(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】試料分析装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20220317BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20220317BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N33/543 597
C12M1/00 A
(21)【出願番号】P 2017155942
(22)【出願日】2017-08-10
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】小西 雄介
(72)【発明者】
【氏名】山田 和宏
(72)【発明者】
【氏名】松本 翔平
【審査官】伊藤 裕美
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0282870(US,A1)
【文献】特開2009-210536(JP,A)
【文献】特開2017-101975(JP,A)
【文献】特表2011-519022(JP,A)
【文献】特表2016-517000(JP,A)
【文献】国際公開第2017/011549(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0065618(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/83
G01N 33/48-33/98
G01N 15/00-15/14
C12M 1/00-1/42
C12Q 1/00-1/70
G01N 35/00-35/10
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光標識された複数種類の対象物質を含む測定試料に光を照射し、波長の異なる複数種類の蛍光を検出する測定部と、
前記複数種類の対象物質に対応して変更可能に設定された蛍光の色に関する情報と前記測定部の検出結果とに基づいて、前記複数種類の対象物質を分析する処理部と、
表示部と、を備え、
前記対象物質は測定項目に関連しており、
前記蛍光の色に関する情報は、前記蛍光標識の種類および前記蛍光標識に応じた試薬の種類の少なくとも一つであり、
前記処理部は、前記対象物質に対応付けて前記蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける入力画面を前記表示部に表示させ、前記表示部を介して入力された前記蛍光の色に関する情報と前記測定部の検出結果とに基づいて、細胞ごとに複数の前記測定項目について分析する、試料分析装置。
【請求項2】
前記入力画面は、前記対象物質の項目と、前記蛍光の色に関する情報を入力するための項目との組を複数含む、請求項
1に記載の試料分析装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記測定項目の入力を受け付け、
前記入力画面は、入力された前記測定項目に対応する前記対象物質の項目と、前記蛍光の色に関する情報を入力するための項目との組を含む、請求項
1または
2に記載の試料分析装置。
【請求項4】
識別情報を取得するための情報取得部を備え、
前記処理部は、前記情報取得部が取得した前記識別情報に基づいて、前記蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける、請求項1ないし
3の何れか一項に記載の試料分析装置。
【請求項5】
前記識別情報に対応付けて前記蛍光の色に関する情報を記憶する記憶部を備え、
前記処理部は、前記情報取得部が取得した前記識別情報に対応付けられた前記蛍光の色に関する情報を前記記憶部から読み出すことにより、前記対象物質に対応付けられた前記蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける、請求項
4に記載の試料分析装置。
【請求項6】
前記記憶部は、前記識別情報に対応付けて測定項目に関連する前記複数種類の対象物質を記憶し、
前記処理部は、前記情報取得部が取得した前記識別情報に対応付けられた前記測定項目と、前記識別情報に対応付けられた前記蛍光の色に関する情報とを前記記憶部から読み出すことにより、前記測定項目に関連する前記複数種類の対象物質に対応付けられた前記蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける、請求項
5に記載の試料分析装置。
【請求項7】
前記測定部は、
前記複数種類の対象物質を含む測定試料を流すためのフローセルと、
前記フローセルを流れる前記測定試料に光を照射する光源と、
前記フローセルを流れる前記測定試料中の細胞から生じる前記蛍光を前記蛍光の色ごとに撮像して蛍光画像を生成する撮像部と、をさらに備える、請求項1ないし
6の何れか一項に記載の試料分析装置。
【請求項8】
前記処理部は、前記撮像部により撮像された前記蛍光画像を前記表示部に表示させる、請求項
7に記載の試料分析装置。
【請求項9】
前記処理部は、一の前記細胞に基づいて前記撮像部により撮像された複数の前記蛍光画像を合成し、合成した画像を前記表示部に表示させる、請求項
8に記載の試料分析装置。
【請求項10】
前記処理部は、前記蛍光の色に関する情報と、前記蛍光画像とに基づいて、前記細胞ごとに前記対象物質が関連する測定項目について陽性または陰性を判定する、請求項
7ないし
9の何れか一項に記載の試料分析装置。
【請求項11】
前記処理部は、前記測定項目に関連する前記対象物質の蛍光画像から前記対象物質に基づく蛍光領域を抽出し、抽出した前記蛍光領域に基づいて前記測定項目について陽性または陰性を判定する、請求項
10に記載の試料分析装置。
【請求項12】
前記処理部は、抽出した前記蛍光領域の配置パターンと規定のパターンとを比較することにより、前記測定項目について陽性または陰性を判定する、請求項
11に記載の試料分析装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記細胞ごとの陽性または陰性の判定結果を前記表示部に表示させる、請求項
10ないし
12の何れか一項に記載の試料分析装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記細胞ごとの陽性または陰性の前記判定結果に基づいて、陽性細胞数、陽性細胞比率、陰性細胞数、および陰性細胞比率の少なくとも一つを前記表示部に表示させる、請求項
13に記載の試料分析装置。
【請求項15】
前記処理部は、最も陽性細胞数または陽性細胞率が高い前記測定項目を前記表示部に表示させる、請求項
1ないし14の何れか一項に記載の試料分析装置。
【請求項16】
前記複数種類の対象物質が関連する
前記測定項目は、BCR-ABLであり、
前記測定項目に関連する前記対象物質は、BCR遺伝子およびABL遺伝子を含む、請求項1ないし
15の何れか一項に記載の試料分析装置。
【請求項17】
前記複数種類の対象物質が関連する
前記測定項目は、BCR-ABLおよびPML-RARαであり、
前記測定項目に関連する前記対象物質は、BCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、およびRARα遺伝子を含む、請求項1ないし
16の何れか一項に記載の試料分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定試料に含まれる対象物質を分析する試料分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蛍光インサイチュハイブリダイゼーション法(FISH法)の検出にフローサイトメータ等を適用する際の細胞の処理方法が記載されている。FISH法によれば、細胞中のDNA配列領域に標識プローブをハイブリダイズさせ、標識プローブに起因して生じた蛍光を検出することにより、細胞の分析を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
測定項目に関して分析が行われる場合、たとえば、1つの細胞中の、測定項目に関連する複数種類の対象物質から、それぞれ異なる色の蛍光が生じるよう標識処理が行われる。ここで、対象物質を標識する蛍光色素は種々のものが知られており、この場合、分析装置が細胞の分析を自動で行うためには、複数種類の対象物質から生じる蛍光の色を把握した上で、対象物質を分析する必要がある。また、1つの細胞に対して複数の測定項目が設定される場合、分析装置は、複数の測定項目にそれぞれ関連する複数種類の対象物質から生じる蛍光の色を把握した上で、対象物質を分析する必要がある。この場合、分析装置は、さらに多くの蛍光の色を把握する必要がある。
【0005】
分析装置が、複数種類の対象物質から生じる蛍光の色を把握できていない場合、誤った蛍光を対象物質と対応付けてしまうおそれがある。この場合、分析精度の低下や、誤った分析結果の取得といった事態を招く。したがって、複数色の蛍光が生じる場合に、対象物質から生じる蛍光の色を把握して、対象物質を適正に分析できる分析装置が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の主たる態様は、試料分析装置(10)に関する。本態様に係る試料分析装置(10)は、蛍光標識された複数種類の対象物質を含む測定試料(21)に光を照射し、波長の異なる複数種類の蛍光を検出する測定部(100、500)と、複数種類の対象物質に対応して変更可能に設定された蛍光の色に関する情報と測定部(100、500)の検出結果とに基づいて、複数種類の対象物質を分析する処理部(201)と、表示部(203)と、を備える。対象物質は測定項目に関連しており、蛍光の色に関する情報は、蛍光標識の種類および蛍光標識に応じた試薬の種類の少なくとも一つである。処理部(201)は、対象物質に対応付けて蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける入力画面(330)を表示部(203)に表示させ、表示部(203)を介して入力された蛍光の色に関する情報と測定部(100、500)の検出結果とに基づいて、細胞ごとに複数の測定項目について分析する。
【0007】
「蛍光の色に関する情報」とは、対象物質から生じた蛍光を区別できる情報のことであり、蛍光標識の種類および蛍光標識に応じた試薬の種類の少なくとも一つである。「検出結果」とは、蛍光を撮像した画像や、蛍光の強度などを含む。本態様に係る試料分析装置によれば、対象物質に対応する蛍光の色に関する情報は、変更可能に設定される。したがって、対象物質に対応して蛍光の色に関する情報が設定されることにより、処理部は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できる。よって、処理部は、対象物質に対応する検出結果を用いて、複数種類の対象物質を適正に分析できる。また、対象物質に対応付けて蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける入力画面(330)が表示部(203)に表示されるため、オペレータは、蛍光の色に関する情報を、入力画面を介して円滑に入力できる。
【0009】
この場合に、入力画面(330)は、対象物質の項目と、蛍光の色に関する情報を入力するための項目との組を複数含むよう構成され得る。こうすると、オペレータは、対象物質が複数ある場合でも、複数種類の対象物質ごとに蛍光の色に関する情報を円滑に入力できる。
【0010】
