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特許7042071eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法
<図1>
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図1
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図2
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図3A
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図3B
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図4A
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図4B
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図5A
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図5B
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図6A
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図6B
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図7A
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図7B
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図8A
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図8B
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図8C
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図8D
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図8E
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図9
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図10
  • 特許-eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法 図11
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】eビーム操作用の局部的に排気された容積を用いる集積回路解析システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/302 20060101AFI20220317BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20220317BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
G01R31/28 L
H01L21/66 C
【請求項の数】 21
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017238200
(22)【出願日】2017-12-13
(65)【公開番号】P2018136306
(43)【公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-09-28
(31)【優先権主張番号】62/437,046
(32)【優先日】2016-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501419107
【氏名又は名称】エフ・イ-・アイ・カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100103171
【弁理士】
【氏名又は名称】雨貝 正彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤコフ・ボブロフ
(72)【発明者】
【氏名】セシリア・カンポキアーロ
【審査官】島田 保
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-536288(JP,A)
【文献】実開昭60-149135(JP,U)
【文献】特開昭54-144863(JP,A)
【文献】特開昭61-124045(JP,A)
【文献】特開2006-294481(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0231773(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26-31/30
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームが放出されるSEMカラム開口を一端に含むSEMカラムを有する走査電子顕微鏡(SEM)を使用して集積回路(IC)を検査する方法であって、
前記SEMカラム開口の位置に密閉された容積を生み出すために、前記ICの裏面のターゲット領域の周囲において前記SEMカラム開口を密閉することであり、前記ターゲット領域が、前記密閉された容積の囲いの一部を形成することと、
前記密閉された容積を排気することと、
前記ICの回路要素に電圧を印加することであり、前記電圧が、前記ターゲット領域内に電位を誘導することと、
前記ターゲット領域の表面の前記電位を検出するために、前記ターゲット領域を前記電子ビームで走査することと
を含む方法。
【請求項2】
前記ターゲット領域の周囲において前記SEMカラム開口を密閉することが、密閉要素を使用して、前記SEMカラム開口を、前記ICの裏面に対してまたは前記ICを保持しているICホルダに対して密閉することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ICの裏面のターゲット領域の周囲において前記SEMカラム開口を密閉することが、前記密閉要素を、前記ICに対してまたは前記ICホルダに対して圧縮するために、前記SEMカラムと前記ICの間の相対運動を生じさせることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記SEMカラムと前記ICの間の相対運動を生じさせることが、前記ICに向かって前記SEMを移動させることを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ICの裏側の表面と前記ICの裏面に最も近い前記ターゲット領域内の前記回路要素との間の距離が1マイクロメートル未満になるような態様で、前記ICの裏面、少なくとも前記ターゲット領域を薄くすることと、
試験用取付け具の役目を果たす回路モジュールの中に前記ICがまだ装着されていない場合に、試験用取付け具の中に前記ICを置くことと
をさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記密閉された容積を排気することが、前記ICと前記SEMカラム内の圧力制限絞りとの間の空間を排気することを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記密閉された容積を排気することが、前記密閉された容積を、10Paから20kPaの間の圧力まで排気することを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記SEMカラムが、環境制御型SEM(ESEM)カラムまたは他の低真空SEMカラムを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記SEMで走査している間に前記密閉された容積内の前記ICから放出された光子を検出することをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記ターゲット領域を前記電子ビームで走査することが、前記ICがICホルダの中に装着された前記ターゲット領域を前記電子ビームで走査することを含み、前記方法が、前記ICホルダの中の前記ICを近赤外顕微鏡を用いて検査することをさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ターゲット領域の表面の前記電位を検出するために、前記ターゲット領域を前記電子ビームで走査することが、入射した前記電子ビームに反応して前記ターゲット領域から放出された2次電子を検出することを含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
入射した前記電子ビームに反応して前記ターゲット領域から放出された2次電子を検出することが、前記ターゲット領域の電位分布画像を形成することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ターゲット領域を前記電子ビームで走査することが、前記カラム開口を直径2mm未満まで狭めるためにカラム開口に装着されたカラム・アダプタ要素を有するSEMカラムを使用して、前記ターゲット領域を前記電子ビームで走査することを含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ICの裏面のターゲット領域の周囲において前記SEMカラム開口を密閉することが、前記カラム・アダプタ要素の遠位側に配置された密閉要素を使用して、前記ICの裏面のターゲット領域の周囲において前記SEMカラム開口を密閉することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ICの裏面のターゲット領域を検査する装置であって、
