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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】押ボタンスイッチの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01H 11/00 20060101AFI20220317BHJP
   H01H 13/62 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
H01H11/00 B
H01H13/62
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018066148
(22)【出願日】2018-03-29
(65)【公開番号】P2019175822
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000230722
【氏名又は名称】NKKスイッチズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(72)【発明者】
【氏名】竹下 純也
【審査官】太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-147669(JP,A)
【文献】実開平01-098435(JP,U)
【文献】特開2003-178643(JP,A)
【文献】国際公開第2014/119140(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 11/00-11/06
H01H 13/00-13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内壁に第1点から周方向に沿った第2点までにおいて径方向の寸法が大きくなる形状を有するカム溝を有するハウジングと、
ボタン側係合片と、ボタン側係合孔とを有するボタンと、
プランジャ側係合片と、プランジャ側係合孔と、押下操作により前記ボタンが移動する際に前記ハウジングの内側において前記カム溝に対して付勢されることで前記径方向に摺動する滑動棒とを有するプランジャと、
を備える押ボタンスイッチの製造方法であって、
前記プランジャ側係合孔に前記ボタン側係合片を挿入し、前記ボタン側係合孔に前記プランジャ側係合片を挿入することで、前記滑動棒の端部を前記第1点に配置するステップと、
前記カム溝の前記形状に沿って前記第1点から前記第2点の方向に対して前記滑動棒の端部を滑動させながら前記プランジャを前記ボタンの中心軸を軸として回転させて、前記滑動棒の端部を前記第2点まで到達させることで、前記ボタン側係合片と前記プランジャ側係合孔とを係合させるステップとを含む、
押ボタンスイッチの製造方法。
【請求項2】
前記プランジャは、前記ボタンに対する復帰操作に必要とされる回転操作の角度を超える角度で回転して前記ボタンと係止される、
請求項1に記載の押ボタンスイッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、押ボタンスイッチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、機器等を操作するための制御盤には、誤動作による事故の発生を回避するための非常停止押ボタンスイッチが設けられている。この非常停止押ボタンスイッチは、押下操作がなされると電源を遮断して機器等の稼働を直ちに停止させる。非常停止押ボタンスイッチには、安全確保の見地から、ボタン部分の形状や、押下操作後の復帰防止等についての様々な規定が存在するため、形状や構造に対して種々の制約が加わる。このため、非常停止押ボタンスイッチのボタン部分の形状はキノコ形や円錐形であり、また、非常停止押ボタンスイッチの構造はスナップリング等を用いたラッチ機能によって容易に通電状態を復帰させないようにしたものが一般的である。例えば、本出願人は、機器等の小型化、軽量化、携帯化の進展に対応した、コンパクトかつ安全性の高い非常停止押ボタンスイッチについて既に出願している(特許文献1参照)。
特許文献1に記載された非常停止押ボタンスイッチを含む従来の非常停止押ボタンスイッチは、例えば図8に示すように、ボタン側係合片により形成される係合孔に、プランジャ側係合片を挿入し、ボタン側係合片にプランジャ側係合片を引っ掛けることで、ボタンとプランジャとを係合させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特願2017-189533号明細書及び図面
