(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】積層装置及び積層方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/04 20060101AFI20220317BHJP
H01M 10/0585 20100101ALN20220317BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M10/0585
(21)【出願番号】P 2018008849
(22)【出願日】2018-01-23
【審査請求日】2020-08-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 隆博
【審査官】小森 利永子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-009080(JP,A)
【文献】特開2010-102871(JP,A)
【文献】特開2012-101901(JP,A)
【文献】特開2005-050583(JP,A)
【文献】特開2007-137632(JP,A)
【文献】特開2015-106480(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04
H01M 10/0585
B65H 5/14
B65H 5/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極シート、負極シート、及びセパレータシートが積層される、積層ステージと、
セパレータシートの位置決めを行うセパレータポジションテーブルと
前記セパレータポジションテーブルから前記積層ステージまでセパレータシートを搬送する搬送ホルダと、
前記搬送ホルダを制御するホルダ制御部と、
を備える積層装置であって、
前記搬送ホルダは、
セパレータシート上面の長手方向の中央部分を保持する中央保持面を下面とする中央ホルダプレートと、
セパレータシート上面の前記長手方向の両端部分を保持する周縁保持面を下面とする周縁ホルダプレートと、
前記中央ホルダプレートを昇降可能な中央昇降機構と、
前記周縁ホルダプレートを昇降可能な周縁昇降機構と、
を備え、
前記ホルダ制御部は、前記搬送ホルダが、前記積層ステージにセパレータシートを載置する際に、搬送されるセパレータシートが前記積層ステージ上の積層体の最上面に当接した後に、前記周縁昇降機構に下降推力を出力させつつ、前記中央昇降機構に上昇推力を出力させることで、前記中央ホルダプレートを単独でセパレータシートから分離させる第一上昇制御を実行可能である、
積層装置。
【請求項2】
請求項1に記載の積層装置であって、
前記セパレータシート上面の前記長手方向において、前記中央ホルダプレート
の外縁部は、上部が下部よりも
前記周縁ホルダプレートに向けて張り出す段差形状であり、
前記セパレータシート上面の前記長手方向において、前記中央ホルダプレートに近接する前記周縁ホルダプレート
の内縁部は、下部が上部よりも
前記中央ホルダプレートに向けて張り出す段差形状であり、
前記中央ホルダプレートの前記外縁部の前記上部は、前記周縁ホルダプレートの前記内縁部の前記下部と上下に重なり合うように配置され、
前記ホルダ制御部は、前記搬送ホルダが前記積層ステージ上まで移動した際に、前記中央昇降機構の下降推力を、前記周縁昇降機構の下降推力に対して大きくし、前記中央ホルダプレートの前記外縁部の前記上部に前記周縁ホルダプレートの前記内縁部の前記下部を引っ掛けて、前記中央ホルダプレートとともに前記周縁ホルダプレートを下降させる下降制御を実行可能である、
積層装置。
【請求項3】
請求項2に記載の、積層装置であって、
前記ホルダ制御部は、前記搬送ホルダが、前記セパレータポジションテーブルにてセパレータシートを吸着する際に、
前記下降制御と、
前記下降制御によって、前記セパレータポジションテーブル上のセパレータシートに前記中央保持面及び前記周縁保持面が当接した後に、前記周縁昇降機構の上昇推力を、前記中央昇降機構の上昇推力に対して大きくし、前記周縁ホルダプレートの前記内縁部の前記下部に前記中央ホルダプレートの前記外縁部の前記上部を引っ掛けて、前記周縁ホルダプレートとともに前記中央ホルダプレートを上昇させる第二上昇制御と、
を実行可能である、
積層装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の、積層装置であって、
前記中央ホルダプレートの下降位置を測定する昇降センサを備え、
前記ホルダ制御部は、所定の時間間隔における前記下降位置の差分を求めるとともに、前記下降位置の差分がゼロになったときに、搬送されるセパレータシートが前記積層ステージ上の積層体の最上面に当接したと判定する、
積層装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一つに記載の、積層装置であって、
前記セパレータシート上面の前記長手方向において、前記中央ホルダプレートに対する、前記周縁ホルダプレート
の位置を調整可能な調整機構を備える、積層装置。
【請求項6】
正極シート、負極シート、及びセパレータシートが積層される、積層ステージと、
セパレータシートの位置決めを行うセパレータポジションテーブルと
前記セパレータポジションテーブルから前記積層ステージまでセパレータシートを搬送する搬送ホルダと、
前記搬送ホルダを制御するホルダ制御部と、
を備える積層装置における積層方法であって、
前記搬送ホルダは、
セパレータシート上面の長手方向の中央部分を保持する中央保持面を下面とする中央ホルダプレートと、
セパレータシート上面の前記長手方向の両端部分を保持する周縁保持面を下面とする周縁ホルダプレートと、
前記中央ホルダプレートを昇降可能な中央昇降機構と、
前記周縁ホルダプレートを昇降可能な周縁昇降機構と、
を備え、
前記ホルダ制御部は、前記搬送ホルダが、前記積層ステージにセパレータシートを載置する際に、搬送されるセパレータシートが前記積層ステージ上の積層体の最上面に当接した後に、前記周縁昇降機構に下降推力を出力させつつ、前記中央昇降機構に上昇推力を出力させることで、前記中央ホルダプレートを単独でセパレータシートから分離させる第一上昇制御を実行する、
積層方法。
【請求項7】
請求項6に記載の積層方法であって、
前記セパレータシート上面の前記長手方向において、前記中央ホルダプレート
の外縁部は、上部が下部よりも
前記周縁ホルダプレートに向けて張り出す段差形状であり、
前記セパレータシート上面の前記長手方向において、前記中央ホルダプレートに近接する前記周縁ホルダプレート
の内縁部は、下部が上部よりも
前記中央ホルダプレートに向けて張り出す段差形状であり、
