(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】柱状部材搭載装置及び柱状部材搭載方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/32 20060101AFI20220317BHJP
H05K 13/02 20060101ALI20220317BHJP
H05K 3/34 20060101ALI20220317BHJP
H01L 21/60 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
H05K3/32 Z
H05K13/02 L
H05K3/34 501E
H01L21/92 604R
(21)【出願番号】P 2018091207
(22)【出願日】2018-05-10
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2017147208
(32)【優先日】2017-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592141488
【氏名又は名称】アスリートFA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】宮坂 研吾
(72)【発明者】
【氏名】山岸 昭隆
(72)【発明者】
【氏名】矢沢 一郎
(72)【発明者】
【氏名】千野 満
(72)【発明者】
【氏名】仙道 雅彦
【審査官】黒田 久美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-105021(JP,A)
【文献】特開2008-182117(JP,A)
【文献】特開2008-142775(JP,A)
【文献】特開2008-205056(JP,A)
【文献】特開2008-282872(JP,A)
【文献】特開2007-103817(JP,A)
【文献】特開2007-165667(JP,A)
【文献】特開2010-080783(JP,A)
【文献】特開2015-173156(JP,A)
【文献】特開2010-177381(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/32
H05K 13/02
H05K 3/34
H01L 21/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の所定位置に柱状部材を立てて搭載する柱状部材搭載装置であって、
前記基板の所定位置に対応する複数のマスク開口部を有し前記基板上に配置される柱状部材振込用マスクと、
前記柱状部材振込用マスクの上方に配置され、回転かつ移動しつつ前記柱状部材を前記開口部内に振り込む柱状部材配列用ブラシスキージと、
前記柱状部材配列用ブラシスキージの駆動時に、前記柱状部材振込用マスクに振動を与える加振装置と、
を有
し、
前記加振装置は、前記柱状部材配列用ブラシスキージの移動に連動し、前記柱状部材振込用マスクの上面に沿って移動可能である、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項2】
請求項1に記載の柱状部材搭載措置において、
前記加振装置は、前記柱状部材配列用ブラシスキージを挟むように複数配置される、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の柱状部材搭載装置において、
前記加振装置の振動周波数は、100Hz~40kHzとする、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項4】
請求項3に記載の柱状部材搭載装置において、
前記加振装置の振動周波数を10kHz~40kHzとする、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の柱状部材搭載装置において、
前記加振装置の振動の振幅を0.1μm~10μmとする、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項6】
請求項5に記載の柱状部材搭載装置において、
前記加振装置の振動の振幅を0.1μm~0.3μmとする、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の柱状部搭載装置において、
前記加振装置は超音波振動装置であって、前記加振装置は加振部を有し、前記柱状部材振込用マスクと前記加振部との距離を0~1mmの範囲で調整する加振部昇降機構部を有する、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の柱状部材搭載装置において、
前記加振装置は超音波振動装置であって加振部を有し、
前記加振部は、前記柱状部材振込用マスク側の端面を前記柱状部材振込用マスクに常時接触させつつ前記加振部の自重をキャンセルする弾性部材をさらに有している、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の柱状部材搭載装置において、
前記柱状部材配列用ブラシスキージは、導電性及び柔軟性を備えた細い撚糸集合体で構成され、前記柱状部材
振込用マスク表面を回転しながら移動す
る結束線状部材を有し、
前記結束線状部材は、前記柱状部材の振込動作の際に前記柱状部材振込用マスクに5g/cm
2~10g/cm
2の接触面圧で付勢されている、
ことを特徴とする柱状部材搭載装置。
【請求項10】
基板の所定位置に柱状部材を立てて搭載する柱状部材搭載方法であって、
前記基板の上面に半田ペースト印刷用マスクを配置し、前記基板上の所定位置に半田ペーストを印刷する工程と、
前記半田ペーストが印刷された前記基板の上方に柱状部材振込用マスクを配置した後、前記柱状部材振込用マスク上に前記柱状部材を供給し、前記柱状部材振込用マスクに
加振装置で振動を与えながら、柱状部材配列用ブラシスキージを回転かつ移動させて前記半田ペーストが印刷された前記基板の所定位置に前記柱状部材を配列する工程と、を含
み、
前記加振装置は、前記柱状部材配列用ブラシスキージの移動に連動し、前記柱状部材振込用マスクの上面に沿って移動可能である、
