(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】眼内レンズ挿入器具、眼内レンズ押出補助具および眼内レンズ挿入器具の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20220317BHJP
A61F 9/007 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A61F2/16
A61F9/007 200Z
(21)【出願番号】P 2017525449
(86)(22)【出願日】2016-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2016068852
(87)【国際公開番号】W WO2016208725
(87)【国際公開日】2016-12-29
【審査請求日】2019-06-17
【審判番号】
【審判請求日】2021-02-25
(31)【優先権主張番号】P 2015128062
(32)【優先日】2015-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2016009092
(32)【優先日】2016-01-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000163006
【氏名又は名称】興和株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 研一
(72)【発明者】
【氏名】安部 修治
(72)【発明者】
【氏名】翠川 玄洋
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】津田 真吾
【審判官】平瀬 知明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/089250(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0018548(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼内レンズを眼内に挿入する挿入筒部を先端に有する略筒状の器具本体と、
前記器具本体内を摺動可能に設けられ、前記眼内レンズを押圧して前記挿入筒部に移動させて眼内に押し出す眼内レンズ押出部材
であって、後端側に板状の押圧板部が設けられた眼内レンズ押出部材と、
前記器具本体に固定される筒状部材と、
前記筒状部材内に流体を供給する流体供給手段と、
前記筒状部材内に設けられ、前記供給される流体の圧力で移動する移動部材と、
を備え、
前記眼内レンズ押出部材は、
前記押圧板部が前記移動部材によって押されることにより前記器具本体内を摺動し、
前記眼内レンズ押出部材と前記移動部材は、互いに分離
された別体として設けられている
ことを特徴とする眼内レンズ挿入器具。
【請求項2】
前記筒状部材は、前記眼内レンズ押出部材の摺動方向に延在し、
前記移動部材は、前記筒状部材内を第1の領域と第2の領域とに仕切る板壁体であり、
前記眼内レンズ押出部材は、前記第2の領域内に配置されており、
前記流体供給手段によって前記流体が前記第1の領域に供給され、
前記移動部材は、前記第1の領域に供給される前記流体の圧力で前記筒状部材の内壁に当接しながら移動する
ことを特徴とする請求項1に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項3】
前記板壁体は前記筒状部材の内壁と当接する弾性部材を有する、ことを特徴とする請求項2に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項4】
前記眼内レンズ押出部材の前記摺動方向に垂直な面における前記板壁体の断面の断面積が、前記摺動方向に垂直な面における前記器具本体の断面の断面積よりも大きい、
ことを特徴とする請求項2または3に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項5】
前記流体供給手段は、前記筒状部材内に前記流体を供給する供給口を有し、
前記供給口の内径は、前記筒状部材の内径よりも小さい
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項6】
前記流体供給手段の前記供給口には、軟性部材により形成されるチューブが接続可能である、ことを特徴とする請求項5に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項7】
前記流体供給手段は、前記筒状部材内に前記流体を供給する供給口を有し、
前記眼内レンズ挿入器具がさらに、
前記供給口に接続された、軟性部材により形成されるチューブと、
前記チューブに設けられた、前記流体の流路と前記流体の流路とは別の流路とを切り替える流路切替手段と、
前記別の流路に接続される注射筒と
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項8】
前記流体供給手段は、前記筒状部材内に前記流体を供給する供給口を有し、
前記眼内レンズ挿入器具がさらに、
前記供給口に接続された、軟性部材により形成されるチューブと、
前記チューブに設けられた、前記流体の流路の遮断および開放を制御する流路開閉手段と
を備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項9】
前記器具本体の収納部には、あらかじめ眼内レンズが収納されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の眼内レンズ挿入器具。
【請求項10】
眼内レンズを眼内に挿入する挿入筒部を先端に有する略筒状の器具本体に固定される筒状部材と、
前記筒状部材内に流体を供給する流体供給手段と、
前記筒状部材内に設けられ、前記供給される流体の圧力で移動する移動部材と、
を備え、
