(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】伝動ローラ並びにそれを有するピン歯サイクロイド減速機及び軸受
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20220317BHJP
F16C 19/24 20060101ALI20220317BHJP
F16C 27/04 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F16H1/32 A
F16C19/24
F16C27/04
(21)【出願番号】P 2021504554
(86)(22)【出願日】2018-06-12
(86)【国際出願番号】 CN2018090756
(87)【国際公開番号】W WO2019237238
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】520399006
【氏名又は名称】クアンタ マシナリー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】QUANTA MACHINERY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.25 Xiongzhuang Road Kunshan City Suzhou, Jiangsu 215300, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】特許業務法人梶・須原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スン ズージェン
(72)【発明者】
【氏名】ジォン メイジュウ
(72)【発明者】
【氏名】ポン シュエユン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン リェンシン
【審査官】岡本 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-044537(JP,A)
【文献】特開昭59-077124(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 1/32
F16C 19/24
F16C 27/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイクロイドディスクと、サイクロイドディスクの外側を周回するピン歯ハウジングと、サイクロイドディスクとピン歯ハウジングとの間に介在したピン歯ユニットとを備えるピン歯サイクロイド減速機であって、前記ピン歯ユニットが、ピン歯ハウジングの内側円周方向に沿って均一に分布した伝動ローラを複数有するピン歯サイクロイド減速機において、
前記伝動ローラは、スチールベルトまたはスチールワイヤを螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラを備え、前記中空ローラのその軸方向に沿う両端が押圧されたときに、前記中空ローラの長さは、変化
せず、
前記伝動ローラは、前記中空ローラ内に位置する内芯体を更に備え、前記中空ローラの内壁面と前記内芯体の外壁面との間には、中空ローラを弾性変形させる隙間が設けられており、前記内芯体は、中実柱体または螺旋ばねであることを特徴とするピン歯サイクロイド減速機。
【請求項2】
前記中空ローラの管壁の厚さは、前記中空ローラの外径の1/4~1/6であることを特徴とする請求項1に記載のピン歯サイクロイド減速機。
【請求項3】
前記中空ローラの外径は、1.5mm~10mmであることを特徴とする請求項1に記載のピン歯サイクロイド減速機。
【請求項4】
前記内芯体は、螺旋ばねであり、前記螺旋ばねと前記スチールベルトまたは前記スチールワイヤとの螺旋方向は、逆であることを特徴とする請求項
1に記載のピン歯サイクロイド減速機。
【請求項5】
前記伝動ローラは、前記中空ローラと前記内芯体とを接着するための弾性接着剤を更に備えることを特徴とする請求項
1に記載のピン歯サイクロイド減速機。
【請求項6】
伝動装置に用いられる伝動ローラであって、
前記伝動ローラは、スチールベルトまたはスチールワイヤを螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラを備え、前記中空ローラのその軸方向に沿う両端が押圧されたときに、前記中空ローラの長さは、変化
せず、
