(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】ソイルセメントを製造する方法
(51)【国際特許分類】
E02D 3/12 20060101AFI20220317BHJP
E02D 3/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D3/00 101
(21)【出願番号】P 2021042119
(22)【出願日】2021-03-16
【審査請求日】2021-04-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500390869
【氏名又は名称】株式会社インバックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141966
【氏名又は名称】新井 範彦
(74)【代理人】
【識別番号】100103539
【氏名又は名称】衡田 直行
(72)【発明者】
【氏名】秋山 祥克
(72)【発明者】
【氏名】酒巻 克之
(72)【発明者】
【氏名】松村 和樹
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021303(JP,A)
【文献】特開2002-004333(JP,A)
【文献】特開2000-256669(JP,A)
【文献】特開2015-232224(JP,A)
【文献】特開昭53-020610(JP,A)
【文献】田中 孝 他,急速ソイルセメント地中連続壁工法「AWARD-Para工法」の開発,技術研究報告,第45号,日本,戸田建設株式会社,2019年11月,13-1~13-9,https://www.toda.co.jp/lucubration/pdf/2019/v13.pdf
【文献】早野外3名,ほぐしを利用した液状泥土の新しい造粒方法の基礎的検討,土木学会論文集C(地圏工学),Vol.70,No.4,日本,土木学会,2014年,p.424-432
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
細粒土、火山灰質粘性土、有機質土、高有機質土、および高粘性土から選ばれる1種以上の土砂に固化材を1次添加して混合する、固化材の1次添加工程と、
(B)
前記土砂と固化材の混合物の圧縮強さが
0.4~1.2N/mm
2になる仮置き養生の期間を経た後、該土砂と固化材の混合物を
粒径が200mm以下に解砕する、混合物の養生・解砕工程と、
(C)解砕した混合物に、さらに固化材を2次添加する固化材の2次添加工程と、
を備える、ソイルセメントを製造する方法(ただし、前記固化材は、生石灰および主体が生石灰である固化材を除く。)
であって、
前記1次添加量が30~300kg/m
3
、および前記2次添加量が80~300kg/m
3
であり、かつ1次添加量と2次添加量の合計が130~500kg/m
3
であり、
下記(a)の場合は前記1次添加時に加水し、下記(b)の場合は前記2次添加時に加水する、ソイルセメントを製造する方法。
(a)土砂の粘性が高いため固化材の攪拌混合が困難、または不可能な場合
(b)前記仮置養生した後の土砂と固化材の混合物の圧縮強さが、解砕時において0.5N/mm
2
以上の場合
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は従来のソイルセメントの製造方法で用いる固化材の添加量で、土砂をより多く利活用できるソイルセメントを製造する方法である。
【背景技術】
【0002】
従来、土砂に固化材を添加してソイルセメントを製造する方法では、固化材を一度に添加していた(特許文献1、特許文献2)。しかし、この方法では、土砂が、細砂、火山灰質粘性土および有機質土等の固化難土や、重粘土等の高粘性土である場合、一般的な土砂と比べ目標強度を達成するために必要な固化材量が多くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-15022号公報
【文献】特開2018-21303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明は、対象とする土砂が固化難土や高粘性土であっても、従来のソイルセメントの製造方法で用いる固化材の添加量で、土砂をより多く利活用できるソイルセメントを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明者らは、前記目的を達成すべく鋭意検討した結果、下記の構成を有するソイルセメントを製造する方法は、前記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