前記中央ホルダプレートの前記外縁部の前記上部は、前記周縁ホルダプレートの前記内縁部の前記下部と上下に重なり合うように配置され、
前記ホルダ制御部は、前記搬送ホルダが前記積層ステージ上まで移動した際に、前記中央昇降機構の下降推力を、前記周縁昇降機構の下降推力に対して大きくし、前記中央ホルダプレートの前記外縁部の前記上部に前記周縁ホルダプレートの前記内縁部の前記下部を引っ掛けて、前記中央ホルダプレートとともに前記周縁ホルダプレートを下降させる下降制御を実行させる、
積層方法。
【請求項8】
請求項7に記載の、積層方法であって、
前記ホルダ制御部は、前記搬送ホルダが、前記セパレータポジションテーブルにてセパレータシートを吸着する際に、
前記下降制御と、
前記下降制御によって、前記セパレータポジションテーブル上のセパレータシートに前記中央保持面及び前記周縁保持面が当接した後に、前記周縁昇降機構の上昇推力を、前記中央昇降機構の上昇推力に対して大きくし、前記周縁ホルダプレートの前記内縁部の前記下部に前記中央ホルダプレートの前記外縁部の前記上部を引っ掛けて、前記周縁ホルダプレートとともに前記中央ホルダプレートを上昇させる第二上昇制御と、
を実行する、
積層方法。
【請求項9】
請求項6から8のいずれか一つに記載の、積層方法であって、
前記中央ホルダプレートの下降位置を測定する昇降センサを備え、
前記ホルダ制御部は、所定の時間間隔における前記下降位置の差分を求めるとともに、前記下降位置の差分がゼロになったときに、搬送されるセパレータシートが前記積層ステージ上の積層体の最上面に当接したと判定する、
積層方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池積層体の積層装置及び積層方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池等の電極構造として、シート状の正極(正極シート)と負極(負極シート)との間にセパレータシートを挟んで複数層に亘って積層させる積層構造が知られている。このような積層構造の電池を製造するに当たり、従来から、葛折式、ワインディング式、袋詰式、枚葉積層式等の複数の製造方法が知られている。
【0003】
前三者は上下のセパレータが繋がっているため、その間に入る正極シートまたは負極シートの位置ずれが起こりにくいというメリットがある反面、積層体のサイズ変更(大型化や小型化)への対応が困難であるというデメリットがある。
【0004】
また、枚葉積層式では負極シート、セパレータ、正極シート、セパレータ、負極シート・・・負極シートと順に各シートを積層させていくが、各シートが平面方向に位置ずれし易いというデメリットがある。そこで例えば積層方向(上下方向)に積層体を仮押さえするチャックやツメ等を用いて、各シートのずれを抑える方法が提案されている。
【0005】
さらに特許文献1のように、各シートを帯電させることで、各シートを静電吸着させて位置ずれを防止することも提案されている。このような帯電式の仮保持機構を備えた枚葉積層プロセスは、チャックやツメ等を用いた機械的な保持機構を備えた枚葉積層プロセスと比較して、積層体のサイズ変更に際して機械的な設定変更が少ないというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、絶縁体すなわち誘電体であるセパレータシートは、帯電式の仮保持機構を備える場合はもちろんのこと、それ以外の積層プロセスにおいても、周囲環境等に応じて帯電し易くなっている。帯電状態のセパレータシートはホルダに静電吸着し、当該ホルダからの分離が困難になるおそれがある。
【0008】
そこで本発明は、セパレータシートとこれを搬送するホルダとの分離を従来よりも容易に行うことの可能な、積層装置及び積層方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、積層装置に関する。当該積層装置は、積層ステージ、セパレータポジションテーブル、搬送ホルダ、及びホルダ制御部を備える。積層ステージは、正極シート、負極シート、及びセパレータシートが積層される。セパレータポジションテーブルは、セパレータシートの位置決めを行う。搬送ホルダは、セパレータポジションテーブルから積層ステージまでセパレータシートを搬送する。ホルダ制御部は、搬送ホルダを制御する。搬送ホルダは、中央ホルダプレート、周縁ホルダプレート、中央昇降機構、及び周縁昇降機構を備える。中央ホルダプレートは、セパレータシート上面の長手方向の中央部分を保持する中央保持面を下面とする。周縁ホルダプレートは、セパレータシート上面の上記長手方向の両端部分を保持する周縁保持面を下面とする。中央昇降機構は、中央ホルダプレートを昇降可能であり、周縁昇降機構は、周縁ホルダプレートを昇降可能である。ホルダ制御部は、搬送ホルダが、積層ステージにセパレータシートを載置する際に、搬送されるセパレータシートが積層ステージ上の積層体の最上面に当接した後に、周縁昇降機構に下降推力を出力させつつ、中央昇降機構に上昇推力を出力させることで、中央ホルダプレートを単独でセパレータシートから分離させる第一上昇制御を実行可能である。
【0010】
上記構成によれば、積層体にセパレータシートを載置するに当たり、周縁ホルダプレートがセパレータシートの周縁部分(両端部分)を保持しながら、中央ホルダプレートが単独でセパレータから分離される。これにより、搬送ホルダとセパレータシートの分離を従来よりも容易に行うことができる。
【0011】
また上記発明において、中央ホルダプレートの上記長手方向の外縁部は、上部が下部よりも上記長手方向に張り出す段差形状であってよい。また、周縁ホルダプレートの上記長手方向の内縁部は、下部が上部よりも上記長手方向に張り出す段差形状であってよい。この場合、中央ホルダプレートの外縁部の上部は、周縁ホルダプレートの内縁部の下部と上下に重なり合うように配置される。またホルダ制御部は、搬送ホルダが積層ステージ上まで移動した際に、中央昇降機構の下降推力を、周縁昇降機構の下降推力に対して大きくし、中央ホルダプレートの外縁部の上部に周縁ホルダプレートの内縁部の下部を引っ掛けて、中央ホルダプレートとともに周縁ホルダプレートを下降させる下降制御を実行可能である。
【0012】
セパレータシートを中央ホルダプレートと周縁ホルダプレートとによって保持する場合、両者の上下動に差が生じると、吸着されたセパレータシートが歪んだ(皺のある)状態で積層体に載置されるおそれがある。上記構成のように、中央昇降機構の下降推力を、周縁昇降機構の下降推力に対して大きくするとともに、中央ホルダプレートの外縁部の上部に周縁ホルダプレートの内縁部の下部を引っ掛けることで、中央ホルダプレートと周縁ホルダプレートを同期して下降させることが可能となる。
【0013】
