IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーキス エナジー リミテッドの特許一覧 ▶ コベストロ ドイチェラント エージーの特許一覧

<>
  • 特許-電気化学セル用アノード 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】電気化学セル用アノード
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/134 20100101AFI20220317BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20220317BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20220317BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20220317BHJP
【FI】
H01M4/134
H01M4/13
H01M10/052
H01M4/1395
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019533684
(86)(22)【出願日】2017-09-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-10-31
(86)【国際出願番号】 EP2017072236
(87)【国際公開番号】W WO2018046494
(87)【国際公開日】2018-03-15
【審査請求日】2020-08-11
(31)【優先権主張番号】16187487.0
(32)【優先日】2016-09-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519075683
【氏名又は名称】オーキス エナジー リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】519075694
【氏名又は名称】コベストロ ドイチェラント エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】クリマッシュ、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ウェイカード、ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ラス、ハンス-ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】コッヘル、ユルゲン
(72)【発明者】
【氏名】アインスワース、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】ローランズ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】クライス、ジャスティナ、カタジナ
(72)【発明者】
【氏名】ローズ、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】デシラーニ、セバスティアン
【審査官】松岡 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-071998(JP,A)
【文献】特開2016-069388(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00- 4/62
H01M 10/05- 10/0587
H01M 10/36- 10/39
C08G 18/00- 18/87
C08G 71/00- 71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セルのアノードであって、
リチウム金属またはリチウム金属合金と、
前記リチウム金属またはリチウム金属合金に沈着されるポリマーコーティングと
を有し、
前記ポリマーコーティングはリチウムイオンでドープされ、かつポリイソシアヌレート材料を有し、
前記ポリイソシアヌレート材料は、エーテル含有基及び/またはさらにシリコン含有基を含み、及び、
前記エーテル含有基は、ポリエーテルであり、及び/または前記シリコン含有基は、シロキサン基である、アノード。
【請求項2】
請求項1記載のアノードにおいて、前記シロキサン基は、トリアルコキシシラン基である、アノード。
【請求項3】
請求項1記載のアノードにおいて、前記ポリエーテルは、ポリアルキレンオキシド-モノアルキルエーテルである、アノード。
【請求項4】
求項1~3のいずれか1つに記載のアノードにおいて、前記ポリマーコーティングはさらに無機充填剤を含む、アノード。
【請求項5】
請求項4記載のアノードにおいて、前記充填剤はシリカまたは粘度ナノ粒子を有する、アノード。
【請求項6】
求項1~5のいずれか1つに記載のアノードにおいて、前記ポリマーコーティングは-130℃~100℃のTgを有する、アノード。
【請求項7】
リチウム硫黄電池であって、
求項1~6のいずれか1つに記載のアノードと、
電気伝導性材料、及び硫黄を有する電気活性材料を有するカソードと、
電解質と
を有する、リチウム硫黄電池。
【請求項8】
電気化学セルのアノードにコーティングを形成する方法であって、
a)リチウム金属またはリチウム金属合金で形成されたアノードにコーティング組成物を接触させる工程であって、前記コーティング組成物は分散液または溶液の形態であり、かつイソシアネート基、リチウム金属塩、及び溶媒を有するポリマー前駆体を含む、前記接触させる工程と、
b)前記ポリマー前駆体を前記アノード上のコーティングとして三量化する工程であって、前記ポリマー前駆体のイソシアネート基の少なくとも50mol%がイソシアヌレート、ウレチジオン、アロファネート、及びイミノオキサジアジンジオン構造から成る群から選択される構造を形成する、前記三量化する工程と
有し、
前記ポリマー前駆体はオリゴマーポリイソシアネートを有し、前記オリゴマーポリイソシアネートは前記アノード上のコーティングとして三量化され、前記オリゴマーポリイソシアネートから成るイソシアネート基の少なくとも50mol%がイソシアヌレート、ウレチジオン、アロファネート、及びイミノオキサジアジンジオン構造から成る群から選択される構造を形成するものであり、及び、
前記オリゴマーポリイソシアネートのNCO基の少なくとも一部はエーテル含有基及び/またはシリコン含有基でキャップされるものであり、および、
前記エーテル含有基は、ポリエーテルであり、及び/または前記シリコン含有基は、トリアルコキシシラン基である、方法。
【請求項9】
請求項記載の方法において、前記オリゴマーポリイソシアネートはモノマージイソシアネートのオリゴマーである、方法。
【請求項10】
請求項記載の方法において、前記オリゴマーポリイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマーである、方法。
【請求項11】
請求項10記載の方法において、前記オリゴマーポリイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートのトリマーから形成されるモノマー単位を有する、方法。
【請求項12】
請求項記載の方法において、前記エーテル含有基は、ポリアルキレンオキシド-モノアルキルエーテルである、方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか1つに記載の方法において、前記コーティング組成物は、三量化触媒を有する、方法。
【請求項14】
請求項13記載の方法において、前記三量化触媒はアルカリ金属アセテート及びクラウンエーテルである、方法。
【請求項15】
請求項13記載の方法において、前記三量化する工程は60~150℃の温度で実行される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セル用アノードおよびそのようなアノードを有するリチウム硫黄電池に関する。また、本発明は、電気化学セルのアノードにコーティングを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
典型的なリチウム硫黄電池は、リチウム金属で形成されるアノード(負極)、および元素硫黄または他の電気活性硫黄材料およびカーボンブラックなどの電気導電性材料で形成されるカソード(正極)を有する。前記電極は、典型的には電解質溶媒に溶解されるリチウム塩で形成される電解質と接触して配置される。
【0003】
リチウムイオン電池は二次電池である。リチウムイオン電池が放電すると、前記硫黄(例えば、元素硫黄)は還元し、例えば、可溶性多硫化物種Sn2-(n≧2)を形成する。前記電池が充電されると、前記反応は逆になり、前記硫化物または多硫化物は酸化して硫黄に戻る。