ことを特徴とする柱状部材搭載方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、柱状部材搭載装置及び柱状部材搭載方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板と回路基板とを電気的に接合する場合、半導体基板上に形成された複数の半田バンプを回路基板との間で溶融して接合する装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1では、半田バンプを接合材として半導体基板と回路基板とを接合する際、半田バンプが潰れて径方向に拡がり、隣接する半田バンプ間の距離が縮まってしまうことから、微細化が進む基板の実装に対応できない場合がある。そこで、半導体基板に銅(Cu)ピラーを形成し回路基板との接合材として半田層を形成して接合するものが特許文献2に開示されている。特許文献2に開示される銅ピラーは、半導体基板と回路基板とを接合する際に直径が変化しないことから微細化に適している。しかし、銅ピラーは、半導体基板に電界メッキなどによって柱状に形成されるため、形成に要する時間が多くかかり生産性が良好とは言えない。また、直近では、半導体基板上に形成される銅ピラーに替えて銅などの金属によって形成された柱状部材(導体ピン)を接合部材とするものがある。
【0003】
しかし、上記柱状部材(導体ピン)の長手方向の長さは、直径に対して長い(アスペクト比が大きい)ことから、半導体基板上に柱状部材を配列搭載するのは困難であった。特許文献3には、柱状部材を半導体基板に配列搭載する方法が開示されている。特許文献3に記載の柱状部材の搭載方法は、まず、治具パレット、ピン立て治具および挿入案内治具を重ねて配置し、柱状部材を挿入案内治具の上方から落下させ、ピン立て治具が治具パレットと挿入案内治具との間をスライドするように治具パレットを振動させてピン立て治具のピン穴に柱状部材を配置する。そして、治具パレット、ピン立て治具および挿入案内治具を重ねた状態で上下を逆にして、プリント配線板に柱状部材を立設させた状態で接合するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平5-243232号公報
【文献】特開2014-157906号公報
【文献】特開2002-314291号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献3に記載の柱状部材の搭載方法では、治具パレットに振動を与えることによって柱状部材をピン穴に落下させることから、振動によって柱状部材が重なり合ったり、挿入案内治具上の一部に偏ってしまったりすることがあり、柱状部材を基板の所定位置に過不足なく搭載させることは困難である。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能な柱状部材搭載装置及び柱状部材搭載方法を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[1]本発明の柱状部材搭載装置は、基板の所定位置に柱状部材を立てて搭載する柱状部材搭載装置であって、前記基板の所定位置に対応する複数のマスク開口部を有し前記基板上に配置される柱状部材振込用マスクと、前記柱状部材振込用マスクの上方に配置され、回転かつ移動しつつ前記柱状部材を前記マスク開口部内に振り込む柱状部材配列用ブラシスキージと、前記柱状部材配列用ブラシスキージの駆動時に、前記柱状部材振込用マスクに振動を与える加振装置と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の柱状部材搭載装置によれば、柱状部材配列用ブラシスキージによって柱状部材を柱状部材振込用マスクのマスク開口部に振り込む際に、柱状部材振込用マスクに振動を与えることによって、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能となる。
【0009】
[2]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置は、前記柱状部材配列用ブラシスキージの移動に連動し、前記柱状部材振込用マスクの上面に沿って移動可能であることが好ましい。
【0010】
このように、加振装置を柱状部材配列用ブラシスキージの移動に連動させれば、柱状部材配列用ブラシスキージの回転位置の近傍で柱状部材振込用マスクに振動を与えることが可能となり、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能となる。
【0011】
[3]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置は、前記柱状部材配列用ブラシスキージを挟むように複数配置されることが好ましい。
【0012】
柱状部材配列用ブラシスキージの近傍に複数の加振装置を配置すれば、柱状部材振込用マスクの柱状部材配列対象位置にほぼ同じように振動を与えることが可能となり、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を高効率で搭載することが可能となる。
【0013】
[4]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置の振動周波数は、100Hz~40kHzとすることが好ましい。
【0014】
加振装置の振動数は、柱状部材のサイズや形状によって調整されるが、100Hz~40kHzの範囲で適切に調整すれば、柱状部材振込用マスクに柱状部材の振込に適した振動を与えることができ、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能となる。
【0015】
[5]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置の振動周波数を10kHz~40kHzとすることが好ましい。
【0016】
前述したように、加振装置の振動周波数を100Hz~40kHzとしても柱状部材に振動を与えることで基板への振り込みは可能であるが、振動周波数を10kHz~40kHzにすれば、例えば、柱状部材の搭載歩留まりを80%以上にすることができ、さらに効率よく柱状部材を基板に振り込むことが可能となる。
【0017】
