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  • 特許-射出成形品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】射出成形品
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/44 20060101AFI20220317BHJP
   B29C 45/27 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B29C45/44
B29C45/27
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018005073
(22)【出願日】2018-01-16
(65)【公開番号】P2019123143
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000100366
【氏名又は名称】しげる工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】小川 辰二郎
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雅人
【審査官】今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-302537(JP,A)
【文献】特開2007-030396(JP,A)
【文献】特開2014-133492(JP,A)
【文献】特開2006-327339(JP,A)
【文献】特開2005-178066(JP,A)
【文献】特開2010-120489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/44
B29C 45/27
B60R 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定型と可動型の型締めにより形成された成形空間内に、溶融し射出された合成樹脂材料がゲートから注入され、アンダーカット部を有する射出成形品が成形された後、上記固定型と上記可動型が型開きされ、上記可動型に設けられた離型ピンが上記固定型と上記可動型の型開き方向における上記固定型側に突き出されて上記射出成形品が押し出される射出成形用金型装置であって、
上記可動型の一部を構成して上記射出成形品のアンダーカット部を成形するとともに、上記離型ピンが上記射出成形品を押し出すとき上記離型ピンの突き出し方向に対して斜めに突き出て上記射出成形品を押し出しつつ上記射出成形品に対してスライドして上記アンダーカット部から抜け出るスライドコマを備え、上記射出成形品は、上記スライドコマのスライド領域にある主リブと、上記スライド領域外にある補助リブとを有しており、
上記スライドコマにおける上記射出成形品を押し出す側には上記主リブを成形するための主リブ形成凹部が形成され、この主リブ形成凹部が上記スライドコマのスライド方向に延びて上記ゲートからの溶融した合成樹脂材料の流れ方向と交差しており、
上記スライドコマ以外の上記可動型における上記成形空間に面する箇所には、上記主リブ形成凹部に対して上記流れ方向の上流側又は下流側であって上記スライドコマに近接した位置に、上記補助リブを成形するための補助リブ形成凹部が形成され、この補助リブ形成凹部が、上記主リブ形成凹部とほぼ同方向に延びて上記流れ方向と交差するとともに、上記離型ピンの近傍に配置されていることを特徴とする射出成形用金型装置。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形用金型装置を用いた射出成形品の製造方法であって、
上記固定型と上記可動型とを型締めして上記成形空間を形成する工程と、
溶融し射出された合成樹脂材料を上記ゲートから注入して上記成形空間に流し充填させる工程と、
上記合成樹脂材料を冷却し固化させることによって、上記アンダーカット部を上記スライドコマにより、上記主リブを上記主リブ形成凹部により、上記補助リブを上記補助リブ形成凹部により、それぞれ成形するとともに、上記ゲートに向かって収縮する上記合成樹脂材料を上記補助リブ形成凹部に張り付かせることにより上記主リブ形成凹部への上記合成樹脂材料の張り付きを弱めさせる工程と、