【0004】
リチウム金属は強力な還元剤である。したがって、前記リチウム金属アノードが前記電解質溶媒と接触すると、前記電解質溶媒は前記リチウム金属と反応し、固体電解質界面(SEI)を形成する傾向がある。前記SEIは一般にイオン伝導率が高く、リチウムイオンを前記アノード表面から前記電解質に流すことができ、その逆も可能である。前記SEIは、前記リチウム金属と前記電解質溶媒とのさらなる接触を妨げる。そのため、前記SEIは、前記リチウムアノードが前記電解質によるさらなる反応で消費されるのを防ぐことにより、少なくともある程度は前記リチウムアノードを保護することができる。しかし、前記SEIは、前記電解質に溶解した多硫化物が前記リチウム金属と反応し、前記リチウム金属表面にリチウム硫黄(Li2S)または高次多硫化物(例えば、Li2S2)が形成する過程を防ぐことはできない。これらの反応生成物は前記SEIに取り込まれ、電池の充電および放電反応に利用できる電気活性硫黄材料の量を減少させる可能性がある。さらに、これを繰り返す中で、前記SEIは分解し、前記電解質ができたばかりのリチウムに接触する可能性がある。これにより、前記リチウムアノードと前記電解質がさらに反応し、経時的に電解質が枯渇する可能性がある。最終的に、前記電池は切れ、電池は機能しなくなる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2015/010804号明細書
(特許文献2) 米国特許出願公開第2014/272595号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2006/155095号明細書
(特許文献4) 米国特許第4,487,928号明細書
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1図1は、実施例1の電池容量がサイクル数の増加とともに変化することを示している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の実施例を説明する前に、本開示は、本明細書に開示される特定の電池、方法、または材料に限定されるものではないことは理解される。保護の範囲は請求項およびそれと同等の条件により定義されるため、本明細書で使用される専門用語は特定の実施形態のみを説明するために使用されるもので、制限する意図はないことも理解される。
【0007】
本発明の電池および方法の説明および請求において、以下の用語が使用される:単数形の「a」、「an」、および「the」には、内容で明確にそうでないことを示していない限り、複数の形態を含む。そのため、例えば、「an anode」の参照は、そのような要素の1若しくはそれ以上の参照を含む。
【0008】
本発明に従い、電気化学セルのアノードが提供され、前記アノードは、
リチウム金属またはリチウム金属合金と、
前記リチウム金属またはリチウム金属合金に沈着されるポリマーコーティングと
を有し、前記ポリマーコーティングはリチウムイオンでドープされ、ポリイソシアヌレート材料を有する。
【0009】
また、本発明は、本明細書で説明されるアノード、電気伝導性材料を有するカソード、および硫黄を有する電気活性材料を有するリチウム硫黄電池、および電解質に関する。
【0010】
さらなる態様に従い、電気化学セルのアノードにコーティングを形成する方法が提供される。前記方法は、リチウム金属またはリチウム金属合金とコーティング組成物で形成されたアノードとの接触を有する。前記コーティング組成物は、分散液または溶液の形態であり、ポリマー前駆体、リチウム金属塩、および溶媒を含む。本発明に従い、前記ポリマー前駆体はモノマーイソシアネート、オリゴマーポリイソシアネート、またはモノマーおよびポリマーイソシアネートを有する混合物としてもよい。
【0011】
前記イソシアヌレートはイソシアヌレートプラスチック材料としてもよい。「イソシアヌレートプラスチック材料」は、本明細書で使用されるとおり、ポリイソシアヌレートを含むプラスチック材料である。本発明の好適な実施形態では、前記プラスチック材料は主にポリイソシアヌレートを有する。本発明の最も好適な実施形態では、前記プラスチック材料は主にポリイソシアヌレートから成る。ポリイソシアヌレートと他のプラスチック材料の混合物は、同様に、本明細書で使用される「ポリイソシアヌレートプラスチック材料」の用語に組み込まれる。
【0012】
本書で「プラスチック材料」と言及される場合、これは、例えばゲルまたは液体とは対照的に、周囲温度において大部分が寸法的に安定な生成物を意味すると考えられる。本明細書に用いるとおり、「プラスチック材料」の用語は、すべての従来クラスのプラスチック材料、すなわち、特に熱硬化性プラスチック、熱可塑性プラスチックス、およびエラストマーも含む。
【0013】
本明細書に用いるとおり、「ポリイソシアヌレート」はすべての分子、好ましくはポリマーであり、複数のイソシアヌレート構造単位、例えば、少なくとも10イソシアヌレート構造単位を有する。単一のイソシアヌレート構造単位を有する分子は、「イソシアヌレート」と呼ぶことができる。
【0014】
前記特徴的な周期的イソシアヌレート構造単位は以下の構造式で再現される。
【化1】
【0015】
イソシアヌレートおよびポリイソシアヌレートは、ポリイソシアネートまたはオリゴマーポリイソシアネートの少なくとも2つを利用した付加反応により得ることができる。前記付加反応の前駆体としてはオリゴマーポリイソシアネートを使用することが好ましいが、これは、2つのイソシアネート基からのイソシアヌレート基の形成が強い発熱反応であるためである。したがって、ポリイソシアヌレートの前駆体としてオリゴマーポリイソシアネートを使用することで、前記反応中に生成する熱量が減少するが、これは、一定の割合の前記イソシアネート基はすでに前記モノマーポリイソシアネートのオリゴマー形成で消費されていたためである。反応温度が高いと、泡が形成する、または前記イソシアネートが蒸発または分解するなど、望ましくない結果となる可能性があるため、前駆体としてオリゴマーポリイソシアネートを使用することは好都合と考えられる。オリゴマーポリイソシアネートは、好ましくはモノマーポリイソシアネートの三量化により生成する。
【0016】
しかし、本発明の実施例によれば、ポリイソシアヌレートはコーティング材料として、すなわち、典型的には1~300μmの範囲の薄さの層を形成するために使用されるものである。そのような薄い層の形成中、前記反応により生成した熱を周囲の媒体に移動することは難しくはない。したがって、反応熱が大量に発生しても、前記コーティングの温度は、上述の望ましくない結果に至るレベルは超えない。したがって、本発明の別の好適な実施形態では、前記ポリイソシアヌレートはモノマーポリイソシアネートおよびオリゴマーポリイソシアネートを有する混合物を用いて、または基本的にモノマーポリイソシアネートから成る組成物を用いても形成される。「基本的に成る」の用語は、90重量%以上、好ましくは95重量%以上、さらに好ましくは、98重量%以上、最も好ましくは99重量%以上の混合物における一定割合のモノマーポリイソシアネートを指す。
【0017】
本明細書に用いるとおり、「ポリイソシアネート」の用語は、前記分子に2若しくはそれ以上のイソシアネート基を含む化合物の総称である(当業者は、これを、一般構造-N=C=Oの遊離イソシアネート基を意味するものと考える)。これらのポリイソシアネートの中で最も簡単で最も重要な代表例はジイソシアネートである。これらは一般構造O=C=N-R-N=C=Oを有し、Rは慣習的に脂肪族、脂環式、および/または芳香族ラジカルを表す。
【0018】
多数のポリマー(例えば、ポリウレタン、ポリ尿素、およびポリイソシアヌレート)および低分子化合物(例えば、ウレチジオン(uretdione)、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン、および/またはオキサジアゾントリオン構造を持つもの)は、その多官能基(2つ以上のイソシアネート基)のため、ポリイソシアネートから調整してもよい。
【0019】
本明細書で「ポリイソシアネート」が一般に言及される場合、これらはモノマーおよび/またはオリゴマーポリイソシアネートを等しく意味すると考えられる。ただし、本発明の多くの態様を理解するため、モノマーポリイソシアネートとオリゴマーポリイソシアネートとを区別することは重要である。本明細書で「オリゴマーポリイソシアネート」と言及される場合、これらは少なくとも2つのモノマージイソシアネート分子で構成されるポリイソシアネートを意味すると考えられ、すなわち、これらは少なくとも2つのモノマージイソシアネート分子を有する反応生成物を構成する、または含む化合物である。
【0020】