また、処理部(201)は、測定項目の入力を受け付け、入力画面(330)は、入力された測定項目に対応する対象物質の項目と、蛍光の色に関する情報を入力するための項目との組を含むよう構成され得る。こうすると、オペレータは、測定項目に関連する対象物質についての蛍光の色に関する情報を、画面を介して円滑に入力できる。
【0011】
本態様に係る試料分析装置(10)は、識別情報(51、61)を取得するための情報取得部(205)を備え、処理部(201)は、情報取得部(205)が取得した識別情報(51、61)に基づいて、蛍光の色に関する情報の入力を受け付けるよう構成され得る。識別情報が、バーコード情報により構成される場合、情報取得部は、バーコードを読み取るためのバーコードリーダにより構成される。識別情報が、RFIDにより構成される場合、情報取得部は、RFIDタグからRFIDを読み取るためのアンテナにより構成される。識別情報が、切欠や孔などの特殊構造により構成される場合、情報取得部は、切欠や孔などの特殊構造を識別する装置により構成される。識別情報は、たとえば、試薬容器や、試薬容器を複数収容した容器に設置される。こうすると、オペレータは、情報取得部を用いて蛍光の色に関する情報を円滑に入力できる。
【0012】
この場合に、本態様に係る試料分析装置(10)は、識別情報(51、61)に対応付けて蛍光の色に関する情報を記憶する記憶部(202)を備え、処理部(201)は、情報取得部(205)が取得した識別情報(51、61)に対応付けられた蛍光の色に関する情報を記憶部(202)から読み出すことにより、対象物質に対応付けられた蛍光の色に関する情報の入力を受け付けるよう構成され得る。こうすると、オペレータは、情報取得部を用いて、対象物質に対応付けて蛍光の色に関する情報を円滑に入力できる。
【0013】
この場合に、記憶部(202)は、識別情報(61)に対応付けて測定項目に関連する複数種類の対象物質を記憶し、処理部(201)は、情報取得部(205)が取得した識別情報(61)に対応付けられた測定項目と、識別情報(61)に対応付けられた蛍光の色に関する情報とを記憶部(202)から読み出すことにより、測定項目に関連する複数種類の対象物質に対応付けられた蛍光の色に関する情報の入力を受け付けるよう構成され得る。こうすると、オペレータは、情報取得部を用いて、測定項目に関連する複数種類の対象物質に対応付けて蛍光の色に関する情報を円滑に入力できる。
【0015】
本態様に係る試料分析装置(10)において、測定部(100)は、複数種類の対象物質を含む測定試料(21)を流すためのフローセル(110)と、フローセル(110)を流れる測定試料(21)に光を照射する光源(121~125)と、フローセル(110)を流れる測定試料(21)中の細胞から生じる蛍光を蛍光の色ごとに撮像して蛍光画像を生成する撮像部(154)と、をさらに備えるよう構成され得る。こうすると、測定試料中の多数の細胞が撮像されるため、細胞の分析を円滑かつ精度良く行うことができる。
【0016】
この場合に、処理部(201)は、撮像部(154)により撮像された蛍光画像を表示部(203)に表示させるよう構成され得る。こうすると、オペレータは、蛍光画像を参照することにより、対象物質の配置、存在の有無、増幅状態などを確認できる。これにより、オペレータは、たとえば、対象物質を含む細胞について陽性または陰性を判定できる。
【0017】
この場合に、処理部(201)は、一の細胞に基づいて撮像部(154)により撮像された複数の蛍光画像を合成し、合成した画像を表示部(203)に表示させるよう構成され得る。こうすると、オペレータは、合成画像を参照することにより、複数種類の対象物質の配置を円滑に確認できる。これにより、オペレータは、たとえば、対象物質を含む細胞について陽性または陰性を判定できる。
【0018】
本態様に係る試料分析装置(10)において、処理部(201)は、蛍光の色に関する情報と、蛍光画像とに基づいて、細胞ごとに対象物質が関連する測定項目について陽性または陰性を判定するよう構成され得る。
【0019】
この場合に、処理部(201)は、測定項目に関連する対象物質の蛍光画像から対象物質に基づく蛍光領域を抽出し、抽出した蛍光領域に基づいて測定項目について陽性または陰性を判定するよう構成され得る。蛍光領域は、蛍光が広い領域に照射されたことにより蛍光画像上である程度の面積を有する領域だけでなく、蛍光が狭い領域に照射されたことにより蛍光画像上で点に見える程度に小さい面積を有する領域、すなわち輝点をも含む。
【0020】
この場合に、処理部(201)は、抽出した蛍光領域の配置パターンと規定のパターンとを比較することにより、測定項目について陽性または陰性を判定するよう構成され得る。こうすると、処理部は、たとえば遺伝子の転座に関する測定項目について陽性または陰性の判定を行うことができる。
【0021】
本態様に係る試料分析装置(10)において、処理部(201)は、細胞ごとの陽性または陰性の判定結果を表示部(203)に表示させるよう構成され得る。こうすると、オペレータは、取得された判定結果を細胞ごとに確認できる。
【0022】
この場合に、処理部(201)は、細胞ごとの陽性または陰性の判定結果に基づいて、陽性細胞数、陽性細胞比率、陰性細胞数、および陰性細胞比率の少なくとも一つを表示部(203)に表示させるよう構成され得る。こうすると、医師等は、表示された情報を参照することにより、検体および被検者が陽性および陰性のいずれであるかを円滑に判定できる。
【0024】
この場合に、処理部(201)は、最も陽性細胞数または陽性細胞率が高い測定項目を表示部(203)に表示させるよう構成され得る。こうすると、オペレータは、陽性細胞数または陽性細胞比率が高いために注目すべき測定項目を円滑に把握できる。
【0025】
本態様に係る試料分析装置(10)において、複数種類の対象物質が関連する測定項目は、たとえば、BCR-ABLであり、測定項目に関連する対象物質は、たとえば、BCR遺伝子およびABL遺伝子を含む。
【0026】
本態様に係る試料分析装置(10)において、複数種類の対象物質が関連する測定項目は、たとえば、BCR-ABLおよびPML-RARαであり、測定項目に関連する対象物質は、たとえば、BCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、およびRARα遺伝子を含む。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、対象物質から生じる蛍光の色を把握して対象物質を適正に分析できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る試料分析装置の構成を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る撮像部の受光面上の領域を模式的に示す図である。
【
図3】
図3(a)、(b)は、実施形態1に係る処理部が行う分析の概要を説明する図である。
【
図4】
図4(a)は、実施形態1に係る対象物質と蛍光の色に関する情報とを対応付けるための処理を示すフローチャートである。
図4(b)は、実施形態1に係る測定パネル名を受け付けるための画面を示す図である。
図4(c)は、実施形態1に係る測定項目を受け付けるための画面を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態1に係る蛍光の色に関する情報を受け付けるための入力画面を示す図である。
図5(b)は、実施形態1に係る選択部の下方に色名が表示された状態を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態1に係る蛍光の色に関する情報を受け付けるための入力画面を示す図である。
図6(b)は、実施形態1に係るリスト内の選択部の色名が重複する場合に表示される画面を示す図である。
【
図7】
図7(a)~(c)は、実施形態1に係る基本色テーブルおよび基本パターンテーブルである。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る測定および分析の処理を示すフローチャートである。
【
図9】
図9(a)、(b)は、実施形態1に係る蛍光領域の抽出を説明するための図である。
図9(c)は、実施形態1に係る陰性パターンにおける蛍光画像および合成画像を模式的に示す図である。
図9(d)は、実施形態1に係る陽性パターンにおける蛍光画像および合成画像を模式的に示す図である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る検体ごとの測定結果を表示するための画面を示す図である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係る測定項目ごとに測定結果を表示するための画面を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態1に係る最も陽性細胞数または陽性細胞比率が高い測定項目に関する情報を表示するための画面を示す図である。
【
図13】
図13は、実施形態1に係る画像を表示するための画面を示す図である。
【
図14】
図14は、実施形態1に係る画像を表示するための画面を示す図である。
【
図15】
図15は、実施形態1に係る画像を表示するための画面を示す図である。
【
図16】
図16(a)は、実施形態2に係る選択部の下方に蛍光の波長帯域が表示された状態を示す図である。
図16(b)は、実施形態3に係る選択部の下方にチャンネルが表示された状態を示す図である。
【
図17】
図17(a)は、実施形態4に係る蛍光色素名を選択するための画面を示す図である。
図17(b)は、実施形態4に係る蛍光色素データベースの構成を模式的に示す図である。
図17(c)は、実施形態5に係る試薬名を選択するための画面を示す図である。
図17(d)は、実施形態5に係る試薬データベースの構成を模式的に示す図である。
【
図18】
図18は、実施形態6に係る試薬容器、識別情報、および情報取得部の構成を模式的に示す図である。
【
図19】
図19は、実施形態7に係る検査キット容器、識別情報、および情報取得部の構成を模式的に示す図である。
【
図20】
図20は、実施形態8に係る入力画面において蛍光の色に関する情報が自動的に設定されることを説明するための図である。
【
図21】
図21は、実施形態9に係る測定部の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<実施形態1>
実施形態1は、蛍光色素により標識した核酸プローブと核酸中の遺伝子とをハイブリダイズさせる工程を含む前処理において調製された測定試料を測定して分析を行う装置に、本発明を適用したものである。測定試料とは、対象物質を含む試料のことである。実施形態1の対象物質は、検出対象細胞の核、および、検出対象細胞中の1種類または複数種類の遺伝子である。対象物質である核は、核染色用の蛍光色素により特異的に染色されることにより検出される。対象物質の遺伝子は、FISH法に基づいて検出される。なお、対象物質は、核や遺伝子に限らず、細胞の核に含まれる特定の物質、細胞膜内の特定の物質、細胞膜、細胞、細胞表面、タンパク質などでもよい。また、対象物質の標識は、抗原抗体反応に基づいて行われてもよい。
【0034】
図1に示すように、試料分析装置10は、前処理ユニット20による前処理により調製された測定試料21を測定して分析を行う。
【0035】
前処理ユニット20は、被検者から採取した全血検体に対して遠心分離等の処理を行って、白血球を検出対象細胞として抽出する。なお、遠心分離に代えて溶血剤を用いてその他の血球を溶血させることにより、白血球が抽出されてもよい。検体は、生体から採取した全血のほか、血漿、脳脊髄液、組織液、尿であってもよい。また、検出対象細胞は、白血球に限らず、たとえば上皮細胞であってもよい。
【0036】