前記IC上の複数の接点に接続するための複数の電気プローブを含む試験用取付け具と、
電子源、前記ターゲット領域に向かって電子ビームが放出される遠位端を有する集束カラム、および入射した前記電子ビームに反応して前記ターゲット領域から放出された電子を検出するように配置された電子検出器を含むSEMと、
前記SEMの集束カラムの前記遠位端に配置されるように適合された密閉要素であり、電子が通り抜けることが可能な中心開口を有する密閉要素と、
前記SEMまたは前記ICを保持する可動マウントであり、前記SEMと前記ICの間の相対運動を生じさせて、前記SEMの集束カラムと前記ICの間または前記SEMの集束カラムと前記試験用取付け具の間のシールを前記密閉要素に形成させるように構成されており、前記シールが前記ターゲット領域の周囲にある可動マウントと、
前記SEMの集束カラムに結合された真空ポンプであり、前記ICと前記集束カラムの前記遠位端との間に部分的な真空を生み出すように動作可能な真空ポンプと
を備える装置。
【請求項16】
前記SEMに動作可能に接続されたコントローラであり、前記ターゲット領域上で電位分布画像化を実行するように前記SEMを制御するようプログラムされたコントローラをさらに備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
試験用取付け具ソケットが、前記ICに複数の高速電気信号を結合し、前記ICからの複数の高速電気信号を結合する複数の電気接続を含み、前記電気接続が、前記密閉要素の外側で前記ICに結合される、請求項15または請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記SEMの集束カラムに装着された光子検出器をさらに備え、前記装置が動作位置にあるときに前記光子検出器が前記密閉要素内にあるような位置に前記光子検出器が装着された、請求項15から17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記可動マウントによって保持された少なくとも1つの追加の検査ツールをさらに備え、前記可動マウントがさらに、前記少なくとも1つの追加の検査ツールのうちの選択された1つの検査ツールを、動作する第3の位置まで、前記ICに対して移動させるように調整可能であり、前記第3の位置が、前記選択された追加の検査ツールを、前記ICを観察する位置に置き、前記選択された追加の検査ツールが、近赤外顕微鏡、レーザアシステッド・デバイス・オルタレーション(LADA)装置、可視光プローブ、可視光顕微鏡または光子放出顕微鏡(PEM)のうちの1つである、請求項15から18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記密閉要素が変形可能なガスケットであり、前記シールを形成することが、前記密閉要素を前記ICの裏面に対して圧縮するために、前記ICに向かって前記SEMの集束カラムを移動させることを含む、請求項15から19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記SEMのカラムが、前記カラム開口に装着されたカラム・アダプタ要素を有し、前記カラム・アダプタ要素が、前記カラム開口を直径2mm未満まで狭める、請求項15から20のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームを使用した集積回路(IC)の診断、特性評価および改変に関する。
【背景技術】
【0002】
電気的故障解析は、試験中の完成したICデバイス(DUT)の電気的な問題を分離する。ノードの縮小、新規の材料およびより複雑な構造が、故障を検出するための新たな分離技術およびシステム分解能の向上を推進している。
【0003】
電子ビーム診断システムは、ICの特性評価用途およびデバッグ用途で使用される強力なツールである。電子ビーム診断システムは、例えば2次電子画像化、内蔵コンピュータ自動設計(CAD)ディスプレイを使用した回路ナビゲーション、および電位コントラスト原理を使用した能動回路からの電圧測定に対して使用されている(例えば米国特許第4,706,019号明細書を参照されたい)。別の電子ビーム診断システムは、ビーム中の電子を使用して、故障を検出するための信号に影響を及ぼす。このようなシステムには、電子線誘起電流(EBIC)、レジスティブ・コントラスト・イメージング(RCI)、バイアストRCI(BRCI)、電荷誘起電圧修正(CIVA)、低エネルギーCIVA(LECIVA)、電子線吸収電流(EBAC)、および電子線誘起抵抗変化(EBIRCH)システムなどがある。
【0004】
Shaw他の米国特許6,872,581号明細書は、荷電粒子ビームを使用したICの診断、特性評価または改変のための方法を教示している。一実施態様では、ICのバルク・シリコン基板を、その裏面から、最も深いウェルから約1ないし3μmのところまで薄くし、その表面の下にある回路要素に電圧を印加する。この印加電圧は、薄くした基板の表面に電位を誘導する。この電位を、誘導電圧と荷電粒子ビームとの相互作用によって検出する。Wollesen他の米国特許第5,972,725号明細書も同様に、機械研磨とプラズマ・エッチングの組合せを使用してシリコン基板の一部分を除去し、回路に供給電圧を印加し、電子ビーム画像中の電位コントラストを観察することによって、裏面電圧測定を可能にする。
【0005】
このような検査技法では、ICを試験条件で動作させる試験信号設計を用いてIC回路を作動させることが望ましい。SEM室内で最新のICを作動させるためには、数百ないし数千の高速電気フィードスルーが必要であり、これを達成することは難題である。必要な高速フィードスルーの数は一般に、サイズ(トランジスタ数)とともに増加し、デバイス上の入出力(I/O)端子の数が増加すると一般に回路が複雑になる。過去のeビーム解決手段は全て、電気信号をSEMの真空室内に「通す」ことに依存しており、そうすることは、時間のかかる厄介なプロセスであり、特定のICに対して専用の接続機器を製作することが必要となることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,706,019号明細書
【文献】米国特許第6,872,581号明細書
【文献】米国特許第5,972,725号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、SEMを使用してICを解析する方法および装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
電子ビームが放出されるSEMカラム開口を一端に含むSEMカラムを有する走査電子顕微鏡(SEM)を使用してICを検査する方法が提供される。この方法は、ICの裏面のターゲット領域の周囲においてSEMカラム開口を密閉して、SEMカラム開口の位置に密閉された容積を生み出すことであり、ターゲット領域が、密閉された容積の囲いの一部を形成することと、密閉された容積を排気することと、ICの回路要素に電圧を印加することであり、この電圧が、ターゲット領域内に電位を誘導することと、ターゲット領域を電子ビームで走査して、ターゲット領域の表面の電位を検出することとを含むことができる。
【0009】
装置は、IC上の多数の接点に接続するための多数の電気プローブを含む試験用取付け具と、電子源、ターゲット領域に向かって電子ビームが放出される遠位端を有する集束カラム、および入射した電子ビームに反応してターゲット領域から放出された電子を検出するように配置された電子検出器を含むSEMと、SEM集束カラムの遠位端に配置されるように適合された密閉要素であり、電子が通り抜けることを許す中心開口を有する密閉要素と、SEMまたはICを保持する可動マウントであり、SEMとICの間の相対運動を生じさせて、SEM集束カラムとICの間またはSEM集束カラムと試験用取付け具の間のシールを密閉要素に形成させるように構成されており、このシールがターゲット領域の周囲にある可動マウントと、SEM集束カラムに結合された真空ポンプであり、ICと真空カラムの遠位端との間に部分的な真空を生み出すように動作可能な真空ポンプとを含むことができる。
【0010】
以上では、以下の本発明の詳細な説明をより十分に理解できるように、本発明の特徴および技術上の利点をかなりおおまかに概説した。以下では、本発明の追加の特徴および追加の利点を説明する。開示される着想および特定の実施形態を、本発明の同じ目的を達成するために他の構造を変更しまたは設計するためのベースとして容易に利用することができることを当業者は理解すべきである。さらに、このような等価の構造は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を逸脱しないことを当業者は理解すべきである。
【0011】
次に、本発明および本発明の利点のより完全な理解のため、添付図面に関して書かれた以下の説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】ICを検査する、いくつかの実施形態に基づくプロセスの流れ図である。
図2】ターゲット領域のところが薄くされたICを示す断面図である。
図3A】その裏面の表面全体にわたって薄くされたICを示す一連の断面図である。
図3B】その裏面の表面全体にわたって薄くされたICを示す一連の断面図である。
図4A】パッケージ化されていないICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す一連の断面図である。
図4B】パッケージ化されていないICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す一連の断面図である。
図5A】パッケージ化されていないICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す一連の断面図である。