モノマージイソシアネートからのオリゴマーポリイソシアネートの調製は、本明細書ではモノマージイソシアネートのオリゴマー化とも呼ばれる。本明細書に用いるとおり、この「オリゴマー化」は、オリゴマーポリイソシアネートと、ウレチジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン、および/またはオキサジアゾントリオン構造とを生成するモノマージイソシアネートの反応を指す。
【0021】
したがって、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)は、2つのイソシアネート基を含み、反応生成物ではないため、「モノマージイソシアネート」であり、少なくとも2つのポリイソシアネート分子を有する。
【化2】
【0022】
少なくとも2つのHDI分子を有し、さらに少なくとも2つのイソシアネート基を含む反応生成物は、対照的に、本発明の意味の中で「オリゴマーポリイソシアネート」である。そのような「オリゴマーポリイソシアネート」の代表は、前記モノマーHDI、例えば、HDI-イソシアヌレートおよびHDI-ビウレットから始まり、これらはそれぞれ3つのモノマーHDI成分とで構成される。
【化3】
【0023】
上述のとおり、本発明のアノードは、好ましくはリチウムイオンの形態でリチウムがドープされたポリマーコーティングを有し、ポリイソシアヌレート材料を有する。前記アノード表面にそのようなポリマーコーティングを形成することで、前記アノードを望ましくない反応から保護できることが分かった。具体的には、前記ポリマーコーティングは、前記アノードが例えば前記電解質溶媒および/または前記電解質に溶解したポリスルフィド種と反応するリスクを低下させる保護層またはインターフェースとして作用してもよい。これにより、前記リチウム金属、電解質溶媒、および/または電気活性硫黄材料を消費する不可逆的反応のリスクを低下し、および/または前記電気化学セルの安全性を高めてもよい。
【0024】
前記ポリマーコーティングは、都合の良いことにイオン導電性である。したがって、電池の放電時は、リチウムイオンが前記コーティングから前記電解質に流れる可能性がある。同様に、前記電池の充電中は、前記電解質からのリチウムイオンが前記コーティングから流れ、リチウム金属として前記コーティングの下に沈着する可能性がある。そのため、本明細書で説明されるコーティングは、保護機能を実行することができるが、リチウム金属のめっき/脱めっきを行うこともできる。本明細書で説明されるポリマーコーティングに関する特定の実施形態、特に前記ポリイソシアヌレートプラスチック材料におけるトリアルコキシシランおよび/またはポリエーテル基の選択的存在については、さらに有利に、前記ポリマーコーティングの導電特性を促すことが分かった。
【0025】
前記コーティングは、適切なポリイソシアヌレート材料から形成されてもよい。一実施形態では、前記ポリイソシアヌレート材料は、イソシアヌレート基を有するオリゴマーポリイソシアネートを含む、コーティング組成物の触媒的三量化の結果として形成される。好ましくは、前記オリゴマーポリイソシアネートはモノマージイソシアネートのオリゴマーである。本発明の1つの好適な実施形態によれば、前記オリゴマーポリイソシアネートは、モノマージイソシアネートのオリゴマー化と、選択的に、その後反応していないモノマーを分離することで得られる。
【0026】
本発明の別の実施形態では、前記ポリイソシアヌレートプラスチック材料の形成に使用されるコーティング材料は、上述のものよりも高い割合のモノマーポリイソシアネートを有し、またはさらに基本的には本出願書類でさらに上記に定義したとおり、モノマーポリイソシアネートから成る。
【0027】
オリゴマーポリイソシアネートを利用した実施形態では、本発明のアノードのコーティングを目的としたコーティング組成物は、各ケースで組成物の重量に基づき、重量で最大限20%、特に重量で最大限15%、または重量で最大限10%のモノマージイソシアネート含有量を有する。前記コーティング組成物は、各ケースで組成物の重量に基づき、重量で最大限5%、好ましくは重量で最大限2.0%、特に好ましくは重量で最大限1.0%のモノマージイソシアネート含有量を有する。最も好ましくは、前記コーティング組成物は実質的にモノマージイソシアネートが含まれない。実質的に含まれないとは、前記モノマージイソシアネート含有量が組成物の重量に基づき重量で最大限0.5%または0%であることを意味する。
【0028】
実際には、前記低モノマー含有量は、前記オリゴマー反応実行後に反応しなかった過剰なモノマージイソシアネートを分離することで達成してもよい。このモノマーの除去は、好ましくは高真空での薄層蒸留、または例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロペンタン、またはシクロヘキサンなどの脂肪族または脂環式炭化水素に不活性な適切な溶媒を用いた抽出により、それ自体が知られているプロセスに従った、特に現実に即した方法で行うことができる。
【0029】
本発明に従い、前記オリゴマーポリイソシアネートは、特にウレチジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン、および/またはオキサジアゾントリオン構造を有することができる。本発明の一実施形態に従い、前記オリゴマーポリイソシアネートは、以下のオリゴマー構造タイプまたはその混合物の少なくとも1つを有する。
【化4】
【0030】
前記オリゴマーポリイソシアネートのウレチジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン、および/またはオキサジアゾントリオン構造は、例えば、NMRスペクトロスコピーにより決定することができる。本明細書では、前記オリゴマー構造が特徴的シグナルを出すため、好ましくはプロトンデカップリングした13C-NMRスペクトロスコピーを好ましくは使用することができる。
【0031】
前記オリゴマーポリイソシアネートは、単純な脂肪族、脂環式、アラリファティック(araliphatic)、および/または芳香族モノマージイソシアネートまたはそのようなモノマージイソシアネートの混合物のオリゴマー化により慣習的に得られる。本発明の好適な実施形態によれば、前記オリゴマーポリイソシアネートはイソシアヌレート構造を含む。
【0032】
前記オリゴマーポリイソシアネートを調製するために適したモノマーポリイソシアネートは、例えば液層または気層でのホスゲン化などの様々な方法、または例えば熱ウレタン開裂などホスゲンを用いない方法で得られるすべての望みのポリイソシアネートである。特に良好な結果は、前記ポリイソシアネートがモノマージイソシアネートである場合に得られる。好適なモノマージイソシアネートは、分子量が140~400g/molの範囲であり、例えば、1,4-ジイソシアナトブタン(BDI)、1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、2-メチル-1,5-ジイソシアナトペンタン、1,5-ジイソシアナト-2,2-ジメチルペンタン、2,2,4-または2,4,4-トリメチル-1,6-ジイソシアナトヘキサン、1,10-ジイソシアナトデカン、1,3-および,4-ジイソシアナトシクロヘキサン、1,4-ジイソシアナト-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-2-メチルシクロヘキサン、1,3-ジイソシアナト-4-メチルシクロヘキサン、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;IPDI)、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、1,3-および1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス-(イソシアナトメチル)-ノルボルナン(NBDI)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラメチルジシクロヘキシルメタン、4,4’-ジイソシアナト-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、4,4’-ジイソシアナト-2,2’,5,5’-テトラ-メチル-1,1’-ビ(シクロヘキシル)、1,8-ジイソシアナト-p-メンタン、1,3-ジイソシアナト-アダマンタン、1,3-ジメチル-5,7-ジイソシアナトアダマンタン、1,3-および1,4-ビス-(イソ-シアナトメチル)ベンゼン(ジイソシアン酸キシキスリレン;XDI)、1,3-および1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチル-エチル)-ベンゼン(TMXDI)およびビス(4-(1-イソシアナト-1-メチルエチル)フェニル)-カーボネート、2,4-および2,6-ジイソシアナトトルエン(TDI)、2,4’-および4,4’-ジイソシアナトジフェニルメタン(MDI)、1,5-ジイソシアナトナフタレン、およびそのようなジイソシアネートの望ましい混合物すべてなどの脂肪族、脂環式、アラリファティック、および/または芳香族と結合したイソシアネート基を有するジイソシアネートである。さらに適したジイソシアネートは、例えば、Justus Liebigs Annalen der Chemie Band 562 (1949) p. 75-136に見ることができる。
