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特許7041982鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及びこれを用いた鋳造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及びこれを用いた鋳造方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/08 20060101AFI20220317BHJP
   B22C 9/04 20060101ALI20220317BHJP
   B22D 43/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B22C9/08 A
B22C9/08 B
B22C9/04 L
B22D43/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021010155
(22)【出願日】2021-01-26
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000155366
【氏名又は名称】株式会社木村鋳造所
(74)【代理人】
【識別番号】100102048
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 光司
(74)【代理人】
【識別番号】100146503
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】片山 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】杉江 陽久
(72)【発明者】
【氏名】中川 喜紀
(72)【発明者】
【氏名】滝井 真也
【審査官】國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-130319(JP,A)
【文献】特開2000-061617(JP,A)
【文献】特開昭63-090334(JP,A)
【文献】特開平05-318062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/00- 9/30
B22D 33/00-47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型上に置いて利用する掛堰内に設置する鋳物用フィルター支持具であって、
上下が解放され周部に側壁を有し筒状に形成された耐熱部材製の本体部と、上部から注がれる溶湯中の不純物を除去するために前記本体部の筒状部分を横切り配置されるフィルター部材とを備え、前記フィルター部材は複数枚のフィルター単体に複数枚分割され、前記側壁から内側に突出する突出部を一対有し、この各突出部の下に前記フィルター単体の側部をスライド可能に受け入れるスライド溝を形成してフィルター保持部を構成し、各フィルター単体は隣接するように並べられて前記スライド溝に挿入されることで前記フィルター保持部により垂直方向の移動を規制され、前記突出部の一部を前記フィルター単体を上方から挿入可能な長さだけ切り欠いた切り欠き部を有し、前記スライド溝の両端部の少なくとも一方にこのスライド溝に受け入れられた前記フィルター単体の上部を覆うフィルター覆いを形成してある鋳物用フィルター支持具。
【請求項2】
前記フィルター覆いには上下に貫通する貫通孔を備え、この貫通孔を貫通させたピンに前記フィルター単体を当接させてスライド方向の移動を規制してある請求項1記載の鋳物用フィルター支持具。
【請求項3】
前記フィルター部材と離隔させてこのフィルター部材の上を覆うように金属板を保持可能な金属板保持部を備えてある前記請求項1又は2記載の鋳物用フィルター支持具。
【請求項4】
前記金属板保持部は、前記突出部の上面及び一対の突出部の各端部同士を結ぶ部分に前記金属板に接触してこの金属板を下から保持すると共に前記フィルター部材の上面から離隔させる下保持面と、前記金属板の周縁に接触してこの金属板の水平移動を規制する金属板保持縁部とを有している請求項3記載の鋳物用フィルター支持具。
【請求項5】
前記各フィルター単体の隣接部に下方から接触して前記各フィルター単体間の隙間を下方から塞ぐ横梁部を設けてある請求項1~4のいずれかに記載の鋳物用フィルター支持具。
【請求項6】
前記各フィルター単体は側縁と側縁の内側に多数の貫通孔を有する請求項1~5のいずれかに記載の鋳物用フィルター支持具。
【請求項7】
フルモールド鋳造法に利用されるものである請求項1~6のいずれかに記載の鋳物用フィルター支持具。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の鋳物用フィルター支持具を用いた鋳型設備であって、掛堰内に充填した砂に湯道を形成し、前記湯道上に前記本体部の下側解放部を合わせて前記鋳物用フィルター支持具を設置するとともにその周囲に砂をさらに充填し、金属板を保持させてある鋳型設備。