図5B】パッケージ化されていないICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す一連の断面図である。
図6A】パッケージ化されたICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す同様の一連の断面図である。
図6B】パッケージ化されたICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す同様の一連の断面図である。
図7A】パッケージ化されたICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す同様の一連の断面図である。
図7B】パッケージ化されたICの裏面に対してシールを形成するためのSEMカラムの相対移動を示す同様の一連の断面図である。
図8A】密閉要素を保持しもしくは密閉要素と係合するために、および/または特定のICを検査するのには大き過ぎることがあるカラム開口のサイズを調整するためにSEMカラムの遠位端で使用することができる構造体の変形実施形態を示す断面図である。
図8B】密閉要素を保持しもしくは密閉要素と係合するために、および/または特定のICを検査するのには大き過ぎることがあるカラム開口のサイズを調整するためにSEMカラムの遠位端で使用することができる構造体の変形実施形態を示す断面図である。
図8C】密閉要素を保持しもしくは密閉要素と係合するために、および/または特定のICを検査するのには大き過ぎることがあるカラム開口のサイズを調整するためにSEMカラムの遠位端で使用することができる構造体の変形実施形態を示す断面図である。
図8D】密閉要素を保持しもしくは密閉要素と係合するために、および/または特定のICを検査するのには大き過ぎることがあるカラム開口のサイズを調整するためにSEMカラムの遠位端で使用することができる構造体の変形実施形態を示す断面図である。
図8E】密閉要素を保持しもしくは密閉要素と係合するために、および/または特定のICを検査するのには大き過ぎることがあるカラム開口のサイズを調整するためにSEMカラムの遠位端で使用することができる構造体の変形実施形態を示す断面図である。
図9】本明細書の原理の一部を具体化した例示的な診断システムの断面図である。
図10】ルミネセンスも検出するIC検査プロセスの変形実施形態を示す部分流れ図である。
図11】SEMカラム・アダプタ要素を使用して局部的なシールを形成する例示的な方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を一定の尺度で描くことは意図されていない。これらの図面では、さまざまな図に示された同一の構成要素またはほぼ同一の構成要素がそれぞれ同様の符号によって表されている。分かりやすくする目的上、全ての図面の全ての構成要素に符号が付されているわけではない。
【0014】
IC半導体デバイス中の故障を解析する新たな手法が記載される。IC被試験デバイス(DUT)に含まれるトランジスタ、トランジスタのドーパント・ウェルおよびトランジスタの補助接続のプロービングを、電子ビーム(eビーム)技法を使用して実施することを可能にするシステム設計および方法が提供される。このプロービングは、自動試験機器(ATE)テスタによってDUTが電気的に刺激されている間に、またはデバイスがそれ自体で作動している間に、または回路ボードもしくは別のモジュールの中に装着されたホスト・システムの中でデバイスが作動している間に実施される。このDUTは、パッケージ化されたICとすることができ、または完全な製造ウェーハの一部を含むパッケージ化されていない形態で存在することもできる。既存のeビーム・プロービング・システムでは、DUTを高真空環境に置く必要がある。本明細書の設計および方法は、DUTを高真空中に置く必要性を回避することを追求し、DUTを、比較的に低い(「劣等な」)真空環境に置くことができる環境制御型走査電子顕微鏡(ESEM)または低真空SEMを使用する。DUTに対しておよび/またはDUTの周囲において、SEMカラムを、局部的なシールを用いて密閉して、排気された局所容積を生み出す。SEMカラムの周囲に構築された室の小さな排気口によって、またはESEMの小さな絞りを通してESEM/DUT室のカラム側をポンプによって排気することによって、排気されたESEM/DUT局所容積内の低真空を維持することができる。このような配置は、DUTを操作および監視するのに必要な、ことによると数千にもなる信号の真空フィードスルーの必要性を排除し、このような配置はさらに、DUTがその通常の環境で動作している間にDUTのプロービングを実施すること、例えばDUTのシステム内の回路ボード上またはATEテスタ上に設置されたDUTのプロービングを実施することを可能にする。このDUT環境の圧力は通常、約10Paから25kPaの間である。ESEMは、ガス・カスケード増幅2次電子検出を使用する。いくつかの用途では、低真空レベルのSEMが、後方散乱電子検出器を使用することができる。DUTの位置の圧力は、有用な信号を検出器が提供する範囲内にあるべきである。この圧力の上限は、DUTの位置において十分な分解能を有する電子ビームを提供するのに十分な真空を、電子源においておよび光学カラム内において維持するカラム真空ポンプの能力によっても決定される。電子源においておよび集束カラムの大部分にわたってより低い圧力を維持して、源の汚染およびカラムの大部分にわたるビームの分散を防ぐために、SEMカラムは通常、圧力制限絞りを有する。DUTまたは試験用取付け具に対してカラムがシールを形成する圧力制限絞りの後方の圧力は、圧力制限絞りよりも前の圧力よりも高くすることができる。
【0015】
これらのさまざまな態様は、SEMを用いてICを検査する試験装置が大幅に単純になるという利点を提供する。信号をICに接続する際の機器コスト(通常ならば電気パススルーを備える真空室が必要となる)と、IC DUTへの接続を実施する際の労働時間およびコストの両方における改良された速度およびコストの利益である。ICを検査するはるかに小さな真空容積をポンプによって排気することにより時間の節約となり、DUTまたは試験用取付け具に対して密閉されたSEMカラムの端に生み出された小さな真空容積内のより低品質の真空(少なくとも部分的な真空)を許容することによって時間の節約となる。IC DUTを検査する位置に別の試験ツールを移動させるための改良されたICへのアクセスが提供され、以前の手順よりも頻繁にツールを切り換えることができる試験手順を設計することが可能になる。カラム・アダプタ要素を使用する変形態様も、機器の相互運用性を向上させ、本明細書の新たな特徴を実行する際に既存のSEM機器からより多くの価値を実現することを可能にする。本明細書の組合せで使用されるさまざまな特徴から、他の多くの利点を実現することもできる。
【0016】
一実施形態では、単純なOリング密閉要素が、Oリング・シールの外側では周囲大気条件が存在することが許され、シール内では、SEMの動作を可能にするのに十分なレベルの真空が維持されるような態様でDUTの一部分を密閉するのに十分である。本明細書で使用されるとき、「DUTに対して密閉されている」は、DUTを保持している取付け具またはモジュールに対して密閉されていることも含む。この配置は、DUTの全体が、ことによるとこれに加えてATEが、高真空SEM室内の真空中にある必要性を排除する。SEMは、eビーム・プロービング、標準光学プロービング、熱放射または他の電気的故障解析ツールをDUT位置の所定の位置に移動させることができるような態様で、機械式ステージ上に置くことができる。
【0017】
本明細書に記載されたシステムの一態様は、少なくとも局部的に囲われた容積を生み出すためにSEMカラムの遠位端とICの裏面のターゲット領域との間に局部的なシールを提供するように、密閉要素を提供することを含む。この局部的に囲われた容積を排気して、あるタイプのSEMを動作させるための部分的な真空を生み出すことができる。別の態様は、DUTのターゲット領域を取り囲む局部的な容積内に生成された少なくとも部分的な真空中でSEMを動作させることであり、これにより、DUTへの電気接続を真空の外側で実施して、電気接続を真空室内へ延ばすことを回避することができる。これらの技法は、薄型IC DUTとともに使用されることが好ましい。
【0018】
別の実施形態は、ICを検査する方法を提供する。この方法は、ICの裏面、少なくとも検査対象のターゲット領域を薄くすること、および試験用取付け具の役目を果たす回路モジュールの中にICがまだ装着されていない場合に、試験用取付け具の中にICを置くことを含む。回路モジュール、試験用取付け具、またはICを保持する他の装置は、「ICホルダ」または「回路ホルダ」と呼ばれる。この方法は、次いで、SEMカラムを、ICの裏面のターゲット領域の近くの位置まで、ICに対して移動させることを含む。SEMまたはICを移動させてこの相対移動を実施することができる。この方法は、SEMカラム開口とICの裏面の間に、ターゲット領域を取り囲むシールを形成する。この方法は、次いで、SEMカラム開口とICの裏側の表面との間の密閉された容積内に、少なくとも部分的な真空を生み出す。ICの回路要素に少なくとも1つの電圧を印加する。この電圧は、ターゲット領域内に電位を誘導する。この方法は次いで、SEMを使用して、この電位を、ターゲット領域の表面特徴として検出する。
【0019】