【0033】
本明細書に用いる「三量化」は、主に、イソシアヌレート構造を形成する3つのイソシアネート基の環状三量化反応を指す。ただし、使用した触媒によっては、イソシアヌレート構造の形成にウレチジオン構造への二量化、イミノオキサジアジンジオン構造(いわゆる不斉トリマー)への三量化、または前記ポリイソシアネートポリマー前駆体にウレタン基が存在する場合はアロファネート化(allophanatisation)反応などの副反応が伴うことが多い。したがって、1つの実施形態では、本明細書に使用する「三量化」の用語は、同意語としてこれらの追加反応を含むものとする。
【0034】
ただし、好適な実施形態によれば、「三量化」は、前記ポリマー前駆体(例えば、オリゴマーポリイソシアネート前駆体)に存在する前記イソシアネート基の少なくとも50%、60%、70%、または80%またはイソシアネート構造のコーティング成分の環状三量化が起こることを意味する。ただし、特にそのようなウレチジオン、アロファネート、および/またはイミノオキサジアジンジオン構造に至る副反応は通常起こる。これらの反応は、例えば得られたポリイソシアヌレートプラスチック材料のTg値またはイオン伝導率に有利に影響を与えるため、意図的に利用することもできる。
【0035】
したがって、本発明の別の好適な実施形態では、前記イソシアネート基の少なくとも50%、60%、70%、または80%が、イソシアヌレート、ウレチジオン、アロファネート、およびイミノオキサジアジンジオン構造から成る基から選択したポリイソシアネート形態の構造に存在する。より好ましくは、前記イソシアネート基の少なくとも50%、60%、70%、または80%が、イソシアヌレート、ウレチジオン、およびイミノオキサジアジンジオン構造から成る基から選択したポリイソシアネート形態の構造に存在する。本実施形態では、前記イソシアネート基の大部分がイソシアヌレート基を形成することが好ましい。
【0036】
本発明の好適な実施形態によれば、前記アノードコーティング組成物に使用されるオリゴマーポリイソシアネートは、脂肪族および/または脂環式で結合したイソシアネート基のみを有する。
【0037】
脂肪族または脂環式で結合したイソシアネート基は、脂肪族または脂環式炭化水素ラジカルに結合したイソシアネート基を意味すると考えられる。
【0038】
本発明のさらに好適な実施形態によれば、コーティング組成物は、1若しくはそれ以上のオリゴマーポリイソシアネートを含む本発明のアノードをコーティングするために使用され、前記1若しくはそれ以上のオリゴマーポリイソシアネートは、脂肪族および/または脂環式で結合したイソシアネート基のみを有する。
【0039】
本発明のまださらに好適な実施形態によれば、コーティング組成物は、1若しくはそれ以上のモノマーポリイソシアネートを含む本発明のアノードをコーティングするために使用され、前記1若しくはそれ以上のモノマーポリイソシアネートは、脂肪族および/または脂環式で結合したイソシアネート基のみを有する。
【0040】
本発明の特に好適な実施形態によれば、アノードコーティング組成物が使用され、これは1若しくはそれ以上のオリゴマーポリイソシアネートを含み、前記1若しくはそれ以上のオリゴマーポリイソシアネートは1,5-ジイソシアナトペンタン(PDI)、1,6-ジイソシアナトヘキサン(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、または4,4’-ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)またはその混合物を基本として構成される。一部の実施例では、前記オリゴマーポリイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネートおよび/またはペンタメチレンジイソシアネートである。
【0041】
前記オリゴマーポリイソシアネートは、モノマージイソシアネートのトリマー(イソシアヌレート)としてもよい。例えば、前記トリマーは下記の一般式を有し、
【化5】
式中、nは1~15、例えば、3~10、好ましくは5または6である。
【0042】
一実施形態では、少なくとも1つの官能基が修飾されたオリゴマーポリイソシアネートが使用される。これは、例えば、イソシアネート基と反応する基も含む官能基含有化合物を用いた本発明のアノードのコーティングにおいて、前記コーティング組成物に使用されるオリゴマーポリイソシアネートのイソシアネートまたはNCO基の少なくとも1つを反応またはキャップすることで達成可能である。対応する反応生成物は、少なくとも1つの官能基で修飾されたオリゴマーポリイソシアネートである。同様に、本発明の好適な実施形態では、本発明のポリマーコーティングに含まれる前記イソシアネート材料が官能基で修飾される。そのような修飾イソシアヌレート材料は、少なくとも1つの官能基で修飾された、上述のオリゴマーポリイソシアネートの三量化により得ることができる。特に、ヒキドロキシル基、チオール基、アミノ基、アミド基、およびイソシアネート基は、「イソシアネート基と反応する基」として利用することができる。前記オリゴマーポリイソシアネートおよび/または前記イソシアヌレート材料が修飾された官能基はシリコン含有基、特にシロキサン基、およびエーテル含有基、特にポリエーテル含有基から選択することができる。
【0043】
好適な実施形態によれば、本発明のアノードのコーティングを目的とした前記コーティング組成物に使用されるオリゴマーポリイソシアネートのイソシアネートまたはNCO基の少なくとも1つは、シリコン含有化合物またはエーテル含有化合物でキャップされる、またはこれと反応する。つまり、前記オリゴマーポリイソシアネートは、好ましくはオリゴマーシリコン含有ポリイソシアネート、またはオリゴマーエーテル含有ポリイソシアネートであり、本発明のイソシアヌレート材料は、好ましくはシリコンまたはエーテル含有基で修飾される。「シリコン含有化合物でキャップされたオリゴマーポリイソシアネート」、「オリゴマーシリコン修飾ポリイソシアネート」、および「オリゴマーシリコン含有ポリイソシアネート」の表現は同じ意味を有し、本明細書では同義的に使用される。同様に、「エーテル含有化合物でキャップされたオリゴマーポリイソシアネート」および「オリゴマーエーテル含有ポリイソシアネート」の表現は同じ意味を有し、本明細書では同義的に使用される。「オリゴマー修飾ポリイソシアネート」の表現が示すとおり、前記オリゴマー修飾ポリイソシアネートは、まだ(平均で)複数(少なくとも2つ)のイソシアネート基を有し、すなわち、前記オリゴマーポリイソシアネートのイソシアネート基と官能基含有化合物のイソシアネート反応基との反応は不完全である。
【0044】
特に好適な実施形態によれば、本発明のアノードのコーティングを目的とした前記コーティング組成物に使用されるオリゴマーポリイソシアネートのイソシアネートまたはNCO基の少なくとも1つは、シリコン含有化合物でキャップされる、またはこれと反応する。
【0045】
本発明の低分子コーティング組成物に使用可能な、ウレチジオン、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、イミノオキサジアジンジオン、および/またはオキサジアゾントリオン構造を有するオリゴマーシリコン修飾ポリイソシアネートの調製プロセスは、例えば、EP-A 1 273 640、WO-A 2008/074490、WO-A 2008/074489、WO-A 2014/086530、WO-A 2010/149236、WO-A 2009/156148、EP-A 2 104 692に報告されている。
【0046】