前処理ユニット20は、試薬と遠心分離等の処理が行われた検体とを混合させるための混合容器、検体と試薬を混合容器に分注するための分注ユニット、混合容器を加温するための加温部等を含む。前処理ユニット20は、検出対象細胞の遺伝子を蛍光色素により標識する工程と、検出対象細胞の核を核染色用の蛍光色素により染色する工程とを含む前処理を行って、測定試料21を調製する。遺伝子を蛍光色素により標識する工程では、蛍光色素により標識された核酸プローブと核酸中の遺伝子とがハイブリダイズされる。
【0037】
実施形態1では、1つの細胞に対して最大で4つの遺伝子が蛍光色素により標識される。各遺伝子と核を標識する蛍光色素は、励起光が照射されることにより、それぞれ異なる波長帯域の蛍光を生じるように構成される。
【0038】
具体的には、後述するように、試料分析装置10は、励起光として波長λ11、λ12、λ13、λ14、λ15の光を照射可能に構成されており、波長λ21、λ22、λ23、λ24、λ25の蛍光を区別して検出可能に構成されている。したがって、4つの遺伝子と核をそれぞれ標識する蛍光色素は、波長λ11の励起光が照射されることにより波長λ21の蛍光を生じる蛍光色素、波長λ12の励起光が照射されることにより波長λ22の蛍光を生じる蛍光色素、波長λ13の励起光が照射されることにより波長λ23の蛍光を生じる蛍光色素、波長λ14の励起光が照射されることにより波長λ24の蛍光を生じる蛍光色素、波長λ15の励起光が照射されることにより波長λ25の蛍光を生じる蛍光色素、の中から選択される。
【0039】
たとえば、BCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、およびRARα遺伝子を1回の測定で検出する場合、BCR遺伝子は、波長λ11の励起光が照射されることにより波長λ21の蛍光を生じる蛍光色素によって標識される。ABL遺伝子は、波長λ12の励起光が照射されることにより波長λ22の蛍光を生じる蛍光色素によって標識される。PML遺伝子は、波長λ13の励起光が照射されることにより波長λ23の蛍光を生じる蛍光色素によって標識される。RARα遺伝子は、波長λ14の励起光が照射されることにより波長λ24の蛍光を生じる蛍光色素によって標識される。核は、波長λ15の励起光が照射されることにより波長λ25の蛍光を生じる核染色用色素によって染色される。試料分析装置10は、このように遺伝子および核がどの波長帯域の蛍光を生じる蛍光色素で標識されたかを、測定の前にあらかじめオペレータから受け付ける。
【0040】
試料分析装置10は、対象物質がどの波長帯域の蛍光を生じる蛍光色素で標識されたかを受け付けるため、遺伝子に基づく分析を適正に行うことができる。対象物質と、対象物質を標識する蛍光色素から生じる蛍光の色との関連付けについては、追って、
図4(a)以降を参照して説明する。
【0041】
試料分析装置10は、測定部100と分析部200を備える。測定部100は、フローセル110と、光源121~126と、集光レンズ131~136と、ダイクロイックミラー141~144と、集光レンズ151と、光学ユニット152と、集光レンズ153と、撮像部154と、を備える。測定部100は、蛍光標識された複数種類の対象物質を含む測定試料21に光を照射し、波長の異なる複数種類の蛍光を検出する。フローセル110の流路111には、測定試料21が流される。
【0042】
光源121~126は、フローセル110を流れる測定試料21に光を照射する。光源121~126は、半導体レーザ光源により構成される。光源121~126から出射される光は、それぞれ、波長λ11~λ16のレーザ光である。集光レンズ131~136は、それぞれ、光源121~126から出射された光を集光する。ダイクロイックミラー141は、波長λ11の光を透過させ、波長λ12の光を反射する。ダイクロイックミラー142は、波長λ11、λ12の光を透過させ、波長λ13の光を反射する。ダイクロイックミラー143は、波長λ11~λ13の光を透過させ、波長λ14の光を反射する。ダイクロイックミラー144は、波長λ11~λ14の光を透過させ、波長λ15の光を反射する。こうして、波長λ11~λ16の光が、フローセル110の流路111を流れる測定試料21に照射される。
【0043】
フローセル110を流れる測定試料21に波長λ11~λ15の光が照射されると、対象物質を標識している蛍光色素から蛍光が生じる。具体的には、4つの遺伝子と核とが蛍光色素により標識されている場合、上述したように、各蛍光色素は、波長λ21~λ25のいずれかの蛍光を生じるように構成されている。この場合、測定試料21に波長λ11~λ15の励起光が照射されると、測定試料21から波長λ21~λ25の蛍光が生じる。また、フローセル110を流れる測定試料21に波長λ16の光が照射されると、この光は細胞を透過する。細胞を透過した波長λ16の光は、明視野画像の生成に用いられる。
【0044】
集光レンズ151は、測定試料21から生じた波長λ21~λ25の蛍光と、測定試料21を透過した波長λ16の光とを集光する。光学ユニット152は、6枚のダイクロイックミラーが組み合わせられた構成を有する。光学ユニット152の6枚のダイクロイックミラーは、波長λ21~λ25の蛍光と波長λ16の光とを、互いに僅かに異なる角度で反射し、撮像部154の受光面上において分離させる。集光レンズ153は、波長λ21~λ25の蛍光と波長λ16の光とを集光する。
【0045】
撮像部154は、TDI(Time Delay Integration)カメラにより構成される。撮像部154は、波長λ21~λ25の蛍光と波長λ16の光とを撮像して、波長λ21~λ25の蛍光にそれぞれ対応した蛍光画像と、波長λ16の光に対応した明視野画像とを生成する。撮像部154は、生成した撮像画像を分析部200に送信する。なお、撮像部154により生成される撮像画像は、グレースケールの画像である。
【0046】
図2に示すように、撮像部154は、受光面154a上の領域161~166において、それぞれ、波長λ21~λ25、λ16の光を受光する。受光面154aは、撮像部154に配されたCMOSイメージセンサ等の撮像素子の受光面である。受光面154aに照射される光の位置は、細胞がフローセル110の流路111を移動することに合わせて、白抜きの矢印で示すように、それぞれ領域161~166内で移動する。このように、光学ユニット152により6つの光が受光面154a上において分離されるため、撮像部154は、各光に対応した撮像画像を生成できる。チャンネル1~6は、それぞれ、領域161~166に入射する光に基づいて試料分析装置10内で行われる処理系統のことである。波長λ21~λ26の光は、それぞれチャンネル1~6において撮像され分析される。
【0047】
ここで、領域161~166にそれぞれ入射する波長λ21~λ25、λ16は、互いに異なる波長である。実施形態1では、たとえば、領域161に入射する波長λ21の蛍光は青色であり、領域162に入射する波長λ22の蛍光はオレンジ色であり、領域163に入射する波長λ23の蛍光は緑色であり、領域164に入射する波長λ24の蛍光は赤色であり、領域165に入射する波長λ25の蛍光は紫色の蛍光である。すなわち、実施形態1では、撮像部154が各領域において受光する波長λ21~λ25の蛍光は、青色、オレンジ色、緑色、赤色、紫色の波長帯域の蛍光である。なお、波長λ21~λ25の蛍光は、それぞれ上記の色に限られず、波長λ21~λ26の波長が互いに異なる波長帯域であれば他の色に設定されてもよい。
【0048】
図1に戻り、分析部200は、処理部201と、記憶部202と、表示部203と、入力部204と、を備える。
【0049】
処理部201は、CPUにより構成される。処理部201は、CPUとマイクロコンピュータにより構成されてもよい。処理部201は、記憶部202に記憶されたプログラムに基づいて各種の処理を行う。処理部201は、測定部100と、記憶部202と、表示部203と、入力部204とに接続されており、各部からの信号を受信し、各部を制御する。記憶部202は、RAM、ROM、ハードディスク等により構成される。表示部203は、ディスプレイにより構成される。入力部204は、マウスおよびキーボードにより構成される。なお、表示部203と入力部204が、タッチパネル式のディスプレイのように、一体的に構成されてもよい。
【0050】
処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色に関する情報の入力を、入力部204を介してオペレータから受け付ける。蛍光の色に関する情報とは、対象物質から生じた蛍光を区別できる情報のことである。実施形態1では、処理部201は、蛍光の色に関する情報として、対象物質と対応付けられた色名を受け付ける。色名は、撮像部154の領域161~165に入射する蛍光の色を示し、青色、オレンジ色、緑色、赤色、紫色である。
【0051】
処理部201は、測定部100を制御して、測定試料21の測定を行って撮像部154により蛍光画像および明視野画像を取得する。処理部201は、取得した蛍光画像および明視野画像を記憶部202に記憶させる。そして、処理部201は、入力された蛍光の色に関する情報と、撮像部154により取得された蛍光画像とに基づいて、対象物質を分析する。
【0052】
ここで、
図3(a)、(b)を参照して、処理部201が行う分析の概要について説明する。
【0053】
明視野画像31は、撮像部154により撮像された明視野画像である。蛍光画像32~35は、撮像部154の受光面154a上の異なる領域において撮像された蛍光画像である。合成画像41は、処理部201により蛍光画像32、33が合成されたものであり、合成画像42は、処理部201により蛍光画像32、34が合成されたものであり、合成画像43は、処理部201により蛍光画像33、34が合成されたものである。
【0054】
図3(a)、(b)に示す明視野画像31と蛍光画像32~35は、BCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、および核が蛍光標識された測定試料21に基づいて撮像された画像である。処理部201は、撮像画像に基づいて、BCR遺伝子またはABL遺伝子が転座してBCR-ABL融合遺伝子を生成している細胞を異常細胞として検出する。この場合、処理部201は、BCR遺伝子に対応する蛍光画像32と、ABL遺伝子に対応する蛍光画像33とを用いて異常細胞を検出する。
【0055】
図3(a)の場合、蛍光画像32におけるBCR遺伝子の輝点が2個であり、蛍光画像33におけるABL遺伝子の輝点が2個である。また、蛍光画像32、33と合成画像41に示されるように、BCR遺伝子の輝点とABL遺伝子の輝点とが互いに重なっていない。この場合、処理部201は、転座が生じていないと判定して、検出対象細胞が異常細胞でないと判定する。他方、
図3(b)の場合、蛍光画像32におけるBCR遺伝子の輝点が3個であり、蛍光画像33におけるABL遺伝子の輝点が2個である。また、蛍光画像32、33と合成画像41に示されるように、BCR遺伝子の輝点の一部とABL遺伝子の輝点の一部とが互いに重なっている。この場合、処理部201は、転座が生じていると判定して、検出対象細胞が異常細胞であると判定する。
【0056】
このような判定が行われる場合、取得された蛍光画像32~34が、それぞれ、BCR遺伝子、ABL遺伝子、およびPML遺伝子に対応付けられる必要がある。取得された蛍光画像32~34が誤った遺伝子と対応付けられてしまうと、処理部201は、BCR-ABL融合遺伝子が生成されているか否かを適正に判定できない。たとえば、BCR遺伝子と蛍光画像33が対応付けられ、ABL遺伝子と蛍光画像34とが対応付けられると、処理部201は、ABL遺伝子とPML遺伝子に対応する蛍光画像を用いて、BCR-ABL融合遺伝子の検出を行ってしまうことになる。この場合に参照される合成画像は、適正な合成画像41ではなく誤った合成画像43となってしまう。このように、処理部201は、どの対象物質がどの蛍光画像に対応するのかをあらかじめ把握しない限り、適正な判定を行うことができない。