この方法との適当な代替の組合せでは、多くの機能および技法を使用することができる。このシールは、SEMカラムとターゲット領域の間に開口を形成することができる。このシールは、Oリングを用いて形成することができる。このシールは、SEMカラムの遠位端に配置された密閉要素を用いて形成することもできる。このシールの形成は、ICに向かってSEMカラムを移動させて、密閉要素をICに対して圧縮することを含むことができる。ICに対するSEMカラムの移動は、その上にSEMが装着された運動ステージを移動させることによって実行することができる。いくつかの変形態様では、この少なくとも部分的な真空の圧力が1kPa以上である。達成可能な場合にはこれよりも高い真空レベル(これよりも低い圧力)を使用することができる。一般に、より高品質のSEMデータのためには、より高い真空レベルの方が好ましい。達成可能な真空レベルは、シールを通した漏れおよび真空ポンプに依存する。この方法はさらに、SEMで走査している間にICから密閉された容積内に放出された光子を検出することを含むことができる。このSEMカラムを、環境制御型SEM(ESEM)カラムとすることができる。このSEMカラムを、低真空SEMカラムとすることができる。この方法は、近赤外(NIR)顕微鏡または他の適当な検査ツールをターゲット領域に隣接する位置に移動させること、およびこの別のツールを用いてICを検査することを含むことができる。この方法はさらに、ターゲット領域に沿った多数の特徴部分の電位を検出することによって、表面の電位分布画像を得ることを含むことができる。この方法は、電位分布画像を使用して、SEMを用いて検査するIC内の回路要素の位置を突き止めることを含むことができる。この方法はさらに、電位分布画像を使用して、IC内の回路要素の故障を検出することを含むことができる。この方法は、EBIC、RCI、BRCI、CIVA、LECIVA、EBACおよびEBIRCHなど、他の電子ビーム解析技術を使用することを含むことができる。
【0020】
ICの裏面を薄くすることは、ICの裏面に最も近いターゲット領域内の回路要素から1ミクロン(マイクロメートル)未満の厚さまで薄くすることを含むことができる。ICの裏面を薄くすることは、ICの裏面の表面に最も近いターゲット領域内の回路要素から50ナノメートル未満の距離まで裏面を薄くすることを含むことができる。ICの裏面を薄くすることは、ターゲット領域内のICの回路要素を露出させることを含むことができる。SEMカラムは、カラム開口を狭めるためにカラム開口に装着されたカラム・アダプタ要素を有することができる。このようなカラム・アダプタ要素は、直径5mm未満または直径2mm未満など、特定のICを検査するのに適した直径までカラム開口を狭めるように構築することができる。このシールは、カラム・アダプタ要素の遠位側に配置された密閉要素によって形成することができる。この方法は、密閉された容積の外側のICの裏面から熱を引き出すことによって、IC内の回路要素に電圧を印加している間、ICを冷却することを含むことができる。試験用取付け具をプローブ・カードとすることができる。この方法はさらに、IC内の端子を通して、プローブ・カードを通して、またはその中にICが装着され電気的に接続された回路ボードもしくは別の回路モジュールを通して、時間変化する電圧をICに印加することを含むことができる。ICは、パッケージ化された形態、パッケージ化されていない形態、または部分的にパッケージ化された形態をとることができる。電位をターゲット領域の表面特徴として検出することはさらに、電位の時間変動を検出することを含むことができる。この方法はさらに、ICに接続しICを試験するための時間変化する多数の高速電気信号を提供すること、および前記多数の信号を試験用取付け具に接続することを含むことができる。
【0021】
他の態様によれば、ICを検査する装置が提供される。この装置は、ICを受け取りIC上の多数の接点に電気的に接続するように適合されたコネクタまたはフットプリントを有する試験用取付け具を含む。この試験用取付け具は、検査対象のICが既に装着された回路ボードまたはモジュールを含むことができる。この装置は、電子源と、ターゲット領域に向かって電子ビームを放出するための遠位端を有する集束カラムと、ターゲット領域からの電子を検出するように配置された電子検出器とを含むSEMを含む。中心開口を有する密閉要素であって、電子がこの中心開口を通り抜けることができるようにSEMカラムの遠位端に配置されるよう適合された密閉要素が提供される。SEMおよび試験用取付け具を保持する1つまたは複数のマウンティング構造体が提供される。それらのマウンティング構造体のうちの少なくとも1つのマウンティング構造体は、密閉要素およびSEMカラムから離隔したICを試験用取付け具が保持している、作動しない第1の位置と、少なくとも部分的な真空まで排気することができる密閉された容積を形成するシールを、ICの裏面とSEMカラムの遠位端との間に形成するために、その裏面が密閉要素に対して置かれたICを試験用取付け具が保持している、動作する第2の位置とに調整可能である。SEM集束カラムに真空ポンプが結合され、この真空ポンプは、部分的な真空を生み出すように動作可能である。
【0022】
この装置との適当な代替の組合せでは、他の多くの機能を提供することができる。この装置はさらに、SEMに動作可能に接続されたコントローラであって、ICの裏面の薄くされたターゲット領域上で電位分布画像化を実行するようにSEMを制御するようプログラムされたコントローラを含むことができる。試験用取付け具ソケットは、ICに多数の高速電気信号を結合し、ICからの多数の高速電気信号を結合する多数の電気接続を含み、この電気接続は、密閉された容積の外側でICに結合される。マウンティング構造体は、その上にSEMが装着されたx,y,z可動プラットホームを含むことができる。この装置はさらに、前記1つまたは複数のマウンティング構造体のうちの少なくとも1つのマウンティング構造体によって保持された少なくとも1つの追加の検査ツールを含むことができ、このマウンティング構造体は、ICを観察する所定の位置へツールを移動させることができ、この検査ツールは、近赤外顕微鏡、レーザアシステッド・デバイス・オルタレーション(LADA)装置、可視光プローブ、可視光顕微鏡および光子放出顕微鏡(PEM)のうちの1つである。密閉要素は、変形可能なガスケットとすることができ、シールを形成することは、ICに向かってSEM集束カラムを移動させて、密閉要素をICの裏面に対して圧縮することを含む。密閉要素は、SEM集束カラムの遠位端に装着することができる。SEMカラムは、カラム開口に装着されたカラム・アダプタ要素を有することができる。密閉要素は、このようなカラム・アダプタ要素に装着することができる。密閉要素を保持するように、カラム・アダプタ要素を適合させることができ、この密閉要素は取外し可能かつ交換可能である。カラム開口を狭めるカラム・アダプタ要素を含めることができる。例えば2mm未満または5mm未満の直径までカラム開口を狭めることができる。
【0023】
別の実施形態は、ICを検査する方法を提供する。この方法は、ICの裏面の検査対象のターゲット領域を薄くすることを含む。試験用取付け具の役目を果たす回路モジュール内にICがまだ装着されていない場合、この方法は、試験用取付け具の中にICを置き、試験用取付け具をIC内の回路要素に電気的に接続する。この方法は、SEMカラムを、ICの裏面のターゲット領域の近くの位置まで、ICに対して移動させる。この方法は次いで、SEMカラム開口とICの裏面の間に、ターゲット領域を取り囲むシールを形成し、SEMカラム開口とICの裏面の間の密閉された容積内に、少なくとも部分的な真空を生み出す。この方法は、時間変化する多数の電圧信号を、試験用取付け具から、選択されたIC回路要素に印加して、IC内に試験条件を生み出す。それらの信号は、ターゲット領域内に、時間変化する少なくとも1つの電位を誘導する。この方法は、SEMを使用して、この時間変化する少なくとも1つの電位を、ターゲット領域の表面特徴として検出する。
【0024】
この方法との適当な代替の組合せでは、多くの機能および技法を使用することができる。ICは、キャリヤ基板に装着することができ、キャリヤ基板は、ICの回路要素を外部電気端子に電気的に接続し、試験用取付け具の中にICを置くことは、外部電気端子を通して試験用取付け具をIC回路要素に電気的に接続することを含むことができる。ICを、パッケージ化されたICとすることができ、この方法はさらに、ICの裏面のターゲット領域を薄くする前に、ICの裏面を覆っているパッケージ層の少なくとも一部を除去することを含むことができる。ICの裏面を薄くすることは、ICの裏面の全体を薄くすることを含むことができる。ICの裏面を薄くすることは、ターゲット領域内のICの回路要素を露出させることを含むことができる。1ミクロン未満の層などの薄い層を回路要素の上に残すことができる。この方法は、SEMカラムをICに対して移動させて、ターゲット領域から遠ざけること、および追加の検査ツールを、ターゲット領域を検査する位置に移動させることを含むことができ、この追加の検査ツールは、近赤外顕微鏡、レーザアシステッド・デバイス・オルタレーション(LADA)装置、可視光プローブ、可視光顕微鏡および光子放出顕微鏡(PEM)のうちの1つである。この方法はさらに、追加の検査ツールを用いてICを検査した後に、その追加の検査ツールをICから遠ざけることを含むことができ、さらに、SEMカラムを、ICの裏面のターゲット領域の近くの位置に、ICに対して移動させること、SEMカラム開口とICの裏面の間に、ターゲット領域を取り囲むシールを形成すること、SEMカラム開口とICの裏側表面の間の密閉された容積内に、少なくとも部分的な真空を生み出すこと、ターゲット領域内に時間変化する電位を誘導する時間変化する多数の電圧信号を、選択されたIC回路要素に印加して、IC内に試験条件を生み出すこと、および、SEMを使用して、その時間変化する電位を、ターゲット領域の表面特徴として検出することを繰り返すことを含むことができる。
【0025】
本明細書の説明に基づく他の実施形態も可能である。例えば、SEMカラム上に置かれるように、また、密閉要素を含みまたは保持するように、カラム・アダプタ要素を構築することができる。この密閉要素は、ICチップに対してまたはICチップの周囲にシールを形成して、SEMを用いてICを検査するための局部的に排気された容積を生み出す。別の実施形態は、密閉要素を保持するように構成されたカラム遠位先端を有するSEMを含む。この密閉要素は、ICチップに対してまたはICチップの周囲にシールを形成して、SEMを用いてICを検査するための局部的に排気された容積を生み出す。別の実施形態では、SEMカラムの端部が試験用取付け具と接触したときにシールを形成するように、試験用取付け具に、エラストマー・リングなどのシールが組み込まれている。
