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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】電解液材料の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 21/096 20060101AFI20220317BHJP
   C01B 21/086 20060101ALI20220317BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALN20220317BHJP
【FI】
C01B21/096 Z
C01B21/086
H01M10/0568
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2016106094
(22)【出願日】2016-05-27
(65)【公開番号】P2017210392
(43)【公開日】2017-11-30
【審査請求日】2019-02-06
【審判番号】
【審判請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】奥村 康則
(72)【発明者】
【氏名】板山 直彦
(72)【発明者】
【氏名】勝山 裕大
(72)【発明者】
【氏名】水野 弘行
(72)【発明者】
【氏名】深田 幸宏
【合議体】
【審判長】原 賢一
【審判官】大光 太朗
【審判官】金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/052752(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/149095(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/148258(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B15/00-23/00
H01M10/05-10/39
H01M6/24-6/52
H01G11/00-11/86
H01G9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒(A)を含む電解液材料の製造方法であって、
前記有機溶媒(A)とは異なる有機溶媒(B)を含む反応溶液中でのビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応を行う反応工程と、
前記有機溶媒(A)存在下での減圧及び/又は加熱による前記有機溶媒(B)の揮発操作を行う揮発工程と、
前記電解液材料をろ過する精製工程とを含
前記反応工程において、前記ビス(フルオロスルホニル)イミドに対する前記アルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比が1.03以上1.20以下であり、該アルカリ金属化合物がLiCl及び/又はLiFである、電解液材料の製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒(A)がカーボネート系溶媒、環状エーテル系溶媒、分子内の酸素原子数が2以上である鎖状エーテル系溶媒、環状エステル系溶媒、スルホラン系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびN-メチルオキサゾリジノンからなる群れから選ばれた少なくとも1種である請求項1に記載の電解液材料の製造方法。
【請求項3】
前記有機溶媒(B)が、ケトン類、ニトリル系溶媒、鎖状エステル系溶媒および脂肪族分子内の酸素原子数が1である鎖状エーテル系溶媒からなる群れから選ばれた少なくとも1種である請求項1又は2に記載の電解液材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒を含む電解液材料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩は、非水系電解液用の電解質や、燃料電池の電解液への添加物、帯電防止剤等として使用されるなど、様々な用途において有用な化合物である。特に近年、アルカリ金属電池、特にリチウムイオン二次電池は、高エネルギー密度を有するため、移動体通信機器用電源、携帯用情報端末用電源などとして利用され、端末の普及と共にその市場が急速に伸びている。
【0003】
ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の製造方法として、特許文献1には、フッ化水素存在下オートクレーブ中で、等モルのビス(フルオロスルホニル)イミドとフッ化リチウムを180℃で1時間反応させることにより、収率99%以上でビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩が得られたことが記載されている。しかしながら、腐食性の高いフッ化水素を溶媒として多量に用いているため取扱いが困難で、また、溶媒として使用したフッ化水素の生成物からの除去が必要であり、改善の余地があった。
【0004】
特許文献2には、アセトニトリル溶媒中でビス(フルオロスルホニル)イミドと炭酸リチウムを反応させ、溶媒を蒸発乾固させることでビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩が得られたことが記載されている。
【0005】
また、特許文献3には特定のフルオロスルホニルイミド塩を含む電解液材料の製造方法について、電解液溶媒を含む溶液を減圧及び/又は加熱して、製造溶媒を揮発させことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】CA2527802号公報
【文献】特表2015-536898公報