前記伝動ローラは、前記中空ローラ内に位置する内芯体を更に備え、前記中空ローラの内壁面と前記内芯体の外壁面との間には、中空ローラを弾性変形させる隙間が設けられていることを特徴とする伝動ローラ。
【請求項7】
前記中空ローラの管壁の厚さは、前記中空ローラの外径の1/4~1/6であることを特徴とする請求項
6に記載の伝動ローラ。
【請求項8】
前記中空ローラの外径は、1.5mm~10mmであることを特徴とする請求項
6に記載の伝動ローラ。
【請求項9】
前記内芯体は、中実柱体または螺旋ばねであることを特徴とする請求項
6に記載の伝動ローラ。
【請求項10】
前記内芯体は、螺旋ばねであり、前記螺旋ばねと前記スチールベルトまたは前記スチールワイヤとの螺旋方向は、逆であることを特徴とする請求項
9に記載の伝動ローラ。
【請求項11】
前記伝動ローラは、前記中空ローラと前記内芯体とを接着するための弾性接着剤を更に備えることを特徴とする請求項
6に記載の伝動ローラ。
【請求項12】
間隔を空けて設けられる外軸受輪と内軸受輪、および、外軸受輪と内軸受輪の間に均一に設けられる複数のローラを備える軸受であって、
前記ローラは、請求項
6から11の何れか一項に記載の伝動ローラであることを特徴とする軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械分野に関し、特に圧力を受けたときに破損しにくく、使用寿命が長い伝動ローラ並びに当該伝動ローラを有するピン歯サイクロイド減速機及び軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
機械分野では、ピン歯サイクロイド減速機、軸受等の伝動装置に伝動ローラがよく用いられている。伝統的な伝動ローラは中実ローラであり、伝動装置の使用環境が悪いと過負荷問題が頻繁に発生する可能性がある。さらに、中実ローラも不必要な余計負荷を受け、摩耗が異常に増加し、ひいては破壊されてしまうことがある。これは、現在の伝動装置の生産に普通に存在する共通の問題点でもある。組み立てられたばかりの新機は、精度が良好であるが、しばらく使用されると、精度が大きく低減し、潤滑油が急速に黒くなり、精度保持時間が短すぎて、要求を満たすのにあまりに不十分である。
【0003】
このような窮地を解決すべく、現在国内で採用される主な措置としては、加工精度および組立精度を更に高め、全面的に輸入原品へ近づくよう努力している。精度を高める主な措置は、より高度な、主に輸入された加工機器を使用することである。しかし、事実から証明できるように、このやり方だけでは目的を果たすことができず、これによる生産コストも高価であり、将来実際の商品化をする際に海外製品と競争し得る能力を持たせるか否かは疑わしい。
【0004】
また、伝統的な中実ローラの替わりに、弾性を有する中空ローラを伝動装置に導入して、加工誤差、動作摩耗等の原因による不良問題を弾性補償によって補うことも提案されている。実践から証明できるように、中空ローラが圧力を受けたときに僅かに変形収縮可能であるため、伝動装置の部品間が加工誤差や組立の不正確さによって過剰な締り嵌めとなることは回避され、または摩耗による過大な隙間は補償される。よって、弾性補償は、確実に加工精度の要求を低減可能であり、摩耗を減少し、伝動装置の使用寿命を著しく延長し、精度を保持する。
【0005】
しかし、伝動装置の動作条件が著しく悪化する可能性があり、過負荷衝撃等の状況が頻繁に発生することを考慮し、如何にして弾性を有する中空ローラの耐圧能力を一層強化してその使用寿命を延長するかは、伝動装置の寿命を延長するもう1つの技術的チャレンジとなっている。
【0006】
これに鑑みて、上記技術問題を解決するために、新たな伝動ローラ並びに当該伝動ローラを有するピン歯サイクロイド減速機及び軸受を提供する必要が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、圧力を受けたときに破損しにくく、使用寿命が長い伝動ローラ並びに当該伝動ローラを有するピン歯サイクロイド減速機及び軸受を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記発明の目的を果たすべく、本発明は、ピン歯サイクロイド減速機を提供する。前記ピン歯サイクロイド減速機は、サイクロイドディスクと、サイクロイドディスクの外側を周回するピン歯ハウジングと、サイクロイドディスクとピン歯ハウジングとの間に介在したピン歯ユニットとを備え、前記ピン歯ユニットは、ピン歯ハウジングの内側円周方向に沿って均一に分布した伝動ローラを複数備え、前記伝動ローラは、スチールベルトまたはスチールワイヤを螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラを備え、前記中空ローラのその軸方向に沿う両端が押圧されたときに、前記中空ローラの長さは、変化しない。
