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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】プラグドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05D 15/10 20060101AFI20220317BHJP
   E05F 15/655 20150101ALI20220317BHJP
   B61D 19/00 20060101ALI20220317BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
E05D15/10
E05F15/655
B61D19/00 B
B60J5/04 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018014042
(22)【出願日】2018-01-30
(65)【公開番号】P2019132010
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】牧平 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】井筒 政行
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 光輝
【審査官】鳥井 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-262945(JP,A)
【文献】実開昭58-023971(JP,U)
【文献】特開2002-227507(JP,A)
【文献】特開2003-293623(JP,A)
【文献】米国特許第05483769(US,A)
【文献】西独国特許出願公開第02105658(DE,A)
【文献】欧州特許出願公開第00936119(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05D 15/10
E05F 15/00-15/79
B60J 5/04
B61D 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に対して傾斜する構造を含むドアと、
前記ドアの高さ方向に間隔を置いて配置される第1スイングアームおよび第2スイングアームと、
前記第1スイングアームにおける前記第1スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第1ピニオンと、
前記ドアに取り付けられ、前記第1ピニオンと噛み合う第1ラックと、
前記第2スイングアームにおける前記第2スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第2ピニオンと、
前記ドアに取り付けられ、前記第2ピニオンと噛み合う第2ラックと、
前記第1スイングアームの回転軸と同軸となるように前記第1スイングアームに連結される第1アーム軸と、前記第2スイングアームの回転軸と同軸となるように前記第2スイングアームに連結される第2アーム軸と、前記第1アーム軸および前記第2アーム軸を連結する第3アーム軸とを有し、前記第1スイングアームおよび前記第2スイングアームと一体に回転して前記第1スイングアームの回転と前記第2スイングアームの回転とを同期させるアーム連結軸と、
前記第1ピニオンの回転軸と同軸となるように前記第1ピニオンに連結される第1ピニオン軸と、前記第2ピニオンの回転軸と同軸となるように前記第2ピニオンに連結される第2ピニオン軸と、前記第1ピニオン軸および前記第2ピニオン軸を連結する第3ピニオン軸とを有し、前記第1ピニオンおよび前記第2ピニオンと一体に回転して前記第1ピニオンの回転と前記第2ピニオンの回転とを同期させるピニオン連結軸と
を備え、
前記アーム連結軸は、前記第1アーム軸と前記第3アーム軸とを連結する第1自在継手と、前記第2アーム軸と前記第3アーム軸とを連結する第2自在継手とを含み、
前記ピニオン連結軸は、前記第1ピニオン軸と前記第3ピニオン軸とを連結する第3自在継手と、前記第2ピニオン軸と前記第3ピニオン軸とを連結する第4自在継手とを含む
プラグドア装置。
【請求項2】
前記第1スイングアームと前記第2スイングアームとの間の距離を調節可能なアーム調節機構と、前記第1ピニオンと前記第2ピニオンとの間の距離を調節可能なピニオン調節機構とをさらに備える
請求項1に記載のプラグドア装置。
【請求項3】
前記アーム調節機構は、前記第1アーム軸に設けられた第1雄ねじ部と、前記第1雄ねじ部にねじ込まれる第1ナットとを備え、
前記第1ナットは、前記第1雄ねじ部の軸方向に移動することにより前記第1スイングアームの位置を変更可能である
請求項2に記載のプラグドア装置。
【請求項4】
前記ピニオン調節機構は、前記第2ピニオン軸に設けられた第2雄ねじ部と、前記第2雄ねじ部にねじ込まれる第2ナットとを備え、
前記第2ナットは、前記第2雄ねじ部の軸方向において移動することにより前記第2ピニオンの位置を変更可能である
請求項2または3に記載のプラグドア装置。
【請求項5】
前記第1アーム軸および前記第1ピニオン軸の少なくとも一方は、個別に形成された第1連結軸および第2連結軸と、前記第1連結軸に回転不能かつ前記第1連結軸に対して移動可能となるように前記第1連結軸に連結され、かつ、前記第2連結軸に回転不能かつ前記第2連結軸に対して移動不能となるように前記第2連結軸に連結される連結部材とを備える
請求項3または4に記載のプラグドア装置。
【請求項6】
前記第1アーム軸を車体に取り付けるための取付部材をさらに備え、
前記取付部材は、前記車体に設けられ、鉛直方向に沿って延びる第1縦溝を有する固定部材に取り付け可能であり、
前記取付部材には、前記第1縦溝と噛み合うことが可能な第2縦溝が設けられている
請求項1~5のいずれか一項に記載のプラグドア装置。
【請求項7】
前記第1ピニオンおよび前記第1ラックは、前記ドアの上部に配置され、
前記第2ピニオンおよび前記第2ラックは、前記ドアの下部に配置される
請求項1~6のいずれか一項に記載のプラグドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば鉄道の車両には、その車体の乗降口に設けられたドアを車幅方向に移動させつつ車両前後方向に開閉させるプラグドア装置が設けられている。この種のプラグドア装置として、例えば特許文献1のプラグドア装置のように、ドアが開閉するときにドアの上部および下部が車幅方向および車両前後方向に相対的に変位することを抑制するスタビライザを備えているものが知られている。
【0003】
図14および図15を参照して、スタビライザを備えるプラグドア装置の一例について説明する。
図14に示されるように、プラグドア装置300は、片開き式のドア400を開閉する駆動源となる送りねじ方式の駆動部310と、ドア400の上部および下部を連結するように設けられたスタビライザ320と、ドア400の車両前後方向への移動をガイドするラックアンドピニオン機構330とを備える。
【0004】
スタビライザ320は、ドア400の上部に配置され、ドア400の車幅方向への移動にともない回転する上側スイングアーム321と、ドア400の下部に配置され、ドア400の車幅方向への移動にともない回転する下側スイングアーム322と、上側スイングアーム321および下側スイングアーム322を連結する連結軸323とを備える。連結軸323の上部は、上側スイングアーム321の先端部に挿入され、連結軸323の下部は、下側スイングアーム322の先端部に挿入されている。このように、上側スイングアーム321の先端部および下側スイングアーム322の先端部が連結軸323により連結されるため、ドア400が車幅方向に移動するとき、上側スイングアーム321および下側スイングアーム322が同期して回転する。したがって、ドア400の上部および下部が車幅方向に同期して移動する。
【0005】
ラックアンドピニオン機構330は、ドア400の上部に設けられた上側ラック331と、上側スイングアーム321の先端に設けられた上側ピニオン332と、ドア400の下部に設けられた下側ラック333と、下側スイングアーム322の先端に設けられた下側ピニオン334とを備える。上側ラック331および下側ラック333は同一の構成であり、上側ピニオン332および下側ピニオン334は同一の構成である。また連結軸323において上側スイングアーム321よりも上方に突出する上端部には、上側ピニオン332が取り付けられ、連結軸323において下側スイングアーム322よりも下方に突出する下端部には、下側ピニオン334が取り付けられている。すなわち連結軸323は、上側ピニオン332および下側ピニオン334を連結している。このような構成によれば、ドア400が車両前後方向に移動するとき、上側ピニオン332の回転が連結軸323を介して下側ピニオン334に伝達されるため、上側ピニオン332および下側ピニオン334が同期して回転する。そして上側ラック331および上側ピニオン332と、下側ラック333および下側ピニオン334とが同様に噛み合うため、ドア400の上部および下部が車両前後方向に対して同期して移動する。
