(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール、その製造方法、及びその結合体
(51)【国際特許分類】
C08G 65/329 20060101AFI20220317BHJP
C07D 207/46 20060101ALI20220317BHJP
C07D 403/14 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
C08G65/329
C07D207/46
C07D403/14
(21)【出願番号】P 2017195773
(22)【出願日】2017-10-06
【審査請求日】2020-08-04
(31)【優先権主張番号】P 2016198654
(32)【優先日】2016-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097490
【氏名又は名称】細田 益稔
(74)【代理人】
【識別番号】100097504
【氏名又は名称】青木 純雄
(72)【発明者】
【氏名】金原 数
(72)【発明者】
【氏名】宇留賀 友輝
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 知之
【審査官】藤井 明子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-025932(JP,A)
【文献】国際公開第2012/133490(WO,A1)
【文献】特表2005-508421(JP,A)
【文献】特表2001-519784(JP,A)
【文献】特開2004-197077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00-67/04
C07D 207/00-207/50
C07D 401/00-421/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されることを特徴とする、分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【化1】
(式(1)中、
X
1、Y
1は、それぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団X
1が含む前記官能基と原子団Y
1が含む前記官能基とは互いに異なる。
nは6~30の整数である。
Eは、L
2に対して2価の結合価数を有し、L
3に対して1価の結合価数を有する分岐部位であり、グリセリン部位を表す。
L
1、L
2は、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。
L
3は、単結合、-L
4-(CH
2)
m1-または-L
4-(CH
2)
m2-L
5-(CH
2)
m3-を表し、L
4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L
5は、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1、m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。)
【請求項2】
L
3が、-L
4-(CH
2)
m1-または-L
4-(CH
2)
m2-L
5-(CH
2)
m3-を表し、L
4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L
5は、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1,m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表すことを特徴とする、請求項1記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【請求項3】
式(1)中に含まれるL
2が、エーテル結合であることを特徴とする、請求項1または2記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【請求項4】
式(2)で表される、請求項1記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【化2】
(式(2)中、
X
1、Y
1は、それぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団X
1が含む前記官能基と原子団Y
1が含む前記官能基とは互いに異なる。
nは6~30の整数である。
L
1は、単結合または2価の有機基を表す。
L
3は、単結合、-L
4-(CH
2)
m1-または-L
4-(CH
2)
m2-L
5-(CH
2)
m3-を表し、L
4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L
5は、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1,m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。)
【請求項5】
式(3)で表される、請求項4記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体。
【化3】
(式(3)中、
nは6~30の整数を表す。
Y
2は、-NH
2または-O-(CH
2)
m4-NH
2で表され、m4は、1~5の整数を表す。)
【請求項6】
請求項5記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール中間体を製造する方法であって、
下記式(4)で表される単分散ポリエチレングリコール誘導体と下記式(5)で表される化合物とを、水溶液中でのpKaが15~20である塩基触媒を用いてカップリングさせ、下記式(6)で表される化合物を得る工程(1)と、
【化4】
(式(4)中、
Aは
ベンジル基およびトリフェニルメチル基から選ばれた保護基、
Bは脱離基である。
nは6~30の整数を表す。)
【化5】
(式(5)中、
Zは、-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、m5は1~5の整数を表す。)
【化6】
(式(6)中、
Aは
前記保護基、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(6)で表される化合物の
前記保護基Aを脱保護させ、下記式(7)で表される化合物を得る工程(2)
であって、前記脱保護が酸性条件下での加水分解反応または接触水素添加によって行われ、前記脱保護が酸性条件下での加水分解反応である場合には、Z
1
がt-ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、アジド基またはシアノ基であり、前記脱保護が接触水素添加である場合には、Z
1
がt-ブトキシカルボニルアミノ基である工程(2)と、
【化7】
(式(7)中、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(7)で表される化合物に
、n=6~10の時は1~25℃、かつn=11~30の時は1~15℃で分液精製を施す工程(3)と、
前記式(7)で表される化合物に脱保護処理あるいは還元処理を施して式(3)で表される前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得る工程(4)と、
を上記の順で含むことを特徴とする分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール
中間体の製造方法。
【請求項7】
前記塩基触媒が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシドおよびナトリウムt-ブトキシドのいずれかであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか一つの請求項に記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールに、生体機能性分子が結合されていることを特徴とする、分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール結合体。
【請求項9】
式(40)で表される、請求項4記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体。
【化8】
(式(40)中、
nは6~30の整数を表す。
Y
2は、-NH
2または-O-(CH
2)
m4-NH
2で表され、m4は、1~5の整数を表す。)
【請求項10】
請求項9記載の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール中間体を製造する方法であって、
下記式(41)で表される単分散ポリエチレングリコール誘導体と下記式(42)で表される化合物とを、水溶液中でのpKaが15~20である塩基触媒を用いてカップリングさせ、下記式(43)で表される化合物を得る工程(1’)と、
【化9】
(式(41)中、
Zは、-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、m5は1~5の整数を表す。
Bは脱離基である。
nは6~30の整数を表す。)
【化10】
(式(42)中、
Aは
、ベンジル基およびトリフェニルメチル基から選ばれた保護基)
【化11】
(式(43)中、
Aは
前記保護基、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(43)で表される化合物の
前記保護基Aを脱保護させ、下記式(44)で表される化合物を得る工程(2’)
であって、前記脱保護が酸性条件下での加水分解反応または接触水素添加によって行われ、前記脱保護が酸性条件下での加水分解反応である場合には、Z
1
がt-ブトキシカルボニルアミノ基、ベンジルオキシカルボニルアミノ基、ジベンジルアミノ基、アジド基またはシアノ基であり、前記脱保護が接触水素添加である場合には、Z
1
がt-ブトキシカルボニルアミノ基である工程(2’)と、
【化12】
(式(44)中、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(44)で表される化合物に脱保護処理あるいは還元処理を施して式(40)で表される前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得る工程(3’)と、
前記式(40)で表される化合物に
、n=6~10の時は1~25℃、かつn=11~30の時は1~15℃で分液精製を施す工程(4’)と、
を上記の順で含むことを特徴とする分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール
中間体の製造方法。
【請求項11】
前記塩基触媒が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシドおよびナトリウムt-ブトキシドのいずれかであることを特徴とする、請求項10記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール、分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体及びそれらの製造方法、並びに分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール結合体に関する。より詳しくは、生体機能性高分子、ドラッグデリバリーシステムにおける薬物または薬物キャリア、または診断用材料やデバイスなどの修飾に用いられ、特に抗体結合医薬用のリンカーとして有用な分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医薬品分野において、薬剤をリンカーを介して抗体と結合させ、抗原提示細胞に薬物を能動的に運搬する、抗体結合医薬(Antibody-Drug Conjugate;ADC)が実用化され、高い注目を集めている(Toxins、2011年、3、p.848-883(非特許文献1)、J.Med.Chem.、2011年、54、p.3606-3623(非特許文献2))。
【0003】
一般的に薬剤は疎水性のものが多いため、ADCとして使用した際に凝集が生じることがある。そこで検討されているリンカーの一つが、親水性リンカーであるヘテロ型単分散ポリエチレングリコールである。
【0004】
ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールとは、薬剤と抗体を両末端に区別して結合させるために、両末端に互いに異なる官能基を有し(ヘテロ型)、かつ、医薬品申請およびADC製造、精製、分析を簡便にするために、特定のエチレングリコール鎖長を有する化合物が90%以上含まれる化合物のことである。
【0005】
前記ADCでは、前記ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールをリンカーとして、その各末端に抗体と薬剤とを区別して結合させるため、前記ヘテロ型単分散ポリエチレングリコール中に、両末端に互いに同じ官能基を有する化合物(ホモ型ポリエチレングリコール等)が不純物として存在すると、抗体が2つ結合した化合物又は薬剤が2つ結合した化合物が生成する。抗体が2つ結合した化合物は、薬剤が結合していないためにADCとしての効果が奏されず、薬剤が2つ結合した化合物は抗体が結合していないために抗原提示細胞以外の箇所に運搬されて副作用を引き起こす原因となる。また、目的の官能基を有するヘテロ型ポリエチレングリコールと異なる組み合わせで官能基を有する他のヘテロ型化合物が不純物として存在する場合も、目的とする抗体又は薬剤のどちらかが欠損した化合物が生成するため、上記と同様の問題が生じる。したがって、薬剤の使用、効果の観点から、前記ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールとしては、両末端に互いに異なる官能基を有するヘテロ型ポリエチレングリコールを高純度で含有する、すなわち官能基純度が高いことが重要といえる。
【0006】
また近年、前記ADCにおいて薬物の運搬効率を向上させることを目的として、抗体に対して複数個の薬剤を結合させたADCを使用することが望まれており、その一つとして、リンカーを分岐型の構造にする方法が試みられている。
【0007】
例えば、特許文献1(US20130052130A1)では、トリスヒドロキシルアミノメタン(Tris)や、リシンなどのアミノ酸からなる分岐部位に単分散ポリエチレングリコールを結合させることで、前記エチレングリコール鎖が3本あるいは4本導入された分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールが開示されている。
【0008】
また、特許文献2(CN104530415A)では、グリセリンやチオグリセリンからなる分岐部位に単分散ポリエチレングリコールを結合させることで、前記エチレングリコール鎖が3本導入された分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールが開示されている。
【0009】
これら特許文献1および特許文献2は共通して、分岐部位が有する結合点の全てに単分散ポリエチレングリコールが結合され、その先に抗体や薬物へ結合可能な官能基が結合している。これを下記のように概略的に示すことができる。
(X-PEG1-)n-B-PEG2-Y
(式中、X,Yはそれぞれ異なる官能基であり、nは2または3の整数である。Bは分岐骨格を表す。PEG1およびPEG2は直鎖型単分散ポリエチレングリコールを表す。)
【0010】
これら特許文献1および特許文献2において、前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールを得る方法としては、末端官能基が異なる2種類の直鎖型単分散ポリエチレングリコール(X-PEG1およびPEG2-Y)を用意し、はじめにX-PEG1と分岐部位とを反応させ、その後、PEG2-Yを反応させる、もしくは、はじめにPEG2-Yと分岐部位とを反応させ、その後、X-PEG1を反応させる方法が記載されている。はじめにPEG2-Yを反応させる場合の例を次式に示す。
【0011】
・1段階目
B + PEG2-Y → B-PEG2-Y
・2段階目
X-PEG1 + B-PEG2-Y → (X-PEG1-)n-B-PEG2-Y
(式中、X,Yはそれぞれ異なる官能基であり、nは2または3の整数である。Bは分岐部位を表す。PEG1およびPEG2は直鎖型単分散ポリエチレングリコールを表す。)
【0012】
前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールの製造において、1段階目の分岐部位BとPEG2-Yとの反応では、下記式に示すようにPEG2-Yが残存する可能性がある。これは、目的の分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールと片末端のみ同じ官能基を有している。そのため、過剰に加えた単分散ポリエチレングリコールを含む分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールをADCの製造に用いた場合、官能基純度が低いため、目的とする抗体又は薬剤のどちらかが欠損した化合物が生成し、薬剤としての有効性が低下する原因となる。
