(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】スプリンクラ消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 37/08 20060101AFI20220317BHJP
A62C 35/64 20060101ALI20220317BHJP
【FI】
A62C37/08
A62C35/64
(21)【出願番号】P 2018066416
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127845
【氏名又は名称】石川 壽彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 享介
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-113125(JP,A)
【文献】特開2017-136507(JP,A)
【文献】実開昭60-99955(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 2/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
常時は閉じた予作動弁と、該予作動弁の二次側に接続され、圧縮気体が封入された二次側配管と、該二次側配管に接続されたスプリンクラヘッドと、該スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設けられ、火災受信機に対して火災信号またはセンサ出力を送信する火災感知器と、前記二次側配管内の圧力を常時検知する圧力センサと、前記二次側配管内の圧力を変動させる二次側圧力制御装置と、前記圧力センサの検知信号を入力し、前記入力した検知信号によって、前記二次側圧力制御装置による前記二次側配管内の圧力が変動していないと判断した場合には圧力センサ故障信号を発信し、前記入力した検知信号によって火災であると判断したときにはスプリンクラ作動信号を発信する信号変換器と、前記信号変換器の圧力センサ故障信号の入力があったときには圧力センサ故障を報知し、前記火災受信機からの火災信号及び前記信号変換器のスプリンクラ作動信号の入力があったときに前記予作動弁を開放する制御盤とを備えたことを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記信号変換器は、前記圧力センサの検知信号を入力して圧力の変化率を演算して該演算値が所定の値になると火災であると判断することを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記二次側配管内の圧力が所定の値になると動作する圧力スイッチをさらに有し、前記制御盤は、前記火災信号及び、前記信号変換器のスプリンクラ作動信号又は圧力スイッチからの信号のいずれか一方の信号の入力があったときに前記予作動弁を開放することを特徴とする請求項1又は2記載のスプリンクラ消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラ消火設備に関し、特に予作動式スプリンクラ消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ある一定規模以上の建物には、消火設備としてスプリンクラ消火設備が設けられている。スプリンクラ消火設備は、天井に設置されたスプリンクラヘッドから放水することで、火災を消火する設備である。
【0003】
スプリンクラ消火設備は、スプリンクラヘッドが火災の熱によって感熱部が溶融または破裂すると、水を放水するものであるが、設備としての信頼性を高めたものとして、予作動式のスプリンクラ消火設備がある。
【0004】
この予作動式のスプリンクラ消火設備は、常時は閉じた予作動弁と、予作動弁の二次側に接続され、圧縮空気等が封入された二次側配管と、二次側配管に接続されたスプリンクラヘッドと、スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設けられた火災感知器などから構成される。
【0005】
この設備では、火災が発生すると、火災感知器が動作し、その火災感知器からの信号に基づいて、予作動弁が開放され、その後、スプリンクラヘッドが火災の熱によって開放すると、配管内の圧縮空気が排出され、スプリンクラヘッドから放水するものである。この設備の場合、万が一、外力などによってスプリンクラヘッドの感熱部が破損しても、火災感知器が動作していなければ、防護区域で水損が発生することがなく信頼性が高い。
【0006】
しかし、予作動式のスプリンクラ消火設備は、火災感知器の動作により予作動弁が開放することから、火災感知器が非火災によって動作してしまうと、予作動弁が開放し、二次側配管内に水が流入してしまう。二次側配管内に水が入った場合には、その後水抜き作業が必要となるが、スプリンクラヘッドが接続された立下り管は、水抜きを行うことができず、長い期間が経過すると、そこに溜まった水と圧縮空気によって配管が腐食する場合がある。
そこで、特許文献1では、予作動式のスプリンクラ消火設備においては、予作動弁を開放させる条件として、火災感知器が動作することに加えて、二次側配管内の圧力が所定値以下になったことを検知する圧力スイッチが動作することとしている。
