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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】座席
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/70 20060101AFI20220317BHJP
   B60N 2/68 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B60N2/70
B60N2/68
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2016223829
(22)【出願日】2016-11-17
(65)【公開番号】P2018079812
(43)【公開日】2018-05-24
【審査請求日】2019-10-21
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】シロキ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087778
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 明夫
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 正紀
【審査官】田中 佑果
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-208527(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0004371(US,A1)
【文献】特開2016-132423(JP,A)
【文献】実開平03-015223(JP,U)
【文献】特開2012-116377(JP,A)
【文献】特開2011-219045(JP,A)
【文献】実開平01-131349(JP,U)
【文献】特開平09-154665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-2/90
A47C 1/032
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前端部に座部前フレームを備えた座部と、
前記座部に対して傾動可能に設けられた背部フレームと、
前記座部前フレームに設けられた前方掛止部に一端部を掛止され、前記背部フレームの下端部に設けられた後方掛止部に他端部を掛止されたクッションバネと、
前記前方掛止部による掛止位置と前記後方掛止部による掛止位置との距離を、前記背部フレームの傾動に連動して変化させる距離調節機構と、
前記後方掛止部によるクッションバネ他端部の掛止高さを、前記背部フレームの傾動に連動して変化させる掛止高さ調節機構と、
を有し、
前記距離調節機構は、前記座部と前記背部フレームの成す角度が拡がる方向へ傾動されるとき、前記距離が短くなるように変化させる、
ことを特徴とする座席。
【請求項2】
前端部に座部前フレームを備えた座部と、
前記座部に対して傾動可能に設けられた背部フレームと、
前記座部前フレームに設けられた前方掛止部に一端部を掛止され、前記背部フレームの下端部に設けられた後方掛止部に他端部を掛止されたクッションバネと、
前記前方掛止部による掛止位置と前記後方掛止部による掛止位置との距離を、前記背部フレームの傾動に連動して変化させる距離調節機構と、
を有し、
前記距離調節機構は、前記座部と前記背部フレームの成す角度が拡がる方向へ傾動されるとき、前記距離が長くなるように変化させる、
ことを特徴とする座席。
【請求項3】
前端部に座部前フレームを備えた座部と、
前記座部に対して傾動可能に設けられた背部フレームと、
前記座部前フレームに設けられた前方掛止部に一端部を掛止され、前記背部フレームの下端部に設けられた後方掛止部に他端部を掛止されたクッションバネと、
前記前方掛止部による掛止位置と前記後方掛止部による掛止位置との距離を、前記背部フレームの傾動に連動して変化させる距離調節機構と、
を有し、
前記背部フレームは傾動の回転中心より下方に延設された下垂部を有し、
前記後方掛止部は、リンク部材と、前記バネ用の掛止部が設けられたブラケットとを有し、前記リンク部材は一端部を前記下垂部に対して可動に連結されるとともに中間部にて前記座部の後端部の座部後フレームに回転可能に支持され、前記ブラケットは前記リンク部材の他端部に一体に固定され、
前記距離調節機構は、前記下垂部と、前記後方掛止部とによって構成される、
ことを特徴とする座席。
【請求項4】
請求項1~請求項3の何れかに於いて、
前記距離調節機構は、前記後方掛止部による掛止位置を変移させることにより前記距離を変化させる、
ことを特徴とする座席。
【請求項5】
前端部に座部前フレームを備えた座部と、
前記座部前端部位の前方掛止部に一端部を掛止され、前記座部の後端部位置の後方掛止部に他端部を掛止されたクッションバネと、
前記前方掛止部による掛止位置と前記後方掛止部による掛止位置との距離をレバー操作に連動して変化させる距離調節機構と、
前記後方掛止部によるクッションバネ他端部の掛止高さを前記レバー操作に連動して変化させる掛止高さ調節機構と、