B + PEG2-Y → B-PEG2-Y + PEG2-Y
【0013】
また、2段階目のX-PEG1との反応では、下記式に示すように過剰に加えたX-PEG1が残存する可能性がある。これは、目的の分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールと片末端のみ同じ官能基を有している。そのため、過剰に加えた単分散ポリエチレングリコールを含む分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールをADCの製造に用いた場合、官能基純度が低いため、目的とする抗体又は薬剤のどちらかが欠損した化合物が生成し、薬剤としての有効性が低下する原因となる。
X-PEG1 + B-PEG2-Y →
(X-PEG1-)n-B-PEG2-Y + X-PEG1
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】US20130052130A1
【文献】CN104530415A
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上のように、特許文献1および特許文献2に記載の分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールにおいては、末端官能基が異なる2種類の直鎖型単分散ポリエチレングリコールを2段階で反応させる必要があるため、過剰に加えた直鎖型単分散ポリエチレングリコールの残存により、目的の分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールの純度が低下し、薬剤の使用、効果の観点で問題となる恐れがある。
【0016】
更に、分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールの精製方法としては、再結晶やカラム精製等が挙げられ、特許文献1および特許文献2では、過剰に加えた単分散ポリエチレングリコール(PEG2-Y、およびX-PEG1)を、カラムクロマトグラフィーにより除去している。しかし、単分散ポリエチレングリコールは、末端官能基が同じ場合、鎖長が異なるものであっても類似の物性を有していることから、上記カラム精製は困難であり、歩留りが低下する原因となる。
【0017】
本発明の課題は、両末端に互いに異なる官能基を高純度で含有する分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール、前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体、及び分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールと生体機能性分子とが結合されてなるヘテロ型単分散ポリエチレングリコール結合体、並びに、前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、式(1)に示すように、両末端にそれぞれ異なる官能基を高純度で有し、分岐部位が有する3つの結合点のうちの1つに単分散ポリエチレングリコールが結合していない分岐型単分散ポリエチレングリコールが得られることを見出した。さらに、前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールを製造するための中間体を、末端に特定の官能基を用いて合成することにより、カラムクロマトグラフィー等の精製方法を用いなくとも、簡便な分液抽出のみで、両末端に異なる官能基を高純度で有する分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわち、本発明は、下記の(1)~(11)を提供する。
(1) 式(1)で表されることを特徴とする、分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【化1】
(式(1)中、
X
1、Y
1は、それぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団X
1が含む前記官能基と原子団Y
1が含む前記官能基とは互いに異なる。
nは6~30の整数である。
Eは、L
2に対して2価の結合価数を有し、L
3に対して1価の結合価数を有する分岐部位であり、グリセリン部位を表す。
L
1、L
2は、それぞれ独立して、単結合または2価の有機基を表す。
L
3は、単結合、-L
4-(CH
2)
m1-または-L
4-(CH
2)
m2-L
5-(CH
2)
m3-を表し、L
4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L
5は、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1、m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。)
【0020】
(2) L3が、-L4-(CH2)m1-または-L4-(CH2)m2-L5-(CH2)m3-を表し、L4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L5は、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1,m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表すことを特徴とする、(1)の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【0021】
(3) 式(1)中に含まれるL2が、エーテル結合であることを特徴とする、(1)または(2)の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【0022】
(4) 式(2)で表される、(1)または(2)の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール。
【化2】
(式(2)中、
X
1、Y
1は、それぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団X
1が含む前記官能基と原子団Y
1が含む前記官能基とは互いに異なる。
nは6~30の整数である。
L
1は、単結合または2価の有機基を表す。
L
3は、単結合、-L
4-(CH
2)
m1-または-L
4-(CH
2)
m2-L
5-(CH
2)
m3-を表し、L
4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L
5は、アミド結合またはウレタン結合を表し、m1,m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。)
【0023】
(5) 式(3)で表される、(4)の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体。
【化3】
(式(3)中、
nは6~30の整数を表す。
Y
2は、-NH
2または-O-(CH
2)
m4-NH
2で表され、m4は、1~5の整数を表す。)
【0024】
(6) (5)の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール中間体を製造する方法であって、
下記式(4)で表される単分散ポリエチレングリコール誘導体と下記式(5)で表される化合物とを、水溶液中でのpKaが15~20である塩基触媒を用いてカップリングさせ、下記式(6)で表される化合物を得る工程(1)と、
【化4】
(式(4)中、
Aは水酸基の保護基、
Bは脱離基である。
nは6~30の整数を表す。)
【化5】
(式(5)中、
Zは、-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1はアミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。)
【化6】
(式(6)中、
Aは水酸基の保護基、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1はアミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(6)で表される化合物の保護基Aを脱保護させ、下記式(7)で表される化合物を得る工程(2)と、
【化7】
(式(7)中、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1は、アミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(7)で表される化合物に分液精製を施す工程(3)と、
前記式(7)で表される化合物に脱保護処理あるいは還元処理を施して式(3)で表される前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得る工程(4)と、
を上記の順で含むことを特徴とする分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールの製造方法。
【0025】
(7) 前記塩基触媒が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシドおよびナトリウムt-ブトキシドのいずれかであることを特徴とする、(6)の方法。
【0026】
(8) (1)~(4)のいずれかの分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールに、生体機能性分子が結合されていることを特徴とする、分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール結合体。
【0027】
(9) 式(40)で表される、(4)の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体。
【化8】
(式(40)中、
nは6~30の整数を表す。
Y
2は、-NH
2または-O-(CH
2)
m4-NH
2で表され、m4は、1~5の整数を表す。)
【0028】
(10) (9)の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール中間体を製造する方法であって、
下記式(41)で表される単分散ポリエチレングリコール誘導体と下記式(42)で表される化合物とを、水溶液中でのpKaが15~20である塩基触媒を用いてカップリングさせ、下記式(43)で表される化合物を得る工程(1’)と、
【化9】
(式(41)中、
Zは、-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1はアミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
Bは脱離基である。
nは6~30の整数を表す。)
【化10】
(式(42)中、
Aは水酸基の保護基)
【化11】
(式(43)中、
Aは水酸基の保護基、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1はアミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(43)で表される化合物の保護基Aを脱保護させ、下記式(44)で表される化合物を得る工程(2’)と、
【化12】
(式(44)中、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1は、アミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
前記式(44)で表される化合物に脱保護処理あるいは還元処理を施して式(40)で表される前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得る工程(3’)と、
前記式(40)で表される化合物に分液精製を施す工程(4’)と、
を上記の順で含むことを特徴とする分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールの製造方法。
【0029】
(11) 前記塩基触媒が、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシドおよびナトリウムt-ブトキシドのいずれかであることを特徴とする、(10)の方法。
【発明の効果】
【0030】
本発明の前記式(1)または前記式(2)で表される化合物は、両末端にそれぞれ異なる官能基を高純度で有するため、ADCとして使用する場合、目的とする抗体又は薬剤のどちらかが欠損した化合物の生成が抑制され、前記ADCの効果の向上が期待できる。
【0031】
また、本発明の前記式(1)または前記式(2)で表される化合物の製造方法では、分岐部位が有する3つの結合点のうちの1つに単分散ポリエチレングリコールが結合していないため、両末端にそれぞれ異なる官能基を高純度で有する前記式(1)または前記式(2)を容易に得ることができる。
【0032】
さらに、本発明の前記式(3)で表される化合物の製造方法では、前記工程(1)において特定の塩基触媒を用いることで、副反応を抑制し、かつ前記工程(1)~(4)をこの順で行うことで、工程(1)で過剰に加えた前記式(4)で表される化合物由来の不純物を、分液精製のみで除去することができるため、鎖長純度および官能基純度の高い前記式(3)で表される化合物を容易に得ることができる。
また、記工程(1’)において特定の塩基触媒を用いることで、副反応を抑制し、かつ前記工程(1’)~(4’)をこの順で行うことで、工程(1’)で過剰に加えた前記式(41)で表される化合物由来の不純物を、分液精製のみで除去することができるため、鎖長純度および官能基純度の高い前記式(40)で表される化合物を容易に得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
本発明における分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールとは、末端に2種の官能基を高純度で有し、分岐部位が有する3つの結合点のうちの1つに単分散ポリエチレングリコールが結合していない化合物である。また、末端官能基が高純度であることとは、特定の組み合わせの官能基を有する化合物の純度(以下、官能基純度という)が95%以上となることである。さらに、単分散ポリエチレングリコールとは、特定のエチレングリコール鎖長を有する化合物の純度(以下、鎖長純度という)が90%以上となることである。
【0034】
この分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールは式(1)で表される。
【化13】
【0035】
式(1)において、X1、Y1はそれぞれ、生体機能性分子に存在する官能基と反応して共有結合を形成する官能基を少なくとも含む原子団であり、原子団X1が含む前記官能基と原子団Y1が含む前記官能基とは互いに異なる。nは単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表す6~30の整数である。Eは、L1に対して2価の結合価数を有し、L3に対して1価の結合価数を有する分岐部位であり、グリセリン部位を表す。L1、L2はそれぞれ独立して単結合または2価の有機基を表す。L3は、単結合、-L4-(CH2)m1-または-L4-(CH2)m2-L5-(CH2)m3-を表し、L4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L5は、アミド結合またはウレタン結合を表す。m1、m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。
【0036】
前記式(1)において、X1及びY1は、互いに異なる官能基であり、分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールによる修飾の対象となる生体機能性分子(タンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬、遺伝子、オリゴ核酸等を含む核酸化合物、核酸医薬、抗がん剤、低分子薬物等のその他薬剤)に存在する官能基と反応して共有結合を形成し得る官能基であれば特に制限は無い。中でも、X1及びY1としては、それぞれ独立に、タンパク質に代表される天然の生体機能性分子に存在する基(アミノ基、チオール基、アルデヒド基、カルボキシル基等)や前記生体機能性分子に人工的に導入可能な基(マレイミド基、ケトン基、アジド基、アルキニル基等)に温和な条件で、かつ、高い反応効率で反応可能な官能基であることが好ましく、より具体的には、アルデヒド基、マレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、カルボキシル基、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基、アリル基、ビニル基、アルキニル基、アジド基が好ましい。さらに、反応効率等を考慮すると、X1及びY1としては、マレイミド基、活性エステル基、活性カーボネート基、アルキニル基、アジド基、ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基であることがより好ましい。