【0009】
本発明の更なる改良として、前記中空ローラの管壁の厚さは、前記中空ローラの外径の1/4~1/6である。
【0010】
本発明の更なる改良として、前記中空ローラの外径は、1.5mm~10mmである。
【0011】
本発明の更なる改良として、前記伝動ローラは、前記中空ローラ内に位置する内芯体を更に備え、前記中空ローラの内壁面と前記内芯体の外壁面との間には、中空ローラを弾性変形させる隙間が設けられている。
【0012】
本発明の更なる改良として、前記内芯体は、中実柱体または螺旋ばねである。
【0013】
本発明の更なる改良として、前記内芯体は、螺旋ばねであり、前記螺旋ばねと前記スチールベルトまたは前記スチールワイヤとの螺旋方向は、逆である。
【0014】
本発明の更なる改良として、前記伝動ローラは、前記中空ローラと前記内芯体とを接着するための弾性接着剤を更に備える。
【0015】
上記発明目的を果たすべく、本発明は、伝動装置に用いられる伝動ローラを更に提供する。前記伝動ローラは、スチールベルトまたはスチールワイヤを螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラを備え、前記中空ローラのその軸方向に沿う両端が押圧されたときに、前記中空ローラの長さは、変化しない。
【0016】
本発明の更なる改良として、前記中空ローラの管壁の厚さは、前記中空ローラの外径の1/4~1/6である。
【0017】
本発明の更なる改良として、前記中空ローラの外径は、1.5mm~10mmである。
【0018】
本発明の更なる改良として、前記伝動ローラは、前記中空ローラ内に位置する内芯体を更に備え、前記中空ローラの内壁面と前記内芯体の外壁面との間には、中空ローラを弾性変形させる隙間が設けられている。
【0019】
本発明の更なる改良として、前記内芯体は、中実柱体または螺旋ばねである。
【0020】
本発明の更なる改良として、前記内芯体は、螺旋ばねであり、前記螺旋ばねと前記スチールベルトまたは前記スチールワイヤとの螺旋方向は、逆である。
【0021】
本発明の更なる改良として、前記伝動ローラは、前記中空ローラと前記内芯体とを接着するための弾性接着剤を更に備える。
【0022】
上記発明目的を果たすべく、本発明は、軸受を更に提供する。前記軸受は、間隔を空けて設けられる外軸受輪と内軸受輪、および、外軸受輪と内軸受輪の間に均一に設けられる複数の上記伝動ローラを備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、以下の有利な作用効果を有する。本発明のピン歯サイクロイド減速機は、スチールベルトまたはスチールワイヤを螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラを伝動ローラとするため、ピン歯サイクロイド減速機が受けるべき圧力を担持可能であるとともに、中空ローラは、外部圧力を受けたときに、端部が破損しにくく、使用中に軸方向の中心部に向かう変形が生じないため、使用寿命が長くなる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
以下では、図面を参照し、制限的ではなく、例示的な方式で本発明の幾つかの具体的な実施例を詳細に記述する。図面における同じ符号が同じまたは類似する部品または部分を示す。当業者であれば理解できるように、これらの図面が必ずしもスケールに応じて描かれるとは限らない。
【
図1】本発明の好適な実施例のピン歯サイクロイド減速機の断面模式図である。
【
図3】長中空ローラは圧力を受けたときに端部が変形する模式図である。
【
図4】短中空ローラは圧力を受けたときに端部が変形する模式図である。
【
図5a】本発明の好適な実施例の伝動ローラの構造模式図である。
【
図6a】本発明の別の好適な実施例の伝動ローラの構造模式図である。
【
図7a】本発明の別の好適な実施例の伝動ローラの構造模式図である。
【
図8a】本発明の別の好適な実施例の伝動ローラの構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の目的、解決手段およびメリットがより明瞭になるように、以下では、図面および具体的な実施例を組み合わせて本発明を詳細に記述する。
【0026】
ピン歯サイクロイド減速機は、現在、工業ロボットの伝動装置として広く応用されている。特にRV型減速機に代表されるピン歯サイクロイド減速機は、コンパクトな構造および強い伝動能力により、ロボットシステムの最も重要な部品となっている。
