(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】シートパッド及び座席
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20220317BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 C
(21)【出願番号】P 2018034429
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000129529
【氏名又は名称】株式会社クラベ
(72)【発明者】
【氏名】宮野 大助
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1244881(KR,B1)
【文献】国際公開第2005/084493(WO,A1)
【文献】特開2007-209397(JP,A)
【文献】特開2012-197032(JP,A)
【文献】特開2019-98771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 2/00-90
A47C 7/74
B60H 1/00-34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートクッション材と、ベンチレーションマットとからなるシートパッドであって、
上記ベンチレーションマットは、複数のチューブがシート状に連結されているとともに、上記複数のチューブの間を連通する気流混合部が形成されており、
上記ベンチレーションマットの一方の面には、上記チューブが開口されてなるベンチレーション部が設けられており、
上記ベンチレーションマットのもう一方の面には、保護シートが貼り付けられており、
上記ベンチレーションマットには、送風機取付部が形成されており、
上記シートクッション材には、上記ベンチレーション部が設けられた面が上記シートクッション材の表面側になるようにして上記ベンチレーションマットが埋め込まれており、
上記シートクッション材には、上記シートクッション材の表面と上記ベンチレーション部を連通する貫通孔が形成されているシートパッド。
【請求項2】
上記
ベンチレーション部が、
上記複数のチューブに直行する方向に千鳥状配置で設けられている請求項1記載のシートパッド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のシートパッドと、送風機と、表皮カバーと、シートフレームを有し、上記シートパットの送風機取付部に上記送風機が取り付けられ、上記シートパッドが上記シートフレームにはめ込まれ、上記シートパッドが上記表皮カバーに覆われている座席。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車等に設置される座席とそれに使用されるシートパッドに係り、特に、座席を通じて送風を行う場合に適した構成とすることが可能なものに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車等の座席に、特に周囲の温度や湿度が高い条件の下で長時間に渡って着座する場合、座席の表面と人体接触部に「蒸れ」や「べたつき感」が生じる。この「蒸れ」や「べたつき感」は着座者の快適感を損なう原因となることから、従来からこのような問題に対する対策が種々検討されている。
【0003】
このような検討の一つとして、例えば、当該特許出願人より特許文献1,2のような提案がなされている。特に特許文献1の
図7、
図14などには、送風装置が組込まれた座席の概略断面図が示されており、送風機などの送風源より送られた風が、チューブ状の通風路を通過して、吹出口より吹き出し、着座者に送風させる態様が開示されている。この送風により着座者の「蒸れ」や「べたつき感」が解消されることとなる。又、関連する技術として、例えば特許文献3~5も挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4999455号公報:クラベ
【文献】特許第5430085号公報:クラベ
【文献】特開2007-84039公報:ブリヂストン
【文献】特開2017-71368公報:ブリヂストン
【文献】特許第4107033号公報:松下電器産業
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1,2によると、座席における着座者のすぐ下に送風装置の通風路が組込まれることになる。特許文献1,2による送風装置の通風路は、柔軟な熱可塑性エラストマー等からなるチューブが並列一体化されてシート状に成型され、吹出口が形成されたものである。そのため、充分な柔らかさがあり、着座者に違和感を与えないものではあるが、一方で、従来からの発泡ウレタンからなるシートパッドのような着座感を好む着座者も一定割合で存在している。
【0006】
また、上記特許文献1,2による送風装置は、座席の組立ての際に、シートパッド上に配置され、接着テープ等でシートパッドに固定されるものである。そのため、座席を組立てる作業員の力量によって送風装置の位置がずれてシートパッドに固定されてしまうおそれがあり、設計で意図した位置と異なる箇所に空気を吹出してしまう可能性がある。また、シートパッドを構成する発泡ウレタンや接着テープの経時劣化によって、送風装置の位置がずれてしまうおそれもある。
【0007】
本発明はこのような従来技術の課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、従来の座席と同様の着座感で着座者に送風等をすることができ、且つ、位置ずれを防止することも可能なシートパッドを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するべく、本発明によるシートパッドは、シートクッション材と、ベンチレーションマットとからなるシートパッドであって、上記ベンチレーションマットは、複数のチューブがシート状に連結されているとともに、上記複数のチューブの間を連通する気流混合部が形成されており、上記ベンチレーションマットの一方の面には、上記チューブが開口されてなるベンチレーション部が設けられており、上記ベンチレーションマットのもう一方の面には、保護シートが貼り付けられており、上記ベンチレーションマットには、送風機取付部が形成されており、上記シートクッション材には、上記ベンチレーション部が設けられた面が上記シートクッション材の表面側になるようにして上記ベンチレーションマットが埋め込まれており、上記シートクッション材には、上記シートクッション材の表面と上記ベンチレーション部を連通する貫通孔が形成されているものである。