を有し、
前記前方掛止部による前記クッションバネの前記一端部の掛止位置は固定であり、
前記距離調節機構は、前記レバー操作により前記後方掛止部による掛止位置を変移させて前記距離を変化させる、
ことを特徴とする座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は座席に関する。特に、リクライニング機能を備え、乗物用として好適な座席に関する。ここで、乗物としては、例えば、列車、自動車、バス、船、飛行機等を挙げることができる。なお、乗物用として以外にも、例えば、劇場用等の用途にも好適である。
【背景技術】
【0002】
座席の背部を後方へ倒すリクライニングでは、背部の傾動支点と着座者の傾動支点とのズレに起因して、着座者の背がずり落ちる、着座者の身体が前方へ押し出される、等の着座感の悪化が生じ易い。
このため、座席の背部を後方へ倒すリクライニング動作に連動して、座部の後部側を沈み込ませるようにした座席が提案された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2000-201760
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の座席は、背部のリクライニング動作に連動して、座枠の後部の高さを低くする機構であるため、座部のクッション性は、リクライニングの前後で変化が無い。しかるに、座席の背部が後方へ倒されると、着座者の体重の中で座席の背部方向の成分が増加する分、座席の座部方向の成分が減少する。これにより、座布団に加わる着座者の重量が軽減されてしまうため、重量による座布団の沈み込み量が小さくなって、着座者に違和感が生じ易くなる。
本発明は、上述の違和感を低減もしくは解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の構成を、下記[1]~[3][5][4]に記す。なお、この項([課題を解決するための手段])と次項([発明の効果])に於いて、符号は理解を容易にするために付したものであり、本発明を符号の構成に限定する趣旨ではない。
[1]構成1
前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、
前記座部2に対して傾動可能に設けられた背部フレーム4と、
前記座部前フレーム21に設けられた前方掛止部12に一端部を掛止され、前記背部フレーム4の下端部に設けられた後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、
前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離を、前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる距離調節機構と、
前記後方掛止部32によるクッションバネ他端部の掛止高さを、前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる掛止高さ調節機構と、
を有し、
前記距離調節機構は、前記座部2と前記背部フレーム4の成す角度が拡がる方向へ傾動されるとき、前記距離が短くなるように変化させる、
ことを特徴とする座席。
クッションバネとしては、一端を一方の掛止部に掛止され他端を他方の掛止部に掛止されることにより張設され、それにより、着座者を支持する機能を奏し得るバネ(張設バネ)であればよい。例えば、Sバネや、フォームドワイヤ等を用いることができる。
[2]構成2
前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、
前記座部2に対して傾動可能に設けられた背部フレーム4と、
前記座部前フレーム21に設けられた前方掛止部12に一端部を掛止され、前記背部フレーム4の下端部に設けられた後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、
前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離を前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる距離調節機構と、
を有し、
前記距離調節機構は、前記座部2と前記背部フレーム4の成す角度が拡がる方向へ傾動されるとき、前記距離が長くなるように変化させる、
ことを特徴とする座席。
【0006】
背部フレーム4と座部2の成す角度が拡がる方向とは、背部フレーム4を後方へ倒す方向である。
[3]構成3
前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、
前記座部2に対して傾動可能に設けられた背部フレーム4と、
前記座部前フレーム21に設けられた前方掛止部12に一端部を掛止され、前記背部フレーム4の下端部に設けられた後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、
前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離を前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる距離調節機構と、