【0027】
図1を参照し、
図2も組み合わせると、本発明のピン歯サイクロイド減速機100の好適な実施形態が示される。ピン歯サイクロイド減速機100は、主に、中間に位置することでサーボモータ(図示せず)を接続する入力軸(図示せず)と、入力軸の末端に設けられる入力歯車(図示せず)と、入力歯車の周囲に噛合設置される正歯車(図示せず)と、正歯車に固定されるクランク軸1と、クランク軸1に嵌合設置されるサイクロイドディスク2と、クランク軸1とサイクロイドディスク2の間に嵌合設置される軸受3と、ピン歯ハウジング4と、サイクロイドディスク2とピン歯ハウジング4との間に介在したピン歯ユニット5と、サイクロイドディスク2に嵌合設置される出力素子6とを備える。サイクロイドディスク2には、クランク軸1と軸受3とを収容するための貫通孔21が設けられている。本発明では、ピン歯サイクロイド減速機100の各部品同士の組立、動作原理等は、何れも第201510640442.7号特許を参照可能であるため、ここで繰り返し説明しない。
【0028】
具体的に、
図2に示すように、ピン歯ユニット5は、ピン歯ハウジング4の内側円周方向に沿って均一に分布したピン歯51を複数含む。本発明では、ピン歯51として、
図4~
図8に示す伝動ローラ7が採用され、伝動ローラ7がある程度の弾性を有する中空ローラ71を備えるが、それに限定されるものではない。過負荷等の状況に遭ったときに、中空ローラ71は、圧力を受けたときに僅かに変形収縮して弾性補償を発生するため、サイクロイドディスク2、ピン歯ハウジング4とピン歯ユニット5の各部品間が加工誤差や組立不正確によって過剰な締り嵌めとなることは回避され、または摩耗による過大な隙間は補償される。したがって、加工精度の要求が低減可能であり、摩耗が減少され、ピン歯サイクロイド減速機100の使用寿命が著しく延長され、精度が維持される。
【0029】
具体的に、
図4~
図8に示すように、伝動ローラ7は、スチールベルト712またはスチールワイヤ712'を螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラ71を備える。「密に巻き付ける」とは、スチールベルト712またはスチールワイヤ712'を隙間なしで螺旋状に巻き付けることを指す。中空ローラ71のその軸方向に沿う両端が押圧されたときに、中空ローラ71の長さは、変化しない。ただし、
図4は、単に、伝動ローラ7の軸方向一端の1周のスチールベルト712またはスチールワイヤ712'を示す。
【0030】
中空ローラ71は、外部圧力を受けたときに、端部が破損しにくいとともに、使用中に軸方向の中心部に向かう変形が生じないため、使用寿命が長くなる。詳細には以下のようになる。
【0031】
図3に示すように、その軸方向に沿って1つの全体となる中空ローラは、長さが長い中空ローラ(以下では、長中空ローラと略称)として理解されてもよい。圧力Pが長中空ローラの端部に作用したときに、当該端部は、変形する。具体的に、端部の管壁は、圧力Pの作用によって内方へ窪み、図におけるCDEで囲まれる1つのピットをその周囲に形成する。このピットは、ポートにおいて最も深くなり、ポートから一番遠く離れたDにおいて最も浅くなる。ポートが内方へ窪むことにより、
図1における点線で示される曲線が形成される。内壁において、元のB点が内方へ窪んだ後、A点に移る。AB両点の距離は、
図3におけるΔで示されており、これは、ここでの最大の変形距離である。
【0032】
本発明では、スチールベルト712またはスチールワイヤ712'を螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラ71において、中空ローラ71の軸方向一端の一周のスチールベルト712またはスチールワイヤ712'が、
図4に示す短中空ローラを構成する。圧力P'が
図3における長中空ローラと同じ直径および厚さを有する短中空ローラに作用したときに、短中空ローラに同様に内方へ窪む現象が発生する。
図4の点線は、このような場合の変形を示す。適切な圧力P'の作用により、内壁での元のB'点がA'に移って下方へΔ'だけ窪む。その際、Δ'=Δ、即ち、両者の内方へ窪んだ量が同じであっても、変形距離が異なるため、変形の性質が完全に異なることが分かる。
【0033】
図3に示す長中空ローラに関しては、全長剛性の制限により、変形がポート付近の1つの小円弧状円CDE内のみで発生可能であり、A点での管壁形状変化が激しく、曲率半径が非常に小さい。一方で、