【文献】国際公開第2016/052752号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の製造例1を見るとビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の精製には水溶液が用いられており、吸湿性の高いビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩から非水電解質を製造する場合に水を除くためには、粉体化などで水の除去を行った後に特定の有機溶媒を含む電解液材料とするなどの複数の工程を経る必要があった。
【0008】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、リチウムイオン二次電池などの非水系電解液に好適に用いられる、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒を含む電解液材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒(A)を含む電解液材料の製造方法であって、前記有機溶媒(A)とは異なる有機溶媒(B)を含む反応溶液中でのビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応、および、有機溶媒(A)存在下での減圧及び/又は加熱による有機溶媒(B)の揮発操作を含む、電解液材料の製造方法である。
【0010】
前記有機溶媒(A)は、カーボネート系溶媒、環状エーテル系溶媒、分子内の酸素原子数が2以上である鎖状エーテル系溶媒、環状エステル系溶媒、スルホラン系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびN-メチルオキサゾリジノンからなる群れから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0011】
前記有機溶媒(B)は、ケトン類、ニトリル系溶媒、鎖状エステル系溶媒および分子内の酸素原子数が1である鎖状エーテル系溶媒からなる群れから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0012】
前記ビス(フルオロスルホニル)イミドに対する前記アルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比は、1.00以上であることが好ましい。ビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物のモル比が1.00以上であることにより、有機溶媒(A)や有機溶媒(B)に不溶のアルカリ金属化合物をろ過で除去することが可能となる。
【0013】
本発明の製造方法は、電解液材料をろ過する精製工程を含むことが好ましい。
【0014】
前記アルカリ金属化合物はLiCl及び/又はLiFであることが好ましい。アルカリ金属化合物がLiCl及び/又がLiFであれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応での副生成物であるHClやHFの沸点が低いため、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の精製が容易となり、リチウムイオン電池用電解液に好適に用いられるリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドが得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吸湿性の高いビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩粉体を取扱うための設備が不要となり、また、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩から水分を除去する工程が簡略化できるため、生産コストが低減できる。さらに、本発明の電解液材料をそのまま、又は希釈するだけで、非水電解液を得ることができるため、作業性が向上し、安価且つ簡便に非水電解液を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について詳しく説明する。尚、これ以降の説明において特に記載がない限り、「%」は「質量%」を、「部」は「質量部」を、それぞれ意味し、範囲を示す「A~B」は、A以上B以下であることを示す。
【0017】
本発明の製造方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒(A)を含む電解液材料の製造方法であって、前記有機溶媒(A)とは異なる有機溶媒(B)を含む反応溶液中でのビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応、および、有機溶媒(A)存在下での減圧及び/又は加熱による有機溶媒(B)の揮発操作を含む、電解液材料の製造方法である。
[ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応]
ビス(フルオロスルホニル)イミド(HFSI)とアルカリ金属化合物との反応は、有機溶媒(B)を含む反応溶液中で行われる。
【0018】
ビス(フルオロスルホニル)イミドは公知の方法で合成が可能である。例えば、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドからフッ素化剤を用いてビス(フルオロスルホニル)イミドを合成する方法が挙げられる。ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドにおけるハロゲンとしては、F以外の、Cl,Br、I、Atが挙げられる。
【0019】
以下に、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドからフッ素化剤を用いてビス(フルオロスルホニル)イミドを合成するフッ素化工程について説明する。例えば、ビス(ハロゲン化スルホニル)イミドのフッ素化反応を行ってもよい。具体的には、CA2527802号公報に記載の方法、Jean’ne m. Shreeveら、Inorg. Chem. 1998, 37 (24), 6295-6303に記載の方法などが挙げられる。また、出発原料となるビス(ハロゲン化スルホニル)イミドは、市販のものを使用してもよく、また、公知の方法で合成したものを用いてもよい。また、特表平8-511274号公報に記載の、尿素とフルオロスルホン酸を用いて、ビス(フルオロスルホニル)イミドを合成する方法などもある。