【0026】
次に、システムのいくつかの変形実施形態を説明する。それらの例は、IC回路の検査を可能にする局部的なシールを形成することに関する着想を、さまざまな革新的な要素とともにどのように利用するのかを示すために選択されたものである。示されたそれぞれの例で、それらの革新的な要素の全てが使用されるというわけではない。
【0027】
図1は、ICを検査および診断する、いくつかの実施形態に基づくプロセスの流れ図である。図9は、本明細書の原理の一部を具体化した例示的な診断システムの断面図である。ESEM室をDUTに直接に結合することは、DUTをその通常の試験状態で動作させている間に、例えばDUTをATEテスタ上でまたは回路ボードなどのシステム内で動作させている間に、DUTのeビーム・プロービングを実施することを可能にするという課題を解決する。ESEMまたは低真空SEMは比較的に劣等な真空環境内で有効に機能する。そのため、DUTがその通常の動作環境にある間、ESEM動作を維持する目的には、DUTに対する単純なOリング密閉要素で十分である。
【0028】
次に、図1を参照し、時には図9のシステム図およびその他の図も参照する。IC DUTを検査する例示的なプロセスまたは方法は、ICに対して検査の準備を行うプロセス・ブロック102から始まる。パッケージングされていないICについては、この準備が、ブロック104で、パッケージ・プレートなどのキャリヤ基板上に装着することを含むことができる。プローブ・カードおよび適当なプローブ・ヘッドまたはソケットを使用してベア(bare)ICまたは完全なダイを検査することもできるため、いくつかの場合にはこのブロックが任意である。
【0029】
次に、(任意選択の)ブロック106で、このプロセスは、ICの裏面を、少なくともターゲット領域にわたって、場合によってはICの裏面全体にわたって、検査のための所望の深さまで薄くする。この薄化プロセスは、当技術分野においてよく知られており、適当な任意の技法によって実施することができる。いくつかの技法が、例えばShaw他の米国特許第6,872,581号明細書で説明されており、それらの技法は、用途に基づいて、およびICチップ全体を薄くするのかまたはICチップの一部分だけを薄くするのかに基づいて選択することができる。機械的なミリングおよび機械研磨を使用することができる。例えば、湿式もしくは乾式化学エッチングによる全体的基板除去、またはレーザ化学エッチング、フェムト秒レーザ・アブレーション、集束イオン・ビームもしくはRIE(反応性イオン・エッチング)による局所的基板除去など、他の薄化技法を使用することもできる。図2は、IC10の裏面のターゲット領域12の位置でICの一部分だけを薄くする例を示す。このICは、フリップチップの形態で、キャリヤ基板またはパッケージ・プレート上に装着されている。このキャリヤ基板またはパッケージ・プレートは、ICの前面の端子回路要素と対向しており、それらの端子回路要素を、キャリヤ板6の向かい合う面のはんだボールに電気的に接続する。選択された多数のターゲット領域を薄くすることもでき、または、図3Aの断面に示されているようにIC10の全体を薄くすることもできる。図3Aには、キャリヤ基板6に装着された薄くされていないIC10が示されており、この薄くされていないIC10をその裏面11を横切って薄くして、図3Bの薄くされたIC10’にする。いくつかの実施形態では、STI(浅いトレンチ相互接続)層などの検査したい回路要素を露出させるのに必要な深さまで、薄くされたIC10’を薄くし、または、他の実施形態では、検査したい回路要素の上に薄いシリコン層を残す。一般に、以下で使用されるとき、「IC10」(図2~7および9を参照されたい)は、さまざまな技法に従って薄くした薄型ICを指す。最も好ましい方法では、ターゲット領域のICの裏面の表面に最も近い回路要素からの厚さが50ナノメートル未満である層など、非常に薄い層を残す。残す層の厚さは、例えば500nmなど1ミクロン以下であることが好ましいが、本明細書の技法を、2または3ミクロンなどこれよりも厚い層を残す知られているプロセスと一緒に使用することもできる。さらに、基板材料が異なれば、所望の測定のタイプに応じて、および外表面11とある回路要素との間の結果として生じる電磁結合に応じて、残す厚さを変える必要があることもある。このステップで、完全にパッケージ化されたIC、パッケージ化されていないICまたは部分的にパッケージ化されたICを薄くすることができる。
【0030】
次に、図1の(任意選択の)ブロック108で、このプロセスは、試験用取付け具の中にIC10を置きまたは装着する。この置くことまたは装着することは、IC10のキャリヤ基板上のはんだバンプを使用して、プローブ・カードの試験ソケットの中に置くこと、または回路ボードに装着することを含むことができる。一部の被試験デバイスは、ホスト・システムまたは適当な試験用回路ボードに既に装着された状態で提供され、このプロセスは、DUTにアクセスできる限りにおいて適当な任意の回路ボード上で実施することができるため、このステップは、任意選択のステップとして示されている。本明細書の技法の他の利点は、それらの技法では、動作状態にあるホスト・システムにIC10が装着された多くの場合に評価が可能なことである。回路ボードまたは他の回路モジュール、例えばマルチチップ・モジュールにIC10がまだ装着されていない場合に、このプロセスは一般に、IC10を装着することを含む。図4の例では、試験用取付け具が、コネクタ5を有するプローブ・カード4に接続された自動試験機器(ATE)3を含む。コネクタ5は、被試験ICがパッケージ化されたICなのか、キャリヤ上に装着されたICなのか、またはベアICなのかに応じて、およびそのICとともに使用される端子のタイプに応じて、プローブ・ヘッド、ソケット・アダプタまたは他の適当なアダプタとすることができる。試験用取付け具は、はんだボール、はんだバンプまたはピンなどのキャリヤ基板の外部電気端子に電気的に接続するのに必要な手法で構築される。図6の例では、試験用取付け具が試験用回路ボードを含み、この試験用回路ボードに、パッケージ化された薄型IC10が、通常ははんだ付けによって装着される。これらの例については後にさらに説明する。
【0031】
次に、このプロセスは、ブロック110で、試験用取付け具を移動および動作の範囲内に移動させることによって、試験用取付け具を、試験システム内の所定の位置まで移動させる。このような位置の例は例えば、ATE3を示す図9のシステム図に示されており、この図では、ATE3の取り付けられたプローブ・カード4およびコネクタ5が、SEMの上方のSEM20の動作範囲内の所定の位置にある。動作範囲は、ICに対してSEMを移動させることによってSEMが走査することができる領域を意味する。図9の試験システムについては後にさらに説明する。
【0032】
ブロック112で、SEMカラム開口とICの裏面との間に密閉要素15を配置する。密閉要素15は通常、ゴム、プラスチックまたは複合材料などの変形態様可能な公知の適当な材料でできた、Oリングまたはガスケットなどの変形可能なあるタイプのシールである。前述のとおり、密閉要素15は、SEMカラム20の開口の遠位側に密閉要素15を取り付けるやり方、SEMカラム20とIC10の間の所定の位置に別の支持構造体を用いて密閉要素15を支持するやり方、またはIC10の裏面に密閉要素15を取り付けるやり方など、いくつかのやり方で配置することができる。好ましい変形態様では、SEMカラムの遠位端に密閉要素が既に固定されており、動作と動作の間もそこに留まる。密閉要素15が所定の位置に置かれた後、このプロセスは、次に、ブロック114で、SEMカラムを、ICの裏面のターゲット領域の近くの位置まで、IC10に対して移動させる。この移動は、密閉要素15が、IC10またはIC10のパッケージ材料もしくはIC10のキャリヤ基板と接触し、それによってSEMカラム20の開口とIC10の裏面との間にターゲット領域を取り囲むシールを形成するような態様で実施される。この移動は、SEMカラム20とICの裏面の対向する表面間で密閉要素を圧縮して強いシールを形成するのに十分な遠さであることが好ましい。ブロック114におけるこの相対移動の例が図4~7に示されている。SEMカラム20の位置を測定することによって、または密閉要素の例えばICに対する圧力を測定することによって、この移動を、所望のシーリング圧力を生み出すように制御することができる。Oリング型の密閉要素を圧縮することが好ましいが、他のシーリング法およびシーリング手段を、密閉された領域(SEMカラムおよびICの裏面)の一方または両方の側に使用することもできる。例えば、接着剤によって、密閉要素を一方または両方の側に保持することができる。シーリング発泡体またはシーリング充填材を使用して、密閉要素を一方もしくは両方の側に取り付けること、または密閉要素の全体を形成することもできる。
【0033】
図4A~Bは、キャリヤ基板6などのキャリヤ基板に装着されたベア(パッケージ化されていない)で薄型のIC10の裏面に対するシールを形成するためのSEMカラム20の一連の移動を示す断面図である。装着されたIC10は、ソケットまたはプローブ・ソケットなどのコネクタ5を用いてプローブ・カード4に接続されている。密閉要素15は、SEMカラム20の遠位端とIC10の間に、カラム開口を取り囲んで配置される。密閉要素は、SEMカラム20の遠位端の開口の周囲に装着されることが好ましいが、フィッティング、クランプなどの別の手段が密閉要素を所定の位置に保持してもよく、またはカラム開口の上に密閉要素を置くことを可能にする弾性スリーブを用いて密閉要素を構築してもよい。図4Aは、プロセス・ブロック112の後の相対位置を示し、図4Bは、プロセス・ブロック114の移動の後の相対位置を示す。このシールの形成は、IC10に向かってSEMカラム20を移動させて、密閉要素15をIC10の裏面に対して圧縮することを含むことができる。IC10に対するSEMカラム20の移動は、その上にSEMカラム20が装着された運動ステージ22(図9)を移動させることによって実行されることが好ましい。示されるように、密閉要素15は中心開口を含み、この中心開口によって密閉要素15は、SEMカラムとターゲット領域の間に開口を形成する。このシールは、試験用取付け具全体をSEM真空室内に置く必要なしにSEMを部分真空条件で動作させることを可能にする。このプロセスを、装着されていないICで使用することもできるが、そのような場合、試験装置への電気接続は、より厳格さを要する工程となる。図5A~Bは、同様の配置を示すが、この配置では、IC自体に対して直接に密閉する代わりに、ICのキャリヤ基板6に対してシールが実施される。IC10の面積は通常、キャリヤ基板6の面積よりも小さいため、このようなシールは、SEM検査のための密閉された環境でIC10を取り巻くために効果的に実施することができる。
