(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物及び衛生材料用積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 129/04 20060101AFI20220317BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220317BHJP
C09J 7/26 20180101ALI20220317BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20220317BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220317BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20220317BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20220317BHJP
C08L 29/04 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C09J129/04
C09J11/06
C09J7/26
C09J7/35
A61F13/15 355A
B32B5/18
B32B27/30 102
C08L29/04 A
(21)【出願番号】P 2021566932
(86)(22)【出願日】2020-12-25
(86)【国際出願番号】 JP2020048893
(87)【国際公開番号】W WO2021132625
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019239579
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 良都
(72)【発明者】
【氏名】吉村 啓司
(72)【発明者】
【氏名】野本 博之
(72)【発明者】
【氏名】深谷 重一
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-336581(JP,A)
【文献】特開2002-173655(JP,A)
【文献】特開平05-005084(JP,A)
【文献】特開平06-299031(JP,A)
【文献】特開平08-092537(JP,A)
【文献】特開2004-256642(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
A61F 13/15
B32B 5/18,27/30
C08L 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系重合体、及び、架橋剤を含
み、
前記架橋剤は、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸を含有する、
ことを特徴とするホットメルト組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、60モル%以上90モル%以下である、請求項1に記載のホットメルト組成物。
【請求項3】
ゲル分率が85%以上97%以下である、請求項1
又は2に記載のホットメルト組成物。
【請求項4】
前記架橋剤の含有量は、前記ポリビニルアルコール系重合体を100質量部として、0.1質量部以上15質量部以下である、請求項1~
3のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【請求項5】
衛生材料用ホットメルト組成物である、請求項1~
4のいずれかに記載のホットメルト組成物。
【請求項6】
多孔質基材上に、請求項1~
4のいずれかに記載のホットメルト組成物からなるホットメルト組成物層を有する、衛生材料用積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト組成物及び衛生材料用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、紙おむつや生理用ナプキン等の衛生材料を含む吸収性物品が広く使用されている。吸収性物品には、ポリオレフィン系樹脂フィルム、不織布、ティッシュ、及び天然ゴム等の構成部材が用いられている。これらの構成部材をホットメルト接着剤を用いて接着することによって吸収性物品が組み立てられている。
【0003】
吸収性物品に用いられるホットメルト接着剤としては、ビニル芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とを共重合させてなる熱可塑性ブロック共重合体を主成分とするゴム系ホットメルト接着剤、及びエチレン-プロピレン共重合体を主成分とするオレフィン系ホットメルト接着剤が用いられている。なかでもオレフィン系ホットメルト接着剤に対して、塗工性及び凝集力が優れていることから、ゴム系ホットメルト接着剤が広く用いられている。
【0004】
ホットメルト組成物として、接着性能、耐湿性及び加熱安定性に優れた水溶性もしくは水分散性ホットメルト接着剤組成物が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のホットメルト接着剤組成物も接着性能、耐湿性(表面の耐ベタつき)等に優れているが、乾燥状態及び湿潤状態での接着性を両立することについては検討されていない。吸収性物品は、人の身体に装着されて用いられるため、ホットメルト組成物には、乾燥状態での接着性に優れることが要求される。
【0007】