通常、オリゴマーシリコン含有ポリイソシアネートは、単純脂肪族、脂環式、アラリファティック、および/または芳香族モノマーシリコン修飾ジイソシアネートのオリゴマー化、またはシリコン含有化合物を用いたオリゴマーポリイソシアネートの部分反応により得られる。「シリコン含有化合物との部分反応」または「シリコン修飾」の用語は本発明の意味の中で同義的に使用され、特に、前記オリゴマーポリイソシアネートに初めに存在するイソシアネート基の5~80、好ましくは10~50、および特に15~40mol-%がシリコン含有化合物と反応したことを意味する。つまり、オリゴマーポリイソシアネートとシリコン含有化合物との部分反応により調製されたオリゴマーシリコン修飾ポリイソシアネートは、前記オリゴマーポリイソシアネートの初めに存在したイソシアネート基をもとに、好ましくは少なくとも20、より好ましくは少なくとも50、および最も好ましくは少なくとも60mol-%のイソシアネート含有量を有する。「オリゴマーシリコン修飾ポリイソシアネート」の表現が示すとおり、前記オリゴマー修飾ポリイソシアネートは、まだ(平均で)複数(少なくとも2つ)のイソシアネート基を有し、すなわち、前記オリゴマーポリイソシアネートのイソシアネート基とシリコン含有化合物の官能イソシアネート反応基との反応は不完全である。
【0047】
有機および無機シリコン含有化合物は、シリコン含有化合物として使用することができる。「無機シリコン含有化合物」は、シリコン-炭素結合を有していないシリコン含有化合物を意味すると考えられる。本発明によれば、適切な無機シリコン含有化合物は、例えば、SiO-ナノ粒子またはケイ酸塩である。
【0048】
オリゴマーシリコン修飾ポリイソシアネート、アミノシラン、シラン-官能基アスパラギンエステル、シラン官能基アルキルアミド、メルカプトシラン、イソシアネート-シラン、チオウレタンプレポリマー、ウレタンプレポリマー、およびその混合物を有する基から選択したシリコン含有化合物を使用することが特に有用であることが分かった。これらはそれぞれ、シラン官能基に加え、イソシアネート基と反応する少なくとも1つの基を含む。
【0049】
適切なアミノシランは、例えば3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノ-プロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジ-エトキシシラン、3-アミノプロピルエチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノ-プロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルトリプロポキシシラン、3-アミノプロピルトリブトキシ-シラン、5,3-アミノプロピルフェニルジエトキシシラン、3-アミノプロピルフェニルジメトキシシラン、3-アミノプロピル-トリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、2-アミノイソプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシ-シラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、4-アミノブチルメチルジメトキシ-シラン、4-アミノブチル-メチルジエトキシシラン、4-アミノブチルエチルジメトキシシラン、4-アミノ-ブチルエチルジエトキシシラン、4-アミノブチル-ジメチルメトキシシラン、4-アミノブチルフェニル-ジメトキシシラン、4-アミノブチル-フェニルジエトキシシラン、4-アミノ(3-メチルブチル)メチルジ-メトキシシラン、4-アミノ(3-メチルブチル)-メチルジエトキシシラン、4-アミノ(3-メチルブチル)-トリメトキシシラン、3-アミノプロピルフェニルメチル-n-プロポキシシラン、3-アミノ-プロピルメチル-ジブトキシシラン、3-アミノプロピルジエチルメチルシラン、3-アミノプロピルメチル-ビス(トリ-メチルシロキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリメス-オキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシ-シラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシ-シラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリス(2-エチルヘキソキシ)-シラン、N-(6-アミノ-ヘキシル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-ベンジル-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)-アミン、(アミノエチルアミノメチル)-フェネチルトリメトキシシラン、N-ビニルベンジル-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルポリシロキサン、N-ビニル-ベンジル-N(2-アミノエチル)-3-アミノプロ-ピルポリシロキサン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-(m-アミノフェノキシ)-プロピルトリメトキシ-シラン、m-および/またはp-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-(3-アミノ-プロポキシ)-3,3-ジメチル-1-プロペニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルビス(トリメチルシロキシ)-シラン、3-アミノプロピル-トリス(トリメチル-シロキシ)-シラン、3-アミノプロピルペンタメチルジシロキサン、またはそのようなアミノシランの望みの混合物である。
【0050】
特に最も好ましいアミノシランは、N-メチル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-メチル-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノ-プロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)-アミン、および/またはビス(3-トリエトキシシリルプロピル)アミンである。
【0051】
適切なシラン官能基アスパラギン酸エステルは、EP-A 0 596 360の教示に従い、1級アミノ基を持つアミノシランをフマル酸エステルおよび/またはマレイン酸エステルと反応させることで得られる。
【0052】
特に好適なシラン官能基アスパラギン酸エステルは、3-アミノプロピル-トリメトキシシランおよび/または3-アミノプロピルトリエトキシシランとマレイン酸ジエチルエステルの反応生成物である。
【0053】
本発明に従い、適したシラン官能基アルキルアミドは、例えば、US4788310およびUS4826915に開示されるプロセスに従い、1級アミノ基を有するアミノシランを反応させ、アルコールを分離することで得てもよい。
【0054】
特に好適なシラン官能基アルキルアミドは、3-アミノプロピル-トリメトキシシランおよび/または3-アミノプロピルトリエトキシシランとギ酸メチルおよび/またはギ酸エチルの反応生成物である。
【0055】
適切なメルカプトシランは、例えば、2-メルカプト-エチルトリメチルシラン、2-メルカプトエチルメチルジメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシ-シラン、2-メルカプト-エチルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメチル-メトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプト-プロピルメチルジエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルエチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピル-エチルジエトキシシラン、および/または4-メルカプトブチル-トリメトキシシランである。
【0056】
特に最も好適なメルカプトシランは、特に、3-メルカプトプロピルトリメトキシ-シラン、および/または3-メルカプトプロピルトリエトキシシランである。
【0057】
別の実施形態では、例えば、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシランまたは3-イソシアナトプロピルトリエトキシシランなどのイソシアネートシランモノマーが使用される。
【0058】
一実施形態では、前記アノードコーティング組成物で使用されるオリゴマーポリイソシアネートがモノマージイソシアネートのオリゴマーであってもよく、少なくとも1つの>N=C=O基がトリアルコキシシラン構造と反応するか、またはこれにより末端がキャップされる。
【0059】
別の実施形態では、WO 2014/037279に報告されるオリゴマーシリコン修飾ポリイソシアネートを使用してもよい。これは、以下の理想的な構造を有してもよく、
【化6】
式中、rは1~15、例えば、3~10、好ましくは5または6であり、