【0020】
本発明の製造方法における前記アルカリ金属化合物としては、LiOH、NaOH、KOH、RbOH、CsOH等の水酸化物;LiCO、NaCO、KCO、RbCO、CsCO等の炭酸塩、LiHCO3、NaHCO3、KHCO、RbHCO、CsHCO等の炭酸水素塩;LiCl、NaCl、KCl、RbCl、CsCl等の塩化物;LiF、NaF、KF、RbF、CsF等のフッ化物;CHOLi、EtOLi等のアルコキシド化合物;及び、EtLi、BuLiおよびt-BuLi(尚、Etはエチル基、Buはブチル基を示す)等のアルキルリチウム化合物;等のアルカリ金属化合物が挙げられる。中でも、LiF、NaF、KF、LiCl、NaCl、KClなどのアルカリ金属塩が好ましく、LiCl及び/又はLiFであることが特に好ましい。アルカリ金属化合物がLiCl及び/又がLiFであれば、ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応での副生成物であるHClやHFの沸点が低いため、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の精製が容易となる。
【0021】
ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応におけるビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比は1.00以上が好ましい。下限としては、1.00以上がより好ましく、1.01以上がさらに好ましく、1.03以上がよりさらに好ましく、1.05以上が特に好ましく、1.10以上がより特に好ましい。また、上限としては、2.00以下がより好ましく、1.80以下がさらに好ましく、1.50以下がよりさらに好ましく、1.30以下が特に好ましく、1.20以下がより特に好ましい。ビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比がこの範囲であれば、反応には当量以上のアルカリ金属化合物を用いることになるが、アルカリ金属化合物は電解液材料中では不溶の固体となることが考えられ、未反応のアルカリ金属化合物はろ過による精製が可能である。なお、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩は電解液材料中では可溶である。また、ビス(フルオロスルホニル)イミドは固体でなく液状のため、ろ過では除去できないが、ビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比がこの範囲であれば、反応条件を適切に設定できれば、反応後に含まれるビス(フルオロスルホニル)イミドは少なくなり、反応後にビス(フルオロスルホニル)イミドを除去する操作は簡略化できる可能性がある。
【0022】
本発明の製造方法における前記有機溶媒(B)は、有機溶媒(A)と異なっていればよく、特に限定されず、公知の溶媒を含むことが可能である。有機溶媒(B)はビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応やその精製に溶媒として用いられることが好ましい。すなわち、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の製造に好ましく用いられる溶媒であり、本願明細書中では以下、製造溶媒と記載することもある。また、前記有機溶媒(B)は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒(A)を含む電解液材料に残留することもあり、以下、本願では残留溶媒と記載することもある。
【0023】
有機溶媒(B)について、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩との親和性で分類すると、以下が挙げられる。ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と親和性が中程度の溶媒としては、水;メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒;蟻酸、酢酸等のカルボン酸系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類;イソブチロニトリル、アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等の鎖状エステル系溶媒;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン等の分子内の酸素原子数が1である鎖状エーテル系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等の環状エーテル系溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン等のニトロ基含有溶媒;グライム系溶媒等が挙げられる。その中で、アセトニトリル、バレロニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、シクロペンチルメチルエーテルが好ましい。ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と親和性が低い溶媒としては、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、ベンゼン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,2,3-トリメチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1,3,5-トリメチルベンゼン、テトラリン、シメン、メチルエチルベンゼン、2-エチルトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素系溶媒(ハロゲン化炭化水素を含む);ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ウンデカン、トリデカン、デカリン、2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、イソパラフィン(例えば、「マルカゾールR」(丸善石油化学株式会社製の2,2,4,6,6-ペンタメチルヘプタン、2,2,4,4,6-ペンタメチルヘプタンの混合物)、「アイソパー(登録商標)G」(エクソンモービル製のC9-C11混合イソパラフィン)、「アイソパー(登録商標)E」(エクソンモービル製のC8-C10混合イソパラフィン)ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン等の鎖状脂肪族炭化水素系溶媒(ハロゲン化炭化水素を含む);シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、1,2-ジメチルシクロヘキサン、1,3-ジメチルシクロヘキサン、1,4-ジメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、1,2,4-トリメチルシクロヘキサン、1,3,5-トリメチルシクロヘキサン、プロピルシクロヘキサン、ブチルシクロヘキサン、「スワクリーン150」(丸善石油化学株式会社製のC9アルキルシクロヘキサンの混合物)等の環状脂肪族炭化水素系溶媒;アニソール、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール等の芳香族エーテル系溶媒、等が挙げられる。これらの溶媒は単独であってもよく、また2種以上を混合していてもよい。その中で、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、イソプロピルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンが好ましい。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。
【0024】
その中でも特に有機溶媒(B)としては、ケトン類、ニトリル系溶媒、鎖状エステル系溶媒およびの分子内の酸素原子数が1である鎖状エーテル系溶媒からなる群れから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。特に、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、イソブチロニトリル、アセトニトリル、バレロニトリル、ベンゾニトリル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル等、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル、ジメトキシメタンおよび1,2-ジメトキシエタンからなる群れから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0025】
有機溶媒(B)を含む反応溶液中で行われるビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応の条件を以下記載する。
【0026】
上記ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物の反応における反応温度は20~200℃で可能である。上限は180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。下限は40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。20~200℃で可能である。上限は180℃以下が好ましく、160℃以下がより好ましい。下限は40℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましい。
【0027】
上記ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物の反応における圧力は高圧下、常圧下、いずれで行ってもよい。具体的な反応の圧力範囲は、好ましくは1250hPa以下であり、より好ましくは1150hPa以下、さらに好ましくは1050hPa以下である。
【0028】
上記ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物の反応における添加の順序としては、特に限定されないが、有機溶媒(B)とビス(フルオロスルホニル)イミドの混合物にアルカリ金属化合物を添加しながら反応を行ってもよく、有機溶媒(B)とアルカリ金属化合物の混合物にビス(フルオロスルホニル)イミドを添加しながら反応を行ってもよい。また、有機溶媒(B)とビス(フルオロスルホニル)イミドとの混合物に有機溶媒(B)とアルカリ金属化合物の混合物を添加しながら反応を行ってもよく、有機溶媒(B)とアルカリ金属化合物との混合物に有機溶媒(B)とビス(フルオロスルホニル)イミドの混合物を添加しながら反応を行ってもよい。ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物と有機溶媒(B)を混合してから反応を開始することも可能である。また、添加方法は特に限定されないが、必要量を一括添加する方法や、何回かに分ける回分式添加方法、連続的に添加する逐次添加方法などが挙げられる。
【0029】