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非常停止押ボタンスイッチは、押下されたボタンを復帰させる操作を行う際、ボタンを上方に引き上げるだけで復帰させることができるものもあれば、安全確保の見地から、単にボタンを上方に引き上げるだけでは復帰させることができない構造になっているものもある。例えば、押下されたボタンを復帰させるために、ボタンを約45°程度回転させてからでなければ上方に引き上げることができない構造のものもある。
しかしながら、非常停止押ボタンスイッチが、ボタンを約45°程度回転させてからでなければ上方に引き上げることができない構造である場合、ボタンとプランジャとの係合力が十分でないと、押下されたボタンを復帰させるための回転操作がなされたときに、回転操作の勢いでボタン側係合片とプランジャ側係合片との引っ掛かりが外れて、ボタンとプランジャとが分離してボタンが脱落してしまうことがある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、部品点数を増やすことなく、ボタンとプランジャとが強固に係合された押しボタンスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る押ボタンスイッチの製造方法は、
内壁にカム溝を有するハウジングと、
ボタン側係合片と、ボタン側係合孔とを有するボタンと、
プランジャ側係合片と、プランジャ側係合孔と、前記ボタンに対する押下操作の方向に対し垂直方向に摺動する滑動棒とを有するプランジャと、
を備える押ボタンスイッチの製造方法であって、
前記プランジャ側係合孔に前記ボタン側係合片を挿入し、前記ボタン側係合孔に前記プランジャ側係合片を挿入するステップと、
前記カム溝の形状に沿って前記滑動棒の端部をカムとして滑動させながら前記プランジャを前記ボタンの中心軸を軸として回転させて、前記ボタン側係合片と前記プランジャ側係合孔とを係合させるステップとを含む。
【0007】
この発明によれば、ハウジングの内壁に設けられたカム溝の形状に沿って滑動棒の端部がカムとして滑動すると、プランジャがボタンの中心軸を軸として回転するので、ボタン側係合片とプランジャ側係合片とを強固に係合させることができる。その結果、部品点数を増やすことなく、ボタンとプランジャとが強固に係合された押しボタンスイッチを提供することが可能となる。
【0008】
また、前記カム溝は、前記滑動棒の端部を滑動させる円周の方向に沿って徐々に深くなる、ことが好ましい。
この発明によれば、前記滑動棒の端部を滑動させる円周方向に沿って徐々に深くなるので、ハウジングの内壁に設けられたカム溝の形状に沿って滑動棒の端部がカムとしてスムーズに滑動するとともに逆方向に滑動しないので、ボタン側係合片とプランジャ側係合片とをより強固に係合させることができる。その結果、部品点数を増やすことなく、ボタンとプランジャとがより強固に係合された押しボタンスイッチを提供することが可能となる。
【0009】
また、前記プランジャは、前記ボタンに対する復帰操作に必要とされる回転操作の角度を超える角度で回転して前記ボタンと係合する、ことが好ましい。
この発明によれば、プランジャが、ボタンに対する復帰操作に必要とされる回転操作の角度を超える角度で回転してボタンとプランジャとが係合される。このため、押下されたボタンを復帰させるための回転操作がなされたときに、回転操作の勢いでボタン側係合片とプランジャ側係合片との引っ掛かりが外れて、ボタンとプランジャとが分離してボタンが脱落してしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、部品点数を増やすことなく、ボタンとプランジャとがより強固に係合された押しボタンスイッチを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の押ボタンスイッチの一実施形態である非常停止押ボタンスイッチの分解斜視図である。
図2図1の非常停止押ボタンスイッチのうち、ハウジング、ラッチコイルバネ、滑動棒、及びねじりコイルバネの位置関係を示す図である。
図3図1の非常停止押ボタンスイッチのうち、ボタンの構成を示す図である。
図4図1の非常停止押ボタンスイッチのうち、ボタンとプランジャとが係合する仕組みを示す図である。
図5図1の非常停止押ボタンスイッチにおいて、ボタンとプランジャとが係合する前の状態を示す図である。
図6図1の非常停止押ボタンスイッチにおいて、ボタンとプランジャとが係合した後の状態を示す図である。
図7】ボタンとプランジャとを係合させるまでの流れを示すフローチャートである。
