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特許7041992データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】データ処理装置、データ処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/04 20120101AFI20220317BHJP
【FI】
G06Q30/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021544674
(86)(22)【出願日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 JP2021028413
【審査請求日】2021-07-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516380407
【氏名又は名称】ファーストアカウンティング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166006
【弁理士】
【氏名又は名称】泉 通博
(74)【代理人】
【識別番号】100154070
【弁理士】
【氏名又は名称】久恒 京範
(74)【代理人】
【識別番号】100153280
【弁理士】
【氏名又は名称】寺川 賢祐
(72)【発明者】
【氏名】葛 鴻鵬
(72)【発明者】
【氏名】松田 顕
(72)【発明者】
【氏名】小俣 智
(72)【発明者】
【氏名】森 啓太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 貴亮
(72)【発明者】
【氏名】早川 将和
【審査官】塩田 徳彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-537589(JP,A)
【文献】特表2007-524887(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事業者を識別する番号である事業者識別番号と、前記事業者の名前である事業者名と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する記憶部と、
請求書を発行する前記事業者から第1請求書データを受信する第1送受信部と、
前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者に対応する前記事業者識別番号に前記記憶部において関連付けられた前記利用者識別情報と、前記第1請求書データの宛先の事業者名である宛先事業者名と、を特定する特定部と、
前記宛先事業者名と、前記第1請求書データに含まれる前記事業者識別番号に関連付けて前記記憶部に記憶された前記事業者名と、が一致する場合に、前記第1請求書データに基づいて作成され、特定した前記利用者識別情報を宛先として含み、前記電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信する第2送受信部と、
を有するデータ処理装置。
【請求項2】
受信した前記第1請求書データを前記電子インボイスネットワークで送受信可能な所定の形式に変換するとともに、前記利用者識別情報を付加することにより前記電子インボイスを作成する作成部をさらに有する、
請求項1に記載するデータ処理装置。
【請求項3】
前記第2送受信部は、特定した前記利用者識別情報に対応する、転送先の中継装置の識別情報を送信先解決装置に要求し、前記送信先解決装置から取得した前記中継装置の識別情報を宛先として、前記電子インボイスを送信する、
請求項1又は2に記載するデータ処理装置。
【請求項4】
前記記憶部は、前記事業者の電話番号又は前記事業者における前記請求書を発行した組織を識別する情報である組織識別情報を、前記利用者識別情報と関連づけてさらに記憶し、
前記特定部は、前記第1請求書データに含まれる、前記事業者識別番号と、前記電話番号又は前記組織識別情報と、に対応する前記利用者識別情報を特定する、
請求項1から3のいずれか1項に記載するデータ処理装置。
【請求項5】
前記第1送受信部は、前記宛先事業者名と、前記第1請求書データに含まれる前記事業者識別番号に関連付けて前記記憶部に記憶された前記事業者名と、が一致しない場合に、前記第1請求書データを送信した前記事業者に警告情報を送信する、
請求項1から4のいずれか1項に記載するデータ処理装置。
【請求項6】
前記第2送受信部は、前記電子インボイスネットワークに接続される中継装置から前記電子インボイスを受信し、
前記特定部は、受信した前記電子インボイスに含まれる、前記電子インボイスの宛先の事業者に対応する前記利用者識別情報に前記記憶部において関連付けられた前記事業者識別番号を特定し、