【請求項9】
請求項8の記載の鋳型設備を用いた鋳造方法であって、前記掛堰に溶湯を注いでこの掛堰内に前記溶湯を蓄え、蓄えられた溶湯で前記金属板を溶解して前記フィルター部材を通過させて前記湯道に前記溶湯を供給する鋳造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及びこれを用いた鋳造方法に関する。さらに詳しくは、鋳型上に置いて利用する掛堰内に設置する鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及びこれを用いた鋳造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造時の鋳型上に掛堰を置いて利用する例としては、次の特許文献1,2のものが知られている。いずれも消失模型を利用するいわゆるフルモールド鋳造法を意図している。特許文献1の例においては、製品の本体部であるキャビティ部と、湯道に相当する湯口部との間を容易に分離すべく、これらの間に異物除去手段を介在させて、これらの間の分離を容易としている。また、特許文献2では、掛堰の開口部に鉄板を配置し、掛堰に溶湯を蓄えることで、消失模型に起因する黒煙や火炎の噴出を防いでいる。
【0003】
特許文献1の例や図1(b)の従来例にみられるように、異物を除去するフィルターFは、鋳型1’の中において、湯道R’中の製品部P’と掛堰130’との間に形成されるのが通常である。もしくは、特許文献1の図6にみられるように、掛堰内に砂を充填し、治具を用いてフィルター設置用の溝を形成し、フィルターを設置していた。
【0004】
しかし、鋳型100'内にフィルターFを設置するとその分だけ鋳型100'が大型となってその分高額となり、また、フィルターFの設置作業における異物の除去や溶湯の流通性確保を目的とした鋳造方案の立案にコストが発生して、全体的にコスト効率が低下する。さらに、フィルターFの設置作業時において万が一フィルターの番手や開口径を間違えた場合の修正は極めて困難である。
【0005】
一方、フィルターFを単に掛堰130’の開口に配置するだけでは、特許文献2で課題となっているフルモールド鋳造法における黒煙や火炎の原因となるガスの噴出によるフィルターFのずれ・離脱を防止できない。また、掛堰130'は上型枠の上で高所に位置することもあり、治具を用いた手数のかかる設置作業は困難を伴うものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開昭61-172649号公報
【文献】実開昭53-135419号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かかる従来の実情に鑑みて、本発明は、フィルターのずれまたは離脱を防止できるとともに、鋳造方案設計やフィルターの設置が容易であり、設置作業がより安全で掛堰からの注湯を安定して供給しうる鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及びこれを用いた鋳造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る鋳物用フィルター支持具の特徴は、鋳型上に置いて利用する掛堰内に設置する構成であって、上下が解放され周部に側壁を有し筒状に形成された耐熱部材製の本体部と、上部から注がれる溶湯中の不純物を除去するために前記本体部の筒状部分を横切り配置されるフィルター部材とを備え、前記フィルター部材は複数枚のフィルター単体に複数枚分割され、前記側壁から内側に突出する突出部を一対有し、この各突出部の下に前記フィルター単体の側部をスライド可能に受け入れるスライド溝を形成してフィルター保持部を構成し、各フィルター単体は隣接するように並べられて前記スライド溝に挿入されることで前記フィルター保持部により垂直方向の移動を規制され、前記突出部の一部を前記フィルター単体を上方から挿入可能な長さだけ切り欠いた切り欠き部を有し、前記スライド溝の両端部の少なくとも一方にこのスライド溝に受け入れられた前記フィルター単体の上部を覆うフィルター覆いを形成したことにある。
【0009】
同特徴によれば、鋳物用フィルター支持具を掛堰内に設置するだけでフィルターを容易且つより安全にセットすることができる。フィルター部材は複数枚のフィルター単体に複数枚分割され、側壁から内側に突出する突出部を一対有し、この各突出部の下にフィルター単体の側部をスライド可能に受け入れるスライド溝を形成してフィルター保持部を構成してある。そして、各フィルター単体は隣接するように並べられてスライド溝に挿入されることでフィルター保持部により垂直方向の移動を規制されているので、上述のガスが噴出しても、このフィルター保持部から離脱することはない。
【0010】
また、突出部の一部をフィルター単体を上方から挿入可能な長さだけ切り欠いた切り欠き部を有してあるので、上方からフィルター単体をスライド溝に挿入して、水平移動することによりフィルターをはめ込んでいける。そして、スライド溝の両端部の少なくとも一方にこのスライド溝に受け入れられたフィルター単体の上部を覆うフィルター覆いを形成してあるので、先にこのフィルター覆い下に位置させたフィルター単体を切り欠き部側に復帰させることで、2枚のフィルター単体どうしを接触させ、それらの周縁も上記突出部とフィルター覆いとで塞ぐことができる。
