(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】空気調和システム
(51)【国際特許分類】
F24F 13/08 20060101AFI20220317BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20220317BHJP
F24F 7/10 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
F24F13/08 A
F24F5/00 K
F24F7/10 Z
(21)【出願番号】P 2018023292
(22)【出願日】2018-02-13
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】591095823
【氏名又は名称】株式会社九電工
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】北村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】近本 智行
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-069621(JP,U)
【文献】特開平09-089359(JP,A)
【文献】特開2005-156126(JP,A)
【文献】特開2000-171086(JP,A)
【文献】特開平11-141937(JP,A)
【文献】特開2000-218115(JP,A)
【文献】特開2003-105906(JP,A)
【文献】韓国公開特許第2008-0055450(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第104305655(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 13/08
F24F 5/00
F24F 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の大きさの凹部を生じさせる連続した面を有して、室内空間の床から離れた位置に前記凹部の開口側を下向きとして配設される天蓋部と、
室内空間における前記天蓋部の下側の床に配設され、室内空気と異なる温度に変化させた空気を上向きに移動させるようにする空気温度調整装置とを備え、
前記天蓋部が、室内空間における人の在席位置又は専用作業スペースの直上に配置され
、前記空気温度調整装置で温度を変化させ上向きに移動した空気を、前記凹部に捕捉して留め、
前記空気温度調整装置が、床下に設けられたダクト又は床下空間を通じて供給される調和空気を、床に設けられた開口部から上向きに吹出す床吹出口装置を備えることを
特徴とする空気調和システム。
【請求項2】
前記請求項1に記載の空気調和システムにおいて、
前記天蓋部が、室内空間の床と天井との間で配設位置を上下方向に調整可能とされることを
特徴とする空気調和システム。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載の空気調和システムにおいて、
前記天蓋部が、凹部の断面形状を略半円形とする対称形状として形成され、
前記天蓋部の凹部内側における中央部下側に、天蓋部の内面に滑らかに連続する曲面又は平面を有して、下向きの凸形状とされる突出部が配設されることを
特徴とする空気調和システム。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載の空気調和システムにおいて、
前記天蓋部が、周縁部を外方に鍔状に曲げた形状とされることを
特徴とする空気調和システム。
【請求項5】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の空気調和システムにおいて、
前記天蓋部が、
硬質で形状を維持可能な材質で形成され、前記凹部の形状に合わせて複数所定間隔で配設される骨部と、
可撓性を有するシート材で形成され、各骨部に沿って伸張状態で配置されて内側が前記凹部となる連続面をなす膜部とを備え、
天蓋部が、所定の中心軸周りに回転対称をなす形状とされ、天蓋部の各骨部が、前記中心軸に対し相対的に傾動可能として支持されると共に、膜部が骨部の傾動に追随して伸縮変形可能とされることを
特徴とする空気調和システム。
【請求項6】
前記請求項1ないし4のいずれかに記載の空気調和システムにおいて、
前記天蓋部が、
硬質で形状を維持可能な材質で形成され、前記凹部の形状に合わせて複数所定間隔で配設される骨部と、
可撓性を有するシート材で形成され、各骨部に沿って伸張状態で配置されて内側が前記凹部となる連続面をなす膜部とを備え、
天蓋部が、所定の中心線を挟んで線対称をなす形状とされ、中心線で分けられる天蓋部の一方の領域に存在する一の骨部が、天蓋部の他方の領域に存在する他の骨部に対し相対的に傾動可能として支持されると共に、膜部が骨部の傾動に追随して伸縮変形可能とされることを
特徴とする空気調和システム。
【請求項7】
前記請求項1に記載の空気調和システムにおいて、
前記空気温度調整装置が、
床下に存在する調和空気からの熱伝導で温度を変化させる床の伝熱面と室内空気との間で熱をやり取りし、少なくとも床近傍の室内空気の温度を変化させる伝熱部を備えることを
特徴とする空気調和システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和の対象となる空間における人の存在する領域に、温度調整された空気による暖房又は冷房の効果を付与する、空気調和システムに関する。
【背景技術】
【0002】
室内空間の空気調和を行おうとする場合に、室内空間が大きく、一般に天井に設けられる調和空気の吹出口装置と、実際に空気調和が必要となる床近くの人が活動する領域(いわゆる居住域)との距離が大きくなる条件では、室内空間全体を空気調和対象とすることで居住域に空気調和の効果が及ぶようにすると、空気調和のコストが膨大なものとなってしまうことから、実際に空気調和が必要な箇所に絞って局所的に空気調和を行うことが従来より行われてきた。