[1](A)細粒土、火山灰質粘性土、有機質土、高有機質土、および高粘性土から選ばれる1種以上の土砂に固化材を1次添加して混合する、固化材の1次添加工程と、
(B)前記土砂と固化材の混合物の圧縮強さが0.4~1.2N/mm2になる仮置き養生の期間を経た後、該土砂と固化材の混合物を粒径が200mm以下に解砕する、混合物の養生・解砕工程と、
(C)解砕した混合物に、さらに固化材を2次添加する固化材の2次添加工程と、
を備える、ソイルセメントを製造する方法(ただし、前記固化材は、生石灰および主体が生石灰である固化材を除く。)であって、
前記1次添加量が30~300kg/m
3
、および前記2次添加量が80~300kg/m
3
であり、かつ1次添加量と2次添加量の合計が130~500kg/m
3
であり、
下記(a)の場合は前記1次添加時に加水し、下記(b)の場合は前記2次添加時に加水する、ソイルセメントを製造する方法。
(a)土砂の粘性が高いため固化材の攪拌混合が困難、または不可能な場合
(b)前記仮置養生した後の土砂と固化材の混合物の圧縮強さが、解砕時において0.5N/mm
2
以上の場合
【発明の効果】
【0007】
本発明のソイルセメントを製造する方法は、従来のソイルセメントの製造方法で用いる固化材の添加量で、土砂をより多く利活用できる。また、これを云い換えれば、本発明のソイルセメントを製造する方法は、従来のソイルセメントの製造方法において用いる固化材の添加量よりも少ない添加量で、同じ強度を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例における圧縮強さの測定作業の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記したとおり、土砂に固化材を分割して添加してソイルセメントを製造する方法である。また、本発明は、好ましくは土砂に固化材を1次添加して混合し、仮置き養生の期間を経て土砂と固化材の混合物を解砕した後、さらに固化材を2次添加して、転圧せずにまたは転圧してソイルセメントを製造する方法である。前記転圧しない場合とは、例えば、転圧のエネルギーを加えると、土砂が軟弱化して締め固まらない状態になり、この状態では転圧しようとしてもできない場合である。一方、締固め可能な状態であれば転圧する。
そして、好ましくは、前記1次添加量は30~300kg/m3、および前記2次添加量は50~300kg/m3であり、かつ1次添加量と2次添加量の合計が80~500kg/m3である。1次添加量が30kg/m3未満、2次添加量が50kg/m3未満、および1次添加量と2次添加量の合計が80kg/m3未満では、ソイルセメントの強度は十分でなく、また、1次添加量が300kg/m3超、2次添加量が300kg/m3超、および1次添加量と2次添加量の合計が500kg/m3超では、ソイルセメントの強度は増加するが、コスト増となる他、ソイルセメントの破壊ひずみは小さくなり、地盤の変形に追従できずクラック等が発生する場合がある。なお、より好ましくは、前記1次添加量は50~300kg/m3、および前記2次添加量は80~300kg/m3であり、かつ1次添加量と2次添加量の合計が130~500kg/m3である。
なお、前記添加量は、事前に室内試験等により適切な添加量を決定するとよい。
【0010】
本発明が対象とする土砂は、特に限定されないが、細粒土、火山灰質粘性土、有機質土、高有機質土などの固化難土や重粘土などの高粘性土から選ばれる1種以上であり、これらに対して、本発明は特に有効である。
【0011】
本発明では、粘度、強度、および締固め度の調整のため、固化材の1次添加時および/または2次添加時に加水してもよい。前記加水の条件は、下記(a)の場合は前記1次添加時に加水し、下記(b)の場合は前記2次添加時に加水する。
(a)土砂の粘性が高いため固化材の攪拌混合が困難または不可能な場合
(b)前記仮置養生した後の土砂と固化材の混合物の圧縮強さが、解砕時において0.5N/mm2以上の場合
ここで、土砂の粘性が高いため固化材の攪拌混合が困難または不可能な場合とは、攪拌混合が混合装置の性能に依存して一義的には云えないが、攪拌混合ができないか、または均一に混ざらない場合をいう。
なお、前記加水の量は加水目的に応じた試行により決めればよい。
【0012】
本発明において、土砂に固化材を1次添加して混合した混合物の仮置き養生期間は、土砂と固化材の混合物の圧縮強さが0.2~1.2N/mm2になる時であり、これは混錬した後、1日~3ヶ月程度の期間に相当する。該圧縮強さが0.2N/mm2未満では、前記混合物の強度が解砕できる強度に達しない(力を加えると泥濘化する)場合があり、1.2N/mm2を超えると、解砕が困難になるか、解砕後の転圧が困難になる場合がある。なお、前記圧縮強さは、好ましくは0.4~1.0N/mm2である。解砕方法は特に限定されないが、前記仮置き養生期間が経過した後の混合物をバックホウのバケットまたはキャタピラで押し潰す、若しくは篩が装着された特殊な解砕機用いて砕く方法等が挙げられる。
