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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】工具保持具
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/12 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
B23Q3/12 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018043406
(22)【出願日】2018-03-09
(65)【公開番号】P2019155511
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-29
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 株式会社ニュースダイジェスト社主催で、平成29年10月18日~21日に、「ポートメッセなごや」(名古屋市港区金城ふ頭二丁目2番地)において開催された「メカトロテックジャパン2017」に出品
(73)【特許権者】
【識別番号】591033755
【氏名又は名称】エヌティーツール株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110003052
【氏名又は名称】特許業務法人勇智国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100105120
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 哲幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106725
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 敏行
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 信
(72)【発明者】
【氏名】高津 悠
(72)【発明者】
【氏名】鶴田 健太郎
【審査官】村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-346865(JP,A)
【文献】特開2012-030355(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0027532(US,A1)
【文献】米国特許第4714389(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具を保持可能な工具保持具であって、
本体部と、プルスタッドを備え、
前記本体部は、本体部内周面と、本体部外周面と、本体部後端面とによって形成されているとともに、前記本体部内周面によって形成され、軸方向に沿って延在する本体部内側空間と、シャンク部と、前記シャンク部より後端側に設けられているプルスタッド装着部と、前記シャンク部より先端側に設けられているフランジ部とを有し、
前記本体部内周面は、前記フランジ部のフランジ部内周面を形成する第1本体部内周面部分と、前記プルスタッド装着部のプルスタッド装着部内周面を形成する第2本体部内周面部分と、前記シャンク部のシャンク部内周面を形成する第3本体部内周面部分とを有し、
前記本体部外周面は、前記フランジ部のフランジ部後端面を形成する第1本体部外周面部分と、前記プルスタッド装着部のプルスタッド装着部外周面を形成する第2本体部外周面部分と、前記シャンク部のシャンク部外周面を形成する第3本体部外周面部分とを有し、
前記本体部内側空間は、前記第1本体部内周面部分および前記第3本体部内周面部分により形成される第1本体部内側空間部と、前記第2本体部内周面部分により形成される第2本体部内側空間部とを有し、
前記プルスタッドは、軸方向に沿って延在するプルスタッド内側空間を有しているとともに、前記第2本体部内側空間部に装着され、
前記第3本体部外周面部分は、軸方向に沿ってテーパー状に延在するように形成され、
前記第2本体部外周面部分は、前記第3本体部外周面部分の延在線より内側において、軸方向に沿って延在するように形成され、