前記器具本体内を摺動可能に設けられ、前記眼内レンズを押圧して前記挿入筒部に移動させて眼内に押し出す眼内レンズ押出部材
であって後端側に板状の押圧板部が設けられた眼内レンズ押出部材が、前記移動部材によって押されることにより前記器具本体内を摺動し
、
前記移動部材は、前記眼内レンズ押出部材と分離
された別体として設けられている
ことを特徴とする眼内レンズ押出補助具。
【請求項11】
請求項1から9のいずれか1項に係る眼内レンズ挿入器具の製造方法であって、
前記器具本体に、前記眼内レンズ押出部材
であって、後端側に板状の前記押圧板部が設けられた前記眼内レンズ押出部材を挿入する工程と、
前記眼内レンズ押出部材を挿入する工程の後に、前記器具本体に、前記流体供給手段および、前記眼内レンズ押出部材と分離
された別体である前記移動部材が設けられている前記筒状部材を固定する工程と
を有することを特徴とする眼内レンズ挿入器具の製造方法。
【請求項12】
請求項1から9のいずれか1項に係る眼内レンズ挿入器具の製造方法であって、
前記流体供給手段および前記移動部材が設けられている前記筒状部材に、前記移動部材と分離
された別体である前記眼内レンズ押出部材
であって、後端側に板状の前記押圧板部が設けられた前記眼内レンズ押出部材を挿入する工程と、
前記眼内レンズ押出部材を挿入する工程の後に、前記筒状部材に、前記器具本体を固定
する工程と
を有することを特徴とする眼内レンズ挿入器具の製造方法。
【請求項13】
請求項1から9のいずれか1項に係る眼内レンズ挿入器具の製造方法であって、
前記器具本体とあらかじめ一体的に成形された前記筒状部材に、前記眼内レンズ押出部材
であって、後端側に板状の前記押圧板部が設けられた前記眼内レンズ押出部材を挿入する工程と、
前記筒状部材に、前記眼内レンズ押出部材と分離
された別体である前記移動部材を挿入する工程と、
前記筒状部材に、前記流体供給手段を設ける工程と
を有することを特徴とする眼内レンズ挿入器具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内レンズ挿入器具、眼内レンズ押出補助具および眼内レンズ挿入器具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白内障治療においてヒト混濁水晶体を置換して屈折を補正するために水晶体の代用として挿入される眼内レンズが実用に供されている。白内障治療における眼内レンズ挿入手術においては、例えば角膜、強角膜などの縁に数ミリの切開の創口(切開創)が設けられ、超音波水晶体乳化吸引術などにより水晶体が粉砕されて切開創から取り除かれた後、眼内レンズ挿入器具により眼内レンズが挿入及び固定される。そして、近年においては、眼内レンズ挿入器具を用いた眼内レンズの眼内への挿入を補助する技術が提案されている(例えば、特許文献1、2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-261263号公報
【文献】特表2012-505066号公報
【文献】国際公開第2008/149927号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の眼内レンズ挿入器具においては、器具本体の眼内レンズ収納部に収納された眼内レンズがプランジャーにより押圧されることで器具本体内を移動して器具本体から眼内に放出される。術者は、プランジャーを指で器具本体側に押し込むことで、眼内レンズを眼内に放出する操作を行う。
【0005】
しかしながら、術者がプランジャーを指で押して眼内レンズを器具本体から眼内に放出する一連の動作中において、眼内レンズが挿入器具の先端から外部に放出されるその瞬間においては、プランジャーが眼内レンズから受ける抵抗力は瞬間的に低下する。このとき、術者がプランジャーを押す力を緩めないと、プランジャーが器具本体から勢いよく突出する可能性がある。このように、術者は、プランジャーを指で押す場合、眼内レンズの移動状況に応じてプランジャーを押す力を調整する必要がある。
【0006】
本件開示の技術は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、プランジャーの操作性を向上させる眼内レンズ挿入器具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本件開示の眼内レンズ挿入器具は、眼内レンズを眼内に挿入する挿入筒部を先端に有する略筒状の器具本体と、器具本体内を摺動可能に設けられ、眼内レンズを押圧して挿入筒部に移動させて眼内に押し出す眼内レンズ押出部材と、器具本体に固定される筒状部材と、筒状部材内に流体を供給する流体供給手段と、筒状部材内に設けられ、供給される流体の圧力で移動する移動部材と、を備え、眼内レンズ押出部材は、移動部材によって押されることにより器具本体内を摺動する。これにより、術者は指などで眼内レンズ押出部材を押すことなく流体によって押される移動部材の移動を利用して眼内レンズ押出部材を移動することができるため、より安定した眼内レンズ押出部材の移動が可能となる。
【0008】
また、筒状部材は、眼内レンズ押出部材の摺動方向に延在し、移動部材は、筒状部材内を第1の領域と第2の領域とに仕切る板壁体であり、眼内レンズ押出部材は、第2の領域内に配置されており、流体供給手段によって流体が第1の領域に供給され、移動部材は、第1の領域に供給される流体の圧力で筒状部材の内壁に当接しながら移動する構成としてもよい。
【0009】
さらに、板壁体は筒状部材の内壁と当接する弾性部材を有してもよい。また、眼内レンズ押出部材の摺動方向に垂直な面における板壁体の断面の断面積が、摺動方向に垂直な面における器具本体の断面の断面積よりも大きくなるようにしてもよい。また、流体供給手段は、筒状部材内に流体を供給する供給口を有し、供給口の内径は、筒状部材の内径よりも小さくなるようにしてもよい。さらに、流体供給手段の供給口には、軟性部材により形成されるチューブが接続可能である。また、流体供給手段は、筒状部材内に流体を供給する供給口を有し、眼内レンズ挿入器具がさらに、供給口に接続された、軟性部材により形成されるチューブと、チューブに設けられた、流体の流路と流体の流路とは別の流路とを切り替える流路切替手段と、別の流路に接続される注射筒とを備える構成としてもよい。あるいは、流体供給手段は、筒状部材内に前記流体を供給する供給口を有し、眼内レンズ挿入器具がさらに、供給口に接続された、軟性部材により形成されるチューブと、チューブに設けられた、流体の流路の遮断および開放を制御する流路開閉手段とを備える構成としてもよい。
