(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】未分化細胞検出法
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6844 20180101AFI20220317BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20220317BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20220317BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20220317BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C12Q1/6844 Z ZNA
C12N5/0735
C12Q1/6876 Z
G01N33/50 P
G01N33/53 Y
(21)【出願番号】P 2021521444
(86)(22)【出願日】2020-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2020042209
(87)【国際公開番号】W WO2021095797
(87)【国際公開日】2021-05-20
【審査請求日】2021-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2019207002
(32)【優先日】2019-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】505155528
【氏名又は名称】公立大学法人横浜市立大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000120456
【氏名又は名称】栄研化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098121
【氏名又は名称】間山 世津子
(74)【代理人】
【識別番号】100107870
【氏名又は名称】野村 健一
(72)【発明者】
【氏名】谷口 英樹
(72)【発明者】
【氏名】関根 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】安居 良太
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】福井 悟
【審判官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】CHEN,J.et al.,PLoS ONE,2013年,vol.8,no.10,e75682,p.1-9
【文献】TSUNEYOSHI,N.et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications,2008年,vol.367,p.899-905
【文献】濱田侑希 ほか,第17回日本再生医療学会総会[online],2018年02月23日,p.644,[retrieved on 2019.05.22],Internet,<URL:http://www2.convention.co.jp/17jsrm/>
【文献】TANG,Chad et al.,NATURE BIOTECHNOLOGY,2011年08月14日,vol.29,no.9,p.829-834
【文献】RAMATHAL,C.et al.,Cell Reports,2014年,vol.7,p.1284-1297
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12Q
STN(CAplus,MEDLINE,BIOSIS,EMBASE)
JDreamIII(JSTPlus,JMEDPlus,JST7580)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分化細胞集団における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することを含む、未分化細胞を検出する方法。
【請求項2】
未分化細胞が、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性生殖細胞(EG細胞)であり、分化細胞集団が前記未分化細胞から分化した細胞の集団である請求項1記載の方法。
【請求項3】
分化細胞集団が、内胚葉、中胚葉又は外胚葉のいずれかの分化細胞の集団である請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
内胚葉の分化細胞が、肝内胚葉細胞である請求項3記載の方法。
【請求項5】
遺伝子の発現レベルをmRNAを含むRNAの量又はタンパク質の量として測定する請求項1~4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
遺伝子の発現レベルをqPCR、デジタルPCR、等温核酸増幅法、免疫染色、in situ hybridization、RNAシークエンス、マイクロアレイ、NanoString、抗体アレイ、FlowCytometry又は質量分析で測定する請求項1~7のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
未分化細胞株から分化誘導された内胚葉、中胚葉又は外胚葉のいずれかの分化細胞における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することによって、安全性の高い未分化細胞株を選別する方法。
【請求項8】
未分化細胞株が、胚性腫瘍細胞(EC細胞)株、胚性幹細胞(ES細胞)株、人工多能性幹細胞(iPS細胞)株又は胚性生殖細胞(EG細胞)株である請求項7記載の方法。
【請求項9】
未分化細胞株がiPS細胞株である請求項8記載の方法。
【請求項10】
分化細胞をモデル動物へ移植して形成された組織における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することを含む、未分化細胞を検出する方法。
【請求項11】
分化細胞集団中に存在する未分化細胞を検出するために、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子を未分化マーカーとして使用する方法。
【請求項12】
LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を検出可能な試薬及び/又はプロモーター活性を測定可能な試薬を含む、未分化細胞を検出するためのキット。
【請求項13】
遺伝子の発現を検出可能な試薬が、プライマー、プローブ又は抗体である請求項12記載のキット。
【請求項14】
遺伝子のプロモーター活性を測定可能な試薬が、プロモーター下流にレポータータンパク質を連結した遺伝子配列又はこの遺伝子配列を組み込んだベクターである請求項12記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未分化細胞検出法に関する。
【背景技術】
【0002】
再生医療に用いる分化細胞集団中における未分化iPS細胞の残存/混入を検出、評価することは癌化リスクの観点から極めて重要である。これまでに、未分化iPS細胞の残存/混入を検出、評価する手法は定量PCR(qPCR)によるiPS細胞特異的遺伝子の検出法(非特許文献1)、分化細胞を未分化細胞の培養維持条件で再培養することによる方法(非特許文献2)が報告されている。
【0003】
従来技術の中で、再培養法は、混入する未分化iPS細胞からコロニーを形成させるため正確性が高いという利点が有る一方、検出までに1週間以上かかることから、定量PCRを用いた方法が簡便・迅速に実施可能な点で優れている。
【0004】
しかしながら、これまでに報告のあるLIN28(非特許文献1)は発現の低い臓器/組織の分化細胞(網膜色素上皮細胞)が有る一方で、肝細胞などの分化細胞やiPS細胞から分化誘導した細胞では発現が見られることから、様々な分化細胞を対象にした未分化iPS細胞の残存/混入の検出には利用できないという課題が有った。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】PLoS One. 2014 27;9(10):e110496.
