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特許7041954調光式ロールスクリーン及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】調光式ロールスクリーン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/42 20060101AFI20220317BHJP
   E06B 9/24 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
E06B9/42 B
E06B9/24 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018092632
(22)【出願日】2018-05-11
(65)【公開番号】P2019196683
(43)【公開日】2019-11-14
【審査請求日】2021-02-05
(73)【特許権者】
【識別番号】510248132
【氏名又は名称】株式会社 WIS
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】山根 雄二
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0018378(KR,A)
【文献】米国特許第03384519(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1492050(KR,B1)
【文献】特開2005-248672(JP,A)
【文献】特表2010-523838(JP,A)
【文献】国際公開第2012/017509(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/218890(WO,A1)
【文献】特表2000-511605(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0080278(US,A1)
【文献】中国実用新案第203655109(CN,U)
【文献】韓国公開実用新案第20-2011-0008098(KR,U)
【文献】国際公開第2010/107186(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E06B 9/24
E06B 9/264
E06B 9/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
採光用開口部を覆うためのスクリーンと、
スクリーンを採光用開口部の上側に巻装するための巻装ローラと
を備え、
スクリーンが、
スクリーンの前面を形成する前側透光膜材と、
スクリーンの後面を形成する後側透光膜材と、
前側透光膜材と後側透光膜材との隙間内で上下方向に所定間隔を隔てた状態で略平行に配された複数の遮光膜材と
で構成され、
それぞれの遮光膜材における前縁部が前側透光膜材に対して重合連結された前側連結部とされて、それぞれの遮光膜材における後縁部が後側透光膜材に対して重合連結された後側連結部とされ、
後側透光膜材に対する前側透光膜材の相対的な位置を変化させることにより、
それぞれの遮光膜材の前縁部が後縁部に対して下降して、それぞれの遮光膜材が立った状態になり、上下方向に隣り合う遮光膜材の隙間が最小になって、スクリーンの後側から前側に取り込まれる光量が最小になる遮光状態と、
それぞれの遮光膜材の前縁部が後縁部に対して上昇して、それぞれの遮光膜材が寝た状態になり、上下方向に隣り合う遮光膜材の隙間が広くなって、スクリーンの後側から前側に取り込まれる光量が増大する採光状態と
を切り替えることができるようにした調光式ロールスクリーンであって、
遮光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁が、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりも上側に位置するとともに、
遮光膜材における、前側透光膜材と後側透光膜材との間に位置する部分の前後幅Wが、採光状態における前側透光膜材と後側透光膜材との間隔Dよりも大きく設定されることにより、
採光状態における遮光膜材に、当該遮光膜材の前縁側で上側に凸となるように湾曲する上側湾曲部と、当該遮光膜材の後縁側で下側に凸となるように湾曲する下側湾曲部とが形成されるようにし、
採光状態のスクリーンを前方から見たときに、それぞれの遮光膜材における後側連結部が、それぞれの遮光膜材の上側湾曲部の後側に隠れるようにした
ことを特徴とする調光式ロールスクリーン。
【請求項2】
それぞれの遮光膜材における後側連結部の上下幅が7mm以上とされ、
遮光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁が、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりも2mm以上高い位置となるようにした
請求項1記載の調光式ロールスクリーン。
【請求項3】
請求項1又は2記載の調光式ロールスクリーンを製造する調光式ロールスクリーンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、取り込む光量を調節することができる調光式ロールスクリーンと、その製造方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