前記第1送受信部は、受信した前記電子インボイスに基づいて作成された第2請求書データを、前記事業者識別番号に対応する前記事業者に送信する、
請求項1からのいずれか1項に記載するデータ処理装置。
【請求項7】
コンピュータに、
請求書を発行する事業者から第1請求書データを受信するステップと、
前記事業者を識別する番号である事業者識別番号と、前記事業者の名前である事業者名と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する記憶部を参照し、前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者に対応する前記事業者識別番号に前記記憶部において関連付けられた前記利用者識別情報を特定するステップと、
前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者名である宛先事業者名を特定するステップと、
前記宛先事業者名と、前記第1請求書データに含まれる前記事業者識別番号に関連付けて前記記憶部に記憶された前記事業者名と、が一致する場合に、前記第1請求書データに基づいて作成され、特定した前記利用者識別情報を宛先として含み、前記電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信するステップと、
を実行させるデータ処理方法。
【請求項8】
コンピュータに実行させる、
請求書を発行する事業者から第1請求書データを受信するステップと、
前記事業者を識別する番号である事業者識別番号と、前記事業者の名前である事業者名と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する記憶部を参照し、前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者名である宛先事業者名と、前記第1請求書データの宛先の事業者に対応する前記事業者識別番号に前記記憶部において関連付けられた前記利用者識別情報を特定するステップと、
前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者名である宛先事業者名を特定するステップと、
前記宛先事業者名と、前記第1請求書データに含まれる前記事業者識別番号に関連付けて前記記憶部に記憶された前記事業者名と、が一致する場合に、前記第1請求書データに基づいて作成され、特定した前記利用者識別情報を宛先として含み、前記電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信するステップと、
を有するプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理装置、データ処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
請求書をオンラインで送受信する請求書管理システムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】WO2017―73102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、受発注や請求にかかる電子文書をネットワーク上でやり取りするための標準化が進められている。我が国においても、電子インボイスの新たな標準仕様であるPEPPOL(Pan-European Public Procurement Online)に準拠させることが発表されている。既存の請求書管理システムでは、新たな標準仕様に対応する電子インボイスを発行することができないため、請求書の発行元が請求書管理システムを改変する必要があるという問題が生じていた。
【0005】
そこで、本発明はこれらの点に鑑みてなされたものであり、請求書の発行元が、新たな標準仕様の電子インボイスに対応していないシステムを用いて、新たな標準仕様の電子インボイスに対応する請求書データを発行できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様のデータ処理装置においては、事業者を識別する番号である事業者識別番号と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する記憶部と、請求書を発行する前記事業者から第1請求書データを受信する第1送受信部と、前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者に対応する前記事業者識別番号に前記記憶部において関連付けられた前記利用者識別情報を特定する特定部と、前記第1請求書データに基づいて作成され、特定した前記利用者識別情報を宛先として含み、前記電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信する第2送受信部と、を有する。
【0007】