【0003】
こうした局所的な空気調和の例としては、吹出した調和空気の到達距離を長くすることができるノズル型の吹出口装置を天井又は天井近くの壁に配設し、調和空気を遠方の居住域まで送込んで空気調和を実行する、という手法が従来から広く採用されてきた。これに用いられる従来のノズル型の吹出口装置の例として、登録実用新案第3045940号公報に開示されるものがある。
【0004】
ただし、このようなノズル型の吹出口装置を使用する手法では、吹出された調和空気の気流が吹出直後から気流周囲の室内空気と接触、混合し、室内空間に拡散していくこととなり、調和空気の気流そのものは吹出口装置から離れるほど弱まることから、調和空気の到達目標位置が吹出口装置から遠く離れるほど吹出口装置における吹出風量が必要となる。このため、天井の高い空間のように、吹出口装置と居住域が大きく離れている場合には、吹出口装置やこれに調和空気を供給するシステム全体が大風量に対応するものとして大型化、大規模化してコスト高となってしまうという問題があった。
【0005】
こうした問題を回避するための局所的な空気調和の他例として、居住域に面する床に床吹出口装置を設け、人の近くから調和空気を吹出して、人の直近の領域への空気調和を実行する、という手法も従来から採用されている。この場合に用いられる従来の床吹出口装置の例として、特開平7-324801号公報に開示されるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】登録実用新案第3045940号公報
【文献】特開平7-324801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の吹出口装置は前記各特許文献に示される構成とされており、特に前記後者の床吹出口装置を採用する場合、室内空間が大きい条件下でも、実際に空気調和が必要な箇所に対し直接調和空気を吹出すようにして局所的に空気調和を実行することができ、空気調和コスト上昇を回避できる。
【0008】
しかし、従来の床吹出口装置を用いて空気調和を行う場合においても、室内空間が大きいと、例えば暖房の際に、暖気が居住域の上方へ逃げてしまうなど、吹出された調和空気が居住域の人の周囲に留まらず室内空間各部に進行、拡散してしまうことから、居住域の人が快適となる状態を効率よく得ることは難しいという課題を有していた。
【0009】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、居住域の人の周囲に到達させた温度調整後の空気を、できるだけ人の近くにとどめるようにして、人の存在する領域に対する温度調整能力を確保し、大きな室内空間においても効率のよい空気調和を可能とする、空気調和システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る空気調和システムは、所定の大きさの凹部を生じさせる連続した面を有して、室内空間の床から離れた位置に前記凹部の開口側を下向きとして配設される天蓋部と、室内空間における前記天蓋部の下側の床に配設され、室内空気と異なる温度に変化させた空気を上向きに移動させるようにする空気温度調整装置とを備え、前記天蓋部が、室内空間における人の在席位置又は専用作業スペースの直上に配置されるものである。
【0011】
このように本発明によれば、室内空間における人の存在する位置として定まった箇所の上方に天蓋部を配置すると共に、天蓋部の下側の床には空気温度調整装置を設けて、この空気温度調整装置で温度を変化させた空気が上方に進んで天蓋部の下向きの凹部に達すると、この凹部に温度を変化させた空気が捕捉されて留まる状態となり、空気のさらなる上方への進行、及び上方の室内空気との混合を妨げることにより、空気温度調整装置で温度を変化させた空気が、天蓋部の下側の領域に温度変化の影響を与える状態をできるだけ継続させる一方、天蓋部より上方にある温度の異なる室内空気からの熱的な影響を抑え、凹部にある空気による空気調和効果の減少を阻止して、この天蓋部の下側領域に存在する人の周囲雰囲気の温度を適度な状態に調整維持できることとなり、室内空間における各人の存在する領域に対し効率よく空気調和を実行できる。
【0012】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記天蓋部が、室内空間の床と天井との間で配設位置を上下方向に調整可能とされるものである。
【0013】
このように本発明によれば、室内空間における天蓋部の配設高さを調整して、空気温度調整装置で温度を変化させた空気が天蓋部の凹部に達する度合いと、天蓋部の下側の領域の大きさを変化させて、凹部にある空気が人の周囲雰囲気に及ぼす影響を調整できることにより、例えば凹部にある空気の影響を大きくしたい場合は、天蓋部の位置を下げて凹部を床に近付けるようにし、また、凹部にある空気の影響が過剰で影響を弱めたい場合には、天蓋部の位置を上げて凹部を床から離すようにして、凹部にある空気に基づく天蓋部の下側の領域の室内空気における温度変化を適度な状態に調整でき、人の周囲で所望の雰囲気温度が得られるように空気調和を行える。
【0014】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記天蓋部が、凹部の断面形状を略半円形とする対称形状として形成され、前記天蓋部の凹部内側における中央部下側に、天蓋部の内面に滑らかに連続する曲面又は平面を有して、下向きの凸形状とされる突出部が配設されるものである。
【0015】
このように本発明によれば、対称形状とされた天蓋部の中央部下側に、天蓋部の内面に連続する面を有する下向きの突出部を設け、空気温度調整装置で温度を変化させた空気が上向きに移動して天蓋部の凹部に進入すると、この温度を変化させた空気が天蓋部の内面に沿って凹部の奥方に進んだ後、突出部による案内で凹部中央へ進行しつつ、進行方向を下向きに変化させることにより、空気温度調整装置で温度を変化させた空気が天蓋部の凹部を経て天蓋部の下側の領域に向かう流れを生じさせ、温度を変化させた空気が天蓋部の下側に留まって天蓋部の下側の領域の温度をこの空気の温度に近付ける状態を確実に継続させて、人の存在する領域を所望の温度状態とする空気調和をより効率よく行える。