図8】従来の非常停止押ボタンスイッチの構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の押ボタンスイッチの一実施形態に係る非常停止押ボタンスイッチ1について、図面を参照しつつ説明する。なお、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。
【0013】
[基本構成]
非常停止押ボタンスイッチ1は、通電状態にある機器等を遮断状態にして緊急停止させるために用いられるスイッチであり、図1に示すように、操作部11と、ねじりコイルバネ12と、プランジャ部13と、ハウジング部14と、接点ユニット部15と、固定部16とで構成されている。
【0014】
以下、非常停止押ボタンスイッチ1の各構成要素について詳しく説明する。
(操作部)
操作部11は、図1に示すように、ボタン101と、ボタンコイルバネ102とで構成されている。
【0015】
ボタン101は、図1に示すように、非常停止押ボタンスイッチ1の最上部に配置される円筒状のボタンであり、ボタン側係合片111とボタン側係合孔112とを有する。
ボタン101に対する押下操作がなされると、押下操作に連動して、後述する接点ユニット部15の可動接片502と固定端子503とが開離する。この開離により、通電状態にあった機器等が遮断状態になる。
ボタン101の形状は特に限定されないが、緊急時に非常停止押ボタンスイッチ1を押下操作する操作者が、機器等を非常停止させるためのスイッチであることを容易に認識でき、かつ掌で押し易い形状であることが好ましく、例えばキノコ形状であることがより望ましい。
なお、ボタン側係合片111及びボタン側係合孔112の詳細については、図3を参照して後述する。
【0016】
ボタンコイルバネ102は、図1図2図5、及び図6に示すように、ボタン101とプランジャ201との間に配置されたコイルバネである。
ボタンコイルバネ102は、ボタン101が押下される際に加えられる力を若干吸収するため、ボタン101に若干の遊びを持たせることができる。その結果、ボタン101に対する誤操作による機器等の遮断を防ぐことができる。
また、ボタン101とプランジャ201とを係合させる具体的手法については後述するが、ボタンコイルバネ102は、ボタン101とプランジャ201とが係合された後、弾性変形することでボタン側係合片111とプランジャ側係合片203とを圧接する。これにより、ボタン側係合片111とプランジャ側係合片203との間の係止力を高めることができる。
【0017】
(ねじりコイルバネ)
ねじりコイルバネ12は、図1図2図5、及び図6に示すように、ボタン101の内側に配置されるコイルバネであり、一端が後述するハウジング301の内壁に係合され、他端がボタン101の内壁に係合される。
ボタン101に対する押下操作が行われた後に、ボタン101を復帰させるためにボタン101に対して回転操作がなされると、ねじりコイルバネ12は、弾性変形して、押下された状態にあるボタン101を押下操作前の状態に復帰させる。この回転操作により、ボタン101が押下操作前の状態に復帰すると、開離状態にあった後述する可動接片502と固定端子503とが接触した状態(押下操作前の状態)に復帰する。なお、ボタン101に対する回転操作の回転角度は特に限定されないが、一般的な非常停止押ボタンスイッチの場合、45°程度の回転角度で復帰操作がなされる。
ねじりコイルバネ12の内側には、ねじりコイルバネ12の内側のスペースを利用して、プランジャ部13が配置される。
【0018】
(プランジャ部)
プランジャ部13は、図1に示すように、プランジャ201と、プランジャ側係合孔202と、プランジャ側係合片203と、ラッチコイルバネ211と、滑動棒212とを含むように構成されている。
【0019】
プランジャ201は、ねじりコイルバネ12の内側、かつ後述するハウジング301を挿通してハウジング301の上部の開口部を塞ぐように配置されるプランジャであり、ボタン101に対する押下操作に連動して上下に摺動する。プランジャ201の中心部には、貫通孔213が設けられており、貫通孔213の内部にラッチコイルバネ211が配置される。ラッチコイルバネ211の両端部には滑動棒212が接合される。
プランジャ側係合孔202及びプランジャ側係合片203の詳細については、図4を参照して後述する。
【0020】
ボタン101に対する押下操作が行われると、プランジャ201は、押下操作の方向に摺動する。プランジャ201が押下操作の方向に摺動すると、滑動棒212は、押下操作の方向に対して垂直方向に摺動しながら、後述するハウジング301の上部の開口部の内壁に沿って端部を滑動させる。すなわち、プランジャ部13は、ラッチ機構を有する構成となっている。後述するハウジング301の上部の開口部の内壁は、一部に突起部が設けられている。このため、プランジャ201は、滑動棒212の端部が突起部の頂部(以下「ラッチ点」と呼ぶ)を通過する前は、後述する接点ユニット部15の可動接片502が固定端子503と接触する方向に付勢する。これに対して、滑動棒212の端部がラッチ点を通過した後は、プランジャ201は、可動接片502が固定端子503と開離する方向に付勢する。