【0010】
そして、本件開示の眼内レンズ押出補助具は、眼内レンズを眼内に挿入する挿入筒部を先端に有する略筒状の器具本体に固定される筒状部材と、筒状部材内に流体を供給する流体供給手段と、筒状部材内に設けられ、供給される流体の圧力で移動する移動部材と、を備え、器具本体内を摺動可能に設けられ、眼内レンズを押圧して挿入筒部に移動させて眼内に押し出す眼内レンズ押出部材が、移動部材によって押されることにより器具本体内を摺動する。
【0011】
また、本件開示の眼内レンズ挿入器具の製造方法は、上記の眼内レンズ挿入器具に対する製造方法であって、器具本体に、眼内レンズ押出部材を挿入する工程と、眼内レンズ押出部材を挿入する工程の後に、器具本体に、流体供給手段および移動部材が設けられている筒状部材を固定する工程を有する。あるいは別の製造方法として、流体供給手段および移動部材が設けられている筒状部材に、眼内レンズ押出部材を挿入する工程と、眼内レンズ押出部材を挿入する工程の後に、筒状部材に、器具本体を固定する工程を有する製造方法でもよい。あるいは更に別の製造方法として、器具本体とあらかじめ一体的に成形された筒状部材に、眼内レンズ押出部材を挿入する工程と、筒状部材に、眼内レンズ押出部材を挿入する工程と、筒状部材に、流体供給手段を設ける工程を有する製造方法でもよい。
【0012】
なお、上記3例のような製造方法で製造された本件開示の眼内レンズ挿入器具は、挿入器具のみの商品として製造場所から出荷して市場に流通させてもよいし、製造場所において、あらかじめ眼内レンズが眼内レンズ挿入器具に収納されて、挿入器具とレンズが一体となった商品、いわゆるプリロード型(プリセット型)の商品として製造場所から出荷して市場に流通させてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本件開示の技術によれば、プランジャーの操作性を向上させる眼内レンズ挿入器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施形態における眼内レンズ挿入器具の概略構成を示す図である。
【
図2】一実施形態における眼内レンズの概略構成を示す図である。
【
図3】一実施形態におけるノズル本体の概略構成を示す図である。
【
図4】一実施形態における位置決め部材の概略構成を示す図である。
【
図5】一実施形態におけるプランジャーの概略構成を示す図である。
【
図6】
図6(a)および
図6(b)は、一実施形態における眼内レンズ挿入器具のプランジャーの移動を例示する図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、一実施形態における眼内レンズ挿入器具の製造方法を示す図である。
【
図8】
図8(a)および
図8(b)は、一変形例における眼内レンズ挿入器具の製造方法を示す図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、一変形例における眼内レンズ挿入器具の製造方法を示す図である。
【
図10】
図10(a)および
図10(b)は、一変形例における眼内レンズ挿入器具の概略構成を示す図である。
【
図11】
図11は、一変形例における眼内レンズ挿入器具の概略構成を示す図である。
【
図12】
図12は、一変形例における眼内レンズ挿入器具の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0016】
〔実施例〕
図1に、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1の概略構成を示す。
図1(a)はステージ蓋部13を開蓋した場合の眼内レンズ挿入器具1の平面図、
図1(b)はステージ蓋部13を閉蓋した場合の眼内レンズ挿入器具1の側面図を示している。眼内レンズ挿入器具1は、器具本体としてのノズル本体10と、眼内レンズの押出部材としてのプランジャー30と、眼内レンズの収納部としてのステージ部12及びステージ蓋部13と、眼内レンズの押し出しを補助する眼内レンズ押出補助具20とを有する。ステージ部12は、ノズル本体10に一体又は別体に設けられる。ノズル本体10にはプランジャー30が挿入されている。ステージ部12には、眼内レンズ2がセットされる。ステージ蓋部13は、ステージ部12と一体に形成されている。眼内レンズ押出補助具20は、中空の円筒部材であり、その一端がノズル本体10のホールド部11と係合している。なお、眼内レンズ押出補助具20の形状は円筒に限らず任意の形状で成形することができる。
【0017】
眼内レンズ挿入器具1のノズル本体10は、断面略矩形の筒状に形成されており片側の端部は大きく開口し(以下、大きく開口した側を後端部10bという。)、別の側の端部には細く絞られたノズル部15と先端部10aを備える。
図1(b)に示すように、先端部10aは斜めに開口している。プランジャー30は、ノズル本体10に挿入され往復運動可能である。
【0018】
以下の説明において、ノズル本体10の後端部10bから先端部10aへ向かう方向を前方向、その逆方向を後方向、
図1(a)において紙面手前側を上方向、その逆方向を下方向、
図1(b)において紙面手前方向を左方向、その逆方向を右方向とする。また、この場合、上側は後述するレンズ本体2aの光軸前側に、下側はレンズ本体2aの光軸後側に、前側はプランジャー30による押圧方向前側に、後側はプランジャー30による押圧方向後側に相当する。
【0019】