を有し、
前記背部フレーム4は傾動の回転中心より下方に延設された下垂部411(431)を有し、
前記後方掛止部32は、リンク部材321と、前記バネ5用の掛止部325が設けられたブラケット323とを有し、前記リンク部材321は一端部を前記下垂部411(431)に対して可動に連結されるとともに中間部321cにて前記座部2の後端部の座部後フレーム23に回転可能に支持され、前記ブラケット323は前記リンク部材321の他端部に一体に固定され、
前記距離調節機構は、前記下垂部411(431)と、前記後方掛止部32とによって構成される、
ことを特徴とする座席。
[5]構成5
前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、
前記座部前端部位の前方掛止部12に一端部を掛止され、前記座部の後端部位置の後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、
前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離をレバー操作に連動して変化させる距離調節機構と、
前記後方掛止部32によるクッションバネ他端部の掛止高さを前記レバー操作に連動して変化させる掛止高さ調節機構と、
を有し、
前記前方掛止部12による前記クッションバネ5の前記一端部の掛止位置は固定であり、
前記距離調節機構は、前記レバー操作により前記後方掛止部による掛止位置を変移させて前記距離を変化させる、
ことを特徴とする座席。
即ち、構成3では、距離調節機構は、揺動され得る下垂部411(431)と、下垂部411(431)の揺動に連動されるリンク部材321・ブラケット323・掛止部325を備えた後方掛止部32と、によって構成される。
【0007】
[4]構成4
構成1~構成3の何れかに於いて、
前記距離調節機構は、前記後方掛止部32による掛止位置を変移させることにより前記距離を変化させる、
ことを特徴とする座席。
【発明の効果】
【0008】
構成1は、前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、前記座部2に対して傾動可能に設けられた背部フレーム4と、前記座部前フレーム21に設けられた前方掛止部12に一端部を掛止され、前記背部フレーム4の下端部に設けられた後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離を、前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる距離調節機構と、前記後方掛止部32によるクッションバネ他端部の掛止高さを前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる掛止高さ調節機構と、を有し、前記距離調節機構は、前記座部2と前記背部フレーム4の成す角度が拡がる方向へ傾動されるとき前記距離が短くなるように変化させることを特徴とする座席であるため、背部フレーム4の傾動に連動してバネ5を短く(=柔らかく)して、及び、クッションバネ他端部の掛止高さを変化させて、クッション性を調整することができる。この調整量を適切に設定することにより、着座者に良好な着座感を与えることができる。
構成2は、前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、前記座部2に対して傾動可能に設けられた背部フレーム4と、前記座部前フレーム21に設けられた前方掛止部12に一端部を掛止され、前記背部フレーム4の下端部に設けられた後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離を前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる距離調節機構とを有し、前記距離調節機構は、前記座部2と前記背部フレーム4の成す角度が拡がる方向へ傾動されるとき、前記距離が長くなるように変化させる、ことを特徴とする座席であるため、背部フレーム4の傾動に連動して長く(=硬く)して、クッション性を調整することができる。この調整量を適切に設定することにより、着座者に良好な着座感を与えることができる。
【0009】
構成3は、前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、前記座部2に対して傾動可能に設けられた背部フレーム4と、前記座部前フレーム21に設けられた前方掛止部12に一端部を掛止され、前記背部フレーム4の下端部に設けられた後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離を前記背部フレーム4の傾動に連動して変化させる距離調節機構とを有し、前記背部フレーム4は傾動の回転中心より下方に延設された下垂部411(431)を有し、前記後方掛止部32は、リンク部材321と、前記バネ5用の掛止部325が設けられたブラケット323とを有し、前記リンク部材321は一端部を前記下垂部411(431)に対して可動に連結されるとともに中間部321cにて前記座部2の後端部の座部後フレーム23に回転可能に支持され、前記ブラケット323は前記リンク部材321の他端部に一体に固定され、前記距離調節機構は前記下垂部411(431)と前記後方掛止部32とによって構成される座席であるため、背部フレーム4を座部2から容易に取り外すことができ、メンテナンス性が良好である。即ち、背部フレーム4の下垂部411(431)を、後方掛止部32のリンク部材321から取り外すだけで足り、クッションバネ5を取り外す手間が不要なため、容易に取り外すことができる。