受信した前記第1請求書データを前記電子インボイスネットワークで送受信可能な所定の形式に変換するとともに、前記利用者識別情報を付加することにより前記電子インボイスを作成する作成部をさらに有してもよい。
【0008】
前記第2送受信部は、特定した前記利用者識別情報に対応する、転送先の中継装置の識別情報を送信先解決装置に要求し、前記送信先解決装置から取得した前記中継装置の識別情報を宛先として、前記電子インボイスを送信してもよい。
【0009】
前記記憶部は、前記事業者の電話番号又は前記事業者における前記請求書を発行した組織を識別する情報である組織識別情報を、前記利用者識別情報と関連づけてさらに記憶し、前記特定部は、前記第1請求書データに含まれる、前記事業者識別番号と、前記電話番号又は前記組織識別情報と、に対応する前記利用者識別情報を特定してもよい。
【0010】
前記記憶部は、前記事業者の名前である事業者名を前記事業者識別番号と関連付けてさらに記憶し、前記特定部は、前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者名である宛先事業者名をさらに特定し、前記第2送受信部は、前記宛先事業者名と、前記第1請求書データに含まれる前記事業者識別番号に関連付けて前記記憶部に記憶された前記事業者名と、が一致する場合に前記電子インボイスを送信してもよい。
【0011】
前記第1送受信部は、前記宛先事業者名と、前記第1請求書データに含まれる前記事業者識別番号に関連付けて前記記憶部に記憶された前記事業者名と、が一致しない場合に、前記第1請求書データを送信した前記事業者に警告情報を送信してもよい。
【0012】
前記第2送受信部は、前記電子インボイスネットワークに接続される前記中継装置から前記電子インボイスを受信し、前記特定部は、受信した前記電子インボイスに含まれる、前記電子インボイスの宛先の事業者に対応する前記利用者識別情報に前記記憶部において関連付けられた前記事業者識別番号を特定し、前記第1送受信部は、受信した前記電子インボイスに基づいて作成された第2請求書データを、前記事業者識別番号に対応する前記事業者に送信してもよい。
【0013】
本発明の第2の態様のデータ処理方法においては、コンピュータに、請求書を発行する事業者から第1請求書データを受信するステップと、前記事業者を識別する番号である事業者識別番号と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する記憶部を参照し、前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者に対応する前記事業者識別番号に前記記憶部において関連付けられた前記利用者識別情報を特定するステップと、前記第1請求書データに基づいて作成され、特定した前記利用者識別情報を宛先として含み、前記電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信するステップと、を実行させる。
【0014】
本発明の第3の態様のプログラムにおいては、コンピュータに実行させる、請求書を発行する事業者から第1請求書データを受信するステップと、前記事業者を識別する番号である事業者識別番号と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する記憶部を参照し、前記第1請求書データに含まれる、前記第1請求書データの宛先の事業者に対応する前記事業者識別番号に前記記憶部において関連付けられた前記利用者識別情報を特定するステップと、前記第1請求書データに基づいて作成され、特定した前記利用者識別情報を宛先として含み、前記電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、請求書の発行元が、新たな標準仕様の電子インボイスに対応していないシステムを用いて、新たな標準仕様の電子インボイスに対応する請求書データを発行できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】データ処理システムSの構成を示す概要図である。
図2】データ処理システムSにおけるデータの流れを模式的に示す図である。
図3】データ処理装置1の構成を示すブロック図である。
図4】記憶部11が記憶する利用者情報のデータ構造の例を示す図である。
図5】請求書データの一例を示す図である。
図6】データ処理装置1における処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[データ処理装置1の概要]
図1は、データ処理システムSの構成を示す概要図である。データ処理システムSは、電子インボイスネットワークNに参加する利用者同士で請求書データをオンラインで授受し、処理するためのシステムである。データ処理システムSは、電子インボイスネットワークN、データ処理装置1、複数の会計処理装置2、複数の中継装置3、複数のSMP(Service Metadata Publisher)4及びSML(Service Metadata Locater)5を有する。