【0016】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記天蓋部が、周縁部を外方に鍔状に曲げた形状とされるものである。
【0017】
このように本発明によれば、天蓋部の周縁部を外方に曲げた形状として、下から天蓋部の周縁部に達した気流は天蓋部の凹部側に向かいやすくする一方、上から天蓋部の周縁部に達した気流は天蓋部から離れる向きに導かれる状態を得ることにより、空気温度調整装置で温度を変化させた空気が上向きに移動して天蓋部の周縁部に達した場合には、これを天蓋部の凹部に進入させて、天蓋部の下側の領域に温度変化の影響を与える状態を確保できると共に、天蓋部の凹部の空気とは温度の異なる天蓋部の上方の室内空気が、天蓋部の外周に沿って下向きに流れる状況が生じた場合には、この室内空気の流れを、天蓋部の周縁部に沿わせて横方向に導き、天蓋部から離れる向きに進ませることができ、こうした室内空気の気流が天蓋部の下側の領域から離れることとなり、天蓋部の下側における空気調和状態への影響を回避でき、空気温度調整装置で温度を変化させた空気による空気調和を効率よく進めてその効果を高められる。
【0018】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記天蓋部が、硬質で形状を維持可能な材質で形成され、前記凹部の形状に合わせて複数所定間隔で配設される骨部と、可撓性を有するシート材で形成され、各骨部に沿って伸張状態で配置されて内側が前記凹部となる連続面をなす膜部とを備え、天蓋部が、所定の中心軸周りに回転対称をなす形状とされ、天蓋部の各骨部が、前記中心軸に対し相対的に傾動可能として支持されると共に、膜部が骨部の傾動に追随して伸縮変形可能とされるものである。
【0019】
このように本発明によれば、天蓋部を、骨部と膜部とを組み合わせた変形可能な構造の回転対称形状として、天蓋部の対称の中心軸に対する天蓋部各部の傾きを一様に調整可能とし、天蓋部の形状を変化させて、凹部の形状を変化させられることにより、凹部における空気の状態に応じて、天蓋部の形状変化を適宜与えて、凹部を浅くして空気が留まる度合いを弱めたり、逆に凹部を深くして空気が留まる度合いを強める調整が行えることとなり、天蓋部を設置して使用している最中でも、周囲の状況に応じた調整を経て、天蓋部の下側の領域で所望の空気調和状態を容易に得ることができる。
【0020】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記天蓋部が、硬質で形状を維持可能な材質で形成され、前記凹部の形状に合わせて複数所定間隔で配設される骨部と、可撓性を有するシート材で形成され、各骨部に沿って伸張状態で配置されて内側が前記凹部となる連続面をなす膜部とを備え、天蓋部が、所定の中心線を挟んで線対称をなす形状とされ、中心線で分けられる天蓋部の一方の領域に存在する一の骨部が、天蓋部の他方の領域に存在する他の骨部に対し相対的に傾動可能として支持されると共に、膜部が骨部の傾動に追随して伸縮変形可能とされるものである。
【0021】
このように本発明によれば、天蓋部を、骨部と膜部とを組み合わせた変形可能な構造の線対称形状として、天蓋部を対称の中心線で二分したうちの一方の領域を他方の領域に対し相対的に傾動可能として、天蓋部における一方の領域と他方の領域とのなす角度を調整可能とし、天蓋部の形状を変化させて、凹部の形状を変化させられることにより、凹部における空気の状態に応じて、天蓋部の形状変化を適宜与えて、凹部を浅くして空気が留まる度合いを弱めたり、逆に凹部を深くして空気が留まる度合いを強める調整が行えることとなり、天蓋部を設置して使用している最中でも、周囲の状況に応じた調整を経て、天蓋部の下側の領域で所望の空気調和状態を容易に得ることができる。
【0022】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記空気温度調整装置が、床下に設けられたダクト又は床下空間を通じて供給される調和空気を、床に設けられた開口部から上向きに吹出す床吹出口装置を備えるものである。
【0023】
このように本発明によれば、床の空気温度調整装置として床吹出口装置を設け、調和空気をこの床吹出口装置から上向きに吹出して、上方の天蓋部の凹部に向かわせることにより、床吹出口装置から吹出された調和空気が天蓋部の凹部に流入して、天蓋部の下側に留まり、調和空気が天蓋部の下側の領域における室内空気の温度を変化させる状態が継続することとなり、天蓋部の下側領域に存在する人の周囲雰囲気の温度を適度な状態に調整維持する空気調和が、調和空気を用いて効率よくスムーズに実行可能となる。
【0024】
また、本発明に係る空気調和システムは必要に応じて、前記空気温度調整装置が、床下に存在する調和空気からの熱伝導で温度を変化させる床の伝熱面と室内空気との間で熱をやり取りし、少なくとも床近傍の室内空気の温度を変化させる伝熱部を備えるものである。
【0025】