【0057】
これに対し、実施形態1によれば、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色に関する情報、すなわち対象物質と対応付けられた色名を、入力部204を介してオペレータから受け付ける。したがって、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握して、対象物質の遺伝子と、取得された蛍光画像とを適正に対応付けることができる。これにより、処理部201は、入力された蛍光の色に関する情報と、撮像部154により取得された蛍光画像とに基づいて、対象物質を適正に分析できる。
【0058】
次に、
図4(a)のフローチャートを参照して、対象物質と蛍光の色に関する情報とを対応付けるための処理について説明する。
図4(a)に示す処理は、通常、測定試料21の測定前に行われるが、測定試料21の測定後に行われてもよい。
【0059】
ステップS11において、処理部201は、入力部204を介してオペレータから測定パネル名を受け付ける。具体的には、処理部201は、
図4(b)に示す画面310を表示部203に表示し、画面310を介して測定パネル名を受け付ける。
【0060】
図4(b)に示すように、画面310は、選択部311とOKボタン312を備える。選択部311は、測定パネル名ごとに設けられる。実施形態1の測定パネル名は、骨髄腫、リンパ腫、骨髄性白血病を含む。選択部311は、ラジオボタンにより構成される。オペレータは、複数の選択部311から1つの選択部311のみを選択できる。オペレータは、目的の測定パネル名に対応する選択部311を選択する操作を行った上で、OKボタン312を操作する。これにより、処理部201は、選択された測定パネル名を記憶部202に記憶させる。
【0061】
なお、実施形態1では、3つの測定パネル名のみが選択可能であるが、これに限らず、
図4(b)に示す測定パネル名以外の測定パネル名が選択可能であってもよい。また、オペレータが入力部204を介して所定の操作を行うことにより、新規の測定パネル名が追加され、追加された測定パネル名に対応して選択部311が設けられてもよい。
【0062】
ステップS12において、処理部201は、入力部204を介してオペレータから測定項目を受け付ける。具体的には、処理部201は、
図4(c)に示す画面320を表示部203に表示し、画面320を介して測定項目を受け付ける。
【0063】
図4(c)に示すように、画面320は、選択部321とOKボタン322を備える。選択部321は、測定項目ごとに設けられる。画面320に表示される測定項目は、
図4(b)の画面310で選択された測定パネル名に対応して表示される。
図4(c)に示す例では、測定パネル名として骨髄性白血病が選択されたため、測定項目として、BCR遺伝子とABL遺伝子の転座に関する「BCR-ABL」、および、PML遺伝子とRARα遺伝子の転座に関する「PML-RARα」が表示されている。
【0064】
測定パネル名として骨髄腫が選択された場合には、測定項目として、IGH遺伝子とCCND1遺伝子の転座に関する「IGH-CCND1」、IGH遺伝子とFGFR3遺伝子の転座に関する「IGH-FGFR3」、および、IGH遺伝子とcMAF遺伝子の転座に関する「IGH-cMAF」が表示される。測定パネル名としてリンパ腫が選択された場合には、測定項目として、IGH遺伝子とCCND1遺伝子の転座に関する「IGH-CCND1」、IGH遺伝子とMYC遺伝子の転座に関する「IGH-MYC」、および、IGH遺伝子とBCL2遺伝子の転座に関する「IGH-BCL2」が表示される。
【0065】
選択部321は、チェックボックスにより構成される。オペレータは、複数の選択部321から1つまたは複数の選択部311を選択できる。オペレータは、目的の測定項目に対応する選択部321を選択する操作を行った上で、OKボタン322を操作する。これにより、処理部201は、選択された測定項目を記憶部202に記憶させる。
【0066】
なお、実施形態1では、各測定パネル名に上記の測定項目がそれぞれ対応付けられているが、これに限らず、測定パネル名が示す疾患等に応じて、他の測定項目がさらに対応付けられてもよい。また、オペレータが入力部204を介して所定の操作を行うことにより、新規の測定項目が追加され、追加された測定項目に対応して選択部321が設けられてもよい。
【0067】
ステップS13において、処理部201は、入力部204を介してオペレータから蛍光の色に関する情報を受け付ける。具体的には、処理部201は、
図5(a)に示す入力画面330を表示部203に表示し、入力画面330を介して蛍光の色に関する情報を受け付ける。
【0068】
図5(a)に示すように、入力画面330は、入力領域331と、リスト332と、リスト333と、OKボタン334と、を備える。
【0069】
オペレータは、入力領域331を選択する操作を行った後、入力部204を介して測定対象の検体を識別するための検体IDを入力する。これにより、入力領域331に入力された検体IDが表示される。
【0070】
リスト332は、対象物質と蛍光の色に関する情報との対応付けを表示する。リスト332に表示される対象物質は、
図4(c)の画面320で選択された測定項目に対応して表示される。
図5(a)に示す例では、測定項目として「BCR-ABL」および「PML-RARα」が選択されたため、対象物質として、BCR遺伝子を示す「BCR」、ABL遺伝子を示す「ABL」、PML遺伝子を示す「PML」、RARα遺伝子を示す「RARα」、および「核」が表示されている。
【0071】
なお、測定項目として「IGH-CCND1」、「IGH-FGFR3」、および「IGH-cMAF」が選択された場合には、対象物質として、CCND1遺伝子を示す「CCND1」、FGFR3遺伝子を示す「FGFR3」、cMAF遺伝子を示す「cMAF」、IGH遺伝子を示す「IGH」、および「核」が表示される。測定項目として「IGH-CCND1」、「IGH-MYC」、および「IGH-BCL2」が選択された場合には、対象物質として、CCND1遺伝子を示す「CCND1」、MYC遺伝子を示す「MYC」、BCL2遺伝子を示す「BCL2」、IGH遺伝子を示す「IGH」、および「核」が表示される。
【0072】
リスト332は、選択部332aを備える。選択部332aは、表示される対象物質ごとに設けられ、プルタウンメニューにより構成される。実施形態1の選択部332aが操作されると、
図5(b)に示すように、選択部332aの下方に、蛍光の色を示す情報として複数の色名が表示される。選択部332aの下方に表示される色名は、上述した撮像部154の領域161~165が受光する蛍光の色に対応する。オペレータは、選択部332aの下方に表示された複数の色名から1つを操作して、対象物質に対応付けられる色名を選択する。
【0073】
入力画面330は、上記のように蛍光の色に関する情報を受け付けることができるように構成される。これにより、オペレータは、蛍光の色に関する情報を、入力画面330を介して円滑に入力できる。また、リスト332は、対象物質の項目と、蛍光の色に関する情報を入力するための項目との組を複数含む。これにより、オペレータは、対象物質が複数ある場合でも、複数種類の対象物質ごとに蛍光の色に関する情報を円滑に入力できる。また、入力画面330は、画面320を介して入力された測定項目に対応する対象物質の項目と、蛍光の色に関する情報を入力するための項目との組を含む。これにより、オペレータは、測定項目に対応した対象物質についての蛍光の色に関する情報を、入力画面330を介して円滑に入力できる。
【0074】
リスト333は、測定項目の陽性パターンおよび陰性パターンを表示する。リスト333に表示される測定項目は、
図4(c)の画面320で選択された測定項目である。
図5(a)に示す例では、画面320において測定項目として「BCR-ABL」および「PML-RARα」が選択されたため、「BCR-ABL」および「PML-RARα」が表示されている。
【0075】
陽性パターンには、測定項目について検出対象細胞が陽性であると判定するための輝点パターンが表示される。陰性パターンには、測定項目について検出対象細胞が陰性であると判定するための輝点パターンが表示される。測定項目における陽性パターンおよび陰性パターンは、リスト332において測定項目に対応する選択部332aが操作されることにより色名が選択されると、自動的に表示される。輝点パターンについては、追って
図9(c)、(d)を参照して説明する。
【0076】
図6(a)は、
図5(a)に示す入力画面330において、入力領域331に検体IDが入力され、全ての対象物質について色名が選択された状態を示す図である。
【0077】
図6(a)に示す例では、対象物質であるBCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、RARα遺伝子、および核について、それぞれ色名として、青色、オレンジ色、緑色、赤色、紫色が選択されている。これにより、リスト333の測定項目「BCR-ABL」の陽性パターンおよび陰性パターンに、それぞれ「B3O3/B&O2」および「B2O2/B&O0」が表示される。リスト333の測定項目「PML-RARα」の陽性パターンの項目および陰性パターンの項目に、それぞれ「G3R3/G&R2」および「G2R2/G&R0」が表示される。
【0078】
ここで、処理部201は、基本となる色名が登録されたテーブルと、基本となる色名の場合の陽性パターンおよびパターンが登録されたテーブルとに基づいて、リスト333の陽性パターンおよび陰性パターンの表示を行う。
【0079】
図7(a)~(c)は、それぞれ、パネル名が骨髄腫、リンパ腫、および骨髄性白血病の場合に用いられるテーブルを示す図である。
図7(a)~(c)において、左側のテーブルは、基本となる色名が登録された基本色テーブルであり、右側のテーブルは、基本色テーブルに対応する陽性パターンと陰性パターンが登録された基本パターンテーブルである。これらのテーブルは、記憶部202にあらかじめ記憶されている。
【0080】
たとえば、パネル名が骨髄性白血病の場合、
図7(c)の基本色テーブルに示すように、対象物質であるBCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、およびRARα遺伝子について、それぞれ基本となる色名として、青色、オレンジ色、緑色、赤色が登録されている。そして、基本色テーブルに登録されたように対象物質と色名とが対応付けられている場合の陽性パターンおよび陰性パターンとして、
図7(c)の基本パターンテーブルに示すように、BCR-ABLおよびPML-RARαの陽性パターンおよび陰性パターンが登録されている。
【0081】
基本パターンテーブルにおいて、「B」、「G」、「R」、「O」、および「P」は、それぞれ、青色、オレンジ色、緑色、赤色、および紫色に基づく蛍光画像上の輝点のことである。パターンに用いられる表記は、以下のように定義されている。たとえば、「B3O3」は、青色の蛍光画像上に輝点が3個あり、オレンジ色の蛍光画像上に輝点が3個あることを示す。「B&O2」は、青色の蛍光画像上の輝点とオレンジ色の蛍光画像上の輝点とが重なった組が2個あることを示す。「/」は、2つの状態が両方とも成立していることを示す。
【0082】