【0018】
電子インボイスネットワークNはPEPPOLの仕様に準拠した電子インボイスを授受するためのネットワークである。電子インボイスネットワークNは、インターネット又はイントラネット等を他のネットワークを含んでもよい。
【0019】
データ処理装置1は、会計処理装置2が発行した請求書データに基づく電子インボイスを、請求書の宛先の事業者が利用する会計処理装置2と通信可能に接続された中継装置へ送信する装置である。データ処理装置1は、1以上の会計処理装置2と通信可能に接続される。会計処理装置2は、請求書を発行又は受領し、仕分け等の会計処理を行うための装置である。中継装置3は、データ処理装置1と同様の機能を有する装置である。SMP4は、電子インボイスを送信しようとするデータ処理装置1に対して、電子インボイスの宛先の事業者に対して割り当てられたメタデータを提供するためのサーバである。
【0020】
メタデータは、電子インボイスネットワークNにおいて電子インボイスを送受信する利用者に割り当てられた情報である。SMP4が提供するメタデータは例えば、電子インボイスネットワークNの利用者がアクセス可能なデータ処理装置1又は中継装置3のIPアドレス、URL(Universal Resource Locator)、セキュリティに関する設定情報、利用者が利用可能な取引内容等である。利用可能な取引内容は、例えば、請求の受領可否、即時払いの対応有無、前払いの対応有無等の情報を示す。SML5は、インボイスネットワークに参加する利用者のメタデータを格納したSMP4のロケーション情報をDNS(Domain Name System)サーバに登録する機能を有するサーバである。ロケーション情報は例えば、IPアドレス、URL等である。
【0021】
図2は、データ処理システムSにおけるデータの流れを模式的に示す図である。図2は、会計処理装置2Aが発行した請求書データを会計処理装置2Bが受信するまでの流れを示している。会計処理装置2Aは、発行した請求書データをデータ処理装置1に送信する(図2における(1))。データ処理装置1は、請求書データに含まれる請求書の宛先を示す事業者識別番号を抽出する。事業者識別番号は、例えば適格請求書発行事業者に割り当てられた事業者番号である。
【0022】
データ処理装置1は、事業者識別番号と利用者識別情報を対応付けて記憶したデータベースを参照し、抽出した事業者識別番号に対応する利用者識別情報を特定する(図2における(2))。データ処理装置1は、特定した利用者識別情報が示す事業者(以下、宛先事業者という)に対応するメタデータを管理するSMP4のIPアドレスをDNSサーバ(不図示)から取得する(図2における(3))。
【0023】
データ処理装置1は、SMP4に対して宛先事業者の利用者識別情報に対応するメタデータを要求する(図2における(4))。SMP4は、宛先事業者のメタデータをデータ処理装置1に送信する(図2における(5))。SMP4が送信するメタデータは、宛先事業者が利用する会計処理装置と接続された中継装置3のIPアドレスを含む。データ処理装置1は、受信した請求書データをインボイスネットワークで送受信されるデータ形式の電子インボイスに変換し、電子インボイスを中継装置3に送信する(図2における(6))。中継装置3は、受信した電子インボイスを請求書データに変換し、受信した電子インボイスに含まれている事業者識別番号から宛先事業者を特定し、宛先事業者が使用する会計処理装置2Bに対して、請求書データを送信する(図2における(7))。
【0024】
[データ処理装置1の構成]
図3は、データ処理装置1の構成を示すブロック図である。データ処理装置1は、記憶部11及び制御部12を有する。制御部12は、第1送受信部121、特定部122、作成部123及び第2送受信部124を有する。
【0025】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)及びSSD(Solid State Drive)等の記憶媒体を有する。記憶部11は、制御部12が実行するプログラムを記憶する。記憶部11は、事業者を識別する番号である事業者識別番号と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する。
【0026】
図4は、記憶部11が記憶する利用者情報のデータ構造の例を示す図である。記憶部11は、事業者識別番号、事業者名、部署名、電話番号及び利用者識別情報を関連付けた利用者情報を記憶する事業者名は事業者識別番号に対応する事業者の名称である。利用者識別情報は電子インボイスネットワークNにおける利用者を識別する情報であり、例えばPEPPOL Participant Identifiersである。記憶部11は、利用者情報として、事業者における担当者の連絡先を示す情報を記憶してもよい。