このように本発明によれば、床の空気温度調整装置として伝熱部を設け、伝熱部と床下空間の調和空気との間の伝熱により室内空間に面する上面を温度変化させ、伝熱部の上側の室内空気に、伝熱部上面と接触する室内空気への直接的な熱伝達による温度変化と、室内空気に対する伝熱部上面からの熱放射による熱の放出、又は、空気からの熱放射を伝熱部上面で受けての熱の吸収、による温度変化とをそれぞれ生じさせることにより、暖房の場合には、温かい調和空気の影響で室内空気より温かい状態となった伝熱部が、人の足元を熱放射で温めると共に、伝熱部上側の室内空気も直接熱伝達及び熱放射で温めることができ、且つ、伝熱部により温められた室内空気が自然に上昇して人の周囲雰囲気となり、より温度の低い室内空気が人に近付くのを阻止することとなる。また、冷房の場合には、温度の低い調和空気の影響で室内空気より温度の低い状態となった伝熱部が、人の足元及びその周囲の室内空気からの熱放射を受けることで熱を奪うと共に、伝熱部上側の室内空気から直接熱伝達により熱移動させることで、足元とその周囲の室内空気を冷やし、人に対し適度な冷房効果を与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る空気調和システムの概略説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の斜視図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の縦断面図である。
【
図4】本発明の第1の実施形態に係る空気調和システムの使用状態説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部下側での調和空気進行状態説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る空気調和システムにおける他の天蓋部の縦断面図である。
【
図7】本発明の第2の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の斜視図である。
【
図8】本発明の第2の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の縦断面図である。
【
図9】本発明の第2の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の第一の傾き調整状態説明図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の第二の傾き調整状態説明図である。
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る空気調和システムにおける他の天蓋部の第一の曲率調整状態説明図である。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る空気調和システムにおける他の天蓋部の第二の曲率調整状態説明図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態に係る空気調和システムの概略説明図である。
【
図14】本発明の第3の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の縦断面図である。
【
図15】本発明の第4の実施形態に係る空気調和システムの概略説明図である。
【
図16】本発明の第4の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の第一の傾き調整状態説明図である。
【
図17】本発明の第4の実施形態に係る空気調和システムにおける天蓋部の第二の傾き調整状態説明図である。
【
図18】本発明の第4の実施形態に係る空気調和システムにおける他の天蓋部の第一の曲率調整状態説明図である。
【
図19】本発明の第4の実施形態に係る空気調和システムにおける他の天蓋部の第二の曲率調整状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(本発明の第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態に係る空気調和システムを前記
図1ないし
図5に基づいて説明する。本実施形態では、天井高さが大となる工場等の大きな室内空間における、人の存在する領域を空気調和対象とする、空気調和システムの例について説明する。
【0028】
前記各図において本実施形態に係る空気調和システム1は、室内空間50における床60から離れた位置で、且つ人の在席位置又は専用作業スペースの直上となる箇所ごとに配設される天蓋部10と、この天蓋部10の下側の床60に配設される空気温度調整装置15とを備える構成である。
【0029】
前記天蓋部10は、断面形状が略半円形となる所定の大きさの凹部14を生じさせる連続した面を有して、所定の中心軸周りに回転対称をなす形状、具体的には略半球殻状とされ、室内空間の床60から離れた位置に前記凹部14の開口側を下向きとして配設される構成である。天蓋部10の大きさは、この天蓋部10の下側の領域に、座った状態又は立った状態にある人の活動範囲が含まれるように、下端部の直径が2ないし4m程度となるようにするのが好ましい。
【0030】
天蓋部10は、硬質で形状を維持可能な材質で形成され、前記凹部14の形状に合わせて複数所定間隔で配設される円環状の骨部11と、可撓性を有するシート材で形成され、各骨部11に沿って伸張状態で配置されて内側が前記凹部14となる連続面をなす膜部12とを備える構成である。
【0031】
前記骨部11は、円環形状の径を異ならせたものを、円の中心の水平方向位置を一致させつつ、径の大小の順で上下にそれぞれ所定間隔で並べて配置されてなり、これらと膜部12とを一体化させることで略半球殻状の天蓋部10を形成する仕組みである。
【0032】
天蓋部10を使用しない時は、径の異なる各骨部11が同心円状に並ぶように膜部12を撓ませるようにすれば、天蓋部10を上下に縮めて薄く平たい形状とすることができ、収納や移動に適した状態となる。また、円環状の骨部11を、複数の円弧状部材を継手で連結一体化して組み立てる分割可能な構造とする場合は、骨部11をなす各部材の連結を解いて骨部11による膜部12の拘束を緩和することで、天蓋部10を折り畳み可能とすることもでき、収納や移動に際してさらにコンパクト化が図れる。
【0033】
この天蓋部10の凹部14内側における中央部下側には、天蓋部10の内面に滑らかに連続する曲面を有して、下方に凸形状とされる突出部13が取り付けられる。この突出部13は、天蓋部10の内面に沿って凹部14を進む空気の流れを、突出部表面に沿わせて案内することで凹部中央へ進行させつつ、その進行方向を下向きに変化させて、空気を天蓋部10の下側の領域に向かわせる仕組みである。