[6]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置の振動の振幅を0.1μm~10μmとすることが好ましい。
【0018】
加振装置の振動の振幅は、柱状部材のサイズや形状によって調整されるが、0.1μm~10μmの範囲で適切に調整すれば、柱状部材が跳ねたり、振動しなかったりすることがなく、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能となる。
【0019】
[7]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置の振動の振幅を0.1μm~0.3μmとすることが好ましい。
【0020】
前述したように、加振装置の振動の振幅を0.1μm~10μmにすれば柱状部材の基板への振り込みは可能である。しかし、振幅を大きくしていくと柱状部材の跳ね上がりが大きくなり、柱状部材振込用マスクに衝突することよって柱状部材振込用マスクや柱状部材に傷がつくことがある。そこで、振幅を0.1μm~0.3μmに抑えることによって柱状部材振込用マスクや柱状部材に損傷を与えることを抑制できる。
【0021】
[8]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置は超音波振動装置であって、前記加振装置は加振部を有し、前記柱状部材振込用マスクと前記加振部との距離を0~1mmの範囲で調整可能な加振部昇降機構部を有することが好ましい。
【0022】
加振装置を超音波振動装置にすれば、加振部が柱状部材振込用マスクに接触しても、接触しなくても柱状部材振込用マスクに振動を与えることが可能で、柱状部材振込用マスクと加振部との距離を、0~1mmの範囲に適切に調整すれば、柱状部材振込用マスクに適切な振動を与えることが可能となる。
【0023】
[9]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記加振装置は超音波振動装置であって加振部を有し、前記加振部は、前記柱状部材振込用マスク側の端面を前記柱状部材振込用マスクに常時接触させつつ前記加振部の自重をキャンセルする弾性部材をさらに有していることが好ましい。
【0024】
弾性部材は、加振部を上方に引き上げる力を発生するものであり、例えば、ばねなどである。弾性部材によって加振部の自重をキャンセルすることによって、加振部自身の振動に関わる負荷を減らして柱状部材振込用マスクを所定の周波数及び振幅で安定して振動させることが可能となる。
【0025】
[10]本発明の柱状部材搭載装置においては、前記柱状部材配列用ブラシスキージは、導電性及び柔軟性を備えた細い撚糸集合体で構成され、前記柱状部材振込用マスク表面を回転しながら移動する前記結束線状部材を有し、前記結束線状部材は前記柱状部材の振込動作の際に、前記柱状部材振込用マスクに5g/cm2~10g/cm2の接触面圧で付勢されていることが好ましい。
【0026】
このようにすれば、柱状部材振込用マスクが振動することによって、柱状部材が柱状部材振込用マスクと結束線状部材との間に入り込んでしまうことを抑制することが可能となる。稀に柱状部材が柱状部材振込用マスクと結束線状部材との間に入り込んでしまっても、結束線状部材の押しつけの接触面圧が5g/cm2~10g/cm2と極めて小さいため、柱状部材に傷、打痕などのダメージがなく良好な状態で振り込むことが可能となる。また、結束線状部材は適度な柔軟性を有し微小振動する柱状部材振込用マスクの表面に常に接触しているため、柱状部材が外部に漏れ出ることを抑制することも可能となっている。
【0027】
[11]本発明の柱状部材搭載方法は、基板の所定位置に柱状部材を立てて搭載する柱状部材搭載方法であって、前記基板の上面に半田ペースト印刷用マスクを配置し、前記基板上の所定位置に半田ペーストを印刷する工程と、前記半田ペーストが印刷された前記基板の上方に柱状部材振込用マスクを配置した後、前記柱状部材振込用マスク上に前記柱状部材を供給し、前記柱状部材振込用マスクに振動を与えながら、柱状部材配列用ブラシスキージを回転かつ移動させて前記半田ペーストが印刷された前記基板の所定位置に前記柱状部材を配列する工程と、を含むことを特徴とする。
【0028】
本発明の柱状部材搭載方法によれば、柱状部材配列用ブラシスキージによって柱状部材を柱状部材振込用マスクのマスク開口部に振り込む際に、柱状部材振込用マスクに振動を与えることによって、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】実施形態に係る柱状部材搭載装置1の概略構成を示す平面図である。
【
図2】柱状部材搭載装置1に使用する半田ペースト印刷装置2による半田ペースト35の印刷工程を示す説明図である。
【
図3】柱状部材搭載装置1に使用する柱状部材振込部25の概略構成を説明する図である。
【
図4】柱状部材搭載装置1に使用する柱状部材振込部25による柱状部材12の振込動作を表す説明図である。
【
図5】実施形態における複数の柱状部材12が配列、搭載された基板5の1例を示す斜視図である。
【
図6】実施形態における基板5がウエハであるときの1例を示す平面図である。
【
図7】実施形態に係る柱状部材搭載方法の主要工程を示す工程フロー説明図である。
【
図8】実施形態に係る柱状部材搭載方法の主要工程を示す説明図である。
【
図9】第2例に係る柱状部材振込装置3Aの概略構成を説明する図である。
【
図10】実験によって得られた加振周波数fと柱状部材12の搭載(振り込み)歩留まりの関係を示すグラフである。
【
図11】搭載歩留まりの評価結果の1例を説明する図である、
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態に係る柱状部材搭載装置1及び当該柱状部材搭載装置1を使用した柱状部材搭載方法について
図1~
図8を参照しながら説明する。
【0031】
[柱状部材搭載装置1の構成及び動作]
図1は、実施形態に係る柱状部材搭載装置1の概略構成を示す平面図である。柱状部材搭載装置1は、柱状部材12(
図3、
図4参照)を搭載すべき基板5をストックする基板ストッカ4と、基板ストッカ4からプレアライナ6に基板5を搬送し、さらに、プレアライナ6からステージ9に基板5を搬送する基板搬送ロボット7と、基板5に半田ペースト35(