したがって「B3O3/B&O2」は、青色の蛍光画像上に輝点が3個あり、オレンジ色の蛍光画像上に輝点が3個あり、青色の蛍光画像上の輝点とオレンジ色の蛍光画像上の輝点とが重なった組が2個ある状態のパターンを示している。「B2O2/B&O0」は、青色の蛍光画像上に輝点が2個あり、オレンジ色の蛍光画像上に輝点が2個あり、青色の蛍光画像上の輝点とオレンジ色の蛍光画像上の輝点とが重なった組が0個ある状態のパターンを示している。
【0083】
各対象物質について入力画面330の選択部332aにより色名が選択されると、処理部201は、
図7(a)~(c)に示したテーブルを用いて、測定項目ごとの陽性パターンと陰性パターンを生成する。
【0084】
具体的には、処理部201は、選択された測定パネル名の基本色テーブルから、入力画面330のリスト333に表示された測定項目に関連する対象物質の色名を読み出す。また、処理部201は、選択された測定パネル名の基本パターンテーブルから、入力画面330のリスト333に表示された測定項目に関連する陽性パターンと陰性パターンを読み出す。そして、処理部201は、基本色テーブルから読み出した色名と、基本パターンテーブルから読み出したパターンと、入力画面330の選択部332aで選択された色名とに基づいて、リスト333に表示させる陽性パターンと陰性パターンを生成する。そして、処理部201は、生成した陽性パターンと陰性パターンをリスト333に表示する。
【0085】
たとえば、
図6(a)に示す例では、選択部332aにより選択された色名が、
図7(c)の基本色テーブルと全く同じであったため、リスト333には、
図7(c)の基本パターンテーブルと同じ内容が表示される。
【0086】
一方、
図6(a)に示す選択部332aの選択内容とは異なり、BCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、RARα遺伝子に対応する色名として、それぞれオレンジ色、緑色、赤色、紫色が選択された場合、リスト333の表示される内容も
図6(a)とは異なる。すなわち、リスト333の測定項目BCR-ABLに対応する陽性パターンおよび陰性パターンには、それぞれ「O3G3/O&G2」および「O2G2/O&G0」が表示される。リスト333の測定項目PML-RARαに対応する陽性パターンおよび陰性パターンには、それぞれ「R3P3/R&P2」および「R2P2/R&P0」が表示される。このように、選択部332aの選択内容と各テーブルとに基づいて、リスト333の陽性パターンおよび陰性パターンが表示される。
【0087】
オペレータは、
図6(a)に示すように、検体IDを入力領域331に入力し、各対象物質について選択部332aを操作して色名を選択した後、OKボタン334を操作する。これにより、処理部201は、入力領域331に表示された検体IDと、リスト332に表示された対象物質ごとの色名と、リスト333に表示された測定項目ごとの陽性パターンおよび陰性パターンとを、記憶部202に記憶させる。
【0088】
なお、処理部201は、OKボタン334が操作されたときに、リスト332内の選択部332aの色名が重複する場合、
図6(b)に示す画面340を表示部203に表示する。
図6(b)に示すように、画面340は、「対象物質に対応付けられた色名が重複しています。」を表示する。これにより、オペレータは、誤って色名を設定したことに気付くことができるため、適正な色名を設定する契機を得る。よって、誤った色名で分析が行われることを抑制できる。
【0089】
図7(a)~(c)に示した基本パターンテーブルには、測定項目ごとに1つの陽性パターンが登録されたが、これに限らず、測定項目ごとに2つ以上の陽性パターンが登録されてもよい。
【0090】
次に、
図8のフローチャートを参照して、測定および分析の処理について説明する。
図8に示す処理は、オペレータが入力部204を介して開始指示を入力することにより開始される。
【0091】
ステップS21において、処理部201は、撮像画像を取得する。具体的には、処理部201は、測定部100を制御して、フローセル110に測定試料21を流し、フローセル110を流れる測定試料21に光源121~126からの光を照射する。これにより、波長λ11の光により励起された波長λ21の蛍光と、波長λ12の光により励起された波長λ22の蛍光と、波長λ13の光により励起された波長λ23の蛍光と、波長λ14の光により励起された波長λ24の蛍光と、波長λ15の光により励起された波長λ25の蛍光とが、それぞれ、撮像部154の領域161~165に入射する。また、波長λ16の光は、測定試料21を透過して、撮像部154の領域166に入射する。
【0092】
撮像部154は、領域161~165に入射した蛍光を撮像して蛍光画像を生成し、領域166に入射した透過光を撮像して明視野画像を生成する。処理部201は、撮像部154により生成された蛍光画像および明視野画像を取得し、取得した画像を記憶部202に記憶させる。
【0093】
ここで、処理部201は、
図6(a)の入力画面330を介して入力された対象物質ごとの色名を記憶部202に記憶している。したがって、処理部201は、領域161~165に入射した蛍光に基づく蛍光画像が、どの対象物質に対応する蛍光画像であるかを把握できる。よって、処理部201は、対象物質の分析において、当該対象物質に対応する適正な蛍光画像を用いることができるため、対象物質を適正に分析できる。
【0094】
ステップS22において、処理部201は、ステップS21で取得した蛍光画像を用いて、蛍光画像上の遺伝子および核に基づく蛍光領域を抽出する。
【0095】
図9(a)の左端に示すように核に基づく蛍光画像が取得された場合、処理部201は、蛍光画像上の各画素における画素値に基づいて、
図9(b)の中央に示すように画素値と度数のグラフを作成する。縦軸の度数は、画素の個数を示している。処理部201は、このグラフにおいて画素値の閾値を設定する。そして、処理部201は、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、
図9(a)の右端において破線で示すように、核の蛍光領域として抽出する。このように核の蛍光領域は、蛍光画像上である程度の面積を有する領域である。なお、核の蛍光画像において、2つの核が重なり合っている場合、対象となる細胞は、異常細胞の判定には用いられず除外される。
【0096】
図9(b)の左端に示すように遺伝子に基づく蛍光画像が取得された場合、処理部201は、蛍光画像上の各画素における画素値に基づいて、
図9(b)の中央に示すように画素値と度数のグラフを作成する。処理部201は、このグラフにおいて、たとえば大津法に基づいて輝点とバックグランドとの境界として画素値の閾値を設定する。そして、処理部201は、閾値よりも大きい画素値を有する画素が分布する範囲を、
図9(b)の右端において破線で示すように、遺伝子の蛍光領域として抽出する。このように遺伝子の蛍光領域は、蛍光画像上で点に見える程度に小さい面積を有する領域である。以下、遺伝子の蛍光領域を「輝点」と称する。なお、輝点が極端に小さい場合、輝点が極端に大きい場合、輝点が
図9(a)の右端に示した核の蛍光領域に含まれない場合は、対象となる細胞は、異常細胞の判定には用いられず除外される。
【0097】
なお、処理部201は、
図9(a)、(b)の中央に示すようにグラフを作成することなく、上記のような手順に沿って、演算により、核の蛍光領域および遺伝子の輝点を抽出してもよい。
【0098】
また、上記の説明で用いた「画素値」とは、画像の各画素に割り当てられたデジタル値を示す。実施形態1の画素値は、対象物質を標識する蛍光色素から生じた蛍光の強度または細胞を透過した明視野の光の強度に対応する。核および遺伝子に基づく蛍光画像においては、画素値は、それぞれ、核および遺伝子を染色する蛍光色素から生じた蛍光の明るさがデジタル信号に変換された値を示す。細胞に基づく明視野画像においては、光が照射されたときの細胞を透過した光の明るさがデジタル信号に変換された値を示す。
【0099】
ステップS23において、処理部201は、細胞ごとに、選択された測定項目に関係する遺伝子の輝点から輝点パターンを取得する。たとえば、測定項目に関係する遺伝子が「第1遺伝子」と「第2遺伝子」である場合、処理部201は、ステップS22で取得した第1遺伝子の輝点および第2遺伝子の輝点に基づいて、輝点パターンとして、第1遺伝子の輝点の数、第2遺伝子の輝点の数、および第1遺伝子の輝点と第2遺伝子の輝点とが重なり合う組の数を取得する。
【0100】
図9(c)、(d)は、測定項目としてBCR-ABLが選択された場合に取得される画像を模式的に示す図である。
図9(c)、(d)の左端の蛍光画像は、BCR遺伝子の蛍光画像に対して、色名に基づいて色が付された状態の蛍光画像である。
図9(c)、(d)の中央の蛍光画像は、ABL遺伝子の蛍光画像に対して、色名に基づいて色が付された状態の蛍光画像である。
【0101】
BCR遺伝子の蛍光画像とABL遺伝子の蛍光画像として、
図9(c)の左端と中央に示す蛍光画像が取得された場合、処理部201は、BCR遺伝子の輝点の数として2個、ABL遺伝子の輝点の数として2個、BCR遺伝子の輝点とABL遺伝子の輝点とが重なり合う組の数として0個を取得する。この場合にBCR遺伝子の蛍光画像とABL遺伝子の蛍光画像とが重ね合わされると、
図9(c)の右端に示すように合成画像が取得される。合成画像に示すように、この場合のBCR遺伝子の輝点とABL遺伝子の輝点とは重ならない状態で分布する。
【0102】
一方、BCR遺伝子の蛍光画像とABL遺伝子の蛍光画像として、
図9(d)の左端と中央に示す蛍光画像が取得された場合、処理部201は、BCR遺伝子の輝点の数として3個、ABL遺伝子の輝点の数として3個、BCR遺伝子の輝点とABL遺伝子の輝点とが重なり合う組の数として2個を取得する。この場合にBCR遺伝子の蛍光画像とABL遺伝子の蛍光画像とが重ね合わされると、
図9(d)の右端に示すように合成画像が取得される。合成画像に示すように、この場合のBCR遺伝子の輝点の一部とABL遺伝子の輝点の一部とは、破線で示す領域において重なった状態で分布する。たとえば、BCR遺伝子の輝点が赤色で、ABL遺伝子の輝点が緑色であると、合成画像において輝点が重なり合う部分には、赤色の輝点と緑色の輝点が合成された黄色の輝点が生じる。
【0103】
処理部201は、他の測定項目が選択されている場合も同様に、細胞ごとに、選択された測定項目に関係する遺伝子の輝点から輝点パターンを取得する。
【0104】
ステップS24において、処理部201は、細胞ごとに、選択された測定項目について陽性または陰性を判定する。具体的には、処理部201は、ステップS23で取得した測定項目に対応する輝点パターンと、
図6(a)のリスト333に表示した測定項目の陽性パターンおよび陰性パターンの内容とを比較して、細胞ごとに陽性または陰性を判定する。
図9(d)に示すように輝点パターンが陽性パターンに一致する場合、処理部201は、対象となる細胞が測定項目について陽性、すなわち異常細胞であると判定する。
図9(c)に示すように輝点パターンが陰性パターンに一致する場合、処理部201は、対象となる細胞が測定項目について陰性、すなわち正常細胞であると判定する。
【0105】
なお、輝点パターンが陽性パターンおよび陰性パターンのいずれにも一致しない場合、処理部201は、対象となる細胞について測定項目の判定ができなかったことを記憶部202に記憶させる。たとえば、1つの細胞について2つ以上の測定項目の判定が行われる場合、一方の測定項目について陽性または陰性の判定が行われても、他方の測定項目について判定ができないこともある。この場合でも、処理部201は、対象となる細胞について、一方の測定項目の判定結果とともに、他方の測定項目の判定が行われなかったことを、記憶部202に記憶させる。
【0106】