前記第3本体部内周面部分は、軸方向中央部における内径が先端側端部における内径および後端側端部における内径より小さくなるように、内側に突状に形成されていることを特徴とする工具保持具。
【請求項2】
請求項1に記載の工具保持具であって、
前記第3本体部外周面部分の後端側端部は、前記第2本体部内周面部分の先端側端部より先端側に配置されていることを特徴とする工具保持具。
【請求項3】
請求項1または2に記載の工具保持具であって、
前記本体部外周面は、前記第1本体部外周面部分と前記第3本体部外周面部分との境界部に、先端側に窪んでいる溝を形成する第4本体部外周面部分を有し、
前記溝の、軸方向に沿った深さは、前記第1本体部内周面部分と前記第3本体部内周面部分との境界部における、前記第3本体部内周面部分と前記第3本体部外周面部分との間の長さの1/2以上に設定されていることを特徴とする工具保持具。
【請求項4】
請求項1~3のうちのいずれか一項に記載の工具保持具であって、
前記本体部内周面は、前記第2本体部内周面部分の先端側端部と前記第3本体部内周面部分の後端側端部との間に、前記第3本体部内周面部分の前記後端側端部を、前記第2本体部内周面部分の前記先端側端部に対して外側に配置するための第4本体部内周面部分を有していることを特徴とする工具保持具。
【請求項5】
請求項1~4のうちのいずれか一項に記載の工具保持具であって、
前記本体部内周面は、軸方向に沿って延在する溝を前記第3本体部内周面部分に形成する溝形成面を少なくとも一つ有していることを特徴とする工具保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具を保持可能な工具保持具、特に、工作機械主軸内周面により挟持されるシャンク部の内側に中空部を有する工具保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
工具保持具として、図5に示されているような工具保持具が用いられている。このような工具保持具は、例えば、特許文献1に開示されている。
図5に示されている工具保持具200は、本体部210を有している。本体部210は、後端側(本体部210の工具保持空間内に工具の工具シャンク部が挿入される方向と反対側)にシャンク部220、フランジ部230、プルスタッド装着部240を有している。本体部210の本体部内周面211は、フランジ部230のフランジ部内周面を形成する本体部内周面部分211cと、シャンク部220のシャンク部内周面を形成する本体部内周面部分211dと、プルスタッド装着部240のプルスタッド装着部内周面を形成する本体部内周面部分211fを有している。本体部210の本体部外周面212は、フランジ部230のフランジ部後端面を形成する本体部外周面部分212aと、シャンク部220のシャンク部外周面およびプルスタッド装着部240のプルスタッド装着部外周面を形成する本体部外周面部分212cを有している。本体部外周面部分212cと本体部内周面部分211dは、軸方向に沿ってテーパー状に延在するテーパー面に形成されている。本体部内周面部分211dの延在方向は、本体部外周面部分212cの延在方向と平行である。
本体部210は、本体部内周面211により形成される本体部内側空間を有している。本体部内側空間は、本体部内周面部分211aにより形成される本体部内側空間部210aと、本体部内周面部分211b~211eにより形成される本体部内側空間部210b(中空部)と、本体部内周面部分211fにより形成される本体部内側空間部210c(図示省略)を有している。このような本体部内側空間部(中空部)210bを有するシャンク部220は、「中空テーパーシャンク部」と呼ばれている。また、中空テーパーシャンク部を有する工具保持具は、「中空テーパーシャンクホルダ」と呼ばれている。
工作機械側に設けられている引込み部材60により、プルスタッド装着部240に装着されたプルスタッド250を矢印方向(工作機械主軸50側)に引き込むと、テーパー面に形成された、工作機械主軸50の工作機械主軸内周面部分51aと工具保持具200の本体部外周面部分212cとの係合により、本体部外周面部分212cが工作機械主軸内周面部分51aにより挟持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平7-96436号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の工具保持具200では、テーパー状に形成されている本体部内周面部分211dおよび本体部外周面部分212cにより形成されるシャンク部220は、後端側にプルスタッド装着部240が連結されているとともに、先端側にフランジ部230が連結されている。