室内に取り込む光量を調節することができる調光式ロールスクリーンとしては、各種のものが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1の図1には、巻取りパイプ110(巻装ローラ)に巻装可能な前後二重のスクリーン120に、透過部122(透光部)と不透過部124(遮光部)とを交互に形成し、前側の透光部122と後側の透光部122とが前後に重なったときに採光状態となり、透光部122と遮光部124とが前後に重なったときに遮光状態となる調光式ロールスクリーンが提案されている。以下においては、特許文献1の調光式ロールスクリーンのように、スクリーン120が二層構造を為す調光式ロールスクリーンを、「二層タイプの調光式ロールスクリーン」と呼ぶことがある。
【0004】
また、特許文献2の図3には、スクリーンを、その表面(前面)を形成する表生地7(前側透光膜材)と、その裏面(後面)を形成する裏生地9(後側透光膜材)と、前側透光膜材7と後側透光膜材9との間に配された複数の中生地8(遮光膜材)とで構成した調光式ロールスクリーンが提案されている。この調光式ロールスクリーンは、同文献の図4に示されるように、それぞれの遮光膜材8が立った状態になり、スクリーンの後側から前側に取り込まれる光量が最小になる遮光状態と、同文献の図2に示されるように、それぞれの遮光膜材8が寝た状態になり、スクリーンの後側から前側に取り込まれる光量が増大する採光状態とを切り替えることができるものとなっている。以下においては、特許文献2の調光式ロールスクリーンのように、スクリーン120が三層構造を為す調光式ロールスクリーンを、「三層タイプの調光式ロールスクリーン」と呼ぶことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-003541号公報
【文献】特開2017-044054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1のような二層タイプの調光式ロールスクリーンでは、遮光状態において前後に重なる透光部122と遮光部124との寸法形状を揃える必要があった。このため、特許文献1のような二層タイプの調光式ロールスクリーンは、採光状態においても、スクリーン120における略半分の面積でしか採光を行うことができないという欠点を有していた。また、特許文献1のような二層タイプの調光式ロールスクリーンは、遮光状態においても、スクリーン120における前側の生地と後側の生地との間に前後方向の広い隙間が形成される構造となっていた。このため、特許文献1のような二層タイプの調光式ロールスクリーンは、遮光状態においても、上記の隙間を通じて光が室内側に漏れ出てしまい、室内を暗室状態にできないという欠点も有していた。
【0007】
これに対し、特許文献2のような三層タイプの調光式ロールスクリーンは、遮光膜材8の起立角度を変化させることにより調光を行うものであるため、採光状態においては、二層タイプの調光式ロールスクリーンよりも、広い範囲での採光が可能になるとの利点を有している。また、特許文献2のような三層タイプの調光式ロールスクリーンでは、遮光状態において、前側透光膜材7と後側透光膜材8との間の前後方向の隙間が狭まるため、採光状態においては、二層タイプの調光式ロールスクリーンよりも、室内を暗くできるという利点も有している。
【0008】
このように、三層タイプの調光式ロールスクリーンは、室内を明るくできることに加えて、室内を暗くすることもでき、二層タイプの調光式ロールスクリーンよりも、調光の幅が広いという利点を有している。しかし、三層タイプの調光式ロールスクリーンでも、遮光状態においては、上下方向に隣り合う遮光膜材8の隙間から僅かに光が漏れ出てしまい、室内側(前側)からスクリーンを見ると、上下方向に隣り合う遮光膜材8の境界部に明るい部分(明部)が筋状に形成されていた。近年は、客室のカーテン等を調光式ロールスクリーンで置き換えることを検討しているホテル等も増えてきているが、遮光状態において室内を暗室状態にできることを望むホテル等も多く、上記のように、遮光状態でも明部が筋状に形成される調光式ロールスクリーンの導入に至るホテル等は、限定的であった。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、遮光状態において上下方向に隣り合う遮光膜材の境界部に明部が筋状に形成されにくく、室内を暗室状態により近づけることができる三層タイプの調光式ロールスクリーンを提供するものである。また、この調光式ロールスクリーンの製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は、
採光用開口部を覆うためのスクリーンと、
スクリーンを採光用開口部の上側に巻装するための巻装ローラと
を備え、
スクリーンが、
スクリーンの前面(室内側を向く面。以下同じ。)を形成する前側透光膜材と、
スクリーンの後面(室外側を向く面。以下同じ。)を形成する後側透光膜材と、
前側透光膜材と後側透光膜材との隙間内で上下方向に所定間隔を隔てた状態で略平行に配された複数の遮光膜材と
で構成され、
それぞれの遮光膜材における前縁部が前側透光膜材に対して重合連結された前側連結部とされて、それぞれの遮光膜材における後縁部が後側透光膜材に対して重合連結された後側連結部とされ、
後側透光膜材に対する前側透光膜材の相対的な位置(上下位置又は前後位置)を変化させることにより、
それぞれの遮光膜材の前縁部が後縁部に対して下降して、それぞれの遮光膜材が立った状態になり、上下方向に隣り合う遮光膜材の隙間が最小(上下方向に隣り合う遮光膜材の間に隙間が存在しなくなる状態を含む。)になって、スクリーンの後側から前側に取り込まれる光量が最小になる遮光状態と、
それぞれの遮光膜材の前縁部が後縁部に対して上昇して、それぞれの遮光膜材が寝た状態になり、上下方向に隣り合う遮光膜材の隙間が広くなって、スクリーンの後側から前側に取り込まれる光量が増大する採光状態と
を切り替えることができるようにした調光式ロールスクリーンであって、
遮光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁が、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりも上側に位置するようにした