【0034】
天蓋部10は、この突出部13を取り付けられた状態で、天蓋部10の中央部(対称の中心軸位置)が、人が普段座って又は立って作業している位置の真上に位置する配置とされて、且つ、室内空間50の床と天井との間で配設位置を上下方向に調整可能となるようにして、吊下げ支持されることとなる。
【0035】
天蓋部10の上下方向の位置は、天蓋部10の下端位置が、人の身長を少し超える高さ(人の行き来に支障を与えない高さ)から、床から4mの高さまでの範囲にあるようにするのが好ましい。この天蓋部10の位置を高くすると、空気調和における天蓋部10の影響が弱まり、空気調和の効果が小さくなる。逆に、天蓋部10の位置を低くすると、空気調和における天蓋部10の影響が強まり、空気調和の効果が大きくなる。
【0036】
前記空気温度調整装置15は、室内空間50における天蓋部10の下側の床60に配設され、室内空気と異なる温度に変化させた空気を上向きに移動させるようにするものである。
詳細には、この空気温度調整装置15は、床下の空間を通じて供給される調和空気を床60に設けられた開口部から上向きに吹出す床吹出口装置16と、前記床下のダクトから床下空間にを流通する調和空気との間の熱伝導で温度を変化させる床の伝熱面と室内空気との間で熱をやり取りし、室内空気の温度を変化させる伝熱部17とを備えるものである。
【0037】
前記床吹出口装置16は、床60における天蓋部10の真下にあたる円形領域内の二箇所にそれぞれ配設され、床下空間を通じて供給される調和空気を上向きに吹出して、天蓋部10の凹部14に調和空気を到達可能とするものである。
【0038】
この床吹出口装置16の配設位置は、天蓋部10の真下となる前記円形領域における端部寄りの位置として、上方に吹き出される調和空気が、天蓋部中央部の下方に位置する人に直接当たらないようにしてドラフトとなるのを防ぎつつ、天蓋部10の凹部14に達するようにするのが望ましい。
【0039】
前記伝熱部17は、床材を兼ねるものであり、床下空間に流通する調和空気と下面を接触させて、この下側の調和空気との間の伝熱により室内空間に面する上面の伝熱面(床面)を温度変化させ、この伝熱面の上側の空気に、伝熱面と接触する空気への直接的な熱伝達による温度変化と、空気に対する伝熱面からの熱放射による熱の放出、又は、空気からの熱放射を伝熱面で受けての熱の吸収、による温度変化とをそれぞれ生じさせる仕組みである。
【0040】
次に、前記構成に基づく空気調和システムにおける空気調和の実行状態について説明する。前提として、天蓋部10は、室内空間50における人の在席位置又は専用作業スペースとなる所定箇所の直上に、あらかじめ適切な空気調和状態が得られるよう高さ位置を調整した上で配設されているものとする。
【0041】
室内空間への空気調和が行われている状態では、空気温度調整装置15の床吹出口装置16に床下空間から継続的に調和空気が供給されており、床吹出口装置16から調和空気が上向きに吹出す。また、伝熱部17は調和空気の熱の影響を受けて室内空気の温度と異なる温度に変化しており、伝熱部17が室内空気との温度差に基づく熱伝達や熱放射により上側の室内空気の温度を変化させる。そして、床吹出口装置16から吹出された調和空気は上昇して、上方にある天蓋部10に達し、凹部14に流入する。
【0042】
暖房の場合、温かい調和空気の影響により、伝熱部17は床下側から温められて温度変化し、室内空気より温かい状態となっている。この伝熱部17が、人の足元を熱放射で温めると共に、伝熱部上側の室内空気も直接熱伝達及び熱放射で温めることとなる。
【0043】
また、床吹出口装置16から吹出され、天蓋部10の凹部14に達した温かい調和空気は、天蓋部10の内面に沿って上方に進んだ後、突出部13による案内で進行方向を次第に下向きに変え、天蓋部10の下側の領域に達し、一部は拡散してこの天蓋部下側の領域の温度を高め、残りは天蓋部10の床吹出口装置16直上位置から離れた周縁部から天蓋部10より外側の領域に流出して、室内空間をさらに上に進みながら周囲に拡散することとなる。
【0044】
こうして天蓋部10の下側に温かい調和空気が滞留する状態が得られ、仮に天蓋部10を設けない場合、そのまま天井の高い室内空間50を上昇して天井70付近に達してしまい、人が位置する居住域を十分に温められない調和空気を有効に活用して、天蓋部10の下側の領域を温められる。また、天蓋部10がこの天蓋部10より上側の室内空気と天蓋部10の下側の領域とを隔離し、上方の室内空気が天蓋部10の下側の領域に熱的な影響を与えることを阻止する。さらに、伝熱部17により温められた室内空気は、自然に上昇して天蓋部10に達する過程で、人の周囲雰囲気となって、より温度の低い室内空気が人に近付くのを阻止する。
【0045】
これにより、天蓋部10の下側の人が存在する領域を、周囲の室内空間より暖かい空気調和状態に維持することができ、室内空間全体の空気調和を行うことなしに、室内空間における各人の存在する領域に対し暖房効果を与えられ、空気調和の効率を高められる。
【0046】
一方、冷房の場合、温度の低い調和空気の影響により、伝熱部17は床下側から冷やされて温度変化し、室内空気より温度の低い状態となっている。この伝熱部17が、人の足元及びその周囲の室内空気からの熱放射を受けることで熱を奪うと共に、伝熱部上側の室内空気から直接熱伝達により熱移動させることで、足元とその周囲の室内空気を冷やすこととなる。
【0047】
また、床吹出口装置16から吹出され、天蓋部10の凹部14に達する温度の低い調和空気は、天蓋部10の内面に沿って上方に進んだ後、突出部13による案内で進行方向を次第に下向きに変え、天蓋部10の下側の領域に達し、室内空間に拡散しながらこの天蓋部下側の領域の温度を下げていく。
【0048】