また上記発明において、ホルダ制御部は、搬送ホルダが、セパレータポジションテーブルにてセパレータシートを吸着する際に、下降制御と第二上昇制御とを実行可能であってよい。第二上昇制御では、下降制御によって、セパレータポジションテーブル上のセパレータシートに中央保持面及び周縁保持面が当接した後に、周縁昇降機構の上昇推力を、中央昇降機構の上昇推力に対して大きくし、周縁ホルダプレートの内縁部の下部に中央ホルダプレートの外縁部の上部を引っ掛けて、周縁ホルダプレートとともに中央ホルダプレートを上昇させる。
【0014】
上記構成によれば、周縁昇降機構の上昇推力を、中央昇降機構の上昇推力に対して大きくするとともに、周縁ホルダプレートの内縁部の下部に中央ホルダプレートの外縁部の上部を引っ掛けることで、周縁ホルダプレートと中央ホルダプレートとを同期させて(位置ずれなく)上昇させることが可能となる。
【0015】
また上記構成において、中央ホルダプレートの下降位置を測定する昇降センサを備えてもよい。この場合、ホルダ制御部は、所定の時間間隔における下降位置の差分を求めるとともに、下降位置の差分がゼロになったときに、搬送されるセパレータシートが積層ステージ上の積層体の最上面に当接したと判定する。
【0016】
上記構成によれば、各シートの積層の進行に伴って上昇する、積層体の最上面に、セパレータシートが当接したことを検知可能となる。
【0017】
また上記発明において、中央ホルダプレートに対する、周縁ホルダプレートの上記長手方向位置を調整可能な調整機構を備えてもよい。
【0018】
上記構成によれば、積層体のサイズ変更に柔軟に対応可能となる。
【0019】
また本発明の別態様は、積層装置における積層方法に関する。積層装置は、積層ステージ、セパレータポジションテーブル、搬送ホルダ、及びホルダ制御部を備える。積層ステージには、正極シート、負極シート、及びセパレータシートが積層される。セパレータポジションテーブルは、セパレータシートの位置決めを行う。搬送ホルダは、セパレータポジションテーブルから積層ステージまでセパレータシートを搬送する。ホルダ制御部は、搬送ホルダを制御する。搬送ホルダは、中央ホルダプレート、周縁ホルダプレート、中央昇降機構、及び周縁昇降機構を備える。中央ホルダプレートは、セパレータシート上面の長手方向の中央部分を保持する中央保持面を下面とする。周縁ホルダプレートは、セパレータシート上面の上記長手方向の両端部分を保持する周縁保持面を下面とする。中央昇降機構は中央ホルダプレートを昇降可能とし、周縁昇降機構は周縁ホルダプレートを昇降可能とする。ホルダ制御部は、搬送ホルダが、積層ステージにセパレータシートを載置する際に、搬送されるセパレータシートが積層ステージ上の積層体の最上面に当接した後に、周縁昇降機構に下降推力を出力させつつ、中央昇降機構に上昇推力を出力させることで、中央ホルダプレートを単独でセパレータシートから分離させる第一上昇制御を実行する。
【0020】
また上記発明において、中央ホルダプレートの上記長手方向の外縁部は、上部が下部よりも上記長手方向に張り出す段差形状であってよく、周縁ホルダプレートの上記長手方向の内縁部は、下部が上部よりも上記長手方向に張り出す段差形状であってよい。この場合、中央ホルダプレートの外縁部の上部は、周縁ホルダプレートの内縁部の下部と上下に重なり合うように配置される。ホルダ制御部は、搬送ホルダが積層ステージ上まで移動した際に、中央昇降機構の下降推力を、周縁昇降機構の下降推力に対して大きくし、中央ホルダプレートの外縁部の上部に周縁ホルダプレートの内縁部の下部を引っ掛けて、中央ホルダプレートとともに周縁ホルダプレートを下降させる下降制御を実行させる。
【0021】
また上記発明において、ホルダ制御部は、搬送ホルダが、セパレータポジションテーブルにてセパレータシートを吸着する際に、下降制御及び第二上昇制御を実行してもよい。第二上昇制御では、下降制御によって、セパレータポジションテーブル上のセパレータシートに中央保持面及び周縁保持面が当接した後に、周縁昇降機構の上昇推力を、中央昇降機構の上昇推力に対して大きくし、周縁ホルダプレートの内縁部の下部に中央ホルダプレートの外縁部の上部を引っ掛けて、周縁ホルダプレートとともに中央ホルダプレートを上昇させる。
【0022】
また上記発明において、中央ホルダプレートの下降位置を測定する昇降センサを備えてもよい。この場合、ホルダ制御部は、所定の時間間隔における下降位置の差分を求めるとともに、下降位置の差分がゼロになったときに、搬送されるセパレータシートが積層ステージ上の積層体の最上面に当接したと判定する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、セパレータシートとこれを搬送するホルダとの分離を従来よりも容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本実施形態に係る積層装置の概略を説明する図である。
【
図2】本実施形態に係る積層装置の搬送ホルダユニットを例示する斜視図である。
【
図3】搬送ホルダを例示する側面図(X視図)である。
【
図4】搬送ホルダのサイズ調節機構を説明する図である。
【
図5】搬送ホルダによる、セパレータシートの吸着過程(1/4)を例示する図である。
【
図6】搬送ホルダによる、セパレータシートの吸着過程(2/4)を例示する図である。
【
図7】搬送ホルダによる、セパレータシートの吸着過程(3/4)を例示する図である。
【
図8】搬送ホルダによる、セパレータシートの吸着過程(4/4)を例示する図である。
【
図9】搬送ホルダによる、セパレータシートの積層過程(1/4)を例示する図である。
【
図10】搬送ホルダによる、セパレータシートの積層過程(2/4)を例示する図である。
【
図11】搬送ホルダによる、セパレータシートの積層過程(3/4)を例示する図である。
【
図12】搬送ホルダによる、セパレータシートの積層過程(4/4)を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<積層装置の全体構成>
図1に、本実施形態に係る積層装置の概略を示す。積層装置は、正極シート10、負極シート12、及びセパレータシート14を積層させて、電池積層体を製造する。電池積層体は、例えば角型電池やラミネート電池であってよい。さらに電池積層体は、リチウムイオン二次電池や全固体電池など、積層構造を有する電池の積層体であってよい。
【0026】
積層装置には、正極ライン20、負極ライン30、セパレータライン40、積層ステージ50、及び制御部60が設けられる。各ラインにてシート(正極シート、負極シート、セパレータシート)が形成され、位置合わせされた後に積層ステージ50にて積層される。また、セパレータライン40については、正極ライン20に対応するセパレータライン40Aと、負極ライン30に対応するセパレータライン40Bが設けられる。