【文献】PLoS One. 2012;7(5):e37342.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、網膜色素上皮細胞以外の分化細胞を対象とした場合にも、未分化細胞の残存/混入を検出可能なマーカー遺伝子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、様々な分化細胞を対象とし、普遍的に未分化iPS細胞の残存/混入を検出可能なマーカー遺伝子の同定を行った。
【0008】
マーカー遺伝子に必要な要件として、
1. 未分化iPS細胞で特異的に発現している。
2. 未分化iPS細胞以外の他の細胞系譜での発現が極めて低いこと。
というだけでは不十分で、これに加え
3. 未分化iPS細胞で極めて高く発現していることが、分化細胞中にごく少数存在しても検出可能にするために必要であることを基準とした。
【0009】
そこで、この基準を満たす未分化iPS細胞に高発現し、分化した内胚葉細胞において発現が0.1%以下となる遺伝子としてLINC00678及びPRDM14を見出した。これら遺伝子を用いることで、臓器/組織の分化細胞に対して、未分化iPS細胞の残存/混入を0.025%まで検出することが可能となった。さらにこれらのマーカー遺伝子は中胚葉、および外胚葉へ分化した細胞においても発現が0.1%以下となることから、内胚葉、中胚葉、外胚葉のいずれの分化細胞においても、未分化iPS細胞の残存/混入を検出可能なマーカーであると考えられる。
【0010】
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)分化細胞集団における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することを含む、未分化細胞を検出する方法。
(2)未分化細胞が、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)、人工多能性幹細胞(iPS細胞)又は胚性生殖細胞(EG細胞)であり、分化細胞集団が前記未分化細胞から分化した細胞の集団である(1)記載の方法。
(3)分化細胞集団が、内胚葉、中胚葉又は外胚葉のいずれかの分化細胞の集団である(1)又は(2)に記載の方法。
(4)内胚葉の分化細胞が、肝内胚葉細胞である(3)記載の方法。
(5)遺伝子の発現レベルをmRNAを含むRNAの量又はタンパク質の量として測定する(1)~(4)のいずれかに記載の方法。
(6)遺伝子の発現レベルをqPCR、デジタルPCR、等温核酸増幅法、免疫染色、in situ hybridization、RNAシークエンス、マイクロアレイ、NanoString、抗体アレイ、FlowCytometry又は質量分析で測定する(1)~(5)のいずれかに記載の方法。
(7)未分化細胞株から分化誘導された内胚葉、中胚葉又は外胚葉のいずれかの分化細胞における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することによって、安全性の高い未分化細胞株を選別する方法。
(8)未分化細胞株が、胚性腫瘍細胞(EC細胞)株、胚性幹細胞(ES細胞)株、人工多能性幹細胞(iPS細胞又はiPSC)株又は胚性生殖細胞(EG細胞)株である(7)記載の方法。
(9)未分化細胞株がiPS細胞株である(8)記載の方法。
(10)分化細胞をモデル動物へ移植して形成された組織における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することを含む、未分化細胞を検出する方法。
(11)分化細胞集団中に存在する未分化細胞を検出するために、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子を未分化マーカーとして使用する方法。
(12)LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を検出可能な試薬及び/又はプロモーター活性を測定可能な試薬を含む、未分化細胞を検出するためのキット。
(13)遺伝子の発現を検出可能な試薬が、プライマー、プローブ又は抗体である(12)記載のキット。
(14)遺伝子のプロモーター活性を測定可能な試薬が、プロモーター下流にレポータータンパク質を連結した遺伝子配列又はこの遺伝子配列を組み込んだベクターである(12)記載のキット。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、分化細胞集団中における未分化細胞の残存/混入を検出、評価することができ、再生医療に用いる分化細胞の癌化リスクを低減することができる。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2019‐207002の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】マウス発生段階の肝細胞のマイクロアレイデータでのLIN28A発現。成体(8w)に比べ、E13.5まで発現が高い。