上記固定型と上記可動型を型開きし、成形された射出成形品に対して上記スライドコマを斜めに突き出すとともに上記離型ピンを突き出して上記補助リブの近くに押し当て、これにより、上記スライドコマを上記アンダーカット部から抜け出させるとともに、上記主リブ及び上記補助リブをそれぞれ上記主リブ形成凹部及び上記補助リブ形成凹部から離型させ、上記射出成形品を上記可動型から取り出す工程と、
を備えたことを特徴とする射出成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リブを有する射出成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の室内面に装着される内装部品等、複雑な曲面形状及び量産性が要求される製品には、射出成形による合成樹脂成形品が多用されている。射出成形は、一般に、成形金型を構成する固定型(キャビティ)と可動型(コア)とを型締めして成形空間を形成する型締め工程と、この成形空間に加熱溶融した樹脂材料を、射出圧を加えて充填する射出工程と、充填された樹脂に圧力をかけたまま冷却し、固化させる保圧冷却工程と、固定型と可動型とを開いて成形品を取り出す、型開き取出し工程と、を含む。型開きにより、固定型から分離され、可動型にある成形品を取出すために、可動型からその開閉方向に突き出る離型ピンが成形品に押し当てられる
【0003】
保圧冷却工程では、樹脂の体積が収縮する、いわゆる成形収縮が生じる。成形収縮は、成形空間に溶融樹脂を充填するための入り口であるゲートに向かって生じ、成形品が大きくなるにしたがって顕著となる。成形金型が、成形品のリブを形成するための凹部を有する場合、樹脂の成形収縮により、リブが凹部に張り付いてしまう。これにより、リブの離型抵抗が増し、リブを損傷させたり、成形品を取り出せなかったりすることがある。
【0004】
特許文献1に開示された射出成形品は、射出成形時の樹脂の流れ方向と交差する方向に延びるリブを有している。射出成形時の成形品の取出しでは、この成形品に複数の離型ピンを押し当てることにより、成形品に平均した押出し負荷をかけ、リブの損傷を防ぐとともに、成形品を取り出しやすくしている。
【0005】
特許文献2に背景技術として開示された図16に示す射出成形品は、固定型と可動型との開閉方向に対してひっかかる形状、すなわちアンダーカット部を有している。この場合、固定型と可動型とを型開きして離型ピンを突き出させただけでは、成形品を取り出すことはできない。そのため、スライドコマを備えた成形金型を使用している。
【0006】
スライドコマは、アンダーカット部の成形に用いられる。成形品を取り出すときには、型開きに同期させた離型ピンの突き出しと同時に、その突き出し方向と交差方向へスライドコマをスライドさせる。これにより、スライドコマはアンダーカット部から抜き出される。さらに離型ピンを突き出すことにより、成形品は可動型から取り出される。
スライドコマを備えた成形金型では、スライドコマのスライド領域には、離型ピンを配置することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-198165号公報
【文献】特開2005-178066号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2の図16に示す成形品において、射出成形時のスライドコマのスライド領域に面する位置にリブが形成される場合には、このリブの周囲に離型ピンを押し当てることはできないため、リブから離れた領域に離型ピンを押し当てなければならない。そのため、成形品にかかる離型ピンの押出し負荷のバランスが悪くなり、成形品の変形を招いている。特に、リブの延びる方向が、射出成形時における樹脂の流れ方向と交差する方向である場合には、成形収縮による成形金型のリブ形成凹部に対するリブの張り付きが強くなり、離型抵抗が増す。そのため、リブを損傷させたり、成形品を取り出せなかったりすることがある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、射出成形時に離型ピンを当てることができない領域に、射出成形時の樹脂の流れ方向と交差する方向に延びる主リブが形成されている射出成形品において、上記主リブに対して上記樹脂の流れ方向の上流側または下流側において、上記射出成形時に離型ピンを当てることができる領域に、上記樹脂の流れ方向と交差する方向に延びる補助リブを形成したことを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、主リブに加え、補助リブを形成して、成形収縮時に補助リブを成形金型の補助リブ形成凹部に張り付かせることにより、主リブの主リブ形成凹部への張り付きを弱めることができる。また、補助リブの周囲には離型ピンを当てることができる。したがって、射出成型後の成形金型からの成形品の取り出しを、主リブを損傷させることなく良好に行うことができる。