図2参照)を印刷する半田ペースト印刷装置2と、半田ペースト35が印刷された基板5に柱状部材12を振り込む柱状部材振込装置3を有している。さらに、柱状部材搭載装置1は、柱状部材12の搭載状態を検査する検査装置26と、半田ペースト印刷用マスク15の裏面に付着した余分な半田ペースト35を除去するクリーニング装置20と、を有している。
【0032】
基板5は、電子部品を固定して配線するための板状またはフィルム状の部材であり、半導体集積回路をはじめとする電子部品を実装したもの、あるいは、シリコン半導体基板や化合物半導体基板などのウエハ、ガラス基板などを含む。半田ペースト35は、柱状部材12と基板5との接合を行うもので、柱状部材12の材質は銅又は銅系合金などである。半田ペースト35は、振り込まれた柱状部材12が移動したり倒れたりしないように粘着力が高い組成のものを選択する。
【0033】
基板ストッカ4は、不図示のロードポートとアンロードポート(対象基板がウエハの場合にはロードポートと呼ばれることがある)からなり、搬送ロボット7は、ロードポートから基板5を取り出してプレアライナ6に搬送する。基板5がウエハの場合には、プレアライナ6で基板5の中心位置と基板5の外周に形成されたノッチ方向の双方を補正した基板5をステージ9へ搬送し、その後、搬送ロボット7は待機位置に戻る。ステージ9に載置された基板5は、ステージ9に減圧吸着されるとともに、基板5を基板矯正装置8により押圧することにより反りが矯正される。ステージ9は、Y軸レール10上でY軸方向に位置調整され、基板5を載置した状態でX軸レール11上を移動して半田ペースト印刷装置2の所定位置に搬送される。なお、
図1の図示横方向をX軸、図示縦方向をY軸、高さ方向(厚み方向)をZ軸とする。
【0034】
ステージ9は、X軸レール11と、Y軸レール10と、Zテーブル(図示略)と、θテーブル(図示略)とによってX-Y平面及びZ方向に移動可能であり、半田ペースト印刷装置2と柱状部材振込装置3の下方へ基板5を搬送することができるようになっている。ステージ9は、X軸レール11上を基板矯正装置8と半田ペースト印刷装置2と柱状部材振込装置3との間を往復移動し基板5を各所定位置に搬送する。
【0035】
基板5を載置したステージ9を半田ペースト印刷装置2の下方へX軸レール11上を移動させた後、半田ペースト印刷用マスク15を使用して基板5に半田ペースト35を印刷する。なお、半田ペースト35が、予め他所又は他工程で基板5に印刷されている場合は、この印刷工程をスキップする。クリーニング装置20は、半田ペースト印刷用マスク15の裏面に付着した余分な半田ペースト35を、溶剤を含ませたシート又はロールを用いて除去する装置である。クリーニング装置20は、半田ペースト印刷用マスク15に付着した余分な半田ペースト35をエアガンで吹き飛ばしたり、真空吸引したりしてもよい。半田ペースト35の基板5への印刷については、
図2を参照して詳しく説明する。半田ペースト35が印刷された基板5は、ステージ9に載置された状態で、柱状部材振込装置3の下方へX軸レール11上を移動する。
【0036】
柱状部材振込装置3は、X軸駆動装置17、Y軸駆動装置18およびZ軸駆動装置19を備えており、柱状部材振込部25をX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動させることが可能になっている。なお、Y軸レール10、X軸レール11上には、Z軸およびθ軸(不図示)があり、Z軸およびθ軸の駆動によって半田ペースト印刷用マスク15のマスク開口部15a(
図2参照)、柱状部材振込用マスク21のマスク開口部34(
図3参照)と基板5のメタル電極16の位置を合わせて、基板5への半田ペースト印刷及び柱状部材12の搭載を行う。
【0037】
X軸駆動装置17には、柱状部材振込部25を挟んで両側に加振装置22,23が配置されている。加振装置22,23は、柱状部材振込部25の移動に連動して移動し、柱状部材振込用マスク21にZ方向の振動を与え、後述する柱状部材配列用ブラシスキージ28(
図3参照)と協働して柱状部材12を柱状部材振込用マスク21のマスク開口部34に振り込む。柱状部材振込部25の構成と振込動作については、
図3及び
図4を参照して説明する。
【0038】
柱状部材12が搭載された基板5は、半田ペースト印刷装置2及び基板矯正装置8を通過し、基板搬送ロボット7によって検査装置26に搬送され画像認識カメラ(不図示)によって柱状部材12の配列状態を検査し、基板ストッカ4に排出される。戻りの行程では、プレアライナ6は通過しない。
【0039】
[半田ペースト35の印刷]
図2は、半田ペースト印刷装置2による半田ペースト35の印刷工程を示す説明図である。
図2は、各部を拡大して表す模式図である。基板5には、柱状部材12を搭載すべき位置に凹部5aが穿設されており、凹部5aの底部にメタル電極16が形成されている。印刷用スキージ24は、半田ペースト印刷用マスク15の上面に沿って図示左方から右方に動くものとする。印刷用スキージ24は、半田ペースト印刷用マスク15の表面に傷を付けないようにするために柔軟性を有する樹脂製としている。半田ペースト印刷マスク15には、基板5の凹部5aの形成位置に対応してマスク開口部15aが設けられている。
【0040】
図2において、最も左側のマスク開口部15aの位置を位置(a)、中間のマスク開口部15aの位置を位置(b)、最も右側のマスク開口部15aの位置を位置(c)と表す。位置(a)は、印刷用スキージ24がマスク開口部15aを通過した後の半田ペースト35を表しており、半田ペースト35は、半田ペースト印刷用マスク15の表面から出ない。そして、基板5の凹部5a内においてメタル電極16に接触するように収まっている。位置(b)は、印刷用スキージ24が、マスク開口部15から基板5に半田ペースト35を印刷する直前を表している。位置(c)は、次の半田ペースト印刷用のマスク開口部15aを表している。スキージ動作終了後、印刷マスク15が版離れし半田ペースト35はマスク開口部15aから乖離して基板5の開口底部に転写され半田ペースト35の印刷が完了する。印刷完了後の半田ペースト35の状態を
図8(b)に示す。位置(c)においては、マスク開口部15aの内周面に、前回半田ペースト印刷の際の半田ペースト35の残渣が僅かであるが付着する。そこで、この余剰半田ペーストが基準より多くなった場合には、クリーニング装置20によってこの余剰半田ペーストをクリーニング除去する。
