皮膚)に貼着される構成とされている。
【0035】
このナノファイバー不織布1が積層される本実施例の基材2は、ポリプロピレン(PP)からなる不織布、具体的には、スパンボンド不織布からなる構成とされている。
【0036】
この基材2に関しては、目付量が少な過ぎると、基材が薄く柔らかくなるため積層するナノファイバー不織布1が剥がれにくくなる。また、目付量が多過ぎると、基材が厚く硬くなるためナノファイバー不織布1は剥がし易くなるものの、美容液を塗工したり所定の形状に打ち抜く加工を行う際にナノファイバー不織布1が剥がれてしまう懸念が生じる。
【0037】
また、基材2にナノファイバー不織布1を積層する際にエレクトロスピニング法を用いた場合、このエレクトロスピニング法特有の現象として、化繊で構成される基材2は薄いほうが静電気的反発が弱く紡糸時にナノファイバー不織布1が基材に接着し易く、厚くなると静電気的反発が強く紡糸時にナノファイバー不織布が基材に接着しにくくなる。
【0038】
さらに、ナノファイバー不織布1に美容液を塗工する際、この基材2にも美容液が塗工されるため、基材2が厚いとより多くの美容液を使用することとなる。
【0039】
これらの点を考慮すると、基材2の厚さは薄いほうが良く、そのためには目付量を30g/m2以上70g/m2未満に設定することが好適であり、本実施例においては、30g/m2~40g/m2に設定されている。
【0040】
また、ナノファイバー不織布1に塗工される美容液は、優れた保湿作用を有することが知られているセリシンを主成分とするものである。
【0041】
具体的には、セリシンは蚕繭から得られる加水分解セリシンであり、この加水分解セリシンには、セリシンのほか、水(基剤)及び尿素(保湿・角質柔軟化作用)が成分として含まれる。
【0042】
また、本実施例の美容液は、この加水分解セリシン以外に、ヒアルロン酸ナトリウム(保湿作用)、グリチルリチン酸ジカリウム(消炎作用)、アスコルビルリン酸ナトリウム(美白作用)、マグワ根皮エキス(コラーゲン保護・メラニン生成抑制作用)、ブチレングリコール(保湿・抗菌・溶媒作用)、カニナバラ果実エキス(エラスチン保護・角質水分量増加作用)、グリセリン(保湿作用)、マンダリンオレンジ果実エキス(天然系防腐成分、抗酸化・保湿作用)、ビターオレンジ果実エキス(天然系防腐成分、肌にハリと潤いを付与)、オレンジ果皮エキス(天然系防腐成分、乾燥肌改善・美白・抗炎症・抗菌作用)、異性化糖(角質に潤いをキープする)、レウコノストック/米発酵液エキス(ヒト正常線繊芽細胞増殖・ヒアルロン酸産生促進・角質水分量向上作用)の各種成分が配合されている。なお、美容液に関しては、これら全成分の配合が必須ではなく、これらの成分からなる群より選択される適宜な成分が配合されるものとしても良い。
【0043】
また、本実施例の美容液の主成分となるセリシンは、無菌養蚕で生産されるみどり繭から得られたセリシンである。
【0044】
このみどり繭由来のセリシンには、一般的な蚕繭(白繭)には殆ど含まれない抗酸化フラボノイド、具体的には、ケルセチン、ケンフェロール、ダイゼイン、ゲニスティン、グリシティンが含まれていて、保湿作用以外に肌(皮膚)に対して優れた抗酸化作用を発揮する。
【0045】
また、みどり繭由来のセリシンは、紫外線のA波及びB波の両方をカットする効果を発揮するから(一般的な蚕繭(白繭)から得られるセリシンは紫外線のB波のみをカットする。)、本実施例は、このみどり繭由来のセリシンの効果により紫外線のA波及びB波の両方をカットする効果が生じることが予想される。
【0046】
また、本実施例において美容液のナノファイバー不織布1への塗工はグラビア印刷加工によってなされる。このグラビア印刷加工の加工性及びナノファイバー不織布1から肌(皮膚)への密着性、浸透性を考慮すると、美容液の粘度は、10,000~20,000mPa・s(20℃~25℃)が好適であり、本実施例においては、15,000~18,000mPa・s(20℃~25℃)に設定されている。
【0047】
また、美容液の塗工量に関しては、塗工量が多いほうが好ましく、塗工量が多ければ、製品形態である乾燥状態にした際にナノファイバー不織布1に残るセリシンや他の成分量が多くなり、ナノファイバー不織布1の肌(皮膚)への転写が行い易くなる。
【0048】
次に、本実施例の製造方法の一例を説明する。
【0049】
まず、基材2とナノファイバー不織布1との積層体(原反)を作成する。具体的には、ロール状に形成されたスパンボンド不織布からなる基材2を巻き出し、巻き取り装置により送り搬送し、搬送途中においてエレクトロスピニング法を用いた加工装置により基材2表面にナノファイバー不織布1を塗工形成する。
【0050】
次に、上記の方法で作成した原反、具体的には、原反のナノファイバー不織布1側から美容液をグラビア印刷により塗工し乾燥させた後、この原反を次の打ち抜き工程の加工装置に適した寸法に合わせて裁断加工(スリット加工)する。
【0051】
なお、美容液の塗工量は美容液の粘度などに応じて適宜な塗工量に設定される。本実施例においては、15,000~18,000mPa・s(20℃~25℃)に設定される美容液を15~20g/m2塗工している。
【0052】
また、乾燥条件についても美容液の粘度や塗工量に応じて適宜な乾燥温度に設定される。本実施例においては、約70℃で乾燥した。
【0053】