これにより、シャンク部220の後端部(本体部内周面部分211fの先端側端部211h側の小径部M1)および先端部(本体部内周面部分211cと211dの境界部側の大径部M3)の剛性が、中央部(小径部M1と大径部M3の間の中径部M2)の剛性より高くなる。このため、工作機械側に設けられている引込み部材60により、プルスタッド装着部240に装着されたプルスタッド250を工作機械主軸50側に引き込んだ時、シャンク部220の中央部の縮径量が後端部および先端部の縮径量より大きくなり、本体部外周面部分212cと工作機械主軸内周面部分51aとの接触面圧が低くなる。なお、接触面圧は、シャンク部220の後端部において最も高く、次に先端部において高く、そして中央部において最も低い。シャンク部220の中央部における本体部外周面部分212cと工作機械主軸内周面部分51aとの接触面圧が後端部および先端部における接触面圧より低くなると、工作機械主軸50に対する工具保持具200の取付け精度が不安定となるおそれがある。
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、内側に中空部を有するシャンク部の各部における縮径量の差を低減することができる工具保持具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の工具保持具は、本体部とプルスタッドを備えている。
本体部は、本体部内周面と、本体部外周面と、本体部後端面とによって形成されている。また、本体部は、軸方向に沿って延在する本体部内側空間と、シャンク部と、プルスタッド装着部と、フランジ部を有している。プルスタッド装着部は、シャンク部より後端側に設けられ、フランジ部は、シャンク部より先端側に設けられている。
本体部内周面は、フランジ部のフランジ部内周面を形成する第1本体部内周面部分と、プルスタッド装着部のプルスタッド装着部内周面を形成する第2本体部内周面部分と、シャンク部のシャンク部内周面を形成する第3本体部内周面部分を有している。第1~第3本体部内周面部分は、軸方向に沿って延在する。なお、第2本体部内周面部分と第3本体部内周面部分との間に、第3本体部内周面部分の後端側端部を第2本体部内周面部分の先端側端部に対して外側に配置するための第4本体部内周面部分を設けることもできる。
本体部外周面は、フランジ部のフランジ部後端面を形成する第1本体部外周面部分と、プルスタッド装着部のプルスタッド装着部外周面を形成する第2本体部外周面部分と、シャンク部のシャンク部外周面を形成する第3本体部外周面部分とを有している。第1本体部外周面部分は、径方向に沿って延在し、第2および第3本体部外周面部分は、軸方向に沿って延在する。
本体部内側空間は、第1本体部内周面部分および第3本体部内周面部分により形成される第1本体部内側空間部と、第2本体部内周面部分により形成される第2本体部内側空間部とを有している。
プルスタッドは、軸方向に沿って延在するプルスタッド内側空間を有しているとともに、第2本体部内側空間部に装着される。
第3本体部外周面部分は、軸方向に沿ってテーパー状に延在するように形成されている。好適には、テーパー状に形成された、工作機械主軸の工作機械主軸内周面部分と第3本体部外周面部分との係合によって、第3本体部外周面部分が工作機械主軸内周部分によって挟持されるように構成される。
そして、第2本体部外周面部分は、第3本体部外周面部分の延在線より内側(回転中心線側)において、軸方向に沿って延在するように形成されている。第3本体部外周面部分の延在線は、第3本体部外周面部分を、第3本体部外周面部分の延在方向に沿って延ばした線を意味する。例えば、第2本体部外周面部分は、第3本体部外周面部分に連接され、第3本体部内周面部分の傾斜角度(軸方向に対する俯角)より大きい傾斜角度でテーパー状に延在するように形成される。好適には、第3本体部外周面部分を工作機械主軸内周面部分に係合させる際に、第2本体部外周面部分の、第2本体部内周面部分の先端側端部より後端側の部分が工作機械主軸内周面に当接しないように構成される。