【0034】
図6A~Bは、パッケージ化されたIC10の裏面に対してシールを形成するためのSEMカラム20の相対移動を示す別の例示的な一連の断面図である。このプロセスのこの実施形態では、被試験ICがパッケージ化されており、被試験ICが、シリコンICチップ10と、キャリヤ基板6と、試験用回路ボード62にICを装着し電気的に接続する目的に使用されるキャリヤ基板上のはんだボールまたははんだバンプと、パッケージ本体8とを含む。パッケージ本体8は、プラスチックまたは公知の他のICパッケージ材料とすることができる。プロセス・ブロック114の相対移動の後の位置が図7に示されており、この図では、密閉要素15が、SEMカラム20の遠位端とパッケージ化されたICの裏面との間で圧縮されている。示されているように、この変形態様では、IC10のターゲット領域12のところだけが薄くされており、薄化プロセスでは、パッケージ本体の材料とIC材料の両方を、所望の深さに到達するように除去した。パッケージ化されたICでは、他のいくつかのプロセスを使用することができる。IC10の裏面からパッケージ本体8を完全に除去することができる。これに続いて、ICの裏面全体を薄くし、または1つもしくは複数の所望のターゲット領域を個別に薄くすることができる。したがって、図7A~Bに示されているように、この相対移動は、ベアICチップの裏面に対してシールを形成し、またはパッケージの裏面に対してシールを形成することができる。この相対移動は、薄くされていない部分に対して、ターゲット領域とは異なる深さまで薄くされた部分に対して、またはターゲット領域の周囲のターゲット領域と同じ深さまで薄くされた領域(例えばIC10の裏面の表面全体が薄くされたときがこれに当たる)に対してシールを形成することができる。シールが形成される領域は平坦であることが好ましいが、これは限定するものではなく、さまざまなタイプの密閉要素が、密閉要素15の下のIC表面の凹凸または他の変動を許容し、適当なシールを達成する。さらに、ここに記載された例示的な方法は、IC(例えば薄くされたシリコンICチップ、キャリヤ基板またはパッケージ充填材)の表面に対してシールを形成するが、これは限定するものではなく、別の実施形態は、例えば、幅の狭いトレンチをミリングし、その幅の狭いトレンチに細い密閉要素を押し込みまたは接着剤で固定することによって、このような表面のうちの1つまたは複数の表面に密閉要素を埋め込む。
【0035】
再び図1を参照する。シールを形成した後、このプロセスは次にブロック116に進み、ブロック116で、このプロセスは、SEMカラム20の開口とIC10の裏側の表面との間の密閉された容積内に少なくとも部分的な真空を生み出すように、真空ポンプを動作させる。使用するポンプは、SEMカラムを排気するのに使用するポンプと同じポンプとすることができ、または、真空品質の向上を可能にするために、別のポンプを、SEM内の遠位端の近くの真空孔とともに提供することもできる。最高品質のSEM感度およびSEM分解能を可能にするためには、この真空ができるだけ強いことが好ましい。ポンピング時間の制約によってまたはブロック114で形成されるシールの品質によって、真空品質が制限されることがある。いくつかの変形態様では、この少なくとも部分的な真空の真空レベルが1kPa以上である。この文脈で、環境制御型SEM(ESEM)または低真空SEM(LVSEM)をSEM300として使用すると、より低い真空品質(すなわちより高い圧力)での動作が可能になる。これについては後にさらに論じる。例えば、図8Aに示されているように、このSEMは、SEMカラム20の容積とターゲット領域12を取り囲む密閉された容積との間に圧力制限絞り24を含むことができる。別の変形態様は圧力制限絞りを持たず、その場合には、生み出される密閉された容積が、SEMカラム20の内側の真空と共通である。
【0036】
シールを形成し、SEMの遠位端とターゲット領域との間の容積に真空を形成した後、このプロセスはプロセス・ブロック118に進み、プロセス・ブロック118で、このプロセスは、IC10の回路要素に電圧を印加することにより、ICの検査を開始する。この電圧は、ターゲット領域内に電位を誘導する。次に、ブロック120で、このプロセスは、SEMを使用して、この電位を、ターゲット領域の表面特徴として検出する。ブロック118および120は、一定の電気信号または時間変化する電気信号を印加して、IC内の回路の動作試験条件を、当技術分野で公知の適当な技法に従って生み出すことを含むことができる。このプロセスのいくつかの変形態様は、時間変化する少なくとも1つの電位をターゲット領域内に誘導する時間変化する多数の電圧信号を、選択されたIC回路要素に印加して、IC内に試験条件を生み出すこと、および、次いで、SEMを使用して、その時間変化する電位を、ターゲット領域の表面特徴として検出することを含む。先行技術の技法では、このような試験を実行するのに一般に、その中でSEMが動作する真空室内にIC10を置き、試験に必要な全ての電気信号を、パススルーを通して真空室内に接続するか、または真空室内で生成する必要があった。本明細書の技法では、SEMが動作している真空の外側で試験信号をICに接続することができ、本明細書の技法は、数十または数百の信号をICに接続して所望の試験条件を生み出すことによって、ICを試験する動作試験条件を生み出すプロセスを大幅に単純にする。
【0037】
ブロック120での電位の検出は、いくつかの変形実施形態を含む。いくつかの変形態様では、この電位の検出が、ターゲット領域に沿った多数の特徴部分の電位を検出することによって表面の電位分布画像を得ることを含む。この方法は、電位分布画像を使用して、IC内の回路要素の位置を突き止めること、または電位分布画像を使用して、IC内の回路要素の故障を検出することを含むことができる。SEMを使用してICの裏面の電圧を検出することを、本明細書の技法と組み合わせると、試験プロセスおよび試験装置を改良することができる。例えば、本明細書の背景の項で論じたとおり、露出した回路要素の位置で電圧信号を測定する技法、または所望の深さまでICを薄くした後に残った薄いシリコン層の下の回路要素のところで電圧信号を測定する技法は公知である。本発明のさまざまな実施形態を使用することによって、それらの任意の技法を改良することができる。
【0038】
図10は、ルミネセンスも検出するIC検査プロセスの変形実施形態を示す部分流れ図を示す。この技法は、SEMカラム20の開口の近くにまたはSEMカラム20の開口の位置に配置された、図9に示された光子検出器26などの光子検出器を使用する。このような検出器を使用すると、陰極ルミネセンスまたは光ルミネセンスを、本明細書のSEM測定と組み合わせることができる。プロセス・ブロック1002で、このプロセスは、SEMを用いてICの裏面を走査する。この走査は、図1に関して論じた走査とは別の走査または図1に関して論じた走査と同じ走査とすることができる。走査している間に、このプロセスは、ブロック1004で、SEMで走査している間に密閉された容積内のICから放出された光子を検出する。この光子の検出は、ターゲット領域内またはターゲット領域の周囲に存在する全ての回路の中の所望の位置への誘導に特に役立つ追加のデータを提供する。このブロックは、所望のターゲット回路の位置を突き止めること、およびその回路の位置で測定するためにSEMの向きを合わせることを含むことができる。
【0039】
次に、図9をより詳細に参照すると、本明細書の原理の一部を具体化した例示的な診断システムを示す断面が、(尺度が一定ではない)略図の形で示されている。全体として、IC DUTを検査するシステム900が示されており、システム900は、図示されたSEM300に加えて、ICの電気的故障解析(EFA)のために従来使用されているツールを含む多数の検査ツールを含むことができる。例えば、Thermo Fisher ScientificのMeridianシステムなどの光学的故障分離(OFI)システム内に、本明細書に教示されたSEMを設置することができ、このシステムを、本明細書の方法に従ってプログラムすることができる。
【0040】
試験用取付け具の中に保持された、例えば図示されたIC10などの、少なくとも1つのIC被試験デバイスを検査するシステム900が示されている。この変形態様の試験用取付け具は、プローブ・カード4に接続されたATE3を含み、プローブ・カード4は、IC10に接続するためのコネクタ5を有する。コネクタ5は、被試験ICがパッケージ化されたICなのか、キャリヤ上に装着されたICなのか、またはベアICなのかに応じて、およびそのICとともに使用される端子のタイプに応じて、プローブ・ヘッド、ソケット・アダプタまたは他の適当なアダプタとすることができる。いくつかの場合には、パッケージ・プレートを持たないベアICに接続するために、プローブを備えるソケット・コネクタが使用され、それらのプローブは、ICの前面の表面トレースに形成された端子に接続する。試験用取付け具は、IC端子に直接に、またははんだボール、はんだバンプもしくはピンなどのキャリヤ基板の外部電気端子を通してIC端子に間接的に電気接続するのに必要な手法で構築される。試験用取付け具のコネクタ5は、ICに多数の高速電気信号を結合し、ICからの多数の高速電気信号を結合する多数の電気接続を含み、この電気接続は、後述するように、密閉された容積の外側でICに結合される。ある先進のコントローラICに関しては、ICに結合されるさまざまな高速電圧信号の数が数百になることがある。図6の例に示されているように、その代わりに、試験用取付け具に対して、試験用回路ボードを使用することもでき、試験用回路ボードのフットプリント上に、パッケージ化された薄型IC10が通常ははんだ付けによって装着される。