【0006】
図15に示されるように、ドア400は、鉛直方向に対して傾斜した構造であり、ドア400の下部が湾曲した構造である。これにより、スタビライザ320の上側スイングアーム321の車幅方向の位置および下側スイングアーム322の車幅方向の位置は互いに異なる。このため、上側スイングアーム321の回転軸および下側スイングアーム322の回転軸のそれぞれは鉛直方向に対して下方に向かうにつれて車幅方向の外側となるように傾斜している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平6-262945号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図15に示されるように、ドア400が車幅方向の外側に移動するとき、上側スイングアーム321および下側スイングアーム322はドア400を持ち上げる必要がある。このため、ドア400の自重が上側スイングアーム321および下側スイングアーム322の回転に対する抵抗となり、ドア400がスムーズに開くことが困難となる場合がある。
【0009】
なお、このような問題は、片開き式のドアに限られず、両開き式のドアでも同様に生じる場合がある。また上側スイングアームの回転軸および下側スイングアームの回転軸のそれぞれが鉛直方向に対して下方に向かうにつれて車幅方向の内側となるように傾斜している場合、ドアが全閉位置となるように各スイングアームを回転させるとき、ドアの自重が各スイングアームの抵抗となり、ドアがスムーズに閉まることが困難となる場合がある。
【0010】
本発明は、ドアをスムーズに開閉することができるプラグドア装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
〔1〕本発明の一形態に従うプラグドア装置は、ドアの高さ方向に間隔を置いて配置される第1スイングアームおよび第2スイングアームと、前記第1スイングアームにおける前記第1スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第1ピニオンと、前記ドアに取り付けられ、前記第1ピニオンと噛み合う第1ラックと、前記第2スイングアームにおける前記第2スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第2ピニオンと、前記ドアに取り付けられ、前記第2ピニオンと噛み合う第2ラックと、前記第1スイングアームの回転軸と同軸となるように前記第1スイングアームに連結される第1アーム軸と、前記第2スイングアームの回転軸と同軸となるように前記第2スイングアームに連結される第2アーム軸と、前記第1アーム軸および前記第2アーム軸を連結する第3アーム軸とを有し、前記第1スイングアームおよび前記第2スイングアームと一体に回転して前記第1スイングアームの回転と前記第2スイングアームの回転とを同期させるアーム連結軸と、前記第1ピニオンの回転軸と同軸となるように前記第1ピニオンに連結される第1ピニオン軸と、前記第2ピニオンの回転軸と同軸となるように前記第2ピニオンに連結される第2ピニオン軸と、前記第1ピニオン軸および前記第2ピニオン軸を連結する第3ピニオン軸とを有し、前記第1ピニオンおよび前記第2ピニオンと一体に回転して前記第1ピニオンの回転と前記第2ピニオンの回転とを同期させるピニオン連結軸とを備え、前記アーム連結軸は、前記第1アーム軸と前記第3アーム軸とを連結する第1自在継手と、前記第2アーム軸と前記第3アーム軸とを連結する第2自在継手とを含み、前記ピニオン連結軸は、前記第1ピニオン軸と前記第3ピニオン軸とを連結する第3自在継手と、前記第2ピニオン軸と前記第3ピニオン軸とを連結する第4自在継手とを含む。
【0012】
この構成によれば、第1自在継手および第2自在継手により第1アーム軸および第2アーム軸に対して第3アーム軸を傾斜させることにより、第1アーム軸および第2アーム軸の軸方向を鉛直方向に調節することができる。これにより、例えばドアが湾曲状に形成されることにより第1スイングアームの車幅方向の位置と第2スイングアームの車幅方向の位置が互いに異なる場合であっても、第3アーム軸を鉛直方向に対して傾斜させることにより第1スイングアームおよび第2スイングアームの回転軸が鉛直方向に対して傾くことを抑制することができる。このため、ドアの自重が第1スイングアームおよび第2スイングアームの回転の抵抗となることが抑制されるため、ドアの車幅方向への移動をスムーズに行うことができる。
一方、第1ピニオン軸の軸方向が鉛直方向に対して傾斜している場合、第1ラックおよび第1ピニオンの加工誤差や組付誤差に起因して、第1ラックに対する第1ピニオンの鉛直方向の位置が予め設定された位置とは異なると、第1ピニオンと第1ラックとが対向する方向において第1ピニオンの歯と第1ラックの歯とが噛み合う位置が適切でなくなる。その結果、第1ラックと第1ピニオンの噛み合う力が過剰に大きくまたは小さくなり、第1ピニオンが第1ラックに対してスムーズに回転しなくなる。第2ピニオン軸の軸方向が鉛直方向に対して傾斜している場合も同様に、第2ピニオンが第2ラックに対してスムーズに回転しなくなる。
その点、本プラグドア装置によれば、第3自在継手および第4自在継手により第1ピニオン軸および第2ピニオン軸に対して第3ピニオン軸を傾斜させることにより、第1ピニオン軸および第2ピニオン軸の軸方向を鉛直方向に調節することができる。これにより、第1ラックおよび第1ピニオンの加工誤差や組付誤差に起因して第1ラックに対する第1ピニオンの鉛直方向の位置が予め設定された位置とは異なっても、第1ピニオンと第1ラックとが対向する方向において第1ピニオンの歯と第1ラックの歯との噛み合う位置が変更されないため、第1ピニオンと第1ラックとが適切な力で噛み合う。また第2ラックおよび第2ピニオンについても同様に、第2ピニオンと第2ラックとが適切な力で噛み合う。このため、例えばドアが湾曲状に形成されることにより第1ピニオンの車幅方向の位置と第2ピニオンの車幅方向の位置が互いに異なる場合であっても、第1ピニオンが第1ラックに対してスムーズに回転し、第2ピニオンが第2ラックに対してスムーズに回転する。したがって、ドアの開閉動作をスムーズに行うことができる。
【0013】
〔2〕上記プラグドア装置に従属する一形態によれば、前記第1スイングアームと前記第2スイングアームとの間の距離を調節可能なアーム調節機構と、前記第1ピニオンと前記第2ピニオンとの間の距離を調節可能なピニオン調節機構とをさらに備える。
【0014】
この構成によれば、アーム調節機構により第1スイングアームと第2スイングアームとの間の距離を調節することにより、車体に対するドアの位置に合う第1スイングアームの位置および第2スイングアームの位置に調節することができる。
一方、車体に対するドアの位置が変更されたとき、ドアに取り付けられた第1ラックおよび第2ラックの車体に対する位置が変更される。そこで、ピニオン調節機構により第1ピニオンと第2ピニオンとの間の距離を変更することにより、第1ラックに第1ピニオンが噛み合う位置に第1ピニオンを配置することができ、第2ラックに第2ピニオンが噛み合う位置に第2ピニオンを配置することができる。
【0015】
〔3〕上記プラグドア装置に従属する一形態によれば、前記アーム調節機構は、前記第1アーム軸に設けられた第1雄ねじ部と、前記第1雄ねじ部にねじ込まれる第1ナットとを備え、前記第1ナットは、前記第1雄ねじ部の軸方向に移動することにより前記第1スイングアームの位置を変更可能である。
【0016】
この構成によれば、第1ナットのねじ込み量に応じて第1スイングアームと第2スイングアームとの間の距離が変更される。このため、第1スイングアームと第2スイングアームとの間の距離を無段階に調節することができる。
【0017】
〔4〕上記プラグドア装置に従属する一形態によれば、前記ピニオン調節機構は、前記第2ピニオン軸に設けられた第2雄ねじ部と、前記第2雄ねじ部にねじ込まれる第2ナットとを備え、前記第2ナットは、前記第2雄ねじ部の軸方向において移動することにより前記第2ピニオンの位置を変更可能である。
【0018】
この構成によれば、第2ナットのねじ込み量に応じて第1ピニオンと第2ピニオンとの間の距離が変更される。このため、第1ピニオンと第2ピニオンとの間の距離を無段階に調節することができる。
【0019】
〔5〕上記プラグドア装置に従属する一形態によれば、前記第1アーム軸および前記第1ピニオン軸の少なくとも一方は、個別に形成された第1連結軸および第2連結軸と、前記第1連結軸に回転不能かつ前記第1連結軸に対して移動可能となるように前記第1連結軸に連結され、かつ、前記第2連結軸に回転不能かつ前記第2連結軸に対して移動不能となるように前記第2連結軸に連結される連結部材とを備える。
【0020】