【0027】
記憶部11は、事業者の電話番号又は事業者における請求書を発行した組織を識別する情報である組織識別情報を、利用者識別情報と関連づけて記憶してもよい。部署名は、事業者における請求書を発行した組織又は請求書の宛先となる組織を識別する情報(組織識別情報ともいう)の一例である。図4の例では、「山田商事」は、管理部と製造部のそれぞれに対応する利用者識別情報を有している。組織識別情報は、事業者において組織を一意に識別する組織コードや電話番号、メールアドレス等の連絡先情報であってもよい。記憶部11がこのような情報を記憶することで、同一事業者が組織ごとに異なる複数の利用者識別情報を用いて電子インボイスネットワークNに参加することができる。
【0028】
図3に戻り、制御部12は、記憶部11に記憶されている制御プログラムを実行することにより第1送受信部121、特定部122、作成部123及び第2送受信部124として機能する。第1送受信部121は、会計処理装置2Aとの間で請求書データを送受信する。以下では、データ処理装置1が会計処理装置2Aから受信する請求書データを第1請求書データ、データ処理装置1が会計処理装置2Aに送信する請求書データを第2請求書データと呼ぶ場合がある。第1送受信部121は、請求書を発行する事業者から第1請求書データを受信する。
【0029】
図5は、第1送受信部121が送受信する請求書データDの一例を示す図である。請求書データDは宛先事業者名C1、宛先部署名C2、宛先事業者識別番号C3、電話番号C4、発行元事業者名C5、発行元事業者識別番号C6、請求書番号、請求書発行日、請求書対象となる商品名又はサービス名、請求額、税額、振込先口座番号等を含む。請求書データは、コンピュータにより作成された画像データ又はテキストデータである。請求書データは、画像読取装置(例えばスキャナ又はデジタルカメラ)が請求書を読み取ることによって生成された画像データであってもよい。
【0030】
特定部122は、第1請求書データに含まれる、第1請求書データの宛先の事業者に対応する事業者識別番号に記憶部11において関連付けられた利用者識別情報を特定する。特定部122は、記憶部11が記憶する利用者情報を参照し、第1送受信部121が受信した請求書データDに含まれる宛先事業者識別番号C3に対応する利用者識別情報を特定する。
【0031】
例えば、同一事業者において、事業部ごとに異なる利用者識別情報を用いてインボイスネットワークに参加したい場合がある。そこで、特定部122は、第1請求書データに含まれる、事業者識別番号と、電話番号又は組織識別情報と、に対応する利用者識別情報を特定してもよい。特定部122は、記憶部11に記憶された利用者情報を参照し、事業者識別番号C3に基づいて特定された利用者識別番号が複数存在するかどうかを判定する。事業者識別番号C3に基づいて特定された利用者識別番号が複数存在する場合、特定部122は、受信した請求書データに含まれる電話番号C4又は宛先部署名C2をさらに抽出する。特定部122は、記憶部11が記憶する利用者情報を参照し、宛先事業者識別番号C3と電話番号C4又は宛先部署名C2に対応する利用者識別情報を特定する。
【0032】
なお、特定部122は、組織識別情報として組織コードやメールアドレスを用いて利用者識別情報を特定してもよい。データ処理装置1がこのように動作することで、同一事業者において、複数の利用者識別情報を用途に応じて使い分けてインボイスネットワークに参加することが可能となり、ユーザの利便性が高まる。
【0033】
作成部123は、受信した第1請求書データを電子インボイスネットワークで送受信可能な所定の形式に変換するとともに、利用者識別情報を付加することにより電子インボイスを作成する。作成部123は、第1送受信部121が受信した請求書データをPEPPOL BIS(Business Interoperability Specification)に準拠したデータ形式に変換し、特定部122が特定した宛先事業者の利用者識別情報を付加した電子インボイスを作成する。
【0034】
第2送受信部124は、第1請求書データに基づいて作成され、特定した利用者識別情報を宛先として含み、電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信する。第2送受信部124は、特定部122が特定した宛先事業者の利用者識別情報を含む、電子インボイスを中継装置3に送信する。
【0035】
第2送受信部124は、特定した利用者識別情報に対応する、転送先の中継装置の識別情報を送信先解決装置に要求し、送信先解決装置から取得した中継装置の識別情報を宛先として、電子インボイスを送信してもよい。第2送受信部124は、DNSサーバに対して宛先事業者のメタデータを管理するSMP4のロケーション情報を要求し、取得する。そして、第2送受信部124は、SMP4にメタデータの取得を要求し、SMP4から中継装置3のIPアドレスを含むメタデータを取得する。第2送受信部124は、取得したIPアドレスを宛先として電子インボイスを送付する。