ことを特徴とする調光式ロールスクリーン
を提供することによって解決される。
【0011】
このように、遮光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁が、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりも上側に位置するようにすることにより、遮光状態において上下方向に隣り合う遮光膜材の隙間に光が入り込みにくくすることができる。換言すると、遮光状態においてスクリーンの前面側に漏れ出てくる光の量を抑えることができる。したがって、室内側(前側)からスクリーンを見たときに、上下方向に隣り合う遮光膜材の境界部に明部が筋状に形成されないようにし、室内を暗室状態により近づけることが可能になる。
【0012】
本発明の調光式ロールスクリーンにおいて、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上下幅をどの程度に設定するかは、特に限定されない。しかし、従来の三層タイプの調光式スクリーン(特許文献2の調光式ロールスクリーン)において、後側連結部の上下幅は、高々5mm程度であるところ、これを7mm以上とすることが好ましい。これにより、遮光状態において、スクリーンの室内側(前側)に光がさらに漏れ出てきにくくすることが可能になる。後側連結部の上下幅は、8mm以上とすることがより好ましく、9mm以上とすることがさらに好ましい。
【0013】
これに対し、後側連結部の上下幅の上限は、遮光膜材の上下方向の配置ピッチ等によっても異なり、特に限定されない。しかし、後側連結部の上下幅を大きくしすぎると、採光状態において、室内側に取り込まれる光量が低下するだけでなく、後側連結部が目立ちやすくなり、採光状態における調光式ロールスクリーンの外観が低下する虞もある。このため、後側連結部の上下幅は、通常、30mm以下とされる。後側連結部の上下幅は、25mm以下とすることが好ましく、20mm以下とすることがより好ましく、15mm以下とすることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の調光式ロールスクリーンにおいて、遮光状態で、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁を、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりもどの程度高くするかは、特に限定されない。しかし、遮光状態において室内側に光がより漏れ出にくくするためには、遮光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁が、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりも2mm以上高くなるようにすることが好ましく、3mm以上高くなるようにすることがよりこの好ましく、4mm以上高くなるようにすることがさらに好ましい。以下においては、遮光状態における、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁の、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁からの高さを、「遮光状態における後側連結部の突出高さ」と呼ぶことがある。
【0015】
遮光状態における後側連結部の突出高さの上限は、遮光膜材の上下方向の配置ピッチ等によっても異なり、特に限定されない。しかし、遮光状態における後側連結部の突出高さを大きくしすぎると、採光状態において、室内側に取り込まれる光量が低下するだけでなく、後側連結部が目立ちやすくなり、採光状態における調光式ロールスクリーンの外観が低下する虞もある。このため、遮光状態における後側連結部の突出高さは、20mm以下とすることが好ましい。遮光状態における後側連結部の突出高さは、15mm以下とすることがより好ましく、10mm以下とすることがさらに好ましい。
【0016】
ところで、本発明の調光式ロールスクリーンにおいては、上述したように、遮光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁が、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりも上側に位置するようにした(従来の三層タイプの調光式ロールスクリーンよりも、遮光膜材の後側連結部が高い位置まで延在するようにした)。このため、本発明の調光式ロールスクリーンでは、採光状態において、従来の三層タイプの調光式ロールスクリーンよりも、遮光膜材における後側連結部が、前方から見えやすくなる虞がある。後側連結部は、遮光膜材と後側透光膜材とが重合する部分であるため、他の部分よりも暗く見えるようになるところ、採光状態においてこの後側連結部が見えることがあると、調光式ロールスクリーンの見た目が悪くなってしまう。この採光状態における見た目の低下は、以下の構成を採用することで、解決することができる。
【0017】
すなわち、
遮光膜材における、前側透光膜材と後側透光膜材との間に位置する部分の前後幅W(遮光膜材を前後方向に真っすぐに伸ばしたときの前後幅。以下同じ。)を、採光状態における前側透光膜材と後側透光膜材との間隔Dよりも大きく設定することにより、
採光状態における遮光膜材に、当該遮光膜材の前縁側で上側に凸となるように湾曲する上側湾曲部と、当該遮光膜材の後縁側で下側に凸となるように湾曲する下側湾曲部とが形成されるようにし、
採光状態のスクリーンを前方から見たときに、それぞれの遮光膜材における後側連結部が、それぞれの遮光膜材の上側湾曲部の後側に隠れるようにする
ことが好ましい。
【0018】