【0041】
[柱状部材振込部25の構成及び振込動作]
図3は、柱状部材振込装置3に使用する柱状部材振込部25の概略構成を説明する図である。柱状部材振込部25は、X軸駆動装置17に取り付けられた回転可能な柱状部材配列用ブラシスキージ28を有している。柱状部材配列用ブラシスキージ28は、スキージ回転駆動装置29に固定された取付け部30に植え込まれた結束線状部材31を有している。結束線状部材31は、柱状部材配列用ブラシスキージ28の回転軌跡の径方向に2重構造(2重の同心円)となっており、内側の結束線状部材32と外側の結束線状部材33とから構成されている。内側の結束線状部材32と外側の結束線状部材33は共に、取付け部30から柱状部材振込用マスク21に向かって末広がり形状を有するブラシである。なお、
図3では、結束線状部材31を簡略化して表している。
【0042】
内側の結束線状部材32は、主として柱状部材12を柱状部材振込用マスク21のマスク開口部34内に導入する機能を有し、外側の結束線状部材33は、主として柱状部材12を柱状部材配列用ブラシスキージ28の外側に逸脱させない、つまり、外側の結束線状部材33の外側に逸脱させない機能を有する。さらに、外側の結束線状部材33は、内側の結束線状部材32との間にある柱状部材12をマスク開口部34に導入しつつ、内側の結束線状部材32内に戻す機能を有する。たとえば、柱状部材配列用ブラシスキージ28を矢印方向に回転させて柱状部材12をマスク開口部34に導入するとすれば、柱状部材配列用ブラシスキージ28を矢印の逆方向に回転させて柱状部材12を内側の結束線状部材32内に戻すように機能させることが可能である。
【0043】
結束線状部材31は、導電性を有し柔軟性を備えた細い撚糸集合体であって、柱状部材振込用マスク21の表面を掃くように回転しつつX軸方向、Y軸方向に移動する間に、柱状部材12をマスク開口部34に導入する。したがって、柱状部材12に傷がつくようなことがない。
【0044】
また、結束線状部材31は、導電性を有しているので静電気による埃などの吸着がなく、クリーン度が高い実装を行うことができる。なお、
図3では図示を簡略化しているが、外側の結束線状部材33は、内側の結束線状部材32よりも密に配置されている。
【0045】
基板15を載置するステージ9には、厚み方向に貫通する吸引路40が設けられており、吸引路40は、ベース部41に設けられた真空吸引路42に連通し、基板5をステージ9に真空吸着する。
【0046】
柱状部材振込部25の両側には、加振装置22,23が配置されている。加振装置22,23は、各々加振部45を有しており、加振部45が柱状部材振込用マスク21に接触している。加振装置22,23は、加振部45と柱状部材振込用マスク21との距離を、0~1mmに調整する加振部昇降機構部46を有している。加振装置22,23は、超音波振動装置であって、柱状部材配列用ブラシスキージ28が柱状部材12の振込動作を行う間は、柱状部材振込用マスク21に振動を与える。加振装置22,23が超音波振動装置であれば、加振部45が柱状部材振込用マスク21と1mm未満の距離を有していても柱状部材振込用マスク21に振動を与えることが可能である。なお、加振装置22,23(加振部45)の振動周波数を100Hz~40kHzとし、振動の振幅を0.1μm~10μmとすることが好ましい。このような振動条件を適切に選択することで、柱状部材配列用ブラシスキージ28と協働し、柱状部材12を基板5の所定位置に過不足なく配列搭載することが可能となる。なお、加振装置としては超音波振動装置の他に、モーターの回転を振動に変換する機構、エアーシリンダーの連続動作を用いた機構、磁歪振動子、或いはボイスコイルモーターなどを使用することが可能である。
【0047】
加振装置22,23は、X駆動装置17に取付けられており、Y軸駆動装置18によって柱状部材配列用ブラシスキージ28の移動に連動してY軸方向に移動可能であり、加振装置22と加振装置23の距離は一定である。なお、加振装置22,23をX軸方向に移動可能にし、各々が同期してX軸方向に移動可能にしてもよく、各々独立してX軸方向に移動可能にし、各々柱状部材配列用ブラシスキージ28との距離を一定に保持するようにしてもよい。但し、加振装置22,23の移動範囲は、柱状部材12が基板5に搭載される範囲外とする。柱状部材12の振込動作について
図4を参照してさらに詳しく説明する。
【0048】
図4は、柱状部材振込部25による柱状部材12の振込動作を表す説明図である。なお、
図4は、柱状部材振込部25の一部を簡略化して表している。ステージ9上に載置された基板5には、複数のメタル電極16が形成されており、メタル電極16の上面には半田ペースト35が印刷塗布されている。基板5の上方には、柱状部材振込用マスク21が配設される。柱状部材振込用マスク21の上面には、多数の柱状部材12が柱状部材通路27からランダムに供給される。柱状部材12は、柱状部材計量装置(不図示)で計量された一定量(又は一定数)が柱状部材配列マスク21上に落下供給される。柱状部材配列用ブラシスキージ28は、柱状部材振込用マスク21の上面に沿って回転しながら渦巻き状に移動し、内側の結束線状部材32および外側の結束線状部材33によって柱状部材配列マスク21の表面上を掃くように移動し柱状部材12を柱状部材振込用マスク21に設けられたマスク開口部34内に振り込む。基板5には、所定位置に半田ペースト35が塗布されているので、柱状部材12は、半田ペースト35の粘性を利用して振り込まれたときの位置及び姿勢が維持される。
【0049】
内側の結束線状部材32と外側の結束線状部材33は、柱状部材12がマスク開口部34内に振り込まれた後、半田ペースト35によって柱状部材12の位置、姿勢が保持できるように柱状部材12を軽く下方に押すようにしてもよい。そのようにするために、柱状部材配列マスク21の厚みを柱状部材12の長手方向の長さ(以下、「全長」と呼ぶ)に対して適切な寸法にすることが好ましい。また、半田ペースト35としては、柱状部材12の基板5への搭載後、接合硬化するリフロー工程までその姿勢を維持できる程度の粘性を有するものを選択することが好ましい。
【0050】