【0011】
本発明の一態様は、上記射出成形品としてのピラートリムであって、基壁部と両側壁部とを有して横断面U字形をなしており、長手方向の一端部に射出成形時のゲート位置が設定され、上記ゲート位置と長手方向の他端の間における一方の側壁部にアンダーカット部が形成され、上記基壁部には上記アンダーカット部に対応する長手方向の位置に上記主リブが短手方向に延びて形成されており、上記基壁部には、上記主リブから長手方向に離間した位置に、短手方向に延びる上記補助リブが形成されている。
【0012】
上記構成によれば、射出成形時に、アンダーカット部はスライドコマにより成形され、アンダーカット部に対応する位置にある主リブは、スライドコマのスライド領域に面することになり、主リブの周囲に離型ピンを押し当てることはできない。しかし、補助リブの形成により、成形収縮時の主リブの成形金型への張り付きを弱めるとともに、補助リブの周囲に離型ピンを当てることにより、射出成形されたピラートリムの成形金型から取り出しを、主リブを損傷させることなく良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、射出成形時に離型ピンを当てることができない領域にリブが形成されていても、リブを損傷させることなく、成形金型から良好に取り出せる射出成形品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかるピラートリムを裏側から見た斜視図である。
図2図1のII-II線に沿う部位での成形金型の形状を示す断面図であって、(A)は型締めされ、樹脂材料が充填された状態、(B)は型開きした状態、(C)は成形品を取り出す状態、を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態を、図1図2を参照して説明する。この実施形態は、本発明を、車両のピラーの車室側を覆うピラートリムに適用したものである。
図1に示すピラートリム10は、右側の前部座席と後部座席の間で、図示しないピラーパネル(車体パネル)の車室側に配置される。これらピラーパネルとピラートリム10との間には、シートベルトの支持高さを調節するシートベルトアジャスタ機構(図示しない)が配置されている。
【0016】
ピラートリム10は、例えばポリプロピレン(PP)等の樹脂を射出成形することにより構成される。ピラートリム10は、上記ピラーパネルに沿って上下方向に延びており、横断面がU字形をなし、車幅方向と略直交する正面壁11(基壁部)と、この正面壁11に連なり後方を向く後壁12(側壁部)と、正面壁11に連なり前方を向く前壁13(側壁部)とを有している。正面壁11には開口14が形成されている。後壁13の車幅方向外側の上端部に、射出成形時のゲート位置15が設定されている。
【0017】
上記シートベルトアジャスタ機構は、ピラートリム10の裏側(車外側)に上下方向にスライド可能に支持されるアジャスタカバー(図示しない)を有している。このアジャスタカバーはピラートリム10の開口14を塞ぎ、上記アジャスタカバーには導出口が形成されている。シートベルトは、上記アジャスタカバーの導出口とピラートリム10の開口14を通って車室内に導出されるようになっている。
【0018】
図1図2に示すように、ピラートリム10の正面壁11の裏側(車外側)の面には、開口14の上下において、上記アジャスタカバーを支持するための支持リブ16,17が幅方向(短手方向)に延びて形成されている。上側の支持リブ16は正面壁11の略中央に配置されているのに対し、下側の支持リブ17(主リブ)は、後壁12寄りに配置されている。支持リブ17は、後壁12側に前壁13方向に進むにしたがって車外側に傾斜する傾斜部17aを有するとともに、傾斜部17aに連なり前壁13に向かって略一定高さの部分が続く平坦部17bをする。
【0019】