構成5は、前端部に座部前フレーム21を備えた座部2と、前記座部前端部位の前方掛止部12に一端部を掛止され、前記座部の後端部位置の後方掛止部32に他端部を掛止されたクッションバネ5と、前記前方掛止部12による掛止位置と前記後方掛止部32による掛止位置との距離をレバー操作に連動して変化させる距離調節機構と、前記後方掛止部32によるクッションバネ他端部の掛止高さを前記レバー操作に連動して変化させる掛止高さ調節機構とを有し、前記前方掛止部12による前記クッションバネ5の前記一端部の掛止位置は固定であり、前記距離調節機構は、前記レバー操作により前記後方掛止部による掛止位置を変移させて前記距離を変化させる座席であるため、前記レバー操作に連動してクッションバネ5を柔らかくするとともにクッションバネ他端部の掛止高さを変化させて、クッション性を調整することができる。この調整量を適切に設定することにより、着座者に良好な着座感を与えることができる。また、座部の前部の外形等に影響を及ぼすことがなく、膝裏等に違和感を生じさせることもない。
構成4は、構成1~構成3の何れかに於いて、前記距離調節機構は、前記後方掛止部32による掛止位置を変移させることにより前記距離を変化させる座席であるため、座部の前部の外形等に影響を及ぼすことがなく、膝裏等に違和感を生じさせることもない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施の形態の座席の内部構造を示す斜視図。
図2図1の座席の内部構造の分解状態を示す斜視図。
図3図1の座席の内部構造のリクライニング前後の状態を示す右側面図。左右は着座者基準とし、本明細書内で同様とする。
図4図1の座席の内部構造の背面図。
図5図1の座席の内部構造のリクライニング状態を示す右側面図(a)と、アップライト状態を示す右側面図(b)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照して、本発明の実施の形態の座席を説明する。以下、前/後/左/右等の各用語は着座者を基準とする。図示の座席は、座部2と、該座部2の後端部側から立設された背部フレーム4とを有する。なお、座部2の上には座布団等の表層部材が装具され、背部フレーム4にも同様の表層部材が装具されるが、これらについての図示及び説明は割愛する。
【0012】
座部2は、前端部に設けられた座部前フレーム21と、後端部に設けられた座部後フレーム23を有する。また、図示は省略されているが、座部前フレーム21の左端と座部後フレーム23の左端を連結する座部左フレーム、及び、座部前フレーム21の右端と座部後フレーム23の右端を連結する座部右フレームも有し、これら4つのフレームによって上面視略方形を成す座部2の構造体が構成されている。
この座部2は、実施の形態の座席が搭載される車両の床面に固定される不図示の台座に、一体に取り付けられる。
【0013】
幅方向に延びるパイプ状の座部前フレーム21には、斜め前・上方へ向けて延びるように、前方掛止部としてのブラケット12が一体に設けられている。このブラケット12の後方側表面の上縁部付近には、Sバネ5の前端部を掛止するための掛止部125が一体に設けられている。図示の例では3個の掛止部125が等間隔で設けられているが、この個数は、設置すべきSバネ5の本数に応じて適宜に変更してよい。
また、座部前フレーム21の右端部付近の後方側表面には、ガススプリング6のロッド61を連結するためのブラケット216が一体に設けられている。
一方、幅方向に延びるパイプ状の座部後フレーム23には、その左右両端部付近の各上側表面に、後述のリンク部材321の中間部321c付近を回転可能に支持するためのブラケット233が一体に設けられている。
【0014】
背部フレーム4は、長尺板状の背部右フレーム41、該背部右フレーム41の上端からRを付けて直角方向へ曲げて延設された長尺板状の背部上フレーム45、長尺板状の背部左フレーム43、及び、背部右フレーム41の下端部付近の内表面と背部左フレーム43の下端部付近の内表面とを連結するように設けられたパイプ状の背部下フレーム47から構成され、前方から見て略方形を成す。また、この背部フレーム4の後方側には、着座者の背中を支えるための板材(図示の例では上下2枚の板材)が一体に設けられている。
【0015】
背部左フレーム43の下端からは、背部左フレーム43と一体の下垂部431が下垂されている。下垂部431は前方へ突出するように湾曲しており、その上端部付近には、ピン70を受けるための貫通孔が形成されている。
同様に、背部右フレーム41の下端からも、背部右フレーム41と一体の下垂部411が下垂されている。下垂部411も前方へ突出するように湾曲しているが、さらに、その下端から、ガススプリング6のシリンダ62の先端のブラケット624が連結される下垂延設部412が延設されている。この下垂部411の上端部付近にも、同様にピン70を受けるための貫通孔が形成されている。