【0007】
この設備では、防護区域で火災が発生し、スプリンクラヘッドが開放すると、二次側配管内の圧縮空気が排出されて配管内の圧力が低下して圧力スイッチが動作すると共に、その火災により火災感知器が動作した場合に、予作動弁が開放する。このように2つの条件で予作動弁を開放させることから、ダブルインターロック制御とも呼ばれている。
このダブルインターロック制御を採用した設備では、非火災で火災感知器が動作しても予作動弁が開放しないことから、二次側配管内に水が流入することがなく、しかも通常のスプリンクラ消火設備に対して水損が生じにくい点で優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ダブルインターロック制御では、一般に上述のように圧力スイッチを用いているが、圧力スイッチは、圧力の下限値を設定して、二次側配管内の圧力が前記下限値まで低下したら作動するというものである。そして、誤動作を防止するため、圧力スイッチにおける監視時の圧力と圧力低下設定値との差を大きくとっているため、スプリンクラヘッドが動作してから圧力低下信号が出るまでに時間がかかり、結果的に、放水遅れにつながるという問題がある。
【0010】
かかる問題を解決する対策として、圧力スイッチに代えて、圧力に比例する電気信号を発信する圧力センサを用いることが考えられる。
圧力センサであれば、圧力スイッチのように、監視時の圧力と圧力低下設定値の差を設けることなく、圧力センサの電気信号に基づく制御を行うことで、動作遅れの問題を解消することができる。
しかしながら、圧力センサも長期間の使用中には故障することが考えられ、その故障に対する対応を考慮する必要がある。
ここで、圧力センサに生ずる故障態様について
図6に基づいて説明する。
【0011】
図6は縦軸が監視圧力で、横軸が時間を示している。グラフ中の実線は、圧力センサの出力を示し、破線は実際の二次側配管内の圧力を示している。なお、実線と破線が重なる部分は実線で示している。
グラフ中のA点は圧力センサが故障した時点であり、B点は火災によってスプリンクラヘッドが開放した時点を示している。
【0012】
圧力センサは、監視している圧力に応じた電気信号を発信するが、圧力センサの故障の態様として、実際には圧力が変動しているのに圧力が一定の場合と同様の信号を発信することがある。具体的には、監視圧力が一定の場合、
図6のA時点までは、圧力センサは正常であり、監視圧力が一定である旨の信号を発信している。A時点で圧力センサが故障した場合、そのまま監視圧力が一定である旨の信号を発信する。A時点以降でも、実際の監視圧力が変動していないので、問題が生じないが、圧力センサが故障していることが分からない。この状況で、火災が発生して、スプリンクラヘッドが開放すると、二次側配管内の圧力は、
図6の破線で示すように急激に低下する。しかし、圧力センサは故障しているため、監視圧力が保持されている旨の信号(A時点における圧力値)を発信し続けることになり、制御盤には、二次側配管内の圧力が低下した信号が入力されないので、ダブルインターロック制御では、予作動弁を開放することができない。
【0013】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、ダブルインターロック制御を採用しつつも、放水遅れを防止し、かつ圧力センサの故障による弊害を防止できるスプリンクラ消火設備を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明に係るスプリンクラ消火設備は、常時は閉じた予作動弁と、該予作動弁の二次側に接続され、圧縮気体が封入された二次側配管と、該二次側配管に接続されたスプリンクラヘッドと、該スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設けられ、火災受信機に対して火災信号またはセンサ出力を送信する火災感知器と、前記二次側配管内の圧力を常時検知する圧力センサと、前記二次側配管内の圧力を変動させる二次側圧力制御装置と、前記圧力センサの検知信号を入力し、前記入力した検知信号によって、前記二次側圧力制御装置による前記二次側配管内の圧力が変動していないと判断した場合には圧力センサ故障信号を発信し、前記入力した検知信号によって火災であると判断したときにはスプリンクラ作動信号を発信する信号変換器と、前記信号変換器の圧力センサ故障信号の入力があったときには圧力センサ故障を報知し、前記火災受信機からの火災信号及び前記信号変換器のスプリンクラ作動信号の入力があったときに前記予作動弁を開放する制御盤とを備えたことを特徴とするものである。
【0015】
(2)また、上記(1)に記載のものにおいて、前記信号変換器は、前記圧力センサの検知信号を入力して圧力の変化率を演算して該演算値が所定の値になると火災であると判断することを特徴とするものである。
【0016】