また、上記ベンチレーション部が、上記複数のチューブに直行する方向に千鳥状配置で設けられていることが考えられる。
また、本発明による座席は、上記のシートパッドと、送風機と、表皮カバーと、シートフレームを有し、上記シートパッドの送風機取付部に上記送風機が取り付けられ、上記シートパッドが上記シートフレームにはめ込まれ、上記シートパッドが上記表皮カバーに覆われているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明による座席によれば、着座者が接する座席表面側はほぼ従来同様の構成であるため、従来の座席と同様の着座感で着座者に送風等をすることができる。また、ベンチレーションマットがシートクッション材に埋め込まれ固定されているため、位置ずれを防止するも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明で使用されるベンチレーションマットの一方の面を示す平面図である。
【
図2】本発明で使用されるベンチレーションマットのもう一方の面を示す平面図である。
【
図3】本発明のシートクッション材を成型する状況を示す断面図である。
【
図4】本発明のシートパッドの一方の面を示す平面図である。
【
図5】本発明のシートパッドのもう一方の面を示す平面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、
図1~
図8を参照して本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態は、本発明を車両用座席に適用することを想定した例を示すものである。本発明にかかるシートパッドはシートフレームにはめ込まれ、また、シートパッドの表面は表皮カバーに覆われることとなる。また、シートパッドは、シートクッション材とベンチレーションマットとからなり、ベンチレーションマットには送風機が接続される。この送風機は、ベンチレーションマットから空気を吸引する又はベンチレーションマットに空気を流し込むものである。
【0012】
以下の説明では、自動車用座席とした場合における、着座者側を座席表面側、着座者と反対側(座面においてはフロア側、背面においては後部側)を座席裏面側と称す。
【0013】
図1,2に実施の形態にかかるベンチレーションマット1の概略図を示す。
図1では、ベンチレーションマット1の座席表面側の平面図を示す。
図2では、ベンチレーションマット1の座席裏面側の平面図を示す。
【0014】
ベンチレーションマット1は、シート状に連結された複数のチューブ11により構成される構造を主構造体とする。このチューブ11は、例えばオレフィン系熱可塑性エラストマー等の樹脂により成形される。複数のチューブ11の連結方法として、シート状に複数のチューブ11が並ぶように一体成形する方法、所定の長さに切断された複数のチューブ11を接着する方法、所定の長さに切断された複数のチューブ11を不織布等の布に接着する方法などが考えられる。なお、チューブ11の端部は閉じられていても開かれていてもよいが、シートクッション材に埋め込む際の工程のことを考慮すると、閉じられていた方が好ましい。チューブ11が熱可塑性エラストマー等の熱可塑性材料からなる場合、加熱加圧等によって容易に端部を閉じることができる。
図1,2に示す例では、チューブ11の端部は何れも閉じられている。
【0015】
ベンチレーションマット10には、ベンチレーション部13、気流混合部14及び送風機取付部15が設けられる。送風機取付部15は、送風機から送られてきた空気をベンチレーションマット10内に導入する、又は、送風機によってベンチレーションマット10から空気を吸引するためのものである。この送風機取付部15の一態様は、複数のチューブ11の座席裏面側にスリットが設けられる部分であって、複数のチューブ11の座席表面側はチューブを形成する素材で連結される。
図2では、ベンチレーションマット10に送風機の有効径と略同一径の円形状の送風機取付部15が設けられている。
【0016】
ベンチレーション部13は、複数のチューブ11の座席表面側にスリットが設けられる部分であって、複数のチューブ11の座席裏面側はチューブを形成する素材で連結される。このベンチレーション部13の一態様は、チューブ11の延在方向と直交する方向にチューブを削るようにして設けられた溝である。
図1では、ベンチレーションマット10に10個のベンチレーション部13が設けられており、
図1中の上下それぞれに5個ずつのベンチレーション部13が千鳥状配置で設けられている。
【0017】
また、気流混合部14は、ベンチレーション部13よりも送風機取付部15に近い部分に設けられ、複数のチューブ11の間を連通するように設けられる。この気流混合部14は、送風機取付部15と一体的に設けられても良い。
図2に示す例において、気流混合部14は、送風機取付部15と連続してベンチレーションマット本体10の座席裏面側にスリットが設けられるように、チューブ11の延在方向と直交する方向にチューブを削るようにして設けられた溝である。また、本実施の形態にかかるベンチレーションマット10に設けられる気流混合部14は、座席表面側のチューブが削り取られずに残る形態となっている。気流混合部14は、隣接するチューブ間が連通される空間であってベンチレーションマット10を構成する複数のチューブを流れる空気をこの空間で拡散或いは混合する部分である。なお、気流混合部14では、スリットの底部の平坦度を増すことで、空気の拡散効率を高めることができる。