この構成によれば、第1連結軸および第2連結軸の相対回転を抑制するとともに第1アーム軸(第1ピニオン軸)の軸方向の長さを容易に変更することができる。
【0021】
〔6〕上記プラグドア装置に従属する一形態によれば、前記第1アーム軸を車体に取り付けるための取付部材をさらに備え、前記取付部材は、前記車体に設けられ、鉛直方向に沿って延びる第1縦溝を有する固定部材に取り付け可能であり、前記取付部材には、前記第1縦溝と噛み合うことが可能な第2縦溝が設けられている。
【0022】
この構成によれば、取付部材の第2縦溝が固定部材の第1縦溝に噛み合わせられることにより固定部材に対する取付部材の傾きが抑制される。このため、取付部材に挿入されたアーム連結軸が固定部材に対して傾くことが抑制される。したがって、第1スイングアームおよび第2スイングアームの回転軸が鉛直方向に対して傾くことを一層抑制することができる。
【0023】
〔7〕上記プラグドア装置に従属する一形態によれば、前記第1ピニオンおよび前記第1ラックは、前記ドアの上部に配置され、前記第2ピニオンおよび前記第2ラックは、前記ドアの下部に配置される。
【0024】
例えばドアの高さ方向の中央にラックアンドピニオン機構がある場合、ドアの美観が低下してしまう。その点、上記〔7〕の構成によれば、ドアの中央にラックアンドピニオン機構が配置されないため、美観の低下を抑制することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明にかかるプラグドア装置によれば、ドアをスムーズに開閉することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】(a)一実施形態のプラグドア装置の正面図、(b)ドアハンガの拡大図。
図2】(a)ドアの位置が全閉位置のときの図1のプラグドア装置のレール機構の平面図、(b)ドアの位置が全開位置のときのレール機構の平面図。
図3】(a)ドアの位置が全閉位置のときのプラグドア装置の側面図、(b)ドアの位置が全開位置のときのプラグドア装置の側面図。
図4】(a)上側スイングアームおよびその周辺の平面図、(b)上側スイングアームおよびその周辺の正面図、(c)支持アームの側面図、(d)上側ピニオンおよびその周辺とドアとの関係を示す側面図。
図5図4(a)の5-5線の断面図。
図6】取付部材と上側固定部材との取付構造を示す分解斜視図。
図7】アーム連結軸およびピニオン連結軸の一部を示す正面図。
図8】(a)下側スイングアームおよびその周辺の平面図、(b)下側スイングアームおよびその周辺の正面図、(c)下側ピニオンおよびその周辺とドアとの関係を示す側面図。
図9図8(a)の9-9線の断面図。
図10】(a)上側スイングアームとドアの関係を示す平面図、(b)下側スイングアームとドアとの関係を示す平面図、(c)ドアの転動体と車体のレールとの関係を示す平面図。
図11】(a)上側の引込装置とドアとの関係を示す平面図、(b)下側の引込装置とドアとの関係を示す平面図。
図12】(a)ロックシリンダがロック状態のときのロックシリンダおよび下側スイングアームの側面図、(b)ロックシリンダがロック解除状態のときのロックシリンダおよび下側スイングアームの側面図。
図13】プラグドア装置の取付方法の手順を示すフローチャート。
図14】従来のプラグドア装置の正面図。
図15図14のプラグドア装置の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、プラグドア装置の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示されるように、プラグドア装置1は、鉄道の車両200の車体210に設けられた両引き式のドア220R,220Lを開閉する。ドア220R,220Lの下端部において、車両200の前後方向(以下「前後方向ZA」)に間隔を置いた2箇所には、転動体230が設けられている。なお、転動体230の個数は任意に設定可能である。転動体230は、車体210に設けられたレール231に摺動可能に収容されている。図3の二点鎖線により示されるように、ドア220Rは、ドア220Rの下部が車両200の車幅方向(以下、「車幅方向ZB」)において車両200の内側に向けて湾曲した形状である。なお、ドア220Lの構成および形状は、ドア220Rの構成および形状と同様である。また、プラグドア装置1は、片引き式のドアに適用することもできる。
【0028】
図1に示されるように、プラグドア装置1は、ドア220R,220Lを開閉させる駆動源となる駆動機構10を備える。駆動機構10は、車体210の上部に設けられている。駆動機構10は、前後方向ZAに延びる一対のロッド11R,11Lと、空気圧によりロッド11R,11Lを前後方向ZAに移動させる駆動シリンダ12と、車幅方向ZBおよび前後方向ZAにおけるドア220R,220Lの移動をガイドするためのレール機構16と、ロッド11R,11Lを互いに逆方向に移動させる引分機構20とを備える。なお、駆動機構10は、駆動シリンダ12に代えて、電気モータにより駆動される送りねじ機構により一対のロッド11R,11Lを移動させる構成であってもよい。
【0029】
一対のロッド11R,11Lは、車幅方向ZBにおいて互いに間隔を置いて配置されている。ロッド11Rには、連結部材13Rおよびスライド部材14Rを介してドアハンガ15Rが接続されている。ロッド11Lには、連結部材13Lおよびスライド部材14Lを介してドアハンガ15Lが接続されている。
【0030】
連結部材13Rは、ロッド11Rとスライド部材14Rとを連結している。スライド部材14Rは、前後方向ZAに延びている。図1(b)に示されるように、ドアハンガ15Rは、スライド部材14Rにおいて連結部材13R(図1(a)参照)と前後方向ZAに異なる位置に設けられた回転軸15A周りで回転可能に取り付けられている。ドアハンガ15Rは、回転軸15Aに支持されるアーム15Bと、ドア220Rに取り付けられ、車幅方向ZBに水平に移動可能な取付部15Cと、アーム15Bに対して回転可能に連結し、かつ、取付部15Cに対して揺動可能に連結する連結部15Dとを備える。取付部15Cは、例えばボルト(図示略)によりドア220Rに取り付けられる。取付部15Cには、ボルトが挿入される長孔15Eが形成されている。長孔15Eは、車両200の高さ方向(以下、「高さ方向ZC」)が長手方向となる。本実施形態では、高さ方向ZCが鉛直方向と一致する。取付部15Cの上面には、高さ方向ZCに沿う回転軸周りで回転可能な転動体15Fが取り付けられている。なお、連結部材13L、スライド部材14L、および、ドアハンガ15Lの各構成および連結構造は、連結部材13R、スライド部材14R、および、ドアハンガ15Rと同様である。
【0031】
図1(a)に示されるように、レール機構16は、車体210に取り付けられる支持部材17を備える。支持部材17の前後方向ZAの長さは、乗降口211の前後方向ZAの幅よりも長い。支持部材17の正面には、前後方向ZAに延びる直線状の第1レール18R,18Lが取り付けられ、支持部材17の下面には、第2レール19R,19Lが取り付けられている。
【0032】
第1レール18R,18Lは、支持部材17の正面側に開口している。第1レール18Rには、スライド部材14Rが前後方向ZAに移動可能に取り付けられ、第1レール18Lには、スライド部材14Lが前後方向ZAに移動可能に取り付けられている。
【0033】
第2レール19R,19Lは、下方に開口している(図3参照)。図2に示されるように、第2レール19R,19Lは、乗降口211の前後方向ZAの中央から乗降口211の端に向かうにつれて車幅方向ZBの外側に湾曲状に傾斜する傾斜部19Aと、傾斜部19Aの前後方向ZAの端から前後方向ZAに向けて延びる直線部19Bとを含む。第2レール19Rには、ドアハンガ15Rの転動体15Fが第2レール19Rに対して摺動可能に収容され、第2レール19Lには、ドアハンガ15Lの転動体15Fが第2レール19Lに対して摺動可能に収容されている。
【0034】
引分機構20は、一対のロッド11R,11Lの車幅方向ZBの間に配置されている。引分機構20の一例は、一対のロッド11R,11Lに設けられたラック歯(図示略)と噛み合うピニオン歯(図示略)を有する。引分機構20は、駆動シリンダ12によりロッド11Rが移動することにともない、ロッド11Rのラック歯と噛み合うピニオン歯が回転し、ピニオン歯と噛み合うロッド11Lがロッド11Rとは反対方向に移動する。
【0035】
図1(a)に示されるように、プラグドア装置1は、ドア220R,220Lの開閉時にドア220R,220Lのそれぞれの上部および下部が相対的に変位することを抑制するスタビライザ30R,30Lを備えている。スタビライザ30R,30Lは、乗降口211の前後方向ZAの両側に設けられている。
【0036】