【
図2】ヒトiPSCから肝細胞への分化誘導の各分化段階でのLIN28Aの発現。LIN28Aは胚体内胚葉(DE)、肝内胚葉(HE)においても発現が高い。
【
図3】マイクロアレイにより抽出した遺伝子に対するqPCR。qPCRにより発現を確認し、特に肝細胞での発現が低い遺伝子を抽出した。
【
図4】未分化iPSC混入実験によるマーカー遺伝子の検出感度の検討。肝内胚葉細胞に対して未分化iPSCを混ぜ、未分化iPSC非混入群と比較することで、検出感度をqPCRで検討した。*p<0.05。
【
図5】STEMdiff Trilineage Differentiation Kit(STEMCELL Technologies 社)を用いて三胚葉由来のそれぞれの細胞に分化誘導し、免疫染色およびqPCRにより分化誘導できていることを確認した。
【
図6】
図5で分化誘導した細胞におけるマーカー遺伝子の発現をqPCRにより検討した。
【
図7】
図5で分化誘導した細胞を、コロニー免疫染色法を用いて残存未分化細胞数を評価した。
【
図9】未分化iPSC混入実験によるマーカー遺伝子のRT-LAMP検出感度の検討。
【
図10】iPS細胞より分化誘導した血管内皮細胞(iPSC-EC)での未分化マーカーの発現と残存iPSCの評価。CD34, CDH5の発現により血管内皮細胞への分化を確認した。未分化検出マーカー遺伝子(ESRG, LINC00678, PRDM14)の発現をqPCRにより検討した。
【
図11】iPS細胞より分化誘導した間葉系細胞(iPSC-STM/MC)での未分化マーカーの発現と残存iPSCの評価。FOXF1, PDGFRBの発現により間葉系細胞への分化を確認した。未分化検出マーカー遺伝子(ESRG, LINC00678, PRDM14)の発現をqPCRにより検討した。
【
図12】iPS細胞より分化誘導した外胚葉細胞(神経堤細胞(neural crest cells: NCC))での未分化マーカーの発現と残存iPSCの評価。SOX1, PAX6の発現により神経堤細胞への分化を確認した。未分化検出マーカー遺伝子(ESRG, LINC00678, PRDM14)の発現をqPCRにより検討した。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明は、分化細胞集団における、LINC00678 (HUGO Gene Nomenclature Committee(HGNC) Official Full Name: long intergenic non-protein coding RNA 678; NCBI Reference Sequence: NR_102708.1など)、PRDM14 (HGNC Official Full Name: PR/SET domain 14; NCBI Reference Sequence: NM_024504.4など)よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することを含む、未分化細胞を検出する方法を提供する。
【0015】
検出の対象とする未分化細胞は、多能性を有する細胞であるとよく、例えば、未分化細胞は、胚性腫瘍細胞(EC細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)又は人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性生殖細胞(EG細胞)である。
【0016】
分化細胞集団を構成する細胞は、未分化細胞以外の細胞であればよく、多能性を有さないことが好ましく、例えば、検出の対象とする未分化細胞から分化した細胞である。
【0017】
分化細胞集団は、内胚葉、中胚葉及び外胚葉のいずれの分化細胞の集団であってもよい。
【0018】
内胚葉の分化細胞としては、肝内胚葉細胞などを例示することができるが、これに限定されるわけではない。
【0019】
後述の実施例では、iPS細胞から分化誘導した肝内胚葉細胞(分化細胞)の集団中に混入させたiPS細胞(未分化細胞)を検出した。この肝内胚葉細胞は、iPS細胞より肝細胞への分化誘導処理を行ってから10日目のiPSC‐HE(Hepatic Endoderm)(Nature 499:481-484 (2013); 特許第6124348号「組織及び臓器の作製方法」)と呼ばれる肝前駆細胞である。qPCRによる測定によれば、LINC00678及びPRDM14は、肝内胚葉細胞集団中のiPS細胞の検出に有効なマーカー遺伝子であると思われる。
【0020】
中胚葉の分化細胞としては、横中隔間充織細胞、間葉系細胞、血管内皮細胞などを例示することができるが、これらに限定されるわけではない。
【0021】