また、前記解砕した土砂と固化材の混合物の粒径は、好ましくは200mm以下である。該粒径が200mmを超えると転圧が困難となる。なお、該粒径は、好ましくは150mm以下である。
【0013】
次に、本発明で用いる固化材、水、および土砂と固化材の混合物の混合装置について説明する。
(1)固化材
該固化材は、高炉セメントA種、高炉セメントB種、高炉セメントC種、ポルトランドセメント、シリカセメント、フライアッシュセメント、エコセメント、およびセメント系固化材から選ばれる1種以上である。ここで、セメント系固化材は複合材であって、その母材はセメントであり、その他の固化成分やその配合は、一般軟弱土用、特殊土用(汎用型)、および高有機質土用などの固化の難易度や、固化現場の状況などに応じて決められる。例えば、市販のセメント系固化材は、汎用型ではジオセット(登録商標、太平洋セメント社製)200、高有機質土用ではジオセット(登録商標、太平洋セメント社製)225等が挙げられる。なお、コストや固化性能を考慮すると、前記固化材は、好ましくは高炉セメントB種とセメント系固化材である。
(2)水
本発明の加水に用いる水は、上水道水、河川水、湖沼水、海水、および下水処理水等を用いることができる。なお、加水量は、使用する水を用いて実際に混合物を調製して決めるとよい。その際、上水道水以外を使用する場合は、固化性能に悪影響を及ぼさないことを確認することが好ましい。
(3)混合装置
前記土砂と固化材の混合物の混合装置は、特に制限されず、一般に、コンクリートやモルタルの混練に用いるミキサーでよく、可傾式ミキサー、強制練りミキサー、ドラムミキサー、重力式ミキサー、およびハンドミキサー等が挙げられる。また、現場においては、混合装置は、バックホウ、バケットミキシング、ソイルセメント専用のバッチ式または連続式のミキサーなどが挙げられる。
【実施例】
【0014】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は該実施例に限定されない。
1.使用材料
(1)試料土
表1に示す土砂を試料土として用いた。
【0015】
【0016】
(2)固化材
固化材は、ジオセット(登録商標)225(太平洋セメント社製、表2中の略号はGS225である。)、および高炉セメントB種(太平洋セメント社製、表2中の略号はBB)を用いた。
【0017】
2.圧縮強さの測定
表2に示す配合に従い、前記試料土と一次添加の固化材、また必要な場合は加水して混練し混合物を調製した。これをポリ袋にて所定期間仮置きして密封養生した後、19mmのフルイを通過させて前記混合物を解砕した。次に、該解砕物と2次添加の固化材、また必要な場合は加水して混練し、該混練物を内径50mm、高さ100mmのモールドにタッピング(転圧なし)またはセメント協会標準試験方法(JCAS L-01)により転圧し、供試体を作製した。該供試体の材齢28日の圧縮強さは、JIS A 1216「土の一軸圧縮試験方法」に準拠して測定した。その結果を表2に示す。また、この測定作業のフローチャートの一例を
図1に示す。
【0018】
【0019】
3.試験結果の評価
試料土および固化材の種類と、固化材の合計の添加量が同一の実施例と比較例(すなわち、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2、実施例4と比較例3、実施例5と比較例4、実施例7と比較例5、実施例8と比較例6、および実施例10と比較例7)を比較すると、すべての例において圧縮強さは、比較例より実施例の方が高い。
したがって、本発明のソイルセメントを製造する方法で製造したソイルセメントは強度がより高いため、従来のソイルセメントの製造方法で用いる固化材の添加量で、土砂をより多く利活用できる。また、従来のソイルセメントの製造方法において用いる固化材の添加量よりも少ない添加量で、同じ強度を得ることができる。
【要約】
【課題】本発明は、土砂が固化難土や高粘性土であっても、従来のソイルセメントの製造方法で用いる固化材の添加量で、土砂をより多く利活用できるソイルセメントの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の第1の発明は、土砂に固化材を分割して添加してソイルセメントを製造する方法であり、本発明の第2の発明は、土砂に固化材を1次添加して混合し、仮置き養生の期間を経て該土砂と固化材の混合物を解砕した後、さらに固化材を2次添加して転圧せずにまたは転圧してソイルセメントを製造する方法である。
【選択図】
図1