スタビライザ30Rは、ドア220Rの上部に配置された第1スイングアームの一例である上側スイングアーム31、ドア220Rの下部に配置された第2スイングアームの一例である下側スイングアーム32、および、上側スイングアーム31と下側スイングアーム32とを連結するアーム連結軸40を備える。またスタビライザ30Rは、上側スイングアーム31に設けられた第1ピニオンの一例である上側ピニオン33、下側スイングアーム32に設けられた第2ピニオンの一例である下側ピニオン34、および、上側ピニオン33と下側ピニオン34とを連結するピニオン連結軸50を備える。
【0037】
アーム連結軸40は、上側スイングアーム31の回転軸と同軸となるように上側スイングアーム31に連結される第1アーム軸41、下側スイングアーム32の回転軸と同軸となるように下側スイングアーム32に連結される第2アーム軸42、および、第1アーム軸41と第2アーム軸42とを連結する第3アーム軸43を備える。またアーム連結軸40は、第1アーム軸41と第3アーム軸43とを一体に回転可能に連結する第1自在継手44と、第2アーム軸42と第3アーム軸43とを一体に回転可能に連結する第2自在継手45とを備える。第1自在継手44および第2自在継手45の一例は、カルダンジョイントである。また第1自在継手44および第2自在継手45は、カルダンジョイントに代えて、ツェッパジョイントや等速ジョイントであってもよい。
【0038】
図3に示されるように、第1アーム軸41は、第1自在継手44に連結される第1連結軸41A、および、第1連結軸41Aの上端部に連結される第2連結軸41Bを備える。第1連結軸41Aと第2連結軸41Bとは、一体に回転可能である。このように、第1アーム軸41、第2アーム軸42、および、第3アーム軸43は、一体に回転可能であるため、アーム連結軸40は、上側スイングアーム31の回転と下側スイングアーム32の回転とを同期させる。
【0039】
上側スイングアーム31および下側スイングアーム32は、ドア220Rの形状に沿ってドア220Rに取り付けられる。このため、車幅方向ZBにおいて、下側スイングアーム32は、上側スイングアーム31よりも内側に配置されている。第1アーム軸41および第2アーム軸42は、高さ方向ZC(鉛直方向)に沿って延びている。第3アーム軸43は、第1自在継手44により第1アーム軸41に対して傾斜可能であり、第2自在継手45により第2アーム軸42に対して傾斜可能であり、上方に向かうにつれて車幅方向ZBの外側に傾斜している。
【0040】
図3(b)に示されるように、上側ピニオン33は、上側スイングアーム31において、上側スイングアーム31の回転軸と異なる部分、例えば上側スイングアーム31の先端部に取り付けられている。図1(a)に示されるように、車幅方向ZBにおいて上側ピニオン33と対向するドア220Rの上部には、前後方向ZAに延びる上側ラック35が取り付けられている。上側ピニオン33および上側ラック35は、互いに噛み合わせられている。
【0041】
図3(b)に示されるように、下側ピニオン34は、下側スイングアーム32において、下側スイングアーム32の回転軸と異なる部分、例えば下側スイングアーム32の先端部に取り付けられている。図1(a)に示されるように、車幅方向ZBにおいて下側ピニオン34と対向するドア220Rの下部には、前後方向ZAに延びる下側ラック36が取り付けられている。下側ピニオン34および下側ラック36は、互いに噛み合わせられている。また、上側ピニオン33および下側ピニオン34は、歯数および形状が同一であり、上側ラック35および下側ラック36は、歯数および形状が同一である。
【0042】
ピニオン連結軸50は、上側ピニオン33の回転軸と同軸となるように上側ピニオン33に連結される第1ピニオン軸51、下側ピニオン34の回転軸と同軸となるように下側ピニオン34に連結される第2ピニオン軸52、および、第1ピニオン軸51と第2ピニオン軸52とを連結する第3ピニオン軸53を有する。またピニオン連結軸50は、第1ピニオン軸51と第3ピニオン軸53とを一体に回転可能に連結する第3自在継手54と、第2ピニオン軸52と第3ピニオン軸53とを一体に回転可能に連結する第4自在継手55とを備える。第3自在継手54および第4自在継手55の一例は、カルダンジョイントである。また第3自在継手54および第4自在継手55は、カルダンジョイントに代えて、ツェッパジョイントや等速ジョイントであってもよい。
【0043】
図3(b)に示されるように、第1ピニオン軸51は、第3自在継手54に連結される第1連結軸51A、および、第1連結軸51Aの上端部に連結される第2連結軸51Bを有する。第1連結軸51Aおよび第2連結軸51Bは、一体に回転可能である。このように、第1ピニオン軸51、第2ピニオン軸52、および、第3ピニオン軸53は、一体に回転可能であるため、ピニオン連結軸50は、上側ピニオン33の回転と下側ピニオン34の回転とを同期させる。
【0044】
図1(b)および図3に示されるように、プラグドア装置1は、スタビライザ30R,30Lのピニオン連結軸50を車幅方向ZBの内側に引き込む引込装置21R,21L,22R,22Lを備える。またプラグドア装置1は、スタビライザ30R,30Lの下側スイングアーム32の回転軸を中心とした回転をロックするロックシリンダ23R,23L(ロックシリンダ23Lは図3では図示略。図12参照)を備える。引込装置21R,21Lは、上側ピニオン33および上側ラック35よりも上方において車体210に取り付けられている。引込装置22R,22Lは、下側ピニオン34および下側ラック36よりも下方において車体210に取り付けられている。引込装置21R,21Lは、スタビライザ30R,30Lのピニオン連結軸50の上端部を車幅方向ZBの内側に引き込むためのアーム21Aを有する。引込装置22R,22Lは、スタビライザ30R,30Lのピニオン連結軸50の下端部を車幅方向ZBの内側に引き込むためのアーム22Aを有する。
【0045】
図1および図4図11を参照して、スタビライザ30Rの詳細な構成について説明する。なお、スタビライザ30Lの構成は、スタビライザ30Rの構成と同様である。
図4および図5は、スタビライザ30Rの上部の構成、特に上側スイングアーム31およびその周辺の構成を示している。
【0046】
図4(b)に示されるように、上側スイングアーム31は、アーム連結軸40の第1アーム軸41を回転不能に支持するアーム支持部31Aと、ピニオン連結軸50の第1ピニオン軸51を回転可能に支持するピニオン支持部31Bと、アーム支持部31Aとピニオン支持部31Bとを連結する連結部31Cとを備える。アーム支持部31Aは第1アーム軸41が挿入可能な挿入孔31D(図5参照)を有する円筒形状に形成され、ピニオン支持部31Bは第1ピニオン軸51が挿入可能な挿入孔31E(図5参照)を有する円筒形状に形成されている。ピニオン支持部31Bの高さ方向ZCの寸法は、アーム支持部31Aの高さ方向ZCの寸法よりも大きい。
【0047】
第1ピニオン軸51の第2連結軸51Bは、ピニオン支持部31Bに対して高さ方向ZCの両側に突出している。第2連結軸51Bにおいてピニオン支持部31Bよりも上方の部分には、上側ピニオン33が回転不能に取り付けられている。第2連結軸51Bにおいてピニオン支持部31Bと上側ピニオン33との高さ方向ZCの間の部分には、支持アーム60が取り付けられている。
【0048】
図4(a)に示されるように、支持アーム60は、第2連結軸51Bと直交する方向に延びている。支持アーム60の先端部には、前後方向ZAに間隔を置いて配置された一対の第1転動体61、および、一対の第1転動体61の間に配置された第2転動体62が取り付けられている。一対の第1転動体61は、高さ方向ZCに沿う方向を回転軸周りで回転可能であり、第2転動体62は、高さ方向ZCと直交する方向を回転軸周りで回転可能である。図4(c)に示されるように、第2転動体62の上端部は、一対の第1転動体61の上端部よりも上方に位置している。図4(d)に示されるように、一対の第1転動体61および第2転動体62は、ドア220Rの上側ラック35の裏側(車幅方向ZBの外側)に設けられた上側レール221に収容されている。上側レール221は、前後方向ZAに延び、下方に向けて開口している。一対の第1転動体61は、上側レール221の車幅方向ZBの両側壁のうちの一方に接触し、第2転動体62は、上側レール221の上壁に接触し、ドア220Rを支持している。
【0049】
図5に示されるように、第1ピニオン軸51の第2連結軸51Bは、第1転がり軸受63および第2転がり軸受64により上側スイングアーム31に対して回転可能に支持されている。第1転がり軸受63は、スラスト軸受63Aおよびラジアル軸受63Bが一体に組み合わせられた軸受である。スラスト軸受63Aはピニオン支持部31Bの上面に配置され、ラジアル軸受63Bはピニオン支持部31Bの挿入孔32Eの上端部に配置されている。第2転がり軸受64は、ピニオン支持部31Bの挿入孔32Eの下端部に取り付けられている。支持アーム60は、第3転がり軸受65により第1ピニオン軸51に対して回転可能に支持されている。支持アーム60は、第1転がり軸受63のスラスト軸受63Aにより高さ方向ZCに支持されている。なお、第1転がり軸受63は、スラスト軸受63Aおよびラジアル軸受63Bが個別に形成されてもよい。スラスト軸受63A、ラジアル軸受63B、第2転がり軸受64、および、第3転がり軸受65のそれぞれは、玉軸受であっても、ころ軸受であってもよい。