後述の実施例では、iPS細胞から分化誘導した間葉系細胞(分化細胞)の集団中に混入させたiPS細胞(未分化細胞)を検出した。この間葉系細胞は、iPS細胞より間葉系細胞への分化誘導処理を行ったiPSC-STM/MC(iPS細胞由来横中隔間充織細胞/iPS細胞由来間葉系細胞(septum transversum mesenchyme /mesenchymal cells))(Cell Rep. 21:2661-2670.(2017))と呼ばれる間葉系幹/前駆細胞(中胚葉由来の細胞)であり、CD166陽性であり血管内皮のマーカーであるCD31(PECAM1)を発現しない細胞である。qPCRによる測定によれば、LINC00678及びPRDM14は、間葉系細胞集団中のiPS細胞の検出に有効なマーカー遺伝子であると思われる。
【0022】
また、後述の実施例では、iPS細胞から分化誘導した血管内皮細胞(分化細胞)の集団中に混入させたiPS細胞(未分化細胞)を検出した。この血管内皮細胞は、iPS細胞より血管内皮細胞への分化誘導処理を行ったiPSC-EC(iPS細胞由来血管内皮細胞(endothelial cells))(Cell Rep. 21:2661-2670.(2017))と呼ばれる血管内皮前駆細胞(中胚葉由来の細胞)であり、血管内皮のマーカーであるCD31(PECAM1)、CD144のタンパクの発現が免疫染色法で確認でき、遺伝子発現解析ではPECAM1、CDH5、KDR、CD34などの血管内皮マーカーの発現が高く見られ、分化誘導前のiPS細胞と比較して10倍から100倍以上の発現が見られるものである。qPCRによる測定によれば、LINC00678及びPRDM14は、血管内皮細胞集団中のiPS細胞の検出に有効なマーカー遺伝子であると思われる。
【0023】
外胚葉の分化細胞としては、神経幹細胞、神経堤細胞、神経細胞などを例示することができるが、これに限定されるわけではない。
【0024】
後述の実施例では、iPS細胞から分化誘導した神経堤細胞(Menendez L. et al.,Proc Natl Acad Sci U S A. 108(48):19240-5. 2011)(外胚葉由来の細胞)の集団中に混入させたiPS細胞(未分化細胞)を検出した。qPCRによる測定によれば、LINC00678及びPRDM14は、神経堤細胞集団中のiPS細胞の検出に有効なマーカー遺伝子であると思われる。
【0025】
また、後述の実施例では、STEMdiff Trilineage Differentiation Kit(STEMCELL Technologies 社)を用いて三胚葉由来のそれぞれに分化誘導した細胞におけるマーカー遺伝子の発現もqPCRにより検出した。
【0026】
本発明において、分化細胞及び未分化細胞は、ヒトあるいはヒト以外のいかなる動物に由来するものであってもよい。
【0027】
遺伝子の発現レベルは、遺伝子から転写されたmRNAを含むRNAの量あるいはmRNAを含むRNAから翻訳されたタンパク質の量として測定することができる。具体的には、遺伝子の発現レベルは、qPCR、デジタルPCR、等温核酸増幅法(LAMP法など)、免疫染色、in situ hybridization、RNAシークエンス、マイクロアレイ、NanoString、抗体アレイ、FlowCytometry、質量分析などで測定することができる。なお、mRNAを含むRNAはタンパク質をコードしていないものであってよく、また核酸増幅の標的配列を含むRNAの部分分解産物などであってもよい。
【0028】
LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現が確認された場合、その分化細胞集団中には未分化細胞が存在すると判定することができる(未分化細胞の検出)。
【0029】
本明細書において、「検出」とは、存在が確認されることをいうが、「検出」には、非存在の確認も含まれる。
【0030】
本発明の方法により、0.1%以下の検出感度、例えば、0.025%, 0.01%, 場合によっては、0.005%, 0.0025%の検出感度で、分化細胞集団中の未分化細胞を検出しうる。検出感度は、後述の実施例に記載のスパイク試験により調べることができる。
【0031】
未分化細胞株から分化誘導された内胚葉、中胚葉又は外胚葉のいずれかの分化細胞における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することにより、安全性の高い未分化細胞株を選別することも可能となる。よって、本発明は、未分化細胞株から分化誘導された内胚葉、中胚葉又は外胚葉のいずれかの分化細胞における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することによって、分化誘導後に未分化細胞が残存しにくい、安全性の高い未分化細胞株を選別する方法を提供する。
【0032】
選別の対象とする未分化細胞株は、多能性を有する細胞株であるとよく、例えば、未分化細胞株は、胚性腫瘍細胞(EC細胞)株、胚性幹細胞(ES細胞)株、人工多能性幹細胞(iPS細胞)株又は胚性生殖細胞(EG細胞)株であり、iPS細胞株が好ましい。
【0033】