(3)また、上記(1)又は(2)に記載のものにおいて、前記二次側配管内の圧力が所定の値になると動作する圧力スイッチをさらに有し、前記制御盤は、前記火災信号及び、前記信号変換器のスプリンクラ作動信号又は圧力スイッチからの信号のいずれか一方の信号の入力があったときに前記予作動弁を開放することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係るスプリンクラ消火設備は、二次側配管内の圧力を常時検知する圧力センサと、前記二次側配管内の圧力を変動させる二次側圧力制御装置と、前記圧力センサの検知信号を入力し、前記入力した検知信号によって、前記二次側圧力制御装置による前記二次側配管内の圧力が変動していないと判断した場合には圧力センサ故障信号を発信し、前記入力した検知信号によって火災であると判断したときにはスプリンクラ作動信号を発信する信号変換器と、前記信号変換器の圧力センサ故障信号の入力があったときには圧力センサ故障を報知し、前記火災受信機からの火災信号及び前記信号変換器のスプリンクラ作動信号の入力があったときに前記予作動弁を開放する制御盤とを備えている。
そして、本発明においては、圧力センサを用いることで、圧力スイッチによる場合よりも、火災の場合に早期に予作動弁を開放できるので、放水遅れが生ずることない。
また、二次側配管内の圧力を変動させることで圧力センサが正常に動作するかどうかを常時監視しているので、仮に圧力センサが故障した場合でもそれを検知することができ、交換等を行うことが可能であるため、圧力センサの故障による弊害が発生することがない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るスプリンクラ消火設備の全体構成の説明図である。
【
図2】
図1に示したスプリンクラ消火設備における二次側圧力制御装置の動作を説明する説明図である。
【
図3】
図1に示したスプリンクラ消火設備の監視時における監視圧力と圧力センサの出力との関係を示すグラフである。
【
図4】
図1に示したスプリンクラ消火設備の予作動弁の開放に関連する機器類の説明図である。
【
図5】
図1に示したスプリンクラ消火設備の火災時の動作のフローチャートである。
【
図6】発明が解決しようとする課題の説明図であって、従来例におけるスプリンクラ消火設備の監視時における監視圧力と圧力センサの出力との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施の形態が対象としているスプリンクラ消火設備は、予作動式スプリンクラ消火設備であるため、この概要を
図1に基づいて説明する。
予作動式スプリンクラ消火設備1は、
図1に示すように、建物の地下階に消火水を貯留する貯水槽3を設け、貯水槽3の消火水は消火ポンプ5によって給水本管7に供給される。給水本管7には、消火ポンプ5の起動に使用される圧力タンク9が接続され、圧力タンク9には給水本管7の圧力水が導入され、内部の空気を圧縮するように構成されている。圧力タンク9には、圧力スイッチ11が設けられ、圧力スイッチ11が規定圧力以下の減圧を検出すると、この減圧信号がポンプ制御盤13に出力されて、消火ポンプ5が起動するように構成されている。
【0020】
給水本管7からは、防護区画毎に分岐管15が引き出され、分岐管15には予作動式流水検知装置17が設けられている。そして、分岐管15における予作動式流水検知装置17の二次側、すなわち二次側配管19に閉鎖型のスプリンクラヘッド21が取り付けられ、さらに二次側配管19の末端には試験弁23が設けられている。また、二次側配管19には、コンプレッサ25によって所定の圧力に加圧された圧縮空気が空気配管27を介して供給されている。
予作動式流水検知装置17は、予作動弁29と予作動弁29を開放する電動弁31と、減圧を検知する圧力スイッチ33と、流水検知スイッチ35を備えている。
電動弁31、圧力スイッチ33、流水検知スイッチ35はバルブ中継器37を介して本発明の制御盤としての消火システム制御盤39に電気的に接続されて、信号伝送が可能になっている。
【0021】
また、スプリンクラヘッド21が設置された防護区画には火災感知器41が設置されて、火災感知器41の検知信号は、火災受信機43に入力され、火災受信機43から消火システム制御盤39に火災信号が入力されるようになっている。
【0022】
以上が、一般的な予作動式スプリンクラ消火設備の概要であるが、本実施の形態では、
図1に示すように、二次側配管19内の圧力を常時検知する圧力センサ45と、圧力センサ45の検知信号を入力して圧力の変化率を演算して該演算値が所定の値になるとスプリンクラ作動信号又は圧力センサ故障信号を発信する信号変換器47を備えている。
また、信号変換器47と圧力センサ45には非常電源装置49が接続されている。非常電源装置49により電源が供給されるので、火災が発生し、かつ停電が発生するような場合であっても信号変換器47は正しくスプリンクラ作動信号を送信できる。なお信号変換器47の出力は、バルブ中継器37へ入力するようになっている。
【0023】
さらに、圧力センサ45を用いることと関連して、圧力センサ45の故障を検知するための装置として、二次側配管19内の圧力を、例えば周期的に変動させる二次側圧力制御装置51を備えている。
二次側圧力制御装置51は、空気配管27に設けられた設定圧力がP1の第1圧力スイッチ53、開閉弁V1、第1スピードコントローラ55と、二次側配管19に連通するように設けられた排気配管57に設けられた設定圧力がP2の第2圧力スイッチ59、第2スピードコントローラ61、開閉弁V2と、第1圧力スイッチ53及び第2圧力スイッチ59の作動信号を入力して、開閉弁V1、V2の開閉制御を行う監視圧力制御盤63とを備えている。なお、設定圧力P1は設定圧力P2よりも高く設定されている。