【0011】
本発明におけるフィルター単体の最小単位は2枚であるが、製品部が増大して湯道を増設する場合は、それに応じてスライド溝方向に水平に本体部を延長し、また、フィルターの枚数を水平方向に向かって増やせばよい。設計変更による増減は、水平方向になされ、圧力ヘッドは水平方向の拡大では変動幅が小さいため、これらの拡大を行っても、設計の見通しが立てやすく、圧力ヘッドの再現性が極めて高くなるため、結果として鋳物の品質も安定することとなる。さらに、鋳造方案の立案は鋳型内にフィルターを設置しなくてよいので軽減される。加えて、鋳型造型作業においてフィルターの貫通孔径を間違えた場合も取り換えは容易である。
【0012】
上記特徴において、フィルター覆いには上下に貫通する貫通孔を備え、この貫通孔を貫通させたピンにフィルター単体を当接させてスライド方向の移動を規制してもよい。上記ガスによるフィルター単体のずれをさらに有効に規制できる。
【0013】
フィルター部材と離隔させてこのフィルター部材の上を覆うように金属板を保持可能な金属板保持部を備えてもよい。金属板の溶解まで掛堰内に溶湯を蓄えることで溶湯より比重の軽いノロ等の異物を浮かして鋳型内に入りにくくすることができる。 また、フィルター部材と離隔させてあるので、金属板の一部が溶解しても、その直下のみならず他の部分に溶湯が回り込んで流下するので、流下効率がよい。
【0014】
前記金属板保持部は、前記突出部の上面及び一対の突出部の各端部同士を結ぶ部分に前記金属板に接触してこの金属板を下から保持すると共に前記フィルター部材の上面から離隔させる下保持面と、前記金属板の周縁に接触してこの金属板の水平移動を規制する金属板保持縁部とを有することで、より確実に金属板を保持することができる。
【0015】
また、各フィルター単体の隣接部に下方から接触して各フィルター単体間の隙間を下方から塞ぐ横梁部を設けてもよい。この横梁部により、下記フィルター単体間の隙間からの溶湯の漏れ及び下方からのガス噴出を防ぐことができる。
【0016】
各フィルター単体は例えば、側縁と側縁の内側に多数の貫通孔を有する形状に形成することができる。
【0017】
本発明は、フルモールド鋳造法に特に好適に実施することが可能である。
【0018】
一方、上記特徴のいずれかに記載の鋳物用フィルター支持具を用いた鋳型設備の特徴は、掛堰内に充填した砂に湯道を形成し、湯道上に本体部の下側解放部を合わせて鋳物用フィルター支持具を設置するとともにその周囲に砂をさらに充填し、金属板を保持させることにある。
【0019】
また、この鋳型設備を用いた鋳造方法の特徴は、掛堰に溶湯を注いでこの掛堰内に溶湯を蓄え、蓄えられた溶湯で金属板を溶解して前記フィルター部材を通過させて湯道に溶湯を供給することにある。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、フィルターのずれまたは離脱を防止できるとともに、鋳造方案の立案やフィルターの設置作業が容易で、設置作業がより安全であり、掛堰からの注湯を安定して供給しうる鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及びこれを用いた鋳造方法を提供しうるに至った。
【0021】
本発明の他の目的、構成及び効果については、以下の発明の実施の形態の項から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は本発明にかかる鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備、(b)は従来の鋳型設備を示す概略断面図である。
図2】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備の掛堰近傍の縦断面図である。
図3】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の斜視図である。
図4】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の分解斜視図である。
図5図3におけるV-V線断面図である。
図6図3におけるVI-VI線断面図である。
図7】フィルターと湯道との関係を示す説明図である。
図8】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具(図7以前のものからリブを省略した図、以下の各図で同様。)の正面図であり、以下の各図で実線で描かれた部分が意匠としての特徴を有する部分である。
図9】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の平面図である。
図10】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の底面図である。