【0037】
また、X1及びY1としては、それぞれ独立に、対象とする生体機能性分子に存在する官能基がアミノ基である場合には、アルデヒド基、活性エステル基、活性カーボネート基、カルボキシル基、ケトン基であることが好ましく、対象とする生体機能性分子に存在する官能基がチオール基である場合には、マレイミド基、ビニルスルホン基、ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基、アリル基、ビニル基であることが好ましく、対象とする生体機能性分子に存在する官能基がアルデヒド基、ケトン基である場合には、アミノ基であることが好ましく、対象とする生体機能性分子に存在する官能基がカルボキシル基である場合には、アミノ基、アミノオキシ基、チオール基であることが好ましく、対象とする生体機能性分子に存在する官能基がマレイミド基である場合には、チオール基であることが好ましく、対象とする生体機能性分子に存在する官能基がアジド基である場合にはアルキニル基であることが好ましく、対象とする生体機能性分子に存在する官能基がアルキニル基である場合にはアジド基であることが好ましい。
【0038】
X1とY1との好ましい組み合わせとしては、例えばX1が活性エステル基である場合には、Y1はマレイミド基、アジド基、アルキニル基、ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基、ビニルスルホン基、オキシアミノ基、チオール基、アリル基、ビニル基であることが好ましく、X1が活性カーボネート基である場合には、Y1はマレイミド基、アジド基、アルキニル基、ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基、ビニルスルホン基、オキシアミノ基、チオール基、アリル基、ビニル基であることが好ましく、X1がマレイミド基である場合には、Y1は活性エステル基、活性カーボネート基、アジド基、アルキニル基、アルデヒド基、カルボキシル基、アミノ基、オキシアミノ基、ケトン基であることが好ましく、X1がアジド基である場合には、Y1は活性エステル基、活性カーボネート基、マレイミド基、ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基、アルデヒド基、ビニルスルホン基、カルボキシル基、アミノ基、オキシアミノ基、チオール基、アリル基、ビニル基、ケトン基であることが好ましく、X1がアルキニル基である場合には、Y1は活性エステル基、活性カーボネート基、マレイミド基、ヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基、アルデヒド基、ビニルスルホン基、カルボキシル基、アミノ基、オキシアミノ基、チオール基、アリル基、ビニル基、ケトン基であることが好ましい。
【0039】
前記式(1)において、L1は、ポリエチレングリコール鎖とX1との結合を担うリンカーであり、共有結合によって構成される部位であれば特に制限は無いが、好ましくは、単結合、二価の飽和炭化水素基、及びウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合もしくはこれらを含む二価の飽和炭化水素基が挙げられる。前記飽和炭化水素基としては、炭素数が10以下であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0040】
式(1)において、L3は、Y1と分岐部位Eとの結合を担うリンカーであり、単結合、-L4-(CH2)m1-または-L4-(CH2)m2-L5-(CH2)m3-で表される。L4は、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合のいずれかを表し、L5は、アミド結合またはウレタン結合を表す。m1、m2、m3はそれぞれ独立して1~5の整数を表す。
【0041】
本発明におけるL4がエーテル結合であり、L5がアミド結合である場合のL3の好ましい例としては、次式:
-O-(CH2)m2-C(O)NH-(CH2)m3- ・・・(8)
-O-(CH2)m2-NHC(O)-(CH2)m3- ・・・(9)
のいずれかで表される。
【0042】
本発明におけるマレイミド基とは、L
1、L
3も含めて次式:
【化14】
で表される基であり、チオール基等の求核性基と反応する基である。前記式(10)中、R
1としては、水素原子又はメチル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0043】
本発明におけるX
1とY
1がマレイミド基である場合、-L
1-X
1および-L
3-Y
1の好ましい例としては、次式:
【化15】
で表され、前記式(11)中、aは1~5の整数を示し、R
1は前記式(10)中のR
1と同義である。
【0044】
本発明における活性エステル基とは、L
1、L
3も含めて次式:
【化16】
で表される基であり、アミノ基等の求核性基と反応する。前記式(12)中、R
2としては、フェニル基、3-ピリジル基、スクシンイミド基、2-ベンゾチアゾール基、又は1-ベンゾトリアゾール基が好ましく、スクシンイミド基又は1-ベンゾトリアゾール基がより好ましく、スクシンイミド基が最も好ましい。
【0045】
本発明におけるX
1とY
1が活性エステル基である場合、-L
1-X
1および-L
3-Y
1の好ましい例としては、次式:
【化17】
で表され、前記式(13)中、bは1~5の整数を示し、R
2は前記式(12)中のR
2と同義である。
【0046】
本発明における活性カーボネート基とは、L
1、L
3も含めて次式:
【化18】
で表される基であり、アミノ基等の求核性基と反応する。前記式(14)中、R
3としては、フェニル基、3-ピリジル基、スクシンイミド基、4-ニトロフェニル基、2-ベンゾチアゾール基、又は1-ベンゾトリアゾール基が好ましく、スクシンイミド基又は1-ベンゾトリアゾール基がより好ましく、スクシンイミド基が最も好ましい。
【0047】
本発明におけるX
1とY
1が活性カーボネート基である場合、-L
1-X
1および-L
3-Y
1の好ましい例としては、次式:
【化19】
で表され、前記式(15)中、R
3は前記式(14)中のR
3と同義である。
【0048】
本発明におけるアルキニル基とは、L
1、L
2も含めて次式:
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
のうちのいずれかで表される基であり、アジド基等と反応する。前記式中、R
4としては、炭素数8以下の飽和炭化水素基又は水素原子が好ましく、水素原子がより好ましい。
【0049】
本発明におけるX
1とY
1がアルキニル基である場合、-L
1-X
1および-L
3-Y
1の好ましい例としては、次式:
【化24】
【化25】
【化26】
で表され、前記式(20)中、cは2~5の整数を示し、R
4は前記式(21)中のR
4と同義である。また、前記式(22)中、dは1~6の整数を示す。
【0050】
本発明におけるX
1とY
1がヨードアセトアミド基、ブロモアセトアミド基である場合のX
1とY
1とは、L
1、L
3も含めて次式:
【化27】
【化28】
で表され、チオール基と反応する。
【0051】
nは単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表す6~30の整数である。ADC用のリンカーとして使用する観点からは、nは6~24の整数であることが好ましい。
【0052】
Eは、L2に対して2価の結合価数を有し、L3に対して1価の結合価数を有する分岐部位であり、グリセリン部位を表す。
【0053】
本発明におけるグリセリン部位とは、L
2、L
3も含めて次式:
【化29】
【化30】
のいずれかで表され、原料純度の観点からは、式(25)で表される構造であることが好ましい。
【0054】
L2はポリエチレングリコール鎖と分岐部位Eとの結合を担うリンカーであり、共有結合によって構成される部位であれば特に制限は無いが、単結合、二価の飽和炭化水素基、及びウレタン結合、アミド結合、エーテル結合、カーボネート結合もしくはこれらを含む二価の飽和炭化水素基等が挙げられ、ウレタン結合、アミド結合、エーテル結合のいずれかであることが好ましく、原料純度の観点からは、エーテル結合であることがより好ましい。前記飽和炭化水素基としては、炭素数が10以下であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0055】
前記式(1)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールの好ましい例としては、下記式(28)で表される化合物が挙げられる。
【化31】
【0056】
本発明における分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体は、下記式(29)で表される。
【化32】
【0057】
前記式(29)において、nは6~30の整数を表す。X2及びY2は、互いに異なる官能基であり、X2は水素、もしくは二価の飽和炭化水素基を含むアミノ基、カルボキシル基のいずれかを表す。Y2は、-NH2、-O-(CH2)m4-NH2、-COOH、-O-(CH2)m6-COOHのいずれかを表す。m4およびm6は、1~5の整数を表す。L2は、二価の有機基を表す。Eは、L2に対して2価の結合価数を有し、Y2に対して1価の結合価数を有する分岐部位であり、グリセリン部位を表す。
【0058】
前記式(29)において、nは単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表す6~30の整数である。ADC用のリンカーとして使用する観点からは、nは6~24の整数であることが好ましい。
【0059】
前記式(29)において、X2は、式(1)中のX1へと変換可能な官能基であれば特に限定は無いが、水素、もしくは二価の飽和炭化水素基を含むアミノ基、カルボキシル基、のいずれかであることが好ましく、水素であることがより好ましい。前記飽和炭化水素基としては、炭素数が10以下であることが好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、テトラメチレン基、ブチレン基、イソブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基等が挙げられる。
【0060】
前記式(29)において、Y2は、式(1)のY1へと変換可能な官能基であれば特に限定は無いが、-NH2、-O-(CH2)m4-NH2、-COOH、-O-(CH2)m6-COOHのいずれかであることが好ましく、合成容易性の観点からは、-NH2または-O-(CH2)m4-NH2であることがより好ましい。m4およびm6は、1~5の整数を表す。
【0061】
前記式(29)におけるX2とY2は、前記式(1)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールを合成する観点から、互いに異なる官能基であることが好ましい。X2とY2との好ましい組み合わせとしては、例えばY2が-COOHまたは-O-(CH2)m6-COOHである場合には、X2は水素、もしくは二価の飽和炭化水素基を含むアミノ基であることが好ましく、Y2が-NH2または-O-(CH2)m4-NH2である場合には、X2は水素、もしくは二価の飽和炭化水素基を含むカルボキシル基であることが好ましい。
【0062】
前記式(29)において、L2は、ポリエチレングリコール鎖と分岐部位Eとの結合を担うリンカーであり、前記式(1)中のL2と同義である。原料純度の観点からは、前記式(29)におけるL2としては、エーテル結合であることが好ましい。
【0063】
Eは、L2に対して2価の結合価数を有し、Y2に対して1価の結合価数を有する分岐部位であり、前記式(25)あるいは前記式(26)で表されるグリセリン部位である。原料純度の観点からは、Eは前記式(25)で表される分岐部位であることが好ましい。
【0064】
前記式(29)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体の好ましい例としては、前記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【化33】
【0065】
前記式(29)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を用いて前記式(1)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールを得る方法としては、適宜公知の合成方法で得られたものを用いることができる。例えば、マレイミド基を導入する方法としては、3-マレイミドプロピオン酸やマレイミド酪酸等を1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩等の縮合剤と反応させた後、式(29)で表される本発明の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のアミノ基と反応させる方法や、トリエチルアミン等の塩基存在下、式(29)で表される本発明の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のアミノ基に対して3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジルやマレイミド酪酸N-スクシンイミジルを反応させる方法が挙げられる。
【0066】
また、例えば、活性エステル基を導入する方法としては、式(29)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のカルボキシル基に対して、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩等の縮合剤存在下、N-ヒドロキシスクシンイミドを反応させる方法や、トリエチルアミン等の塩基存在下、式(29)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体の水酸基に対して、炭酸ジスクシンイミジルと反応させる方法等が挙げられる。
【0067】
さらに、例えば、ヨードアセトアミド基を導入する方法としては、式(29)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のアミノ基に対して、トリエチルアミン等の塩基存在下、二(ヨード酢酸)無水物等を反応させる方法が挙げられる。
【0068】
さらにまた、例えば、アルキニル基を導入する方法としては、式(29)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のアミノ基に対して、トリエチルアミン等の塩基存在下、Propargyl chloroformate、(1R,8S,9S)-Bicyclo[6.1.0]non-4-yn-9-ylmethyl N-succinimidyl carbonate、Dibenzocyclooctyne-N-hydroxysuccinimidyl ester等を反応させる方法が挙げられる。
【0069】
前記式(29)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を用いて前記式(1)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールを典型的な例としては、以下のような工程が挙げられる。
【0070】
(a)末端に活性カーボネート基、マレイミド基を有する化合物の合成
【化34】
【0071】
前記式(30)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のアミノ基へ、クロロホルム溶媒中、トリエチルアミン存在下、3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジルを反応させ、下記式(31)で表される化合物を得る。
【化35】
【0072】
前記式(31)で表される化合物の水酸基へ、ジクロロメタン溶媒中、トリエチルアミン存在下、炭酸ジスクシンイミジルを反応させ、下記式(32)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールを得る。式(32)で表される化合物は、前記式(1)中のX
1が活性エステル基であり、Y
1がマレイミド基である化合物と同義である。
【化36】
【0073】
(b)末端に活性エステル基、ヨードアセトアミド基を有する化合物の合成
【化37】
【0074】