また、分化細胞をモデル動物へ移植して形成された組織における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定して、その組織における未分化細胞を検出してもよい。よって、本発明は、分化細胞をモデル動物へ移植して形成された組織における、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベル及び/又はプロモーター活性を測定することを含む、未分化細胞を検出する方法も提供する。組織は、分化細胞をモデル動物へ長期間(例えば、4~54週間、好ましくは、8~24週間)移植して形成されたものであるとよい。
【0034】
本発明により、LINC00678及びPRDM14は、分化細胞集団中に存在する未分化細胞を検出するためのマーカー遺伝子として使用できることが明らかとなった。よって、本発明は、分化細胞集団中に存在する未分化細胞を検出するために、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子を未分化マーカーとして使用する方法を提供する。
【0035】
また、本発明は、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現を検出可能な試薬及び/又はプロモーター活性を測定可能な試薬を含む、未分化細胞を検出するためのキットを提供する。
【0036】
遺伝子の発現を検出可能な試薬としては、プライマー、プローブ及び抗体などを挙げることができ、例えば、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の転写産物(mRNAを含むRNA)又はcDNAを特異的に増幅できるオリゴヌクレオチドプライマーのセット、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の転写産物(mRNAを含むRNA)又はcDNAに特異的にハイブリダイズするヌクレオチドプローブ、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の転写産物(mRNAを含むRNA)から翻訳されたタンパク(翻訳産物)に特異的に結合する抗体である。オリゴヌクレオチドプライマーのセットは、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の転写産物(mRNAを含むRNA)又はcDNAのヌクレオチド配列中の標的配列(通常、50~180bp程度)を増幅できるものであるとよく、標的配列の両末端と相補的な配列を有するように設計されるとよい。オリゴヌクレオチドプライマーの長さは、例えば、15~35ヌクレオチドであるとよく、18~27ヌクレオチドが好ましい。ヌクレオチドプローブは、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の転写産物(mRNAを含むRNA)又はcDNAにストリンジェントな条件下でハイブリダイズするものであるとよく、前記mRNAを含むRNA又はcDNAのヌクレオチド配列の一部又は全部又はそれに相補的な配列を有するように設計されるとよい。ストリンジェントな条件は適宜決定することができる。ヌクレオチドプローブの長さは、通常1000ヌクレオチド以下、好ましくは、100ヌクレオチド以下、より好ましくは50ヌクレオチド以下、さらにより好ましくは、5~30、もしくは14~30ヌクレオチドである。ヌクレオチドプローブは、一本鎖であっても、二本鎖であってもよい。抗体は、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれであってもよい。本明細書において、抗体とは、全長抗体の他、Fab、F(ab)’2、ScFv、Diabody、VH、VL、Sc(Fv)2、Bispecific sc(Fv)2、Minibody、ScFv-Fc monomer、ScFv-Fc dimerなどの低分子化されたものも含む概念である。プローブや抗体は、固相(例えば、基板、ビーズ、膜など)上に固定されていてもよい。
【0037】
本発明の試薬は標識されてもよい。例えば、プライマーは、蛍光物質や消光物質などにより標識されていてもよく、プローブ及び抗体は、放射性同位元素、酵素、発光物質、蛍光物質、ビオチンなどで標識されてもよい。また、ターゲット分子(本発明では、LINC00678及びPRDM14よりなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現産物であるタンパク)に特異的に結合する一次抗体の反応後、この一次抗体に結合する二次抗体を反応させて、ターゲット分子の検出を行う場合には、二次抗体を標識するとよい(一次抗体は標識しない)。
【0038】
遺伝子のプロモーター活性を測定可能な試薬としては、プロモーター下流にレポータータンパク質を連結した遺伝子配列又はこの遺伝子配列を組み込んだベクターなどを挙げることができる。レポータータンパク質としては、ルシフェラーゼ、GFPなどの蛍光タンパク質、CD抗原などの細胞膜に発現するタンパク質などを例示することができる。ベクターはプラスミドベクターが好ましい。