図4に示す短中空ローラに関しては、長さ方向に大きな制約があまりないため、
図4の点線で示される短中空ローラの軸方向に沿う両ポートでの変形曲線がほとんど平行で同じである。周方向に沿うC'からE'までの非常に長い弧線が変形に関与するため、内壁のB'点の凹み量Δ'と
図3におけるΔとが等しくなっても、当該点での管壁の形状変化が大きくなく、曲率半径が非常に大きい。曲率半径の変化は、当該箇所で実に変形する度合いを示す。したがって、両者の凹み量が同じであっても、長中空ローラは引き裂かれる恐れがあるが、短中空ローラは安全であり、破損しにくく、使用寿命が長くなる。
【0034】
上記分析から分かるように、長中空ローラよりも、短中空ローラは、大きな変形を受け止めることができる。したがって、本発明の中空ローラ71は、伝統的な軸方向に沿って一体となる中空ローラ71よりも、大きな変形を受け止めることができる。本発明の伝動ローラ7は、長中空ローラの弾性補償作用を発揮可能であるだけでなく、圧力を受けると同時に、破損しにくく、使用寿命が長くなる。
【0035】
ただし、スチールベルト712の厚さと幅は問わない。且つ、スチールワイヤ712'の断面は、円形または他の形状であってもよい。コンパクトで密に巻き付ける方式で、伝動ローラ7に必要な剛性を有する中空ローラ71を形成すればよい。中空ローラ71の表面がキログラムごとの圧力を受ける度に、径方向に沿う変形量は、2~5μmである。
【0036】
伝動ローラ7とピン歯溝およびサイクロイドディスク2との充分な接触を保証し、接触面積を増加させ、摩耗を減少するために、中空ローラ71の外周を研磨することで適切な外径サイズおよび必要な清浄度を保証することができる。例えば、中空ローラ71の外径は、異なる需要に応じるように、1.5mm~10mmである。
【0037】
中空ローラ71の管壁の厚さは、中空ローラ71の外径の1/4~1/6であり、管壁の厚さは、0.3mm~2.5mmである。例えば、中空ローラ71の外径が6mmであるときに、スチールベルト712の厚さまたはスチールワイヤ712'のワイヤ径は、1.5mmとなる。または、中空ローラ71の外径が10mmであるときに、スチールベルト712の厚さまたはスチールワイヤ712'のワイヤ径は、2.5mmとなる。または、中空ローラ71の外径が1.5mmであるときに、スチールベルト712の厚さまたはスチールワイヤ712'のワイヤ径は、0.3mmとなる。
【0038】
中空ローラ71の外径が大きいほど、中空ローラ71の管壁は、厚くなる。これにより、中空ローラ71自身は、耐衝撃強度をある程度有すると同時に、大きな外力によって押圧されるときにも、ある程度弾性変形を発生して補償を行うこともできる。中空ローラ71の管壁は、スチールベルト712の厚さに一致し、または、スチールワイヤ712'がコンパクトで密に巻き付けられた後で中空ローラ71の径方向に沿うワイヤ径は、一致する。
【0039】
更に、
図7a~
図8bに示すように、上記何れか一種の伝動ローラ7は、中空ローラ71内に位置する内芯体72を更に備え、中空ローラ71の内壁面と内芯体72の外壁面との間には、中空ローラ71を弾性変形させる隙間Δ''が設けられている。非常に大きな荷重の作用の下、即ち、中空ローラ71が外部圧力を受けたときに、中空ローラ71は、内方へ弾性変形して内芯体72に接触し、内芯体72は、中空ローラ71へ巨大な支持力を供給することで負荷衝撃に対する抵抗を強化する。これにより、中空ローラ71が動作中に異常に巨大な衝撃圧力を受けたときに破壊されないことは、保証可能である。
【0040】
具体的に、
図7a~
図7bに示すように、内芯体72は、中実柱体72aであり、中実柱体72aの耐圧能力が強く、中空ローラ71が更に変形して構造の破壊を引き起こすことを防止可能である。
【0041】
または、
図8a~
図8bに示すように、内芯体72は、スチールワイヤ712'または狭くて薄いスチールベルト712を螺旋状に密に巻き付けて形成された螺旋ばね72bであり、中空ローラ71の最後の変形度合いを減少可能である。これにより、伝動ローラ7全体は、力を受けたときに、先に柔らかく、後で硬くなり、最良の補償作用を果たす。
【0042】
また、中空ローラ71がスチールワイヤ712'または狭くて薄いスチールベルト712を螺旋状に密に巻き付けて形成された螺旋ばね状の中空構造であり、且つ内芯体72もスチールワイヤ712'または狭くて薄いスチールベルト712を螺旋状に密に巻き付けて形成された螺旋ばね72bであるときに、中空ローラ71と螺旋ばね72bとの螺旋巻き付け方向は、逆である。通常、中空ローラ71と前記螺旋ばね72bは、異なる需要に応じるように、異なる幅、厚さの狭くて薄いスチールベルト712または異なる直径のスチールワイヤ712'を密に巻き付け形成されてもよい。また、中空ローラ71は、一般的に螺旋ばね72bよりも弾性が大きく、弾性補償を有効に行うことができ、または、螺旋ばね72bは、一般的に中空ローラ71よりも強度が大きく、より良好な支持作用を果たす。