前記式(33)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のアミノ基へ、クロロホルム溶媒中、トリエチルアミン存在下、二(ヨード酢酸)無水物を反応させ、下記式(34)で表される化合物を得る。
【化38】
【0075】
前記式(34)で表される化合物のカルボキシル基へ、ジクロロメタン溶媒中、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩存在下、N-ヒドロキシスクシンイミドを反応させ、下記式(35)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールを得る。式(35)で表される化合物は、前記式(1)中のX
1が活性エステル基であり、Y
1がヨードアセトアミド基である化合物と同義である。
【化39】
【0076】
(c)末端にアルキニル基、活性エステル基を有する化合物の合成
【化40】
【0077】
前記式(36)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体のアミノ基へ、クロロホルム溶媒中、トリエチルアミン存在下、(1R,8S,9S)-Bicyclo[6.1.0]non-4-yn-9-ylmethyl N-succinimidyl carbonateを反応させ、下記式(37)で表される化合物を得る。
【化41】
【0078】
前記式(37)で表される化合物のカルボキシル基へ、ジクロロメタン溶媒中、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩存在下、N-ヒドロキシスクシンイミドを反応させ、下記式(38)で表される分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコールを得る。式(38)で表される化合物は、前記式(1)中のX
1がアルキニル基であり、Y
1が活性エステル基である化合物と同義である。
【化42】
【0079】
更に、本発明における分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体は、下記式(40)で表される。
【化43】
(式(40)中、
nは6~30の整数を表す。
Y
2は、-NH
2または-O-(CH
2)
m4-NH
2で表され、m4は、1~5の整数を表す。)
【0080】
[鎖長純度の測定]
前記式(1)で表される化合物の鎖長純度は、前記式(3)で表される化合物の逆相クロマトグラフィーにより測定した鎖長純度を用いた。これは、前記式(1)で表される化合物がX1およびY1に活性エステル基または活性カーボネート基を含む化合物である場合、測定中に分解して逆相クロマトグラフィーによる正確な鎖長純度の測定ができないためである。尚、前記式(3)で表される化合物から前記式(1)で表される化合物を得る反応は、酸塩化物や酸無水物との縮合反応であるため、鎖長純度に影響を及ぼさない。
【0081】
[官能基純度の測定]
前記式(1)で表される化合物の官能基純度は、前記式(3)で表される化合物の官能基純度を基に1H-NMR測定により求められる。これは、上記と同様に、前記式(1)で表される化合物の逆相クロマトグラフィーによる正確な官能基純度の測定ができないためである。測定方法としては、まず前記式(3)で表される化合物の逆相クロマトグラフィーにより、前記式(3)で表される化合物の官能基純度を測定する。次に前記式(1)で表される化合物および前記式(3)で表される化合物の1H-NMR測定を行うことで官能基X1、Y1の導入率を求め、下記式(F1):
式(1)で表される化合物の官能基純度=
{(式(3)で表される化合物の官能基純度)×(X1の導入率)×(Y1の導入率)}
・・・(F1)
により官能基純度を算出する。
【0082】
前記逆相クロマトグラフィー測定においては、検出器に質量分析計を用いて各ピークの同定を行った後に、検出器に示差屈折率計を用いて算出された各ピークの面積値より純度を求める。測定条件としては、各ピークが分離して検出されていれば特に制限はないが、検出器に質量分析計を用いた場合は、例えば下記の条件で測定を行う。
【0083】
検出器:Waters(株)社製Quattro micro タンデム型質量分析計
カラム:東ソー(株)社製 TSKgel ODS-80Ts (粒子径5 μm、カラムサイズ 4.6mm×25cm)
展開溶媒:5mM酢酸アンモニウム メタノール/蒸留水=j/k
jおよびkは、メタノールと蒸留水の体積比を表す。jおよびkは、測定する化合物の単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数nや末端官能基の種類により適宜選択される。
【0084】
検出器に示差屈折率計を用いた場合は、例えば下記の条件で測定を行う。
検出器:東ソー(株)社製 RI-8020
カラム:東ソー(株)社製 TSKgel ODS-80Ts (粒子径 5μm、カラムサイズ 4.6mm×25cm)
展開溶媒:5mM酢酸アンモニウム メタノール/蒸留水=j/k
jおよびkは、メタノールと蒸留水の体積比を表し、検出器に質量分析計を用いた場合の測定条件に用いるjおよびkと同義である。
【0085】
前記1H-NMR測定において、官能基X1およびY1の導入率は、前記式(3)から前記式(1)を得る反応で影響を受けないピークの積分値を基準とし、官能基X1およびY1に由来するピークの積分値より算出する。基準とするピークは、官能基X1およびY1の種類によって適宜選択される。
【0086】
<分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール中間体の製造方法>
前記特定の条件を満たす本発明の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体は、本発明の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体の製造方法により得ることができる。前記式(3)で表される本発明の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体の製造方法は、下記の工程(1)、工程(2)、工程(3)及び工程(4)を少なくともこの順で含むことを特徴とするものである。
【0087】
[工程(1)]
本発明に係る工程(1)は、下記式(4)で表される単分散ポリエチレングリコール誘導体
【化44】
と下記式(5)で表される化合物
【化45】
とを、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシドのいずれかを塩基触媒として用いてカップリングさせ、下記式(6)
【化46】
で表される化合物を得る工程である。
【0088】
前記式(4)で表す単分散ポリエチレングリコールは、公知の方法が利用可能であり、例えばPolym. Chem., 2016, 7, 2389_2394に記載されている方法が有効である。
【0089】
Aは水酸基の保護基であり、前記カップリングでの塩基触媒に対して安定な保護基であれば特に制限は無いが、例えばメトキシメチル基、ベンジルオキシメチル基、2-メトキシエトキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、アリル基、ベンジル基、4-メトキシベンジル基、トリメチルベンジル基、トリフェニルメチル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基、t-ブチルジフェニルシリル基等が挙げられる。合成容易性の観点からは、Aはベンジルオキシメチル基、テトラヒドロピラニル基、ベンジル基、トリメチルベンジル基、トリフェニルメチル基が好ましく、ベンジル基、トリフェニルメチル基がより好ましい。
【0090】
Bは脱離基であり、前記カップリングにおいて反応性を有する脱離基であれば特に制限は無いが、例えばクロロ基、ブロモ基、ヨード基、メシラート基、トシラート基、クロロメタンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基等が挙げられる。合成容易性の観点からは、Bはブロモ基、メシラート基、トシラート基、クロロメタンスルホナート基が好ましく、メシラート基がより好ましい。
【0091】
nは単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表す6~30の整数である。ADC用のリンカーとして使用する観点からは、nは6~24の整数であることが好ましい。
【0092】
前記式(5)で表される化合物は、市販の2,2-ジメチル-1,3-ジオキソラン-4-メタノールより適宜公知の方法を利用することで合成可能である。
【0093】
前記式(5)で表される化合物において、Zは-Z1または-O-(CH2)m5-Z1で表される。m5は、1~5の整数を表す。合成容易性の観点からは、Zは-Z1、-O-(CH2)2-Z1、-O-(CH2)3-Z1、-O-(CH2)5-Z1のいずれかであることが好ましい。Z1は前記カップリングでの塩基触媒に対して安定な官能基であれば特に制限されないが、前記式(4)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を製造する観点からは、Z1はアミノ基に変換可能な窒素原子を含む原子団であることが好ましく、例えばアミノ基の保護体、アジド基、シアノ基が好ましい。
【0094】
また、アミノ基の保護体とは、アミノ基と保護基との結合体のことである。保護基としては、前記カップリングでの塩基触媒に対して安定な保護基であれば特に制限されないが、例えば9-フルオレニルメチルカルボニル基、t-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ジベンジル基等が挙げられ、好ましくはt-ブトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、ジベンジル基が挙げられる。
【0095】
前記式(4)中の保護基Aと、前記式(5)中のZ1との組み合わせとしては、Z1が工程(2)における保護基Aの脱保護条件に対して安定であれば特に制限は無い。工程(2)における脱保護が酸性条件下での加水分解反応である場合、Z1としては、アミノ基の9-フルオレニルメチルカルボニル基保護体、アミノ基のt-ブトキシカルボニル基保護体、アミノ基のベンジルオキシカルボニル基保護体、アミノ基のジベンジル基保護体、アジド基、シアノ基であることが好ましく、工程(2)における脱保護が接触水素添加である場合、Z1としては、アミノ基の9-フルオレニルメチルカルボニル基保護体、アミノ基のt-ブトキシカルボニル基保護体であることが好ましい。
【0096】
前記カップリングにおける塩基触媒としては、反応が進行する塩基触媒であれば特に制限は無いが、水溶液中でのpKaが15~20の塩基触媒であることが好ましく、例えば水酸化カリウム(pKa=15.7)、水酸化ナトリウム(pKa=15.7)、カリウムt-ブトキシド(pKa=19)、ナトリウムt-ブトキシド(pKa=15.7)、ナトリウムメトキシド(pKa=15.5)、ナトリウムエトキシド(pKa=16)等が挙げられる。より好ましくは、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシド、ナトリウムt-ブトキシドが挙げられる。水素化ナトリウム等の、水溶液中でのpKaが20を超える塩基では、塩基触媒との反応により前記式(5)で表される分岐部位が分解し、カップリングにおける収率や、純度が低下する。他方、トリエチルアミン等の、水溶液中でのpKaが15未満の塩基では、前記カップリングの進行が遅くなる傾向にある。また、前記塩基触媒の使用量としては、反応が進行すれば問題ないが、前記式(5)で表される化合物に対して、通常、モル比で2.0~10倍、好ましくは2.1~5倍である。前記塩基触媒の使用量が前記下限未満である場合、反応が完全に進行せず、前記式(5)で表される化合物の水酸基に単分散ポリエチレングリコール鎖が導入されずに水酸基が残る傾向がある。他方、前記上限を超える場合、過剰な塩基によって副反応が進行する恐れがある。
【0097】
前記カップリングは、溶媒中で反応を行うことができる。前記溶媒としては、前記式(4)及び前記式(5)で表される化合物と反応しない溶媒であれば特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、DMF、ジクロロメタン、クロロホルム等の非プロトン性極性溶媒、及びこれらの混合物が挙げられる。前記溶媒の使用量としては、前記式(4)で表される化合物に対して、通常、質量比で1~100倍、好ましくは2~50倍、最も好ましくは3~30倍量である。前記溶媒の使用量が前記上限を超える場合には、前記カップリングの進行が遅くなる傾向にある。
【0098】
前記カップリングの反応温度としては、使用する溶媒等により異なるが、通常0~100℃である。前記反応温度が前記下限未満である場合には、反応の進行が遅くなる恐れがあり、他方、前記上限を超える場合には、過剰な温度によって副反応が進行する恐れがある。また、前記カップリングの反応時間としては、前記反応温度等の条件により異なるが、通常1~48時間程度が好ましい。
【0099】
前記カップリングにおける前記式(4)で表される化合物の使用量としては、前記式(5)表される化合物に対して、通常、モル比で2.0~10倍、好ましくは2.1~4倍である。前記式(4)で表される化合物の使用量が前記下限未満である場合、反応が完全に進行せず、前記式(5)で表される化合物の水酸基に単分散ポリエチレングリコール鎖が導入されずに水酸基が残る傾向がある。他方、上限を超える場合、過剰の前記式(4)が無駄になり、製造コストが増大するだけでなく、過剰の前記式(4)を反応生成物である前記式(6)と分離することが困難であるため、歩留まりが低下する。
【0100】
工程(1)においては、このようなカップリングにより、前記式(6)で表される化合物を得ることができる。前記化合物は、そのまま未精製で次の工程(2)に用いてもよく、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや吸着剤処理等によって精製してから用いてもよいが、本発明においては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製をしなくとも高純度の本発明のヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを得ることができる。
【0101】
[工程(2)]
本発明に係る工程(2)は、前記式(6)で表される化合物の保護基Aを脱保護させ、下記式(7)で表される化合物を得る工程である。
【化47】
【0102】
前記式(7)中、Zは-Z1または-O-(CH2)m5-Z1で表され、Z1は、アミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかである。m5は1~5の整数を表す。nは6~30の整数を表す。前記アミノ基の保護体は、前記式(6)で表される化合物中のZ1に由来するものであり、前記式(6)中のZ1と同義である。
【0103】
前記式(6)中の保護基Aを脱保護する方法は、保護基の種類によって異なるが、公知の方法を利用して脱保護を行う方法が挙げられる。例えば、Aがメトキシメチル基やテトラヒドロピラニル基、トリチル基等のエーテル系保護基の場合、脱保護は酸性条件下での加水分解による方法が挙げられる。また、例えば、Aがベンジル基、トリチル基等のベンジル基を有する保護基の場合、脱保護は触媒存在下での接触水素添加による方法が挙げられる。さらに、例えば、Aがトリエチルシリル基等のシリル系保護基の場合、脱保護はフッ化テトラブチルアンモニウム等のフッ化物イオンによる脱シリル化反応が挙げられる。
【0104】
前記脱保護が加水分解である場合、溶媒中で反応を行うことができる。前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール等のプロトン性極性溶媒、及びこれらの混合物が挙げられる。また、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、DMF等、水と任意の割合で混和する有機溶媒を含んでいてもよい。前記溶媒の使用量としては、前記式(6)で表される化合物に対して、通常、質量比で1~100倍、好ましくは2~50倍、最も好ましくは3~30倍量である。前記溶媒の使用量が前記上限を超える場合には、前記加水分解の進行が遅くなる傾向にある。前記加水分解は、酸触媒を用いて反応を行う。前記酸触媒としては、塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸や、p-トルエンスルホン酸一水和物やメタンスルホン酸等の有機酸、アンバーリスト等の陽イオン交換樹脂が挙げられる。前記酸触媒の当量としては、前記式(6)で表される化合物に対して、通常、モル比で0.1~2倍、好ましくは0.2~1倍である。前記加水分解の反応温度としては、使用する溶媒等により異なるが、通常0~100℃である。前記反応温度が前記下限未満である場合には、反応の進行が遅くなる恐れがあり、他方、前記上限を超える場合には、過剰な温度によって副反応が進行する恐れがある。また、前記加水分解の反応時間としては、前記反応温度等の条件により異なるが、通常1~48時間程度が好ましい。