図11】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の左側面図である。
図12】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の右側面図である。
図13】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具のA-A線拡大断面図である。
図14】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具のB-B線拡大断面図である。
図15】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の斜視図である。
図16】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の意匠としての特徴を有する部分を示すA-A線参考拡大断面図である。
図17】本発明にかかる鋳物用フィルター支持具の意匠としての特徴を有する部分のみを示す参考拡大斜視図である(横梁部は省略)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、適宜添付図面を参照しながら、本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に係る鋳物用フィルター支持具1を用いた鋳型設備を図1,2に示す。鋳型設備100は、鋳型枠120に覆われた鋳型110の上に掛堰130が載置されている。鋳型枠120は定盤123及び中継ぎ枠122内に鋳物用の砂Sで形成された鋳型110が収納され、上部はグリッド状部分を有する上型枠121が掛堰130を支持する。そして、掛堰130内で同じく砂Sにより支持される鋳物用フィルター支持具1と鋳型110の製品部Pとの間を湯道Rで繋いでいる。
【0024】
掛堰130は、取鍋から鋳型110への注湯を受けて外部へのこぼれを防ぐのみならず、溶湯の流れを整えて、ノロ、カスなどの不純物を掛堰130上部へ浮上させる。詳述すると、フィルター部材50の上には金属板140が設置され、注湯された溶湯が一気に湯道Rから流れ落ちないように流れを制限し、上述の不純物を表面に浮かせて鋳型内に入りにくくする一方、溶湯に混入した不純物はフィルター部材50で除去する。製品部Pは、フルモールド鋳造法においては、発泡スチロール等で形成される消失模型が収納されている。溶湯によりガス化した消失模型のガスは、そのガス圧がヘッドより大となった場合に、湯道Rを通ってこの鋳物用フィルター支持具1を通過して噴出するため、フィルター部材50のずれ防止の様々な対策が以下の通り施されている。
【0025】
鋳物用フィルター支持具1は、図2~7に示すように、上下が解放され周部に側壁11を有し筒状に形成された耐熱部材製の本体部10と、上部から注がれる溶湯中の不純物を除去するために筒状部分を横切り配置されるフィルター部材50とを備えている。側壁11は平面視で直方体形状に形成され、長辺の第一横壁11aとこれに直交する短辺の第二横壁11bとを有する。開口12は、上開口12a及び下開口12bである。側壁11には複数のリブ20が形成され、本体部10の補強と砂Sへの食いつきの向上を担っている。また、後述のフィルター覆い16は張り出すため、張出支持部21を設けて補強を図っている。
【0026】
フィルター部材50は複数枚のフィルター単体51に複数枚分割され、側壁11から内側に突出する突出部13,13を一対有している。この各突出部13の下にフィルター単体51の側部をスライド可能に受け入れるスライド溝14を図のX軸方向に沿うように形成してフィルター保持部H1を構成している。各フィルター単体51は隣接するように並べられて本体部10のフィルター保持部H1により水平(X,Y方向)及び垂直(Z方向)方向の移動を規制されている。
【0027】
また、突出部13の一部をフィルター単体51を上方から挿入可能な長さだけ切り欠いた切り欠き部15を有する。そして、スライド溝14の一端部にこのスライド溝14に受け入れられたフィルター単体51(51d)の上部を覆うフィルター覆い16を形成してある。このフィルター覆い16の対向位置に端突出部13aを設け、突出部13,13と共にフィルター部材50の上周囲の隙間を覆うことで、貫通孔53を溶湯Mが通るように周部の流れを制限している。このフィルター覆い16の下にはスライド溝14に沿ってフィルター単体51が進入可能な空洞部14aを形成する。
【0028】
フィルター単体51は、平面視で略方形に形成され、側縁52と側縁の内側に多数の貫通孔53を有している。貫通孔53の形状、大きさ、配置は不純物の除去目的に合わせて適宜変更が可能である。隣接するフィルター単体51,51どうしの間の隙間55は、水平方向(X方向)にずれてこの隙間55から溶湯が素通りすることを防止するため、隣接するフィルター単体51,51どうしの間の隙間55の下部に横梁部17を設けてある。横梁部17は、砂の整形では支持にしくいフィルター単体51,51どうしの間を下方から容易に支持できる。
【0029】