こうして天蓋部10の下側に温度の低い調和空気が滞留する状態が得られ、天蓋部10の下側の領域を冷やすと共に、天蓋部10がこの天蓋部10より上側の室内空気と天蓋部10の下側の領域とを隔離し、上方のより温度の高い室内空気が天蓋部10の下側の領域に熱的な影響を与えることを阻止する。また、天蓋部10の下側で調和空気と混合し冷やされた室内空気が、自然に下降する過程で、人の周囲雰囲気となって、より温度の高い室内空気が人に近付くのを阻止する。
【0049】
これにより、天蓋部10の下側の人が存在する領域を、周囲の室内空間より温度の低い空気調和状態に維持することができ、暖房の場合と同様、室内空間全体の空気調和を行うことなしに、室内空間における各人の存在する領域に対し冷房効果を与えられ、空気調和の効率を高められる。
【0050】
このように、本実施形態に係る空気調和システムにおいては、室内空間50における人の存在する位置として定まった箇所の上方に天蓋部10を配置すると共に、天蓋部10の下側の床60には空気温度調整装置15を設けて、この空気温度調整装置15で温度を変化させた空気が上方に進んで天蓋部10の下向きの凹部14に達すると、この凹部14に温度を変化させた空気が捕捉されて留まる状態となり、空気のさらなる上方への進行、及び上方の室内空気との混合を妨げることから、空気温度調整装置15で温度を変化させた空気が、天蓋部10の下側の領域に温度変化の影響を与える状態をできるだけ継続させる一方、天蓋部10より上方にある温度の異なる室内空気からの熱的な影響を抑え、凹部14にある空気による空気調和効果の減少を阻止して、この天蓋部10の下側領域に存在する人の周囲雰囲気の温度を適度な状態に調整維持できることとなり、室内空間50における各人の存在する領域に対し効率よく空気調和を実行できる。
【0051】
なお、前記実施形態に係る空気調和システムにおいて、天蓋部10の周縁部は半球殻の終端部としてほぼ下向きに形成される構成とされているが、これに限らず、
図6に示すように、天蓋部10の周縁部18を外方に鍔状に曲げた形状として形成する構成とすることもできる。
【0052】
この場合、周縁部18は、下から上昇して周縁部18に達した気流を天蓋部10の凹部14側に向かいやすくする一方、上から降下して周縁部18に達した気流については、天蓋部10から離れる向きに導く状態となる。これにより、床60の床吹出口装置16から上向きに進んだ調和空気が天蓋部10の周縁部18に達した場合には、周縁部18で調和空気が天蓋部10の凹部14側に向かうのを促して、より多くの調和空気を凹部14に進入させて、天蓋部10の下側の領域に調和空気からの影響を与える状態を確保できる。
【0053】
また、天蓋部10の凹部14における調和空気とは温度の異なる天蓋部10の上方の室内空気が、天蓋部10の外周に沿って下向きに流れる状況が生じた場合には、この室内空気の流れを、天蓋部10の周縁部18に沿わせて横方向に導き、天蓋部10から離れる向きに進ませることができ、こうした室内空気の気流が天蓋部10の下側の領域から離れることとなり、天蓋部10の下側における空気調和状態への影響を回避でき、調和空気による空気調和を効率よく進められる。
【0054】
また、前記実施形態に係る空気調和システムにおいては、天蓋部10の下側の空気温度調整装置15として、床吹出口装置16と伝熱部17とを備える構成としているが、これに限らず、いずれか一方のみでもよい。また、こうした空気温度調整装置は、床上側の室内空気に温度変化を与えられるものであれば、例えば、冷水等の冷媒を床内に通して床面を冷やす床冷房装置や、温水等の熱媒を床内に通して床面を温める床暖房装置、床に埋め込まれるヒータ、床に敷設されるホットカーペット等を用いるようにしてもかまわない。
【0055】
また、前記実施形態に係る空気調和システムにおいて、天蓋部10の中央部下側に設けられた突出部13は、空気調和システムを使用している間、当初形状を維持した状態とされる構成としているが、これに限らず、突出部を変形可能な材質製として、必要に応じて突出部の下端部位置や表面の曲率を変える構成とすることもできる。
【0056】
この場合、凹部14から突出部に案内されて下方に向かう調和空気の気流の挙動を、変形させた突出部で調整することができ、天蓋部10を設置して使用している最中でも、天蓋部の下側における実際の空気調和の状況や、周囲の状況に対応するように、突出部を適切に変形させることによって、天蓋部10の下側の領域で所望の空気調和状態を容易に得ることができる。
【0057】
(本発明の第2の実施形態)
また、前記第1の実施形態に係る空気調和システムにおいて、天蓋部10は、使用中は半球殻状の形状に維持固定され、変形させることはない構成としているが、これに限らず、第2の実施形態として、
図7ないし
図10に示すように、天蓋部が所定の中心軸周りに回転対称をなす形状である点は共通としつつ、骨部の配設形態を変えて、天蓋部10の中心軸の回りに骨部11aを放射状にそれぞれ配置し、天蓋部10の各骨部11aを、天蓋部10の中心軸CAに対し相対的に傾動可能として支持すると共に、膜部12を骨部11aの傾動に追随して伸縮変形可能として、天蓋部各部の中心軸CAに対する傾きを一様に調整可能な構成とすることもできる。
【0058】
詳細には、骨部11aは、凹部14の断面形状に対応した略円弧状の曲線形状とされて、天蓋部10の対称の中心軸CA周りに放射状に複数配置される。そして、天蓋部10における各骨部11aを、中心軸CAに対し相対的に傾動可能とするように相互に連結し、各骨部11aの中心軸に対する傾きを調整可能とすることで、天蓋部各部の中心軸CAに対する傾きを一様に調整可能な状態を得ている。
【0059】
この場合、傘のように骨部11aを傾動させて、天蓋部各部の中心軸CAに対する傾きを一様に調整し、天蓋部10の形状を、その回転対称形である点を維持しつつ変化させることで、凹部14の形状も変化させられる。例えば、天蓋部10は、骨部11aの中心軸に対する傾きを大きくすると、半球殻を縦につぶして広がりを大きくした形状となり、凹部14は浅くなって調和空気の滞留の度合いが弱まることとなる(
図9参照)。逆に、骨部11aの中心軸CAに対する傾きを小さくすると、天蓋部10は、半球殻を周囲から絞り込んで広がりを小さくした形状となり、凹部14は深くなって調和空気の滞留の度合いが強まる(