【0105】
前記脱保護が接触水素添加である場合、触媒存在下で反応を行う。前記触媒としては、パラジウム炭素や水酸化パラジウム炭素等が挙げられる。前記触媒の当量としては、前記式(6)で表される化合物に対して、通常、重量比で0.01~1倍、好ましくは0.05~0.2倍である。前記接触水素添加は、溶媒中で反応を行うことができる。前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、DMF及びこれらの混合物が挙げられる。前記溶媒の使用量としては、前記式(6)で表される化合物に対して、通常、質量比で1~100倍、好ましくは2~50倍、最も好ましくは3~30倍量である。前記溶媒の使用量が前記上限を超える場合には、前記接触水素添加の進行が遅くなる傾向にある。前記接触水素添加の反応温度としては、使用する溶媒等により異なるが、通常0~100℃である。前記反応温度が前記下限未満である場合には、反応の進行が遅くなる恐れがあり、他方、前記上限を超える場合には、過剰な温度によって副反応が進行する恐れがある。また、前記加水分解の反応時間としては、前記反応温度等の条件により異なるが、通常1~48時間程度が好ましい。
【0106】
前記脱保護が脱シリル化反応である場合、酸加水分解による脱保護とフッ化物イオンによる脱保護が挙げられる。酸加水分解による脱保護は、前記エーテル系保護基の加水分解による脱保護と同様の方法で行うことができる。フッ化物イオンによる脱保護は、フッ化テトラブチルアンモニウム、フッ化水素等のフッ化物イオンを有する試薬を用いて行う。前記フッ化物イオンを有する試薬の当量としては、前記式(6)で表される化合物に対して、通常、モル比で1.0~2倍、好ましくは1.1~1.5倍である。前記フッ化物イオンによる脱保護は、溶媒中で反応を行うことができる。前記溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、DMF及びこれらの混合物が挙げられる。前記溶媒の使用量としては、前記式(6)で表される化合物に対して、通常、質量比で1~100倍、好ましくは2~50倍、最も好ましくは3~30倍量である。前記溶媒の使用量が前記上限を超える場合には、前記接触水素添加の進行が遅くなる傾向にある。前記フッ化物イオンによる脱保護の反応温度としては、使用する溶媒等により異なるが、通常0~100℃である。前記反応温度が前記下限未満である場合には、反応の進行が遅くなる恐れがあり、他方、前記上限を超える場合には、過剰な温度によって副反応が進行する恐れがある。また、前記加水分解の反応時間としては、前記反応温度等の条件により異なるが、通常1~48時間程度が好ましい。
【0107】
工程(2)においては、このような脱保護により、前記式(7)で表される化合物を得ることができる。前記化合物は、そのまま未精製で次の工程(3)に用いてもよく、シリカゲルカラムクロマトグラフィーや吸着剤処理等によって精製してから用いてもよいが、本発明においては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる精製をしなくとも高純度の本発明のヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを得ることができる。
【0108】
[工程(3)]
本発明に係る工程(3)は、前記式(7)で表される化合物を含有する反応生成物に分液精製を施す工程である。
【0109】
例えば、前記工程(1)において、過剰に加えた前記式(4)で表される化合物は、反応生成物である前記式(6)で表される化合物中に残存する。この前記式(4)で表される化合物の保護基Aは、工程(2)において前記式(6)で表される化合物と同様に脱保護され、下記式(39)で表される化合物となる。
【0110】
【0111】
前記式(39)中、Bは脱離基であり、nは単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表す6~30の整数である。前記脱離基は、前記式(4)で表される化合物中のBに由来するものであり、前記式(4)中のBと同義である。
【0112】
前記工程(3)は、有機溶媒に溶解した前記式(7)で表される目的の化合物に含まれる前記式(39)で表される化合物を、水溶液で分液洗浄する工程である。
【0113】
前記工程(3)に用いる有機溶媒としては、酢酸エチル、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられ、目的の化合物の溶解性の観点からは、クロロホルム、ジクロロメタンが好ましい。前記有機溶媒の使用量としては、前記式(7)で表される化合物と前記式(39)で表される化合物とを含む反応生成物に対して、通常、質量比で2~30倍、好ましくは3~20倍である。前記有機溶媒の使用量が前記下限未満である場合には、前記式(7)で表される化合物が水溶液に溶け込む恐れがあり、他方、前記上限を超える場合には、前記式(39)で表される化合物の洗浄効率が低下する傾向にある。
【0114】
前記工程(3)に用いる水溶液としては、前記式(39)で表される化合物を溶解可能であれば特に限定されず、例えば、イオン交換水、塩化ナトリウム、塩化カリウム等の低塩濃度の水溶液が挙げられる。前記水溶液の使用量としては、前記式(7)で表される化合物と前記式(39)で表される化合物とを含む反応生成物に対して、通常、質量比で2~30倍、好ましくは3~20倍である。前記水溶液の使用量が前記下限未満である場合には、前記式(39)で表される化合物の洗浄効率が低下し、他方、前記上限を超える場合には、前記式(7)で表される化合物が水層に溶け込む恐れがある。
【0115】
前記工程(3)において、前記有機溶媒と前記水溶液との比率としては、通常、質量比で有機溶媒/水溶液の値が、0.2~3.0であり、0.5~2.0であることが好ましい。
【0116】
前記工程Cの温度としては、nによって異なる。nが6~10の場合、前記温度としては、1~25℃であることが好ましく、5~20℃であることがより好ましい。nが11~30の場合、前記温度としては、1~15℃であることが好ましく、5~10℃であることがより好ましい。前記温度が前記上限を超える場合には、前記式(39)で表される化合物が有機層に溶解するため除去できない。また、前記分液洗浄を行う回数としては、特に限定はなく、TLCやMS測定等によって有機溶媒中に含まれる前記式(39)で表される化合物を確認しながら複数回行うことが好ましい。
【0117】
[工程(4)]
本発明に係る工程(4)は、前記式(7)で表される化合物に脱保護処理あるいは還元処理を施して前記式(3)で表される前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得る工程である。
【0118】
前記工程(4)に用いる処理は、前記式(39)で表される化合物中のZ1の種類によって異なるが、Z1の種類によって適宜公知の方法により行うことができる。例えば、Z1がアミノ基の保護体である場合、前記工程(4)に用いる処理は、脱保護処理である。前記脱保護処理は、前記アミノ基の保護体における保護基の種類によって異なるが、保護基が9-フルオレニルメチルカルボニル基である場合、脱保護はピペリジンやピロリジン等の2級アミンを用いた反応が挙げられる。保護基がt-ブトキシカルボニル基である場合、脱保護はトリフルオロ酢酸や4N塩酸等を用いた反応が挙げられる。保護基がベンジルオキシカルボニル基である場合、脱保護は、パラジウム炭素触媒存在下での接触水素添加が挙げられる。例えば、Z1がアジド基およびシアノ基である場合、前記工程(4)に用いる処理は、還元処理である。前記還元処理は、Z1の種類によって異なるが、Z1がアジド基である場合、還元はトリフェニルホスフィンを還元剤として用いるStaudinger還元や、パラジウム炭素触媒存在下での接触水素添加が挙げられる。Z1がシアノ基である場合、還元はパラジウム炭素触媒やニッケル触媒存在下での接触水素添加等が挙げられる。
【0119】
前記反応生成物は、前記工程(3)における分液精製処理により、不純物を除去することが可能であるため、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等による精製が不要である。なお、得られた前記式(3)で表される化合物を含有する分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体は、そのまま上記本発明の分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールの製造に用いることが可能であるが、更に晶析、吸着剤処理、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の処理により精製をして用いてもよい。
【0120】
以上の製造方法により、前記式(3)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得ることができる。本発明の前記式(3)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体は、鎖長純度および官能基純度が高いことから、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の処理による精製を行わずに、前記式(1)および前記式(2)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールを高い鎖長純度および官能基純度で得ることができる。
【0121】
前記式(3)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体の鎖長純度および官能基純度は、逆相クロマトグラフィー測定により求めることができる。
式(1)で表される化合物のL3が単結合の場合、式(40)で表される化合物の水酸基へ、ジクロロメタン溶媒中、トリエチルアミン存在下、炭酸ジスクシンイミジルを反応させることにより得られる。
【0122】
前記式(40)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール中間体の製造方法は下記の工程(1’)~(4’)を少なくともこの順で含むことを特徴とするものである。
【0123】
[工程(1’)]
下記式(41)で表される単分散ポリエチレングリコール誘導体と下記式(42)で表される化合物とを、水溶液中でのpKaが15~20である塩基触媒を用いてカップリングさせ、下記式(43)で表される化合物を得る工程(1’)と、
【化49】
(式(41)中、
Zは、-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1はアミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
Bは脱離基である。
nは6~30の整数を表す。)
【化50】
(式(42)中、
Aは水酸基の保護基)
【化51】
(式(43)中、
Aは水酸基の保護基、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1はアミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
【0124】
[工程(2’)]
前記式(43)で表される化合物の保護基Aを脱保護させ、下記式(44)で表される化合物を得る工程(2’)と、
【化52】
(式(44)中、
Zは-Z
1または-O-(CH
2)
m5-Z
1で表され、Z
1は、アミノ基の保護体、アジド基、シアノ基のいずれかであり、m5は1~5の整数を表す。
nは6~30の整数を表す。)
【0125】
[工程(3’)]
前記式(44)で表される化合物に脱保護処理あるいは還元処理を施して式(40)で表される前記分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体を得る工程(3’)と、
【0126】
[工程(4’)]
前記式(40)で表される化合物に分液精製を施す工程(4’)
前記塩基触媒は、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、カリウムt-ブトキシドおよびナトリウムt-ブトキシドのいずれかであることが好ましい。
【0127】
前記式(40)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体の鎖長純度および官能基純度は、逆相クロマトグラフィー測定により求めることができる。
【0128】
<分岐型へテロ単分散ポリエチレングリコール結合体>
本発明の式(1)または前記式(2)で表される分岐型ヘテロ型単分散ポリエチレングリコールを用いることにより、これらの化合物(ヘテロ型ポリエチレングリコール)と生体機能性分子とが結合されてなるヘテロ型単分散ポリエチレングリコール結合体を得ることができる。
【0129】
前記生体機能性分子としては、タンパク薬剤、ポリペプチド、酵素、抗体、抗体医薬、遺伝子、オリゴ核酸等を含む核酸化合物、核酸医薬、抗がん剤、低分子薬物等のその他薬剤が挙げられる。
【0130】
前記ヘテロ型単分散ポリエチレングリコール結合体を得る方法としては、例えば、先ず、前記式(1)または前記式(2)で表される化合物のX1に対して抗がん剤やタンパク薬剤といった薬剤を導入し、もう一方のY1に抗体を結合する例が挙げられる。この前記式(1)または前記式(2)で表される化合物は、両末端にそれぞれ異なる官能基を高純度で有していることから、ADCとして使用する場合、目的とする抗体又は薬剤のどちらかが欠損した化合物の生成が抑制されるため、前記ADCの効果の向上が期待できる。
【実施例】
【0131】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、各合成例において、核磁気共鳴(1H-NMR)測定には日本電子社製
JMTC-400を用い、質量分析(ESI-MS)測定にはWaters(株)社製Quattro micro タンデム型質量分析計を用いた。
【0132】
(実施例1-1)
式(5)のZ
1
がアジド基である化合物4の合成
【化53】
(式中、Msはメタンスルホニル基を表す。)
【0133】
ナスフラスコに化合物1(20.0g, 0.151mol)およびトルエン(200mL)を入れ、ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(18.4g, 0.182mol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(19.1g, 0.167mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物1の消失を確認し、1M 塩酸 150 mLを加え、分液した。有機相を1M 塩酸 150mLで1回、飽和重曹水 150mLで2回、飽和食塩水 150mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物2を得た。
【化54】
(式中、Msはメタンスルホニル基を表す。)
【0134】
ナスフラスコに化合物2(20.8g, 0.099mol)およびN,N‘-ジメチルホルムアミド(100mL)、アジ化ナトリウム(7.72g, 0.119mol)を加え、100℃で5時間攪拌した。5時間後、1H NMR測定により化合物2の消失を確認し、酢酸エチル 150mLで希釈した。この溶液を飽和食塩水 100mLで1回、60mLで2回洗浄した。また、一回目の飽和食塩水層に酢酸エチル 100mLを加えて抽出し、更にこの有機層を飽和食塩水 50mLで2回洗浄した。2つ有機層に合わせ、硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物3を得た。
収量 15.3g
【0135】
【0136】
ナスフラスコに化合物3(13.3g, mol)、テトラヒドロフラン(5mL)、および1M 塩酸(10mL)を入れ、室温で5時間攪拌した。5時間後、ESI-MS測定により化合物3の消失を確認し、反応溶液を減圧濃縮した(テトラヒドロフランのみ)。残渣に酢酸エチル 50mLを加えて分液し、有機層を飽和食塩水 30mLで3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物4を得た。
収量 2.01g
MS(ESI+): 化合物4 118.1[M+H]+
1H-NMR(CDCl3、400MHz):
3.89(m,1H), 3.71(dd,1H),
3.61(dd,1H), 3.41(m,2H)
【0137】
(実施例1-2)
式(3)のY
2
が-NH
2
、nが12である化合物9の合成
【化56】
(式中、Trtはトリフェニルメチル基を表す。)
【0138】
ナスフラスコにPolym. Chem., 2016, 7, 2389_2394に記載の方法で得られる化合物5(50.0g, 63.4mmol)およびトルエン(250mL)を加えた。ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(10.5mL, 76.1mmol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(5.4mL, 69.8 mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物5の消失を確認し、1M塩酸 100mLを加え、分液した。有機相を1M塩酸 100mLで1回、飽和重曹水 100mLで2回、飽和食塩水 100mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体化合物6を得た。