sは1~15、例えば、3~10、好ましくは6であり、
Rはアルキル基、例えばC~Cアルキル基(例えば、メチルまたはエチル)である。
【0060】
代わりの特定の好適な実施形態によれば、前記アノードコーティング組成物に使用されるオリゴマーポリイソシアネートのイソシアネートまたはNCO基の少なくとも1つがエーテル含有化合物でキャップされ、またはこれと反応し、すなわち、エーテル修飾オリゴマーポリイソシアネートである。好ましくは、前記エーテルがポリエーテルである。
【0061】
そのようなオリゴマーエーテル修飾ポリイソシアネート、また、少なくとも1つの基がイソシアネート基と反応するオリゴマーポリイソシアネートおよびエーテル含有化合物が出発原料であるその調製については、最先端の当業者に周知であり、例えば、EP-A0540985およびEP-A0959087に報告されている。本発明のアノードのコーティングの調製に使用される好適なオリゴマーエーテル修飾ポリイソシアネートは、例えば、Covestro AG(ドイツ)の商標Bayhydur(登録商標)で市販されている。一実施形態では、前記エーテル修飾ポリイソシアネートが商標Bayhydur(登録商標)、例えばBayhydur(登録商標)3100で販売されるポリイソシアネートである。
【0062】
前記オリゴマーエーテル修飾ポリイソシアネートは、オリゴマーポリイソシアネートとエーテル含有化合物との部分反応により得られてもよい。「エーテル含有化合物との部分反応」または「エーテル修飾」の用語は本明細書の意味で同義的に使用され、特に前記オリゴマーポリイソシアネートに最初に存在するイソシアネート基の3~50、好ましくは5~15mol-%がエーテル含有化合物と反応したことを意味する。つまり、オリゴマーポリイソシアネートとエーテル含有化合物との部分反応により調製された前記オリゴマーエーテル修飾ポリイソシアネートは、前記オリゴマーポリイソシアネートに最初に存在したイソシアネート基に基づき、50~97、好ましくは85~95mol-%のイソシアネート含有量を有する。「オリゴマーエーテル修飾ポリイソシアネート」の表現が示すとおり、前記オリゴマーエーテル修飾ポリイソシアネートは、まだ(平均で)複数(少なくとも2つ)のイソシアネート基を有し、すなわち、前記オリゴマーポリイソシアネートのイソシアネート基とエーテル含有化合物の官能イソシアネート反応基との反応は不完全である。
【0063】
適切なエーテル含有化合物は、それ自体で適切な出発原料分子のアルコキシル化により入手できることが知られているものなど、ポリエーテルアルコール、特にポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコール、好ましくは1分子あたり統計的平均で5~50のエチレンオキシド単位を有する一価または多価ポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールである(例えば、Ullmanns Encyclopadie der technischen Chemie, 4.Auflage, Band 19, Verlag Chemie, Weinheim S. 31-38を参照)。そのような出発分子は、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、異性体ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、およびノナノール、n-デカノール、n-ドデカノール、n-テトラデカノール、n-ヘキサデカノール、n-オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体メチルシクロヘキサノール、ヒドロキシ-メチルシクロヘキサン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、ベンジルアルコール、フェノール、異性体クレゾール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、およびナフトール、フルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、1,2-エタンジオール、1,2-および1,3-プロパンジオール、異性体ブタンジオ―ル、ペンタンジオ―ル、ヘキサンジオ―ル、ヘプタンジオ―ル、およびオクタンジオレ―ル、1,2-および1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4,4’-(1-メチルエチリデン)-ビスシクロヘキサノール、1,2,3-プロパントリオール、1,1,1-トリメチロールエタン、1,2,6-ヘキサントリオール、1,1,1-トリメチロールプロパン、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール、または1,3,5-トリス(2-ヒドロキシエチル)-イソシアヌレートなど、分子量範囲32~300を有する一価または多価アルコールから選択されてもよい。
【0064】
アルコキシル化反応に適したアルキレンオキシドは特にエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドであり、これらはすべての特定の順序または混合物でアルコキシル化反応に使用してもよい。適切なポリエーテルアルコールは純粋なポリエチレンオキシドポリエーテルアルコールまたは混合ポリアルキレンオキシドポリエーテルであり、そのアルキレンオキシド単位は少なくとも70mol-%、好ましくは少なくとも80mol-%のエチレンオキシドから成る。
【0065】
好ましくは、前記エーテル含有化合物はポリエーテルアルコール、特にポリアルキレンオキシドポリエーテルアルコールであり、特に、出発原料分子として分子量32~150を有する前述の一価アルコールから調整されたものである。
【0066】
特定の実施形態では、前記エーテル含有化合物は純粋なポリエチレングリコールモノメチルエーテルアルコールであり、特に、統計的平均5~50、好ましくは5~25のエチレンオキシド単位を含むものである。
【0067】
別の実施形態では、前記オリゴマーエーテル修飾ポリイソシアネートは下記一般構造を有するトリマーであり、
【化7】
式中、pは1~15、例えば、3~10、好ましくは5または6であり、
qは2~10、例えば、5~7、好ましくは6であり、
Rはアルキル基、例えばC~Cアルキル基(例えば、メチルまたはエチル)である。
【0068】
本発明では、前記コーティングは前記オリゴマーポリイソシアネートの三量化により形成し、ポリイソシアヌレート材料を形成する。好適な実施形態では、前記三量化は触媒的三量化であり、すなわち、触媒存在下で起こる。これは、前記コーティング組成物に触媒を含めることで達成可能である。前記アノードと、前記オリゴマーポリイソシアネートおよびリチウム塩の溶液または分散液の形態で前記コーティング組成物を接触(例えば、浸漬または拡散)させた後、前記オリゴマーポリイソシアネートを三量化することで、前記三量化反応は有利に行われる。前記三量化反応は前記アノードおよびリチウムイオンの存在下で起こることを確認することで、得られたポリイソシアヌレート材料はリチウムイオンでドープされ、前記リチウムアノードがそのままの状態で沈着する。次に、以下にさらに詳細に説明するとおり、前記コーティングアノードはリチウム硫黄電池に使用してもよい。前記アノード表面の一部のみがコーティングされてもよい。前記アノードは片側または両側がコーティングされてもよい。
【0069】
前記分散液または溶液中のリチウムイオンとオリゴマーポリイソシアネートとの重量比は、好ましくは1wt.-%~50wt.-%、より好ましくは5wt.-%~20wt.-%である。したがって、前記ドープされたポリマーのリチウムイオン濃度は、好ましくは1wt.-%~50wt.-%、より好ましくは5wt.-%~20wt.-%である。
【0070】
前記リチウムイオンは、前記オリゴマーポリイソシアネートを含む前記分散液に溶解または分散されたリチウム塩の形態で提供されてもよい。前記リチウム塩は、前記電池の電解質に利用されるリチウム塩と同じである、または異なっていてもよい。好ましくは、前記リチウム塩は、前記電池の電解質に利用されるリチウム塩と同じである。適切なリチウム塩の実施例には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム、およびトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを含む。好ましくは、前記リチウム塩はトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(リチウムトリフレートとしても知られる)である。塩を組み合わせて使用してもよい。前記塩は、0.1~5Mの濃度、好ましくは0.5~3M、例えば、1Mの濃度で存在してもよい。