柱状部材12が円柱の場合、柱状部材振込用マスク21に設けられたマスク開口部34の大きさは、柱状部材12の供給側の誘導口部36が柱状部材12の最大径より大きく、柱状部材12の全長より小さい。また、マスク開口部34の基板5側の直径は、半田ペースト35の塗布範囲内で柱状部材12の位置を規定できる大きさの位置規定孔部37となっている。そして、誘導口部36と位置規定孔部37は、テーパ孔で連続している。マスク開口部34をこのような形状にすれば、柱状部材振込用マスク21を振動させることの効果も含め、柱状部材12をマスク開口部34にスムーズに落とし込むことができ、半田ペースト35の塗布範囲の所定位置に正確に配列、搭載することが可能となる。なお、マスク開口部34の形状は、柱状部材12の形状に合わせて設定される。
【0051】
図5は、複数の柱状部材12が配列、搭載された基板5の1例を示す斜視図である。基板5には、柱状部材12が半田ペースト35上、つまりメタル電極16上の所定位置に配列されている。柱状部材12は、半田ペースト35の粘性によって姿勢が維持されている。その後、検査装置26(
図1参照)によって柱状部材12の配列状態を検査し、基板ストッカ4に排出される。柱状部材12が搭載された半導体基板5は、たとえばリフロー装置に搬送され基板5と柱状部材12とが接合固定される。
【0052】
図6は、基板5がウエハであるときの1例を示す平面図であり、
図6(a)はウエハ5の平面図、
図6(b)は、
図6(a)に示す点線Aで囲まれた電極形成領域(半導体集積回路の形成領域)51の一部を拡大して示す図である。半導体集積回路52は、メタル電極16の群の間に設けられたスクライブライン53で4辺を囲まれ、スクライブライン53で切断することにより、個別の半導体集積回路チップとなる。この切断は、柱状部材12を搭載した基板(ウエハ)5をリフロー装置でリフローした後や、実装工程の最後に行なわれる。
【0053】
電極16は再配線された電極である。再配線の電極16のピッチは、大略50μm~400μmである。
図6は、基板(ウエハ)5に形成された電極16と、電極16が形成されている電極形成領域51の配置とを説明するためのものであり、電極の大きさ、分布や電極形成領域81の形状は、実物とは異なり、さらに相似していない。
【0054】
基板(ウエハ)5のサイズとしては、直径が300mmや200mmなどである。点線で囲われた多角形の電極の形成領域51に形成された電極16の配置を電極パターンという。柱状部材振込用マスク21に形成されているマスク開口部34のパターンは、基板(ウエハ)5に形成された電極パターンに類似したパターンである。
【0055】
[柱状部材搭載方法]
続いて、柱状部材搭載方法について
図7及び
図8を参照して説明する。
【0056】
図7は、柱状部材搭載方法の主要工程を示す工程フロー説明図であり、
図8は、主要工程を示す説明図である。まず、基板ストッカ4から基板搬送ロボット7によってステージ9上に基板5をセットする(ステップS10)。続いて、基板矯正装置8により基板5の反りを矯正した後、基板5を半田ペースト印刷装置2に搬送する。
図8(a)は、半田ペースト印刷装置2に搬送されたときの基板5を表している。基板5に設けられた凹部5aの底部にはメタル電極16が形成されている。
【0057】
続いて、半田ペースト印刷用マスク15をセットし、半田ペースト印刷装置2によって基板5に半田ペースト35を印刷する(ステップS20)。
図8(b)は、基板5に半田ペースト35を印刷した後の状態を表している。半田ペースト35は、表面張力によってメタル電極16上に広がり、凹部5a内に収まる。続いて、基板5を柱状部材振込装置3に搬送し、柱状部材振込用マスク21をセットし、所定量の柱状部材12を柱状部材振込用マスク21上に供給し、加振装置22,23によって柱状部材振込用マスク21に振動を与えつつ、柱状部材配列用ブラシスキージ28を駆動して柱状部材振込用マスク21のマスク開口部34内に柱状部材12を導入し基板5のメタル電極16上に配列する(ステップS30)。
【0058】
図8(c)は、柱状部材12を基板5に配列した状態を表している。半田ペースト35は、凹部5a内において柱状部材12の底面及び側面に回り込んで粘着力で柱状部材12を支持する。柱状部材配列後、基板5を検査装置26に搬送し、柱状部材12の配列状態を検査する(ステップS40)。柱状部材12の配列に過不足がない場合(GO)には、柱状部材搭載装置1から除材し、リフロー工程に移行し、柱状部材12を基板5に固着する(ステップS50)。その後、柱状部材12を搭載した基板5を洗浄する(ステップS60)。このような工程を経て柱状部材12が搭載された基板5が完成する。
【0059】
柱状部材12の配列状態の検査(ステップS40)によって、柱状部材12に過不足が認められた場合(NG)には、リペア作業を行い(ステップ45)、リフロー工程(ステップ50)に移行する。柱状部材12が不足しているときには柱状部材12を基板5に追加し、柱状部材12が余剰のときには余剰柱状部材を除去する。なお、検査工程(ステップS40)で、柱状部材搭載が所定の歩留まり以上の基板5は、そのままリフロー工程(ステップ50)に送り、所定の歩留まり以下の基板5は、その過不足位置を記憶しておき、その後、別のリペア機で修正した後、通常の搬送ルートに合流してリフロー工程(ステップS50)に移行するようにすることが可能である。又、所定の歩留まり以下の基板5が連続した場合には自動的に稼働を停止し、オペレータコール等を発信することが可能である。なお、検査工程(ステップ40)において、NGとなった場合に、基板5を柱状部材振込装置3まで戻し、再度配列工程(ステップS30)を行うようにしてもよい。また、柱状部材搭載装置1にリペア装置、リフロー装置並びに洗浄装置を連結するようにしてもよい。
【0060】
以上説明した柱状部材搭載装置1は、基板5の所定位置に柱状部材12を立てて搭載する柱状部材搭載装置であって、基板5の所定位置に対応する複数のマスク開口部34を有し基板5上に配置される柱状部材振込用マスク21と、柱状部材振込用マスク21の上方に配置され、回転かつ移動しつつ柱状部材12をマスク開口部34内に振り込む柱状部材配列用ブラシスキージ28と、柱状部材配列用ブラシスキージ28の駆動時に、柱状部材振込用マスク21に振動を与える加振装置22,23と、を有している。
【0061】