収量 52.0g
【0139】
[工程(1)]
【化57】
(式中、Trtはトリフェニルメチル基を表す。)
【0140】
ナスフラスコに化合物4(1.64g, 14.0mmol)、化合物6(36.4g, 42.0mmol)を入れ、トルエン共沸(30mL×2)した。テトラヒドロフラン(270mL)を加え、ナスフラスコ内を窒素パージした。水酸化カリウム(粉末, 2.36g, 42mmol)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。7時間後、ESI-MS測定により化合物4の消失を確認し、飽和塩化アンモニウム水溶液 10mLを加えクエンチした。この溶液を減圧濃縮し(テトラヒドロフランのみ)、残渣をトルエン 150mLに溶解させた。イオン交換水 100mLで2回、飽和重曹水 100mLで1回、飽和食塩水 100mLで1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物7を得た。
収量 35.5g
【0141】
[工程(2)~(3)]
【化58】
(式中、Trtはトリフェニルメチル基を表す。)
【0142】
ナスフラスコに化合物7(35.5g)およびメタノール(180mL)を加えた。p-トルエンスルホン酸一水和物(3.99g, 21.0mmol)、ヘキサン(150mL)を加え、室温で30分攪拌した。30分後、ヘキサン層を除去した後にヘキサン(150mL)を加え、室温で30分攪拌した。同様の操作を4回行った後、ESI-MS測定により化合物7の消失を確認し、飽和重曹水 120mLを加えた。この混合溶液をヘキサン150mLで2回洗浄した。生成物の溶液を減圧濃縮し、残渣にジクロロメタン 180mLを加え、イオン交換水 180mLで3回、飽和食塩水 180mLで1回洗浄した(10℃)。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、茶色固体の化合物8を得た。
収量 11.5g
【0143】
【0144】
ナスフラスコに化合物8(11.5g)およびメタノール(60mL)を入れ、ナスフラスコ内を窒素置換した。パラジウム炭素(1.2g)を加え、ナスフラスコ内を水素置換して室温で5時間攪拌した。5時間後、ESI-MS測定により化合物8の消失を確認し、反応溶液をろ過した(グラスファイバーろ紙)。ろ液を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタン 60mLに溶解させた。この溶液を1M塩酸 60mLで1回抽出し、ジクロロメタン 60mLで2回洗浄した。水層に食塩を加えて飽和させ、ジクロロメタン 60mLで3回抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物9を得た。化合物4を基準とした3工程でのモル収率は51.0%であった。表1に結果をまとめる。
収量 9.6g
MS(ESI+): 化合物9 1148.2[M+H]+
1H-NMR(CDCl3、400MHz):
3.62(m,99H), 3.16(dd,1H),
3.04(dd,1H)
【0145】
(実施例1-3)
式(1)のX
1
が活性カーボネート基、Y
1
がマレイミド基、L
2
がエーテル結合、L
3
が-NHC(O)-(CH
2
)
2
-、nが12である化合物11の合成
【化60】
【0146】
ナスフラスコに、3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジル(301mg, 1.1mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン(4 mg, 0.018mmol)クロロホルム(30mL)を入れた。化合物9(1.0g, 0.87mmol)およびトリエチルアミン(0.17mL, 1.2mmol)をクロロホルム(20mL)に溶解し、室温で滴下した。室温で4時間攪拌後、ESI-MSにより化合物9の消失を確認し、飽和食塩水(pH= 2.0) 50mLを加え、分液した。有機相を飽和食塩水(pH= 2.0) 50mLで洗浄し、減圧濃縮した。残渣にクエン酸バッファー(pH= 3.0) 50mLを加え、トルエン-クロロホルム(10 : 3,w/w) 50mLで3回洗浄した。水相をクロロホルム 50mLで3回抽出した。有機相を合わせ、硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物10を得た。
収量 928mg
【0147】
【0148】
ナスフラスコに、化合物10(928mg, 0.71mmol)、トリエチルアミン(0.32mL, 2.3mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン(3mg, 0.014mmol)、ジクロロメタン(45mL)を入れた。炭酸ジスクシンイミジル(538mg, 2.1mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。5時間後、ESI-MSにより化合物10の消失を確認し、食塩水(pH= 2.0) 45mLを加え、分液した。有機相を食塩水(pH= 2.0) 45mLで洗浄し、減圧濃縮した。残渣に1M塩酸 45mLを加え、酢酸エチル 45mLで2回洗浄し、水相をジクロロメタン 45mLで2回抽出した。有機層を合わせ、20%食塩水 45mLで2回洗浄後、有機相を合わせ、硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物11を得た。
収量 994mg
MS(ESI+): 化合物11 1598.7[M+NH4]+
1H-NMR(CD3OD、400MHz):
6.83(s,2H), 4.47(m,4H),
3.62(m,97H), 3.38(dd,1H),
3.18(dd,1H), 2.83(s,8H), 2.49(t,2H)
【0149】
(実施例2-1)
式(5)のZ
1
がアミノ基の保護体、m5が3である化合物15の合成
【化62】
【0150】
二つ口ナスフラスコに3-Bocamino-1-propanol 12(5.0g, 28.5mmol)およびトルエン(25mL)を入れ、ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(5.14 mL, 37.1mmol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(2.43mL, 31.4mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物12の消失を確認し、1M塩酸 25 mLを加え、分液した。有機相を飽和重曹水 25mLで1回、飽和食塩水 25mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウム 3gを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物13を得た。
収量 6.9g
【0151】
【化63】
(式中、Msはメタンスルホニル基を表す。)
【0152】
四つ口ナスフラスコに水素化ナトリウム(1.5g)を入れ、窒素置換した。ヘキサン 10mLで2回洗浄し、N,N‘-ジメチルホルムアミド 30mLを加えて0℃に冷却した。化合物1(5.31g, 40.2 mmol)にN,N‘-ジメチルホルムアミド 20mLを混合し、滴下ロートに入れて30分かけて滴下した。滴下終了後、化合物13(6.87g, 28.7mmol)にN,N‘-ジメチルホルムアミド 20mLを混合し、同じ滴下ロートに入れて15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を40℃に昇温し、3時間撹拌した。3時間後、ESI-MS測定により化合物13が消失したことを確認し、室温へと放冷した。反応混合液に酢酸エチル 150mLを加え、飽和塩化アンモニウム水溶液 100mLで1回、飽和食塩水 100mLで2回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウム 15gを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物14を得た。
収量 6.9g
【0153】
【0154】
ナスフラスコに化合物14(6.90g, 23.8mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)および1M塩酸(20mL)を入れ、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物14が消失したことを確認し、反応混合液に酢酸エチル 50mLを加えた。この混合溶液を飽和食塩水 50mLで2回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウム 5gを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物15を得た。
収量 1.7g
MS(ESI+): 化合物15 250.2[M+H]+
1H-NMR(CDCl3、400MHz):
4.83(s,1H), 3.85(m,1H),
3.70(dd,1H), 3.64(dd,1H),
3.51(m,4H), 3.25(m,2H),
1.74(m,2H), 1.44(s,9H)
【0155】
(実施例2-2)
式(3)のY
1
-O-(CH
2
)
3
-NH
2
、nが24である化合物23の合成
【化65】
(式中、Bnはベンジル基、Trtはトリフェニルメチル基を表す。)
【0156】
1L四つ口ナスフラスコに水素化ナトリウム(1.83g)を入れ、窒素置換した。脱水ヘキサン(20mL)で2回洗浄し、アセトニトリル 80mLを加えて0℃に冷却した。トルエン 20mLで3回共沸脱水した化合物5(30.0g, 38.0mmol)にアセトニトリル 40 mLを混合し、滴下ロートに入れて30分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を40℃に昇温し、30分撹拌した。塩化ベンジル(4.15mL, 36.1mmol)を同じ滴下ロートに入れて15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を40℃に昇温し、2時間撹拌した。2時間後、薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル= 4:1 by vol)を用いて塩化ベンジルが消失したことを確認し、室温へと放冷した。反応混合液に飽和アンモニウム水溶液 20mLを加えた後に減圧濃縮し、残渣にトルエン 100mLを加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液 100mLで2回、飽和食塩水 100mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウム 10gを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物16を得た。
収量 30.9g
【0157】
【化66】
(式中、Bnはベンジル基、Trtはトリフェニルメチル基を表す。)
【0158】
1Lナスフラスコに化合物16(30.9g, 35.1mmol)及びメタノール(240mL)を入れた後、p-トルエンスルホン酸一水和物(3.3g, 17.6mmol)、ヘキサン(90mL)を加え、室温で30分間攪拌した。30分後、上層のヘキサン層を除去した後にヘキサン(90mL)を加え、室温で30分間攪拌した。同様の操作を6回行った後、ESI-MSにより化合物16の消失を確認し、0℃で飽和重曹水 100mLを加えた。この混合溶液をヘキサン 90mLで2回洗浄した。生成物の溶液を減圧濃縮し、イオン交換水 100mLに溶解し、トルエン 100mLで2回洗浄した。下層の水溶液に塩化ナトリウム 30gを加えて飽和濃度とした後に、ジクロロメタン 100mLで2回抽出した。抽出した有機層に硫酸ナトリウム 20gを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物17を得た。
収量 15.6g
【0159】
【化67】
(式中、Trtはトリフェニルメチル基、Bnはベンジル基を表す。)
【0160】
二口ナスフラスコに水素化ナトリウム(219g, 50.2mmol)を入れ、窒素置換した。脱水ヘキサン(25mL×2回)で2回洗浄し、アセトニトリル 50mLを加えて0℃に冷却した。化合物17(22.8g, 35.8mmol)をトルエン 15mLで3回共沸脱水した後にアセトニトリル 25mLを混合し、滴下ロートに加えて30分かけて滴下した。トルエン 50mLで3回共沸脱水した化合物6(52.8g, 60.9mmol)にアセトニトリル 30mLを混合し、同じ滴下ロートに加えて15分かけて滴下した。滴下終了後、反応混合液を80℃に昇温し、2時間撹拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物16が消失をしたこと確認し、ナトリウムメトキシドメタノール溶液(3.5mL)を加え、30分攪拌した。30分後、ESI-MS測定により化合物16が消失をしたこと確認し、室温へと放冷した。反応混合液を減圧濃縮し、残渣にトルエン 350mLを加えた。このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液 350mLで2回、飽和食塩水 350mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物18を得た。
収量 55.8g
【0161】
【化68】
(式中、Trtはトリフェニルメチル基、Bnはベンジル基を表す。)
【0162】
ナスフラスコに化合物18(55.8g)およびメタノール(300mL)を加えた。p-トルエンスルホン酸一水和物(3.76g, 19.8mmol)、ヘキサン(320mL)を加え、室温で30分攪拌した。30分後、ヘキサン層を除去した後にヘキサン(200mL)を加え、室温で30分攪拌した。同様の操作を6回行った後、ESI-MS測定により化合物18の消失を確認し、飽和重曹水 300mLを加えた。この混合溶液をヘキサン 200mLで2回洗浄した。生成物の溶液を減圧濃縮し、残渣にジクロロメタン 400mLを加え、イオン交換水400 mLで3回、飽和食塩水 400mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物19を得た。
収量 39.3g
【0163】
【化69】
(式中、Bnはベンジル基、Msはメタンスルホニル基を表す。)
【0164】
ナスフラスコに化合物19(14.7g, 12.6mmol)およびトルエン(70mL)を加えた。ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(2.1mL, 15.1mmol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(1.1mL, 13.9mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物19の消失を確認し、1M塩酸 70mLを加え、分液した。有機相を1M塩酸 70mLで1回、飽和重曹水 70mLで2回、飽和食塩水 70mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物20を得た。
収量 12.7g
【0165】
【0166】
ナスフラスコに化合物15(0.82g, 3.29mmol)、化合物20(12.7g, 10.2mmol)を入れ、トルエン共沸(15mL×2)した。テトラヒドロフラン(60mL)を加え、ナスフラスコ内を窒素パージした。水酸化ナトリウム(408mg, 10.2mmol)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。7時間後、ESI-MS測定により化合物15の消失を確認し、飽和塩化アンモニウム水溶液 20mLを加えクエンチした。この溶液を減圧濃縮し(テトラヒドロフランのみ)、残渣をトルエン 60mLに溶解させた。この溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液 60mLで1回、飽和食塩水 60mLで1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物21を得た。
収量 8.5g
【0167】
【0168】