【0041】
電子源302と、ターゲット領域に向かって電子ビーム332を放出する開口を遠位端に有する集束カラム20と、電子検出器304とを含むSEM300が、ターゲット領域からの電子を検出するように配置されている。この変形態様のSEM300は、標準SEM、環境制御型SEM(ESEM)、低真空SEMカラムまたは他の適当なSEMとすることができる。
【0042】
この変形態様では、所望の全てのターゲット領域への直接経路を含むカラム20の開口のすぐ内側に装着された電子検出器304が示されているが、別の変形態様では、電子検出器304が、(密閉要素15の内側の)カラムの遠位開口の外面に存在し、または開口自体の空間内に装着され、IC10のターゲット領域からの電子を検出するように、遠位方向のIC10の方を向いて、密閉要素15の内側に配置される。さらに、SEMカラム20の遠位開口の近くまたはSEMカラム20の遠位開口の位置に光子検出器26が配置されており、光子検出器26は、(やはり密閉要素15の内側の)カラム開口の遠位面に置くことができ、または開口の近くのビーム経路の近くに装着することができる。この変形態様では、光子検出器の形状が一般にリング形であり、このリングが、電子検出器304によって部分的に隠されることがあるが、別の変形態様は、例えば、弓形に分割されたリングなどの他の適当な形状を使用し、電子検出器を置くことを可能にするためにリングから弓形が取り外される。このような検出器を使用すると、ビームが有効であるときにIC10からのルミネセンスを測定することができる。検出器304および26は、通常はSEMカラムの外側の真空室内または環境制御室内に装着されるアイテムであるが、このケースでは、密閉要素15が、カラムの外側に非常に小さな真空環境を生み出す働きをし、カラムの外側に、検出器を置く空間をほとんど残さないことに留意されたい。示されているように、密閉要素15は、SEMカラムの遠位端に配置されるように適合されており、密閉要素の中心開口は、カラム開口と整列して、電子が中心開口を通過することを可能にする。
【0043】
電子ビーム332は、陰極353と陽極354の間に電圧を印加することによって陰極または他の電子源353から放出される。電子ビーム332は、集束レンズ356および対物レンズ358によって微細なスポットに集束する。電子ビーム332は、偏向コイル360によって、試料を2次元的に走査する。システム・コントローラ333は、SEMシステム300のさまざまな部分の動作を制御する。SEMカラム20は、コントローラ333の制御の下で、真空ポンプ368によって排気される。真空ポンプ368は、SEMカラム20に接続された真空導管を有するように示されている。この変形態様では、真空ポンプ368が、SEMカラム20の内側と、カラム20の遠位端の外側であって密閉要素15の内側にある密閉された領域内の両方で真空を生み出す。別の変形態様では、カラム・アダプタ要素が、SEMカラムの外側であってSEMカラムと密閉要素15の間に、SEMカラムそれ自体よりもわずかに大きな真空容積を提供する。
【0044】
システム900はさらに、SEMおよび試験用取付け具を保持する1つまたは複数のマウンティング構造体を含む。この1つまたは複数のマウンティング構造体は、SEMと試験用取付け具の間の相対運動を提供する。それらのマウンティング構造体のうちの少なくとも1つは、密閉要素およびSEMカラムから離隔したICを試験用取付け具が保持している、作動しない第1の位置と、少なくとも部分的な真空まで排気することができる密閉された容積を生み出すシールを、ICの裏面とSEMカラムの遠位端との間に形成するために、その裏面が密閉要素に対して置かれたICを試験用取付け具が保持している、動作する第2の位置とに調整可能である。密閉された容積は、ICの裏面からSEMカラムの圧力制限絞りまで広がることができる。検査するターゲット領域を含むICの裏面は、密閉された容積の囲いの一部を形成する。図示された例では、マウンティング構造体が、X,Y,Zステージ22と、ATE3を所定の位置に保持するように設計されたラックまたはフレーム28とであり、マウンティング構造体は、新たなDUTを取り付けるためにATE3を分離しまたはフレーム28の外に旋回させることを可能にする。SEM300はXYZステージに装着されており、XYZステージは、ICに対してシールを形成する本明細書に記載された移動、および別のツールがICを検査することを可能にするためにSEM300をIC10から遠ざける本明細書に記載された移動を可能にする。この変形態様では、検査ツールを移動させるように配置されているが、これは限定するものではなく、別の実施形態は、試験用取付け具を移動させることによって、SEMカラム20とIC10の相対移動を実施することに留意されたい。例えば、ステージ22を、多数の検査ツールを保持したX,Y,Z移動が可能な回転ステージとすることができる。任意選択で、示された1つまたは複数の追加の検査ツール390をX,Y,Zステージ22に装着することもできる。これらのツール390は、例えば近赤外顕微鏡、レーザアシステッド・デバイス・オルタレーション(LADA)装置、可視光プローブ、可視光顕微鏡および光子放出顕微鏡(PEM)を含む。
【0045】
システム・コントローラ333は、ブロック図の形でしか示されていないが、システム・コントローラ333は、異なるツールに対する別個のコントローラとして、およびX,Y,Zステージ22などのマウンティング構造体の移動を制御する別個のコントローラとして具体化することができる。システム・ユーザ・インタフェースを提供するため、通常は、それぞれのコントローラにPCが動作可能に接続またはネットワーク化される。システム・コントローラ333または接続された制御PCは、SEMに動作可能に接続されることによって本明細書の方法の自動化された部分を実行するのに必要なソフトウェアを含むことを理解すべきである。例えば、システム・コントローラ333は、回路を解析するためにターゲット領域を走査するようにSEMを制御するようプログラムされる。例えば、SEMは、ターゲット領域を走査して、ICの裏面の薄くされたターゲット領域上での2次電子の放出を観察することによって、ターゲット領域の表面の電位を検出することができる。このような画像化は電位分布画像化と呼ばれる。例えばEBIC、RCE、EBAC、EBIVまたはEBIRCHを含む、SEMを使用する任意の回路解析または回路試験を実行することができる。
【0046】
図8A~Eは、密閉要素を保持しもしくは密閉要素と係合するために、および/または特定のICを検査するのには大き過ぎることがあるカラム開口のサイズを調整するためにSEMカラムの遠位端で使用することができる構造体の変形実施形態を示す断面図である。これらの例示的な構造体は、本明細書で論じた薄化状況(パッケージ化されている、パッケージ化されていない、部分的に薄くされている、または完全に薄くされているなど)の任意の変形実施形態とともに使用することができる。図8Aに示されているように、SEMカラム20は、カラム開口に入ることができる空気またはガスの量を制限してSEM結果を改善する圧力制限絞り24(PLA)を含むことができる遠位開口を有する。開口の周囲には、密閉要素15が、圧力制限絞り24の外面に接して置かれている。強く堅い絞りが使用される場合には、密閉要素15を、カラム20の端部開口の半径よりも小さくすることができ、PLA24の中心開口の周囲に密閉要素を置いて、密閉された領域のサイズを小さくすることができる。カラム20内に真空を提供するため、ポンプは通常、カラム20内に接続されるため、圧力制限絞りは、カラム20とIC10の間の密閉された容積内に真空を生み出すためにポンプによって所望の真空レベルまで排気するのに必要な時間を増加させると考えられることに留意されたい。SEMカラムの端から離れたSEMカラム内のより高い位置にPLAを配置することもできる。
【0047】
図8Bは、カラム開口を狭めるためにカラム20の開口に装着されたカラム・アダプタ要素18を有するSEMカラム開口の断面図を示す。このような構造体を使用して、チップまたは実際の開口サイズよりもはるかに小さな所望の領域に対して密閉するように、カラム開口を適合させることができる。例えば、カラム・アダプタ要素は、開口サイズを、元の10mmのサイズから、直径5mm、3mm、2mmまたは2mm未満に低減させることができる。実質的に曲がることなくカラム20の遠位端からシールに圧力を加えるため、金属または硬質プラスチックなどの堅い材料でアダプタ18を製作することができる。このアダプタは、カラム20の遠位端に被せられるように、またはカラム20の遠位端に取り付けられるように製作される。真空を形成することを可能にするため、このような取付けは気密性のものであるべきである。図8Cは、カラム・アダプタ要素の別の例19を示す。このケースでは、カラム20の長さが延長され、開口サイズが狭められている。密閉要素が取外し可能かつ交換可能となるように、密閉要素の取外しを単純にするような形で密閉要素を保持するよう、カラム・アダプタ要素を適合させることができる。例えば、アダプタ要素の遠位表面に、密閉要素15を保持するための接続具またはトレンチを形成することができる。検査のためにICを動作させている間の熱を放散させるためにICの裏面に対して置かれるヒート・スプレッダを、カラム・アダプタ要素が形成してもよい。アダプタ要素は、密閉要素の半径の内側もしくは密閉要素の半径の外側またはその両方において、ダイアモンド・ヒート・スプレッダなどのヒート・スプレッダをICの裏面に対して保持することができる。