【0071】
本発明のアノードをコーティングするポリイソシアネート材料は、触媒的三量化によって得ることができる。「触媒的」は、適切な三量化触媒が存在することを意味する。適切な触媒については、例えば、Houben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie",Band E 20, p. 1741-1744, Georg Thieme Verlag; 1987で説明される。1つの好適な実施形態では、前記触媒が脂肪族(脂環式)カルボン酸の塩を有する。好ましくは、アルカリ金属アセテート、例えば、酢酸ナトリウムまたは酢酸カリウムが利用される。選択的に、ジエチレングリコールまたはクラウンエーテルなどのオリゴエチレングリコール溶媒は、前記アルカリ金属イオンを配位するために利用されてもよく、それによって前記酢酸アニオンを遊離し、前記反応を触媒する。前記クラウンエーテルのサイズは、配位を必要とする特定のアルカリ金属イオンに合わせて作ってもよい。例えば、適切なクラウンエーテルはカリウムカチオンで18-クラウン-6である。
【0072】
触媒の量は、使用するオリゴマーポリイソシアネートの反応性および反応条件によって決まる。これは、単純な実験によって決めることができる。好ましくは、触媒の重量で0.3~5.0%が使用される。より好ましくは、重量で0.5~2.0%が使用される。
【0073】
前記反応は、グリコールまたはグリコールエーテル溶媒、例えば、ジエチレングリコールまたはポリエチレングリコール存在下で行ってもよい。前記反応は、高温で行ってもよい。適切な温度範囲は60~180℃、好ましくは120~140℃の範囲である。好ましくは、前記重合反応は、リチウムの融点未満の温度で行われる。
【0074】
前記リチウムアノードで形成されたポリマーは、リチウムイオンがドープされたポリイソシアヌレート材料である。前記ポリイソシアヌレート材料には、トリアルコキシラン基を含んでもよい。別の実施形態では、前記ポリイソシアヌレート材料が、エーテル基、例えば、ポリエーテル基を含んでもよい。ポリエーテル基の実施例には、ポリアルキレンオキシド-モノアルキルエーテル基、例えば、ポリエチレンオキシドモノエチルエーテル基を含む。
【0075】
一実施形態では、前記ポリマーが賦形剤、例えば、無機賦形剤を含んでもよい。そのような無機賦形剤は、前記オリゴマーを含む分散液または溶液に前記賦形剤を分散することで、前記ポリマーに組み込んでもよい。三量化中、前記賦形剤は前記ポリマーコーティングの構造内に組み込まれてもよい。適切な賦形剤の実施例には、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化タンタル、クレイ(例えば、モンモリロナイト)など、さらに具体的には、シリカナノ粒子を含む。前記賦形剤は、前記ポリマーコーティングの総重量で0.1~80重量%、好ましくは15~50重量%、より好ましくは20~30重量%の量で存在してもよい。
【0076】
前記ポリマーコーティングは、Tg-0℃~130℃、好ましくは20~100℃を有してもよい。
【0077】
すべての適切なリチウムアノードは、本明細書に説明したポリマーコーティングでコーティングされてもよい。前記アノードは、リチウム金属またはリチウム金属合金を有する。好ましくは、前記アノードは、リチウム金属またはリチウム金属合金で形成された箔を有する。リチウム合金の例には、リチウムアルミニウム合金、リチウムマグネシウム合金、およびリチウムホウ素合金を含む。好ましくは、リチウム金属箔が使用される。
【0078】
前記アノードは、前記リチウム硫黄電池を組み立てるために使用されてもよい。例えば、前記アノードおよび電気活性硫黄材料と固体電気伝導性材料との混合物を有するカソードは、電解質と接触して配置されてもよい。
【0079】
前記電気化学セルのカソードには、電気活性硫黄材料と電気伝導性材料との混合物を含む。この混合物は電気活性層を形成し、電流コレクタと接触して配置され、金属箔(例えば、Al箔)の例として形成される。
【0080】
前記電気活性硫黄材料は、元素硫黄、硫黄を基本とした有機化合物、硫黄と基本とした無機化合物、および硫黄含有ポリマーを有してもよい。好ましくは、硫黄元素が使用される。
【0081】
前記固体電気伝導性材料はいかなる適切な伝導性材料であってもよい。好ましくは、この固体電気伝導性材料は炭素から形成されてもよい。実施例には、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、およびカーボン・ナノチューブを含む。他の適切な材料には、金属(例えば、フレーク、やすり粉、および粉末)および伝導ポリマーを含む。好ましくは、カーボンブラックが利用される。
【0082】
電気活性硫黄材料と電気伝導性材料との混合物は、溶媒(例えば、水または有機溶媒)中のスラリーの形態で電流コレクタに適用されてもよい。次に前記溶媒を除去し、得られた構造は組成物の構造を形成するように予定され、これは望みの形態に切断され、カソードを形成してもよい。隔離板を前記カソードに配置し、リチウムアノードを前記隔離板に配置してもよい。次に、電解質を前記組電池に導入し、前記カソードおよび隔離板を湿潤してもよい。代わりに、例えば、前記リチウムアノードが前記隔離板に配置される前にコーティングまたはスプレーすることで、前記電解質を前記隔離板に適用してもよい。
【0083】
前記電気活性硫黄材料(例えば、元素硫黄)は、前記カソードの総重量で60~90重量%、好ましくは65~85重量%、より好ましくは60~80重量%の量で存在してもよい。前記電気伝導性材料(例えば、炭素)は、前記カソードの総重量で1~30重量%、好ましくは3~20重量%、より好ましくは5~10重量%の量で存在してもよい。存在する場合の結合剤の量は、前記カソードの重量で0~30重量%、好ましくは3~30重量%、より好ましくは5~20重量%の量で存在してもよい。電気活性硫黄材料(例えば、元素硫黄)と電気伝導性材料(例えば、炭素)との重量比は、90:1~3:1、好ましくは6:1~14:1であってもよい。
【0084】
本発明の電池に隔離板が存在する場合、前記隔離板はイオンが前記電池の電極間を移動することができる、いかなる適切な多孔質基体を有してもよい。前記隔離板は前記電極間に配置し、前記電極間の直接的接触を防ぐ必要がある。前記基体の多孔性は、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、例えば、60%超とする必要がある。適切な隔離板には、ポリマー材料から形成されたメッシュを含む。適切なポリマーには、ポリプロピレン、ナイロン、およびポリエチレンを含む。不織布ポリプロピレンは特に好ましい。多層隔離板を利用することも可能である。
【0085】
前記電解質は有機溶媒を有してもよい。前記電解質に使用される適切な有機溶媒は、スルホン(例えば、スルホラン)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、メチルプロピルプロピオネート、エチルプロピルプロピオネート、酢酸メチル、ジメトキシエタン、1,3-ジオキソラン、ジグリム(2-メトキシエチルエーテル)、テトラグリム、エチレン・カーボネート、プロピレン・カーボネート、ブチロラクトン、ジオキソラン、ヘキサメチルホスホアミド、ピリジン、ジメチルスルホキシド、リン酸トリブチル、リン酸トリメチル、およびN,N,N,N-テトラエチルスルファミドである。溶媒を組み合わせて使用してもよい。
【0086】
一実施例では、前記有機溶媒がエーテルを有する。一実施例では、前記有機溶媒がテトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)を有する。別の実施例では、前記有機溶媒がTEGDME、ジメトキシエタン、および選択的に1,3-ジオキソランを有する。一実施例では、TEGDMEは前記電解質の有機溶媒の少なくとも40v/v%、好ましくは少なくとも50%v/vを形成してもよい。一実施例では、ジメトキシエタンは前記電解質の有機溶媒の少なくとも20v/v%、好ましくは少なくとも30%v/vを形成してもよい。一実施例では、前記有機溶媒がv/v比50:30:20でTEGDME、ジメトキシエタン、および1,3-ジオキソランを含む。
【0087】
前記電解質の有機溶媒は25℃で粘度20cP未満、好ましくは10cP未満、より好ましくは7cP未満を有してもよい。有機溶媒の混合物が前記電解質に利用される場合、前記混合物は25℃で粘度20cP未満、好ましくは10cP未満、より好ましくは7cP未満を有してもよい。一実施形態では、前記電解質は25℃で粘度20cP未満、好ましくは10cP未満、より好ましくは7cP未満を有してもよい。
【0088】