本発明の電解液材料の製造方法は、ろ過する精製工程を含むことが好ましい。前述したように、ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応におけるビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比は1.00以上が好ましい。ビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比がこの範囲であれば、反応には当量以上のアルカリ金属化合物を用いることになるが、アルカリ金属化合物は反応溶液中では不溶の固体となることが考えられ、未反応のアルカリ金属化合物は反応溶液のろ過による精製が可能である。ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物の反応後に、反応溶液のろ過による精製を行うことが好ましい。精製工程にはろ過以外の公知の晶析などの固体析出や蒸留、濃縮などの操作を含んでもよい。
[有機溶媒(A)の添加操作]
本発明のビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒(A)を含む電解液材料の製造方法は、有機溶媒(A)の添加操作を含むことが好ましい。本発明の電解液材料はリチウム二次電池などの非水系の電解液に用いられるため、本発明の電解液材料に含まれる有機溶媒(A)は電解液材料としてそのまま使用できる溶媒を使用することが出来ることから、本願明細書中では、有機溶媒(A)を電解液溶媒と記載することもある。
【0030】
有機溶媒(A)の添加操作は、前記したビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応開始前でも可能である。ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応開始後や反応中、あるいは、反応終了後に行うことも可能であり、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩を含む溶液に対して行われることが好ましい。有機溶媒(A)の添加方法は特に限定されないが、必要量の有機溶媒(A)を一括添加する方法や、何回かに分ける回分式添加方法、連続的に添加する逐次添加方法などが挙げられる。
【0031】
本発明の電解液材料の製造方法において、有機溶媒(A)の添加量は、下限については特に制限はなく、残留溶媒の量などにより適宜調整すればよい。例えば、上記ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩100gに対して、10000g以下が好ましく、より好ましくは5000g以下、さらに好ましくは1000g以下、さらに好ましくは500g以下、さらに好ましくは200g以下、最も好ましくは100g以下である。
【0032】
本発明の電解液材料の製造方法において、有機溶媒(A)の添加量は、例えば、上記ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩100質量部に対して、1~10000質量部が好ましく、より好ましくは5~5000質量部、さらに好ましくは10~1000質量部、特に好ましくは30~500質量部、さらに特に好ましくは50~200質量部である。
【0033】
本発明の製造方法における前記有機溶媒(A)は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と親和性が高く、揮発工程に好適に使用することができ、電解液材料としてそのまま使用できる溶媒を使用することが好ましい。また、アルカリ金属化合物の溶解性が低い溶媒が好ましい。ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と親和性が高く、アルカリ金属化合物の溶解性が低ければ、前述したように、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩とを含む電解液材料に含まれるアルカリ金属化合物をろ過により精製することが可能となる。
【0034】
本発明の製造方法における前記有機溶媒(A)は、カーボネート系溶媒、環状エーテル系溶媒、分子内の酸素原子数が2以上である鎖状エーテル系溶媒、環状エステル系溶媒、スルホラン系溶媒、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドおよびN-メチルオキサゾリジノンからなる群れから選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
有機溶媒(A)としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒;ジメトキシメタン、1,2-ジメトキシエタン等の分子内の酸素原子数が2以上である鎖状エーテル系溶媒;テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキサン、4-メチル-1,3-ジオキソラン等の環状エーテル系溶媒;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル系溶媒;スルホラン、3-メチルスルホラン等のスルホラン系溶媒;N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルオキサゾリジノン等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上を用いてもよい。上記例示の溶媒の中でも、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等のカーボネート系溶媒(特にエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート)や、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル系溶媒が好ましい。
[減圧及び/又は加熱による有機溶媒(B)の揮発操作]
本発明のビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒(A)を含む電解液材料の製造方法は、有機溶媒(A)存在下での減圧及び/又は加熱による有機溶媒(B)の揮発操作を含む。