【0021】
(ハウジング部)
ハウジング部14は、ハウジング301と、防水ゴム302とを含むように構成されている。
【0022】
ハウジング301は、上部と下部との夫々に開口部を有する筒形のハウジングである。ハウジング301の上部の外周には、防水ゴム302を配置させるための溝303が設けられている。防水ゴム302が溝303に配置されることにより、ボタン101の内部に水や埃等の異物が侵入することを防ぐことができる。その結果、ボタン101の内部に異物が侵入することにより生じ得る故障や事故等を防ぐことができる。
【0023】
(接点ユニット部)
接点ユニット部15は、図1に示すように、ケース501と、可動接片502と、固定端子503と、転換子504とを含むように構成されている。接点ユニット部15は、ハウジング301の下部の開口部を塞ぐように配置されている。
【0024】
可動接片502は、通常時は固定端子503と接触した状態にあるが、ボタン101に対する押下操作に連動して開離した状態になる。また、可動接片502は、押下操作れた後のボタン101に対する復帰操作に連動して固定端子503と接触した状態に戻る。すなわち、ボタン101に対する押下操作に連動して可動接片502が固定端子503と接触した状態から開離した状態になると、通電状態にある機器等が遮断状態になる。これに対して、ボタン101に対する復帰操作に連動して可動接片502が固定端子503と接触した状態に戻ると、遮断状態にあった機器等が通電状態に戻る。
【0025】
(固定部)
固定部16は、丸ナット401と、ゴム座金402とで構成されている。
【0026】
丸ナット401は、非常停止押ボタンスイッチ1を制御盤(図示せず)に固定するための部材である。ゴム座金402は、制御盤と丸ナット401との間に配置される。これにより、制御盤と非常停止押ボタンスイッチ1との接合部に隙間が生じる事を防ぐことができる。その結果、非常停止押ボタンスイッチ1が制御盤から脱落しないように固定することができる。また、制御盤と非常停止押ボタンスイッチ1との接合部から水や埃等の異物が制御盤の内部に侵入することを防ぐことができる。
【0027】
[ボタンとプランジャとの係合]
上記のような構成のプランジャ201と、ボタン101とを係合させる具体的手法について、図2図8を参照して説明する。
【0028】
図2は、図1の押ボタンスイッチのうち、ハウジング301、ラッチコイルバネ211、滑動棒212、及びねじりコイルバネ12の位置関係を示す図である。図2(A)は、プランジャ201がハウジングの中心で係止された状態を示す断面斜視図である。図2(B)は、プランジャ201が回転する前の状態を示す平面図である。図2(C)は、プランジャ201が回転した後の状態を示す平面図である。
【0029】
非常停止押ボタンスイッチ1に対する押下操作がなされる前は、プランジャ201は、図2(A)に示すように、滑動棒212の両端部がハウジング301のカム溝304を押圧することで、ハウジング301の中央部で係止された状態となる。
ハウジング301のカム溝304は、図2(B)及び(C)に示すように、ラッチ点Pから上方に向かって設けられており、滑動棒212の端部がカムとして滑動する周方向に沿って徐々に溝が深くなる構成となっている。すなわち、溝の径方向の寸法が徐々に大きくなる構成となっている。このため、ハウジング301の下方から挿入されたプランジャ201の滑動棒212の端部がラッチ点Pを乗り越えると、プランジャ201が上方に摺動しながら自動的に回転を開始し、その回転角度に比例して、貫通孔213からカム溝304に向かって伸長する滑動棒212の長さが長くなる。これにより、ラッチコイルバネ211は、弾性エネルギーを解放する方向に移行する。その結果、図2(B)の状態にあったプランジャ201が回転して図2(C)の状態になる。
プランジャ201が回転する角度は特に限定されないが、図2に示す例では90°回転する構成となっている。これにより、例えば押下された非常停止押ボタンスイッチ1に対する復帰操作がなされるときに、一般的な45°の回転操作が必要とされる場合であっても、ボタン101に対する復帰操作に必要とされる回転操作の角度を超える角度(90°)でプランジャ201を回転させてボタンとプランジャとを係合させているので、回転操作の勢いでボタン側係合片111とプランジャ側係合片203との引っ掛かりが外れることがない。その結果、ボタン101とプランジャ201とが分離してボタン101が脱落してしまうことを防ぐことができる。