【0050】
図4(b)に示されるように、第1アーム軸41の第2連結軸41Bにおいて上側スイングアーム31のアーム支持部31Aよりも下方の部分は、車体210にスタビライザ30Rを取り付けるための取付部材66に挿入されている。第2連結軸41Bにおいて取付部材66が挿入される部分よりも上方の部分には、アーム支持部31Aが取り付けられる取付軸41C、および、取付軸41Cよりも下方において取付軸41Cよりも拡径した第1雄ねじ部41Dが設けられている。上側スイングアーム31は、取付軸41Cに取り付けられたナット69と第1雄ねじ部41Dの上端面とによりアーム支持部31Aが高さ方向ZCに挟み込まれることにより、第1アーム軸41に連結されている。
【0051】
取付部材66は、第1連結軸41Aが挿入される挿入孔66C(図5参照)を有する挿入部66A、および、挿入部66Aから外側に延びる板状の取付部66Bを備える。取付部66Bに形成され、車幅方向ZBが長手方向となる一対の長孔66Dを介して、取付部材66は、車体210の上方に固定された上側固定部材212Rに例えばボルトBにより固定されている。これにより、上側固定部材212Rに対する取付部材66の車幅方向ZBの位置を調節できる。
【0052】
図5に示されるように、第1アーム軸41の第2連結軸41Bは、第4転がり軸受67および第5転がり軸受68により取付部材66に対して回転可能に支持されている。第4転がり軸受67は、スラスト軸受67Aおよびラジアル軸受67Bが一体に組み合わせられた軸受である。スラスト軸受67Aは挿入部66Aの上面に配置され、ラジアル軸受67Bは挿入部66Aの挿入孔66Cの上端部に配置されている。第5転がり軸受68は、挿入部66Aの挿入孔66Cの下端部に取り付けられている。なお、第4転がり軸受67は、スラスト軸受67Aおよびラジアル軸受67Bが個別に形成されてもよい。スラスト軸受67A、ラジアル軸受67B、および、第5転がり軸受68は、玉軸受であっても、ころ軸受であってもよい。
【0053】
図6に示されるように、上側固定部材212Rには、ボルトBが挿入される一対の孔212Aが形成されている。また、上側固定部材212Rにおいて取付部66Bに対面する部分には、鉛直方向に沿って延びる複数の第1縦溝212Bが形成されている。
【0054】
取付部66Bにおいて上側固定部材212Rと対面する部分には、鉛直方向に沿って延びる複数の第2縦溝66Eが形成されている。第2縦溝66Eは、第1縦溝212Bと噛み合わせられる。
【0055】
図4(b)および図7に示されるように、スタビライザ30Rは、上側スイングアーム31と下側スイングアーム32(図3参照)との間の距離を調節可能なアーム調節機構70を備える。図4(b)に示されるように、アーム調節機構70は、第1アーム軸41の第2連結軸41Bに設けられた第1雄ねじ部41D、第1雄ねじ部41Dにねじ込まれた第1ナット71、第1雄ねじ部41Dに対する第1ナット71の回転を制限するロックナット72を備える。
【0056】
図7に示されるように、アーム調節機構70は、第1アーム軸41の軸方向の長さを調節する長さ調節部73を備える。長さ調節部73は、第1アーム軸41の第1連結軸41Aと第2連結軸41Bとを連結する円筒形状の連結部材46を備える。連結部材46の上端部には、第2連結軸41Bが回転不能かつ第2連結軸41Bの軸方向において移動不能に連結されている。また、連結部材46の下部には、第1連結軸41Aが回転不能かつ第1連結軸41Aの軸方向において移動可能に連結されている。詳細には、第1連結軸41Aには、スプライン41Eが形成され、連結部材46の内周部分には、スプライン41Eと噛み合わせられるスプライン(図示略)が形成されている。なお、第1ピニオン軸51の第1連結軸51Aおよび第3ピニオン軸53は、第1アーム軸41の第1連結軸41Aおよび第3アーム軸43と同様の構成である。このため、図7では、括弧書きでピニオン連結軸50の符号を付している。
【0057】
図8および図9は、スタビライザ30Rの下部の構成、特に下側スイングアーム32およびその周辺の構成を示している。
図8(b)に示されるように、下側スイングアーム32は、アーム連結軸40の第2アーム軸42を回転不能に支持するアーム支持部32Aと、ピニオン連結軸50の第2ピニオン軸52を回転可能に支持するピニオン支持部32Bと、アーム支持部32Aとピニオン支持部32Bとを連結する連結部32Cとを備える。アーム支持部32Aは第3アーム軸43が挿入可能な挿入孔32D(図9参照)を有する円筒形状に形成され、ピニオン支持部32Bは第3ピニオン軸53が挿入可能な挿入孔32E(図9参照)を有する円筒形状に形成されている。ピニオン支持部32Bの高さ方向ZCの寸法は、アーム支持部32Aの高さ方向ZCの寸法よりも大きい。図8(a)に示されるように、ピニオン支持部32Bには、前後方向ZAに延びる延長部32Fが設けられている。延長部32Fには、ロックシリンダ23Rのロックピン23A(図12参照)が挿入可能な孔32Gが形成されている。
【0058】
図8(b)に示されるように、アーム連結軸40の第2アーム軸42においてアーム支持部32Aよりも下方の部分は、車体210にスタビライザ30Rを取り付けるための取付部材66に挿入されている。取付部材66は、取付部66Bの一対の長孔66Dを介して、車体210の下方に固定された下側固定部材213Rに例えばボルトBにより固定されている。下側固定部材213Rは、上側固定部材212Rと同様の構成であり、下側固定部材213Rにおいて取付部66Bに対面する部分には、鉛直方向に沿って延びる複数の第1縦溝213Aが形成されている。取付部66Bの第2縦溝66Eは、第1縦溝213Aと噛み合わせられる。
【0059】
図9に示されるように、第2アーム軸42は、第1転がり軸受82および第2転がり軸受83により取付部材66に対して回転可能に支持されている。第1転がり軸受82は、スラスト軸受82Aおよびラジアル軸受82Bが一体に組み合わせられた軸受である。スラスト軸受82Aは挿入部66Aの上面に配置され、ラジアル軸受82Bは挿入部66Aの挿入孔66Cの上端部に配置されている。第2転がり軸受83は、挿入部66Aの挿入孔66Cの下端部に取り付けられている。なお、第1転がり軸受82は、スラスト軸受82Aおよびラジアル軸受82Bが個別に形成されてもよい。スラスト軸受82A、ラジアル軸受82B、および、第2転がり軸受83は、玉軸受であっても、ころ軸受であってもよい。
【0060】
図8(b)に示されるように、第2ピニオン軸52は、ピニオン支持部32Bに対して高さ方向ZCの両側に突出している。第2ピニオン軸52においてピニオン支持部32Bよりも下方の部分には、下側ピニオン34が回転不能に取り付けられている。第2ピニオン軸52において下側ピニオン34よりも下方の部分には、支持アーム80が取り付けられている。図8(a)に示されるように、支持アーム80は、支持アーム60と概ね同様の形状である。支持アーム80の先端部には、前後方向ZAに間隔を置いて配置された一対の転動体81が取り付けられている。一対の転動体81は、高さ方向ZCに沿う方向を回転軸として回転可能である。図8(c)に示されるように、一対の転動体81は、ドア220Rの下端部に設けられた下側レール222に収容されている。下側レール222は、前後方向ZAに延び、下方が開口している。一対の転動体81は、下側レール222の車幅方向ZBの両側壁のうちの一方と接触している。
【0061】
図9に示されるように、第2ピニオン軸52は、第3転がり軸受84および第4転がり軸受85により下側スイングアーム32に対して回転可能に支持されている。第3転がり軸受84は、スラスト軸受84Aおよびラジアル軸受84Bが一体に組み合わせられた軸受である。スラスト軸受84Aはピニオン支持部32Bの上面に配置され、ラジアル軸受84Bはピニオン支持部32Bの挿入孔32Eの上端部に配置されている。第4転がり軸受85は、ピニオン支持部32Bの挿入孔32Eの下端部に取り付けられている。支持アーム80は、第5転がり軸受86により第2ピニオン軸52に対して回転可能に支持されている。なお、第3転がり軸受84は、スラスト軸受84Aおよびラジアル軸受84Bが個別に形成されてもよい。スラスト軸受84A、ラジアル軸受84B、第4転がり軸受85、および、第5転がり軸受86は、玉軸受であっても、ころ軸受であってもよい。
【0062】
図8(b)に示されるように、スタビライザ30Rは、上側ピニオン33と下側ピニオン34(図1参照)との間の距離を調節可能なピニオン調節機構90を備える。ピニオン調節機構90は、第2ピニオン軸52においてピニオン支持部32Bよりも上方の部分に設けられた第2雄ねじ部52A、第2雄ねじ部52Aにねじ込まれた第2ナット91、第2雄ねじ部52Aに対する第2ナット91の回転を制限するロックナット92を備える。
【0063】