【0036】
第2送受信部124がSMP4からメタデータを取得できない場合も想定される。そこで、第2送受信部124は、メタデータが取得できない場合、SMP4に対して宛先事業者のメタデータを所定の回数繰り返して要求してもよい。所定の回数とは、例えば3回、5回などである。
【0037】
さらに、第2送受信部124は、SMP4から取得したメタデータに含まれる宛先事業者が利用可能な取引内容を示す情報に基づいて、電子インボイスの送信可否を判定してもよい。請求書データに含まれる情報と宛先事業者が利用可能な取引内容とが一致せず、宛先事業者に電子インボイスを送信できないと判定される場合、第2送受信部124は電子インボイスの送信を中止し、第1送受信部121は、警告メッセージを送信してもよい。第2送受信部124は、例えば、記憶部11に記憶されている宛先事業者が利用可能な取引内容を示す利用者情報を参照することにより、宛先事業者に電子インボイスを送信できるか否かを判定する。第2送受信部124は、送信する請求書データにおける支払方法に銀行振り込みが指定されている場合で、宛先事業者の対応可能な支払方法として銀行振り込みが対応していないことを宛先事業者の利用者情報が示している場合に、電子インボイスを送信できないと判定する。
【0038】
データ処理装置1において、請求書データの内容をチェックしてインボイスネットワークに送信することができると、誤った請求書を発行するリスクを低減することができる。そこで、特定部122は、第1請求書データに含まれる、第1請求書データの宛先の事業者名である宛先事業者名をさらに特定してもよい。特定部122は、受信した請求書データに含まれる宛先事業者名C1を特定する。特定部122は、記憶部11に記憶された利用者情報を参照し、宛先事業者識別番号C3に対応する事業者名を特定する。
【0039】
第2送受信部124は、宛先事業者名と、第1請求書データに含まれる事業者識別番号に関連付けて記憶部11に記憶された事業者名と、が一致する場合に電子インボイスを送信してもよい。第2送受信部124は、例えば、請求書データに含まれる宛先事業者名C1と、特定部122が事業者識別番号に基づいて特定した事業者名が一致する場合に電子インボイスを中継装置3に送信する。
【0040】
そして、第1送受信部121は、宛先事業者名と、第1請求書データに含まれる事業者識別番号に関連付けて記憶部11に記憶された事業者名と、が一致しない場合に、第1請求書データを送信した事業者に警告情報を送信してもよい。第1送受信部121は、宛先事業者名C1と、特定部122が事業者識別番号に基づいて特定した事業者名が一致しない場合、事業者名が一致しないことを警告するメッセージを送信する。第1送受信部121は、会計処理装置2Aに対して警告メッセージを送信してもよいし、事業者識別番号に関連付けて記憶部11に記憶された利用者情報を参照することで特定した担当者の連絡先に対して警告メッセージを送信してもよい。
【0041】
このように、データ処理装置1が、請求書に含まれる宛先事業者名C1を利用者情報に含まれる事業者名と比較した結果に応じて電子インボイスの送信可否を判定することで、誤った請求書を発行するリスクを低減することができる。
【0042】
データ処理装置1は、他の中継装置から受信した電子インボイスに対応する請求書データを会計処理装置2Aに送信する処理も行う。第2送受信部124は、電子インボイスネットワークに接続される中継装置から電子インボイスを受信する。
【0043】
特定部122は、受信した電子インボイスに含まれる、電子インボイスの宛先の事業者に対応する利用者識別情報に記憶部11において関連付けられた事業者識別番号を特定してもよい。特定部122は、第2送受信部124が受信した電子インボイスに含まれる利用者識別情報を抽出する。特定部122は、記憶部11に記憶された利用者情報を参照し、抽出した利用者識別情報に対応する事業者識別番号を特定する。
【0044】
作成部123は、電子インボイスから会計処理装置2Aにおいて処理可能なデータ形式である請求書データに変換する。受信した電子インボイスに事業者識別番号が付与されていない場合、作成部123は、変換した請求書データに特定部122が特定した事業者識別番号を付与する。
【0045】
第1送受信部121は、受信した電子インボイスに基づいて作成された第2請求書データを、事業者識別番号に対応する事業者に送信してもよい。第1送受信部121は、インボイスネットワークを経由して受信した電子インボイスより作成部123が作成した請求書データを、請求書データに含まれる事業者識別番号に対応する事業者の会計処理装置2Aに送信する。
【0046】
[データ処理装置1における処理の流れ]