ノズル本体10の後端部10b付近には、板状に迫り出し、使用者がプランジャー30をノズル本体10の先端側に押し込む際に指を掛けることが可能なホールド部11が一体的に設けられている。また、ノズル本体10におけるノズル部15の後側には、眼内レンズ2をセットするステージ部12が設けられている。このステージ部12は、ステージ蓋部13を開蓋することでノズル本体10の上側が開放されるようになっている。また、ステージ部12には、ノズル本体10の下側から位置決め部材50が取り付けられている。この位置決め部材50によって、使用前(輸送中)においてもステージ部12内で眼内レンズ2が安定して保持されている。
【0020】
すなわち、眼内レンズ挿入器具1においては、製造時に、ステージ蓋部13が開蓋し位置決め部材50がステージ部12に取り付けられた状態で、眼内レンズ2がステージ部12に、光軸前側が上になるようにセットされる。そして、ステージ蓋部13を閉蓋させた後出荷され、販売される。そして、使用者はステージ蓋部13を閉蓋したままで位置決め部材50を取り外し、その後プランジャー30をノズル本体10の先端側に押し込む。これにより、プランジャー30によって眼内レンズ2を押圧し、ノズル部15まで移動させた上で、先端部10aより眼内レンズ2を眼球内に放出する。なお、眼内レンズ挿入器具1におけるノズル本体10、プランジャー30、位置決め部材50はポリプロピレンなどの樹脂の素材で形成される。ポリプロピレンは医療用機器において実績があり、耐薬品性などの信頼性も高い素材である。
【0021】
眼内レンズ押出補助具20は、ノズル本体10に挿入されたプランジャー30の延伸方向に延びる円筒形状の筒状部材20aを有する。また、筒状部材20aの側面には、筒状部材20aを貫通する貫通孔20bが設けられている。また、筒状部材20aの後端側には、移動部材としてのパッキン20cが、筒状部材20aの内壁と当接するように設けられている。パッキン20cは、筒状部材20aの内壁に密接しつつ内壁を摺動可能に設けられている。なお、パッキン20cは摺動する際に撓むことのない程度の剛性を有することが望ましい。ただし、パッキン20cがそのような剛性を有しない場合でも、押圧板部33の外径L2をパッキン20cの内径と同程度にすれば、パッキン20cが摺動時に撓むことを防止することができる。さらに、筒状部材20aの内径L1に対してパッキン20cの直径が大きいと、パッキン20cの摺動時のパッキン20cに対する押出し荷重が大きくなり、そこからパッキン20cの直径が内径L1に近づくにつれて当該押出し荷重は小さくなる。さらに、眼内レンズ押出補助具20の後端には、眼内レンズ押出補助具20とパッキン20cとで囲まれる空間に流体を供給するための流体供給手段としての流体供給部20dが設けられている。
【0022】
また、筒状部材20aとパッキン20cと流体供給部20dとで囲まれる領域は、密閉空間となっている。なお、筒状部材20aにより囲まれる空間のうち、パッキン20cを境界として、流体供給部20d側の領域を第1の領域20fとし、ノズル本体10に挿入されたプランジャー30側の領域を第2の領域20gとする。また、貫通孔20bは、第1の領域20fに供給された流体を眼内レンズ押出補助具20の外部へ流出させる機能を有する。
【0023】
さらに眼内レンズ押出補助具20の先端側にはノズル本体10のホールド部11と係合するための係合部20hが設けられている。
図1(b)に示すように、本実施形態ではノズル本体10のホールド部11が上下方向に延伸しているため、係合部20hは、ノズル本体10に取り受けられた状態の眼内レンズ押出補助具20において上下方向に一対設けられている。また、各係合部20hには、ホールド部11の一部が貫通する貫通孔20iが設けられている。
【0024】
眼内レンズ押出補助具20がノズル本体10に取り付けられる場合は、係合部20hの貫通孔20iにノズル本体10のホールド部11の両端がそれぞれ挿し通される。また、ホールド部11の両端にはノッチ11aが設けられている。このため、眼内レンズ押出補助具20の係合部20hがホールド部11に一度取り付けられると、係合部20hとホールド部11との係合はノッチ11aによって解除されない。なお、係合部20hとホールド部11との係合が解除されない構成であれば、ノッチはホールド部11の代わりにあるいはホールド部11に加えて係合部20hに設けてもよい。なお、眼内レンズ押出補助具20をノズル本体10に取り付けられる際は、第2の領域20gが密閉空間にならないように、眼内レンズ押出補助具20とノズル本体10の接続箇所に少なくとも1つの開口構造を設ける必要がある。なぜならば、眼内レンズ押出補助具20とノズル本体10の取付前に第2の領域20gに存在する空気を、パッキン20cが移動するに伴い、外部に排出させる必要があるためである。
【0025】
流体供給部20dの後側の端面には、チューブ40から供給される流体が通過する開口20eが設けられている。また、流体供給部20dは、前側が筒状部材20aの後端と接続されており、後側がチューブ40の先端と接続可能である。筒状部材20aの内径L1は、プランジャー30の押圧板部33の外径L2よりも大きくなるように設けられている。なお、供給される流体の単位時間あたりの流入量が一定である場合、筒状部材20aの内径L1が大きくなるにつれてパッキン20cおよびプランジャー30の押し出し速度は遅くなるが、より強い押し出し力による安定した押し出しが可能になる。一方、流体供給部20dの開口20eの開口径L3は、筒状部材20aの内径L1よりも小さくなるように設けられている。そして、開口20eは、一般の医療用チューブの内径または外径と係合可能な寸法とされている。もしくは、開口20eとチューブ40とをコネクタを介して接続してもよい。流体供給部20dには、汎用性の高い医療用チューブを接続でき、特別なチューブを用意する必要がないようになっている。また、流体供給部20dに接続されるチューブ40の他端には、第1の領域20f内に流体を供給するための流体供給源(図示せず)が接続される。なお、流体供給源の例としては、圧縮空気を供給するためのコンプレッサーや冷温水を供給するためのポンプなどが挙げられる。