【0027】
正極ライン20は、正極ローダ21、正極シート切断部22、正極供給ステージ23、正極ポジションステージ24、第一正極搬送ホルダ25A,25B、及び第二正極搬送ホルダ26A,26Bを備える。
【0028】
正極ローダ21は、ロール状の正極(正極ロール)を正極シート切断部22まで供給する。正極シート切断部22では、正極ロールを所望の長さに切断して正極シート10とする。切断後、正極シート10は一枚ずつスライド移動されて正極供給ステージ23に搬送される。正極供給ステージ23は第一正極搬送ホルダ25A,25Bの下まで移動する。
【0029】
さらに正極供給ステージ23上の正極シート10,10が、第一正極搬送ホルダ25A,25Bに、例えば真空吸着によって吸着される。第一正極搬送ホルダ25A,25Bは、正極供給ステージ23から正極ポジションステージ24に正極シート10,10を搬送する。この搬送の際に、第一正極搬送ホルダ25A,25Bは適宜回転して正極シート10,10の向きを変更する。例えば、正極シート10に設けられた正極タブ(図示せず)が負極シート12に設けられた負極タブ(図示せず)の反対側となるように、正極シート10,10の向きが変更される。正極ポジションステージ24に正極シート10,10を載置する際には、例えば第一正極搬送ホルダ25A,25Bの吸着面からエアを噴き出すことで当該ホルダから正極シート10,10が分離される。
【0030】
正極ポジションステージ24に載置された正極シート10,10は、第二正極搬送ホルダ26A,26Bによって積層ステージ50Aまで搬送される。例えば正極シート10,10は、真空吸着によって第二正極搬送ホルダ26A,26Bに吸着される。
【0031】
積層ステージ50Aでは、第二正極搬送ホルダ26A,26Bに吸着された正極シート10,10が当該ホルダから分離され、積層体55,55上に積層される。分離の際には例えば吸着面からエアを噴き出すことで第二正極搬送ホルダ26A,26Bから正極シート10,10が分離される。
【0032】
負極ライン30は、負極ローダ31、負極シート切断部32、負極供給ステージ33、負極ポジションステージ34、第一負極搬送ホルダ35A,35B、及び第二負極搬送ホルダ36A,36Bを備える。
【0033】
負極ローダ31は、ロール状の負極(負極ロール)を負極シート切断部32まで供給する。負極シート切断部32では、負極ロールを所望の長さに切断して負極シート12とする。切断後、負極シート12は一枚ずつスライド移動されて負極供給ステージ33に搬送される。負極供給ステージ33は第一負極搬送ホルダ35A,35Bの下まで移動する。
【0034】
さらに負極供給ステージ33上の負極シート12,12が、第一負極搬送ホルダ35A,35Bに、例えば真空吸着によって吸着される。第一負極搬送ホルダ35A,35Bは、負極供給ステージ33から負極ポジションステージ34に負極シート12,12を搬送する。この搬送の際に、第一負極搬送ホルダ35A,35Bは適宜回転して負極シート12,12の向きを変更する。例えば、負極シート12に設けられた負極タブ(図示せず)が正極シート10に設けられた正極タブ(図示せず)の反対側となるように、負極シート12,12の向きが変更される。負極ポジションステージ34に負極シート12,12を載置する際には、例えば第一負極搬送ホルダ35A,35Bの吸着面からエアを噴き出すことで当該ホルダから負極シート12,12が分離される。
【0035】
負極ポジションステージ34に載置された負極シート12,12は、第二負極搬送ホルダ36A,36Bによって積層ステージ50Bまで搬送される。例えば負極シート12,12は、真空吸着によって第二負極搬送ホルダ36A,36Bに吸着される。
【0036】
積層ステージ50Bでは、第二負極搬送ホルダ36A,36Bに吸着された負極シート12,12が当該ホルダから分離され、積層体55,55上に積層される。分離の際には例えば吸着面からエアを噴き出すことで第二負極搬送ホルダ36A,36Bから負極シート12,12が分離される。
【0037】
セパレータライン40Aは、セパレータローダ41A、セパレータシート切断部42A、セパレータポジションテーブル43A、及び、セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2を備える。なお、セパレータライン40Bは、セパレータライン40Aと線対称の構造であって、同様の構成を備える。したがって以下では、セパレータライン40Aについてのみ説明する。ここで、以下の説明について、サフィックスAをBに変更するとセパレータライン40Bについての説明となる。
【0038】
セパレータローダ41Aは、ロール状のセパレータ(セパレータロール)をセパレータシート切断部42Aまで供給する。セパレータシート切断部42Aでは、セパレータロールを所望の長さに切断してセパレータシート14とする。切断後、セパレータシート14はペア(二枚一組)の状態でセパレータポジションテーブル43Aに搬送される。
【0039】
セパレータポジションテーブル43Aでは、セパレータシート14,14の位置決めが行われる。例えばカメラ44A等の撮像装置を用いて、テーブル上のセパレータシート14,14の位置や角度が調整される。調整後、セパレータポジションテーブル43Aはセパレータ搬送ホルダ45A1,45A2の下まで移動する。
【0040】
セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2は、セパレータポジションテーブル43A上のセパレータシート14,14を積層ステージ50Aまで搬送する。例えばセパレータ搬送ホルダ45A1,45A2は、真空吸着に加えて静電吸着を用いて、セパレータシート14,14を吸着する。
【0041】
セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2はセパレータポジションテーブル43Aと積層ステージ50Aとの間を往復する。この往復経路上に、帯電バー46Aが設けられる。帯電バー46Aは例えばセパレータポジションテーブル43A及び積層ステージ50Aが配置されたフロア上に設けられており、上方に向かって帯電粒子を放出可能となっている。例えば帯電バー46Aはイオナイザから構成される。
【0042】
セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2が積層ステージ50Aにセパレータシート14,14を搬送した後に、セパレータポジションテーブル43Aに戻る途中で、帯電バー46Aの荷電粒子を受けて、セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2の吸着面が帯電される。その状態でセパレータ搬送ホルダ45A1,45A2はセパレータポジションテーブル43A上のセパレータシート14に当接する。このとき、セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2の吸着面が帯電されているので、セパレータシート14,14はセパレータ搬送ホルダ45A1,45A2の吸着面に静電吸着される。この吸着過程については後述する。
【0043】
セパレータシート14,14はセパレータ搬送ホルダ45A1,45A2によって積層ステージ50Aまで搬送される。さらに積層ステージ50Aにおいて、セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2からセパレータシート14,14が分離され、積層体55上に積層される。この分離過程については後述する。
【0044】
積層ステージ50は、例えば
図1に例示するように、正極側から負極側に移動する。さらに、図示しない搬送機構によって、また正極側に戻ることが可能となっている。正極側から負極側への移動を所定の回数繰り返すことで、所望の積層数の積層体55が得られる。
【0045】
また、本実施形態に係る積層装置では、第一正極搬送ホルダ25A,25B、第一負極搬送ホルダ35A,35B、第二正極搬送ホルダ26A,26B、第二負極搬送ホルダ36A,36B、及び、セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2,45B1,45B2の各ホルダが、アーム52を介して連結され、その動作が同期されるように構成される。つまりこれらの各ホルダは、搬送ユニット54として同期して往復移動する。
【0046】
搬送ユニット54がセパレータライン40寄りに移動すると、セパレータ搬送ホルダ45はセパレータポジションテーブル43上に配置され、セパレータシート14の吸着が可能となる。
【0047】
また第一正極搬送ホルダ25及び第一負極搬送ホルダ35はそれぞれ正極ポジションステージ24及び負極ポジションステージ34上に配置され、搬送した正極シート10及び負極シート12を各ステージ上に載置可能となる。
【0048】
また第二正極搬送ホルダ26及び第二負極搬送ホルダ36は積層ステージ50A,50B上に配置され、搬送した正極シート10及び負極シート12を積層ステージ50A,50B上に載置可能となる。
【0049】
次に、搬送ユニット54が正極ライン20及び負極ライン30寄りに移動すると、セパレータ搬送ホルダ45は積層ステージ50上に配置され、搬送したセパレータシート14を積層ステージ50上に載置可能となる。
【0050】
また第一正極搬送ホルダ25及び第一負極搬送ホルダ35は、それぞれ正極供給ステージ23及び負極供給ステージ33上に配置され、それぞれのステージ上の正極シート10及び負極シート12を吸着可能となる。
【0051】
また第二正極搬送ホルダ26及び第二負極搬送ホルダ36は、それぞれ正極ポジションステージ24及び負極ポジションステージ34上に配置され、それぞれのステージ上の正極シート10及び負極シート12を吸着可能となる。
【0052】
このように、搬送ユニット54の往復移動に伴い、各ホルダのシート吸着及び分離が交互に繰り返される。またセパレータ搬送ホルダ45と第二正極搬送ホルダ26及び第二負極搬送ホルダ36との間で積層ステージ50へのアクセスが交互に切り替わる。さらに積層ステージ50は、
図1の矢印で示すように、正極側と負極側とを移動可能となっている。これにより、積層ステージ50では、セパレータシート14→正極シート10→セパレータシート14→負極シート12→セパレータシート14→正極シート10・・・のように、正極シート10と負極シート12との間にセパレータシート14が挟み込まれる構造の積層体55が形成される。
【0053】
また、搬送ユニット54のアーム52の、セパレータ搬送ホルダ45ならびに第二正極搬送ホルダ26及び第二負極搬送ホルダ36との間には、帯電バー46Bが設けられる。帯電バー46Bは下方に向かって帯電粒子を放射可能となっている。搬送ユニット54の往復移動に伴い、帯電バー46Bは積層ステージ50上を横切る。この横切りの際に帯電バー46Bは積層ステージ50に向かって帯電粒子を放射する。例えば積層ステージ50にいずれのシートも載置されていない場合は、積層ステージ50の載置面が帯電される。例えばこの載置面は誘電体から構成される。載置面を帯電させることで、この上に載置されるセパレータシート14が載置面に吸着される。
【0054】
また、積層ステージ50上の積層体55の最上面に向かって帯電バー46Bから荷電粒子を放射させることで、当該最上面はその上層に重ねられるシートと静電吸着されることとなり、位置ずれを抑制できる。
【0055】
制御部60は、正極ライン20、負極ライン30、及びセパレータライン40A,40Bの各機器の動作を制御する。また搬送ユニット54の各搬送ホルダの動作も制御する。制御部60は例えばコンピュータから構成される。また仮想的に、または物理的に、制御部60は制御対象に応じて個別の制御ユニットを構成する。例えばセパレータ搬送ホルダ45の動作を制御する制御ユニットとして、制御部60はホルダ制御部62を備える。
【0056】
<セパレータ搬送ホルダの詳細>
図2には、本実施形態に係るセパレータ搬送ホルダ45A1,45A2,45B1,45B2の斜視図が例示される。セパレータ搬送ホルダ45A1,45A2,45B1,45B2はベースプレート56に支持される。ベースプレート56は搬送ユニット54のアーム52に連結される。
【0057】
これらのセパレータ搬送ホルダ45A1,45A2,45B1,45B2はいずれも同一であることから、
図3に示すセパレータ搬送ホルダ45B2を例にとってその構造を説明する。また以下では適宜単に「セパレータ搬送ホルダ45」のように記載する。
【0058】
セパレータ搬送ホルダ45は、中央ホルダプレート70、周縁ホルダプレート71A,71B、中央シリンダ72、周縁シリンダ73A,73B、ガイドピン74A,74B、昇降センサ75、及びスライド調整機構76を備える。
【0059】
中央ホルダプレート70は、セパレータシート14上面の長手方向中央部分を保持する中央保持面を下面とする保持プレートである。セパレータシート14は
図2に例示するようにY軸方向を長手方向とする略長方形の薄膜である。この長手方向(Y軸方向)に沿った両端部分(上下部分)を除く上面中央部分に中央ホルダプレート70が当接する。
【0060】