【0036】
減圧及び/又は加熱による有機溶媒(B)の揮発操作は、ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応開始前でも可能である。ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応開始後や反応中、あるいは、反応終了後に行うことも可能であり、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩を含む溶液に対して行われることが好ましい。
【0037】
本発明のビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩と有機溶媒(A)を含む電解液材料の製造方法は、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩を含む溶液を有機溶媒(A)存在下で減圧及び/又は加熱して、有機溶媒(B)を揮発させる。すなわち、有機溶媒(A)の添加操作の開始後に、減圧及び/又は加熱による有機溶媒(B)の揮発操作を開始することが好ましい。減圧及び/又は加熱による有機溶媒(B)の揮発操作の開始は、有機溶媒(A)の添加操作の開始前でも可能である。
【0038】
ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩は、粉体(固体)として単離しても粉体内部に単離前に使用された有機溶媒(B)を含んでいることが考えられるが、本発明の製造方法であれば、電解液材料中の有機溶媒(B)の含有量を低減することが出来る。本発明における有機溶媒(A)は、残留溶媒として電解液材料に含まれる可能性のある有機溶媒(B)と比べて、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩との親和性が高く、揮発操作に好適に使用することができ、電解液材料としてそのまま使用できる溶媒を使用することが出来る。このような有機溶媒(A)を用いることにより、効率よく残留溶媒を除去することができる。またさらに、本発明の電解液材料は、必要な溶媒や添加剤、電解質等を混合することにより、そのままリチウム二次電池の電解液として使用できる。
【0039】
本発明の電解液材料の製造方法において、揮発操作前に含まれる残留溶媒量は、下限については特に制限はないが、上記ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩100gに対して、例えば、1000g以下が好ましく、より好ましくは500g以下、さらに好ましくは100g以下、最も好ましくは50g以下である。残留溶媒が多い場合には、有機溶媒(A)の使用量が増えたり、揮発に要する時間が増えたりするので望ましくない。溶液中でビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩を製造、精製して得られた溶液を揮発操作に用いる場合は、揮発操作の前に(有機溶媒(A)を添加する前に)溶媒留去を行って、含有する残留溶媒量を低減させ、残留溶媒量を上記範囲とすることが好ましい。
【0040】
揮発操作は、特に限定されず、常圧下、減圧下いずれでも行うことができる。熱によるビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の分解を防ぐ点からは、減圧下で行うのが望ましい。減圧度は残留溶媒の種類、有機溶媒(A)の種類に応じて適宜調整すればよく特に限定はされないが、例えば、200kPa以下とするのが好ましく、より好ましくは40kPa以下であり、さらに好ましくは15kPa以下であり、特に好ましくは5kPa以下である。
【0041】
揮発温度は、減圧度、残留溶媒の種類、有機溶媒(A)の種類に応じて適宜調整すればよく特に限定はされないが、熱によるビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の分解を防ぐ点からは比較的低い温度で行うのが望ましい。例えば、10~110℃が好ましく、より好ましくは15~80℃であり、さらに好ましくは20~60℃であり、特に好ましくは30~50℃である。
【0042】
揮発時間は、減圧度、加熱温度、残存溶媒の量などに応じて適宜調整すればよく特に限定はされないが、例えば、0.1~24時間が好ましく、より好ましくは0.5~12時間、さらに好ましくは1~8時間であり、特に好ましくは2~5時間である。
【0043】
揮発操作に用いる減圧及び/又は加熱が行える装置としては、溶液量、減圧度、加熱温度などに応じて適宜選択すればよい。例えば、槽型反応器、減圧可能な槽型反応器等が挙げられる。
[ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩を含む電解液材料の製造方法]
ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩としては、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド(LiFSI)、ナトリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(NaFSI)、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩等が挙げられる。より好ましくはリチウムビス(フルオロスルホニル)イミドである。
【0044】