【0026】
図2は、眼内レンズ2の概略構成を示した図である。
図2(a)は平面図、
図2(b)は側面図を示す。眼内レンズ2は、いわゆるスリーピース型である。眼内レンズ2は、所定の屈折力を有するレンズ本体2aと、レンズ本体2aに連結された、レンズ本体2aを眼球内で保持するためのヒゲ状の2本の支持部2b、2bとから形成されている。レンズ本体2a及び支持部2bは可撓性の樹脂材料から形成されている。本実施例における眼内レンズ挿入器具1内では、2つの支持部2b、2bのうちの一つが、レンズ本体2aの後側、もう一つがレンズ本体の前側に配置されるように、眼内レンズ2がセットされる。
【0027】
図3にはノズル本体10の平面図を示す。前述のようにノズル本体10においては、眼内レンズ2はステージ部12にセットされる。そして、その状態でプランジャー30によって眼内レンズ2が押圧されて先端部10aから放出される。なお、ノズル本体10の内部にはノズル本体10の外形の変化に応じて断面形状が変化する貫通孔10cが設けられている。そして、眼内レンズ2が放出される際は、眼内レンズ2は、ノズル本体10内の貫通孔10cの断面形状の変化に応じて変形して折り畳まれた状態となり、患者の眼球に形成された切開創に入り易い形に変形した上で放出される。
【0028】
また、先端部10aは、ノズル部15の上側の領域が下側の領域より前側になるように斜めにカットされた形状となっている。なお、この先端部10aの斜めにカットされた形状については、左右方向から見て直線的に斜めにカットされていてもよいし、外側に膨らみを持つように、すなわち曲面形状となるように斜めにカットされていてもよい。
【0029】
ステージ部12には、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径より僅かに大きな幅を有するステージ溝12aが形成されている。ステージ溝12aの前後方向の寸法は、眼内レンズ2の両側に延びる支持部2b、2bを含む最大幅寸法よりも大きく設定されている。また、ステージ溝12aの底面によってセット面12bが形成されている。セット面12bの上下方向位置は、ノズル本体10の貫通孔10cの底面の高さ位置よりも上方に設定されており、セット面12bと貫通孔10cの底面とは底部斜面10dによって連結されている。
【0030】
ステージ部12とステージ蓋部13とは一体に形成されている。ステージ蓋部13はステージ部12と同等の前後方向の寸法を有している。ステージ蓋部13は、ステージ部12の側面がステージ蓋部13側に延出して形成された薄板状の連結部14によって連結されている。連結部14は中央部で屈曲可能に形成されており、ステージ蓋部13は、連結部14を屈曲させることでステージ部12に上側から重なり閉蓋することができる。
【0031】
ステージ蓋部13において、閉蓋時にセット面12bと対向する面には、ステージ蓋部13を補強し、眼内レンズ2の位置を安定させるためにリブ13a及び13bが設けられている。また、プランジャー30の上側のガイドとして案内突起13cが設けられている。また、ステージ蓋部13には眼内レンズのノズル内の移動をスムーズにするための粘弾性物質を注入する注入穴16が設けられている。ステージ蓋部13の外側には、注入穴16の外周の一部が盛り上がっている突起部17が設けられている。突起部17は、注入される注射器の針を注入穴16にガイドして粘弾性物質を注入しやすくする機能を有する。
【0032】
ステージ部12のセット面12bの下側には、位置決め部材50が取外し可能に設けられている。
図4に、位置決め部材50の概略構成を示す。
図4(a)は位置決め部材50の平面図を示し、
図4(b)は位置決め部材50の左側面図を示している。位置決め部材50はノズル本体10と別体として構成されており、一対の側壁部51、51が連結部52で連結された構造とされている。それぞれの側壁部51の下端には、外側に向けて延出して広がる保持部53、53が形成されている。
【0033】
そして、それぞれの側壁部51、51の上端部には、上側に突出した一対の第1載置部54、54が形成されている。さらに、第1載置部54、54の上端面における外周側には、第1位置決め部55、55が突出して形成されている。第1位置決め部55、55の内側どうしの離隔長さは、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。
【0034】
また、側壁部51、51の内側の前後方向の両端には、上側に突出した一対の第2載置部56、56が形成されている。第2載置部56、56の上面の高さは、第1載置部54、54の上面の高さと同等になっている。さらに、第2載置部56、56の上面において外側の部分には、第2載置部56、56の左右方向の全体にわたって上側にさらに突出する第2位置決め部57、57が形成されている。第2位置決め部57、57の内側どうしの離隔長さは、眼内レンズ2のレンズ本体2aの径寸法よりも僅かに大きく設定されている。加えて、第2載置部56、56の上端部には左右方向の全体にわたり、前後方向に僅かに突出した係止爪58、58が形成されている。
【0035】
上記の位置決め部材50は、ノズル本体10のセット面12bの下側から組み付けられる。ノズル本体10のセット面12bには、厚さ方向にセット面12bを貫通するセット面貫通孔12cが形成されている。セット面貫通孔12cの外形は、位置決め部材50の第1載置部54、54及び第2載置部56、56を上側から見た形状に対し僅かに大きな略相似形状とされている。そして、位置決め部材50がノズル本体10に取り付けられる際には、第1載置部54、54及び第2載置部56、56が、セット面12bの下側からセット面貫通孔12cに挿入され、セット面12bの上側に突出する。
【0036】