また図7に示されるように、ピニオン調節機構90は、第1ピニオン軸51の長さを調節可能な長さ調節部93を備える。長さ調節部93は、連結部材46と同様に連結部材56を備える。長さ調節部93は、アーム調節機構70の長さ調節部73と同様の構成であり、第1ピニオン軸51の第1連結軸51Aにはスプライン51Eが形成されている。
【0064】
アーム調節機構70およびピニオン調節機構90によるスタビライザ30Rの調節について説明する。
図4(b)に示されるように、アーム調節機構70は、第1ナット71のねじ込み量を調節することにより、取付部材66に対する第1連結軸41Aの高さ方向ZCの位置を変更することにより上側スイングアーム31の高さ方向ZCの位置を調節する。これにともない、図7に示される長さ調節部73により第1アーム軸41の軸方向の長さが調節されるため、第2アーム軸42(図3参照)の高さ方向ZCの位置が変更されない。このとき、ピニオン連結軸50は、図7に示される長さ調節部93により第1ピニオン軸51の軸方向の長さが調節されるため、第2ピニオン軸52(図3参照)の高さ方向ZCの位置が変更されない。このため、アーム調節機構70により、上側スイングアーム31と下側スイングアーム32との高さ方向ZCの距離が調節される。
【0065】
図8(b)に示されるように、ピニオン調節機構90は、第2ナット91のねじ込み量を調節することにより、取付部材66に対する第1連結軸51Aの高さ方向ZCの位置を変更することにより下側ピニオン34の高さ方向ZCの位置を調節する。これにともない、図7に示される長さ調節部93により第1ピニオン軸51の軸方向の長さが調節され、長さ調節部73により第1アーム軸41の軸方向の長さが調節されるため、上側ピニオン33および上側スイングアーム31(ともに図3参照)の高さ方向ZCの位置が変更されない。このため、ピニオン調節機構90により、上側ピニオン33と下側ピニオン34との高さ方向ZCの距離が調節される。
【0066】
図1図3および図11図12を参照して、プラグドア装置1の動作について説明する。なお、図10の二点鎖線により示されるドア220R,220Lの位置は、全開位置である。
【0067】
まず、ドア220R,220Lの開動作について説明する。
図11(a)および(b)に示されるように、ドア220R,220Lの位置が全閉位置のとき、引込装置21R,21Lのアーム21A(実線)がピニオン連結軸50の上端部を車幅方向ZBの内側に引き込み、引込装置22R,22Lのアーム22A(実線)がピニオン連結軸50の下端部を車幅方向ZBの内側に引き込む。これにより、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32(ともに図10(a)および(b)参照)の先端部が車幅方向ZBの外側に向けて回転することが抑制される。また図12(a)に示されるように、ドア220R,220Lの位置が全閉位置のとき、ロックシリンダ23R,23Lのロックピン23Aが下側スイングアーム32の孔32Gに挿入される。このため、下側スイングアーム32の回転が制限されている。
【0068】
そして車両200に設けられた制御装置(図示略)からドア220R,220Lを開動作させる指令信号を受信したとき、図11(a)および(b)に示されるように、引込装置21R,21L,22R,22Lのアーム21A,22A(二点鎖線)がピニオン連結軸50から離間する。また図12(b)に示されるように、ロックシリンダ23R,23Lのロックピン23Aが上方に移動して下側スイングアーム32の孔32Gから抜ける。これにより、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の回転の制限が解除される。
【0069】
そして、図2(a)および図3(a)に示されるように、ドア220R,220Lの位置が全閉位置から前後方向ZAにおいてロッド11R,11Lが互いに反対方向に移動するように駆動シリンダ12が駆動する。これにより、図1(a)に示されるように、ロッド11R,11Lに連結されたスライド部材14R,14Lが前後方向ZAにおいて互いに反対方向に移動する。このため、スライド部材14R,14Lに連結されたドアハンガ15R,15Lを介してドア220R,220Lが前後方向ZAにおいて互いに反対方向に移動する。
【0070】
このとき、図2に示されるように、第2レール19R,19Lの傾斜部19Aに沿って転動体15Fが移動する。これにともない、図10(a)および(b)に示されるように、スタビライザ30R,30Lの上側スイングアーム31および下側スイングアーム32が同期して回転する。またスタビライザ30R,30Lの上側ピニオン33および下側ピニオン34も同期して回転する。このようにプラグドア装置1が動作するため、ドア220R,220Lが前後方向ZAに移動しつつ車幅方向ZBの外側に移動する。このとき、図10(c)に示されるように、ドア220R,220Lの下端部に設けられた一対の転動体230は、車体210に設けられたレール231(二点鎖線)の傾斜部231Aに沿って移動する。
【0071】
そして、図2に示されるように、第2レール19R,19Lの直線部19Bに沿って転動体15Fが移動するとき、図10(a)および(b)に示されるように、上側ピニオン33および下側ピニオン34は同期して回転する一方、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32は回転しない。このため、ドア220R,220Lが前後方向ZAのみに移動する。このとき、図10(c)に示されるように、一対の転動体230は、レール231の直線部231Bに沿って移動する。
【0072】
次に、ドア220R,220Lの閉動作について説明する。
図2(b)、ならびに、図10(a)および(b)に示されるようなドア220R,220Lの位置が全開位置において、プラグドア装置1は、制御装置からドア220R,220Lを閉動作させる指令信号を受信したとき、駆動シリンダ12をドア220R,220Lを開動作させるときと反対方向にロッド11R,11Lが移動するように制御する。これにより、転動体15Fが第2レール19R,19Lの直線部19Bを移動した後、傾斜部19Aを移動する。これにともない、転動体15Fが直線部19Bを移動している間は、上側ピニオン33および下側ピニオン34が同期して回転し、転動体15Fが傾斜部19Aを移動している間は、上側ピニオン33および下側ピニオン34が同期して回転し、かつ、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32が同期して回転する。また図10(c)に示されるように、一対の転動体230がレール231の直線部231Bを移動した後、傾斜部231Aを移動する。
【0073】
そして、ドア220R,220Lの位置が全閉位置となるとき、図11(a)および(b)に示されるように、引込装置21R,21L,22R,22Lは、アーム21A,22Aがピニオン連結軸50を車幅方向ZBの内側に引き込むように駆動する。また図12(a)に示されるように、ロックシリンダ23R,23Lは、ロックピン23Aが下方に移動するように駆動する。その結果、ロックピン23Aが下側スイングアーム32の孔32Gに挿入されることにより、下側スイングアーム32の回転が制限される。
【0074】
図13を参照して、プラグドア装置1の車両200への取付方法について説明する。なお、以下の説明において、符号が付されたプラグドア装置1および車両200の構成要素は、図1図9のプラグドア装置1および車両200の構成要素を示す。
【0075】
プラグドア装置1の取付方法は、装置取付工程(ステップS1)、ドア仮取付工程(ステップS2)、位置調節工程(ステップS3)、および、ドア本取付工程(ステップS4)を含む。
【0076】
装置取付工程では、ドア220R,220Lが取り付けられる前の車体210に駆動機構10およびスタビライザ30R,30Lのそれぞれが取り付けられる。ここで、スタビライザ30R,30Lの上側の取付部材66の第2縦溝66Eが上側固定部材212R,212Lの第1縦溝212Bに噛み合い、下側の取付部材66の第2縦溝66Eが下側固定部材213R,213Lの第1縦溝213Aに噛み合う。
【0077】
次に、ドア仮取付工程では、スタビライザ30R,30Lの支持アーム60の第2転動体62上にドア220R,220Lの上側レール221が載せられる。これにより、ドア220R,220Lはスタビライザ30R,30Lにより支持される。なお、ドア220R,220Lには、ドア仮取付工程よりも前の工程において、上側ラック35、下側ラック36、上側レール221、および、下側レール222が取り付けられている。
【0078】