ステップS25において、処理部201は、ステップS24で取得した細胞ごとの判定結果に基づいて、測定項目ごとに、陽性細胞数、陽性細胞比率、陰性細胞数、および陰性細胞比率を算出する。具体的には、処理部201は、対象となる測定項目について陽性と判定された細胞をカウントして陽性細胞数N1を取得し、対象となる測定項目について陰性と判定された細胞をカウントして陰性細胞数N2を取得する。そして、処理部201は、陽性細胞比率としてN1/(N1+N2)を取得し、陰性細胞比率としてN2/(N1+N2)を取得する。
【0107】
ステップS26において、処理部201は、入力部204を介したオペレータからの表示指示に応じて、
図10~
図15に示す画面410~440を表示部203に表示させる。このとき、処理部201は、ステップS21で取得した撮像画像と、ステップS24で取得した判定結果と、ステップS25で算出した数値とに基づいて、画面410~440を生成する。
【0108】
図10に示すように、画面410は、リスト411とボタン412~414を備える。
【0109】
リスト411は、検体IDごとの測定結果を表示する。リスト411の表示項目は、検体ID、測定パネル名、および測定項目ごとの測定結果を含む。処理部201は、ステップS25の算出結果に基づいて、測定項目ごとの測定結果として、陽性細胞比率および陰性細胞比率を表示する。たとえば、
図10に例示するリスト411の場合、1行目の検体ID「01234」について、測定パネル名が「骨髄性白血病」であったことが示されている。また、この検体について、測定項目「BCR-ABL」および「PMA-RARα」について判定が行われ、これらの測定項目について陽性細胞比率と陰性細胞比率が示されている。
【0110】
リスト411の各行は、オペレータの操作により検体が選択可能となるように構成されている。オペレータは、リスト411に示されている検体の中から1つの検体を選択した上で、ボタン412~414のいずれかのボタンを操作する。これにより、処理部201は、選択された検体に基づく画面420、430、440を表示部203に表示させる。ボタン412は、
図11に示す画面420を表示させるためのボタンであり、ボタン413は、
図12に示す画面430を表示させるためのボタンであり、ボタン414は、
図13~15に示す画面440を表示させるためのボタンである。
【0111】
図11に示すように、画面420は、リスト421とボタン422を備える。
【0112】
リスト421は、
図10の画面410で選択された検体について、測定項目ごとに測定結果を表示する。リスト421の表示項目は、測定項目、陽性細胞数、陽性細胞比率、陰性細胞数、陰性細胞比率、細胞数合計、および判定パターンを含む。処理部201は、ステップS25の算出結果に基づいて、陽性細胞数、陽性細胞比率、陰性細胞数、および陰性細胞比率を表示する。処理部201は、陽性細胞数と陰性細胞数とを加算することにより、細胞数合計を表示する。処理部201は、
図6(a)のリスト333で表示した陽性パターンと陰性パターンと同様の内容を、判定パターンとして表示する。
【0113】
このように、陽性細胞数、陽性細胞比率、陰性細胞数、および陰性細胞比率が表示されると、医師等は、表示された情報を参照することにより、検体および被検者が対象となる測定項目について陽性および陰性のいずれであるかを円滑に判断できる。なお、リスト421には、陽性細胞数、陽性細胞比率、陰性細胞数、および陰性細胞比率の少なくとも一つが表示されればよい。
【0114】
なお、処理部201は、陽性細胞比率が所定の閾値を超えている場合に、たとえば、測定項目について「陽性の可能性?」といった検体および被検者が陽性であることを示唆するような表示を行ってもよい。また、処理部201は、陰性細胞比率が所定の閾値を超えている場合に、たとえば、測定項目について「陰性の可能性?」といった検体および被検者が陰性であることを示唆するような表示を行ってもよい。このような表示が行われると、医師等は、検体および被検者が陽性と陰性のいずれであるかを円滑に判断できる。
【0115】
また、処理部201は、リスト421に表示した測定項目のうち、最も陽性細胞数または陽性細胞比率が高い測定項目をオペレータが把握できるような識別表示を行う。具体的には、処理部201は、最も陽性細胞数または陽性細胞比率が高い測定項目の行に枠421aを付ける。このような識別表示は、枠421aに限らず、アイコンなどでもよい。これにより、オペレータは、陽性細胞数または陽性細胞比率が高いために注目すべき測定項目に関する情報を円滑に把握できる。
【0116】
ボタン422は、蛍光の色に関する情報である色名を再設定するためのボタンである。オペレータによりボタン422が操作されると、処理部201は、画面420を閉じて、
図5(a)および
図6(a)に示した入力画面330を表示部203に表示させる。オペレータは、ボタン422の操作後に表示された入力画面330において、
図5(a)および
図6(a)を参照して説明したように、色名を選択してOKボタン334を操作する。これにより、処理部201は、対象物質に対応付けられた色名を更新する。また、色名の更新によって測定項目に対応付けられるべき蛍光画像が変わるため、処理部201は、
図8のステップS23~S25の処理を再度行う。そして、処理部201は、再度行った処理に基づいて、
図11に示す画面410を再度表示する。
【0117】
このように、測定が終わった後でも、オペレータは、入力画面330を表示させて、対象物質に対応付ける色名を設定できる。これにより、測定前に入力した色名が間違っていた場合でも、オペレータは、色名を設定し直すことで、適正な測定結果を得ることができる。
【0118】
図12に示すように、画面430は、領域431を備える。
【0119】
領域431は、
図10の画面410で選択された検体について、最も陽性細胞数または陽性細胞比率が高い測定項目に関する情報を表示する。領域431の表示内容は、最も陽性細胞数または陽性細胞比率が高い測定項目と、この測定項目の陽性細胞数および陽性細胞比率とを含む。処理部201は、ステップS25の算出結果に基づいて、陽性細胞数が最大となる測定項目、陽性細胞数、および陽性細胞比率を表示する。この場合も、
図11の枠421aと同様、オペレータは、陽性細胞数または陽性細胞比率が高いために注目すべき測定項目に関する情報を円滑に把握できる。
【0120】
図13~15に示すように、画面440は、表示設定領域441、442と画像表示領域443を備える。
【0121】
表示設定領域441は、
図10の画面410で選択された検体について、画像表示領域443に表示する画像を選択するための選択部を備える。表示設定領域441内の選択部は、チェックボックスにより構成される。オペレータは、表示設定領域441内の選択部から1つまたは複数の選択部を選択できる。表示設定領域441内の選択部は、対象となる検体について設定された測定項目に対応して設けられる。たとえば、
図13~15に示す例では、検体について測定項目BCR-ABLとPML-RARαが設定されたため、表示設定領域441には、対象物質のBCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、RARα遺伝子、および核に対応する選択部と、測定項目のBCR-ABLおよびPML-RARαに対応する選択部とが設けられている。また、表示設定領域441には、明視野画像に対応する選択部も設けられる。
【0122】
表示設定領域442は、画像表示領域443に表示する画像443aの下方に、画像443aに対応する細胞についての判定結果を示すラベル443bを表示するか否かを選択するための選択部を備える。ラベル443bは、
図15に示すように、測定項目ごとに陽性または陰性の判定結果を表示する。表示設定領域442内の選択部は、ラジオボタンにより構成される。オペレータは、「表示」に対応する選択部および「非表示」に対応する選択部から、いずれかの選択部を選択できる。
【0123】
画像表示領域443は、
図10の画面410で選択された検体についての画像443aを表示する。処理部201は、表示設定領域441の選択部で指定された項目に基づいて、画像表示領域443に対象検体の画像443aを表示する。また、処理部201は、表示設定領域442の選択部で指定された項目が「表示」である場合、画像443aの下方に判定結果を示すラベル443bを表示する。
【0124】
図13に示す例では、表示設定領域441においてBCR遺伝子が選択されており、表示設定領域442において非表示が選択されている。したがって、処理部201は、画像表示領域443に、BCR遺伝子に対応する蛍光画像を画像443aとして表示し、画像443aの下方にはラベル443bは表示しない。処理部201は、遺伝子の蛍光画像を表示させる場合、記憶部202からグレースケールの蛍光画像を読み出して、読み出した蛍光画像の色調を色名に応じた色に変換した上で画像表示領域443に表示する。
図13に示す例では、BCR遺伝子の色名は青色に設定されているため、処理部201は、記憶部202から読み出した蛍光画像の色調を青色に変換して表示する。
【0125】
このように、画像表示領域443に、撮像部154により撮像された対象物質に基づく蛍光画像が表示されると、オペレータは、蛍光画像を参照することにより、対象物質の配置、存在の有無、増幅状態などを確認できる。これにより、オペレータは、たとえば、対象物質を含む細胞について陽性または陰性を判定できる。
【0126】
図14に示す例では、表示設定領域441において測定項目「BCR-ABL」が選択されており、表示設定領域442において「非表示」が選択されている。したがって、処理部201は、画像表示領域443に、測定項目BCR-ABLに関連するBCR遺伝子およびABL遺伝子の蛍光画像を合成した画像を画像443aとして表示する。処理部201は、測定項目BCR-ABLのように、関連する複数種類の遺伝子の蛍光画像を合成する場合、各蛍光画像の色調を色設定に応じた色に変換し、色調を変換した複数の蛍光画像の色調をさらに適宜調整した上で合成する。
【0127】
図14に示す例では、BCR遺伝子の色名は青色に設定され、ABL遺伝子の色名はオレンジ色に設定されているため、処理部201は、記憶部202から読み出したBCR遺伝子の蛍光画像の色調を青色に変換し、記憶部202から読み出したABL遺伝子の蛍光画像の色調をオレンジ色に変換する。そして、処理部201は、色調を変換した2つの蛍光画像を適宜調整した上で合成して表示する。
【0128】
このように、画像表示領域443に合成画像が表示されると、オペレータは、合成画像を参照することにより、複数種類の対象物質の配置を円滑に確認できる。これにより、オペレータは、たとえば、対象物質を含む細胞について陽性または陰性を判定できる。
【0129】
また、処理部201は、表示設定領域441において測定項目が指定されている場合、画像表示領域443に表示する画像443aについて、測定項目の判定結果が陽性および陰性のいずれであるかをオペレータが把握できるような識別表示を行う。具体的には、表示設定領域441で指定された測定項目の判定結果が陽性である場合、処理部201は、
図14に示すように、画像443aの外枠を二重にする。これにより、オペレータは、表示設定領域441で選択された測定項目について、画像443aに示された細胞が陽性であるか否かを円滑に把握できる。
【0130】
図15に示す例では、表示設定領域441において測定項目「BCR-ABL」が選択されており、表示設定領域442において「表示」が選択されている。したがって、処理部201は、画像表示領域443に、BCR遺伝子およびABL遺伝子の蛍光画像を合成した画像を画像443aとして表示するとともに、各画像443aの下方にラベル443bを表示する。この場合、たとえば、