【0043】
伝動ローラ7は、中空ローラ71と内芯体72とを接着するための弾性接着剤を更に備える。こうして、中空ローラ71と内芯体72は、一体となり、勝手にスライドすることができない。例えば、中空ローラ71の長さは、内芯体72よりも僅かに短く設定されてもよい。つまり、内芯体72の両端は、それぞれ中空ローラ71の両端から突起してもよい。こうして、先端に弾性接着剤を設けて両者を固定することは便利になる。
【0044】
本発明の上記何れか一種の伝動ローラ7は、更に他の伝動装置に適用可能であり、その構造およびそれが達成できる効果は、上記記述を参照すればよく、ここで繰り返し説明しない。
【0045】
図9に示すように、本発明の上記各種の伝動ローラ7は、軸受3にも用いられてもよい。当該軸受3は、
図1に示す上記ピン歯サイクロイド減速機100におけるクランク軸1とサイクロイドディスク2の間の軸受3として用いられてもよく、軸受3を設ける必要のある他の伝動装置に適用されてもよい。
【0046】
図9に示すように、軸受3は、通常、間隔を空けて設けられる外軸受輪31と内軸受輪32、および、外軸受輪31と内軸受輪32の間に均一に設けられる複数のローラを備える。軸受3のローラ33は、伝動ローラ7の各種の実施例の設置方式を有してもよく、上実施例における伝動ローラ7の達成可能な効果を奏せる。例えば、当該軸受3は、伝動ローラ7部分に記述されたように、担持率が有効に保証されつつ、軸受3の製造精度が低減可能であり、且つ当該軸受3の使用寿命も有効に改善できる。
【0047】
ただし、外軸受輪31、内軸受輪32のそれぞれには、ローラ33の外軌道、内軌道が形成され、外軸受輪31と内軸受輪32は、独立した構造であってもよく、当該軸受を用いた製品の部分構造であってもよく、部品数を減少してコストを低減可能である一方、誤差の積み重ねも減少する。例えば、軸受3が本発明のピン歯サイクロイド減速機100に用いられる際、外軸受輪31、内軸受輪32もそれぞれサイクロイドディスク2、クランク軸1によって構成される。つまり、サイクロイドディスク2での貫通孔21の内壁が直接前記外軌道として形成され、クランク軸1のカムの外面が内軌道として形成されるため、ローラ33は、貫通孔21の内壁とクランク軸1のカムの外面との間に介在可能である。直接ローラ33を弾性的に設けることにより、サイクロイドディスク2とクランク軸1の間またはローラ33自身の製造誤差を相殺し、且つローラ33の担持効果を良好とすることができる。
【0048】
ただし、ローラ33の直径は、内軌道と外軌道の間の隙間よりも僅かに大きく設定される。こうして、静止状態において、ローラ33は、押し潰されて楕円状でプレストレス状態になり、内軌道と外軌道の間に押圧され、1つの空きもない。これにより、過負荷によって破壊されるローラ33がないとともに、内軌道と外軌道の表面も有効に保護される。
【0049】
このように、本発明の伝動ローラ7は、スチールベルト712またはスチールワイヤ712'を螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラ71を備え、外部圧力を受けたときに、端部が破損しにくく、使用中に軸方向の中心部に向かう変形が生じないため、使用寿命が長くなる。更に、ピン歯サイクロイド減速機、軸受等の伝動装置の使用寿命が向上する。
【0050】
本発明のピン歯サイクロイド減速機、軸受は、スチールベルト712またはスチールワイヤ712'を螺旋状に密に巻き付けて形成された中空ローラ71を伝動ローラ7とするため、ピン歯サイクロイド減速機、軸受が受けるべき圧力を担持可能であるとともに、中空ローラ71が外部圧力を受けたときに、端部が破損しにくく、使用中に軸方向の中心部に向かう変形が生じないため、使用寿命が長くなり、更に、ピン歯サイクロイド減速機、軸受等の伝動装置の使用寿命も向上する。
【0051】
以上の実施例は本発明の技術案を制限するためのものではなく、単に説明するためのものに過ぎない。好適な実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者であれば理解できるように、本発明の技術案の精神と範囲を逸脱せずに、本発明の技術案に対して補正や均等物による置換を行うことが可能である。