【0016】
背部フレーム4は、上記下垂部411の貫通孔にピン70を挿通され、且つ、上記下垂部431の貫通孔にピン70を挿通されることにより、該ピン70を回転の軸芯4Cとして、前記台座(不図示;前述のように実施の形態の座席が搭載される車両の床面に固定される)に、不図示のブラケット等を介して回転可能に支持される。即ち、ピン70を回転中心とする傾動が可能なように、不図示の台座によって支持される。
【0017】
背部右フレーム41の下垂部411の下端には、ピン72を介して、リンク部材321の上端部が遊びを持って連結される。即ち、リンク部材321の上端部の長孔321a内で移動可能なように挿通されたピン72が、下垂部411の下端部付近の貫通孔にも挿通され、これにより、両者は遊びを持つ可動状態で連結される。
同様に、背部左フレーム43の下垂部431の下端には、ピン72を介して、リンク部材321の上端部が遊びを持って連結される。即ち、リンク部材321の上端部の長孔321a内で移動可能なように挿通されたピン72が、下垂部431の下端部付近の貫通孔にも挿通され、これにより、両者は遊びを持つ可動状態で連結される。
【0018】
左右のリンク部材321は、それぞれ、その中間部321c付近にて、ピン74を介して、ブラケット233により回転可能に支持される。左右2つのブラケット233は、前述のように、座部後フレーム23の上面側に一体に固定されている。このため、左右のリンク部材321は、座部後フレーム23の両端付近の上方位置に、回転可能に支持されることとなる。なお、右側のブラケット233は、若干、中央寄りの位置に設けられているが、これは、ガススプリング6を配置する余地を空けるためである。
【0019】
左右のリンク部材321は、その下端部付近を、ブラケット323を介して一体に連結されている。即ち、左右のリンク部材321の内面側(対向する面の側)には、断面コの字状を成す長尺状のブラケット323の各端部が、溶接で一体に接合されている。このため、前述のように回転可能に支持されているリンク部材321がピン72を軸芯として回転すると、リンク部材321と一体のブラケット323もまた、同様に回転する。これにより、ブラケット323の揺動が実現される。
【0020】
このブラケット323の前方側の縁には、Sバネ5の後端部を掛止するための掛止部325が一体に設けられている。図示の例では3個の掛止部325が等間隔で設けられているが、この個数は、設置すべきSバネ5の本数に応じて適宜に変更してよい。なお、図2内に点線の引出線で示す掛止部325は、ブラケット323が図1の如く組み付けられたときに掛止部325が配される大凡の位置を示すものである。
【0021】
このように構成される結果、Sバネ5は、前端部を掛止部125に掛止され、後端部を掛止部325に掛止されることとなる。ここで、掛止部125の位置は固定であるが、掛止部325の位置は、ブラケット323の揺動(=リンク部材321の回転)に伴って変移する。このため、掛止部125-掛止部325間の距離もまた、ブラケット323の揺動(=リンク部材321の回転)に伴って変化する。
【0022】
左右のリンク部材321の回転は、それぞれの上端部に遊びを持って可動に連結されている下垂部411,431の各下端部の変移に連動して生起される。即ち、背部右フレーム41・背部左フレーム43が、それぞれ、ピン70を回転の軸芯として回転することにより、換言すれば、背部フレーム4の傾動(リクライニング動作,リクライニングからの復帰動作)に伴って生起される。
【0023】
このように、Sバネ5の後端部を掛止する掛止部325の変移は、背部フレーム4の傾動(リクライニング動作,リクライニングからの復帰動作)に連動して生起され、これにより、掛止部125-掛止部325間の距離が変化する。また、この距離変化により、Sバネ5の長さが変化して、その張力も変化する。例えば、Sバネ5の長さが短くなった場合はSバネ5の張力が減じて柔らかくなる。また、Sバネ5の長さが長くなった場合はSバネ5の張力が増して硬くなる。
【0024】
また、図示のように、背部右フレーム41・背部左フレーム43の各下垂部411・431は前方へ突出するように湾曲しており、それらの下端部に遊びを持って上端部が連結されている各リンク部材321は後方へ突出するように湾曲している。また、各リンク部材321は、それぞれの中間部321c付近を回転可能に支持されている。このため、背部フレーム4が後方へ傾動(=リクライニング動作)して下垂部411・431が上・前方へ揺動すると、各リンク部材321の下端部は下・後方へ揺動する。前述のように、左右のリンク部材321の各下端部にはブラケット323が一体に固定されている。このため、ブラケット323もまた下・後方へ揺動し、これにより、ブラケット323に一体に設けられている掛止部325も下・後方へ変移する。
【0025】
このため、背部フレーム4の後方への傾動(=リクライニング動作)に連動して、Sバネ5は、前端部側の掛止位置が変化しないままで、後端部側が沈み込む。着座者は、リクライニング動作により背中が後方へ倒れる際に、尻が下方へ沈み込むこととなる。このため、背中だけが後方へ倒れ込む場合に背中が座席の背部からずれて感ずる背ズレ感が抑制されて、良好な着座感を得る。