図8のステップS24において測定項目「BCR-ABL」と「PML-RARα」の判定が行われていると、ラベル443bには、測定項目「BCR-ABL」の判定結果と、測定項目「PML-RARα」の判定結果が表示される。ラベル443bにおいて、「Pos」は測定項目について細胞が陽性であることを示し、「Neg」は測定項目について細胞が陰性であることを示す。
【0131】
このように、各細胞の画像443aに合わせてラベル443bが表示されると、オペレータは、画像443aを参照するとともに、細胞について行われた全ての測定項目の判定結果を、細胞ごとに確認できる。
【0132】
なお、細胞に対して陽性および陰性を判定する際に、輝点パターンが陽性パターンおよび陰性パターンのいずれにも一致しなかった場合、処理部201は、ラベル443bに判定ができなかったことを示す情報を表示する。
図15に示す例では、画像表示領域443の左下に表示された細胞のラベル443bに示すように、測定項目「PML-RARα」について判定ができなかったため「---」が表示されている。なお、「---」に代えて、除外を示す「excluted」が表示されてもよい。
【0133】
上記のような画面410、420、430、440が表示部203に表示されると、医師等は、これらの画面を参照して、測定結果を詳細に確認できる。また、医師等は、これらの画面の表示内容を、検体が陽性と陰性のいずれであるかの判定に役立てることができる。
【0134】
<実施形態2>
実施形態1では、
図5(a)に示す入力画面330のリスト332において、選択部332aにより設定される蛍光の色に関する情報は、
図5(b)に示すように、撮像部154の領域161~165に入射する蛍光の色名であった。これに対し、実施形態2では、選択部332aにより設定される蛍光の色に関する情報は、
図16(a)に示すように、撮像部154の領域161~165に入射する蛍光の波長帯域である。実施形態2の他の構成は、実施形態1と同様である。
【0135】
実施形態2では、選択部332aにおいて波長λ21、λ22、λ23、λ24、λ25が選択された場合、処理部201は、それぞれ、実施形態1において青、オレンジ、緑、赤、紫が選択された場合と同様の処理を行う。これにより、実施形態2においても、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できるため、入力された蛍光の色に関する情報と蛍光画像とに基づいて、対象物質を適正に分析できる。
【0136】
<実施形態3>
実施形態3では、選択部332aにより設定される蛍光の色に関する情報は、
図16(b)に示すように、チャンネル1~5である。チャンネル1~5は、
図2を参照して説明したように、撮像部154の領域161~165に入射する光に基づいて処理を行う系統のことである。実施形態3の他の構成は、実施形態1と同様である。
【0137】
実施形態3においても、選択部332aにおいてチャンネル1~6が選択された場合、処理部201は、それぞれ、実施形態1において青、オレンジ、緑、赤、紫が選択された場合と同様の処理を行う。これにより、実施形態3においても、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できるため、対象物質を適正に分析できる。
【0138】
<実施形態4>
実施形態4では、選択部332aにより設定される蛍光の色に関する情報は、蛍光色素名である。実施形態4では、
図5(a)のリスト332において選択部332aが操作されると、処理部201は、
図17(a)に示す画面335を表示部203に表示させる。処理部201は、
図17(b)に示す蛍光色素データベースに登録された蛍光色素名に基づいて、画面335に蛍光色素名を表示する。画面335は、蛍光色素名に対応して、複数の選択部335aを備えている。オペレータが目的の蛍光色素名に対応する選択部335aを操作すると、処理部201は、画面335を閉じて、リスト332の選択部332aに、画面335で選択された蛍光色素名を表示する。オペレータは、対象物質ごとに選択部332aを操作して画面335を表示させ、画面335を介して対象物質ごとに蛍光色素名を入力する。
【0139】
図17(b)に示すように、実施形態4の記憶部202は、蛍光色素データベースを記憶している。蛍光色素データベースには、使用が想定される蛍光色素名と、当該蛍光色素名に対応する蛍光の色との組み合わせが、あらかじめ複数登録されている。
図5(a)の入力画面330においてOKボタン334が操作されると、処理部201は、蛍光色素データベースに基づいて、選択部332aに表示された蛍光色素名に対応する蛍光の色を取得する。その後、処理部201は、取得した蛍光の色に基づいて、実施形態1と同様の処理を行う。実施形態4の他の構成は、実施形態1と同様である。
【0140】
実施形態4においても、実施形態1と同様、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できるため、対象物質を適正に分析できる。また、実施形態4では、オペレータは、撮像部154において撮像される蛍光の色や波長などを把握していなくても、対象物質の標識に用いた蛍光色素名を入力するだけで、対象物質と蛍光の色に関する情報とを容易に対応付けることができる。
【0141】
<実施形態5>
実施形態5では、選択部332aにより設定される蛍光の色に関する情報は、試薬名である。試薬名とは、所定の対象物質を蛍光色素で標識するための試薬に付けられた名称である。実施形態5では、
図5(a)のリスト332において選択部332aが操作されると、処理部201は、
図17(c)に示す画面336を表示部203に表示させる。処理部201は、
図17(d)に示す試薬データベースに登録された試薬名に基づいて、画面336に試薬名を表示する。画面336は、試薬名に対応して、複数の選択部336aを備えている。オペレータが目的の試薬名に対応する選択部336aを操作すると、処理部201は、画面336を閉じて、リスト332の選択部332aに、画面336で選択された試薬名を表示する。オペレータは、対象物質ごとに選択部332aを操作して画面336を表示させ、画面336を介して対象物質ごとに試薬名を入力する。
【0142】
図17(d)に示すように、実施形態5の記憶部202は、試薬データベースを記憶している。試薬データベースには、使用が想定される試薬名と、当該試薬名に対応する蛍光色素から生じる蛍光の色との組み合わせが、あらかじめ複数登録されている。
図5(a)の入力画面330においてOKボタン334が操作されると、処理部201は、試薬データベースに基づいて、選択部332aに表示された試薬名に対応する蛍光の色を取得する。その後、処理部201は、取得した蛍光の色に基づいて、実施形態1と同様の処理を行う。実施形態5の他の構成は、実施形態1と同様である。
【0143】
実施形態5においても、実施形態1と同様、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できるため、対象物質を適正に分析できる。また、実施形態5では、オペレータは、撮像部154において撮像される蛍光の色や波長などを把握していなくても、対象物質の標識に用いた試薬名を入力するだけで、対象物質と蛍光の色に関する情報とを容易に対応付けることができる。
【0144】
<実施形態6>
図18に示すように、実施形態6では、複数の試薬容器50が、それぞれ、対象物質を蛍光色素で標識するための試薬を収容している。各試薬容器50には、識別情報51を情報として備えるラベルが貼られている。識別情報51は、バーコード情報により構成される。
図18に示すように、記憶部202は、識別情報51に対応付けて蛍光の色に関する情報として色名が登録されたテーブルを記憶している。識別情報51は、試薬容器50に収容された試薬中の蛍光色素から生じる蛍光の色に応じて存在し、試薬容器50が備える識別情報51は、当該試薬容器50に収容された試薬中の蛍光色素から生じる蛍光の色ごとに異なっている。また、実施形態6の分析部200は、情報取得部205を備える。情報取得部205は、識別情報51を取得し、バーコードリーダにより構成される。
【0145】
処理部201は、情報取得部205が取得した識別情報51に基づいて、蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける。具体的には、処理部201は、情報取得部205が取得した識別情報51に基づいて、
図18に示すテーブルから、識別情報51に対応付けられた蛍光の色に関する情報を取得する。これにより、処理部201は、試薬容器50に収容された試薬中の蛍光色素から生じる蛍光の色に関する情報を取得する。実施形態6の他の構成は、実施形態1と同様である。
【0146】
なお、識別情報51はRFIDにより構成され、情報取得部205はRFIDタグからRFIDを読み取るためのアンテナにより構成されてもよい。また、識別情報51は、切欠や孔などの特殊構造により構成され、情報取得部205は、切欠や孔などの特殊構造を識別するための装置により構成により構成されてもよい。
【0147】
図18に示す例では、各試薬容器50は、BCR遺伝子を標識するための試薬、ABL遺伝子を標識するための試薬、PML遺伝子を標識するための試薬、RARα遺伝子を標識するための試薬、および核を標識するための試薬を収容している。各識別情報51は、試薬容器50が収容する試薬に応じて互いに異なっている。
【0148】
オペレータが、入力を行う選択部332aを操作した上で、情報取得部205を用いて識別情報51から情報を読み取ることにより、処理部201は、記憶部202に記憶されたテーブルに基づいて、識別情報51に対応付けられた蛍光の色に関する情報を読み出す。そして、処理部201は、対象となる選択部332aに、
図18に示すように色名を設定する。これにより、実施形態1においてオペレータが選択部332aを操作して色名を設定した場合と同様に、対象物質に対応する色名が選択部332aに設定される。
【0149】
実施形態6においても、実施形態1と同様、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できるため、対象物質を適正に分析できる。また、実施形態6では、オペレータは、情報取得部205を用いて識別情報51から情報を読み取ることにより、対象物質に対応付けて蛍光の色に関する情報を円滑に入力できる。また、オペレータは、撮像部154において撮像される蛍光の色や波長などを把握していなくても、情報取得部205により識別情報51から情報を読み取るだけで、対象物質と蛍光の色に関する情報とを容易に対応付けることができる。
【0150】
なお、
図18に示すテーブルには、識別情報に対応付けて、さらに対象物質名が登録されてもよい。この場合、処理部201は、情報取得部205により取得された識別情報51に基づいて、色名だけでなく対象物質名も取得できるため、オペレータは、選択部332aを操作して対象物質を指定する必要がなくなる。また、識別情報51は、蛍光の色に関する情報を記憶してもよく、蛍光の色に関する情報と対象物質名とを記憶してもよい。この場合、
図18に示すテーブルが不要になる。
【0151】
<実施形態7>
図19に示すように、実施形態7では、検査キット容器60が、測定パネル名に対応した測定項目で用いられる試薬容器を収容している。検査キット容器60内の試薬容器は、対象物質を蛍光色素で標識するための試薬を収容している。検査キット容器60には、識別情報61を情報として備えるラベルが貼られている。識別情報61は、バーコード情報により構成される。
図19に示すように、記憶部202は、識別情報61に対応付けて、測定パネル名、測定項目、および対象物質と蛍光の色に関する情報との対応を示す対応情報が登録されたテーブルを記憶している。すなわち、識別情報61は、検査キット容器60内の試薬の種類に応じて存在し、検査キット容器60が備える識別情報61は、当該検査キット容器60に収容された試薬の種類ごとに異なっている。