【0039】
本発明のキットは、さらに、プライマーで検出するための試薬(DNAポリメラーゼ、バッファー、マグネシウムイオン、dNTPs、プローブなど)、プローブで検出するための試薬(バッファー、抗体、基質など)、抗体で検出するための試薬(二次抗体、基質、バッファーなど)、遺伝子のプロモーター活性を測定するための試薬(バッファー、発光基質、抗体など)、器具(反応容器、ピペットなど)、キットの使用説明書、対照用の試料、測定結果を解析するための対照データなどを含んでもよい。
【実施例】
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。本発明の範囲は以下の実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
Materials and Methods
●iPSC
京都大学および東京大学から提供されたものを使用した(TkDA3-4,1231A3,1383D2,1383D6およびFf01)。
●未分化残存
iPSCから分化させた細胞中に残存している未分化細胞を定量するため、我々はTano et al.の方法を応用した。簡潔にまとめると、まず分化させた細胞をトリプシンを用いて剥がし、24-well plateにおいてROCK inhibitor入りStemFit中に1.6x10^5 cells/wellで播種後、毎日StemFitで培地交換しながら37℃で培養した。一週間後、免疫染色を行い、ポジティブなコロニーの数をカウントした。
●コロニーカウント
免疫染色したサンプルを顕微鏡で写真撮影し、撮影した写真について目視でコロニー数を数えた。未分化iPSCコロニー1コロニーを1つの未分化iPS細胞由来として残存未分化iPS細胞数とした。
●Hepatocyte分化
未分化iPS細胞をラミニンコートディッシュにROCK阻害剤(Y-27632)存在下で5~10x10^4 cells/cm2の密度で播種し、RPMI+B27+アクチビンA+Wnt3A存在下で6日間培養し、この細胞を胚体内胚葉細胞(DE)とした。さらにKO-DMEM+KSR+DMSO+2-Mercaptoethanol存在下で4日間培養し肝内胚葉細胞(HE)とした。
●免疫染色
未分化細胞を検出するため、多能性マーカーの一次抗体SOX2, TRA-1-60 (Cell Signaling Technologies)とそれに対応する二次抗体(Thermo Fisher Scientific)を用いて免疫染色を行った。4%パラホルムアルデヒドを15分間処理することで細胞を固定した。PBSで2回洗浄後、0.1% TritonX-100 in PBS (PBST)を加えて10分間処理することで細胞膜を透過させた。その後5% FBS in PBSTを用いてブロッキング処理した。1時間後ブロッキングバッファーを取り除き、適切に希釈した一次抗体溶液を添加して4℃でovernight処理した。その後PBSで3回洗浄し、希釈した二次抗体溶液を添加して遮光下室温で1時間静置した。最後にPBSで3回洗浄し、アパチ封入剤(和光純薬)を添加して観察に用いた。
●顕微鏡(キーエンスなど)
オールインワン蛍光顕微鏡 BZ-X710にて明視野、青色蛍光、緑色蛍光、赤色蛍光を対物レンズ4倍、10倍で1well全体を撮影した。
●qPCR
細胞よりPureLink RNA Mini Kit(Thermo FIsher)を用いてmRNAを含むRNA抽出を行い、High-Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Thermo Fisher)を用いて逆転写反応によりcDNAを合成し、下記のプライマーおよびUniversal Probe Library(Roche)を用いてqPCRを行った。PRDM14については、第1-2エクソンジャンクション間、第2-3エクソンジャンクション間、第4-5エクソンジャンクション間、第6-7エクソンジャンクション間の計4種類の領域において、それぞれプライマーを設計した。これは、多能性幹細胞から目的の分化細胞に分化誘導する過程において、細胞の分化段階によってmRNAを含むRNAの転写開始点が変化すること、スプライシングにより異なるエクソンジャンクション構造が生じうること、RNAの部分分解産物が生じ蓄積しうることなどを考慮し、プライマー設計位置によって未分化細胞の検出感度やその精度が変化しうると考えたためである。
LINC00678
Forward: catctcaccaattttaaatcaggac(配列番号1)
Reverse: ctcccgtcattctgctaacac(配列番号2)
Probe: #17
PRDM14 E1-2
Forward: gctcttggaggtggtgtcg(配列番号3)
Reverse: gccggaaaggttggaagtc(配列番号4)