中央ホルダプレート70は、複数段のプレートに亘って構成される。例えば中央ホルダプレート70は、上段プレート70-1及び下段プレート70-2を備える。上段プレート70-1のY軸方向外縁部は、下段プレート70-2の同方向外縁部よりも張り出すように構成される。なお、X軸方向の外縁部は、上段プレート70-1と下段プレート70-2とで揃っていてもよい。このような形状を採ることで、中央ホルダプレート70は、その長手方向(Y軸方向)外縁部について、上部が下部よりも長手方向(Y軸方向)に張り出す段差形状に構成される。
【0061】
また、中央ホルダプレート70内には、図示しない空気流路が形成されていてもよい。この空気流路は、例えば中央ホルダプレート70の上段プレート70-1上面に開口を備えるとともに、下段プレート70-2下面(中央保持面)にも開口を備え、両開口を連通させるものであってよい。上段プレート70-1の上面開口にエアチャック用のエアラインホースを取り付けることで、セパレータシート14の吸着時に真空吸着が可能となる。またセパレータシート14の分離時にエアを噴き出すことが可能となる。
【0062】
さらに、中央ホルダプレート70は、その上部に設けられた接続プレート77Aと脱着可能であってよい。例えばボルト留め等により両者を結合した際には、工具等により接続プレート77から中央ホルダプレート70を外せるようにしてもよい。このようにすることで、積層体55のサイズ変更に応じた中央ホルダプレート70のサイズ変更が可能となる。
【0063】
中央ホルダプレート70は、接続プレート77Aを介して中央シリンダ72に連結される。中央シリンダ72は、中央ホルダプレート70を高さ方向(Z軸方向)に沿って昇降させる昇降機構(中央昇降機構)である。中央シリンダ72は例えばエアシリンダであって、当該エアシリンダに供給されるエアAir1の流量や向き(正圧、負圧)等の制御はホルダ制御部62によって行われる。中央シリンダ72はベースプレート56に固定され、その昇降動作によって、中央ホルダプレート70は、ベースプレート56に対して相対的に変位する。
【0064】
周縁ホルダプレート71A,71Bは、セパレータ搬送ホルダ45の、長手方向(Y軸方向)両端に設けられる。周縁ホルダプレート71A,71Bは、セパレータシート14上面の長手方向(Y軸方向)両端部分を保持する周縁保持面を下面とする。周縁ホルダプレート71A,71Bは、中央ホルダプレート70と同様に、上段プレート71A-1,71B-1、及び下段プレート71A-2,71B-2を備える。
【0065】
セパレータシート14は、その大部分が中央ホルダプレート70に当接され、残りのわずかな部分が周縁ホルダプレート71A,71Bに当接される。例えば、中央ホルダプレート70のセパレータシート14との当接面(中央保持面)と、周縁ホルダプレート71A,71Bのセパレータシート14との当接面(周縁保持面)との、当接面積比は、例えば約1:2程度であってよい。つまり周縁ホルダプレート71A、中央ホルダプレート70、周縁ホルダプレート71Bの、セパレータシート14の当接面積比は、1:4:1程度であってよい。
【0066】
また、周縁ホルダプレート71Bの、セパレータシート14との当接面積を極小化するために、下段プレート71A-2,71B-2の代わりに、またはその下面にピン(コンタクトピン)を設けてもよい。
【0067】
下段プレート71A-2,71B-2の、長手方向(Y軸方向)に沿った内縁部(中央ホルダプレート70寄りの縁端部)は、上段プレート71A-1,71B-1の同内縁部よりも同長手方向内側に張り出す段差形状に構成される。
【0068】
加えて、
図3に例示されているように、中央ホルダプレート70の上段プレート70-1の外縁部と、周縁ホルダプレート71A,71Bの下段プレート71A-2,71B-2の内縁部とが上下(Z軸方向)に重なり合うように配置される。このような配置とすることで、後述するような、周縁ホルダプレート71A,71Bと中央ホルダプレート70との同期移動が可能となる。
【0069】
周縁ホルダプレート71A,71Bは、接続プレート77B,77Cを介して周縁シリンダ73A,73Bに連結される。周縁シリンダ73A,73Bは、周縁ホルダプレート71A,71Bを高さ方向(Z軸方向)に沿って昇降させる昇降機構(周縁昇降機構)である。周縁シリンダ73A,73Bは例えばエアシリンダであって、当該エアシリンダに供給されるエアAir2,Air3の流量や向き(正圧、負圧)等の制御はホルダ制御部62によって行われる。
【0070】
周縁シリンダ73A,73Bは、スライド調整機構76を介してベースプレート56に固定される。つまり周縁シリンダ73A,73Bの昇降動作によって、周縁ホルダプレート71A,71Bは、ベースプレート56に対して相対的に変位する。
【0071】
スライド調整機構76は、
図4に例示するように、周縁シリンダ73A,73B及び周縁ホルダプレート71A,71Bの、中央シリンダ72及び中央ホルダプレート70に対する長手方向(Y軸方向)位置を調整可能となっている。例えばスライド調整機構76は、長手方向(Y軸方向)に沿って切られたガイドスロットと、当該ガイドスロットに挿入されたガイドピンとを備える。
【0072】
スライド調整機構76を備えることにより、積層体55のサイズ変更に柔軟に対応可能となる。例えばスライド調整機構76によって長手方向(Y軸方向)を拡幅させた後に、中央ホルダプレート70を取り外して、上記拡幅幅に適合する新たな中央ホルダプレート70を取り付ける。これにより積層体55のサイズ増加に対応可能となる。
【0073】
図3に戻り、中央ホルダプレート70と連結される接続プレート77A上面には、ガイドピン74A,74Bが高さ方向(Z軸方向)に延設されている。ガイドピン74A,74Bはベースプレート56に設けられ高さ方向(Z軸方向)に貫通された貫通孔を通過してベースプレート56上面よりも突出される。ガイドピン74A,74Bは接続プレート77Aに固定されているため、中央ホルダプレート70と同期して上下移動する。
【0074】
ベースプレート56には、ガイドピン74Bに近接して昇降センサ75が設けられる。昇降センサ75の検出面はガイドピン74Bに向けられており、ガイドピン74Bの昇降位置を検出可能となっている。
【0075】
昇降センサ75は
図5に例示するようなレーザセンサから構成される。例えば昇降センサ75からガイドピン74Bに向けて高さ方向に亘って帯状の光線が照射される。ガイドピン74Bの昇降位置に応じて昇降センサ75に戻る反射光量が変化する。この反射光の光量変化をもとに、ガイドピン74Bの昇降位置すなわち中央ホルダプレート70の昇降位置を把握可能となる。
【0076】
昇降センサ75が検知した昇降位置信号はホルダ制御部62に送信される。後述するように、ホルダ制御部62では、昇降センサ75から受信した下降位置の、所定の時間間隔における差分を求めるとともに、当該差分がゼロになったときに、中央ホルダプレート70が積層ステージ50の最上面に当接(到達)したか否かを判定する。