【0152】
処理部201は、情報取得部205が取得した識別情報61に基づいて、
図19に示すテーブルから、識別情報61に対応付けられた測定パネル名、測定項目、および対応情報を取得する。これにより、処理部は、試薬容器に収容された試薬中の蛍光色素から生じる蛍光の色に関する情報を取得する。実施形態7の他の構成は、実施形態6と同様である。
【0153】
なお、識別情報61は、実施形態6の識別情報51と同様、RFIDタグにより構成されてもよく、切欠や孔などの特殊構造により構成されてもよい。
【0154】
図19に示す例では、検査キット容器60は、測定パネル名が「骨髄性白血病」の場合に対応した5つの試薬容器を収容している。検査キット容器60内の5つの試薬容器は、それぞれ、BCR遺伝子を標識するための試薬、ABL遺伝子を標識するための試薬、PML遺伝子を標識するための試薬、RARα遺伝子を標識するための試薬、および核を標識するための試薬を収容している。
【0155】
オペレータが、情報取得部205を用いて識別情報61から情報を読み取ることにより、処理部201は、記憶部202に記憶されたテーブルに基づいて、識別情報61に対応付けられた蛍光の色に関する情報を読み出す。そして、処理部201は、リスト332内に配置された選択部332aに、
図19に示すように色名を設定する。これにより、実施形態1においてオペレータが選択部332aを操作して色名を設定した場合と同様に、対象物質に対応する色名が選択部332aに設定される。
【0156】
また、この場合、処理部201は、蛍光の色に関する情報とともに、測定パネル名と測定項目を受け付ける。これにより、オペレータは、
図4(b)に示す画面310を介して測定パネル名を選択する必要がなく、
図4(c)に示す画面320を介して測定項目を選択する必要がなくなる。
【0157】
実施形態7においても、実施形態1と同様、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できるため、対象物質を適正に分析できる。また、実施形態7では、オペレータは、情報取得部205を用いて1つの識別情報61から情報を読み取ることにより、複数種類の対象物質に対応付けて蛍光の色に関する情報を円滑かつ迅速に入力できる。また、実施形態6と同様、オペレータは、情報取得部205により識別情報61から情報を読み取るだけで、測定項目に関連する対象物質と、蛍光の色に関する情報とを容易に対応付けることができる。
【0158】
なお、識別情報61は、測定パネル名、測定項目、および対応情報を記憶してもよい。この場合、
図19に示すテーブルが不要になる。
【0159】
実施形態6、7では、蛍光の色に関する情報として、識別情報51、61に色名が記憶されたが、これに限らず、実施形態2~5のように、蛍光の波長帯域、チャンネル、蛍光色素名、試薬名などが記憶されてもよい。
【0160】
<実施形態8>
実施形態1では、
図4(a)のステップS13において、入力画面330を介して、対象物質に対応する蛍光の色に関する情報が入力された。すなわち、実施形態1では、オペレータが選択部332aを操作して色名を選択することにより、対象物質に対応して蛍光の色に関する情報が、変更可能に設定された。しかしながら、これに限らず、対象物質に対応する蛍光の色に関する情報は、処理部201により自動的に設定されてもよい。
【0161】
図20に示すように、実施形態8では、処理部201は、
図4(c)の画面320を介して測定項目の入力を受け付けると、入力画面330のリスト332において、受け付けた測定項目に関連する複数の対象物質に対応して蛍光の色に関する情報を設定する。
【0162】
たとえば、
図20に例示するように、処理部201は、測定項目としてBCR-ABLとPML-RARαの入力を受け付けると、BCR遺伝子、ABL遺伝子、PML遺伝子、RARα遺伝子、および核に対して、それぞれ自動的に、青色、オレンジ色、緑色、赤色、および紫色を設定する。このように、実施形態8では、オペレータが測定項目を入力すると、処理部201は、測定項目に関連する対象物質に対応する選択部332aに、自動的に蛍光の色に関する情報を設定する。これにより、オペレータは対象物質について蛍光の色に関する情報を設定する必要がなくなる。また、処理部201が対象物質について蛍光の色に関する情報を設定するため、オペレータが誤って設定してしまうことを防止できる。
【0163】
なお、処理部201は、測定項目に代えて複数の対象物質の入力を受け付けてもよい。この場合、処理部201は、受け付けた複数の対象物質に対応して蛍光の色に関する情報を設定する。
【0164】
また、オペレータが入力画面330内の選択部332aの一部を操作して蛍光の色に関する情報を設定した場合、処理部201は、残りの選択部332aに対して自動的に蛍光の色に関する情報を設定してもよい。これにより、オペレータは全ての対象物質について蛍光の色に関する情報を設定する必要がなくなる。また、処理部201が一部の対象物質について蛍光の色に関する情報を設定するため、一部の対象物質の蛍光の色に関する情報が誤って設定されることを防止できる。
【0165】
また、処理部201によって蛍光の色に関する情報が設定された選択部332aは、オペレータにより再度変更できないように構成されてもよく、オペレータにより再度変更可能に構成されてもよい。処理部201によって設定された蛍光の色に関する情報をオペレータが変更できない場合、オペレータが誤って設定してしまうことを防止できる。他方、処理部201によって設定された蛍光の色に関する情報をオペレータが変更できる場合、オペレータは、処理部201によって設定された色名を確認した上で、色名を自由に変更できる。
【0166】
<実施形態9>
図21に示すように、実施形態9の試料分析装置10は、
図1に示す測定部100に代えて、蛍光顕微鏡を含む測定部500を備える。実施形態9の他の構成は、
図1に示す構成と同様である。
【0167】
測定部500は、光源501~505と、ミラー506と、ダイクロイックミラー507~510と、シャッター511と、1/4波長板512と、ビームエキスパンダ513と、集光レンズ514と、ダイクロイックミラー515と、対物レンズ516と、ステージ520と、集光レンズ531と、撮像部532と、コントローラ541、542と、を備える。ステージ520には、スライドガラス521が設置される。スライドガラス521には、測定試料21が載せられる。
【0168】
光源501~505は、それぞれ、
図1に示す光源121~125と同様である。ミラー506は、光源501からの光を反射する。ダイクロイックミラー507は、光源501からの光を透過し、光源502からの光を反射する。ダイクロイックミラー508は、光源501、502からの光を透過し、光源503からの光を反射する。ダイクロイックミラー509は、光源501~503からの光を透過し、光源504からの光を反射する。ダイクロイックミラー510は、光源501~504からの光を透過し、光源505からの光を反射する。光源501~505からの光の光軸は、ミラー506とダイクロイックミラー507~510により、互いに一致させられる。
【0169】
シャッター511は、コントローラ541により駆動され、光源501~505から出射された光を通過させる状態と、光源501~505から出射された光を遮断する状態とに切り替える。これにより、測定試料21に対する光の照射時間が調整される。1/4波長板512は、光源501~505から出射された直線偏光の光を円偏光に変換する。蛍光色素は、所定の偏光方向の光に反応する。よって、光源501~505から出射された励起用の光を円偏光に変換することにより、励起用の光の偏光方向が、蛍光色素が反応する偏光方向に一致し易くなる。これにより、蛍光色素に効率良く蛍光を励起させることができる。ビームエキスパンダ513は、スライドガラス521上における光の照射領域を広げる。集光レンズ514は、対物レンズ516からスライドガラス521に平行光が照射されるよう光を集光する。
【0170】
ダイクロイックミラー515は、光源501~505から出射された光を反射し、測定試料21から生じた蛍光を透過する。対物レンズ516は、ダイクロイックミラー515で反射された光を、スライドガラス521に導く。ステージ520は、コントローラ542により駆動される。測定試料21から生じた蛍光は、対物レンズ516を通り、ダイクロイックミラー515を透過する。集光レンズ531は、ダイクロイックミラー515を透過した蛍光を集光して、撮像部532の受光面532aに導く。撮像部532は、受光面532aに照射された蛍光の像を撮像し、蛍光画像を生成する。撮像部532は、たとえばCCD等により構成される。
【0171】
コントローラ541、542と撮像部532は、
図1に示す処理部201と接続されており、処理部201は、コントローラ541、542と撮像部532を制御し、撮像部532により撮像された蛍光画像を受信する。なお、撮像部532により撮像される蛍光画像は、
図1に示すようにフローセル110が用いられる場合とは異なり、細胞が密接した状態となっている場合がある。このため、処理部201は、取得した蛍光画像を、細胞の核ごとに分割する処理、または、蛍光画像において1つの細胞の核に対応する領域を設定する処理等を行う。
【0172】
実施形態9においても、処理部201は、
図5(a)に示した入力画面330を介して、対象物質に対応付けて蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける。これにより、実施形態1と同様、処理部201は、対象物質から生じる蛍光の色を把握できるため、対象物質を適正に分析できる。なお、実施形態1のようにフローサイトメトリー法に基づいて測定試料21をフローセル110に流し、細胞ごとに蛍光画像を取得すると、多量の測定試料21を測定して多数の撮像画像を迅速に取得でき、対象物質の分析を自動的かつ円滑に行うことができる。
【0173】
<他の実施形態>
実施形態1~9では、測定部100が検出する蛍光は、対象物質を標識する蛍光色素から生じた蛍光であったが、これに限らず、対象物質から生じた自家蛍光であってもよい。また、測定部100において、波長の異なる複数種類の蛍光を同一の撮像部154にて撮像したが、これに限らずそれぞれの波長ごとに異なる撮像部を用いて検出してもよい。
【0174】
実施形態1~9では、撮像部154が蛍光を撮像して蛍光画像を生成し、処理部201は生成された蛍光画像に基づいて対象物質を分析した。しかしながら、これに限らず、蛍光強度に基づいて分析が行われる場合には、撮像部154に代えて、光検出器が用いられてもよい。すなわち、処理部201は、撮像部による検出結果に限らず、光検出器の検出結果を用いて分析を行ってもよい。この場合、光検出器が蛍光を受光して蛍光強度に応じた信号を出力し、処理部201は、蛍光の強度に応じた信号に基づいて、対象物質を分析する。
【0175】
実施形態1~9では、遺伝子の転座に関する測定項目について陽性または陰性の判定が行われたが、これに限らず、遺伝子増幅、欠失、逆位等に関する測定項目について陽性または陰性の判定が行われてもよい。この場合も、処理部201は、
図5(a)に示す入力画面330と同様の画面を介して、対象物質ごとに蛍光の色に関する情報の入力を受け付ける。そして、処理部201は、測定項目に関連する遺伝子に基づく蛍光画像から、蛍光と核の蛍光領域を抽出し、抽出した蛍光領域に基づいて測定項目について陽性または陰性の判定を行う。
【符号の説明】
【0176】
10 試料分析装置
21 測定試料
51、61 識別情報
100、500 測定部
110 フローセル
121~125 光源
154 撮像部
201 処理部
202 記憶部
203 表示部
205 情報取得部
330 入力画面