また、第3本体部内周面部分は、軸方向に沿った中央部における内径が先端側端部における内径および後端側端部における内径より小さくなるように、内側に突状に形成されている。好適には、第3本体部内周面部分は、中央部が内側に飛び出ている曲線状、より好適には、円弧状に形成される。
本発明では、従来の工具保持具において、シャンク部外周面と工作機械主軸内周面との接触面圧が最も高い(最も縮径し難い)、シャンク部の後端部における接触面圧を低減することができる。これにより、シャンク部の各部の縮径量の差を低減することができる。また、シャンク部の中央部の厚さを、後端側端部の厚さおよび先端側端部の厚さより厚く(肉厚に)形成して剛性を高めている。これにより、シャンク部の各部の縮径量の差を低減することができる。
本発明の他の形態では、第3本体部外周面部分の後端側端部は、第2本体部内周面部分の先端側端部より先端側に配置されている。
本形態では、シャンク部の後端部における接触面圧をより低減することができ、シャンク部の各部の縮径量の差をより低減することができる。
本発明の他の形態では、本体部外周面は、第1本体部外周面部分と第3本体部外周面部分との境界部に、先端側に窪んでいる溝を形成する第4本体部外周面部分を有している。溝の、軸方向に沿った深さは、第1本体部内周面部分と第3本体部内周面部分との境界部における、第3本体部内周面部分と第3本体部外周面部分との間の長さの1/2以上に設定されている。
本形態では、従来の工具保持具において、シャンク部外周面と工作機械主軸内周面部分との接触面圧が高かった、シャンク部の後端部および先端部における接触面圧を低減することができる。これにより、シャンク部の各部の縮径量の差をより低減することができる。
本発明の他の形態では、本体部内周面は、第2本体部内周面部分の先端側端部と第3本体部内周面部分の後端側端部との間に、第3本体部内周面部分の後端側端部を、第2本体部内周面部分の先端側端部に対して外側に配置するための第4本体部内周面部分を有している。
本発明の他の形態では、本体部内周面は、軸方向に沿って延在する溝を第3本体部内周面部分に形成する溝形成面を少なくとも一つ有している。
本形態では、シャンク部の中央部の縮径を容易としながら、シャンク部の中央部の剛性を高めることができる。
【発明の効果】
【0006】
本発明では、内側に中空部を有するシャンク部の各部の縮径量の差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の工具保持具の第1実施形態の断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3】本発明の工具保持具の第2実施形態の断面図である。
図4図3のIV-IV線断面図である。
図5】従来の工具保持具の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
本明細書では、工具保持具の延在方向(図1において、Aで示されている左右方向)を「軸方向」という。また、軸方向に直角な断面において、工具保持具の回転中心を中心点とする円弧に沿った方向を「周方向」といい、回転中心を通る線の方向を「径方向」という。また、軸方向に沿って、工具が挿入される側(図1において、A1で示されている右側)を「先端側」といい、工具が挿入される側と反対側(図1において、A2で示されている左側)を「後端側」という。
【0009】
本発明の工具保持具の第1実施形態100を、図1および図2を参照して説明する。なお、図1は、第1実施形態の工具保持具100の断面図であり、図2は、図1の要部を拡大した図である。
本実施形態の工具保持具100は、本体部110、プルスタッド150等を有している。なお、図示は省略されているが、本体部110は、先端側に、工具の工具シャンク部を把持する工具把持部を有している。
【0010】
本体部110は、本体部内周面111、本体部外周面112、本体部後端面113および本体部先端面(図示省略)を有する筒状に形成されている。本体部内周面111によって本体部内側空間が形成される。本体部内側空間は、後述する複数の本体部内側空間部を有している。
また、本体部110は、シャンク部120、シャンク部120より先端側に設けられているフランジ部130、シャンク部120より後端側に設けられているプルスタッド装着部140を有している。
【0011】
本体部内周面111は、先端側から後端側に配置されている本体部内周面部分(第1~第6本体部内周面部分)111a~111fを含んでいる。
本体部内周面部分111aは、軸方向に沿って延在している。