【0077】
<セパレータシート吸着過程>
図5~
図8を参照して、本実施形態に係るセパレータ搬送ホルダ45を用いたセパレータシート14の吸着過程について説明する。
図5にはセパレータシート14を吸着する前のセパレータ搬送ホルダ45が例示される。
【0078】
図5ではセパレータ搬送ホルダ45がセパレータポジションテーブル43A上に配置されているが、上述したように、その前に搬送ユニット54(
図1参照)の移動の際に、帯電バー46Aによって、中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bの下面(吸着面)に荷電粒子が照射されており、中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bは帯電されている。
【0079】
図5を参照して、ホルダ制御部62は、中央シリンダ72、周縁シリンダ73A,73Bにより中央ホルダプレート70、周縁ホルダプレート71A,71Bを下降させる。このとき、ホルダ制御部62は、中央シリンダ72の下降推力P1を、周縁シリンダ73A,73Bの下降推力P2,P3に対して大きく設定する下降制御を実行する。つまり中央シリンダ72の下降推力P1、周縁シリンダ73A,73Bの下降推力P2,P3について、P1>P2、P1>P3とする。
【0080】
例えば、周縁シリンダ73A,73Bのエアを排気して周縁ホルダプレート71A,71Bを機械的に保持するのみとする。または、周縁シリンダ73A,73Bの下降推力P2,P3を負の値とする。つまり、周縁シリンダ73A,73Bに対しては上昇推力を出力させる。
【0081】
セパレータシート14の吸着に当たり、中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bのセパレータシート14への当接タイミングにずれが生じると、例えば先に当接したホルダにセパレータシート14が引っ張られて、皺のある状態でセパレータシート14がセパレータ搬送ホルダ45に吸着されるおそれがある。
【0082】
そこで、中央シリンダ72の下降推力P1と、周縁シリンダ73A,73Bの下降推力P2,P3とを等しくさせて中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bを同期させて下降させることが考えられる。しかしながら、空気圧制御上許容される公差等により完全な同期は実際には困難となる。
【0083】
そこで本実施形態では、専ら中央シリンダ72によって中央ホルダプレート70と周縁ホルダプレート71A,71Bとを下降させている。このとき、中央ホルダプレート70の上段プレート70-1の外縁部が周縁ホルダプレート71A,71Bの下段プレート71A-2,71B-2の内縁部を引っ掛けて(係合して)周縁ホルダプレート71A,71Bを引き下げる。その結果、
図6に例示するように、中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bが同時にセパレータシート14に当接する。
【0084】
中央ホルダプレート70の下降状況はガイドピン74Bを介して昇降センサ75により検知される。ホルダ制御部62は、昇降センサの位置信号(下降位置信号)を取得するとともに、所定時間間隔(例えば1秒)における下降位置の差分を求める。この差分がゼロになったときに、つまり中央ホルダプレート70の上下移動が停止されたときに、ホルダ制御部62は中央ホルダプレート70の下面がセパレータシート14の上面に当接(タッチダウン)したと判定する。
【0085】
セパレータシート14を静電吸着するのに加えて、真空吸着する場合には、上記タッチダウン判定の際に、ホルダ制御部62は図示しないエアチャック機構に対して負圧を発生させ、中央ホルダプレート70の下段プレート70-2下面(吸着面)に形成された開口(図示せず)を介して、セパレータシート14を真空吸着する。
【0086】
図7には中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bの上昇(引き上げ)過程が例示されている。この引き上げ過程で、中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bの上昇位置に差が生じると、吸着されたセパレータシート14に皺が生じたり破れが生じるおそれがある。そこで本実施形態では、専ら周縁シリンダ73A,73Bによって周縁ホルダプレート71A,71Bに加えて中央ホルダプレート70を上昇させる。
【0087】
ホルダ制御部62は、周縁シリンダ73A,73Bの上昇推力P2,P3を、中央シリンダ72の上昇推力P1に対して大きくする上昇制御(第二上昇制御)を実行する。このとき、中央シリンダ72のエアを排気して中央ホルダプレート70を機械的に保持するのみとしてもよい。なお、上昇推力P2とP3は等しい値とする。
【0088】
また、各エアシリンダに対して昇降スピードが設定できる場合には、ホルダ制御部62は、周縁シリンダ73A,73Bの上昇スピードS2,S3を、中央シリンダ72の上昇スピードS1より速くなるように設定する。また、上昇スピードS2とS3は等しい値とする。
【0089】
このとき、周縁ホルダプレート71A,71Bの下段プレート71A-2,71B-2の内縁部が中央ホルダプレート70の上段プレート70-1の外縁部を引っ掛けて(係合して)中央ホルダプレート70を引き上げる(周縁ホルダプレート71A,71Bとともに中央ホルダプレート70を上昇させる)。その結果、
図7、
図8に例示するように、中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bが同期して上昇する。
【0090】
中央ホルダプレート70の上昇状況はガイドピン74Bを介して昇降センサ75により検知される。ホルダ制御部62は、昇降センサ75の位置信号(上昇位置信号)を取得するとともに、所定時間間隔(例えば1秒)における上昇位置の差分を求める。この差分がゼロになったときに、ホルダ制御部62は中央ホルダプレート70が上端位置に到達したと判定する。
【0091】
上述のように、セパレータシート14の吸着に成功すると、搬送ユニット54(
図1参照)によってセパレータ搬送ホルダ45は積層ステージ50上まで移動される。
【0092】
<セパレータ積層過程>
図9~
図12を参照して、セパレータ搬送ホルダ45から積層ステージ50上にセパレータシート14を載置する過程について説明する。
図9に例示されるように、積層ステージ50上に積層体55が載置される。この最上面に、セパレータ搬送ホルダ45により搬送されたセパレータシート14が積層(載置)される。
【0093】