Probe: #64
PRDM14 E2-3Forward: tgcaccatgcgatttcag(配列番号5)
Reverse: tgcatgaggcatagaccttc(配列番号6)
Probe: #79
PRDM14 E4-5
Forward: gacaattctgtgatgtgggag(配列番号7)
Reverse: tgacactgcacagcaactagg(配列番号8)
Probe: #68
PRDM14 E6-7
Forward: ggcttcggatccacattc(配列番号9)
Reverse: agtggactcgcatgtgtttg(配列番号10)
Probe: #11
●スパイク実験
分化誘導した細胞に対して、未分化維持培養しているiPS細胞を図に記載の比率で混入し、未分化残存試験、qPCR、qPCR反応後の増幅産物のゲル電気泳動等を実施した。
●統計
Student's t検定によりp値0.05以下を有意差有りとした。相関係数はピアソンの積相関係数に基づき算出した。
【0041】
Results
・肝臓ではLIN28は未分化iPSCの指標とならない。
LIN28(LIN28A)遺伝子はiPSCから網膜色素上皮細胞(RPE)を分化誘導した際の残存未分化iPSCの指標となることが報告されている(Kuroda T. et al., PLoS ONE 7(5):e37342.(2012))。マウス発生段階の肝臓でのLIN28Aの発現を見ると、成体(8w)と比べE13.5まで発現が高いことが明らかとなった(
図1)。内胚葉細胞であるiPS細胞由来の胚体内胚葉細胞(DE)および肝内胚葉細胞(HE)においても未分化iPS細胞と比べほとんど減少が見られないことが明らかとなった(
図2)。
・iPS細胞で特異的に高発現する遺伝子の抽出
iPS細胞由来肝細胞において利用可能な残存未分化iPSCの指標となるマーカー遺伝子の抽出を目的に、マウス発生段階のマイクロアレイ解析およびiPS細胞由来肝細胞の分化誘導過程のシングルセルRNAシークエンス解析、RNAシークエンスデータに基づく刺身プロットの解析を実施し、未分化iPS細胞で特異的かつ高発現しており、分化細胞において発現が低い遺伝子を30遺伝子以上抽出した。抽出した遺伝子についてqPCRによりiPS細胞で発現が高く、分化細胞で発現が低下する遺伝子としてLINC00678及びPRDM14を抽出した(
図3)。なお、たとえトランスクリプトーム解析で有望と思われた候補遺伝子であっても、qPCRを実施すると、大半の遺伝子はiPS細胞での発現が低い、分化細胞での発現が高いなどの問題があり、有用なマーカーではなかった。
・各マーカー遺伝子の検出限界の検討(未分化iPSCスパイク試験)
分化誘導したiPS細胞由来肝前駆細胞(HE)に対して、未分化維持培養しているiPS細胞を記載の比率で混入し、qPCRを実施した(
図4)。その結果、未分化iPS細胞の残存/混入を0.025%まで検出可能であった。
・STEMdiffTM Trilineage Differentiation Kitにより作製した分化細胞における未分化残存試験
さらに汎用的にiPS細胞由来の分化誘導細胞における残存未分化細胞のマーカーとなることを示すために、市販の分化誘導キット(Stem Cell Technologies社STEMdiff Trilineage Differentiation Kit)を用いて分化誘導した細胞を用いて検討した(
図5)。その結果、iPS細胞より分化誘導した内胚葉由来細胞では残存未分化細胞が観察されたが、マーカー遺伝子発現も残存数に相関して高かった。したがって、iPS細胞より分化誘導した内胚葉由来細胞、中胚葉由来細胞、外胚葉由来細胞のいずれの細胞系譜においても残存未分化細胞数とマーカー発現の相関が見られた(
図6、7)。
【0042】
Discussion
再生医療応用に資するiPS(ES)細胞由来分化細胞における未分化細胞の混入の検出および排除は、すべてのiPS(ES)細胞由来細胞加工製品の安全性の確保における重要な課題である。これまでに網膜色素上皮細胞(RPE)におけるLIN28Aの発現検証による迅速な未分化細胞の混入評価が報告されているが、肝臓においてはマウス発生過程においてLIN28Aが発現しており、実際にヒトiPS細胞から分化誘導した細胞においてもLIN28Aの発現が観察され、またこの発現が実際に分化細胞中に残存する未分化細胞の有無と相関しないことが明らかとなった。そこで、iPS細胞由来肝細胞における残存未分化細胞のマーカーとして、LINC00678及びPRDM14を抽出した。今回抽出した複数のマーカー遺伝子を用いた残存未分化iPS細胞の検出手法が、様々なiPS(ES)細胞由来細胞加工製品の安全性の確保のための簡便・迅速なツールとなると期待される。
【0043】
References:
・Kuroda T. et al., PLoS ONE 7(5):e37342.(2012)
・Tano et al., PLoS One. 2014 27;9(10):e110496.