本体部内周面部分111bは、径方向に沿って延在している。
本体部内周面部分111cは、軸方向に沿って延在している。本体部内周面部分111cは、フランジ部130のフランジ部内周面を形成する。
本体部内周面部分111dは、軸方向に沿って延在している。本体部内周面部分111dは、軸方向に沿った中央部s3における内径(2×R3)が、先端側端部s1における内径(2×R1)より小さい[(2×R3)<(2×R1)]とともに、後端側端部s2における内径[(2×R2)]より小さい[(2×R3)<(2×R2)]、内側に飛び出ている曲線状に形成されている。好適には、本体部内周面部分111dは、内側に飛び出ている円弧状に形成される。なお、R1~R3は、本体部内周面部分111dの先端側端部s1、中央部s3および後端側端部s2と工具保持具100の回転中心線との間の距離であり、[R3<R2<R1]を満足する。本体部内周面部分111dは、シャンク部120のシャンク部内周面を形成する。
本体部内周面部分111fは、軸方向に沿って延在している。本体部内周面部分111fは、プルスタッド装着部140のプルスタッド装着部内周面を形成する。
本体部内周面部分111eは、径方向に沿って延在している。本体部内周面部分111eは、本体部内周面部分111dの後端側端部s2を、本体部内周面部分111fの先端側端部111hに対して外側に配置する段差面として形成される。
本体部内周面部分111aによって、軸方向に沿って延在する本体部内側空間部110aが形成される。
本体部内周面部分111b~111eによって、軸方向に沿って延在する本体部内側空間部(中空部)110bが形成される。
本体部内周面部分111fによって、軸方向に沿って延在する本体部内側空間部110c(図示省略)が形成される。
本体部内側空間部110bが、本発明の「第1本体部内側空間部」に対応し、本体部内側空間部110cが、本発明の「第2本体部内側空間部」に対応する。
【0012】
本体部外周面112は、先端側から後端側に配置されている本体部外周面部分(第1~第4本体部外周面部分)112a~112dを含んでいる。
本体部外周面部分112aは、径方向に沿って延在している。本体部外周面部分112aは、フランジ部130のフランジ部後端面を形成する。
本体部外周面部分112cは、軸方向に沿ってテーパー状に延在するテーパー面に形成されている。本体部外周面部分112cは、外径が、先端側から後端側に向かって小さくなるように傾斜している。本体部外周面部分112cは、シャンク部120のシャンク部外周面を形成する。
本体部外周面部分112bは、本体部外周面部分112aと112cとの境界部に、詳しくは、本体部外周面部分112aの、本体部外周面部分112c側の箇所に、先端側に窪んでいる溝131を形成する。本体部外周面部分112bは、溝131を形成する溝形成面として作用する。
本体部外周面部分112dは、本体部外周面部分112cの延在線Cより内側(回転中心線側)において、軸方向に沿って延在するように形成されている。本体部外周面部分112cの延在線Cは、本体部外周面部分112cを、本体部外周面部分112cの延在方向に沿って延ばした線である。
本実施形態では、本体部外周面部分112dは、本体部外周面部分112cに連接され、本体部外周面部分112cと112dとの連接部(境界部)112eから、軸方向に沿って後端側にテーパー状に延在するように形成されている。ここで、本体部外周面部分112cの、軸方向Aに対する傾斜角度(俯角)をQ1、本体部外周面部分112dの、軸方向Aに対する傾斜角度(俯角)をQ2とした場合、Q2がQ1より大きくなるように([Q2>Q1])設定される。
また、本体部外周面部分112cと112dとの連接部112e(本体部外周面部分112cの後端側端部)の位置および本体部外周面部分112dの傾斜角度Q2は、テーパー面に形成された、工作機械主軸内周面部分51aと本体部外周面部分112cとを係合させる際に、本体部外周面部分112dの、本体部内周面部分111fの先端側端部11hより後端側の部分(図2に示されているM1の部分)が、工作機械主軸内周面部分51aと当接しないように設定される。本実施形態では、本体部外周面部分112cと112dとの連接部112e(本体部外周面部分112cの後端側端部)が、本体部内周面部分111fの先端側端部111hより先端側に配置されている。本体部外周面部分112dの傾斜角度Q2は、連接部112eの位置と、本体部外周面部分112cの弾性変形量等に応じて設定される。