次に、位置調節工程では、アーム調節機構70およびピニオン調節機構90により、高さ方向ZCにおける上側スイングアーム31、下側スイングアーム32、上側ピニオン33、下側ピニオン34、支持アーム60、および、支持アーム80の位置を調節する。具体的には、アーム調節機構70により上側の取付部材66に対する上側スイングアーム31の高さ方向ZCの位置を変更することにより、車体210に対するドア220R,220Lの位置を調節する。この調整により、下側ピニオン34が下側ラック36に対して高さ方向ZCにずれたり、支持アーム80の転動体81が下側レール222に対して高さ方向ZCにずれたりした場合、ピニオン調節機構90により下側の取付部材66に対する下側スイングアーム32の高さ方向ZCの位置を変更する。これにより、下側ピニオン34の位置が下側ラック36に高さ方向ZCに合わせられ、転動体81の位置が下側レール222に高さ方向ZCに合わせられる。
【0079】
最後に、ドア本取付工程では、ドア220R,220Lがボルト(図示略)によりドアハンガ15R,15Lに取り付けられる。ドアハンガ15R,15Lのボルトが挿入される長孔15Eの長手方向が高さ方向ZCとなるため、車体210に対してドア220R,220Lの高さ方向ZCの位置が変更されたとしてもドア220R,220Lに設けられたボルト固定穴(図示略)が長孔15Eの範囲内となる。
【0080】
本実施形態のプラグドア装置1は、以下の作用効果を奏する。
(1)アーム連結軸40は、第1自在継手44および第2自在継手45により第1アーム軸41および第2アーム軸42に対して第3アーム軸43を傾斜させることにより、第1アーム軸41および第2アーム軸42の軸方向を鉛直方向に調節することができる。またピニオン連結軸50は、第3自在継手54および第4自在継手55により第1ピニオン軸51および第2ピニオン軸52に対して第3ピニオン軸53を傾斜させることにより、第1ピニオン軸51および第2ピニオン軸52を同期させて連結することができる。これにより、上側スイングアーム31(上側ピニオン33)の車幅方向ZBの位置と下側スイングアーム32(下側ピニオン34)の車幅方向ZBの位置が互いに異なる場合であっても、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の回転軸を鉛直方向に対して傾くことを抑制することができる。このため、ドア220R,220Lの自重が上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の回転の抵抗となることが抑制されることにより、ドア220R,220Lの移動をスムーズに行うことができる。
また、第1ピニオン軸51の軸方向が鉛直方向に対して傾斜している場合、上側ピニオン33および上側ラック35の加工誤差や組付誤差に起因して、上側ラック35に対する上側ピニオン33の鉛直方向の位置が予め設定された位置とは異なると、次のような問題が生じる。すなわち、上側ピニオン33と上側ラック35とが対向する方向(車幅方向ZB)において上側ピニオン33の歯と上側ラック35の歯とが噛み合う位置が適切な位置ではなくなるため、上側ラック35と上側ピニオン33の噛み合う力が過剰に大きくまたは小さくなり、上側ピニオン33が上側ラック35に対してスムーズに回転しなくなる。第2ピニオン軸52の軸方向が鉛直方向に対して傾斜している場合も同様に、下側ピニオン34が下側ラック36に対してスムーズに回転しなくなる。
その点、本実施形態のプラグドア装置1によれば、第3自在継手54および第4自在継手55により第1ピニオン軸51および第2ピニオン軸52に対して第3ピニオン軸53を傾斜させることにより、第1ピニオン軸51および第2ピニオン軸52の軸方向を鉛直方向に調節することができる。これにより、上側ピニオン33および上側ラック35の加工誤差や組付誤差に起因して上側ラック35に対する上側ピニオン33の鉛直方向の位置が予め設定された位置とは異なっても、上側ピニオン33と上側ラック35とが対向する方向(車幅方向ZB)において上側ピニオン33の歯と上側ラック35の歯とが噛み合う位置が変更されない。これにより、上側ピニオン33と上側ラック35とが適切な力で噛み合う。また下側ピニオン34および下側ラック36の加工誤差や組付誤差に起因して下側ラック36に対する下側ピニオン34の鉛直方向の位置が予め設定された位置とは異なっても、下側ピニオン34と下側ラック36とが適切な力で噛み合う。このため、上側ピニオン33の車幅方向ZBの位置と下側ピニオン34の車幅方向ZBの位置が互いに異なる場合であっても、上側ピニオン33が上側ラック35に対してスムーズに回転し、下側ピニオン34が下側ラック36に対してスムーズに回転する。したがって、ドア220R,220Lの開閉動作をスムーズに行うことができる。
また例えば、プラグドア装置1からアーム連結軸40を省略したと仮定した構成では、次のような問題が生じる。すなわち、ピニオン連結軸50が上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の一方の回転を他方に伝達する必要があるが、各自在継手44,45により第3アーム軸43が第1アーム軸41および第2アーム軸42に対して回動するため、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の一方の回転が他方に適切に伝わらない。このため、ピニオン連結軸50が上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の回転を同期させることが困難となる。
その点、本実施形態のプラグドア装置1によれば、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の回転を同期させるアーム連結軸40と上側ピニオン33および下側ピニオン34の回転を同期させるピニオン連結軸50とが個別に設けられる。このため、上側スイングアーム31および下側スイングアーム32の回転の同期と、上側ピニオン33および下側ピニオン34の回転の同期とをそれぞれ適切にとることができる。
【0081】
(2)スタビライザ30R,30Lのアーム調節機構70が上側スイングアーム31と下側スイングアーム32との間の距離を調節することにより、車体210に対するドア220R,220Lの位置を調節することができる。
一方、車体210に対するドア220R,220Lの位置が変更されたとき、ドア220R,220Lに取り付けられた下側ラック36の位置が変更される。そこで、ピニオン調節機構90により上側ピニオン33と下側ピニオン34との間の距離を変更することにより、下側ラック36に下側ピニオン34が噛み合う位置に下側ピニオン34を配置することができる。
また、ドア220R,220Lごとに上側ラック35と下側ラック36との距離にばらつきが生じる場合、ピニオン調節機構90により上側ピニオン33と下側ピニオン34との間の距離を変更することにより、下側ラック36に下側ピニオン34が噛み合う位置に下側ピニオン34を配置することができる。
【0082】
(3)アーム調節機構70の第1ナット71のねじ込み量に応じて上側スイングアーム31と下側スイングアーム32との間の距離が変更されることにより、上側スイングアーム31と下側スイングアーム32との間の距離を無段階に調節することができる。
【0083】
(4)ピニオン調節機構90の第2ナット91のねじ込み量に応じて上側ピニオン33と下側ピニオン34との間の距離が変更されることにより、上側ピニオン33と下側ピニオン34との間の距離を無段階に調節することができる。
【0084】
(5)アーム連結軸40の連結部材46と第1連結軸41Aとがスプライン嵌合しているため、第1連結軸41Aおよび第2連結軸41Bの相対回転を抑制するとともに第1アーム軸41の軸方向の長さを容易に変更することができる。またピニオン連結軸50の連結部材56を備えることにより、連結部材46と同様の効果が得られる。
【0085】
(6)取付部材66の第2縦溝66Eが上側固定部材212R,212Lの第1縦溝212Bに噛み合わせられることにより上側固定部材212R,212Lに対する取付部材66の傾きが抑制される。このため、取付部材66に挿入されたアーム連結軸40が上側固定部材212R,212Lに対して傾くことが抑制される。したがって、上側スイングアーム31の回転軸が鉛直方向に対して傾くことを一層抑制することができる。なお、取付部材66の第2縦溝66Eが下側固定部材213R,213Lの第1縦溝212Bに噛み合わせられることにより、下側スイングアーム32の回転軸が鉛直方向に対して傾くことを一層抑制することができる。
【0086】
(7)上側ピニオン33および上側ラック35がドア220R,220Lの上部に配置され、下側ピニオン34および下側ラック36がドア220R,220Lの下部に配置されるため、乗客の腰付近の服が巻き込まれたり、子供がラックおよびピニオンに手を入れたりすることが回避される。また、ドア220R,220Lの美観の低下を抑制することができる。
【0087】
(変形例)
上記実施形態に関する説明は、本発明に従うプラグドア装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従うプラグドア装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。
【0088】