これにより、採光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部を、それぞれの遮光膜材における上側湾曲部で自然な状態で隠すことができ、調光式ロールスクリーンの見た目の低下を抑えることが可能になる。
【0019】
本発明の調光式ロールスクリーンにおいて、スクリーンは、別個に形成された前側透光膜材と後側透光膜材と遮光膜材とを後から縫合や溶着等により連結したものであってもよい。しかし、本発明の調光式ロールスクリーンは、遮光状態において、それぞれの遮光膜材における後側連結部の上縁が、それぞれの遮光膜材の1つ上側に配される遮光膜材の前側連結部の上縁よりも上側に位置するようにするものであり、スクリーンを構成する各部材に比較的高い寸法精度が要求されるものとなっている。このため、別個に形成された前側透光膜材と後側透光膜材と遮光膜材とを後から連結する方法では、前側透光膜材や後側透光膜材に対する遮光膜材の位置決めに労力を要するようになる。
【0020】
したがって、本発明の調光式ロールスクリーンにおいては、そのスクリーンを、織機により、前側透光膜材と後側透光膜材と遮光膜材とを一体的に織り上げて形成することが好ましい。これにより、前側透光膜材や後側透光膜材に対して遮光膜材を高い精度で位置決め等することが可能になる。この場合、織り上げられたスクリーンは、その上縁や下縁が遮光膜材に対して高精度で平行になり、且つ、正確な長方形に裁断する必要がある。このような高精度の裁断は、織り上げられたスクリーンを、そのスクリーンにテンションを掛けた状態で台の上に乗せ、その上縁及び下縁並びにその両側の側縁を、スクリーンの向きを切り替えることなく、切断することで実現することができる。台の上面に設けた多数の吸気部から吸気を行い、スクリーンが台の上面に吸い付いた状態で裁断を行うようにすると、スクリーンをより高精度で裁断することが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
以上のように、本発明によって、遮光状態において上下方向に隣り合う遮光膜材の境界部に明部が筋状に形成されにくく、室内を暗室状態により近づけることができる三層タイプの調光式ロールスクリーンを提供することが可能になる。また、この調光式ロールスクリーンの製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の調光式ロールスクリーンを示した図であって、遮光膜材が寝て採光状態にあるときを、前方斜め右上から見た状態を示した斜視図である。
図2】本発明の調光式ロールスクリーンを示した図であって、遮光膜材が寝て採光状態にあるときを、側方から見た状態を示した側面図である。
図3】本発明の調光式ロールスクリーンを示した図であって、遮光膜材が立って遮光状態にあるときを、前方斜め右上から見た状態を示した斜視図である。
図4】本発明の調光式ロールスクリーンを示した図であって、遮光膜材が立って遮光状態にあるときを、側方から見た状態を示した側面図である。
図5】本発明の調光式ロールスクリーンの状態遷移を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の調光式ロールスクリーンの好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。言うまでもなく、以下で述べる構成は、飽くまで一実施例として述べるものであり、本発明の調光式ロールスクリーンの技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の調光式ロールスクリーンは、発明の趣旨を損なわない範囲で、以下で述べる構成から適宜変更を施すことが可能である。
【0024】
図1~4は、本発明の調光式ロールスクリーン10を示した図であって、図1,2は、遮光膜材11cが寝て採光状態にあるときを、図3,4は、遮光膜材11cが立って遮光状態にあるときを示している。このうち、図1,3は、調光式ロールスクリーン10を前方斜め右上から見た斜視図として描いており、図2,4は、調光式ロールスクリーン10を側方から見た側面図として描いている。ただし、図2,4においては、図視の便宜上、図1,3には示した回転操作手段13及び摩擦車14の図視を省略している。
【0025】
本発明の調光式ロールスクリーン10は、通常、窓等の採光用開口部の前側(室内側)に配される。本発明の調光式ロールスクリーン10は、図1に示すように、スクリーン11と、巻装ローラ12とを備えている。
【0026】
スクリーン11は、採光用開口部を覆うためのものとなっている。スクリーン11の下縁部には、ボトムレール15が取り付けられている。このボトムレール15によって、スクリーン11の下縁部の形態が保持されるとともに、スクリーン11に下向きの張力が加えられ、巻装ローラ12から垂下するスクリーン11が伸ばされるようになっている。
【0027】
巻装ローラ12は、スクリーン11を巻装するためのものとなっている。巻装ローラ12は、通常、ヘッドボックス(図視省略)の内側に収容された状態とされ、このヘッドボックスに設けられた取付ブラケット(図視省略)を介して、採光用開口部の上側(採光用開口部の上縁近傍)に取り付けられる。この巻装ローラ12がスクリーン11を巻き取ると、スクリーン11が上昇して採光用開口部がスクリーン11によって遮られなくなり、この巻装ローラ12がスクリーン11を巻き解くと、スクリーン11が下降して採光用開口部がスクリーン11によって覆われた状態となる。
【0028】
この巻装ローラ12には、巻装ローラ12を中心線L回りに順方向(図1の矢印Aの向き)及び逆方向(図1の矢印Aの向き)に回転操作するための回転操作手段13が設けられている。回転操作手段13は、巻装ローラ12を回転操作できるものであれば、その種類を特に限定されない。本実施態様の調光式ロールスクリーン10においては、紐やボールチェーン等の線状部材を環状に形成したもの(以下、「操作紐」と呼ぶことがある。)を回転操作手段13として用いている。
【0029】