電解液材料中に含まれるビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の濃度は、有機溶媒(A)の種類に応じて適宜調整すればよく特に限定はされないが、例えば、15~95質量%が好ましく、より好ましくは20~90質量%、さらに好ましくは30~90質量%である。電解液材料に有機溶媒を添加して非水電解液を製造する際に、非水電解液中の電解質塩濃度を適宜設定できるという面から、電解液材料中に含まれるビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の濃度は、30質量%以上であることが好ましく、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。本発明の電解液材料はビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の濃度が30質量%以上であることにより、安定性が良く、保存や輸送に用いる容器の腐食の原因となるHF(フッ化水素酸)の発生が抑制されるため、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の保存や輸送にも適している。
【0045】
本発明の電解液材料に含まれる有機溶媒(A)としては、上述した有機溶媒(A)を用いることができるが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート又はγ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル系溶媒を含むことが好ましい。中でも、エチレンカーボネート又はγ-ブチロラクトンを含むことが好ましく、特に好ましくはエチレンカーボネートである。上記の環状カーボネート又は環状エステル系溶媒を有機溶媒(A)の合計量に対して90質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは98質量%以上含むことである。
【0046】
電解液材料中の有機溶媒(B)の量は、電解液材料の濃度残留溶媒の種類に応じて適宜調整すればよく特に限定はされないが、例えば、3000ppm以下が好ましく、より好ましくは2000ppm以下、さらに好ましくは1000ppm以下、特に好ましくは500ppm以下、最も好ましくは200ppm以下である。電解液中に含まれるビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の有機溶媒(B)の残留量が上記範囲であることにより、得られる非水電解液中の溶媒量を抑制することができるため、当該非水電解液を用いた電池においては、駆動時の副反応が抑制され、電池の膨れが抑制できる。
【0047】
揮発操作終了後は、必要に応じて、ろ過、カラム精製、活性炭処理、モレキュラーシーブ処理、晶析などの固体析出、濃縮などの公知の精製操作を実施しても良い。
【0048】
本発明の電解液材料の製造方法は、ろ過する精製工程を含むことが好ましい。特に、電解液材料をろ過する精製工程を含むことが好ましい。前述したように、ビス(フルオロスルホニル)イミドとアルカリ金属化合物との反応におけるビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比は1.00以上が好ましい。ビス(フルオロスルホニル)イミドに対するアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属のモル比がこの範囲であれば、反応には当量以上のアルカリ金属化合物を用いることになるが、アルカリ金属化合物は電解液材料中では不溶の固体となることが考えられ、電解液材料中の未反応のアルカリ金属化合物はろ過による精製が可能である。
【0049】
本発明の製造方法により得られる電解液材料は、一次電池、リチウムイオン二次電池、燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池、エレクトロクロミック表示素子等の蓄電デバイス(電気化学デバイス)を構成するイオン伝導体の材料として好適に用いられる。
【0050】
本発明には、上記電解液材料を用いて得られる非水電解液、上記電解液材料を用いた非水電解液の製造方法も含まれる。上記電解液材料に必要に応じて非水電解液調製用溶媒を混合することにより、非水電解液を得ることができる。非水電解液には電池特性向上を目的として各種電解質、添加剤等を添加することがあり、電解質等の溶解に適した溶媒を電解液材料に添加してもよく、本発明では電解液材料に所望の溶媒を添加することにより、非水電解液を調製することができる。
【0051】
したがって電解液調製用溶媒としては、有機溶媒(A)と相溶し、所望の電解質塩を溶解、分散させられるものであれば特に限定されない。また本発明では非水系溶媒、溶媒に代えて用いられるポリマー、ポリマーゲル等の媒体等、電池に用いられる従来公知の溶媒はいずれも使用できる。なお、電解液材料には有機溶媒(A)が含まれているが、必要に応じて電解液材料に更に有機溶媒(A)と同種の溶媒を添加してもよく、上述した有機溶媒(A)はいずれも用いることができる。電解液調製用溶媒は液体、固体のいずれでもよいが、効率的に混合するためには液体が好ましい。また電解液調製用溶媒の温度も特に限定されず、室温でよいが必要に応じて適宜温度を調整してもよい。
【0052】
電解液調製用溶媒の中でも、鎖状炭酸エステル類、環状炭酸エステル類等の炭酸エステル類(カーボネート系溶媒)、ラクトン類、エーテル類が好ましく、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等がより好ましく、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒がさらに好ましい。上記溶媒は1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明ではさらに必要に応じて電解液材料にビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩とは異なる電解質塩(以下、「他の電解質塩」ということがある)を混合してもよい。他の電解質塩は上記電解質調製用溶媒を添加する前の電解液材料に添加してもよいが、他の電解質塩の溶解効率を考慮すると上記電解質調製用溶媒を電解液材料に添加した後に、他の電解質塩を添加することが望ましい。例えば添加する他の電解質塩がLiPF6などのようにエチレンカーボネートに難溶性の場合、該電解質塩の溶解に適した溶媒を上記電解質調製用溶媒として電解液材料に添加した後、該電解質塩を添加することが望ましい。