【0026】
背部フレーム4の傾動(=リクライニング動作)に連動して掛止部125-掛止部325間の距離を変化させる場合、距離が短くなるように変化させるか、長くなるように変化させるかは、下垂部411・431の形状、リンク部材321の形状、ブラケット323をリンク部材321に取り付ける位置、ブラケット323に掛止部325を取り付ける位置等を、適宜に設定することにより、調整可能である。
【0027】
背部フレーム4の傾動(=リクライニング動作)に連動して掛止部125-掛止部325間の距離を短く変化させると、Sバネ5の張力が減じて柔らかくなり、反発力が弱くなる。背部フレーム4が後方へ倒れると着座者の重量の座部方向成分が小さくなって軽くなるのであるが、リクライニング動作に連動してSバネのクッション性が柔らかくなるように設定した場合には、アップライト時と同等の沈み込み量を確保できるため、前方ズレのような着座感の悪化を防止できる。
【0028】
一方、背部フレーム4の傾動(=リクライニング動作)に連動して掛止部125-掛止部325間の距離を長く変化させると、Sバネ5の張力が増して硬くなり、反発力が強まる。Sバネ5の後端部は後方掛止部32に掛止されているため、Sバネ5に加わっている着座者の体重は、後方掛止部32の掛止位置の変移を妨げるように作用している。このため、背部フレーム4を元のアップライト状態に戻そうとするときには、着座者の体重の分だけ余分な力が必要になるのであるが、Sバネ5の反発力が強められているため、その余分な力は少なくて足りる。本実施の形態の座席では、ガススプリング6を用いてアップライト状態への復帰を補助する機構を採用しているのであるが、リクライニング動作に連動して掛止部125-掛止部325間の距離が長くなるように設定した場合には、ガススプリング6の力を過度に大きくする必要がなくなる。また、ガススプリング6として通常の能力のものを採用できるため、リクライニング動作時に過度に大きな力で背部フレーム4を後方へ倒す必要もなく、子供等の非力な人でも十分に操作することができる。
【0029】
本実施の形態の座席では、背部右フレーム41の下垂部411と、背部左フレーム43の下垂部431を、それぞれ、リンク部材321を介して、ブラケット323・掛止部325に連繋させている。このため、背部フレーム4を取り外す場合には、左右の下垂部411・431と、左右のリンク部材321との連結を解除すれば足り、Sバネ5を取り外す必要がない。このため、メンテナンスが容易である。
【0030】
上記実施の形態の座席では、背部フレーム4を、該背部フレーム4の左右の下端の下垂部411・431と、それらの下端に遊びを持って連結される後方掛止部32(リンク部材321、ブラケット323、掛止部325)を介して、Sバネ5に接続して、その掛止位置を変化させているのであるが、Sバネ5の掛止位置を変化させる機構としては、上記以外にも可能である。例えば、左右の背部フレーム41・43に代えて、下端部からL字状に前方へ延設された部位を有する背部フレームを用い、前方への延設部の先端部付近を回転可能に軸支するとともに、L字の根元付近にSバネ5の後端部を掛止する掛止部を設けた構成でも、同様の効果を奏することができる。
【0031】
また、前記実施の形態の座席では、背部フレーム4の後方への傾動(=リクライニング動作)に連動して掛止部125-掛止部325間の距離を変化させているが、これに代えて、例えば、所定のレバー操作に連動して掛止部125-掛止部325間の距離を変化させるように構成することも可能である。例えば、所定のレバー操作に連動して、後方掛止部32(リンク部材321・ブラケット323・掛止部325)を揺動させるような機構を例示することができる。
【0032】
また、前記実施の形態の座席では、列車の座席を想定しているが、本発明は、列車の座席に限定されず、普通の自動車、バス、船、飛行機等の乗物の座席や、さらには、劇場の座席等にも同様に適用可能である。
また、前記実施の形態ではSバネを用いているが、Sバネに代えて、又は、Sバネとともに、いわゆるフォームドワイヤ(SバネのR状の湾曲部が角部とされているバネ)を用いることもできる。要は、一端と他端をそれぞれの掛止部に掛止されることにより張設され、それにより、着座者を支持する機能を奏するバネであれば、用いることができる。
【符号の説明】
【0033】
12 前方掛止部(ブラケット)
125 (Sバネ前端部用の)掛止部
2 座部
21 座部前フレーム
216 ブラケット
23 座部後フレーム
233 (リンク部材支持用の)ブラケット
32 後方掛止部
321 リンク部材
321a (リンク部材321の上端部の)長孔
321c (リンク部材321の)中間部
323 ブラケット(揺動部材)
325 (Sバネ後端部用の)掛止部
4 背部フレーム
41 背部右フレーム
411 (背部右フレームの)下垂部
412 下垂延設部
43 背部左フレーム
431 (背部左フレームの)下垂部
45 背部上フレーム
47 背部下フレーム
4C 背部フレーム4の回転中心(傾動中心)
5 Sバネ
6 ガススプリング
61 ロッド
62 シリンダ
624 ブラケット
70 ピン
72 ピン
74 ピン
76 ピン
図1
図2
図3
図4
図5