その際、第2位置決め部57、57に設けられた係止爪58、58がセット面貫通孔12cを介してセット面12bに突出し、セット面12bの上面に係止される。このことによって、位置決め部材50がノズル本体10の下側から組み付けられ、第1載置部54、54及び第2載置部56、56がセット面12bから突出した状態で固定される。そして、眼内レンズ2がセット面12bにセットされる際には、レンズ本体2aの外周部底面が、第1載置部54、54及び第2載置部56、56の上面に載置される。また、レンズ本体2aは第1位置決め部55、55及び第2位置決め部57、57によって水平方向(セット面12bに水平な方向)に対して位置規制される。
【0037】
眼内レンズ2を眼球内に挿入する際は、粘弾性物質を注入穴16から適量注入した後に位置決め部材50をノズル本体10から取り外す。これにより、眼内レンズ2のレンズ本体2aを支持していた第1載置部54、54および第2載置部56、56がセット面12bから後退し、眼内レンズ2がセット面12b上に移動可能に載置される。
【0038】
続いて、眼組織に設けた切開創に、ノズル本体10のノズル部15における先端部10aを挿入する。ここにおいて、先端部10aは斜めの開口形状を有しているので、切開創への挿入を容易に行なうことができる。そして、切開創にノズル部15を挿入した後に、プランジャー30の押圧板部33をノズル本体10の先端側に押し込む。これにより、セット面12aにセットされた眼内レンズ2のレンズ本体2a外周にプランジャー30の作用部31の先端部31cが当接し、プランジャー30によって眼内レンズ2が先端部10aに向けて案内される。
【0039】
次に、
図5(a)および
図5(b)に、プランジャー30の概略構成を示す。プランジャー30は、ノズル本体10よりもやや大きな前後方向長さを有している。そして、円柱形状を基本とした先端側の作用部31と、矩形ロッド形状を基本とした後端側の挿通部32とから形成されている。そして、作用部31は、円柱形状とされた円柱部31aと、円柱部31aの左右方向に広がる薄板状の扁平部31bとを含んで構成されている。
【0040】
作用部31の先端部分には、切欠部31cが形成されている。この切欠部31cは、
図5(a)に示すように、作用部31の上方向に開口し左右方向に貫通する溝状に形成されている。また、
図5(b)に示すように、切欠部31cの先端側の溝壁は作用部31の先端側に行くに連れて上方に向かう傾斜面で形成されている。一方、挿通部32は、全体的に概略H字状の断面を有しており、その左右方向及び上下方向の寸法は、ノズル本体10の貫通孔10cよりも僅かに小さく設定されている。また、挿通部32の後端には、上下左右方向に広がる円板状の押圧板部33が形成されている。
【0041】
挿通部32の前後方向の中央より先側の部分には、挿通部32の上側に向けて突出し、プランジャー30の素材の弾性により上下に移動可能な爪部32aが形成されている。そして、プランジャー30がノズル本体10に挿入された際には、ノズル本体10の上面において厚さ方向に設けられた
図3に示す係止孔10eと爪部32aが係合し、このことにより初期状態におけるノズル本体10とプランジャー30との相対位置が決定される。なお、爪部32aと係止孔10eの形成位置は、係合状態において、作用部31の先端が、ステージ部12にセットされた眼内レンズ2のレンズ本体2aの後側に位置し、レンズ本体2aの後側の支持部2bを切欠部31cが下方から支持可能な場所に位置するよう設定されている。
【0042】
上記のように構成された眼内レンズ挿入器具1の眼内レンズ2の収納前においては、プランジャー30がノズル本体10に挿入されて初期位置に配置される。また、上記の通り、位置決め部材50が、セット面12bの下方からノズル本体10に取り付けられる。これにより、位置決め部材50の第1載置部54及び第2載置部56がセット面12bに突出した状態に保持される。
【0043】
次に、眼内レンズ2のレンズ本体2aが支持部2bをノズル本体10の前後方向に向けた状態で第1載置部54および第2載置部56の上面に載置され位置決めされる。この状態において、眼内レンズ2の後側の支持部2bの一部がプランジャー30の切欠部31cに挟まれ、その底面によって支持された状態となる。
【0044】
次に、
図6に、眼内レンズ2がノズル本体10の先端部10aに移動するときの、プランジャー30とプランジャー押出補助具20のパッキン20cとの位置関係を例示する。本実施形態では、術者は、眼内レンズ挿入器具1に収納された眼内レンズ2をプランジャー30を用いて移動させる場合、チューブ40に接続されている流体供給源を作動させて、一定流量の流体をチューブ40および流体供給部20dを経由して、第1の領域20fに供給する。そして、第1の領域20fは流体で満たされる。
【0045】
流体がさらに第1の領域20fに供給されると、パッキン20cに作用する圧力が大きくなる。そして、当該圧力に基づくパッキン20cを移動させようとする力がパッキン20cの最大静止摩擦力よりも大きくなると、パッキン20cは前側、すなわちノズル本体10側に移動する。そして、
図6(a)に示すように、パッキン20cは、プランジャー30の押圧板部33に当接する。
【0046】
流体がさらに第1の領域20fに供給されると、パッキン20cはノズル本体10側に移動するとともにプランジャー30をノズル本体10側に押圧し移動させる。これにより、眼内レンズ2をノズル本体10の先端部10a側に移動させることができる。その際、プランジャー30の押出し方向の中心とパッキン20cの進行方向の中心が一致することが望ましい。これにより、パッキン20cによるプランジャー30の押し出しがより安定することが期待できる。次に、貫通孔20bの機能について説明する。
図6(b)に示すように、パッキン20cが孔20bを超えて移動すると、第1の領域20fに供給される流体が孔20bから流出する。
【0047】
ここで、例えば術者が意図せずに流体供給源を作動させた場合には、孔20bは術者の手などで塞がれていないと考えられる。その場合には、パッキン20cは
図6(b)に例示する位置まで移動した後に第1の領域20fに流体が供給されても、流体は孔20bから筒状部材20aの外に流出する。この結果、それ以上パッキン20cは流体に押されることなく
