(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】防爆音響機器
(51)【国際特許分類】
H04R 1/00 20060101AFI20220317BHJP
【FI】
H04R1/00 310B
(21)【出願番号】P 2019201454
(22)【出願日】2019-11-06
【審査請求日】2020-09-11
(73)【特許権者】
【識別番号】593143511
【氏名又は名称】株式会社宮木電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】奈良木 幹也
(72)【発明者】
【氏名】高村 光治
(72)【発明者】
【氏名】小谷 直輝
(72)【発明者】
【氏名】中谷 隆大
【審査官】渡邊 正宏
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0327546(US,A1)
【文献】特開2011-165729(JP,A)
【文献】特開2009-273113(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 9/12- 9/22
H04M 1/02- 1/23
H04R 1/00- 1/08
H04R 1/10
H04R 1/12- 1/14
H04R 1/42- 1/46
H04R 7/00- 7/26
H04R 9/00
H04R 9/02- 9/10
H04R 9/18
H04R 11/00-11/06
H04R 11/14
H04R 13/00-15/02
H04R 17/00-17/02
H04R 17/10
H04R 19/00-19/04
H04R 21/00-21/02
H04R 23/00-23/02
H04R 31/00
H05K 5/00- 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音の入力或いは出力がされる防爆対象機器と、
前記防爆対象機器を内部に収容すると共に内外を連通する開口が設けられた容器と、
互いに積層された状態で前記開口に配置され、それぞれ音を透過する少なくとも一対の透過体と、
前記一対の透過体の外周部に接続されると共に、前記容器に取り付けられた接続体と、
を備え、
前記一対の透過体にはそれぞれ内外方向に直進して貫通する貫通孔が設けられ、
前記一対の透過体の開口率が異な
り、
前記接続体は、前記容器と隙間をあけて対向し且つ内外方向に延びる第二対向面を有する、防爆音響機器。
【請求項2】
前記一対の透過体は、それぞれ板状であり、
前記接続体は、板状であり、前記一対の透過体の外周面と対向する第一対向面を有する、請求項
1に記載の防爆音響機器。
【請求項3】
前記一対の透過体は、円柱状であり、
前記接続体は、円筒状であり、前記容器側に位置し該容器に対して固定するためのネジ部を有する、請求項
1に記載の防爆音響機器。
【請求項4】
前記一対の透過体は、一対の金属部材であり、
前記一対の金属部材は、溶接により互いに一体となっている、請求項1~請求項
3のいずれか1項に記載の防爆音響機器。
【請求項5】
前記一対の透過体は、一対の金網から構成され、
前記防爆対象機器の近くに配置された金網の開口率は、前記防爆対象機器の遠くに配置された金網の開口率よりも大きい、請求項1~請求項
4のいずれか1項に記載の防爆音響機器。
【請求項6】
前記一対の透過体は、一対の金網から構成され、
前記一対の金網の織り方が異なる、請求項1~請求項
5のいずれか1項に記載の防爆音響機器。
【請求項7】
前記一対の金網の少なくとも一方は綾織或いは畳織である、請求項
6に記載の防爆音響機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカやマイクのような防爆音響機器であって、防爆性に優れた防爆音響機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、防爆性能を有するスピーカが公知である(特許文献1)。例えば、スピーカは、合成樹脂板と、合成樹脂板の下端に接続されたカバーと、を有する。このカバーの材質は、金属粉体を溶融点前後の温度で焼き固めて形成される焼結金属である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、焼結金属製のカバーを備えたスピーカでは、音源からの音が、金属粉体の隙間を介してスピーカの外に出る。そのため、音源からの音がカバーに遮断されることにより、スピーカからの音量が低下するおそれがあった。これは、スピーカだけでなく、マイクなどの防爆音響機器全般においても同様である。なお、マイクの場合には、カバー内のマイクに到達する音量が低下することになる。