また、紙おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品においては、使用時に尿や血液等がゴム系ホットメルト接着剤と使い捨て部材との接着部分に触れるため、湿潤時の構成部材に対する接着力が低下することが問題となる。更に、上述のホットメルト組成物においても使用時に尿や血液等に接触するため、湿潤状態での接着性に優れていることが要求される。
【0008】
このため、衛生材料用積層体に用いられるホットメルト組成物には、乾燥状態での接着性、及び、湿潤状態での接着性を両立することが要求される。
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、乾燥状態での接着性に優れ、且つ、湿潤状態での接着性にも優れたホットメルト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、ポリビニルアルコール系重合体、及び、架橋剤を含むホットメルト組成物によれば上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、下記のホットメルト組成物及び衛生材料用積層体に関する。
1.ポリビニルアルコール系重合体、及び、架橋剤を含むことを特徴とするホットメルト組成物。
2.前記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、60モル%以上90モル%以下である、項1に記載のホットメルト組成物。
3.前記架橋剤は、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸、及びホウ酸からなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載のホットメルト組成物。
4.ゲル分率が85%以上97%以下である、項1~3のいずれかに記載のホットメルト組成物。
5.前記架橋剤の含有量は、前記ポリビニルアルコール系重合体を100質量部として、0.1質量部以上15質量部以下である、項1~4のいずれかに記載のホットメルト組成物。
6.衛生材料用ホットメルト組成物である、項1~5のいずれかに記載のホットメルト組成物。
7.多孔質基材上に、項1~5のいずれかに記載のホットメルト組成物からなるホットメルト組成物層を有する、衛生材料用積層体。
【発明の効果】
【0012】
本発明のホットメルト組成物は、乾燥状態での接着性に優れ、且つ、湿潤状態での接着性にも優れている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.ホットメルト組成物
本発明のホットメルト組成物は、ポリビニルアルコール系重合体、及び、架橋剤を含むホットメルト組成物である。本発明のホットメルト組成物は、ポリビニルアルコール系重合体を含んでおり、当該ポリビニルアルコール系重合体が架橋剤により架橋されているので、乾燥状態での接着性に優れている。また、本発明のポリビニルアルコール系重合体は、架橋剤に架橋されたポリビニルアルコール系重合体を用いているので、乾燥状態の接着性だけでなく、湿潤状態の接着性も優れている。すなわち、本発明のホットメルト組成物は、ポリビニルアルコール系重合体、及び、架橋剤を含むことにより、乾燥状態での接着性、及び、湿潤状態での接着性を兼ね備えることができる。
【0014】
本発明のホットメルト組成物は、上述の特性を示すので、乾燥状態、及び、使用状況により湿潤状態で使用される、紙おむつや生理用ナプキン等の吸収性物品を構成する衛生材料用積層体に、好適に用いることができる。
【0015】
以下、本発明のホットメルト組成物について詳細に説明する。
【0016】
ポリビニルアルコール系重合体
本発明のホットメルト組成物は、ポリビニルアルコール系重合体を含む。ポリビニルアルコール系重合体としては、酢酸ビニルを単独重合し、更にそれをケン化して製造した、(通常の)ポリビニルアルコールを用いることができる。また、ポリビニルアルコール系重合体としては、親水基変性ポリビニルアルコール、疎水基変性ポリビニルアルコールも用いることができる。これらの中でも、湿潤状態での接着性がより一層向上し、融点が適度であり、吸収性物品の解体の際に水溶性を示すことができる観点から、ポリビニルアルコールが好ましい。
【0017】
ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、60モル%以上が好ましく、65モル%以上がより好ましい。また、ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、90モル%以下が好ましく、80モル%以下がより好ましく、75モル%以下が更に好ましい。ケン化度の下限が上記範囲であることにより、架橋剤による架橋を十分に発現することができ、湿潤状態での接着性がより一層向上する。また、ケン化度の上限が上記範囲であることにより、ポリビニルアルコール系重合体の溶融温度を200℃以下とすることができ、加熱溶融によるポリビニルアルコール系重合体の熱劣化を抑制することができる。
【0018】
なお、本明細書におけるポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、JIS K6726に準拠した測定方法により測定したケン化度である。また、2種以上のポリビニルアルコール系重合体が混合して用いられる場合には、上記ポリビニルアルコール系重合体のケン化度は、当該2種以上のポリビニルアルコール系重合体を混合した樹脂組成物について、上記JIS K6726に準拠した測定方法により測定したケン化度である。
【0019】