【0013】
本体部内周面部分111cが、本発明の「第1本体部内周面部分」に対応し、本体部内周面部分111fが、本発明の「第2本体部内周面部分」に対応し、本体部内周面部分111dが、本発明の「第3本体部内周面部分」に対応し、本体部内周面部分111eが、本発明の「第4本体部内周面部分」に対応する。
本体部外周面部分112aが、本発明の「第1本体部外周面部分」に対応し、本体部外周面部分112dが、本発明の「第2本体部外周面部分」に対応し、本体部外周面部分112cが、本発明の「第3本体部外周面部分」に対応し、本体部外周面部分112bが、本発明の「第4本体部外周面部分」に対応する。
【0014】
プルスタッド150は、プルスタッド内周面151、プルスタッド外周面152、プルスタッド後端面153、プルスタッド先端面154を有する筒状に形成されている。
プルスタッド内周面151によって、軸方向に沿って延在するプルスタッド内側空間150aが形成される。
プルスタッド外周面152は、プルスタッド外周面部分(第1および第2プルスタッド外周面部分)152aおよび152bを有している。プルスタッド外周面部分152aは、軸方向に沿って延在し、プルスタッド外周面部分152bは、径方向に沿って延在している。プルスタッド外周面部分152bは、フランジ部の先端側端面を形成する。
プルスタッド150は、本体部110の本体部内周面部分111fによって形成される本体部内側空間部110c内に装着される。本実施形態では、本体部内周面部分111fに形成された雌ネジと、プルスタッド外周面部分152aに形成された雄ネジとの螺合によって、プルスタッド150が本体部内側空間部110c内に装着される。
これにより、油等の冷却剤は、プルスタッド内側空間150a、本体部内側空間部110bおよび110aを介して工具の刃先に供給される。
なお、本実施形態では、本体部内周面部分111fの先端側端部111hの位置まで雌ネジが形成されている。このため、本体部110の、本体部内周面部分111fの先端側端部111hより後端側の部分(図2に示されているM1の部分)の剛性が、シャンク部120の部分より高い。
【0015】
工作機械側には、工作機械主軸50、引込み部材60が設けられている。工作機械主軸50の工作機械主軸内周面51は、工作機械主軸内周面部分(第1および第2工作機械主軸内周面面分)51aと51bを含んでいる。工作機械主軸内周面部分51aは、軸方向に沿ってテーパー状に延在するテーパー面に形成されている。
引込み部材60によりプルスタッド150の後端側の部分を矢印方向(工作機械主軸50側)に引き込むと、テーパー面に形成されている工作機械主軸内周面部分51aと本体部外周面部分112cとの係合および工作機械主軸先端面54と本体部外周面部分112aとの当接により、本体部110の本体部外周面部分112cが工作機械主軸内周面部分51aにより挟持される。
【0016】
本実施形態では、本体部外周面部分112cは、テーパー面に形成され、本体部内周面部分111dは、中央部s3における内径(2×R3)が、先端側端部s1における内径(2×R1)および後端側端部s2における内径(2×R2)より小さい、内側に飛び出ている曲線状に形成されている。これにより、シャンク部120は、中央部s3における厚さt3が、先端側端部s1における厚さt1および後端側端部s2における厚さt2より大きい形状、すなわち、中央部s3が、先端側端部s1および後端側端部s2より肉厚な形状に形成される。なお、厚さt1~t3は、[t3>t1>t2]を満足する。
また、プルスタッド装着部140のプルスタッド装着部外周面を形成する本体部外周面部分112dが、テーパー面に形成されている本体部外周面部分112cの延在線Cより内側に配置されている。さらに、本体部外周面部分112cと112dとの連接部(本体部外周面部分112cの後端側端部)112eが、プルスタッド装着部140のプルスタッド装着部内周面を形成する本体部内周面部分111fの先端側端部111hより先端側に配置されている。
また、フランジ部130のフランジ部後端面を形成する本体部外周面部分112aと、本体部外周面部分112cとの境界部、詳しくは、本体部外周面部分112aの、本体部外周面部分112c側の部分に形成される溝131の軸方向に沿った深さDが、シャンク部120の先端側端部s1における厚さt1の(1/2)以上に設定されている[D≧(1/2×t1)]。