巻装ローラ12の一端部には、摩擦車14を設けており、この摩擦車14には、上述した環状の操作紐13の上端側が巻き掛けられている。このため、環状の操作紐13における手前側(前側)に垂下する部分を下側に引っ張ると、摩擦車14が順方向Aに回転するとともに、その摩擦車14に連動して巻装ローラ12も順方向Aに回転するようになっている。これとは逆に、環状の操作紐13における奥側(後側)に垂下する部分を下側に引っ張ると、摩擦車14が逆方向Aに回転するとともに、その摩擦車14に連動して巻装ローラ12も逆方向Aに回転するようになっている。
【0030】
本発明の調光式ロールスクリーン10は、三層タイプのものとなっている。すなわち、本発明の調光式ロールスクリーン10では、図2に示すように、スクリーン11が、スクリーン11の前面(室内側を向く面)を形成する前側透光膜材11aと、スクリーン11の後面(室外側を向く面)を形成する後側透光膜材11bと、前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの隙間内で上下方向に所定間隔を隔てた状態で略平行に配された複数の遮光膜材11cとで構成されている。前側透光膜材11aは、巻装ローラ12の外周面における点Pから垂下され、後側透光膜材11bは、巻装ローラ12の外周面における、点Pよりも後側(順方向A側)に位置する点Pから垂下されている。
【0031】
また、それぞれの遮光膜材11cにおける前縁部は、前側透光膜材11aに対して重合連結された前側連結部11c図2における点Qと点Qとの間の部分)となっており、前側透光膜材11aの上下変位や前後変位に応じて、それぞれの遮光膜材11cにおける前縁部の上下位置や前後位置が変化するようになっている。一方、それぞれの遮光膜材11cにおける後縁部は、後側透光膜材11bに対して重合連結された後側連結部11c図2における点Rと点Rとの間の部分)となっており、後側透光膜材11bの上下変位や前後変位に応じて、それぞれの遮光膜材11cにおける後縁部の上下位置や前後位置が変化するようになっている。このため、本発明の調光式ロールスクリーン10は、巻装ローラ12を順方向A又は逆方向Aに回転させることで、図5に示すように、その状態が遷移するようになっている。
【0032】
図5は、本発明の調光式ロールスクリーン10の状態遷移を説明する図である。図5においては、図2,4と同様、図1,3には示した回転操作手段13及び摩擦車14の図視を省略している。
【0033】
図5(a)は、スクリーン11が巻装ローラ12に対して順方向Aに完全に巻き取られた様子を、図5(b)は、図5(a)に示す状態から巻装ローラ12を逆方向Aに回転させてスクリーン11を巻き解いている途中の様子を、図5(c)は、図5(b)に示す状態から巻装ローラ12をさらに逆方向Aに回転させてスクリーン11を遮光状態とした様子を、図5(d)は、図5(c)に示す状態から巻装ローラ12をさらに逆方向Aに回転させてスクリーン11を半採光状態とした様子を、図5(e)は、図5(d)に示す状態から巻装ローラ12をさらに逆方向Aに回転させてスクリーン11を最大採光状態とした様子を示している。
【0034】
そして、図5(f)は、図5(e)に示す状態から巻装ローラ12をさらに逆方向Aに回転させてスクリーン11が採光状態のまま巻装ローラ12に対して逆方向Aに巻き取られ始めた様子を、図5(g)は、図5(f)に示す状態から巻装ローラ12をさらに逆方向Aに回転させてスクリーン11が採光状態のまま巻装ローラ12に巻き取られている途中の様子を、図5(h)は、図5(g)に示す状態から巻装ローラ12をさらに逆方向Aに回転させてスクリーン11が巻装ローラ12に対して逆方向Aに完全に巻き取られた様子を示している。図5(h)に示す状態から、巻装ローラ12を順方向Aに回転させると、調光式ロールスクリーン10は、図5(h)に示す状態から、図5(g),(f),(e),(d),(c),(b)に示す状態をこの順に辿り、最終的には、図5(a)に示す状態となる。
【0035】
ここで、注目すべきは、図5(c),(d),(e)における遮光膜材11cの変化である。すなわち、図5(c)に示す状態では、前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとが近づいてその隙間(前後方向の隙間)が狭くなるとともに、それぞれの遮光膜材11cの前縁部(前側連結部11c図3,4を参照))が、それぞれの遮光膜材11cの後縁部(後側連結部11c)に対して相対的に下側へ大きく下降した状態となっている。このため、それぞれの遮光膜材11cは、上下方向に対して略平行となるように、立った状態となる。
【0036】
図4は、図5(c)を拡大して示した図に相当するが、この図4を見ると、それぞれの遮光膜材11cの上縁部(後縁部)が、その遮光膜材11cよりも1つ上側に位置する遮光膜材11cの下縁部(前縁部)の後側に重なるようになっている。このため、図4図5(c))に示す状態のスクリーン11を前側から見ると、上下に隣り合う遮光膜材11cの間には隙間(遮光膜材11cが存在しない領域)が存在しないようになっている。加えて、図4図5(c))に示す状態では、前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの前後方向の隙間も狭くなっているため、その隙間内で上下方向に隣り合う遮光膜材11cの前後方向の隙間も狭くなっている。したがって、図4図5(c))に示す状態では、スクリーン11の後側(室外側)から前側(室内側)へと光が最も透過しにくい状態(遮光状態)が発現する。
【0037】