ポリビニルアルコール系重合体の重合度は、100以上が好ましく、200以上がより好ましい。また、ポリビニルアルコール系重合体の重合度は、5000以下が好ましく、1500以下がより好ましく、1000以下が更に好ましい。重合度の下限が上記範囲であることにより、架橋剤による架橋を十分に発現することができ、湿潤状態での接着性がより一層向上する。また、重合度の上限が上記範囲であることにより、ポリビニルアルコール系重合体の溶融温度を200℃以下とすることができ、加熱溶融によるポリビニルアルコール系重合体の熱劣化を抑制することができる。
【0020】
なお、本明細書におけるポリビニルアルコール系重合体の重合度は、JIS K6726に準拠した測定方法により測定することができる。
【0021】
親水基変性ポリビニルアルコールとしては、酢酸ビニルと、親水性を付与し得る他の不飽和単量体との重合体をケン化したものや、ポリビニルアルコール系重合体を後変性したものを用いることができる。
【0022】
上記親水性を付与し得る他の不飽和単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽和酸類及びそれらの塩;アクリロニトリル、メタアクリロニトリル等のニトリル類;アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミド類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸及びそれらの塩;ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等のアミン類が挙げられる。
【0023】
疎水基変性ポリビニルアルコールとしては、酢酸ビニルと、疎水性を付与し得る他の不飽和単量体との重合体をケン化したものや、ポリビニルアルコール系重合体を後変性したものを用いることができる。
【0024】
上記疎水性を付与し得る他の不飽和単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、イソブチレン、α-オクテン、α-ドデセン、α-オクタデセン等のオレフィン類が挙げられる。
【0025】
上記ポリビニルアルコール系重合体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
ホットメルト組成物中のポリビニルアルコール系重合体の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。また、ホットメルト組成物中のポリビニルアルコール系重合体の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましい。
【0027】
架橋剤
本発明のホットメルト組成物は、架橋剤を含む。架橋剤は、ポリビニルアルコール系重合体の架橋に用いられるものであれば特に限定されない。
【0028】
このような架橋剤としては、例えば、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸;ホウ酸等の無機酸;ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート等が挙げられる。これらの中でも、湿潤状態での接着性がより一層向上する観点から、2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸、ホウ酸が好ましい。
【0029】
2以上のカルボキシル基を有する多価カルボン酸としては特に限定されず、クエン酸、酒石酸、メリト酸等が挙げられる。これらの中でも、クエン酸が好ましい。
【0030】
上記架橋剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
本発明のホットメルト組成物中の架橋剤の含有量は、ポリビニルアルコール系重合体を100質量部として、0.1質量部以上が好ましく、1.0質量部以上がより好ましく、1.5質量部以上が更に好ましい。また、架橋剤の含有量は、ポリビニルアルコール系重合体を100質量部として、30質量部以下が好ましく、15質量部以下がより好ましく、10質量部以下が更に好ましい。架橋剤の含有量の下限が上記範囲であると、ホットメルト組成物の乾燥状態での接着性、及び、湿潤状態での接着性がより一層向上する。また、架橋剤の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルト組成物を用いて形成された衛生材料用積層体の易解体性がより一層向上する。近年、環境配慮の必要性から、ごみ排出量低下が要求されている。このため、使用済み紙おむつ等の使用済み吸収性物品を水溶、解体処理して再資源化できることが好ましい。紙おむつ等の吸収性物品は、ホットメルト組成物により接着されて形成される。ホットメルト組成物は、尿や血液等に触れた際の湿潤状態での接着性に優れることが要求されるが、アルカリ性等の処理液により溶解することが好ましい。ホットメルト組成物がアルカリ性等の処理液により溶解することにより、衛生材料用積層体の易解体性がより一層向上する。
【0032】
可塑剤
本発明のホットメルト組成物は、可塑剤を含んでいてもよい。可塑剤としては特に限定されず、ホットメルト組成物に用いられる従来公知の可塑剤を用いることができる。このような可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール;グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等の多価アルコール等が挙げられる。これらの中でも、より一層接着性が向上する観点から、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールがより好ましい。
【0033】