これら支持リブ16,17は、不織布等からなる緩衝材(図示しない)で覆われ、この緩衝材は、支持リブ16,17に隣接する面領域に溶着または接着により固定される。この緩衝材において支持リブ16,17に対応する部位が図示しない上記アジャスタカバーに圧縮状態で接している。この緩衝材によって、支持リブ16,17と上記アジャスタカバーとの間の異音発生を防止している。
【0020】
支持リブ17の下方の正面壁11には、補助リブ18が形成されている。後述するように、補助リブ18は、ピラートリム10の射出成形時に、成形収縮による支持リブ17の成形金型への張り付きを弱める役割を果たす。
【0021】
補助リブ18は、L字形状をなしており、正面壁11の略中央でピラートリム10の長手方向に延びる基部18aと、基部18aの上端から短手方向、前壁13方向に延びて、支持リブ17と対向する対向部18bとを有している。対向部18bは、支持リブ17と平行をなしている。対向部18bの正面壁11からの突出高さは、支持リブ17の平坦部17bより若干高く形成されている。
【0022】
図1に示すように、ピラートリム10の後壁12の裏面には、衝撃吸収リブ20が、ピラートリム10と一体をなして形成されている。衝撃吸収リブ20は、乗員の安全を図るためのものであって、車両衝突時に後部座席の乗員の頭部がピラートリム10に当たることに伴い、ピラートリム10とピラーパネル(図示しない)に狭圧されて塑性変形することにより頭部への衝撃を吸収している。
【0023】
衝撃吸収リブ20は、後壁12の車外側の側縁に沿って上下方向に延びる2つの縦リブ部21,22と、縦リブ部21の上端及び縦リブ部22の下端にそれぞれ連なる上側リブ部23及び下側リブ部24を有している。これらリブ部23,24は車室に向かって延び正面壁11の後端部に達している。
【0024】
縦リブ部21,22の間には、車室側に突出する突出部25が設けられている。この突出部25は、車外側が開放されたコ字形状をなしている。突出部25は、縦リブ部21,22と略平行をなす垂直部26と、この垂直部26の上下端から車外に向かって延びる上辺部27と下辺部28とを有している。
【0025】
図1に示すように、この衝撃吸収リブ20は、ピラートリム10の長手方向において、上記正面壁11の支持リブ17に対応する位置に設けられており、詳細には、縦リブ部22が支持リブ17に対応する位置にある。
【0026】
上記ピラートリム10は、後述するように車室側と車外側から型締めされる成形金型により成形される。衝撃吸収リブ20は後壁12から、成形金型の開く方向(車幅方向)と交差する方向(車長方向)に突出しており、成形されたピラートリム10の金型を開く方向への取り出しを妨げる形状、いわゆるアンダーカット部となっている。
【0027】
次に、上記ピラートリム10を成形するための金型について説明する。
図2は、ピラートリム10を成形するための成形金型30を、図1のII-II線に沿う部位に対応する断面で示している。ピラートリム10は、この成形金型30内に射出成型機(図示しない)で溶融樹脂Pを射出する公知の射出成形法により成形される。
【0028】
成形金型30は、固定型40と可動型50とで構成され、可動型50がピラートリム10の車幅方向に相当する方向に開閉移動可能となっている。図2(A)に示す、固定型40と可動型50が結合した状態で、成形金型30には、ピラートリム10が成形される成形空間31が形成される。
【0029】
固定型40には、ピラートリム10の表面(車室側の面)の形状に応じた凹部41が形成されている。凹部41への溶融樹脂Pの入り口となるゲートは、図2には図示されないが、凹部41の一端に設けられており、図1に示すピラートリム10における後壁12の車幅方向外側上端部のゲート位置15に対応している。
【0030】
可動型50は、上記衝撃吸収リブ20の外側を含むピラートリム10の裏面(車外側の面)の形状に応じた凹凸形状を有するとともに、可動型50に対して斜めに移動可能なスライドコマ60を有している。
【0031】
スライドコマ60は、成形金型30の開閉方向と交差する方向であって、ピラートリム10の後壁12側の端部に、衝撃吸収リブ20の内側形状に応じた形状の突起部61を有しており、この突起部61により、衝撃吸収リブ20の内側の面が成形される。スライドコマ60には、固定型40側の面にピラートリム10の支持リブ17を成形するための支持リブ形成凹部62が形成されている。
【0032】
スライドコマ60は、成形金型30の型開き時に、ピラートリム10の後壁12から前壁13へ近づく方向、すなわち図2の紙面と直交する方向の奥行き方向にスライドしながら、可動型50から固定型40側へ突き出る。このときのスライドコマ60のスライド方向は、支持リブ17の延びる方向に一致している。