【0030】
図3は、非常停止押ボタンスイッチ1のうち、ボタン101の構成を示す図である。図3(A)は、ボタン101の断面斜視図である。図3(B)は、ボタン101の底面図である。
【0031】
ボタン101は、図3(A)及び(B)に示すように、内壁の一部にボタン側係合片111と、ボタン側係合孔112とを有する。ボタン側係合片111は、プランジャ側係合孔202に挿入する係合片である。ボタン側係合孔112は、プランジャ側係合片203に挿入される係合孔である。ボタン側係合片111及びボタン側係合孔112は、押下方向に延びるボタン101の中心軸に対して対象に一対ずつ形成されていることが望ましい。
【0032】
図4は、非常停止押ボタンスイッチ1のうち、ボタン101とプランジャ201とが係合する仕組みを示す図である。図4(A)は、プランジャ201の斜視図である。図4(B)は、ボタン101とプランジャ201とが係合する前の状態を示す断面斜視図である。図4(C)は、ボタン101とプランジャ201とが係合した後の状態を示す断面斜視図である。
【0033】
プランジャ201には、図4(A)に示すように、プランジャ側係合孔202とプランジャ側係合片203とが設けられている。プランジャ側係合孔202は、ボタン側係合片111を挿入する係合孔である。プランジャ側係合片203は、ボタン側係合孔112に挿入する係合片である。プランジャ側係合孔202及びプランジャ側係合片203は、挿入方向に延びるプランジャ201の中心軸に対して対象に一対ずつ形成されていることが望ましい。
まず、図4(B)に示すように、ボタン側係合片111の位置とプランジャ側係合孔202の位置とを合わせて、プランジャ201をボタン101の奥に挿入し、次に、図4(C)に示すように、プランジャ201を90°回転させる。これにより、ボタン側係合片111の位置とプランジャ側係合孔202の位置とがずれて、ボタン側係合片111とプランジャ側係合片203とが係合されるので、プランジャ201を再び90°回転させない限り、ボタン側係合片111とプランジャ側係合片203とが係合された状態を維持させることができる。
【0034】
図5は、非常停止押ボタンスイッチ1において、ボタン101とプランジャ201とが係合する前の様子を示す図である。図5(A)は、非常停止押ボタンスイッチ1の上部の断面斜視図である。図5(B)は、図5(A)のa-a断面図である。
【0035】
図5(A)の状態では、滑動棒212の両端部が未だラッチ点Pよりも下方に位置している。この状態のときのボタン側係合片111と、プランジャ側係合孔202及びプランジャ側係合片203との位置関係は、図5(B)に示すように、ボタン側係合片111とプランジャ側係合孔202とが重なり合った状態、及びボタン側係合孔112とプランジャ側係合片203とが重なり合った状態となっている。すなわち、ボタン側係合片111とプランジャ側係合片203とが未だ係合されていない状態であるため、ボタン101がハウジング301の上に単に被さった状態にすぎないため、ボタン101を持ち上げれば取れてしまう状態である。
【0036】
図6は、非常停止押ボタンスイッチ1において、ボタン101とプランジャ201とが係合した後の様子を示す図である。図6(A)は、非常停止押ボタンスイッチ1の上部の断面斜視図である。図6(B)は、図6(A)のa-a断面図である。
【0037】
図6(A)の状態は、滑動棒212の両端部がラッチ点Pよりも上方に位置している。この状態のときのボタン側係合片111と、プランジャ側係合孔202との位置関係は、図6(B)に示すように、プランジャ201が90°回転して、ボタン側係合片111とプランジャ側係合片203とがずれた状態となっている。すなわち、ボタン側係合片111とプランジャ側係合片203とが係合された状態となっている。この場合、上述したように、プランジャ201を再び90°回転させない限りボタン側係合片111とプランジャ側係合片203とが係合された状態を維持させることができる。
【0038】
図7は、ボタン101とプランジャ201とを係合させるまでの流れを示すフローチャートである。
【0039】
ステップS1において、ハウジング301の上部にボタン101を被せた状態で、ハウジング301の内部にプランジャ201を挿入するとともに、プランジャ側係合孔202の位置にボタン側係合片111の位置を合わせ、プランジャ側係合孔202にボタン側係合片111を挿入する。
ステップS2において、滑動棒212の端部がラッチ点Pを乗り越えるまで、プランジャ201をハウジングの奥の方向にさらに押し込む。