上記可塑剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0034】
ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、80以上が好ましく、230以上がより好ましい。また、ポリアルキレングリコールの数平均分子量は、10,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましい。数平均分子量の下限が上記範囲であると、加熱溶融時の揮発による油煙の発生が抑制され、作業性がより一層向上する。数平均分子量の上限が上記範囲であると、可塑化効果の低下が抑制され、ホットメルト組成物の溶融粘度の高騰がより一層抑制される。
【0035】
ポリアルキレングリコールの水酸基価は、100以上が好ましく、150以上がより好ましい。また、グリコール類の水酸基価は、2000以下が好ましく、1900以下がより好ましい。水酸基価の下限が上記範囲であると、ポリビニルアルコール系重合体との相溶性がより一層向上し、ホットメルト組成物の相分離がより一層抑制される。
【0036】
ポリアルキレングリコールは、3官能以上のものを用いることが好ましく、3官能のものを用いることがより好ましい。
【0037】
ポリアルキレングリコールとしては、水酸基価が350以上であり、3官能のものが好ましく、水酸基価が350以上であり、3官能のポリプロピレングリコールがより好ましい。
【0038】
本発明のホットメルト組成物中の可塑剤の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、可塑剤の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、75質量%以下が更に好ましい。
【0039】
他の添加剤
本発明のホットメルト組成物は、本発明の目的を本質的に妨げない範囲で、他の添加剤を含有していてもよい。上記他の添加剤としては、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、微粒子充填剤等が挙げられる。
【0040】
酸化防止剤としては、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、n-オクタデシル-3-(4'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2'-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、2,4-ビス(オクチルチオメチル)-o-クレゾール、2-t-ブチル-6-(3-t-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルべンジル)-4-メチルフェニルアクリレート、2,4-ジ-t-アミル-6-〔1-(3,5-ジ-t-アミル-2-ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2-[1-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0041】
本発明のホットメルト組成物中の酸化防止剤の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。酸化防止剤の含有量の下限が上記範囲であると、ホットメルト組成物の熱安定がより一層向上する。また、本発明のホットメルト組成物中の酸化防止剤の含有量は、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下が更に好ましい。酸化防止剤の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルト組成物の臭気がより一層低減される。
【0042】
紫外線吸収剤としては、2-(2'-ヒドロキシ-5'-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-t-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2'-ヒドロキシ-3',5'-ジ-t-ブチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤;シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0043】
本発明のホットメルト組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、0.01質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上が更に好ましい。紫外線吸収剤の含有量の下限が上記範囲であると、ホットメルト組成物の耐候性がより一層向上する。また、本発明のホットメルト組成物中の紫外線吸収剤の含有量は、ホットメルト組成物を100質量%として、2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%が更に好ましい。紫外線吸収剤の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルト組成物の臭気がより一層低減される。
【0044】
粘着付与樹脂としては、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂、また、それら石油樹脂に水素を添加した部分水添石油樹脂、完全水添石油樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂としては、ホットメルト組成物の臭気、熱安定性に優れている点で、石油樹脂、部分水添石油樹脂、及び完全水添石油樹脂が好ましく、部分水添石油樹脂、及び完全水添石油樹脂がより好ましい。これら粘着付与樹脂は1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0045】