これに対し、図5(d)に示す状態では、図5(c)に示す状態よりも、前側透光膜材11aが後側透光膜材11bに対して相対的に前方へ移動して、前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの前後方向の隙間が広くなるとともに、それぞれの遮光膜材11cの前縁部(前側連結部11c図3,4を参照))が、それぞれの遮光膜材11cの後縁部(後側連結部11c図3,4を参照))に対して相対的に前方へ移動した状態となる。このため、それぞれの遮光膜材11cは、図5(c)に示す状態よりも、寝た状態となる。図5(d)に示す状態のスクリーン11を前側から見ると、上下に隣り合う遮光膜材11cの間に、隙間αが見えるようになる。したがって、図5(d)に示す状態では、スクリーン11の後側(室外側)から前側(室内側)へと光がある程度透過してくる状態(半採光状態)が発現する。
【0038】
また、図5(e)に示す状態では、図5(d)に示す状態よりも、前側透光膜材11aが後側透光膜材11bに対して相対的に前方及び上側へ移動して、前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの前後方向の隙間がさらに広くなるとともに、それぞれの遮光膜材11cの前縁部(前側連結部11c)が、それぞれの遮光膜材11cの後縁部(後側連結部11c)に対して相対的に前方及び上方へ移動した状態となる。このため、それぞれの遮光膜材11cは、図5(d)に示す状態よりも、さらに寝た状態(略水平方向に寝た状態)となる。図5(e)に示す状態のスクリーン11を前側から見ると、上下に隣り合う遮光膜材11cの境界部には、隙間αが広い上下幅で見えるようになる。したがって、図5(e)に示す状態では、スクリーン11の後側から前側へと光が多く透過してくる状態(最大採光状態)が発現する。
【0039】
本実施態様の調光式ロールスクリーン10では、図5(e)に示す採光状態から巻装ローラ12を逆方向Aに回転させていくと、図5(f),(g),(h)に示すように、採光状態のままスクリーン11を巻装ローラ12に巻き取ることができることもできるようになっている。
【0040】
このように、本発明の調光式ロールスクリーン10では、後側透光膜材11bに対する前側透光膜材11aの相対的な位置(前後位置又は上下位置)を変化させ、遮光膜材11cの起立角度を変化させることで、上下方向に隣り合う遮光膜材11cの隙間αの幅を調整し、その隙間αを通じてスクリーン11の後側から前側へ透過してくる光の量を広い範囲で調節することができるようになっている。遮光膜材11cの起立角度は、スクリーン10の前側透光膜材11aが巻装ローラ12から完全に巻き解かれたとき(図5(c)と図5(e)との間の状態にあるとき)に、巻装ローラ12を回転操作することで調節することができる。
【0041】
ところで、図5(c)に示す遮光状態が、スクリーン11の後側から前側へ光が最も透過しにくい状態であることは既に述べた通りである。しかし、この遮光状態においても、上下方向に隣り合う遮光膜材11cの僅かな隙間から光が微かに漏れ出てしまい、室内側(前側)からスクリーン11を見ると、上下方向に隣り合う遮光膜材11cの境界部に明るい部分(明部)が筋状に形成される虞がある。この点、本発明の調光式ロールスクリーン10では、以下の工夫を施すことにより、遮光状態において、上下方向に隣り合う遮光膜材11cの境界部における光の漏れを抑え、室内をより暗い状態とすることができるようにしている。
【0042】
すなわち、図4に示す遮光状態では、それぞれの遮光膜材11cにおける後側連結部11cの上縁(点R)が、それぞれの遮光膜材11cの1つ上側に配される遮光膜材11cの前側連結部11cの上縁(点Q)よりも上側に位置するようにしている(図4における高さHが0mmよりも大きくなるようにしている)。これにより、遮光状態において上下方向に隣り合う遮光膜材11cの間に形成される隙間をさらに小さくし、室内側(前側)からスクリーン11を見たときに、上下方向に隣り合う遮光膜材11cの境界部に明部が筋状に形成されないようにすることができる。遮光状態における、それぞれの遮光膜材11cの前側連結部11cの上縁(点Q)から、それぞれの遮光膜材11cの1つ下側に配される遮光膜材11cの後側連結部11cの上縁(点R)までの高さHをどの程度とするかは、特に限定されないが、本実施態様の調光式ロールスクリーン10では、5mm以上確保している。
【0043】
図4に示す遮光状態では、それぞれの遮光膜材11cにおける後側連結部11cの下縁(点R)は、それぞれの遮光膜材11cの1つ上側に配される遮光膜材11cの前側連結部11cの下縁(点Q)よりも上側に位置するようにしてもよいが、1つ上側に配される遮光膜材11cの前側連結部11cの下縁(点Q)と同じ高さか、やや下側に位置するようにすることが好ましい。前側連結部11cは、前側透光膜材11aと遮光膜材11cとが重合する部分であり、後側連結部11cは、後側透光膜材11bと遮光膜材11cとが重合する部分であるため、前側連結部11cや後側連結部11cは生地が2重となって特に光を通しにくい部分であるところ、前側連結部11cの略全体が、後側連結部11cの前側に完全に重なるようにすることにより、遮光状態において上下方向に隣り合う遮光膜材11cの境界部における光の漏れをより確実に抑えることが可能になるからである。
【0044】
それぞれの遮光膜材11cにおける後側連結部11cの上下幅(区間Rの長さ)は、上記の高さHを0mmよりも大きくできるのであれば特に限定されない。後側連結部11cの上下幅は、既に述べたように、7~25mmの範囲とすることが好ましく、8~20mmの範囲とすることがより好ましく、9~15mmの範囲とすることがさらに好ましい。本実施態様の調光式ロールスクリーン10において、後側連結部11cの上下幅は、約10mmとしている。
【0045】
それぞれの遮光膜材11cにおける前側連結部11cの上下幅(区間Qの長さ)も、特に限定されない。しかし、前側連結部11cは、前側透光膜材11aと遮光部材11cとが重合した部分となっており、前側透光膜材11aや遮光部材11cにおける他の部分よりも遮光性が高い部分となっていることに加えて、スクリーン11の前側から視認される部分でもある。このため、前側連結部11cは、スクリーン11を前側から見たときに他の部分よりも暗い部分(暗部)となり勝ちである。前側連結部11cによる暗部は、特に採光状態において表れやすい傾向がある。