(変形例1)
アーム連結軸40における第3アーム軸43が複数の軸とこれら軸同士を一体に回転可能に連結する自在継手とから構成されてもよい。要するに、アーム連結軸40の自在継手の個数は、3個以上であってもよい。
【0089】
(変形例2)
ピニオン連結軸50における第3ピニオン軸53が複数の軸とこれら軸同士を一体に回転可能に連結する自在継手とから構成されてもよい。要するに、ピニオン連結軸50の自在継手の個数は、3個以上であってもよい。
【0090】
(変形例3)
スタビライザ30R,30Lの少なくとも一方からアーム調節機構70およびピニオン調節機構90を省略してもよい。
【0091】
(変形例4)
上側固定部材212R,212Lの少なくとも一方から第1縦溝212Bを省略してもよい。第1縦溝212Bが省略された上側固定部材に固定される取付部材66から第2縦溝66Eを省略してもよい。
また、下側固定部材213R,213Lの少なくとも一方から第1縦溝213Aを省略してもよい。第1縦溝213Aが省略された下側固定部材に固定される取付部材66から第2縦溝66Eを省略してもよい。
【0092】
(変形例5)
アーム連結軸40から第3アーム軸43を省略してもよい。この場合、第1自在継手44および第2自在継手45の少なくとも一方が第1自在継手44および第2自在継手45の他方に向けて延び、第1自在継手44と第2自在継手45とが直接的に連結される。これにより、第1アーム軸41と第2アーム軸42とが第1自在継手44および第2自在継手45のみで連結される。またこの場合、第1自在継手44および第2自在継手45の少なくとも一方が第3アーム軸43に代わる軸を有してもよい。例えば第1自在継手44が第2自在継手45に向けて延びる軸を有するものであり、第2自在継手45が軸を有していないものである場合、第1自在継手44の軸が第2自在継手45に連結されることにより、第1自在継手44および第2自在継手45が直接的に連結される。また第1自在継手44および第2自在継手45がともに軸を有する場合、第1自在継手44の軸と第2自在継手45の軸とを連結することにより、第1自在継手44および第2自在継手45が直接的に連結される。
【0093】
(変形例6)
ピニオン連結軸50から第3ピニオン軸53を省略してもよい。この場合、第3自在継手54および第4自在継手55の少なくとも一方が第3自在継手54および第4自在継手55の他方に向けて延び、第3自在継手54と第4自在継手55とが直接的に連結される。これにより、第1ピニオン軸51と第2ピニオン軸52とが第3自在継手54および第4自在継手55のみで連結される。またこの場合、第3自在継手54および第4自在継手55の少なくとも一方が第3ピニオン軸53に代わる軸を有してもよい。例えば第3自在継手54が第4自在継手55に向けて延びる軸を有するものであり、第4自在継手55が軸を有していないものである場合、第3自在継手54の軸が第4自在継手55に連結されることにより、第3自在継手54および第4自在継手55が直接的に連結される。また第3自在継手54および第4自在継手55がともに軸を有する場合、第3自在継手54の軸と第4自在継手55の軸とを連結することにより、第3自在継手54および第4自在継手55が直接的に連結される。
【0094】
(変形例7)
ピニオン連結軸50から第3自在継手54および第4自在継手55の少なくとも一方を省略してもよい。例えばピニオン連結軸50から第3自在継手54および第4自在継手55の両方が省略された場合、第3ピニオン軸53が第1ピニオン軸51および第2ピニオン軸52のそれぞれと直接的に連結される。
要するに、本プラグドア装置は、以下の構成としても実施できる。
本プラグドア装置は、ドアの高さ方向に間隔をおいて配置される第1スイングアームおよび第2スイングアームと、前記第1スイングアームにおける前記第1スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第1ピニオンと、前記ドアに取り付けられ、前記第1ピニオンと噛み合う第1ラックと、前記第2スイングアームにおける前記第2スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第2ピニオンと、前記ドアに取り付けられ、前記第2ピニオンと噛み合う第2ラックと、前記第1スイングアームの回転軸と同軸となるように前記第1スイングアームに連結される第1アーム軸と、前記第2スイングアームの回転軸と同軸となるように前記第2スイングアームに連結される第2アーム軸と、前記第1アーム軸と前記第2アーム軸とを直接的または間接的に連結する第1自在継手および第2自在継手と、を有し、前記第1スイングアームおよび前記第2スイングアームと一体に回転して前記第1スイングアームの回転と前記第2スイングアームの回転とを同期させるアーム連結軸と、を備える。
また、本プラグドア装置は、前記第1アーム軸および前記第2アーム軸を連結する第3アーム軸をさらに有し、前記第1自在継手が前記第1アーム軸と前記第3アーム軸とを連結し、前記第2自在継手が前記第2アーム軸と前記第3アーム軸とを連結する構成であってもよい。
【0095】
(変形例8)
アーム連結軸40から第1自在継手44および第2自在継手45の少なくとも一方を省略してもよい。例えばアーム連結軸40から第1自在継手44および第2自在継手45の両方が省略された場合、第3アーム軸43が第1アーム軸41および第2アーム軸42のそれぞれと直接的に連結される。
要するに、本プラグドア装置は、以下の構成としても実施できる。
本プラグドア装置は、ドアの高さ方向に間隔をおいて配置される第1スイングアームおよび第2スイングアームと、前記第1スイングアームにおける前記第1スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第1ピニオンと、前記ドアに取り付けられ、前記第1ピニオンと噛み合う第1ラックと、前記第2スイングアームにおける前記第2スイングアームの回転軸とは異なる部分に取り付けられる第2ピニオンと、前記ドアに取り付けられ、前記第2ピニオンと噛み合う第2ラックと、前記第1ピニオンの回転軸と同軸となるように前記第1ピニオンに連結される第1ピニオン軸と、前記第2ピニオンの回転軸と同軸となるように前記第2ピニオンに連結される第2ピニオン軸と、前記第1ピニオン軸と前記第2ピニオン軸とを直接的または間接的に連結する第3自在継手および第4自在継手と、を有し、前記第1ピニオンおよび前記第2ピニオンと一体に回転して前記第1ピニオンの回転と前記第2ピニオンの回転とを同期させるピニオン連結軸と、を備える。
また、本プラグドア装置は、前記第1ピニオン軸および前記第2ピニオン軸を連結する第3ピニオン軸をさらに有し、前記第3自在継手が前記第1ピニオン軸と前記第3ピニオン軸とを連結し、前記第4自在継手が前記第2ピニオン軸と前記第3ピニオン軸とを連結する構成であってもよい。
変形例8のプラグドア装置に対応する課題は以下のとおりである。
特許文献1では、ドアが湾曲状に形成されることにより、第1ピニオンの車幅方向の位置と第2ピニオンの車幅方向の位置とが異なる場合、第1ピニオン軸および第2ピニオン軸が鉛直方向に対して傾斜した状態で設けられる。このため、経年的な各部品の位置ずれやドアの鉛直方向の沈み込みに起因して、第1ピニオンと第1ラックとが対向する方向において第1ピニオンの歯と第1ラックの歯とが噛み合う位置が変更され、第2ピニオンと第2ラックとが対向する方向において第2ピニオンの歯と第2ラックの歯とが噛み合う位置が変更される場合がある。これにより、ドアの開閉動作がスムーズに行われないおそれがある。
以上のことから、本プラグドア装置に関する課題は、ドアの開閉動作をスムーズに行うことができることである。
【符号の説明】
【0096】
1 プラグドア装置
31 上側スイングアーム(第1スイングアーム)
32 下側スイングアーム(第2スイングアーム)
33 上側ピニオン(第1ピニオン)
34 下側ピニオン(第2ピニオン)
35 上側ラック(第1ラック)
36 下側ラック(第2ラック)
40 アーム連結軸
41 第1アーム軸
41A 第1連結軸
41B 第2連結軸
41D 第1雄ねじ部
42 第2アーム軸
43 第3アーム軸
44 第1自在継手
45 第2自在継手
46 連結部材
50 ピニオン連結軸
51 第1ピニオン軸
51A 第1連結軸
51B 第2連結軸
52 第2ピニオン軸
52A 第2雄ねじ部
53 第3ピニオン軸
54 第3自在継手
55 第4自在継手
56 連結部材
66 取付部材
66E 第2縦溝
70 アーム調節機構
71 第1ナット
90 ピニオン調節機構
91 第2ナット
210 車体
212R 上側固定部材(固定部材)
212L 上側固定部材(固定部材)
212B 第1縦溝
213R 下側固定部材(固定部材)
213L 下側固定部材(固定部材)
213A 第1縦溝
220R ドア
220L ドア
ZA 前後方向
ZB 車幅方向
ZC 高さ方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15