ナスフラスコに化合物21(8.5g)およびメタノール(40mL)を入れ、ナスフラスコ内を窒素置換した。パラジウム炭素(900mg)を加え、ナスフラスコ内を水素置換して室温で5時間攪拌した。5時間後、ESI-MS測定により化合物21の消失を確認し、反応溶液をろ過した(グラスファイバーろ紙)。ろ液を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタン 40mLに溶解させた。この溶液をイオン交換水 40mLで3回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物22を得た。
収量 3.9g
【0169】
【0170】
ナスフラスコに化合物22(3.9g, 1.6mmol)、ジクロロメタン(20 mL)を加え、ナスフラスコ内を窒素パージした。0℃にてトリフルオロ酢酸(0.15mL, 1.9mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。5時間後、ESI-MS測定により化合物22の消失を確認し、トリエチルアミン(0.31mL, 2.2mmol)でクエンチした。この溶液を1M 塩酸 20mLで3回抽出した。水層を合わせてジクロロメタン 20mLで3回抽出した。有機層を合わせて硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物23を得た。
収量 3.4g
【0171】
(実施例2-3)
式(1)のX1が活性カーボネート基、L1が-(CH2)2-、L2がエーテル結合、L3が-O-(CH2)3-NHC(O)-(CH
2
)
4
-、Y1がアジド基、nが23である化合物25の合成
【0172】
【0173】
ナスフラスコに化合物23(1.0g, 0.44mmol)、5-アジドペンタン酸(68.7mg, 0.48mmol)、クロロホルム(5mL)を入れた。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(104mg, 0.53mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。4時間後、ESI-MSにより化合物23の消失を確認し、反応溶液をろ過した。ろ液を飽和重曹水 5mLで3回、飽和食塩水 5mLで1回洗浄した。硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物24を得た。
収量 1.0g
【0174】
【0175】
ナスフラスコに、化合物24(1.0g, 0.42mmol)、トリエチルアミン(0.32mL, 1.0mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン(3mg, 0.014mmol)、ジクロロメタン(50mL)を入れた。炭酸ジスクシンイミジル(237mg, 0.92mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。5時間後、ESI-MSにより化合物24の消失を確認し、食塩水(pH= 2.0) 50mLを加え、分液した。有機相を食塩水(pH= 2.0) 50mL で洗浄し、減圧濃縮した。残渣に1M 塩酸 50mLを加え、酢酸エチル 50mLで2回洗浄し、水相をジクロロメタン 50mLで2回抽出した。有機層を合わせ、20%食塩水 50mLで2回洗浄後、有機相を合わせ、硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物25を得た。
収量 1.0g
MS(ESI+): 化合物25 1352.6[M+2NH4]2+
1H-NMR(CD3OD、400MHz):
4.43(m、4H), 3.64(m,195H),
3.41(m,2H), 3.22(m,2H),
2.80(s,8H), 2.71(t,2H),
1.74(m,2H), 1.46(m,4H)
【0176】
(実施例3-1)
式(1)のX
1
が活性カーボネート基、Y
1
がブロモアセトアミド基、L
2
がエーテル結合、nが12である化合物27の合成
【化75】
【0177】
ナスフラスコに実施例1-2で得られた化合物9(1.0g, 0.87mmol)およびトルエン(5mL)を加えた。ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(0.145mL, 1.04mmol)を加えた。0℃でブロモアセチルブロミド(0.083mL, 0.95 mmol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物9の消失を確認し、1M 塩酸 5mLを加え、分液した。有機相を1M 塩酸 5mLで1回、飽和重曹水 5mLで2回、飽和食塩水 5mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物26を得た。
収量 1.03g
【0178】
【0179】
ナスフラスコに化合物26(1.03g, 0.81mmol)およびトルエン(5mL)を加えた。ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(0.27mL, 1.94mmol)を加えた。0℃でクロロギ酸4-ニトロフェニル(359mg, 1.78mmol)を加え、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物26の消失を確認し、1M 塩酸 5mLを加え、分液した。有機相を1M 塩酸 5mLで1回、飽和食塩水 5mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物27を得た。
収量 1.20g
MS(ESI+): 化合物27 816.8[M+2NH4]2+
1H-NMR(CD3OD、400MHz):
8.37(d,2H), 7.44(d,2H),
4.31(m,4H), 4.10(s,2H),
3.64(m,95H), 3.41(m,2H)
【0180】
(実施例4-1)
式(1)のX
1
が活性エステル基、Y
1
がアルキニル基、L
1
が-(CH
2
)
2
-、L
2
がエーテル結合、L
3
が-NHC(O)-(CH
2
)
2
-、nが12である化合物31の合成
【化77】
【0181】
ナスフラスコに、Dibenzocyclooctyne-N-hydroxysuccinimidyl ester(198mg, 0.48mmol)、クロロホルム(2mL)を入れた。実施例1-2で得られた化合物9(500mg, 0.44mmol)およびトリエチルアミン(0.072mL, 0.52mmol)をクロロホルム(1mL)に溶解し、室温で滴下した。室温で4時間攪拌後、ESI-MSによりDibenzocyclooctyne-N-hydroxysuccinimidyl esterの消失を確認し、1M 塩酸 5mLを加え、分液した。有機相を1M 塩酸 5mLで1回、飽和食塩水 5mLで1回洗浄し、減圧濃縮した。有機相に硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物28を得た。
収量 613mg
【0182】
【0183】
ナスフラスコに化合物28(613mg, 0.43mmol)、塩化メチレン(12mL)を入れた。0℃で水酸化カリウム(粉末)(24mg, 0.43mmol)を加え、アクリル酸t-ブチル(0.38mL, 2.58mmol)を滴下し、0℃で1.5時間攪拌した。1.5時間後、ESI-MSにより反応の進行を確認し、2時間後、飽和塩化アンモニウム水溶液 5mLを加えた。この混合溶液を分液後、有機相を飽和食塩水 5mLで1回洗浄した。有機相に硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物29を得た。
収量 715mg
【0184】
【0185】
ナスフラスコに化合物29(715mg, 0.42mmol)および1M 塩酸(3mL)を入れ、60℃で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物29が消失をしたこと確認し、室温まで冷却した。反応溶液にジクロロメタン 5mLを加えて分液した。有機相を飽和重曹水 5mLで1回、飽和食塩水で1回洗浄した。有機相に硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物30を得た。
収量 641mg
【0186】
【0187】
ナスフラスコに化合物30(641mg, 0.41mmol)、N-ヒドロキシスクシンイミド(112mg, 0.97mmol)、クロロホルム(5mL)を入れた。1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(202mg, 1.05mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。4時間後、ESI-MSにより化合物30の消失を確認し、反応溶液をろ過した。ろ液をクエン酸バッファー(pH= 3.0) 5mLで3回、飽和食塩水 5mLで1回洗浄した。硫酸マグネシウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、白色固体の化合物31を得た。
収量 633mg
MS(ESI+): 化合物31 904.3[M+2NH4]2+
1H-NMR(CD3OD、400MHz):
7.48(m,8H), 5.13(d,1H),
3.64(m,104H), 3.40(m,2H),
2.98(m,4H), 2.83(s,8H),
2.66(t,4H)
【0188】
<式(1)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコールの鎖長純度および官能基純度>
【0189】
(実施例5-1)
[鎖長純度の測定]
実施例1-3で合成した化合物11の鎖長純度は、実施例1-2で合成した化合物9の鎖長純度を用いた。
化合物9の逆相クロマトグラフィー測定の結果、単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表すnが12である分岐型単分散ポリエチレングリコールが93.4%、nが12以外である化合物が計6.6%含まれていたため、鎖長純度は93.4%であった。表1に結果をまとめる。
【0190】
尚、逆相クロマトグラフィー測定においては、検出器に質量分析計を用いて各ピークの同定を行った後に、検出器に示差屈折率計を用いて算出された各ピークの面積値より求めた。検出器に質量分析計を用いた場合は、機器にWaters(株)社製Alliance2695を、検出器(質量分析計)にWaters(株)社製Quattro micro タンデム型質量分析計を、カラムに東ソー(株)社製 TSKgel ODS-80Ts (粒子径5 μm、カラムサイズ 4.6mm×25cm)を、展開溶媒に5mM酢酸アンモニウム メタノール/蒸留水=45/55を、それぞれ用い、流速 0.6mL/min、カラム温度 45℃、サンプル濃度 0.01mg/g、注入量 5μLの条件で測定した。検出器に示差屈折率計を用いた場合は、機器に東ソー(株)社製 ビルドGPCシステム HLC-8220を、検出器(示差屈折率計)に東ソー(株)社製 RI-8020を、カラムに東ソー(株)社製 TSKgel ODS-80Ts (粒子径 5μm、カラムサイズ 4.6mm×25cm)を、展開溶媒に5mM酢酸アンモニウム メタノール/蒸留水=45/55を、それぞれ用い、流速 0.6mL/min、カラム温度 45℃、サンプル濃度 0.2mg/mL、注入量 40μLの条件で行った。
【0191】
[官能基純度の測定]
実施例1-3で合成した化合物11の官能基純度は、化合物9の官能基純度を基に1H-NMR測定により求めた。
具体的には、化合物9の逆相クロマトグラフィー測定の結果、末端に水酸基を2つ、およびアミノ基を1つ有する化合物が99.9%、末端官能基の組み合わせが異なる化合物が0.1%含まれていたため、官能基純度は99.9%であった。また、化合物9から化合物10を得る反応において、化合物9のアミノ基のα位のメチレン基由来のピーク(3.16、3.04ppm、2H)が消失し、3.38、3.18ppmに新たなピークが観測された。反応において積分値が変化しないピーク(3.62ppm,97H)を基準とした場合、新たなピークの積分値は、合計で1.997であったため、マレイミド基の導入率は99.9%(=1.997÷2×100)であった。
【0192】
続いて、化合物11の1H-NMRスペクトルにおけるマレイミド基由来のピーク(6.83ppm、2H)の積分値を基準(2.0)とした場合、活性カーボネート基由来のピーク(4.47ppm、4H)の積分値は3.840であった。よって活性カーボネート基の導入率は96.0%(=3.840÷4)であった。したがって化合物11の官能基純度は、95.8%(=99.9×0.999×0.96)であった。表1に結果をまとめる。
【0193】
(実施例5-2)
[鎖長純度の測定]
実施例2-3で合成した化合物25の鎖長純度は、実施例2-2で合成した化合物23の鎖長純度を用いた。
化合物23の逆相クロマトグラフィー測定の結果、単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表すnが24である分岐型単分散ポリエチレングリコールが91.6%、nが24以外である化合物が計8.4%含まれていたため、鎖長純度は91.6%であった。表1に結果をまとめる。逆相クロマトグラフィー測定は、展開溶媒に5mM酢酸アンモニウム メタノール/蒸留水=55/45を用いたこと以外は、実施例5-1と同様の方法で求めた。
【0194】
[官能基純度の測定]
実施例2-3で合成した化合物25の官能基純度は、実施例7-1と同様に1H-NMR測定により求めた。
化合物23の逆相クロマトグラフィー測定の結果、官能基純度は99.9%であった。また、化合物23から化合物24を得る反応において、化合物23のアミノ基のα位のメチレン基由来のピーク(3.10ppm、2H)が消失し、3.41ppmに新たなピークが観測された。反応において積分値が変化しないピーク(3.64ppm,195H)を基準とした場合、新たなピークの積分値は、合計で1.990であったため、アジド基の導入率は99.5%(=1.990÷2×100)であった。続いて、化合物25の1H-NMRスペクトルにおけるアジド基由来のピーク(3.22ppm、2H)の積分値を基準(2.0)とした場合、活性カーボネート基由来のピーク(4.43ppm、4H)の積分値は3.905であった。よって活性カーボネート基の導入率は97.6%(=3.905÷4)であった。したがって化合物25の官能基純度は、97.0%(=99.9×0.995×0.976)であった。表1に結果をまとめる。
【0195】
(実施例5-3)
[鎖長純度の測定]
実施例3-1で合成した化合物27の鎖長純度は、実施例5-1と同様の方法で求めた。鎖長純度は93.4%であった。表1に結果をまとめる。
【0196】
[官能基純度の測定]
実施例3-1で合成した化合物27の官能基純度は、実施例5-1と同様に1H-NMR測定により求めた。
化合物9の逆相クロマトグラフィー測定の結果、官能基純度は99.9%であった。また、化合物9から化合物26を得る反応において、化合物9のアミノ基のα位のメチレン基由来のピーク(3.16、3.04ppm、2H)が消失し、3.41ppmに新たなピークが観測された。反応において積分値が変化しないピーク(3.62ppm,97H)を基準とした場合、新たなピークの積分値は1.992であったため、ブロモアセトアミド基の導入率は99.6%(=1.992÷2×100)であった。続いて、化合物27の1H-NMRスペクトルにおけるブロモアセトアミド基由来のピーク(4.13ppm、2H)の積分値を基準(2.0)とした場合、活性カーボネート基由来のピーク(4.31ppm、4H)の積分値は3.896であった。よって活性カーボネート基の導入率は97.4%(=3.896÷4)であった。したがって化合物27の官能基純度は、96.9%(=99.9×0.996×0.974)であった。表1に結果をまとめる。
【0197】
(実施例5-4)
[鎖長純度の測定]
実施例4-1で合成した化合物31の鎖長純度は、実施例5-1と同様の方法で求めた。鎖長純度は93.4%であった。
【0198】
[官能基純度の測定]
実施例4-1で合成した化合物31の官能基純度は、1H-NMR測定により求めた。
化合物30の逆相クロマトグラフィー測定の結果、官能基純度は99.9%であった。また、化合物9から化合物28を得る反応において、化合物9のアミノ基のα位のメチレン基由来のピーク(3.16、3.04ppm、2H)が消失し、3.40ppmに新たなピークが観測された。反応において積分値が変化しないピーク(3.62ppm,97H)を基準とした場合、新たなピークの積分値は1.998であったため、アルキニル基の導入率は99.9%(=1.998÷2×100)であった。続いて、化合物31の1H-NMRスペクトルにおけるアルキニル基由来のピーク(2.98ppm、4H)の積分値を基準(4.0)とした場合、活性エステル基由来のピーク(2.83ppm、8H)の積分値は7.624であった。よって活性エステル基の導入率は95.3%(=7.624÷8)であった。したがって化合物31の官能基純度は、95.1%(=99.9×0.999×0.953)であった。表1に結果をまとめる。
【0199】
【0200】