【0054】
他の電解質塩としては、特に限定されず、リチウムイオン二次電池の電解液において用いられている従来公知の電解質はいずれも使用できる。例えば他の電解質塩としては、トリフルオロメタンスルホン酸イオン(CF3SO3 -)、フルオロリン酸イオン(PF6 -)、過塩素酸イオン(ClO4 -)、テトラフルオロ硼酸イオン(BF4 -)、ヘキサフルオロ砒酸イオン(AsF6 -)、テトラシアノホウ酸イオン([B(CN)4-)、テトラクロロアルミニウムイオン(AlCl4 -)、トリシアノメチドイオン(C[(CN)3-)、ジシアナミドイオン(N[(CN)2-)、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン(C[(CF3SO23-)、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン(SbF6 -)およびジシアノトリアゾレートイオン(DCTA)等をアニオンとする無機又は有機カチオン塩、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩以外のフルオロスルホニルイミド塩等の従来公知の電解質塩が使用できる。より具体的には、LiPF6、LiPF3(C253、LiBF4、LiBF(CF33が挙げられ、好ましくはLiPF6、LiBF4であり、さらに好ましくはLiPF6である。本発明の電解液材料に、電解液調製用溶媒、他の電解質塩を混合して非水電解液を製造することにより、電解質塩を混合する際の発熱を抑制できるため、非水電解液の分解を抑制し、良好な品質の電解液を得ることができる。
【0055】
本発明に係る非水電解液は、リチウムイオン二次電池の各種特性の向上を目的とする添加剤を含んでいてもよい。添加剤は非水電解液の製造過程の任意の段階で加えればよく、特に限定されず、例えば上記電解質塩の添加後に加えればよい。
【0056】
本発明には、本発明の電解液材料の保存方法、輸送方法も包含される。本発明の電解液材料は安定性が良く、保存や輸送に用いる容器の腐食の原因となるHF(フッ化水素酸)の発生が抑制されるため、ビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の保存や輸送にも適している。電解液材料中のビス(フルオロスルホニル)イミドアルカリ金属塩の濃度は、例えば、35質量%が、40質量%以上、50質量%以上が挙げられる。当該濃度の上限としては、95質量%以下、90質量%以下が挙げられる。
【0057】
本発明の電解液材料の保存、輸送に用いる容器としては、容器のサイズや材質などの形態は特に制限されず、従来公知の知見が適宜参照されうる。実験室レベルで合成された少量の電解液材料を保存するためには、小さい保存用容器を用いればよい。また、工業レベルで合成された大量の電解液材料を保存するためには、大きい保存用容器を用いればよい。
【0058】
保存用容器の材質については、例えば、ステンレス鋼、ハステロイなどの金属材料、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などのフッ素系樹脂等が採用されうる。なかでも、耐圧圧力が高いという観点からは、容器はステンレス鋼から構成されることが好ましい。また、保存用容器の耐蝕性をより一層向上させる目的で、上記の金属等の材料から構成される容器の内面を樹脂でコーティングするとよい。この際、コーティングに用いられる樹脂は特に制限されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素系樹脂やポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂が例示される。なかでも、耐蝕性の向上効果が優れるという観点からは、PTFEを用いてコーティングすることが好ましい。ここで、樹脂コーティングのコーティング厚さについては特に制限はないが、好ましくは10~3000μmであり、より好ましくは500~1000μmである。さらに、保存用容器は密封可能であることが好ましく、容器を密封可能とする手段としては、例えば、容器の一部にバルブを設ける形態が例示される。
【実施例
【0059】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0060】
実施例1
PFA(フッ素樹脂製)反応容器に、LiF 1.43g(55mmol)、アセトニトリル20gを量り取った。HFSI[ビス(フルオロスルホニル)イミド]9.05g(50mmol)を投入した。反応溶液を25℃で、5時間反応を行った。反応溶液にエチレンカーボネート10gを加え、50℃で減圧濃縮し、アセトニトリルを留去した。沈殿物を濾過により取り除きLiFSI[ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩]9.35gを含むエチレンカーボネート溶液19.3gを得た。LiFSIの含有量は、F-NMRより求めた。
【0061】
比較例1
PFA(フッ素樹脂製)反応容器に、LiF 1.34g(55mmol)、アセトニトリル20gを量り取った。HFSI[ビス(フルオロスルホニル)イミド]9.05g(50mmol)を投入した。反応溶液を25℃で、5時間反応を行った。反応溶液を、遠心分離し、固体を除去した。得られた溶液を、50℃で減圧蒸発乾固し、LiFSI[ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム塩]9.35gを得た。生成物には、アセトニトリルが不純物として残存していること、ガスクロマトグラフィーで確認した。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の製造方法により得られる電解液材料は、一次電池、リチウムイオン二次電池、燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池、エレクトロクロミック表示素子等の蓄電デバイス(電気化学デバイス)を構成するイオン伝導体の材料として好適に用いられる。