【0005】
本発明は、防爆性能を有すると共に入出力される音につき音量の低下を抑えた防爆音響機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の防爆音響機器は、音の入力或いは出力がされる防爆対象機器と、前記防爆対象機器を内部に収容すると共に内外を連通する開口が設けられた容器と、互いに積層された状態で前記開口に配置され、それぞれ音を透過する少なくとも一対の透過体と、を備え、前記一対の透過体にはそれぞれ内外方向に直進して貫通する貫通孔が設けられ、前記一対の透過体の開口率が異なる。
【0007】
かかる構成によれば、開口率の小さい透過体と開口率の大きい透過体とが積層されたことにより防爆作用を有効に発揮すると共に、各透過体の貫通孔が直進していることにより入出力される音につき音量の低下を抑えることができる。
【0008】
また、前記防爆音響機器は、前記一対の透過体の外周部に接続されると共に、前記容器に取り付けられた接続体を備えてもよい。
【0009】
かかる構成によれば、一対の透過体を接続体により一体に支持できる。
【0010】
また、前記防爆音響機器では、前記一対の透過体は、それぞれ板状であり、前記接続体は、板状であり、前記一対の透過体の前記容器側に位置する面と対向する第一対向面を有してもよい。
【0011】
かかる構成によれば、接続体の第一対向面が一対の透過体の容器側に位置する面と対向した状態で、接続体が容器に取り付けられていることにより、仮に容器内で爆発が生じても、一対の透過体が接続体の第一対向面に支持されるため、一対の透過体は容器から外れにくい。
【0012】
また、前記防爆音響機器では、前記一対の透過体は、円柱状であり、前記接続体は、円筒状であり、前記容器側に位置し該容器に対して固定するためのネジ部を有してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、接続体の容器側に位置するネジ部で、接続体が容器に取り付けられていることにより、仮に容器内で爆発が生じても、透過体が接続体のネジ部に支持されるため、透過体は容器から外れにくい。
【0014】
また、前記防爆音響機器では、前記接続体は、前記容器と隙間をあけて対向する第二対向面を有してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、仮に容器内で爆発が生じて炎が透過体を通過しても、炎が接続体の第二対向面と容器との隙間を通過する途中で消えるため、透過体がより容器から外れにくい。
【0016】
また、前記防爆音響機器では、前記一対の透過体は、一対の金属部材であり、前記一対の金属部材は、溶接により互いに一体となっていてもよい。
【0017】
かかる構成によれば、一対の金属部材が一体となっているため、金属部材の容器の開口への取り付けが容易である。
【0018】
また、前記防爆音響機器では、前記一対の透過体は、一対の金網から構成され、前記防爆対象機器の近くに配置された金網の開口率は、前記防爆対象機器の遠くに配置された金網の開口率よりも大きくてもよい。
【0019】
かかる構成によれば、容器のより内側に配置された金網の目が粗いため、この金網により爆発の勢いを抑えることができる。
【0020】
また、前記防爆音響機器では、前記一対の透過体は、一対の金網から構成され、前記一対の金網の織り方が異なってもよい。
【0021】
かかる構成によれば、各金網の織り方の違いにより強度特性も異なるため、強度特性の異なる金網を組み合わせた一対の金網の強度が向上する。
【0022】
また、前記防爆音響機器では、前記一対の金網の少なくとも一方は綾織或いは畳織であってもよい。
【0023】
かかる構成によれば、少なくとも一方の金網が、例えば、平織よりも強度の大きい綾織や畳織であるため、仮に容器内で爆発が生じても爆発の圧力に耐えることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上より、本発明によれば、防爆性能を有すると共に入出力される音につき音量の低下を抑えた防爆音響機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る防爆音響機器(防爆スピーカ)の外観を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、
図2のIII-III位置における断面図である。
【
図4】