前記電解質は、前記有機溶媒に溶解されるリチウム塩を有する。適切なリチウム塩には、ヘキサフルオロリン酸リチウム、ヘキサフルオロヒ酸リチウム、硝酸リチウム、過塩素酸リチウム、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、ビス(シュウ酸)ホウ酸リチウム、およびトリフルオロメタンスルホン酸リチウムを含む。好ましくは、前記リチウム塩はトリフルオロメタンスルホン酸リチウム(リチウムトリフレートとしても知られる)である。塩を組み合わせて使用してもよい。例えば、リチウムトリフレートは硝酸リチウムと併用してもよい。前記リチウム塩は、0.1~5Mの濃度、好ましくは0.5~3M、例えば、1Mの濃度で前記電解質に存在してもよい。
【0089】
前記電解質はリチウム多硫化物を有してもよい。例えば、前記電池が放電される前に、前記電解質にリチウム多硫化物を加えてもよい。前記電解質に溶解されたリチウム多硫化物の濃度は0.1%~20%重量%(好ましい濃度1.5%)であってもよい。適切なリチウム多硫化物の例にはLiSnが含まれ、n=少なくとも5、例えば、6~15、例えば、8~12(例えば、8)である。リチウム多硫化物は前記電解質をバッファーし、前記電池の容量を増加し、または硫黄の供給源として機能し、非導電種の形成により硫黄の損失を補うよう助けてもよい。
【0090】
以下の実施例は、本発明を図示することのみを意図している。これらは、請求項の範囲を制限することは決してない。
【実施例
【0091】
方法:
すべてのパーセンテージは他に記載がない限り、重量である。
【0092】
NCO含有量はDIN EN ISO 11909に従い、滴定法で決定した。
【0093】
残留モノマー含有量は、DIN EN ISO 10283に従い、内部標準を用いたガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0094】
すべての粘度測定は、剪断速度D=100s-1でDIN EN ISO 3219に従い、Anton Paar Germany GmbH(DE)のPhysica MCR 51レオメータにより行った。
【0095】
出発原料:
Desmodur(登録商標)N 3600[Covestro AG、ドイツ、1,6-ジイソシアネートヘキサン(HDI)に基づくポリイソシアヌレートポリイソシアネート、NCO含有量:23,0%、粘度(23℃):1200mPas、モノマーHDI:0,25%]
【0096】
Bayhydur(登録商標)3100[Covestro AG、ドイツ、1,6-ジイソシアネートヘキサン(HDI)に基づくポリエーテル親水化ポリイソシアヌレートポリイソシアネート、NCO含有量:17,4%、粘度(23℃):2800mPas、モノマーHDI:0,15%]
【0097】
アルコキシシラン修飾ポリイソシアネートAの調製
80℃で攪拌しながら、756g(4.5mol)の1,6-ジイソシアネートヘキサン(HDI)を乾燥窒素雰囲気下で導入し、触媒として0.1gの2-エチル-1-ヘキサン酸亜鉛(II)を加えた。約30分かけてメルカプトプロピルトリメトキシシラン294g(1.5mol)を1滴ずつ加え、発熱反応のため、前記混合物の温度は85℃まで上がった。前記反応混合物を、約2時間後、NCO含有量が24.0%に低下するまで、さらに85℃で攪拌した。オルトリン酸0.1gを加えて前記触媒を非活性化し、未反応のモノマーHDIを温度と130℃、圧力0.1mbarで薄膜蒸発器に取り出した。これにより、実質的に無色透明のポリイソシアネート混合物693gが得られ、その特徴および組成物は以下のとおりであった:
NCO含有量:11.8%
モノマーHDI:0.06%
粘度(23℃):452mPas
チオウレタン:0.0mol%
チオアロファネート:99.0mol%
イソシアヌレート基:1.0mol%
【0098】
ポリエーテル修飾ポリイソシアネートBの調製
イソシアヌレート基を含み、NCO含有量21.7%、平均NCO官能基3.5(GPCによる)、モノマーHDI含有量0.1%、および粘度3000mPas(23℃)を有するHDIベースのポリイソシアネート600g(3.1eq)を乾燥窒素雰囲気下、攪拌しながら100℃で初期充電として導入し、出発原料メタノールから調整し、数平均分子量500g/molを有する単官能基ポリエチレンオキシドポリエーテル400g(0.8mol)を30分かけて加え、前記混合物を前記混合物のNCO含有量が約2時間後、完全なウレタン化に相当する9.6%の数値に低下するまで、さらにこの温度で攪拌した。室温に冷却後、得られた無色透明のポリエーテル修飾ポリイソシアネート混合物の特徴データは以下のとおりであった:
NCO含有量:9.6%
モノマーHDI:0.04%
粘度(23℃):2400mPas
NCO官能基:2.6(計算値)
【0099】
触媒溶液K1の調製
1.77gの酢酸カリウム(Sigma Aldrich)を、4.75gのクラウンエーテル18-Crown-6(Merck KgaA)および31.15gのジエチレングリコール(Sigma Aldrich)と一緒に、室温、乾燥窒素雰囲気下、透明な溶液が得られるまで、数時間攪拌した。
【実施例1】
【0100】
Liアノードにコーティングを塗布する
100gのアルコキシシラン修飾ポリイソシアネートA(上記)を計量し、大きなビーカーに入れた。メチルエチルケトン(Nissan chemical)に予め分散した40wt% SiO(20nm)ナノシリカ溶液を前記ポリマーに加え、前記ポリマー重量で50重量%、100重量%、および150重量%のシリカを充填した。27gのLiTFSI塩を、前記ポリマー重量27%に相当する前記溶液に加えた。前記溶液をポリマーが完全に溶解するまで攪拌した。次に、3つの溶液それぞれに、各溶液が500mLになるまで無水テトラヒドロフランを加えた。それによりポリマー溶液が3つ得られ、それぞれにシリカを充填した。
【0101】
触媒混合物は、0.59gの酢酸カリウムと1.5833gの18-Crown-6を10.38gの無水ジエチレングリコール中で攪拌することで調製した。この触媒混合物3.14gを3つのポリマー溶液それぞれに加えた。
【0102】
リチウム箔電極を前記ポリマー溶液それぞれに浸漬した。前記コーティングした箔電極を取り出し、前記コーティングを室温で5分間乾燥させた。前記コーティングしたリチウム箔電極をさらに130℃で30分加硫し、完全に重合させた。
【0103】
前記コーティングしたリチウム箔電極をリチウム硫黄電池のアノードとして利用した。この後、前記電池はエーテルを基本とした電解質(1M LiOTf、0.5M LiNOをDME:DEGDME:DIOX(1/3:1/3:1/3)に溶解したもの)に入れて循環させた。基準として、非コーティングリチウム箔電極を使用して組み立てた同じ電池も同様に循環させた。
【0104】
図1に示した結果は、それぞれのコーティングが、そのまま(非コーティング)リチウム箔電極を使用して組み立てた対応する電池よりも循環性能が改善することを示している。
【0105】
電池は80サイクル後に分解し、前記リチウム箔電極のSEM画像を撮像した。非コーティングリチウム箔電極の表面は平坦ではなく、広範な苔状のリチウム成長の徴候を示した。対照的に、コーティングしたリチウム箔電極の表面は比較的平坦であった。
【0106】
保護コーティングを使用しない場合、リチウムの成長は苔状で電解質減少率が高くなることが認められた。ポリマーコーティングをリチウムに塗布する場合、苔状リチウムの成長は妨げられ、電解質減少速度が遅くなったため、(高エネルギー密度のバッテリーで)電解質負荷が低くてもサイクル寿命が改善した。
【実施例2】
【0107】
剥離-めっき試験
対照として100μm厚の非コーティングリチウム金属電極を用い、リチウム-リチウム剥離/めっき試験を行った。本試験は、ボタン型電池のリチウム電極のディスクを2つ取り付けて行った。ポリオレフィン隔離板を用い、2つのリチウムディスクが接触しないようにした。次に、電解質(TEGDME中1M LiOTf)をディスク間に導入し、1mA/cmに相当する電流を1時間かけ、一方のリチウムディスクから他方にリチウムイオンを移動させた。1時間後、めっきしたリチウムディスクを脱めっきし、第2のリチウムディスクに再めっきするため、電流を逆流させた。剥離/めっき電圧は時間に対して測定した。
【0108】
剥離-めっき試験はコーティングしたリチウム電極を用いて繰り返した。ここで、上記の実施例1に説明したものと同様のコーティングで、100μm厚のリチウム電極をコーティングした。ただし、シリカの代わりに、充填剤として前記ポリマーに5%モンモリロナイト粘土を組み込んだ。
【0109】
非コーティングリチウムの対照は160時間後に機能しなくなったが、コーティングしたリチウムは200時間後も安定であり、リチウムの樹枝状成長を防止する保護コーティングの有効性を示していた。
図1