【0046】
この点、前側連結部11cの上下幅を広くしすぎると、前側連結部11cによる暗部が目立つようになり、調光式ロールスクリーン10の見た目が悪くなる虞がある。したがって、前側連結部11cの上下幅は、5mm以下とすることが好ましい。前側連結部11cの上下幅は、4mm以下とすることがより好ましく、3mm以下とすることがさらに好ましい。前側連結部11cの上下幅の下限は、特に限定されない。しかし、前側連結部11cの上下幅を狭くしすぎると、前側連結部11cに対する遮光膜材11cの連結強度が低下する虞がある。このため、前側連結部11cの上下幅は、通常、1mm程度は確保される。本実施態様の調光式ロールスクリーン10において、前側連結部11cの上下幅は、約2.5mmとしている。
【0047】
以上のように、本発明の調光式ロールスクリーン10では、遮光状態において、それぞれの遮光膜材11cにおける後側連結部11cの上縁(点R)が、それぞれの遮光膜材11cの1つ上側に配される遮光膜材11cの前側連結部11cの上縁(点Q)よりも上側に位置させたことで、室内側をより暗くすることができるようにしている。ただし、そのためには、後側連結部11cを後側透光膜材11bにおけるより高い位置まで延在させる必要がある。
【0048】
したがって、本発明の調光式ロールスクリーン10では、上記のように高い位置まで延在する後側連結部11cが、採光状態(特に最大採光状態)において、前方から見える虞がある。この後側連結部11cは、後側透光膜材11bと遮光部材11cとが重合した部分となっており、後側透光膜材11bや遮光部材11cにおける他の部分よりも遮光性が高い部分となっていることに加えて、他の部分よりも暗い部分(暗部)として表れがちである。後側連結部11cによる暗部は、特に採光状態において表れやすい傾向がある。このため、採光状態において、スクリーン11の前側から後側連結部11cが見えてしまうと、後側連結部11cによる暗部が目立ち、調光式ロールスクリーン10の見た目が悪くなる虞がある。
【0049】
この不具合を解消するため、本実施態様の調光式ロールスクリーン10では、図2に示すように、遮光膜材11cの前後幅Wを、採光状態における前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの間隔Dよりも大きく設定している。ここで、遮光膜材11cの前後幅Wは、遮光膜材11cにおける、前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの間に位置する部分の前後幅(遮光膜材11cを前後方向に真っすぐに伸ばしたときの前後幅。図2の遮光膜材11cにおける、点Qと点Rとの間に位置する部分のその湾曲に沿った長さに一致する。)を意味している。この前後幅Wは、遮光膜材11cの上下方向の配置ピッチと同程度に設定される。
【0050】
このように、遮光膜材11cの前後幅Wを、採光状態における前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの間隔Dよりも大きく設定することによって、採光状態においては、図2に示すように、遮光膜材11cを「S」字状に湾曲させて、そのときの遮光膜材11cに上側湾曲部βと下側湾曲部βとが形成されるようにするとともに、採光状態のスクリーン11を前方から見たときに、それぞれの遮光膜材11cにおける後側連結部11cが、それぞれの遮光膜材11cの上側湾曲部βの後側に隠れるようにすることができる。上側湾曲部βは、遮光膜材11cの前縁側で上側に凸となるように湾曲する部分となっており、下側湾曲部βは、遮光膜材11cの後縁側で下側に凸となるように湾曲する部分となっている。
【0051】
上記のように、遮光膜材11cの前後幅Wを、採光状態における前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの間隔Dよりも大きくするということは、換言すると、間隔Dに対する前後幅Wの比W/Dを、1よりも大きい値に設定するということである。この比W/Dの具体的な値は、特に限定されないが、比W/Dを小さくしすぎる(1に近い値にしすぎる)と、採光状態における遮光膜材11cの湾曲が緩やかになって、上側湾曲部βが低くなり、上側湾曲部βの後側に後側連結部11cが隠れにくくなる虞がある。このため、比W/Dは、1.3以上とすることが好ましい。比W/Dは、1.5以上とすることがより好ましく、1.7以上とすることがさらに好ましい。
【0052】
一方、比W/Dを大きくしすぎると、採光状態において、上側湾曲部βや下側湾曲部βが上下に大きく突出するようになり、上下方向に隣り合う遮光膜材11cの間に形成される隙間αが上側湾曲部βや下側湾曲部βによって塞がれてしまい、室内を明るくすることができなくなる虞がある。このため、比W/Dは、2.5以下とすることが好ましい。比W/Dは、2.2以下とすることがより好ましく、2.0以下とすることがさらに好ましい。本実施態様の調光式ロールスクリーン10においては、採光状態における前側透光膜材11aと後側透光膜材11bとの間隔Dを約40mmに設定しているのに対して、遮光膜材11cの前後幅Wを約70mmに設定しているため、比W/Dの値は、約1.75となっている。
【0053】
本実施態様の調光式ロールスクリーン10において、所望の効果(遮光状態において室内側をより暗くする効果等)がより確実に奏されるようにするためには、それぞれの遮光膜材11cにおける前側連結部11cや後側連結部11cを高い精度で位置決めする必要がある。また、それぞれの遮光膜材11cが高い精度で水平方向に配されるようにする必要もある。
【0054】