ステップS3において、カム溝304の形状に沿って滑動棒212の端部をカムとして滑動させて、プランジャ201を90°回転させる。
以上のステップを経ることで、ボタン101とプランジャ201とを係合させることができる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。また、本発明に係る要旨を逸脱しない範囲内であれば種々の変更を施してもよい。
【0041】
例えば、本実施形態では、非常停止押ボタンスイッチとしたが、必ずしも非常停止用の押ボタンスイッチである必要はなく、例えば通常の押ボタンスイッチであってもよい。
【0042】
以上まとめると、本発明が適用される押ボタンスイッチの製造方法は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
すなわち、本発明に係る押ボタンスイッチ(例えば図1の非常停止押ボタンスイッチ1)の製造方法は、
内壁にカム溝(例えば図2のカム溝304)を有するハウジング(例えば図2のハウジング301)と、
ボタン側係合片(例えば図3のボタン側係合片111)と、ボタン側係合孔(例えば図3のボタン側係合孔112)とを有するボタン(例えば図3のボタン101)と、
プランジャ側係合片(例えば図2のプランジャ側係合片203)と、プランジャ側係合孔(例えば図2のプランジャ側係合孔202)と、前記ボタンに対する押下操作の方向に対し垂直方向に摺動する滑動棒(例えば図2の滑動棒212)とを有するプランジャ(例えば図2のプランジャ201)と、
を備える押ボタンスイッチの製造方法であって、
前記プランジャ側係合孔に前記ボタン側係合片を挿入し、前記ボタン側係合孔に前記プランジャ側係合片を挿入するステップと、
前記カム溝の形状に沿って前記滑動棒の端部をカムとして滑動させながら前記プランジャを前記ボタンの中心軸を軸として回転させて、前記ボタン側係合片と前記プランジャ側係合孔とを係合させるステップとを含む。
これにより、ハウジングの内壁に設けられたカム溝の形状に沿って滑動棒の端部がカムとして滑動させると、プランジャがボタンの中心軸を軸として回転するので、ボタン側係合片とプランジャ側係合片とを強固に係合させることができる。その結果、部品点数を増やすことなく、ボタンとプランジャとが強固に係合された押しボタンスイッチを提供することが可能となる。
【0043】
また、本発明に係る押ボタンスイッチにおいて、前記カム溝は、前記滑動棒の端部を滑動させる円周の方向に沿って徐々に深くすることができる。
これにより、前記滑動棒の端部を滑動させる円周方向に沿って徐々に深くなるので、ハウジングの内壁に設けられたカム溝の形状に沿って滑動棒の端部がカムとしてスムーズに滑動するとともに、逆方向に滑動しないので、ボタン側係合片とプランジャ側係合片とをより強固に係合させることができる。その結果、部品点数を増やすことなく、ボタンとプランジャとがより強固に係合された押しボタンスイッチを提供することが可能となる。
【0044】
また、本発明に係る押ボタンスイッチにおいて、前記プランジャは、前記ボタンに対する復帰操作に必要とされる回転操作の角度(例えば45°)を超える角度(例えば90°)で回転して前記ボタンと係合することができる。
これにより、プランジャが、ボタンに対する復帰操作に必要とされる回転操作の角度を超える角度で回転してボタンとプランジャとが係合される。このため、押下されたボタンを復帰させるための回転操作がなされたときに、回転操作の勢いでボタン側係合片とプランジャ側係合片との引っ掛かりが外れて、ボタンとプランジャとが分離してボタンが脱落してしまうことを防ぐことができる。
【符号の説明】
【0045】
1・・・ 非常停止押ボタンスイッチ
11・・・ 操作部
12・・・ ねじりコイルバネ
13・・・ プランジャ部
14・・・ ハウジング部
15・・・ 接点ユニット部
16・・・ 固定部
101・・・ ボタン
102・・・ ボタンコイルバネ
111・・・ ボタン側係合片
112・・・ ボタン側係合孔
201・・・ プランジャ
202・・・ プランジャ側係合孔
203・・・ プランジャ側係合片
211・・・ プランジャコイルバネ
212・・・ 滑動棒
213・・・ 貫通孔
301・・・ ハウジング
302・・・ 防水ゴム
303・・・ (防水ゴムを配置する)溝
304・・・ カム溝
401・・・ 丸ナット
402・・・ ゴム座金
501・・・ ケース
502・・・ 可動接片
503・・・ 固定端子
504・・・ 転換子
P・・・ ラッチ点



図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8