図4は、前記防爆音響機器の一対の透過体及び接続体の模式図であり、
図4(a)は正面図であり、
図4(b)は背面図である。
【
図6】
図6は、別の実施形態に防爆音響機器(防爆マイク)の正面図である。
【
図7】
図7は、
図6のVII-VII位置における断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の前記防爆音響機器の一対の透過体周辺の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。防爆音響機器1は、防爆性能を有する音響機器である。本実施形態の防爆音響機器1は、防爆スピーカである。
【0027】
防爆音響機器1は、
図1~
図3に示すように、音の出力がされる防爆対象機器(スピーカ)2と、防爆対象機器2を内部に収容すると共に内外を連通する開口30が設けられた容器3と、互いに積層された状態で開口30に配置され、それぞれ音を透過する少なくとも一対の透過体4、5と、を備える。本実施形態の防爆音響機器1は、少なくとも一対の透過体として、透過体4、5のみを備える。また、本実施形態の防爆音響機器1は、容器3に取り付けられた接続体6を備える。なお、以下の説明における内外方向とは、容器3の内外方向である。
【0028】
防爆対象機器2は、例えば、音源となる振動部を有するスピーカである(
図3参照)。本実施形態の防爆対象機器2は、振動部に加えて、振動部を振動させる駆動ユニットと、駆動ユニットを内部に収納するハウジングと、駆動ユニットに電気信号を入力するためのケーブル端子等を備える。
【0029】
容器3は、防爆対象機器2を内部に固定した状態で収納する。本実施形態の容器3は、容器本体31と、容器本体31に設けられる蓋板32と、を含む。本実施形態の容器3では、容器本体31と蓋板32とはヒンジにより接続された構成(一体)であるが、これらが別体であってもよい。容器3の材質は、例えば、金属製であり、具体的には、アルミ鋳物製である。
【0030】
開口30は、防爆対象機器2からの音を容器本体31の外に出力するために設けられている。例えば、開口30は、蓋板32の厚み方向において(
図3における左右方向において)貫通した貫通孔である。本実施形態の開口30は、蓋板32に一つ配置されている。
【0031】
容器本体31は、防爆対象機器2を収容する箱体である。例えば、容器本体31は、底板310と、底板310から延びる側壁311と、側壁311の底板310と反対側に位置する端部である側壁端部312から、内外方向と直交する方向において(
図3における上下方向において)外側に延びるフランジ部313と、を含む。容器本体31における底板310と反対側の端部は開口している。
【0032】
蓋板32は、容器本体31の開口部分を塞ぐことで、容器本体31の内部と外側とを仕切る仕切り板である。例えば、蓋板32は、容器本体31の側壁端部312及びフランジ部313に取り付けられている。具体的には、蓋板32は、ボルトによりフランジ部313に固定されている(
図2参照)。
【0033】
本実施形態の蓋板32は、略矩形板状の蓋板本体部321と、蓋板本体部321から外側に(
図3における左側に)突設した蓋板外凸部322と、蓋板本体部321から内側に(
図3における右側に)突設した蓋板内凸部323と、を含む(
図3参照)。
【0034】
蓋板外凸部322や蓋板内凸部323は、蓋板32の厚み方向に突出している。蓋板外凸部322の形状は、例えば、正方形の枠状である。蓋板内凸部323の形状は、例えば、円筒状である。ただし、蓋板32に、蓋板外凸部322が設けられていなくてもよい。
【0035】
本実施形態の容器3では、開口30は、蓋板本体部321で規定される第一開口301と、第一開口301の外側に位置し且つ蓋板外凸部322で規定される第二開口302と、第一開口301の内側に位置し且つ蓋板内凸部323で規定される第三開口303とで構成されている。第一開口301や第三開口303の形状は、例えば、丸穴である。第一開口301の径は、第三開口303の径よりも小さい。第一開口301を貫通方向から平面視したときの形状は、例えば、正方形状である。
【0036】
一対の透過体4、5は、それぞれ防爆対象機器2からの音を透過する。また、一対の透過体4、5には、それぞれ、内外方向に直進して貫通する貫通孔が設けられている。本実施形態の一対の透過体4、5の貫通孔は、金網の網目である。
【0037】
さらに、一対の透過体4、5の前記貫通孔の開口率は異なっている。本実施形態の一対の透過体4、5では、防爆対象機器2の近くに(内側に)配置された第一透過体4の開口率は、防爆対象機器2の遠くに(外側に)配置された第二透過体5の開口率よりも大きい。