【0033】
上記支持リブ形成凹部62から、成形空間31の長手方向下方に離間した位置の可動型50には、補助リブ18を形成するための補助リブ形成凹部51が設けられている。
【0034】
可動型50には、補助リブ形成凹部51の近くに、成形空間31で成形されたピラートリム10を取り出すための離型ピン70が設けられている。離型ピン70は、可動型50の開閉移動方向と平行に摺動可能で、成形金型30の型開き時に、可動型50から固定型40側へ突き出る。
【0035】
次に、上記成型金型30を用いたピラートリム10の射出成形について説明する。
成形金型30は、図2(A)に示すように、固定型40と可動型50を閉じた状態で、図示しない射出成形機から溶融樹脂Pを射出される。射出された溶融樹脂Pは、図示しないゲート(ピラートリム10の上端部のゲート位置15)を通って成形空間31に注入され、その長手方向に流れる。充填された溶融樹脂Pは冷却され、固化される。その際、ピラートリム10の表面が固定型40により成形され、ピラートリム10の裏面が可動型50により成形される。衝撃吸収リブ20では、外側は可動型50により、内側はスライドコマ60により、それぞれ成形される。支持リブ17は支持リブ形成凹部62により成形される。補助リブ18は補助リブ形成凹部51により成形される。
【0036】
その後、図2(B)に示すように、可動型50を移動させて成形金型30の型開きを行う。ピラートリム10は固定型40から離れ、可動型50に張り付いている。このとき、図2(C)に示すように、離型ピン70を固定型40側に突き出すのと同時に、スライドコマ60を固定型40側へ突き出すとともに、ピラートリム10の後壁12から前壁13へ近づく方向へスライドさせる。
これにより、スライドコマ60は、衝撃吸収リブ20から抜け出る。さらに、離型ピン70を突き出して、補助リブ18を補助リブ形成凹部51から抜け出させ、支持リブ17を支持リブ形成凹部62から抜け出させる。これにより、成形品であるピラートリム10は可動型50から取り出される。
【0037】
上記ピラートリム10の射出成形において、成形空間31に充填された溶融樹脂Pが固化される際、成形されたピラートリム10が、その長手方向に沿ってゲート位置15へ向けて収縮する。これにより、支持リブ17は、支持リブ形成凹部62に張り付く。支持リブ17は、ピラートリム10の短手方向、すなわち溶融樹脂Pの流れ方向かつ樹脂の収縮方向とは、交差する方向に延びており、張り付きは強まる。そのため、支持リブ17の支持リブ形成凹部62からの離型抵抗は増す。
【0038】
この実施形態では、支持リブ17の下方であって、溶融樹脂Pの流れ方向の下流側に、補助リブ18が配置されている。補助リブ18は、ピラートリム10の短手方向に延びる対向部18bを有することにより、補助リブ18を成形収縮により補助リブ形成凹部51に張り付かせるようにしている。これにより、支持リブ17の支持リブ形成凹部62への張り付きを弱めさせ、支持リブ17の支持リブ形成凹部62からの離型抵抗を低減させている。
【0039】
また、支持リブ形成凹部62は、スライドコマ60に設けられているため、支持リブ17の近くに離型ピンを当てることはできないが、この実施形態では、支持リブ17の張り付きを弱める補助リブ18の近くに離型ピン70を当てることができる。これにより、支持リブ17を損傷させることなく、成形されたピラートリム10を良好に取り出すことができる。
【0040】
なお、この発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において各種の変形例を採用することができる。
補助リブを溶融樹脂の流れ方向の上流側に設けてもよい。
補助リブの対向部の正面壁からの突出高さを、支持リブの平坦部と同じにしてもよく、低くしてもよい。
上記実施形態では、補助リブの対向部を支持リブと平行に形成したが、交差方向に形成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、リブを有する射出成形品に適用することができる。
【符号の説明】
【0042】
10 ピラートリム(射出成形品)
11 正面壁
12 後壁
13 前壁
15 ゲート位置
17 支持リブ(主リブ)
18 補助リブ
20 衝撃吸収リブ(アンダーカット部)
70 離型ピン
P 溶融樹脂
図1
図2