上記柱状部材搭載装置1によれば、柱状部材配列用ブラシスキージ28によって柱状部材12を柱状部材振込用マスク21のマスク開口部34内に振込む際に、加振装置22,23により柱状部材振込用マスク43に振動を与えることによって、基板5の所定位置に過不足なく柱状部材12を搭載することが可能となる。
【0062】
また、加振装置22,23は、柱状部材配列用ブラシスキージ82の移動に連動し、柱状部材振込用マスク21の上面に沿って移動可能である。このように、加振装置22,23を柱状部材配列用ブラシスキージ28の移動に連動させれば、柱状部材配列用ブラシスキージ28の回転位置の近傍で柱状部材振込用マスク21に振動を与えることが可能となり、基板5の所定位置に過不足なく柱状部材12を搭載することが可能となる。
【0063】
また、加振装置22,23は、柱状部材配列用ブラシスキージ28を挟むように配置されている。柱状部材配列用ブラシスキージ28の近傍に加振装置22,23を配置すれば、柱状部材振込用マスク21の柱状部材配列対象位置にほぼ同じように振動を与えることが可能となり、基板5の所定位置に過不足なく柱状部材12を高効率で搭載することが可能となる。なお、加振装置は、2台に限らず3台又は4台以上備えるようにしてもよく、1台でもよい。
【0064】
柱状部材搭載装置1に使用される加振装置22,23の振動周波数は、100Hz~40kHzとする。加振装置22,23の振動数は、柱状部材12のサイズや形状によって調整されるが、100Hz~40kHzの範囲で適切に調整すれば、柱状部材振込用マスク21に柱状部材12の振込みに適した振動を与えることができ、基板の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能となる。
【0065】
また、加振装置22,23の振動の振幅を0.1μm~10μmの範囲で適切に調整すれば、柱状部材12が跳ねたり、振動しなかったりすることがなく、基板5の所定位置に過不足なく柱状部材12を搭載することが可能となる。
【0066】
柱状部材搭載装置1に使用する加振装置22,23は超音波振動装置であって、加振装置22,23は加振部45を有し、柱状部材振込用マスク21と加振部45との距離を、0~1mmの範囲で調整可能な加振部昇降機構部46を有している。加振装置22,23を超音波振動装置にすれば、加振部45が柱状部材振込用マスク21に接触しても、接触しなくても柱状部材振込用マスクに振動を与えることが可能で、柱状部材振込用マスク21と加振部45との距離を0~1mmの範囲で適切に調整すれば、柱状部材振込用マスク21に適切な振動を与えることが可能となる。
【0067】
また、柱状部材搭載方法においては、基板5の上面に半田ペースト印刷用マスク15を配置し、基板5上の所定位置に半田ペースト35を印刷する工程(ステップS20)と、半田ペースト35が印刷された基板5の上方に柱状部材振込用マスク21を配置した後、柱状部材振込用マスク21上に柱状部材12を供給し、柱状部材振込用マスク21に振動を与えながら、柱状部材配列用ブラシスキージ28を回転かつ移動させて半田ペースト35が印刷された基板5の所定位置に柱状部材12を配列する工程(ステップS30)によって、基板5に柱状部材12を搭載する。
【0068】
このような柱状部材搭載方法によれば、柱状部材配列用ブラシスキージ28によって柱状部材12を柱状部材振込用マスク21のマスク開口部34に振り込む際に、柱状部材振込用マスク21に振動を与えることによって、基板5の所定位置に過不足なく柱状部材を搭載することが可能となる。
【0069】
なお、
図3で説明した柱状振込装置3の構成を第1例としたとき、柱状部材配列用ブラシスキージ28及び加振装置22,23の構成を替えることが可能であり、これを第2例として
図9を参照して説明する。
【0070】
図9は、第2例に係る柱状部材振込装置3Aの概略構成を説明する図である。ここでは、第1例(
図3参照)との相違個所を説明し、
図3と同じ部分、部材には
図3と同じ符号を付している。
図9に示すように、柱状部材配列用ブラシスキージ28は、スキージ回転駆動装置29に固定された取付け部30に植え込まれた結束線状部材33を有している。結束線状部材33は、柱状部材配列用ブラシスキージ28の回転軌跡に沿うように構成されている。
図9に示す結束線状部材33は、
図3に示す外側の結束線状部材33に相当し、内側の結束線状部材32を省略した構成となっている。なお、
図9では、結束線状部材33を簡略化(模式化)して表している。
【0071】
結束線状部材33は、導電性を有し柔軟性を備えた細い撚糸集合体であって、柱状部材振込用マスク21の表面を掃くように回転しつつX軸方向、Y軸方向に移動する間に、柱状部材12をマスク開口部34に導入する。この際、結束線状部材33は、柱状部材12の振込動作の際に柱状部材振込用マスク21に5g/cm2~10g/cm2の接触面圧で付勢される。
【0072】
このように、柱状部材12の振込動作の際に結束線状部材33を柱状部材振込用マスク21に5g/cm2~10g/cm2の接触面圧で付勢すれば、柱状部材振込用マスク21の振動を妨げることがない。しかも、柱状部材12が柱状部材振込用マスク21と結束線状部材33との間に入り込んでしまうこと防ぐことが可能となり、柱状部材21や柱状部材振込用マスク21に傷が付いたり、変形したりすることを抑制できる。稀に柱状部材12が柱状部材振込用マスク12と結束線状部材33との間に入り込んでしまっても、結束線状部材33の押しつけの接触面圧が5g/cm2~10g/cm2と極めて小さいため、柱状部材12に傷、打痕などのダメージがなく良好な状態で振り込むことが可能となる。また、結束線状部材33は適度な柔軟性を有し微小振動する柱状部材振込用マスク21の表面に常に接触しているため、柱状部材12が外部に漏れ出ることを抑制することも可能となっている。
【0073】
図9に示すように、柱状部材振込部25の両側には、加振装置22,23が配置されている。加振装置22,23は、各々加振部45を有しており、加振部45の柱状部材振込用マスク21側の端面45aが柱状部材振込用マスク21に接触して柱状部材振込用マスク21を振動させる。加振部45は、弾性部材の1例であるコイルばね55を有している。
加振部45が柱状部材振込用マスク21に当たる力は、加振部45の自重と加振部昇降機構部46の押え力とである。コイルばね55は、加振部45の端面45aを柱状部材振込用マスク21に常時接触させつつ、振動に同期して加振部45の自重をキャンセルする方向の力が働く。