【0038】
このように、防爆音響機器1によれば、開口率の小さい透過体5と開口率の大きい透過体4とが積層されたことにより、仮に、容器3内で爆発が生じたとしても、開口率の小さい第二透過体5により爆発の圧力に対抗できるので、爆発の影響が外部に及ぶことを抑えられるため、防爆作用を有効に発揮できる。しかも、開口率の小さい第二透過体5を開口率の大きい第一透過体4に重ねて、一対の透過体4、5が構成されていることにより、防爆性能を確保しつつカバーの厚みを低減することができる。さらに、積層された各透過体4、5の貫通孔が直進していることにより、防爆対象機器2からの音がこの貫通孔を通って外部に出力されるため、例えば、透過体が直進する貫通孔を有さない焼結金属である場合に比べて、この音が透過体4、5を通る途中で遮られにくく、その結果、防爆音響機器1から出力される音量の低下を抑えることができる。
【0039】
本実施形態の一対の透過体4、5は、それぞれ板状(円板状)である。また、一対の透過体4、5は、一対の金属部材であり、この一対の金属部材は溶接により互いに一体となっている。一対の金属部材は溶接により互いに一体となっていることにより、例えば、防爆音響機器1の組み立ての際に、一対の透過体4、5を一つの部材として取り扱うことができるため、一対の透過体4、5の容器3の開口30への取り付けが容易である。
【0040】
なお、本実施形態の一対の金属部材の材料は、ステンレス鋼、鉄、銅、その他の金属である。また、一対の金属部材は、別体であっても一体であってもよい。本実施形態の一対の金属部材は、一体であり、例えば、これらの外周部が溶融することで一体の側壁を形成している。このように、一対の透過体4、5を構成する金属部材が一体であることにより、仮に容器3内で爆発が生じても、爆発による圧力によりこの金属部材がばらばらになることを防止できる。また、一対の透過体4、5全体の強度も向上できる。
【0041】
本実施形態の一対の透過体4、5は、一対の金網で構成されている。例えば、一対の透過体4、5において、防爆対象機器2の近くに配置された金網(第一透過体4を構成する金網)の開口率は、防爆対象機器2の遠くに配置された金網(第二透過体5を構成する金網)の開口率よりも大きい。本実施形態の防爆音響機器1では、容器3のより内側に配置された金網(第一透過体4を構成する金網)の目が粗く、しかも、第二透過体5を構成する金網と比べて、第一透過体4を構成する金網の線径が太いため、この金網により爆発の勢いを抑えることができる。
【0042】
さらに、容器3内での爆発による熱の影響が大きい容器3のより内側に、線径の太いことにより溶けにくい金網を配置することで、容器3内が爆発により高温になったとしてもこの金網が溶けにくいため、この金網により容器3の外側への爆発の影響を確実に抑えることができる。また、容器3のより外側に配置された金網(第二透過体5を構成する金網)の目が細かいため、この金網により爆発の炎を受け止めることができる。
【0043】
一対の透過体4、5を構成する金網は、織金網、クリンプ金網、溶接金網等である。織金網としては、平織の金網、綾織の金網、畳織の金網等を用いることができる。
【0044】
一対の透過体4、5を構成する金網の種類は、異なっていても同じでもよい。本実施形態の一対の透過体4、5を構成する金網は、織り方が異なっている。各金網の織り方が異なっていれば金網の強度特性も異なるため、このような強度特性の異なる金網を組み合わせることで、一対の透過体4、5の強度が向上する。
【0045】
本実施形態の一対の透過体4、5は、内外方向において、第一透過体4における金網の貫通孔が、第二透過体5の金網の線と重なるように積層されている。そのため、容器3内で爆発が生じても、爆発による炎が一対の透過体4、5の両方を通過して容器3の外側に出ることを防ぐことができる。
【0046】
例えば、一対の透過体4、5を構成する金網の少なくとも一方は、綾織の金網、或いは、畳織の金網である。このように、一対の透過体4、5を構成する金網のうち少なくとも一方の金網が他の種類の金網よりも強度の高い綾織や畳織の金網であるため、仮に容器3内で爆発が生じたとしても、爆発の圧力に耐えることができる。
【0047】
具体的には、第一透過体4を構成する金網は、綾織の金網であり、150メッシュの金網を10枚積層したものである。なお、この金網は、防爆性能を鑑みると、20メッシュ~150メッシュの金網であることが好ましい。第二透過体5を構成する金網は、第一透過体4を構成する金網よりも目の細かい平織の金網であり、12/64メッシュの金網を8枚積層したものである。