図6(b)に示す位置で停止する。このように、プランジャー押出補助具20に孔20bを設けることにより、流体が第1の領域20fに誤って供給されても、パッキン20cがプランジャー30をノズル本体10の先端部10a側に押し続ける現象を回避することができる。その結果、術者の意図に反して眼内レンズ2がノズル本体10の先端部10aから放出されることを防止できる。
【0048】
一方、術者が意図して流体供給源を作動させた場合には、孔20bは術者の手などで塞がれていると考えられる。その状態でパッキン20cが
図6(b)に例示する位置まで移動した後に第1の領域20fに流体が供給されると、流体は孔20bから筒状部材20aの外に流出しない。この結果、流体が第1の領域20fに供給され続けると、パッキン20cは流体に押されて
図6(b)に例示する位置からさらにノズル本体の先端部10a側に移動する。そして、プランジャー30はパッキン20cによって押圧移動され、眼内レンズ2をさらにノズル本体10の先端部10a側に移動させる。
【0049】
なお、パッキン20cが
図6(b)に例示する位置からさらにノズル本体の先端部10a側に移動する際に、術者は孔20bから指を離すことにより、流体を孔20bから流出させるとともにパッキン20cの移動を中止することができる。したがって、術者は、指などで孔20bを塞いだり、孔20bを塞いでいた指などを孔20から離したりすることで、流体に押されるパッキン20cの移動を制御することができる。これにより、術者はプランジャー30を指で操作する必要がなく、切開創に対するノズル本体10の位置の調整などの他の動作や処置により集中することができる。
【0050】
また、本実施形態では、流体供給源を用いて眼内レンズ押出補助具20に一定流量で流体を供給することにより、パッキン20cの移動ひいてはプランジャー30を一定の速度で移動させることができる。これにより、本実施形態の眼内レンズ挿入器具1によれば、ノズル本体10内において安定した移動速度で眼内レンズ2を移動して眼内に挿入することができる。したがって、従来の眼内レンズ挿入器具に比べて、より安定した眼内レンズの眼内への射出が実現できる。また、眼内レンズの移動が安定することにより、眼球に設けられた切開創への負担も軽減される。
【0051】
次に、本実施形態に係る眼内レンズ挿入器具1の製造方法について
図7を参照しながら説明する。眼内レンズ挿入器具1を製造する場合は、まず、
図7(a)に示すように、
図3に示すノズル本体10に
図5に示すプランジャー30をノズル本体10の後端部10b側から挿入する。ノズル本体10に挿入されたプランジャー30の爪部32aが係止孔10eと係合し、ノズル本体10とプランジャー30とが相対的に位置決めされる。
【0052】
次に、眼内レンズ押出補助具20を、ノズル本体10の後端部10bとプランジャー30の挿通部32および押圧板部33とが筒状部材20a内に収まるように案内する。そして、眼内レンズ押出補助具20の各貫通孔20iにノズル本体10のホールド部11の両端が挿し通され、係合部20hとホールド部11とが係合する。これによって、本実施形態に係る眼内レンズ挿入器具1の組み立てが完了する。
【0053】
以上が本実施形態に関する説明であるが、上記の挿入部などの構成は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想と同一性を失わない範囲内において種々の変更が可能である。例えば、本実施形態に係る眼内レンズ挿入器具1においては、ノッチ11aを設けない構成としてもよい。また、本実施形態では、
図6(a)に示す状態のようにパッキン20cとプランジャー30の押圧板部33とが別体として設けられているが、あらかじめ押圧板部33とパッキン20cを一体として設けてもよい。
【0054】
以下に上記の実施形態に係る眼内レンズ挿入器具の製造方法の変形例を示す。なお、以下の説明において各構成要素は、上記の実施形態における構成要素に対応するものについては、同一の符号を付し、特に言及しない限りその説明を省略する。
【0055】
〔変形例1〕
変形例1における眼内レンズ挿入器具100の製造方法を
図8を参照しながら説明する。本変形例においては、まず
図8(a)に示すように、眼内レンズ押出補助具20の一端の開口20jが鉛直上向きになるように、眼内レンズ押出補助具20が固定される。さらに、プランジャー30が眼内レンズ押出補助具20内に配置される。このとき、プランジャー30の押圧板部33がパッキン20cに載置される。そして、ノズル本体200が眼内レンズ押出補助具20に取り付けられる。
【0056】
本変形例におけるノズル本体200は、上記の実施形態におけるノズル本体10のうち、ステージ部12から後端側の部分が削除され、ステージ部12の後端側にホールド部11が連結された構成となっている。したがって、ノズル本体200が眼内レンズ押出補助具20に取り付けられる場合、プランジャー30の先端がステージ部12内に差し込まれ、ホールド部11の両端が眼内レンズ押出補助具20の係合部20hの貫通孔20iに挿し通される。この結果、
図8(b)に示すように、本変形例に係る眼内レンズ挿入器具100の組み立てが完了する。
【0057】
なお、本変形例では、眼内レンズ押出補助具20の一端の開口20jが鉛直上向きになるように、眼内レンズ押出補助具20が固定されるが、眼内レンズ挿入器具100の組み立てが行えれば、眼内レンズ押出補助具20の姿勢はこれに限定されない。たとえば、プランジャー30を眼内レンズ押出補助具20内に配置する際に、プランジャー30の押圧板部33をパッキン20cに接着したり、パッキン20cに凹みを形成して凹みに押圧板部33を嵌め入れる構成にしたりすれば、眼内レンズ押出補助具20を鉛直上向き以外の姿勢にして眼内レンズ挿入器具100の組み立てを行うことができる。
【0058】
〔変形例2〕
次に、変形例2における眼内レンズ挿入器具300の製造方法を
図9を参照しながら説明する。本変形例においては、上記の実施形態におけるノズル本体10と眼内レンズ押出補助具20の筒状部材20aとがあらかじめ一体的に成形されている。なお、眼内レンズ挿入器具300の眼内レンズ押出補助具20は、上記の実施形態における眼内レンズ押出補助具20の係合部20hが削除され、筒状部材20aの一端がノズル本体10のホールド部18に接合されている。