本体部10は、上分割体30及び下分割体40が接合され、両者の接合間に先のスライド溝14が形成されている。3本の横梁部材41は、略直方体の棒形状であり、下分割体40に形成された切り欠きに嵌合して固定され、上述の横梁部17を形成する。封止部材31は、切り欠き部15に係合して突出部13と略同形状の外径を呈するようにL字型に形成されている。
【0030】
突出部13、端突出部13a、フィルター覆い16及び封止部材31の上部には、金属板140を下からZ方向に向かって支える下保持面18を形成する。また、金属板保持縁部19を上分割体30の上端に形成しており、水平方向(XY方向)に支えている。そして、これら下保持面18及び金属板保持縁部19により上分割体30の上端周縁から溶湯Mが本体部10内に流入することを防ぐ金属板保持部H2を形成している。
【0031】
複数枚のフィルター単体51と、複数の湯道Rの配置について、図7を参照しながら説明する。湯道R1~4は、鋳型の製品部Pの容量や鋳造方案に応じて複数経路が必要となる。本発明では、湯道Rの必要数に応じてX方向に本体部10を延長し、その長さをカバーできるようにフィルター単体51a~51dの枚数を増やせばよい。なお、各フィルター単体51a~51dに割り付ける湯道R1~4の本数は適宜変更されるものであり、各フィルター単体51a~51d毎に同一でなくてもよい。
【0032】
本実施形態では、同一サイズの4枚のフィルター単体51a~51dを用いており、フィルター覆い16の下の空洞部14aは、第四フィルター単体51dをこの空洞部14aに収納させることにより、切り欠き部15が解放される大きさとなっている。そして、この第四フィルター単体51dをこの空洞部14aに収納させた状態で、切り欠き部15を利用して第一ないし第三フィルター単体51a~51cをスライド溝14に順次挿入し、X軸マイナス方向にずらしていくとよい。切り欠き部15はフィルター単体51の外形寸法だけ切り欠けばよいが、図4に示すように突出部13の下角を切り欠き部15のいずれか一方で削れば、フィルター単体51を傾けてスライド溝14に挿入できるため、フィルター単体51の外径寸法より切り欠き部15は狭くても良い。
【0033】
その後、第四フィルター単体51dをX軸マイナス方向に移動させて第三フィルター単体51cと接触させた状態で、フィルター覆い16に形成した2つの貫通孔16a,16aにピン141をそれぞれ挿入する。4枚のフィルター単体51a~51dがX軸プラス方向に移動しようとしても、このピン141に第四フィルター単体51dの側縁が接触し、移動は規制され、フィルター部材50の離脱が防止される。第三フィルター単体51c、第四フィルター単体51dはその一部が突出部13により上方から押さえられ、また、XY方向に対する移動を規制されているので、切り欠き部15から離脱することはない。
【0034】
符号30,31,40,41,51に示す各部材は、種々の耐熱材料を用いればよく、砂の周りにフェノール樹脂・ヘキサミン硬化剤等の(熱)硬化性樹脂コーティングされ、砂粒同士の付着を防ぐステアリン酸カルシウムを混入した鋳物砂を型で成形し、焼き固めることで製作が可能である。符号30,40,41の部材は例えば同様の樹脂の鋳物用の接着剤で接合するとよい。また、セラミックの他、湯道Rを形成するための有機繊維、無機繊維及び(熱)硬化姓樹脂の混合素材を用いてもよい。有機繊維にはパルプ、非木材パルプ、古紙パルプなどを用いることができ、無機繊維には炭素繊維、ロックウール、セラミック繊維、その他の鉱物繊維などを用いることができる。フィルター単体51は、上述の各材料の他、耐熱金属またはセラミック等を材料とする他、これらの材料よりなる繊維等のメッシュでフィルタリング部を形成したフィルターを用いることもできる。
【0035】
金属板140には、溶解を助長するための貫通孔を形成することがあり、その数、寸法及び位置は適宜変更が可能である。金属板140は、溶解して鋳物の一部となるため、鋳物の成分に影響を及ぼさない材料であればよい。鉄鋳物であれば、鉄板や鋼板、アルミニウム鋳物であればアルミニウム板が用いられる。ピン141も例えば50ミリ程度の長さの釘を用いることができるが、同様に溶解して鋳物の一部となるため、その寸法、長さ、形状、材質は適宜変更が可能である。
【0036】
使用に際しては、図3の組み立て状態において、図4に示すように貫通孔16aにピン141を挿入してフィルター単体51の移動を規制するとともに、金属板保持部H2に金属板140を係合させて保持させる。従来のように鋳型110内にフィルターは不要なので、その分、鋳型110を小型に形成できて費用効率が良い。そして、図1(a),2の如く鋳型110の上型枠121の上に置いた掛堰130の湯道Rに対応させて鋳物用フィルター支持具1を設置し、周りを砂Sで充填させる。この状態で上部より溶湯を注ぎ込む。
【0037】