図10参照)。こうして天蓋部10の形状変化を適宜与え、凹部14の形状を変化させて、凹部14における調和空気の気流の挙動を調整することができ、天蓋部10を設置して使用している最中でも、天蓋部の下側における実際の空気調和の状況や、周囲の状況に応じた調整を経て、天蓋部10の下側の領域で所望の空気調和状態を容易に得ることができる。
【0060】
この他、天蓋部10の骨部11aを対称の中心軸に対し傾動させるようにして天蓋部10を変形させるのに代えて、対称の中心軸CA周りに放射状に配置した各骨部11bを弾性変形しやすい材質製とした上で、これら各骨部の湾曲度合いを一様に調整可能とし、さらに、膜部12を各骨部の変形に追随して伸縮変形可能として、天蓋部10の連続する曲面の曲率を変えるように変形を生じさせる構成とすることもできる。この場合、
図11に示すように、骨部11bの湾曲度合いを小さくして、天蓋部の曲率を小さくすると、天蓋部10は、半球殻を縦につぶして広がりを大きくした形状となり、凹部14は浅くなって調和空気の滞留の度合いが弱まる。逆に、
図12に示すように、骨部11bの湾曲度合いを大きくして、天蓋部の曲率を大きくすると、天蓋部10は、半球殻を周囲から絞り込んで広がりを小さくした形状となり、凹部14は深くなって調和空気の滞留の度合いが強まることとなる。
【0061】
(本発明の第3の実施形態)
また、前記第1の実施形態に係る空気調和システムにおいて、天蓋部10は、使用状態で回転対称をなす略半球殻状とされる構成としているが、これに限られるものではなく、第3の実施形態として、
図13及び
図14に示すように、例えば、断面形状が略半円形となる凹部を生じさせる連続面を有する形状である点は共通としつつ、天蓋部の全体形状を変えて、天蓋部が略半円筒形をなす構成とすることもできる。
【0062】
詳細には、天蓋部20は、断面形状が略半円形となる所定の大きさの凹部24を生じさせる連続した面を有して、所定の中心線CLを挟んで線対称をなす形状、具体的には略半円筒状とされ、室内空間の床60から離れた位置に前記凹部24の開口側を下向きとして配設される構成である。
【0063】
この天蓋部20は、硬質で形状を維持可能な材質で形成され、前記凹部24の形状に合わせて複数所定間隔で配設される矩形枠状の骨部21と、可撓性を有するシート材で形成され、各骨部21に沿って伸張状態で配置されて内側が前記凹部24となる連続面をなす膜部22とを備える構成である。
【0064】
前記骨部21は、枠形状の大きさを異ならせたものを、枠の中心の水平方向位置を一致させつつ、大きさの大小の順で上下にそれぞれ所定間隔で並べて配置されてなり、これらと膜部22とを一体化させることで略半円筒状の天蓋部20を形成する仕組みである。
【0065】
天蓋部20を使用しない時は、大きさの異なる各骨部21が入れ子状に内外に並ぶように膜部22を撓ませるようにすれば、前記第1の実施形態同様、天蓋部20を上下に縮めて薄く平たい形状とすることができ、収納や移動に適した状態となる。また、矩形枠状の骨部21を、複数の線状部材を継手で連結一体化して組み立てる分割可能な構造とする場合は、骨部をなす各部材の連結を解いて骨部による膜部の拘束を緩和することで、天蓋部20を折り畳み可能とすることもでき、収納や移動に際してさらにコンパクト化が図れる。
【0066】
この天蓋部20の凹部24内側における中央部下側には、天蓋部20の曲面である内面に滑らかに連続し且つ対称の中心線CL方向に連続する曲面を有して、下方に凸形状とされる横長の突出部23が取り付けられる。この突出部23は、天蓋部20の内面に沿って凹部24を進む空気の流れを、突出部表面に沿わせて案内することで凹部中央へ進行させつつ、その進行方向を下向きに変化させて、空気を天蓋部20の下側の領域に向かわせる仕組みである。
【0067】
天蓋部20は、この突出部23を取り付けられた状態で、天蓋部20の中央部(対称の中心線CL位置)が、人が普段座って又は立って作業している位置の真上に位置する配置とされて、且つ、室内空間50の床と天井との間で配設位置を上下方向に調整可能となるようにして、吊下げ支持されることとなる。
【0068】
この天蓋部20に対し、下側の床60には、前記第1の実施形態同様、空気温度調整装置25として、床吹出口装置26と、伝熱部27が配設される。このうち、床吹出口装置26は、天蓋部20が略半円筒状とされるのに対応して、床60における天蓋部10の真下にあたる矩形領域内の、天蓋部20の中央部(対称の中心線CL位置)の真下位置からそれぞれ離れた端部の二箇所にそれぞれ配設される。
【0069】
この第3の実施形態に係る空気調和システムにおいても、前記第1の実施形態と同様、室内空間50における人の存在する位置として定まった箇所の上方に天蓋部20を配置すると共に、天蓋部20の下側の床60には空気温度調整装置25を設けて、この空気温度調整装置25で温度を変化させた空気が上方に進んで天蓋部20の下向きの凹部24に達すると、この凹部24に温度を変化させた空気が捕捉されて留まる状態となり、空気のさらなる上方への進行、及び上方の室内空気との混合を妨げることから、空気温度調整装置25で温度を変化させた空気が、天蓋部20の下側の領域に温度変化の影響を与える状態をできるだけ継続させる一方、天蓋部20より上方にある温度の異なる室内空気からの熱的な影響を抑え、凹部24にある空気による空気調和効果の減少を阻止して、この天蓋部20の下側領域に存在する人の周囲雰囲気の温度を適度な状態に調整維持でき、室内空間50における各人の存在する領域に対し効率よく空気調和を実行できる。
【0070】