【0018】
そして、
図2に示す例では、ベンチレーションマット10には、座席表面側に保護シート12として不織布が貼り付けられている。この保護シートにより、ベンチレーションマット10が座席のシートフレーム上に直接配置される場合でも、着座の圧力が緩和され、チューブ11が潰れてしまうことを防止できる。この際、送風機取付部15には保護シート12は貼り付けられない。気流混合部14については、送風機を取付ける際の態様に応じて、保護シート12で覆う場合と覆わない場合とがあり、その他の貼り付け範囲も含め、保護シート12で覆う箇所は製品毎に異なっていても良い。
図2に示す例においては、気流混合部14を保護シート12で覆うものとした。
図2において、破線は保護シート12を透視して示す線である。
【0019】
次いで、シートクッション材を成形しつつ、上記のようにして得られたベンチレーションマットをシートクッション材に埋め込む方法について説明する。
図3は、シートクッション材を成型する状況を示す断面図である。
図3に示すように、上型42と下型43とからなる金型41について、上型42の内面に予めベンチレーションマット10を仮固定しておく。また、下型43には、ベンチレーションマット10のベンチレーション部13と対応する位置に、柱体44が設けられている。そして、金型41内にポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤等の原料液を注入し、発泡硬化させて、
図4~6に示すように発泡ウレタンからなるシートクッション材20を成型する。同時に、ベンチレーションマット10がシートクッション材20に埋め込まれ、本発明によるシートパッド30が得られる。
図4は、シートパッド20の座席表面側を示す平面図、
図5はシートパッド20の座席裏面側を示す平面図、
図6はシートパッド20の断面図であり、
図4,5におけるIV-IV´断面図である。この際、下型43に設けられた柱体44により、ベンチレーション部13からベンチレーションマット10の内部に原料液が入ることを防止できる。更に、シートクッション材20の表面とベンチレーションマット部13を連通する貫通孔21を形成することができる。
【0020】
このようにして得られたシートパッド30を使用した座席について、
図7,8を使用して説明する。
図7は座席の斜視図、
図8は座席の断面図であり、
図7におけるVIII-VIII´断面図である。
図7,8に示すように、シートパッド30は、シートフレーム31にはめ込まれ、表皮カバー32に覆われる。また、ベンチレーションマット10に設けられた送風機取付部15には、送風機33が接続される。この際、別に用意した送風機接続具34を介して送風機取付部15と送風機33を接続してもよい。送風機接続具34や送風機33は、接着剤等を使用してベンチレーションマット10に直接接着してもよい。また、送風機接続具34や送風機33は、シートフレーム31に固定することでも送風機取付部15と接続することができる。これらの接続に際して、適宜に防振材を使用することも考えられる。このようにして、通風機能を有する車両用座席35を得ることができる。なお、
図7,8では、車両用座席35の座面側のみにベンチレーションマット10を有するシートパッド30を使用しているが、勿論、背面側についても、ベンチレーションマット10を有するシートパッド30を使用してもよい。
【0021】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。例えば、チューブ11や保護シート12など、必要に応じて適宜他の材料を使用することが考えられ、形状や寸法も適宜設計すればよい。ベンチレーション部13の大きさ、形状、数についても、貫通孔21の位置と対応できていれば、適宜設計できる。但し、貫通孔21の径が大きくなりすぎると、シートクッション材20の剛性が低下して、着座者の違和感の元となる。一方で、貫通孔21の径が小さくなりすぎると、または、貫通孔21が曲がっていたり座面等に対して傾いていたりすると、着座の際の圧力で貫通孔21が塞がり、通気ができなくなってしまうおそれがある。貫通孔21の形状や径については、シートクッション材20の幅、厚さ、硬度等に応じて適宜設計することとなる。また、ベンチレーションマット10の位置については、シートクッション材20とベンチレーション部13を連通する貫通孔21が形成できる態様であれば、どこであってもよい。例えば、上記実施の形態のように、ベンチレーションマット10の一方の面がシートクッション材20の裏面に露出しているものだけでなく、ベンチレーションマット10が完全にシートクッション材20の内部に埋め込まれているものも考えられる。この場合、例えば、シートクッション材20を成型する前に、送風機接続具34をベンチレーションマット10と接続して仮封止しておき、送風機取付部15にシートクッション材20の原料液が入らないようにしておくことが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
以上詳述したように本発明のシートパッド及び座席によれば、従来の座席と同様の着座感で着座者に送風等をすることができ、且つ、送風装置の位置ずれを防止することも可能となる。その用途としては、自動車の座席以外にも、例えば、自動二輪車や鉄道車両等の車両座席でも良いし、チャイルドシート、土木建築用重機の座席、船舶や航空機などの座席、遊園地の観覧車の座席、各種競技場の観覧席、劇場や映画館等の鑑賞用座席、駅やテーマパーク、屋外公園等に設置されたベンチ、家庭内やオフィスで使用されるソファーや座椅子、理髪店の椅子、各種医療機関で使用されている医療用の椅子などへの適用も考えられる。また、座席のみならず、例えば、ベッド、ベビーカーなど、幅広く応用が可能である。
【符号の説明】
【0023】
10 ベンチレーションマット
11 チューブ
12 保護シート
13 ベンチレーション部
14 気流混合部
15 送風機取付部
20 シートクッション材
21 貫通孔
30 シートパッド
31 シートフレーム
32 表皮カバー
33 送風機
34 送風機接続具
35 座席