図9に例示するように、ホルダ制御部62は、中央シリンダ72、周縁シリンダ73A,73Bを制御して、中央ホルダプレート70、周縁ホルダプレート71A,71Bを積層ステージ50まで下降させる。
【0094】
このとき、ホルダ制御部62は、上述した下降制御を実行する。すなわち、ホルダ制御部62は、中央シリンダ72の下降推力P1を、周縁シリンダ73A,73Bの下降推力P2,P3に対して大きく設定する下降制御を実行する。
【0095】
例えば中央シリンダ72の下降推力P1、周縁シリンダ73A,73Bの下降推力P2,P3について、P1>P2、P1>P3とする。または、周縁シリンダ73A,73Bのエアを排気して周縁ホルダプレート71A,71Bを機械的に保持するのみとする。あるいは、周縁シリンダ73A,73Bに対して上昇推力(負の下降推力)を出力させる。
【0096】
このとき、中央ホルダプレート70の上段プレート70-1の外縁部が周縁ホルダプレート71A,71Bの下段プレート71A-2,71B-2の内縁部を引っ掛けて(係合して)周縁ホルダプレート71A,71Bを引き下げる(中央ホルダプレート70とともに周縁ホルダプレート71A,71Bを下降させる)。その結果、
図10に例示するように、中央ホルダプレート70及び周縁ホルダプレート71A,71Bが同期して下降し、当該プレートに吸着されたセパレータシート14の下面が積層体55の最上面に当接する。
【0097】
中央ホルダプレート70の下降状況はガイドピン74Bを介して昇降センサ75により検知される。ホルダ制御部62は、昇降センサ75の位置信号(下降位置信号)を取得するとともに、所定時間間隔(例えば1秒)における下降位置の差分を求める。この差分がゼロになったときに、ホルダ制御部62はセパレータ搬送ホルダ45に保持されたセパレータシート14の下面が積層ステージ50上の積層体55の最上面に当接(タッチダウン)したと判定する。
【0098】
積層の進行に伴い、積層体55の最上面の高さは変化する。この高さ変化に対応すべく、本実施形態では、昇降センサ75の絶対位置を参照する代わりに、その位置信号変化を利用している。つまり、下降位置が変化しない時点がタッチダウン時点であると判定する。このようにすることで、単純な時間制御(X秒経過したらタッチダウンしたものと推定する)と比較してよりスループットを短縮可能となる。また、例えばカメラ等の撮像器によって積層体55の最上面を検知する場合と比較して、画像処理や当該画像に基づく最上面判定アルゴリズムの構築が不要となる。
【0099】
なお、セパレータ搬送ホルダ45がセパレータシート14を静電吸着するのに加えて、真空吸着する場合には、上記タッチダウン判定の際に、ホルダ制御部62は図示しないエアチャック機構に対して正圧を発生させる。つまり真空吸着のための負圧からセパレータシート14分離のための正圧にエアチャックの圧力制御を切り替える。その結果、中央ホルダプレート70の下段プレート70-2下面(吸着面)に形成された開口(図示せず)からエアが噴き出され、セパレータシート14の吸着面からの分離が促進される。
【0100】
図11には、セパレータ搬送ホルダ45からセパレータシート14を分離させる過程が例示されている。ホルダ制御部62は、周縁シリンダ73A,73Bに対して下降推力を出力させる。その一方で、中央シリンダ72に対して上昇推力を出力させる上昇制御(第一上昇制御)を実行する。
【0101】
このとき、セパレータシート14の長手方向(Y軸)両端が周縁ホルダプレート71A,71Bによって押さえ付けられる。この状態で、中央シリンダ72を単独でセパレータシート14から分離させる。
【0102】
ホルダ制御部62は昇降センサ75を介して中央ホルダプレート70の上昇位置を検知する。例えば上記の第一上昇制御の開始時点における中央ホルダプレート70の位置信号と第一上昇制御開始後の中央ホルダプレート70の位置信号とを比較して、信号値の差分が所定の値以上になったときに、つまりセパレータシート14から中央ホルダプレート70が十分に分離されたと推定されるときに、ホルダ制御部62は周縁シリンダ73A,73Bに対して上昇推力を出力させる。
【0103】
このとき、周縁ホルダプレート71A,71B下面とセパレータシート14上面とが静電吸着しているが、その一方で、セパレータシート14下面と積層体55の最上面とが静電吸着される。前者の面積よりも後者の面積が広いため、定性的に後者の引張りが強くなる。このため、周縁ホルダプレート71A,71Bが上昇するにしたがって、セパレータシート14が当該プレートから分離される。
【0104】
中央ホルダプレート70の上昇状況はガイドピン74Bを介して昇降センサ75により検知される。ホルダ制御部62は、昇降センサ75の位置信号(上昇位置信号)を取得するとともに、所定時間間隔(例えば1秒)における上昇位置の差分を求める。この差分がゼロになったとき(
図12参照)に、ホルダ制御部62は中央ホルダプレート70が上端位置に到達したと判定する。
【0105】
以上説明したように、本実施形態では、セパレータシート14を積層ステージ50上に載置してセパレータ搬送ホルダ45から分離させる際に、周縁ホルダプレート71A,71Bによってセパレータシート14の両端を押さえ付けつつ、中央ホルダプレート70を上昇させている。これにより、セパレータシート14と中央ホルダプレート70とが静電吸着していても、機械的に両者は分離される。
【0106】
<その他の実施形態>
上述した実施形態では、セパレータシート14とセパレータ搬送ホルダ45に対して、第一上昇制御、第二上昇制御、及び下降制御を実行可能としていたが、この形態に限らない。例えば第一正極搬送ホルダ25A及び第一負極搬送ホルダ35Aによる、正極シート10及び負極シート12との搬送に際して、上記の第一上昇制御、第二上昇制御、及び下降制御を実行可能としてもよい。また第二正極搬送ホルダ26A及び第二負極搬送ホルダ36Aによる、正極シート10及び負極シート12に際して、上記の第一上昇制御、第二上昇制御、及び下降制御を実行可能としてもよい。
【符号の説明】
【0107】
10 正極シート、12 負極シート、14 セパレータシート、20 正極ライン、30 負極ライン、40 セパレータライン、45 セパレータ搬送ホルダ、46 帯電バー、50 積層ステージ、52 アーム、54 搬送ユニット、55 積層体、56 ベースプレート、60 制御部、62 ホルダ制御部、70 中央ホルダプレート、70-1 中央ホルダプレートの上段プレート、70-2 中央ホルダプレートの下段プレート、71 周縁ホルダプレート、71-1 周縁ホルダプレートの上段プレート、71-2 周縁ホルダプレートの下段プレート、72 中央シリンダ、73 周縁シリンダ、74 ガイドピン、75 昇降センサ、76 スライド調整機構、77 接続プレート。