金属板140により本体部10の上開口12aは塞がれているため、溶湯はこの掛堰130内に溜まり、ノロなどの不純物は上部に浮き上がる。金属板140が一部分溶解されると、その溶解部分からフィルター部材50上部に溶湯は注ぎ込まれる。フィルター部材50上部と金属板保持部H2に保持される金属板140との間には空間が設けられているため、金属板140の一部が溶解しただけであっても、そこを通過する溶湯は直下のフィルター部材50の貫通孔53のみならず他の部位の貫通孔53上に回ってそこからも流下するため、金属板140とフィルター部材50を通じての流下の効率が良い。
【0038】
溶湯はさらに湯道Rを通過して製品部Pに到達する。フルモールド鋳造法の場合、この製品部Pには発泡スチロール製の模型が位置し、溶湯との接触でガス化がなされる。このガスは湯道Rを通って逆流し、鋳物用フィルター支持具1のフィルター部材50を通過して上方に噴出する。しかし、先の突出部13をはじめとするフィルター保持部H1及びピン141によりフィルター部材50の移動は規制されて、外れることがないので安全である。
【0039】
また、掛堰130に溶湯が残っておれば、逆流したガスによる黒煙や火炎の発生は防止されることとなり環境保全に寄与することとなる。ピン141は溶解することもあるが、このガスの逆流は注湯からおおむね10-20秒後であり、その間にピン141は維持されているので、フィルター部材50がずれることもない。注湯後に、フィルター部材50を除く鋳物用フィルター支持具1は粉砕され、固化した溶湯から取り除かれる。
【0040】
最後に、図8以降に、上記実施形態の意匠を明らかにするための図を列挙する。実線部分が意匠としての保護を求める場合の対象であり、破線部分は意匠としての保護を求める対象ではない。一点鎖線は、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。
【0041】
なお、本発明の上記実施形態は本発明の趣旨を逸脱しない限り種々の改変が可能である。
上記実施形態では、図4に示すように切り欠き部15をフィルター覆い16に近い側に形成したが、端突出部13aに近い側に形成してもよい。この場合、全てのフィルターを入れ終わってから、すべてのフィルターをX軸のマイナス方向に一斉に動かすこととなる。
【0042】
また、突出部13の切り欠き部15近傍の下角に図4の如くRまたは傾斜を設けることで、切り欠き部15の長さをフィルター単体51の1枚の長さより短く形成しても、フィルター単体51をX軸に対し傾けてスライド溝14に挿入することができる。この場合、切り欠き部15を挟んでフィルター単体51の1枚の両端に突出部13が位置するようにすれば、フィルター単体51が1枚でも着脱しうる。
【0043】
本明細書の別の発明は、上下が解放され周部に側壁を有し筒状に形成された耐熱部材製の本体部と、上部から注がれる溶湯中の不純物を除去するために前記本体部の筒状部分を横切り配置されるフィルター部材とを備え、前記フィルター部材はフィルター保持部に保持され、前記フィルター部材と離隔させてこのフィルター部材の上を覆うように金属板を保持可能な金属板保持部を備えるものとして把握することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及びこれを用いた鋳造方法として利用することができる。本発明は、通常の木型法のほか、フルモールド鋳造法に特に好適に実施することができ。
【符号の説明】
【0045】
1:鋳物用フィルター支持具、10:本体部、11:側壁、11a:第一横壁、11b:第二横壁、12:開口、12a:上開口、12b:下開口、13:突出部、13a:端突出部、14:スライド溝、14a:空洞部、15:切り欠き部、16:フィルター覆い、16a:貫通孔、17:横梁部、18:下保持面、19:金属板保持縁部、20:縦リブ、21:張出支持部、30:上分割体、31:封止部材、40:下分割体、41:横梁部材、50:フィルター部材、51:フィルター単体、51a~51d:第一~第四フィルター単体、52:側縁、53:貫通孔、54:フィルター単体の側部、55:隙間、100:鋳型設備、110:鋳型、120:鋳型枠、121:上型枠、122:中継ぎ枠、123:定盤、130:掛堰、140:金属板、141:保持ピン、H1:フィルター保持部、H2:金属板保持部、F:フィルター、M:溶湯、P:製品部、R:湯道、S:砂
【要約】
【課題】 鋳型の製品部から生じるガスによるフィルターのずれまたは離脱を防止できるとともに、掛堰からの注湯を安定して供給しうる鋳物用フィルター支持具及びこれを用いた鋳型設備及び鋳造方法を提供すること。
【解決手段】 耐熱部材製の本体部10と、溶湯中の不純物を除去するためのフィルター部材50とを備える。フィルター部材50は複数枚のフィルター単体51に複数枚分割され、側壁11から内側に突出する突出部13の下のスライド溝14でフィルター保持部H1を構成する。各フィルター単体51はフィルター保持部H1により水平・垂直方向の移動を規制される。突出部13の一部をフィルター単体51を上方から挿入可能な長さだけ切り欠いた切り欠き部15を有し、スライド溝14の一方にこのスライド溝14に受け入れられたフィルター単体51の上部を覆うフィルター覆い16を形成してある。
【選択図】 図4
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