これにより、シャンク部120の中央部s3、先端側端部s1、後端側端部s2における縮軽量の差を低減することができ、各部における第1工作機械主軸内周面部分51aと第3本体部外周面部分112cとの接触面圧の差を低減することができる。したがって、工具保持具100を安定して工作機械主軸50に取り付けることができる。
【0017】
本発明の工具保持具の第2実施形態を、図3および図4を参照して説明する。なお、図3は、第2実施形態の工具保持具100の本体部110の断面図であり、図4は、図3のIV-IV線断面図である。
第2実施形態の工具保持具は、本体部内周面部分111dに本体部内周面部分111gが形成されている点を除いて、第1実施形態の工具保持具と同じ構成である。したがって、以下では、本体部内周面部分111dの構成のみを説明する。
本体部内周面部分111dは、中央部s3における内径が、先端側端部s1における内径および後端側端部s2における内径より小さい、内側に飛び出ている曲線状に形成されている。すなわち、シャンク部120は、中央部s3における厚さが、先端側端部s1における厚さおよび後端側端部s2における厚さより大きい形状(中央部s3が、先端側端部s1および後端側端部s2より肉厚な形状)に形成されている。これにより、シャンク部120の中央部の剛性を高めることができ、シャンク部120の中央部における本体部外周面部分112cと工作機械主軸内周面部分51aとの接触面圧を高くすることができる。
一方、シャンク部120の中央部の剛性が高くなると、シャンク部120の中央部が縮径し難くなる。
本実施形態では、シャンク部120の中央部の剛性を高めながら、シャンク部120の中央部が縮径し易くするために、本体部内周面部分111dに、複数の本体部内周面部分111gが形成されている。本体部内周面部分111gは、本体部内周面部分111dに、軸方向に沿って延在する溝115を形成する溝形成面として作用する。溝115の形状や数、配置位置等は、適宜選択可能である。
第2実形態では、工具シャンク部の中央部の縮径を容易としながら、シャンク部の中央部の剛性を高めることができる。
【0018】
本発明は、実施形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
プルスタッド装着部外周面を形成する本体部外周面部分112d(本発明の「第2本体部外周面部分」)を、本体部外周面部分112c(本発明の「第3本体部外周面部分」)の延在線より内側に配置する態様としては、本体部外周面部分112c(本発明の「第3本体部内周面部分」)に連接され、本体部外周面部分112c(本発明の「第3本体部内周面部分」)の傾斜角度Q1より大きい傾斜角度Q2で傾斜するテーパー面に形成する態様に限定されない。例えば、本体部外周面部分112c(本発明の「第3本体部内周面部分」)に、径方向に延在する段差面を介して接続され、軸方向に沿って延在する面に形成する態様を用いることもできる。
本体部内周面部分111d(本発明の「第3本体部内周面部分」)と本体部内周面部分111f(本発明の「第2本体部内周面部分」)との間に設けた本体部内周面部分111e(本発明の「第4本体部内周面部分」)は、省略することもできる。
本体部110の形状は、適宜変更可能である。
実施形態で説明した各構成は、単独で用いることもできるし、適宜選択した複数の構成を組み合わせて用いることもできる。例えば、本体部外周面部分112d(本発明の「第2本体部外周面部分」)を本体部外周面部分112c(本発明の「第3本体部外周面部分」)の延在線Cに対して内側に配置する構成、本体部外周面部分112a(本発明の「第1本体部外周面部分」)と本体部外周面部分112c(本発明の「第3本体部外周面部分」)との境界部に、溝131を形成する本体部外周面部分112b(本発明の「第4本体部外周面部分」)を設ける構成、本体部内周面部分111d(本発明の「第3本体部内周面部分」)を内側に突状に形成する構成のうちの一つあるいは適宜選択した複数の構成を用いることができる。
【0019】
本発明は、以下のように構成することもできる。
(態様1)
「工具を保持可能な工具保持具であって、
本体部と、プルスタッドを備え、
前記本体部は、本体部内周面と、本体部外周面と、本体部後端面とによって形成されているとともに、前記本体部内周面によって形成され、軸方向に沿って延在する本体部内側空間と、シャンク部と、前記シャンク部より後端側に設けられているプルスタッド装着部と、前記シャンク部より先端側に設けられているフランジ部とを有し、