この点、本実施態様の調光式ロールスクリーン10では、スクリーン11を、織機により形成し、その前側透光膜材11aと後側透光膜材11bと遮光膜材11cとを一体的に織り上げて形成することで、それぞれの遮光膜材11cにおける前側連結部11cや後側連結部11cを高い精度で位置決めできるようにしている。加えて、その織り上げられたスクリーン11を、そのスクリーン11にテンションを掛けた状態で台の上に乗せ、その上縁及び下縁並びにその両側の側縁を、スクリーンの向きを切り替えることなく、切断することで、それぞれの遮光膜材11cが高い精度で水平方向に配されるようにしている。スクリーン11を裁断する台の上面には、多数の吸気部を設け、その吸気部で吸気を行ってスクリーン11が台の上面に吸い付いた状態で裁断を行うと、スクリーン11をより高精度に裁断することができる。
【0055】
スクリーン11における前側透光膜材11aや後側透光膜材11bは、透光性の高い生地(遮光性の低い生地)であれば、特に限定されない。しかし、前側透光膜材11aや後側透光膜材11bには、透光性が高い生地を用いた方が、採光状態において室内をより明るくすることができ、調光式ロールスクリーン10の調光の幅を広くすることが可能になる。このため、前側透光膜材11a及び後側透光膜材11bには、遮光率(JIS-L1055のA法に準拠して測定した遮光率のこと。以下同じ。)が80%未満の生地(透光率が20%以上の生地)を用いることが好ましい。前側透光膜材11a及び後側透光膜材11bの遮光率は、50%未満(透光率が50%以上)とすることがより好ましく、30%未満(透光率が70%以上)とすることがさらに好ましい。このように高い透光性を有する前側透光膜材11aや後側透光膜材11bは、明色(白色等)の細い糸を目の大きなメッシュ状に編製又は織製することにより実現することができる。
【0056】
一方、スクリーン11における遮光膜材11cは、遮光性の高い生地(透光性の低い生地)であれば、特に限定されない。しかし、遮光膜材11cには、遮光率が高い生地を用いた方が、室内をより暗くすることができ、本発明の構成を採用する意義が高まる。このため、遮光膜材11cには、遮光率(JIS-L1055のA法に準拠して測定した遮光率のこと。以下同じ。)が90%以上の生地を用いることが好ましい。遮光膜材11cの遮光率は、95%以上とすることがより好ましく、99%以上とすることがさらに好ましい。遮光膜材11cは、日本インテリアファブリックス協会(NIF)における遮光等級が3級以上(遮光率で99.40%以上)の生地で形成することや、同遮光等級が2級以上(遮光率で99.80%以上)の生地で形成することや、同遮光等級が1級(遮光率で99.99~100.00%)の生地で形成することもできる。このように高い遮光性を有する遮光膜材11cは、暗色(黒色等)の糸を密に編製又は織製することにより実現することができる。
【0057】
ここで、遮光膜材11cは、水平方向に配される緯糸(横糸)と鉛直方向(上下方向)に配される経糸(縦糸)とで構成し、緯糸(横糸)に、経糸(縦糸)よりも太くて硬めの糸を用いることが好ましい。
【0058】
というのも、緯糸(横糸)に、経糸(縦糸)よりも太くて硬めの糸を用いること(換言すると、経糸(縦糸)に、緯糸(横糸)よりも細くて柔らかめの糸を用いること)により、遮光膜材11cが縦方向に曲がりやすくなり、巻装ローラ12に巻き取られたスクリーン11の径(巻き取り径)を小さくすることが可能になるからである。特に、本発明の調光式ロールスクリーン10は、既に述べたように、スクリーン11を採光状態のまま巻装ローラ12に巻き取ることができ(図5(g),(h)を参照。)、このときの遮光膜材11cは複数回折り曲げられて曲がりにくい状態となるところ、上記の構成を採用することによって、スクリーン11を採光状態のまま巻装ローラ12に巻き取る場合でも、スクリーン11の巻き取り径を小さくすることが可能になる。
【0059】
また、上記のように、緯糸(横糸)として太くて硬めの糸を用いることにより、遮光膜材11cを水平方向に真っすぐに形成することも容易となる。というのも、本発明の調光式ロールスクリーン10において、スクリーン11は、編製又は織製することが好ましいことについては、既に述べた通りであるが、編製又は織製された後のスクリーン11には、通常、熱処理等の後工程が施されるため、この後工程の際に遮光膜材11cの形が崩れる虞がある。この点、緯糸(横糸)として太くて硬めの糸を用いることによって、熱処理等の後工程においても、緯糸(横糸)の形が崩れにくくして、遮光膜材11cが水平方向に真っすぐな状態が維持されやすくすることが可能になるからである。
【0060】
本発明の調光式ロールスクリーン10は、その設置場所を限定されるものではなく、家庭や事業所等の様々な場所に設置することができる。なかでも、ホテルの客室の採光用開口部(窓等)に設置するものとして適している。というのも、ホテルの宿泊客の中には、部屋を暗くしないと眠れない人や、逆に朝になったときに部屋が明るくならないと起きることができない人等、様々なタイプの人がいるため、ホテルの客室では、宿泊客が好みに応じて採光用開口部から取り込まれる光の量を調節できるようにする要求が強いところ、本発明の調光式ロールスクリーン10を採用するとそのような要求にも応えることができるからである。
【符号の説明】
【0061】
10 調光式ロールスクリーン
11 スクリーン
11a 前側透光膜材
11b 後側透光膜材
11c 遮光膜材
11c 前側連結部
11c 後側連結部
12 巻装ローラ
13 操作紐(回転操作手段)
14 摩擦車
15 ボトムレール
採光状態における前側透光膜材と後側透光膜材との前後方向の間隔
遮光状態における、それぞれの遮光膜材の前側連結部の上縁から、それぞれの遮光膜材の1つ下側に配される遮光膜材の後側連結部の上縁までの高さ
遮光膜材における、前側透光膜材と後側透光膜材との間に位置する部分の前後幅
α 上下に隣り合う遮光膜材の間に形成される隙間
β 上側湾曲部
β 下側湾曲部
図1
図2
図3
図4
図5