【0074】
柱状部材12の振込動作の際に、加振部45を柱状部材振込用マスク21に常時接触させつつコイルばね55で加振部の自重をキャンセルすることによって、加振部自身の振動に関わる負荷を減らして柱状部材振込用マスクを所定の周波数及び振幅で安定して振動させることが可能となる。
【0075】
[実験例]
続いて、柱状部材12の搭載(振り込み)には、加振装置22,23(すなわち、柱状部材振込用マスク21)の適切な振動周波数f及び振幅Z(片振幅Z
0)があることを実験によって明確にした。このことについて
図10、
図11を参照して説明する。なお、以下の説明する実験例は、直径が200mmのウエハ5、直径が150μmで長さが200μmのCu製の柱状部材12を搭載したときの実験結果を示している。
【0076】
柱状部材12が振り込みできるように振動するためには、重力加速度G以上の加速度を柱状部材12に加える必要がある。つまり、柱状部材振込用マスク21が上昇から下降に転じる際に、柱状部材振込用マスク21には、Z0(2πf)2の加速度が加わる。この値が重力加速度G(9.8m/sec2)を超えると柱状部材12は柱状部材振込用マスク21から離れる。つまり、柱状部材振込用マスク21が上昇から下降に転ずるとき、或いは下降から上昇に転ずるときに柱状部材12は跳ね上がる。
【0077】
すなわち、Z0(2πf)2>Gを満たすと、柱状部材12は単独で振動し、マスク開口部34内に振り込まれやすくなる。ここで、Z0は振幅(片側振幅)、fは加振周波数である。従って、柱状部材振込用マスク21に加えられる加速度は、振幅Z0と加振周波数fとで律せられ、振幅Z0が大きいと低い加振周波数fで振動し、振幅Z0が小さいと高い加振周波数fで振動することになる。柱状部材12の振動のしやすさは、柱状部材12の質量には影響されない。
【0078】
図10は、実験によって得られた加振周波数fと柱状部材12の搭載(振り込み)歩留まりの関係を示すグラフである。横軸に加振周波数(kHz)、縦軸に搭載歩留まり(%)を表している。実験は、振幅Z
0を0.15μm~0.3μmとし、加振周波数fを0.01kHz,0.1kHz,1kHz,10kHz,20kHz、40kHzの各加振周波数ごとに搭載歩留まりを測定した。各加振周波数における振動印加時間は一定とした。前述した加速度の計算式において、加振周波数fは二乗で影響することから加振周波数fに対する搭載歩留まりを測定した。なお、搭載歩留まりの考え方は、
図11を参照して説明する。
【0079】
図10に示すように、加振周波数fが1kHz以下では、搭載歩留まりは10%~20%であるが、0.1kHzを超えて急激に搭載歩留まりが上昇していき、10kHzでは80%、20kHzでは85%、40kHzでは90%であった。40kHz以上にすれば、さらに搭載歩留まりは向上することが予想できるが、加振部45のサイズ、発熱等を考慮して40kHz程度にすることが好ましい。なお、
図10において、加振周波数fが10kHz以下では、搭載部歩留まりが低いことを表しているが、加振時間を長くすれば搭載歩留まりが上昇することが確認されている。
【0080】
振幅Z0は、0.1μm~10μmの範囲で柱状部材12の振り込みが可能である。振幅Z0を大きくすると柱状部材12の跳ね上がり量が大きくなって振込しやすくなる。しかし、加振装置22,23の出力能力、剛性などの制約がある(大型化する)。又、柱状部材12の跳ね上がり量が大きくなりすぎると柱状部材振込用マスク21や柱状部材12に傷をつけたり、変形させたりする恐れがあるため、実験結果から推定して0.1μm~0.3μmとすることが好ましい。
【0081】
図11は、搭載歩留まりについて評価結果の1例を説明する図である、
図11に示すように、ウエハ5は半導体集積回路(半導体チップ)52の集合体であって、
図11に示す例では、半導体チップ52の数は89個あり、そのうち搭載不良の半導体チップ52aの数は10であった。搭載歩留まりは、10/89=88.8(%)となる。なお、
図11において、不良の半導体チップ52aの枠内に記載する数字は、1個の半導体チップ52aにおける搭載不良数(柱状部材12の過不足数)を表している。実験例では、1チップ内に搭載する柱状部材12の数は400個であった。従って、上記の搭載歩留まりは、いわゆるチップ歩留まりを表している。搭載不良の半導体チップ52aは、柱状部材振込装置3又は3Aにおいて過不足の修正を行うか、リペア装置(不図示)によって過不足を修正する。
【0082】
以上説明したように、柱状部材搭載装置1においては、加振装置22,23の振動周波数(加振周波数)fを10kHz~40kHzとすることによって、柱状部材12の搭載歩留まりを80%以上にすることができ、効率よく柱状部材を基板に振り込むことが可能となる。
【0083】
又、柱状部材搭載装置1においては、加振装置22,23の振動の振幅Z0を0.1μm~0.3μmとすることによって、効率よく柱状部材12を基板(ウエハ)5に振り込むことが可能となる。又、振幅を0.1μm~0.3μmにすることによって柱状部材振込用マスク21や柱状部材12に傷がつくなどの損傷の発生を抑制できる。
【0084】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、前述した実施形態では、加振装置22,23によって柱状部材振込用マスク21に振動を与えているが、柱状部材配列用ブラシスキージ28を加振装置の一部として、柱状部材配列用ブラシスキージ28を振動させて柱状部材12を振り込むことが可能である。また、柱状部材配列用ブラシスキージ28の振動で柱状部材振込用マスク21を振動させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…柱状部材搭載装置、2…半田ペースト印刷装置、3,3A…柱状部材振込装置、5…基板(ウエハ)、9…ステージ、12…柱状部材、15…半田ペースト印刷用マスク、15a…マスク開口部(半田ペースト印刷用マスク)、16…メタル電極、21…柱状部材振込用マスク、22,23…加振装置、25…柱状部材振込部、28…柱状部材配列用ブラシスキージ、31,32,33…結束線状部材、34…マスク開口部(柱状部材振込用マスク)、35…半田ペースト、45…加振部、45a…(加振部の)端面、46…加振部昇降機構部、51…ばね