最後に、この裁断加工したシート材を所定形状(本実施例においては目元シートに適した形状)に打ち抜き、ナノファイバー不織布側、基材側の夫々の外面に保護材3を設けて、製品形態として完成となる。
【0054】
以上のように構成される本実施例の作用効果について以下に説明する。
【0055】
本実施例は、肌(皮膚)に貼着されるナノファイバー不織布1を疎水性素材のポリウレタン製としたから、長時間肌に貼着しても逆浸透現象が生じない。したがって、本実施例は、肌に長時間貼着してゆっくりと十分な美容成分を肌に浸透させることができる。
【0056】
また、本実施例は、ナノファイバー不織布1の繊維径が250nm~500nmに設定され、厚さが4μmに設定されているから、ナノファイバー不織布1が肌の皺の凹凸にも追従することができ、肌に良好に密着する。
【0057】
また、本実施例は、美容液の主成分となるセリシンにみどり繭由来のセリシンを用いているから、セリシンに含まれるフラボノイド成分(ケルセチン、ケンフェロール、ダイゼイン、ゲニスティン、グリシティン)により、保湿作用と共に抗酸化作用を有し、さらに紫外線のA波とB波の両方をカットする作用が生じる可能性があるものとなり、肌の酸化、すなわち、しみや皺などの発生(肌の老化)を抑制する効果を良好に発揮する。
【0058】
また、本実施例は、製品形態が乾燥状態であるから、湿潤タイプのもののように個包装にして密閉収納する必要がなく、簡易な包装で保管することができる。
【0059】
このように、本実施例は、優れた美容効果を発揮すると共に、包装コストが掛からず製品を安価に提供することができる画期的な美容シートとなる。
【0060】
以下は、本実施例の効果を裏付ける評価試験についてである。
【0061】
本評価試験は、基材2の素材(ポリプロピレン製スパンボンド不織布)、ナノファイバー不織布1の膜厚(4μm)、ナノファイバー不織布1の素材(ポリウレタン製)を固定条件とし、基材2の目付量、ナノファイバー不織布1の繊維径、美容液の粘度及び塗工量(乾燥前)を
図2に示すように設定した各試験品における、耐久性(ナノファイバー不織布1の強度)、加工性(グラビア印刷加工時の)、密着性(ナノファイバー不織布1の肌への密着性)、転写性(ナノファイバー不織布1の基材2から肌への転写性)及び保水性に関する評価を行った。
【0062】
図3は本評価試験の評価結果を示すものであり、また、
図4は各試験品のナノファイバー不織布1への美容液の付着状態を観察した結果を示すものである。
【0063】
なお、
図3中の美容液の粘度に関しては、100~3,000mPa・s(20℃~25℃)を低粘度、3,000~10,000mPa・s(20℃~25℃)を中粘度、10,000~20,000mPa・s(20℃~25℃)を高粘度と定め表示している。
【0064】
また、各評価項目における評価結果を示す記号については以下のとおりである。
【0065】
耐久性評価:加工時、使用時の両方で破損なしを◎、加工時、使用時の両方でほぼ破損なしを○、加工時のみ破損ありを△、加工時、使用時の両方で破損ありを×とした。
【0066】
加工性評価:グラビア印刷加工時に破損、剥離なしを◎、グラビア印刷加工時に破損若しくは剥離の少なくともいずれかが発生を×とした。
【0067】
密着性評価:皺や隙間ができない状態で透明な状態となるように貼着できたものを◎、ほぼ皺や隙間ができない状態でほぼ透明な状態となるように貼着できたものを○、皺や隙間が少しできるがほぼ透明な状態となるように貼着できたものを△、皺や隙間ができ透明な状態となるように貼着できなかったものを×とした。
【0068】
転写性:ナノファイバー不織布1を基材2から肌に転写する際、水の使用でも転写が可能なものを◎、低粘度化粧液の使用で転写が可能なものを○、高粘度化粧液の使用で転写が可能なものを△、転写できなかったものを×とした。
【0069】
保水性:長時間(7~8時間)肌に貼着した際に十分な湿潤状態を保持したものを◎、長時間(7~8時間)肌に貼着した際に十分ではないが湿潤状態が残っていたものを○、3~4時間程度の使用で乾燥したものを△、1時間未満で乾燥したものを×とした。
【0070】
本評価試験における5つの評価項目に対する夫々の結果から、本実施例に該当する試験品7(基材目付量:40g/m2、ナノファイバー不織布繊維径:250nm、美容液粘度:高粘度、美容液塗工量15.3g/m2)と試験品8(基材目付量:40g/m2、ナノファイバー不織布繊維径:500nm、美容液粘度:高粘度、美容液塗工量19.4g/m2)の2つの試験品において良好な結果が得られた。
【0071】
この2つの試験品はいずれも美容液粘度が高粘度である点が共通しており、この美容液を高粘度とすることで、美容シートにとって重要な要素となる密着性、転写性及び保水性に対し良好な作用を発揮することが確認された。
【0072】
また、
図4に示すように試験品7及び試験品8は、他の試験品に比べてナノファイバー不織布1に美容液が多く付着していることが確認できた。この点からも美容液粘度を高粘度とすることでより多くの美容液がナノファイバー不織布1に付着し、肌に対して長時間に亘って美容作用を及ぼすことが確認された。
【0073】
なお、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0074】
1 ナノファイバー不織布
2 基材