【0048】
本実施形態の一対の透過体4、5は、第三開口303に配置されている。一対の透過体4、5は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、例えば、円板状である。また、一対の透過体4、5は、
図5に示すように、それぞれ、容器3側に位置する面として外周面40、50を有する。
【0049】
接続体6は、容器3と一対の透過体4、5との間を接続する。この接続体6は、容器3の蓋板内凸部323に取り付けられている。また、接続体6は、一対の透過体4、5の外周部に接続される。本実施形態の接続体6は、溶接により一対の透過体4、5の外周部に接続される。このように、接続体6が容器3に取り付けられ、且つ、一対の透過体4、5の外周部に接続されるため、接続体6により、一対の透過体4、5を一体にまとめて支持することができる。
【0050】
接続体6の形状は、一対の透過体4、5の外周部を覆う環状であればよい。本実施形態の接続体6は、板状であり、例えば、中央に丸穴が設けられた板状、即ち、円環板状である(
図4(a)及び
図4(b)参照)。
【0051】
また、接続体6は、一対の透過体4、5の外周面40、50と対向する第一面として、接続体内周面61を有する(
図5参照)。このように、接続体6の接続体内周面61が一対の透過体4、5の外周面40、50と対向した状態で、接続体6が容器3に取り付けられていることにより、仮に容器3内で爆発が生じても、一対の透過体4、5が接続体6の接続体内周面61に支持されるため、一対の透過体4、5は容器3から外れにくい。
【0052】
さらに、接続体6は、容器3と隙間Cをあけて対向する第二対向面として、接続体6の全周に設けられた接続体外周面62を有する。これにより、仮に容器3内で爆発が生じても、炎の一部が接続体6の接続体外周面62と容器3との隙間Cを通過する途中で消えるため、一対の透過体4、5を通過する炎が少なくなり、その結果、容器3の外部に炎が出ていくことを防止できる。なお、隙間Cは、例えば、0.03mm前後である。
【0053】
本実施形態の接続体6は、第二透過体5の外側に位置する表面である外表面51と対向する第三面として、接続体受け面63を有する。これにより、仮に容器3内で爆発が生じて、一対の透過体4、5に爆発により内側から外側に圧力がかかっても、一対の透過体4、5が接続体受け面63に押し付けられるため、一対の透過体4、5がさらに容器3から外れにくい。
【0054】
なお、本実施形態の接続体6は、固定部材により容器3に固定されている。具体的には、接続体6は、一対の透過体4、5を支持した状態で、蓋板内凸部323にねじ込まれている。また、接続体6は、例えば、ロックナット60により容器3に固定されている。
【0055】
また、本実施形態の接続体6は、溶接により、一対の透過体4、5の外周部に接続されているが、ロックナット等の固定部材により、一対の透過体4、5の外周部に接続されてもよい。他にも、一対の透過体4、5に対して、接続体6を嵌め込むことによりこれらを接続してもよい。
【0056】
なお、本発明の防爆音響機器は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0057】
上記実施形態の防爆音響機器1は、一対(二つ)の透過体4、5を備えていたが、三つ以上の透過体を備えてもよい。また、一対の透過体4、5を構成する金網は、矩形板状、その他多角形の板状であってもよい。なお、一対の透過体4、5は、金網以外に、パンチングメタル、エキスパンドメタル等で構成されてもよい。また、後述のように、一対の透過体4、5は、板状でなくてもよい。
【0058】
さらに、一対の透過体4、5のうち、容器3のより内側に配置される第一透過体4が目の細かい金網であり、容器3のより外側に配置される第二透過体5が目の粗い金網であってもよい。この場合においても、目の細かさが異なる金網を組み合わせることにより、一対の透過体4、5の強度を向上できる。
【0059】
一対の透過体4、5は、蓋板32に設けられた開口30に配置されていたが、容器本体31に配置されていてもよい。この場合、例えば、容器本体31に開口を設けて、この開口に一対の透過体4、5を配置することが考えられる。なお、容器3には、一つの開口が設けられていたが、複数の開口が設けられてもよい。この場合、各開口に、それぞれ、一対の透過体4、5を配置することが考えられる。
【0060】
防爆音響機器1は、接続体6を含まなくてもよい。この場合、一対の透過体4、5を容器3に直接取り付けることが考えられる。例えば、一対の透過体4、5を容器3に溶接することで取り付けてもよい。