【0059】
本変形例においては、まず
図9(a)に示すように、プランジャー30が筒状部材20aに挿し通され、さらにプランジャー30の先端がノズル本体10の後端部10bからノズル本体10に差し込まれる。次いで、パッキン20cが筒状部材20aの後端側から筒状部材20a内に嵌め入れられる。そして、流体供給部20dが筒状部材20aの後端に接合される。この結果、
図9(b)に示すように、本変形例に係る眼内レンズ挿入器具300の組み立てが完了する。
【0060】
〔変形例3〕
次に、変形例3における眼内レンズ挿入器具400について
図10を参照しながら説明する。本変形例においては、眼内レンズ挿入器具400の側面視(
図10(a))において、ホールド部11のノズル本体10の先端部10a側に、フック400aが設けられている。
図10(a)に示すように、フック400aは、ホールド部11の上端側と下端側とにそれぞれ1つずつ設けられている。
図10(b)に示すように、フック400aには、ノズル本体10を保護するノズルカバー420を取り付けることができる。なお、ノズル本体10を保護するノズルカバー420の取り付け構造としては、フック400aに限定するものではなく、圧入によって嵌合するような取り付け構造であってもよい。これにより、術者が眼内レンズ挿入器具400を保持しているときに、意図せず位置決め部材50ステージ部12から取り外したりステージ蓋部13を開蓋したりすることを防止できる。さらに、ノズル本体10とプランジャー30が、眼内レンズ押出補助具20とノズルカバー420とで保護されているため、眼内レンズ挿入器具を収納するためのいわゆるブリスターケースを使用する必要がなく、眼内レンズ挿入器具400をそのまま滅菌バックに収納するだけでよい。
【0061】
〔変形例4〕
次に、変形例4における眼内レンズ挿入器具500について
図11を参照しながら説明する。本変形例においては、流体供給部20dの後側の端面の開口20eに接続されているチューブ40にコック510が設けられている。コック510には注射筒520の先端が接続されている。なお、コック510が流路切替手段の一例に相当する。注射筒520のプランジャー520aが注射筒520の先端側に押し込まれると、パッキン520bと注射筒520の先端との間にある空気がコック510およびチューブ40を経由して、流体供給部20dに移動する。また、注射筒520のプランジャー520aが注射筒520の後端側に引き戻されると、コック510とパッキン20cとの間にある空気がコック510を経由して、パッキン520bと注射筒520の先端との間に移動する。
【0062】
眼内レンズ挿入器具500の保管中に、パッキン20cが眼内レンズ押出補助具20の筒状部材20aの内壁に固着する可能性がある。このような場合に、筒状部材20aとパッキン20cと流体供給部20dとで囲まれる第1の領域20fに、流体供給源により空気が供給され続けると、第1の領域20f内の空気圧が上昇し、術者が意図しないタイミングで、筒状部材20aの内壁に対するパッキン20cの固着が解除されてパッキン20cの移動が開始する可能性がある。本変形例では、術者は、流体供給源による第1の領域20fへの空気の供給を開始する前に、プランジャー520aを操作して注射筒520から第1の領域20fに空気を送り込むことで、筒状部材20aの内壁に対するパッキン20cの固着を解除することができる。なお、パッキン20cの固着を解除する方法としては、空気を供給するのみならず空気を吸引することであってもよい。このようにパッキン20cの固着が解除された後に流体供給源による第1の領域20fへの空気の供給を開始することができるため、空気の供給開始と略同時にパッキン20cの移動が開始するようにすることができる。この結果、流体供給源による第1の領域20fへの空気の供給時に、上記のように術者が意図しないタイミングでパッキン20cの移動が開始することを防止することができる。
【0063】
なお、パッキン20cとプランジャー30の押圧板部33とが一体的に固定されていれば、術者は、注射筒520のプランジャー520aを注射筒520の後端側に引き戻すことで、ノズル本体10の先端部10a側に移動したプランジャー30を、再度流体供給部20d側に引き戻すこともできる。また、上記の説明では流体供給源および注射筒520から供給される流体を空気として説明したが、使用する流体は空気に限られない。また、注射筒520の形状は、流体を供給または吸引する機能を有するものであれば、本変形例に示す形状に限定されるものではない。
【0064】
〔変形例5〕
次に、変形例5における眼内レンズ挿入器具600について
図12を参照しながら説明する。本変形例においては、流体供給部20dの後側の端面の開口20eに接続されているチューブ40にコック610が設けられている。チューブ40における流体供給源から供給される流体の流路は、コック610によってあらかじめ遮断されている。そして、術者は、流体供給源による第1の領域20fへの流体の供給を開始する際に、コック610を操作して流体の流路を開放する。このようにコック610によって流体供給源による第1の領域20fへの流体の供給を制御することができるため、例えば術者が眼内レンズ挿入器具600を使用するための準備中に、意図せず流体供給源によって第1の領域20fに流体が供給されてパッキン20cの移動が開始することを防止することができる。なお、コック610が、チューブ40の流路開閉手段の一例に相当する。
【符号の説明】
【0065】
1、100、300 眼内レンズ挿入器具
2 眼内レンズ
2a レンズ本体
2b 支持部
10、200 ノズル本体
20 眼内レンズ押出補助具
20a 筒状部材
20b 孔
20c パッキン
20d 流体供給部
20e 開口
20f 第1の領域
20g 第2の領域
20h 係合部
20i 貫通孔
30 プランジャー
33 押圧板部
510、610 コック
520 注射筒