粘着付与樹脂の環球式軟化点温度は、ホットメルト組成物の熱安定性がより一層優れる点で、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、粘着付与樹脂の環球式軟化点温度は、ホットメルト組成物により一層柔軟性を持たせ、より一層脆弱化を抑制することができる点で、125℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。なお、本明細書において、粘着付与樹脂の環球式軟化点温度は、JIS K2207に準拠して測定される値である。
【0046】
微粒子充填剤としては、特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、雲母、スチレンビーズ等が挙げられる。微粒子充填剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
ホットメルト組成物の物性
本発明のホットメルト組成物は、180℃における溶融粘度が2,000mPa・s以上が好ましく、3,000mPa・s以上がより好ましく、5,000mPa・s以上が更に好ましい。また、本発明のホットメルト組成物は、180℃における溶融粘度が50,000mPa・s以下が好ましく、40,000mPa・s以下がより好ましく、30,000mPa・s以下が更に好ましい。
【0048】
本明細書において、「溶融粘度」は、一定の温度で加熱溶融状態となったホットメルト組成物の粘度である。180℃における溶融粘度の測定方法としては、例えば、ホットメルト組成物を加熱溶融し、180℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて測定する測定方法が挙げられる。
【0049】
本発明のホットメルト組成物のゲル分率は、85%以上が好ましく、87%以上がより好ましく、90%以上が更に好ましい。また、本発明のホットメルト組成物のゲル分率は、98%以下が好ましく、97%以下がより好ましい。ゲル分率の下限が上記範囲であることにより、ホットメルト組成物の架橋が十分に進行していることとなり、湿潤状態での接着性がより一層向上する。ゲル分率の上限が上記範囲であることにより、アルカリ性等の処理液により溶解し易くなり、本発明のホットメルト組成物を用いて形成した衛生材料用積層体の易解体性がより一層向上する。なお、上記ゲル分率により、ホットメルト組成物の架橋度を測ることができる。
【0050】
本明細書において、ホットメルト組成物の「ゲル分率」は、以下の測定方法により測定することができる。ずなわち、ホットメルト組成物を80℃の水に30秒間浸漬して水溶性成分を除去した後、23℃50RH%の環境下で24時間風乾することで乾燥させ、試験片を調製する。試験片の重量を測定した後、試験片の重量の20倍以上の重量のキシレンに当該試験片を浸漬して、100℃で14時間加熱する。金網(200メッシュ)を用いてキシレンをろ過し、金網上の残留物を120℃のオーブンで4時間加熱し、23℃50RH%にて1時間放冷した後、重量を測定する。測定された重量を、試験片の重量で除して百分率で算出し、ゲル分率とする。
【0051】
本発明のホットメルト組成物の使用温度は、160℃以下が好ましく、150℃以下がより好ましい。従来のホットメルト組成物は160℃程度で使用されるが、本発明のホットメルト組成物は、溶融粘度が160℃より低くても溶融するので、上記使用温度で実用的に使用できる。従って、加熱安定性を有するホットメルト組成物を提供することができる。また、本発明のホットメルト組成物の使用温度の下限は、本発明のホットメルト組成物が溶融する温度であれば特に限定されない。
【0052】
当該ホットメルト組成物の用途としては特に限定されず、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、病院用ガウンなどいわゆる衛生材料等に好適に用いることができ、すなわち、衛生材料用ホットメルト組成物として有用である。
【0053】
ホットメルト組成物の製造方法
本発明のホットメルト組成物は公知の方法で製造される。例えば、ポリビニルアルコール系重合体、架橋剤、可塑剤、各種添加剤等を加熱した双腕型溶融混練機へ投入し、加熱しながら溶融混練することによって製造することができる。
【0054】
加熱温度は、特に限定されないが、160℃以上が好ましい。
【0055】
架橋剤を添加する方法としては、架橋剤を含むホットメルト組成物が調製できれば特に限定されない。架橋剤はポリビニルアルコール系重合体、可塑剤、及び各種添加剤等を溶融混錬する際に、同時に添加して溶融混練してもよいが、ポリビニルアルコール系重合体、可塑剤、及び各種添加剤等を溶融混錬して調製した混合樹脂組成物に、架橋剤を後添加してもよい。架橋剤を後添加する方法としては、例えば、(i)架橋剤を水や可塑剤等に溶解させて架橋剤含有組成物を調製し、多孔質基材にホットメルト組成物を塗布する直前に、混合樹脂組成物と架橋剤含有組成物とを混合して、ホットメルト組成物とする方法等が挙げられる。また、架橋剤を後添加する方法としては、例えば、(ii)多孔質基材に混合樹脂組成物を塗布した直後に、当該混合樹脂組成物に、架橋剤を水や可塑剤等に溶解させて調製した架橋剤含有組成物を塗布する方法等が挙げられる。
【0056】
2.衛生材料用積層体