【0048】
図8Dは、同様のカラム・アダプタ要素21を示す断面図である。このケースでは、カラム・アダプタ要素21の遠位端の表面に密閉要素15が接着されている。真空の漏れは密閉要素15の縁の周囲で起こるため、真空管路取付けポート23によって密閉要素の近くに追加の真空管路を取り付けて、シールが形成された後の真空の形成を速め、ビーム作動中のターゲット領域付近の真空品質を向上させることができる。SEMカラム20の遠位端の近くに、好ましくは数mm以内の距離のところに、同様の真空ポートを提供することもできることに留意されたい。
【0049】
図8Eは、IC10をじかに取り囲む試験用取付け具の表面に対して密閉要素15が配置された別の変形実施形態の断面図である。この配置は、試験用取付け具がプローブ・カードを使用しているのか、または回路ボードもしくは別の適当な構造体を使用しているのか関わらず、実施することができる。このようなケースでは、排気する必要がある容積を最小化するため、IC10の近くにシールを置くことが好ましい。シールの品質を最大にするため、いくつかの実施形態では、試験用取付け具が、表面に沿って存在するトレンチまたはコーティングなどの受取り構造体を有し、密閉要素15が、この受取り構造体に対して置かれる。カラム・アダプタ要素なしでこれらの技法を使用することもでき、その場合には、試験用取付け具とSEMカラム20の遠位端の間に密閉要素15が直接に置かれる。
【0050】
図11は、SEMカラム・アダプタ要素を使用して局部的なシールを形成する例示的な方法の流れ図である。この図は、いくつかの代替実施形態について、図1のプロセス・ブロック112および114で使用することができる例示的な技法を提供する。ブロック1102でシールを形成するこのプロセスは、カラムの遠位端に取り付けられるように構築された図8A~Dのカラム・アダプタ要素などのSEMカラム・アダプタ要素を提供することから始まる。この要素は、カラム開口を狭めるように構築されていてもよく、または開口をあまり狭めなくてもよい。例えば、いくつかのカラム・アダプタ要素は、カラム開口の直径よりも大きなICに対してシールを形成する構造体を提供する。カラムの遠位端へのアダプタの取付けは、カラムの遠位端の機械加工された整合するねじ山にアダプタをねじ付けること、溶接もしくは他の手法でアダプタを接着すること、または気密性が高く堅い他の適当な取付け方法を含むことができる。次に、ブロック1106で、このプロセスは、カラム・アダプタ要素の遠位側に密閉要素を配置する。この密閉要素は、本明細書に記載された任意の形態および方法、またはさまざまな代替形態をとることができる。SEMカラム20の構造が固定されている実施態様または所望の用途に対してカラム20が特に設計されていない実施態様に対して、カラム取付け要素の使用は、要素のサイズ、形状および取付け方法を設計する際の自由度をはるかに大きくする。カラム・アダプタ要素の遠位端とICの間に密閉要素を配置した後、このプロセスは次いで、ICに対してSEMカラムを移動させて、図1の方法と同様にICの裏面に対して密閉要素を置き、圧縮または本明細書に記載された他の適当な技法を用いてシールを形成する。このプロセスは次いで、前述のシール内の局部的な容積内に、少なくとも部分的な真空を生み出し続ける。
【0051】
本発明の好ましい方法または装置は多くの新規の態様を有する。本発明は、目的の異なるさまざまな方法または装置として実施することができるため、全ての実施形態に全ての態様が存在する必要はない。さらに、記載された実施形態の態様の多くは別個に特許を受けることができる。本発明は幅広い適用可能性を有し、上記の例において説明し示した多くの利点を提供することができる。本発明の実施形態は、具体的な用途によって大きく異なり、全ての実施形態が、これらの全ての利点を提供するわけではなく、本発明によって達成可能な全ての目的を達成するわけではない。
【0052】
コンピュータ・ハードウェア、ハードウェアとソフトウェアの組合せ、またはコンピュータ可読の非一時的記憶装置に記憶されたコンピュータ命令によって、本発明の実施形態を実現することができることを認識すべきである。本発明の方法は、標準プログラミング技法を使用し、本明細書に記載された方法および図に基づいて、コンピュータ・プログラムとして実現することができ、このコンピュータ・プログラムは、コンピュータ・プログラムを含むように構成されたコンピュータ可読の非一時的記憶媒体を含み、そのように構成された記憶媒体は、コンピュータを、予め決められた特定の方式で動作させる。コンピュータ・システムと通信するため、それぞれのプログラムは、高水準手続き型プログラミング言語またはオブジェクト指向プログラミング言語で実現することができる。しかしながら、所望ならば、それらのプログラムを、アセンブラ言語または機械語で実現することもできる。いずれにせよ、その言語は、コンパイルまたは解釈される言語とすることができる。さらに、そのプログラムは、そのプログラムを実行するようにプログラムされたIC上で実行することができる。
【0053】
さらに、方法論は、限定はされないが、荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置とは別個の、荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置と一体の、または荷電粒子ツールもしくは他の画像化装置と通信するパーソナル・コンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレーム、ワークステーション、ネットワーク化されたコンピューティング環境または分散コンピューティング環境、コンピュータ・プラットホームなどを含む、任意のタイプのコンピューティング・プラットホームで実現することができる。本発明の諸態様は、取外し可能であるか、またはコンピューティング・プラットホームと一体であるかを問わない、ハードディスク、光学式読取りおよび/または書込み記憶媒体、RAM、ROMなどの非一時的記憶媒体または記憶装置上に記憶された機械可読コードであって、プログラム可能なコンピュータが、本明細書に記載された手順を実行するために、その記憶媒体または記憶装置を読んだときに、そのコンピュータを構成し、動作させるために、そのコンピュータが読むことができるように記憶された機械可読コードとして実現することができる。さらに、機械可読コードまたは機械可読コードの一部を、有線または無線ネットワークを介して伝送することができる。本明細書に記載された発明は、マイクロプロセッサまたは他のデータ処理装置と連携して上述の諸ステップを実現する命令またはプログラムを含む、これらのさまざまなタイプの非一時的コンピュータ可読記憶媒体、およびその他のさまざまなタイプの非一時的コンピュータ可読記憶媒体を含む。本発明はさらに、本明細書に記載された方法および技法に従ってプログラムされたコンピュータを含む。
【0054】
入力データに対してコンピュータ・プログラムを使用して、本明細書に記載された機能を実行し、それによって入力データを変換して、出力データを生成することができる。この出力情報は、ディスプレイ・モニタなどの1つまたは複数の出力装置に出力される。本発明の好ましい実施形態では、変換されたデータが物理的な実在する物体を表し、これには、その物理的な実在する物体の特定の視覚的描写をディスプレイ上に生成することが含まれる。
【0055】
特に明記しない限り、本出願では、用語「加工物」、「試料」、「基板」および「試験体」が相互に交換可能に使用される。さらに、本明細書において、用語「自動」、「自動化された」または類似の用語が使用されるとき、これらの用語は、自動プロセスもしくは自動ステップまたは自動化されたプロセスもしくは自動化されたステップの手動による開始を含むものと理解される。
【0056】
以下の議論および特許請求の範囲では、用語「含む」および「備える」が、オープン・エンド型の用語として使用されており、したがって、これらの用語は、「...を含むが、それらだけに限定されない」ことを意味すると解釈すべきである。ある用語が本明細書で特に定義されていない場合、その用語は、その通常の一般的な意味で使用されることが意図されている。添付図面は、本発明を理解する助けとなることが意図されており、特に明示されていない限り、一定の尺度では描かれていない。
【0057】
本明細書に記載されたさまざまな特徴は、機能する任意の組合せまたは代替の組合せで使用することができ、本明細書の実施形態に記載された組合せだけで使用されるわけではない。そのため、本開示は、そのような任意の組合せまたは代替の組合せの文書による説明を提供するものと解釈すべきである。
【0058】
本発明および本発明の利点を詳細に説明したが、添付の特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された実施形態に、さまざまな変更、置換および改変を加えることができることを理解すべきである。さらに、本出願の範囲が、本明細書に記載されたプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法およびステップの特定の実施形態に限定されることは意図されていない。当業者なら本発明の開示から容易に理解するように、本明細書に記載された対応する実施形態と実質的に同じ機能を実行し、または実質的に同じ結果を達成する既存のまたは今後開発されるプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを、本発明に従って利用することができる。したがって、添付の特許請求の範囲は、その範囲内に、このようなプロセス、機械、製造、組成物、手段、方法またはステップを含むことが意図されている。
【符号の説明】
【0059】
3 自動試験機器(ATE)
4 プローブ・カード
5 コネクタ
6 キャリヤ基板
10 IC
15 密閉要素
20 SEMカラム
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9
図10
図11