加えて、略半円筒状の天蓋部20は、その対称の中心線方向の長さを適宜設定した場合でも、天蓋部20の下側に空気温度調整装置25を設けるようにしていれば、前記第1の実施形態と同様に、天蓋部20の下側の領域に対し空気調和を実行できる。このため、室内空間50における複数の人の在席位置又は専用作業スペースが比較的近接した状態で一列に並んでいる場合など、前記第1の実施形態のような略半球殻状の天蓋部10を人の存在する位置ごとに設けようとすると配設スペースが確保できず、設置不可となるような条件であっても、天蓋部20の対称の中心線CL方向を人の存在する位置が複数並ぶ方向と一致させて、人の存在する位置の連なる範囲を全てカバーするように天蓋部20を対称の中心線方向に延ばした長い半円筒形状とすれば、複数の人の存在する位置に対して一つの天蓋部20で問題なく対応可能となり、複数の人の存在する位置を含む天蓋部20の下側の領域に対し、無理なく確実に空気調和を行えることとなる。
【0071】
(本発明の第4の実施形態)
また、前記第3の実施形態に係る空気調和システムにおいて、天蓋部20は、使用中は半円筒状の形状に維持固定され、変形させることはない構成としているが、これに限らず、第4の実施形態として、
図15ないし
図17に示すように、天蓋部が所定の中心線CLを挟む線対称形状である点は共通としつつ、骨部の配設形態を変えて、天蓋部20の対称の中心線CLの両側に骨部を別個に配置し、天蓋部20を対称の中心線CLで二分したうちの、天蓋部20の一方の領域に存在する一の骨部21aを、天蓋部20の他方の領域に存在する他の骨部21bに対し相対的に傾動可能として支持すると共に、膜部22を骨部の傾動に追随して伸縮変形可能として、天蓋部20における一方の領域と他方の領域とのなす角度を調整可能な構成とすることもできる。
【0072】
詳細には、骨部21a、21bは、凹部24の断面形状に対応した略円弧状の曲線形状とされて、天蓋部20の対称の中心線CLの両側に中心線の向きに複数並べて配置される。そして、天蓋部20における一の骨部21aを、他の骨部21bに対し相対的に傾動可能として連結し、一の骨部21aと他の骨部21bとのなす角度を調整可能とすることで、天蓋部20における一方の領域と他方の領域とのなす角度を調整可能な状態を得ている。
【0073】
この場合、骨部21a、21bを共に傾動させて、天蓋部20における一方の領域と他方の領域とのなす角度を調整し、天蓋部20の形状を、その線対称形である点を維持しつつ変化させることで、凹部24の形状も変化させられる。例えば、天蓋部20は、一の骨部21aと他の骨部21bとのなす角度を大きくすると、半円筒を縦につぶして広がりを大きくした形状となり、凹部24は浅くなって調和空気の滞留の度合いが弱まることとなる(
図16参照)。逆に、一の骨部21aと他の骨部21bとのなす角度を小さくすると、天蓋部20は、半円筒を横につぶして広がりを小さくした形状となり、凹部24は深くなって調和空気の滞留の度合いが強まる(
図17参照)。こうして天蓋部20の形状変化を適宜与え、凹部24の形状を変化させて、凹部24における調和空気の気流の挙動を調整することができ、天蓋部20を設置して使用している最中でも、天蓋部20の下側における実際の空気調和の状況や、周囲の状況に応じた調整を経て、天蓋部20の下側の領域で所望の空気調和状態を容易に得ることができる。
【0074】
この他、天蓋部20の一の骨部21aと他の骨部21bとのなす角度を調整するように各骨部21a、21bを傾動させて、天蓋部20を変形させる構成に代えて、天蓋部20の対称の中心線CLの両側で中心線CLの向きに複数並べて配置した各骨部21c、21dを弾性変形しやすい材質製とした上で、これら各骨部21c、21dの湾曲度合いを一様に調整可能とし、さらに、膜部22を各骨部21c、21dの変形に追随して伸縮変形可能として、天蓋部20の連続する曲面の曲率を変えるように変形を生じさせる構成とすることもできる。この場合、
図18に示すように、骨部21c、21dの湾曲度合いを小さくして、天蓋部20の曲率を小さくすると、天蓋部20は、半円筒を縦につぶして広がりを大きくした形状となり、凹部24は浅くなって調和空気の滞留の度合いが弱まる。逆に、
図19に示すように、骨部21c、21dの湾曲度合いを大きくして、天蓋部20の曲率を大きくすると、天蓋部20は、半円筒を横につぶして広がりを小さくした形状となり、凹部24は深くなって調和空気の滞留の度合いが強まることとなる。
【0075】
なお、前記第1ないし第4の各実施形態に係る空気調和システムにおいては、天蓋部10、20の中央部下側に凸形状の突出部13、23を設けて、調和空気の進行方向を下向きに変化させる構成としているが、これに限られるものではなく、例えば天蓋部の形状が単独で調和空気の気流を下方など所望の向きへ適切に案内できるものである場合などは、突出部を設けない構成としてもかまわない。
【0076】
また、前記第1ないし第4の各実施形態に係る空気調和システムにおいては、天蓋部10、20を対称形状とし、突出部13、23を対称の中心となる箇所に設ける構成としているが、これに限られるものではなく、天蓋部下側の領域における人の存在する位置が領域中央から偏る場合や、床吹出口装置が天蓋部下側の範囲で対称配置とならない場合、床吹出口装置から吹出される調和空気の気流の速度が大きく、突出部で進行方向を変えた調和空気の気流がそのまま下方へ向かうと、人がドラフトとして感じる状態となる場合などには、天蓋部を非対称形状としたり、突出部を天蓋部の中央から外した位置に設けて、突出部で調和空気の気流を任意の箇所に誘導する構成とすることもできる。
【0077】
また、前記第1ないし第4の各実施形態に係る空気調和システムにおいて、天蓋部10、20は断面形状が略半円形となる凹部14、24を生じさせる形状として形成される構成としているが、これに限らず、調和空気を滞留させられる凹部を生じさせられるものであれば、凹部の断面形状が略半円形以外となる形状、例えば、天蓋部を半角筒状としたり、底面開放形の中空錐状や中空錐台状とする構成としてもかまわない。
【符号の説明】
【0078】
1 空気調和システム
10、20 天蓋部
11、21 骨部
11a、11b 骨部
12、22 膜部
13、23 突出部
14、24 凹部
15 空気温度調整装置
16 床吹出口装置
17 伝熱部
18 周縁部
21a、21b 骨部
21c、21d 骨部
50 室内空間
60 床
70 天井