【0061】
また、容器3に凹部を設けて一対の透過体4、5をこの凹部に圧入することで取り付けてもよい。例えば、蓋板内凸部323の内径を一対の透過体4、5の外径と略同一の寸法とし、蓋板内凸部323に一対の透過体4、5を圧入して取り付けてもよい。
【0062】
例えば、防爆音響機器1は、防爆性能を有するスピーカ以外の音響機器、例えば、防爆性能を有する拡声器やマイクであってもよい。
【0063】
スピーカ以外の音響機器の例として、防爆音響機器1は、
図6~
図8に示すように、音の入力がされる防爆対象機器(マイク2等)を備えることが考えられる。このような構成であっても、開口率の小さい透過体5と開口率の大きい透過体4とが積層されたことにより、仮に、容器3内で爆発が生じたとしても、開口率の小さい透過体5により爆発の影響が外部に及ぶことを抑えられるため、防爆作用を有効に発揮できる。さらに、積層された各透過体4、5の貫通孔が直進していることにより、外部からの音がこの貫通孔を通って防爆対象機器2に入力されるため、この音が透過体4、5により遮られにくく、その結果、入力される音量の低下を抑えることができる。
【0064】
本実施形態の防爆音響機器1では、一対の透過体4、5は、前記実施形態の円板状に比べて、直径に対する厚みが大きい円柱状である。また、接続体6は、円筒状である。接続体6は、容器3側に位置し且つ容器3に対して固定するためのネジ部として、接続体ネジ部64を有してもよい(
図8参照)。この場合、接続体6の容器3側に位置する接続体ネジ部64で、接続体6が容器3に取り付けられていることにより、仮に容器3内で爆発が生じて、一対の透過体4、5に圧力がかかっても、一対の透過体4、5の外周部に接続された接続体6の接続体ネジ部64に支持されるため、一対の透過体4、5は容器3から外れにくい。
【0065】
また、本実施形態の容器3の蓋板32には開口は設けられておらず、容器本体31の底板310に開口30が設けられている。底板310は、底板本体部314と、底板本体部314から外側に突出した底板外凸部315と、で構成されている。底板外凸部315は、内側に位置し且つ接続体ネジ部64に螺合可能なネジ部として、容器内ネジ部316を有する。また、底板外凸部315は、外側に位置するネジ部として、容器外ネジ部317を有する。
【0066】
この容器3の開口30は、底板本体部314で規定される第一開口301と、底板外凸部315で規定される第二開口302と、で構成されている。第一開口301には、防爆対象機器2が配置されている。第二開口302には、一対の透過体4、5及び接続体6が配置されている。
【0067】
防爆音響機器1は、容器3の外側に取り付けられた化粧リング70や、容器3の開口30を覆い且つ一対の透過体4、5の外側に配置された防水シート71を備えてもよい。
【0068】
例えば、化粧リング70は、底板外凸部315の外端部を囲む円筒部700と、円筒部700の外端部から径内側に延びる環状部701と、を含む。円筒部700は、径内側に位置し且つ容器外ネジ部317に螺合可能な円筒ネジ部703を有する。
【0069】
防水シート71は、パッキン710と共に、底板外凸部315の外端縁と化粧リング70の環状部701により狭持されている。なお、開口30には、防水シート71に加えて、或いは、防水シート71の代わりに、防塵用のメッシュシート等が設けられていてもよい。防塵用のメッシュシートは、開口30に塵等が入り込むことを防止することで、一対の透過体4、5の貫通孔が詰まることを防止できる。
【0070】
また、容器3の外側における開口30の周辺に、音源からの音が拡散することを防止したり、外部からの音を集音したりするコーンを取り付けてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1…防爆音響機器、2…防爆対象機器(スピーカ、マイク)、3…容器、4…透過体(第一透過体)、5…透過体(第二透過体)、6…接続体、30…開口、31…容器本体、32…蓋板、40、50…外周面、51…外表面、60…ロックナット、61…接続体内周面、62…接続体外周面、63…接続体受け面、64…接続体ネジ部、70…化粧リング、71…防水シート、301…第一開口、302…第二開口、303…第三開口、310…底板、311…側壁、312…側壁端部、313…フランジ部、314…底板本体部、315…底板外凸部、316…容器内ネジ部、317…容器外ネジ部、321…蓋板本体部、322…蓋板外凸部、323…蓋板内凸部、700…円筒部、701…環状部、703…円筒ネジ部、710…パッキン、C…隙間