前記本体部内周面は、前記フランジ部のフランジ部内周面を形成する第1本体部内周面部分と、前記プルスタッド装着部のプルスタッド装着部内周面を形成する第2本体部内周面部分と、前記シャンク部のシャンク部内周面を形成する第3本体部内周面部分とを有し、
前記本体部外周面は、前記フランジ部のフランジ部後端面を形成する第1本体部外周面部分と、前記プルスタッド装着部のプルスタッド装着部外周面および前記シャンク部のシャンク部外周面を形成する第3本体部外周面部分とを有し、
前記本体部内側空間は、前記第1本体部内周面部分および前記第3本体部内周面部分により形成される第1本体部内側空間部と、前記第2本体部内周面部分により形成される第2本体部内側空間部とを有し、
前記プルスタッドは、軸方向に沿って延在するプルスタッド内側空間を有しているとともに、前記第2本体部内側空間部に装着され、
前記第3本体部外周面部分は、軸方向に沿ってテーパー状に延在するように形成され、
前記第3本体部内周面部分は、軸方向中央部における内径が先端側端部における内径および後端側端部における内径より小さくなるように、内側に突状に形成されていることを特徴とする工具保持具。」
(態様2)
「工具を保持可能な工具保持具であって、
本体部と、プルスタッドを備え、
前記本体部は、本体部内周面と、本体部外周面と、本体部後端面とによって形成されているとともに、前記本体部内周面によって形成され、軸方向に沿って延在する本体部内側空間と、シャンク部と、前記シャンク部より後端側に設けられているプルスタッド装着部と、前記シャンク部より先端側に設けられているフランジ部とを有し、
前記本体部内周面は、前記フランジ部のフランジ部内周面を形成する第1本体部内周面部分と、前記プルスタッド装着部のプルスタッド装着部内周面を形成する第2本体部内周面部分と、前記シャンク部のシャンク部内周面を形成する第3本体部内周面部分とを有し、
前記本体部外周面は、前記フランジ部のフランジ部後端面を形成する第1本体部外周面部分と、前記プルスタッド装着部のプルスタッド装着部外周面および前記シャンク部のシャンク部外周面を形成する第3本体部外周面部分とを有し、
前記本体部内側空間は、前記第1本体部内周面部分および前記第3本体部内周面部分により形成される第1本体部内側空間部と、前記第2本体部内周面部分により形成される第2本体部内側空間部とを有し、
前記プルスタッドは、軸方向に沿って延在するプルスタッド内側空間を有しているとともに、前記第2本体部内側空間部に装着され、
前記第3本体部外周面部分は、軸方向に沿ってテーパー状に延在するように形成され、
前記本体部外周面は、前記第1本体部外周面部分と前記第3本体部外周面部分との境界部に、先端側に窪んでいる溝を形成する第4本体部外周面部分を有し、
前記溝の、軸方向に沿った深さは、前記第1本体部内周面部分と前記第3本体部内周面部分との境界部における、前記第3本体部内周面部分と前記第3本体部外周面部分との間の長さの1/2以上に設定されていることを特徴とする工具保持具。」
【符号の説明】
【0020】
50 工作機械主軸
50a 工作機械主軸内側空間
51 工作機械主軸内周面
51a、51b 工作機械主軸内周面部分
54 工作機械主軸先端面
60 引込み部材
100、200 工具保持具
110、210 本体部
110a、210a 本体部内側空間部
110b、210b 本体部内側空間部(中空部)
111、211 本体部内周面
111a~111g、211a~211e 本体部内周面部分
111h 本体部内周面部分111fの先端側端部
112、212 本体部外周面
112a~112d、212a~212c 本体部外周面部分
112e 本体部外周面部分112cと112dとの連接部(境界部)
113、213 本体部後端面
115 溝
120、220 シャンク部
130、230 フランジ部
131 溝
140、240 プルスタッド装着部
150、250 プルスタッド
150a、250a プルスタッド内側空間
151、251 プルスタッド内周面
152、252 プルスタッド外周面
152a、152b、252a、252b プルスタッド外周面部分
153、253 プルスタッド後端面
154、254 プルスタッド先端面
211f 本体部内周面部分211eの先端側端部
図1
図2
図3
図4
図5