本発明の衛生材料用積層体は、多孔質基材上に、上記ホットメルト組成物からなるホットメルト組成物層を有する衛生材料用積層体である。
【0057】
このような衛生材料用積層体は、多孔質基材の少なくとも片面側に、上記ホットメルト組成物からなるホットメルト組成物層を有していることが好ましく、多孔質基材の両面にホットメルト組成物層を有していてもよい。
【0058】
多孔質基材としては、衛生材料用積層体に通常用いられるものであれば特に限定されず、不織布、ポリオレフィン系樹脂フィルム、ティッシュ等が挙げられる。
【0059】
多孔質基材上にホットメルト組成物からなるホットメルト組成物層を形成する方法としては特に限定されず、従来公知の方法により形成することができる。このような方法には、2つの多孔質基材を本発明のホットメルト組成物により接着し、2つの多孔質基材間にホットメルト組成物層を形成する方法も含まれる。
【0060】
本発明のホットメルト組成物を用いて2つの多孔質基材を接着する方法としては、例えば、以下の方法が挙げられる。即ち、先ずホットメルト組成物を加熱することにより溶融状態とする。次いで、溶融状態のホットメルト組成物を一方の多孔質基材に塗工する。次いで、多孔質基材に塗工されたホットメルト組成物に、他の多孔質基材を積層した後、ホットメルト組成物を冷却固化させ、2つの多孔質基材を接着する。
【0061】
加熱溶融させたホットメルト組成物の塗工方法としては、特に制限されず、公知の方法が用いられる。例えば、スロットコーター塗工、ロールコーター塗工、スパイラル塗工、オメガ塗工、コントロールシーム塗工、スロットスプレー塗工、カーテンスプレー塗工、及びドット塗工等が挙げられる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施例について説明する。本発明は、下記の実施例に限定されない。
【0063】
なお、実施例及び比較例で用いた原料は以下のとおりである。
【0064】
(A)ポリビニルアルコール系重合体
・(A1)ポリビニルアルコール:重合度200、ケン化度65モル% 日本酢ビ・ポバール社製 JMR-8M
・(A2)ポリビニルアルコール:重合度500、ケン化度72モル% 日本酢ビ・ポバール社製 JR-05
・(A3)ポリビニルアルコール:重合度500、ケン化度88モル% 積水化学工業社製 SELVOL E205
【0065】
(B)可塑剤
・(B1)3官能ポリプロピレングリコール:数平均分子量250、水酸基価670 三洋化成工業社製 サンニクスGP-250
・(B2)グリセリン:数平均分子量92、水酸基価1830 和光純薬社製 試薬特級
【0066】
(C)架橋剤
・(C1)ホウ酸:和光純薬社製 試薬特級
・(C2)クエン酸:和光純薬社製 試薬特級
・(C3)2,2’-ジフェニルメタンジイソシアネート
【0067】
実施例及び比較例
上述した原料を、それぞれ表1に示した配合量で、加熱装置を備えた撹拌混練機中に投入した。180℃で加熱しながら混練して、ホットメルト組成物を製造した。
【0068】
得られたホットメルト組成物について、以下の測定条件により特性を評価した。
【0069】
(乾燥状態接着強度)
ホットメルト組成物を180℃で加熱させ溶解させた後、多孔質基材(ハイジェネ ピンク ハンディワイパー 日本製紙クレシア社製)のCD方向に0.8g/mの塗布目付でビード塗工して、ホットメルト組成物層を形成した。ホットメルト組成物層に、直ぐにもう一枚の多孔質基材を貼り合せて衛生材料用積層体を作製し、幅40mm、チャック間距離が40mmになるように試験片を調製した。次いで、試験片を用いてピール試験機(島津製作所社製 型番AGS-X)により、試験温度23℃、湿度50%RH、引張速度300mm/minの条件で180°ピール強度試験を行った。下記評価基準に従って評価した。
A:180°ピール強度が1N/40mm以上である
B:180°ピール強度が1N/40mm未満である
【0070】
(湿潤状態接着強度)
上記乾燥状態接着強度の試験片の調製方法と同一の方法により、試験片を調製した。当該試験片を水に1秒間浸漬した。試験片の余分な水分を拭き取り、上記乾燥状態接着強度の測定と同一の方法により、ピール強度試験を行った。下記評価基準に従って評価した。
A:180°ピール強度が1N/40mm以上である
B:180°ピール強度が0.6N/40mm以上1N/40mm未満である
C:180°ピール強度が0.6N/40mm未満である
【0071】
(易解体性)
23℃、湿度50%RHの条件で易解体性試験を行った。具体的には、pH8.5の弱アルカリ性に調整した石鹸水溶液300mlを300mlのビーカーに入れ、マグネチックスターラーに載せて、回転数が540回転/分になるように調整し、撹拌した。次いで、撹拌中の石鹸水溶液中に、上記乾燥状態接着強度の試験片の調製方法と同一の方法により調製した試験片を入れて、多孔質基材とホットメルト組成物層とが完全に剥がれるまでの時間を計測した。試験は5回行い、その平均値を測定値とした。下記評価基準に従って評価した。なお、比較例1は湿潤強度が0.02N/mm2未満のため、測定不能とした。
A:100秒以内に解体する
B:解体する迄の時間が100秒を超える
【0072】
(ゲル分率)
ホットメルト組成物を80℃の水に30秒間浸漬して水溶性成分を除去した後、23℃50RH%の環境下で24時間風乾することで乾燥させ、試験片を調製した。試験片の重量を測定した後、試験片の重量の20倍以上の重量のキシレンに当該試験片を浸漬して、100℃で14時間加熱した。金網(200メッシュ)を用いてキシレンをろ過し、金網上の残留物を120℃のオーブンで4時間加熱し、23℃50RH%にて1時間放冷した後、重量を測定した。測定された重量を、試験片の重量で除して百分率で算出し、ゲル分率とした。
【0073】