図6は、データ処理装置1における処理の流れを示すフローチャートである。図6におけるフローチャートは、データ処理装置1が起動し、請求書データを処理できる状態となった時点から開始している。第1送受信部121は、会計処理装置2Aから請求書データを受信する(S101)。特定部122は、受信した請求書データから宛先事業者識別番号C3を抽出する(S102)。特定部122は、記憶部11を参照し、抽出した宛先事業者識別番号C3に対応する事業者名と利用者識別情報を特定する(S103)。
【0047】
特定部122は、特定された利用者識別情報が複数存在するかどうかを判定する(S104)。特定された利用者識別情報が複数存在しない場合(S104におけるNO)、特定部122は、処理をS106に進める。特定された利用者識別情報が複数存在する場合(S104におけるYES)、特定部122は、記憶部11に記憶された利用者情報を参照し、事業者識別番号と電話番号又は組織識別情報とに対応する利用者識別情報を特定する(S105)。
【0048】
特定部122は、特定した事業者名と、請求書データに含まれる宛先事業者名C1と、が一致するかを判定する(S106)。特定した事業者名と、請求書データに含まれる宛先事業者名C1と、が一致する場合(S106におけるYES)、作成部123は、受信した請求書データから電子インボイスを作成する(S107)。第2送受信部124は、特定した利用者識別情報に対応する送信先の中継装置3のメタデータをSMP4に問い合わせ、中継装置3の送信先の識別情報(例えばIPアドレス、URL)を含むメタデータを取得する(S108)。第2送受信部124は、取得した中継装置3のメタデータが示す宛先に作成部123が作成した電子インボイスを送信する(S109)。電子インボイスの送信が完了するとデータ処理装置1は処理を終了する。
【0049】
特定した事業者名と、請求書データに含まれる宛先事業者名C1と、が一致しない場合(S106におけるNO)、第1送受信部121は、警告メッセージを送信し(S110)、処理を終了する。
【0050】
[データ処理装置1による効果]
以上説明したように、データ処理装置1においては、記憶部11が、事業者を識別する番号である事業者識別番号と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークNの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する。第1送受信部121が、請求書を発行する事業者から第1請求書データを受信すると、特定部122が、第1請求書データに含まれる、第1請求書データの宛先の事業者に対応する事業者識別番号に記憶部11において関連付けられた利用者識別情報を特定する。さらに、第2送受信部124が、第1請求書データに基づいて作成され、特定した利用者識別情報を宛先として含み、電子インボイスネットワークNにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信する。データ処理装置1がこのように構成されることで、請求書を発行する事業者が利用するシステムが新たな標準仕様の電子インボイスに対応していない場合であっても、事業者が電子インボイスを発行できるようにすることができる。
【0051】
以上、実施の形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、装置の全部又は一部は、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。また、複数の実施の形態の任意の組み合わせによって生じる新たな実施の形態も、本発明の実施の形態に含まれる。組み合わせによって生じる新たな実施の形態の効果は、もとの実施の形態の効果を併せ持つ。
【符号の説明】
【0052】
1 データ処理装置
2 会計処理装置
3 中継装置
4 SMP
5 SML
11 記憶部
12 制御部
121 第1送受信部
122 特定部
123 作成部
124 第2送受信部
【要約】
入力された請求書データを電子インボイスネットワークNに配置された中継装置3へ転送するデータ処理装置である。記憶部11が、事業者を識別する番号である事業者識別番号と、電子インボイスが送受信される電子インボイスネットワークの利用者を識別する情報である利用者識別情報と、を関連付けて記憶する。第1送受信部121が、請求書を発行する事業者から第1請求書データを受信する。そして、特定部122が、第1請求書データに含まれる、第1請求書データの宛先の事業者に対応する事業者識別番号に記憶部において関連付けられた利用者識別情報を特定する。さらに、第2送受信部が124、第1請求書データに基づいて作成され、特定した利用者識別情報を宛先として含み、電子インボイスネットワークにおいて送受信可能な形式の電子インボイスを送信する。


図1
図2
図3
図4
図5
図6