<式(3)で表される分岐型ヘテロ単分散ポリエチレングリコール製造用中間体の鎖長純度と官能基純度>
【0201】
(実施例6-1)
化合物4と化合物6との反応における塩基触媒として水酸化カリウムの代わりに水酸化ナトリウムを用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして化合物9を得た。化合物4を基準とした3工程でのモル収率は、48.3%であった。表2に結果をまとめる。
【0202】
(実施例6-2)
化合物4と化合物6との反応における塩基触媒として水酸化カリウムの代わりにカリウム-t-ブトキシドを用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして化合物9を得た。化合物4を基準とした3工程でのモル収率は、50.1%であった。表2に結果をまとめる。
【0203】
(実施例7-1)
実施例1-2で合成した化合物9の純度は、逆相クロマトグラフィー測定により求めた。
測定条件は実施例5-1と同様の方法で求めた。その結果、単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表すnが12である分岐型単分散ポリエチレングリコールが93.4%、nが12以外である化合物が計6.6%含まれていたため、鎖長純度は93.4%であった。また、末端に水酸基を2つ、およびアミノ基を1つ有する化合物が99.9%、末端官能基の組み合わせが異なる化合物が0.1%含まれていたため、官能基純度は99.9%であった。表2に結果をまとめる。
【0204】
(実施例7-2)
実施例6-1で合成した化合物9の純度は、実施例5-1と同様の方法で求めた。鎖長純度は91.8%、官能基純度は99.9%であった。表2に結果をまとめる。
【0205】
(実施例7-3)
実施例6-2で合成した化合物9の鎖長純度は、実施例5-1と同様の方法で求めた。鎖長純度は92.6%、官能基純度は99.7%であった。表2に結果をまとめる。
【0206】
(参考例1-1:工程(1)の塩基触媒を変更した場合)
化合物4と化合物6との反応における塩基触媒として水酸化カリウムの代わりに水素化ナトリウムを用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして化合物9を得た。化合物4を基準とした3工程でのモル収率は、23.2%であった。表2に結果をまとめる。
【0207】
(参考例1-2:工程(3)の分液温度を変更した場合)
工程(3)における分液洗浄時の温度を25℃にしたこと以外は、実施例1-2と同様にして化合物9を得た。化合物4を基準とした3工程でのモル収率は、52.8%であった。表2に結果をまとめる。
【0208】
(参考例1-3:請求項5に記載の保護基Aと官能基Zが好ましくない組み合わせの場合)
化合物6の代わりに化合物32を用いたこと以外は、実施例1-2と同様にして化合物9を得た。化合物4を基準とした3工程でのモル収率は、36.2%であった。表2に結果をまとめる。
【0209】
【化81】
(式中、Bnはベンジル基、Msはメタンスルホニル基を表す。)
【0210】
ナスフラスコに化合物17(15.6g, 24.5mmol)およびトルエン(80mL)を加えた。ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(4.1mL, 29.4mmol)を加えた。0℃で塩化メタンスルホニル(2.1mL, 27.0mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。2時間後、ESI-MS測定により化合物17の消失を確認し、1M 塩酸 80mLを加え、分液した。有機相を1M 塩酸 80mLで1回、飽和重曹水 80mLで2回、飽和食塩水 80mLで1回洗浄した。有機相に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物32を得た。
収量 16.7g
【0211】
【0212】
ナスフラスコに化合物4(1.64g, 14.0mmol)、化合物32(30.0g, 42.0mmol)を入れ、トルエン共沸(30mL×2)した。テトラヒドロフラン(270mL)を加え、ナスフラスコ内を窒素パージした。水酸化カリウム(粉末,2.36g, 42mmol)を加え、加熱還流下で7時間攪拌した。7時間後、ESI-MS測定により化合物4の消失を確認し、飽和塩化アンモニウム水溶液 10mLを加えクエンチした。この溶液を減圧濃縮し(テトラヒドロフランのみ)、残渣をトルエン 150mLに溶解させた。イオン交換水 100mLで2回、飽和重曹水 100mLで1回、飽和食塩水 100mLで1回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物33を得た。
収量 30.2g
【0213】
【0214】
ナスフラスコに化合物33(30.2g)およびメタノール(150mL)を入れ、ナスフラスコ内を窒素置換した。パラジウム炭素(3.0g)を加え、ナスフラスコ内を水素置換して室温で5時間攪拌した。5時間後、ESI-MS測定により化合物33の消失を確認し、反応溶液をろ過した(グラスファイバーろ紙)。ろ液を減圧濃縮し、残渣をジクロロメタン 150mLに溶解させた。この溶液をイオン交換水 150mLで5回洗浄した。有機層に硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、淡黄色透明液体の化合物9を得た。化合物4を基準とした2工程でのモル収率は36.2%であった。表2に結果をまとめる。
収量 5.8g
【0215】
(参考例2-1)
参考例1-1で合成した化合物9の純度は、実施例9-1と同様の方法で求めた。鎖長純度は64.9%、官能基純度は70.4%であった。表2に結果をまとめる。
【0216】
(参考例2-2)
参考例1-2で合成した化合物9の純度は、実施例9-1と同様の方法で求めた。鎖長純度は86.1%、官能基純度は92.2%であった。表2に結果をまとめる。
【0217】
(参考例2-3)
参考例1-3で合成した化合物9の純度は、実施例9-1と同様の方法で求めた。鎖長純度は92.7%、官能基純度は99.3%であった。表2に結果をまとめる。
【0218】
【0219】
上記の結果から、実施例1-2、実施例6-1、および実施例6-2で得られた化合物9は、単分散ポリエチレングリコールの繰り返し単位数を表すnが12である化合物の純度(鎖長純度)が90%以上であり、かつ末端に水酸基を2つ、アミノ基を1つ有する化合物の純度(官能基純度)が95%以上であることが確認された。
また、参考例1-1で得られた化合物9は、工程(1)のカップリングにおける塩基触媒として水素化ナトリウムを用いたために、分岐部位の分解や副反応により構造不明の不純物が複数生成し、モル収率や鎖長純度、官能基純度が低下した。この化合物9を用いて前記式(1)で表される化合物を合成した場合、鎖長純度、官能基純度の低い化合物が得られ、純度向上のためにカラムクロマトグラフィーによる精製を行った場合、モル収率が更に低下する。
【0220】
さらに、参考例1-2で得られた化合物9は、工程(3)の分液精製における温度が高いために、前記式(39)で表される単分散ポリエチレングリコールが分離されなかった。この不純物は直鎖型であり、かつ末端官能基が水酸基とメシレート基の組み合わせであるため、化合物9の鎖長純度および官能基純度が低下した。
この化合物9を用いて例えば実施例1-3と同様にして化合物11を得た場合、前記不純物は、直鎖型であり、かつ末端に活性カーボネート基およびメシレート基を有する化合物となるため、化合物11の鎖長純度および官能基純度が低下する。純度向上のためにカラムクロマトグラフィーによる精製を行った場合、モル収率が低下する。
【0221】
さらにまた、参考例1-3で得られた化合物9は、工程(2)において前記式(6)で表される化合物の保護基A(ベンジル基)の脱保護と官能基Z1(アジド基)の還元処理が同時に行われるために、工程(3)の分液精製において前記式(39)で表される単分散ポリエチレングリコールと共に前記式(3)で表される化合物が水層に溶出し、モル収率が低下した。この化合物9を用いて前記式(1)で表される化合物を合成した場合、鎖長純度は90%以上であり、かつ官能基純度は95%以上となるが、モル収率が低い。
【0222】
(実施例8-1)
式(40)のY
2
が-NH
2
、nが12である化合物45の合成
【化84】
(式中、Trtはトリフェニルメチル基を表す。)
【0223】
ナスフラスコに化合物5(15g, 19.0mmol)およびジクロロメタン(71mL)を加えて溶解した。ナスフラスコ内を窒素パージし、フタルイミド(3.92g, 26.6mmol)、トリフェニルホスフィン(6.98g, 26.6 mmol)を加えた。ジクロロメタン(15mL)に溶解したアゾジカルボン酸ジイソプロピル(4.61g, 22.8mmol)を20℃から30℃で滴下し、25℃で1時間攪拌した。1時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)測定により化合物5の消失を確認し、メタノール(0.73mL, 22.8mmol)を加え、反応を停止した。反応液を減圧濃縮し、透明液体化合物46を得た。
【化85】
(式中、Trtはトリフェニルメチル基を表す。)
【0224】
ナスフラスコに上記化合物46全量およびメタノール(59.4mL)、エチレンジアミン・一水和物(22.28g, 285mmol)を加えて窒素パージし、溶解した。35℃から45℃で1時間攪拌し、反応した。1時間後、NMR測定により化合物46の消失を確認した。トルエン(75mL)、20%食塩水(75mL)を加え3回洗浄し、有機層を減圧濃縮した。その後、イオン交換水(45mL)に溶解し、5%リン酸2水素ナトリウム水溶液(120mL)を加えてpH6に調整した。これを酢酸エチル(190mL)にて3回洗浄し、化合物47の水溶液を得た。
【化86】
【0225】
ナスフラスコ中の上記化合物47の水溶液全量に、6N-塩酸を少量加えてpH1に調整し、5時間攪拌した。5時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)測定により化合物47の消失を確認し、析出した固体をろ別した。少量の400g/L水酸化ナトリウム水溶液でpH7.5に調節し、クロロホルム(200mL)を加え1回洗浄した。得られた水溶液に食塩を加えて飽和食塩水とし、クロロホルム(45mL)、イソプロパノール(15mL)を加えて目的物を有機層にこの有機層を減圧濃縮し、クロロホルム(75mL)で再溶解し、無水硫酸ナトリウム(10g)を加えて脱水した。この溶液をろ過して無水硫酸ナトリウムを除去した後、トルエン(35mL)を加えながら減圧濃縮し、透明液体化合物48を得た。
収量 6.51g
【化87】
【0226】
ナスフラスコに化合物48(5.93g, 10.9mmol)および水(30mL)、テトラヒドロフラン(33mL)を加え溶解した。ナスフラスコ内を窒素パージし、炭酸水素ナトリウム(2.66g, 31.6mmol)、二炭酸ジ-tert-ブチル(3.46g, 15.8 mmol)を加えて20℃から30℃にて6時間攪拌した。6時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)測定により化合物48の消失を確認した。ヘキサン(45mL)を加え水層を4回洗浄し、次にジクロロメタン(22.4mL)を加えて目的物を有機層へ抽出した。この有機層に無水硫酸ナトリウム(6g)を加えて脱水し、この溶液をろ過して無水硫酸ナトリウムを除去した。その後溶液を減圧濃縮し、透明液体化合物49を得た。
収量 6.31g
【化88】
(式中、Msはメタンスルホニル基を表す。)
【0227】
ナスフラスコに化合物49(6.2g, 9.6mmol)およびトルエン(36mL)、を加え溶解した。ナスフラスコ内を窒素パージし、トリエチルアミン(1.33g, 13.1mmol)、塩化メタンスルホニル(1.29g, 11.3mmol)を加え、20℃から30℃で4時間攪拌した。4時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)測定により化合物49の消失を確認した。25%アンモニア水溶液(30mL)を加え有機層を3回洗浄し、次に飽和食塩水(30mL)を加えて有機層を1回洗浄した。この有機層に無水硫酸ナトリウム(6g)を加えて脱水し、この溶液をろ過して無水硫酸ナトリウムを除去した。その後溶液を減圧濃縮し、透明液体化合物50を得た。
収量 5.87g
【0228】
【0229】
ナスフラスコに化合物50(4.0g, 5.5mmol)、化合物51(0.47g, 2.6 mmol)、脱水テトラヒドロフラン(6.0mL)を入れ、ナスフラスコ内を窒素パージし、溶解した。水酸化カリウム(粉末, 0.15g)を加え、20℃から30℃で2時間攪拌した。2時間後、NMR測定により化合物50の残存を確認し、水酸化カリウム(粉末, 0.15g)を追加し、20℃から30℃で2時間攪拌した。その後、エチレンジアミン一水和物(10.78g, 138mmol)を加え反応を停止した後、トルエン(46mL)を加え希釈した。25%アンモニア水溶液(20mL)を加え有機層を4回洗浄し、有機層に無水硫酸ナトリウム(4g)加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、透明液体の化合物52を得た。
収量 3.2g
【0230】
【0231】
ナスフラスコに化合物52(3.0g, 2.1mmol)およびメタノール(120mL)、5%Pd/C(1.5g)を加えた。ナスフラスコを窒素パージし、シクロヘキセン(4.1g)を加え、50℃から60℃で4時間攪拌した。30℃に冷却し、クロロホルム(300mL)を加え、Pd/Cをろ別し、トルエン(100mL)を加えながら減圧乾燥し、最終的にトルエン(40mL)に溶剤を置換した。有機相に無水硫酸ナトリウム(3g)を加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、透液体の化合物53を得た。
収量 2.2g
【0232】
【0233】
ナスフラスコに化合物53(2.0g, 1.48mmol)およびジクロロメタン(16mL)を入れ、ナスフラスコ内を窒素置換した。トリフルオロ酢酸(3g)を加え、室温で2時間攪拌した。2時間後、薄層クロマトグラフィー(TLC)測定により化合物53の消失を確認し、水(40mL)を加えて目的物を水槽に抽出した。この水溶液に400g/L水酸化ナトリウム少量を加えてpH7.5とし、食塩を加えて飽和食塩水とした。次にクロロホルム(9mL)とイソプロパノール(3mL)を加え目的物を有機層に抽出し、飽和重曹水(20mL)、飽和食塩水(20mL)にて順に洗浄した。この有機層を減圧濃縮し、クロロホルム(20mL)にて再溶解させ、硫酸ナトリウムを加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、透明液体の化合物45を得た。化合物50を基準とした3工程でのモル収率は51.8%であった。鎖長純度は94.8%、官能基純度は98.2%であった。
収量 1.4g
【0234】
(実施例8-2)
式(1)のX
1
がマレイミド基、Y
1
が活性カーボネート基、L
3
が単結合である化合物54の合成
【化93】
【化94】
【0235】
ナスフラスコに、3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジル(667mg, 2.5mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン(1mg)ジクロロメタン(130mL)を入れた。化合物45(1.2g, 1.05mmol)およびトリエチルアミン(0.38mL, 2.7mmol)をジクロロメタン(8mL)に溶解し、室温で滴下した。室温で4時間攪拌後、薄層クロマトグラフィー(TLC)測定により化合物45の消失を確認し、有機相を15%食塩を溶解させたクエン酸バッファー(pH= 3.0)(50 mL)で3回洗浄し、減圧濃縮した。残渣にクエン酸バッファー(pH= 3.0)(50mL)を加え、トルエン-ジクロロメタン(10: 3, w/w)(50mLで)3回洗浄した。水相をジクロロメタン50mLで3回抽出した。有機相を合わせ、無水硫酸マグネシウム(1g)を加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、透明液体の化合物55を得た。
収量 890mg
【0236】
ナスフラスコに、化合物55(780mg, 0.54mmol)、トリエチルアミン(0.12mL, 0.86mmol)、ジブチルヒドロキシトルエン(1mg)、ジクロロメタン(15mL)を入れた。炭酸ジスクシンイミジル(208mg, 0.81mmol)を加え、室温で5時間攪拌した。5時間後、NMR測定により化合物55の消失を確認し、15%食塩を溶解させたクエン酸バッファー(pH= 3.0)(25mL)を加え、3回洗浄した。有機相を合わせ、無水硫酸ナトリウム(1g)を加え、乾燥・ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、透明液体の化合物54を得た。鎖長純度は93.2%、官能基純度は95.8%であった。
収量 705mg