【0044】
〔実施例2〕
本発明のマーカー遺伝子の発現レベルを測定する方法として、等温核酸増幅法の検討を行った。等温核酸増幅法としてLAMP法を用い、LINC00678遺伝子に由来するRNA構造を増幅及び検出するRT-LAMP法を設計した。設計したRT-LAMP法プライマーセット及びプローブの塩基配列は以下の通りであり、プローブは蛍光標識したものを用いた。RT-LAMPの反応組成は、
図8に示す。
F3: gacgggagtgtgagatcc(配列番号11)
B3: acatcttctcctgaatcctcag(配列番号12)
FIP: ttggaaatagttctcggttgctctccacatggcgaggcac(配列番号13)
BIP: tggtcaggtggagtaaaacataaggagacacctccatgctgtc(配列番号14)
LoopF: caagaagaaaacaggttcctgg(配列番号15)
LoopB: ggttcaaagcatgaaaaaaattgg(配列番号16)
Probe: ccttcactttgagccaggcaatggtcag(配列番号17)
実施例1の記載の、iPS細胞由来肝前駆細胞(HE)への未分化維持培養しているiPS細胞を段階的に混入した試料を用いて、RT-LAMPを実施した。その結果、RT-LAMPでも検出可能であり、同時に試験したqRT-PCRよりも高い感度を示した(
図9)。
【0045】
〔実施例3〕
本発明のマーカー遺伝子の発現制御に関わるプロモーター領域の制御下にレポータータンパク質遺伝子(ルシフェラーゼ遺伝子、GFP遺伝子などの蛍光タンパク質遺伝子、あるいはマウスCD4遺伝子など細胞表面に発現し抗体等を用いて特異的に発現検出可能な遺伝子など)を組み込むことにより、本発明のマーカー遺伝子の発現を直接検出しなくても残存する未分化細胞を検出することが可能となる。
【0046】
〔実施例4〕
複数のiPS細胞株について目的の細胞および、3胚葉分化誘導キットなどを用いて分化誘導した細胞について本発明のマーカー遺伝子の発現を評価し、マーカー遺伝子の発現が低くなるiPS細胞株を選別することによって安全性が高い未分化細胞株を選別することが可能となる。
【0047】
〔実施例5〕
分化細胞をモデル動物へ長期移植して生着している細胞を採取し、本発明のマーカー遺伝子の発現をqPCRや等温増幅法(LAMP法など)等により検出あるいは〔実施例3〕に記載の方法によって検出することにより、形成された組織における未分化細胞を検出する。
【0048】
〔実施例6〕
実施例1と同様の方法で、中胚葉由来の細胞として、iPS細胞より分化誘導した横中隔間充織細胞(iPSC-STM/MC)(Cell Rep. 21:2661-2670.(2017))および血管内皮細胞(iPSC-EC) (Cell Rep. 21:2661-2670.(2017))における未分化iPS細胞の残存試験及びqPCRを用いたマーカー遺伝子の発現を検討した。iPSC-STM/MCおよびiPSC-ECどちらにおいてもESRG、LINC00678及びPRDM14が未分化細胞が残存していない分化細胞において減少しており、残存未分化マーカーとして使用できると考えられた(
図10,11)。
また、外胚葉由来の細胞として、iPS細胞より分化誘導した神経堤細胞(NCC)(Menendez L. et al.,Proc Natl Acad Sci U S A. 108(48):19240-5. 2011)のqPCRによる測定でも、同様の結果が得られた(
図12)。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、再生医療に用いる分化細胞に残存/混入した未分化細胞の検出、評価に利用できる。
【配列表フリーテキスト】
【0050】
<配列番号1~16>
プライマーのDNA配列を示す。
<配列番号17>
プローブのDNA配列を示す。
【配列表】