【0024】
また、本発明の消火システム制御盤39は、火災受信機43からの火災信号及び、バルブ中継器37を介して信号変換器47のスプリンクラ作動信号又は圧力スイッチ33の信号のいずれかの信号の入力があったときに、バルブ中継器37を介して電動弁31を制御して、予作動弁29を開放するように構成されている。
さらに、消火システム制御盤39は、信号変換器47の圧力センサ故障信号の入力があったときには圧力センサ45が故障している旨の報知を行う機能を有している。報知機能としては、例えばランプの点灯、アラームの鳴動等のいずれの手段であってもよい。
【0025】
圧力センサ45は、常時極めて短い時間間隔で二次側配管19内の圧力値をサンプリングし、信号変換器47はこのサンプリング信号を入力して常時圧力の変化率を演算しているので、二次側配管19内の圧力が減圧して所定値に達する前に、圧力低下を検知できる。このため、二次側配管19内の圧力が所定値以下に下がると動作する圧力スイッチを用いる従来例に比較して減圧状態を極めて早期に検知できるので、放水遅れを防止する効果が高い。
ここで信号変換器47が演算する圧力変化率について言及する。信号変換器47は、定期的に圧力センサ45の出力値をサンプリングし、例えば、サンプリングするたび今回サンプリングした出力値と、前回の出力値とを差分し、圧力が減少傾向または上昇傾向にあるかを判定する。そして圧力の減少傾向が、何回かにわたって連続してあり、かつ所定値以上の圧力低下である場合に、信号変換器47は、バルブ中継器37へスプリンクラ作動信号を出力する。
なお、圧力スイッチが動作する圧力をAとし、通常時、つまり監視状態の二次側配管19内の圧力をBとした場合、圧力Aと圧力Bの中間値である圧力Cよりも高い圧力で、ある一定の圧力の減少傾向があるときにスプリンクラ作動信号を出力するようにすることで、早期に二次側配19内の圧力低下を検知することができる。
【0026】
以上のように構成された本実施の形態の予作動式スプリンクラ消火設備1の動作を
図1~
図5に基づいて説明する。
<監視状態>
監視状態において、二次側配管19内は、二次側圧力制御装置51が動作することで常に所定の圧力範囲で周期的に圧力変動している。
周期的な圧力変動をさせるための具体的な動作について
図2に基づいて説明する。
開閉弁V1が開放の状態で、開閉弁V2が閉止の状態において、監視圧力制御盤63がコンプレッサ25を起動することで、空気配管27から圧縮空気が二次側配管19に送られており、二次側配管19内の圧力が徐々に上昇する(
図2の~t1まで参照)。
なお、二次側配管19には、第1スピードコントローラ55を設けることで、圧縮空気が流量を制御して送られるので、スプリンクラヘッド21が開放したときの放出流量に比較して二次側配管19に送られる圧縮空気の流量は微小であり、火災時における作動性が鈍くなることはない。なお、スプリンクラヘッド21が開放して、二次側配管19内の圧力が大きく低下するときには、消火システム制御盤39からスプリンクラ作動信号が監視圧力制御盤63に送られ、監視圧力制御盤63が、開閉弁V1を閉止すると共に、コンプレッサ25が動いている場合には停止する。
【0027】
二次側配管19内の圧力がP1になると、第1圧力スイッチ53が作動して、作動信号が監視圧力制御盤63に送信される。監視圧力制御盤63は、第1圧力スイッチ53からの信号を入力すると、開閉弁V1を閉止して、開閉弁V2を開放する(
図2の時間t1参照)。開閉弁V1が閉じられることで、圧縮空気の二次側配管19への供給が停止され、開閉弁V2が開放されることで、二次側配管19内の空気が排気配管57を介して排気される。これによって、二次側配管19内の圧力が徐々に低下する(
図2の時間t1~t2参照)。
なお、排気配管57には第2スピードコントローラ61が設けられており、排気される流量が制御される。つまり、二次側配管19から排気される空気流量は、スプリンクラヘッド21が開放したときの放出流量に比較して微小となるように調整されているため、スプリンクラヘッド21が開放したときの二次側配管19の圧力変化率に比較して、開閉弁V2を開放したときの圧力変化率は、極めて小さく、実際の火災による圧力低下と開閉弁V2を開放したことによる排気による圧力低下とを識別でき、誤動作が生じることはない。
【0028】
排気が進み、二次側配管19内の圧力が第2圧力スイッチ59の設定圧力であるP2になると、第2圧力スイッチ59が作動して、作動信号が監視圧力制御盤63に送信される。監視圧力制御盤63は、第2圧力スイッチ59からの信号を入力すると、開閉弁V2を閉止して、開閉弁V1を開放する(
図2の時間t2参照)。開閉弁V2が閉じられることで、圧縮空気の二次側配管19からの排気が停止され、開閉弁V1が開放されることで、起動したコンプレッサにより、圧縮空気の二次側配管19への供給が開始される。これによって、二次側配管19内の圧力が徐々に上昇する(
図2の時間t2~t3参照)。
以上の動作が繰り返されることで、二次側配管19内の圧力はP1~P2の間で周期的に変動する。
【0029】
監視状態では、圧力センサ45は常時二次側配管19の圧力を検知して、信号変換器47が圧力の変化率を演算している。
演算した変化率が、予め設定されている変化率での周期的なものである場合には、圧力センサ45が正常であり、信号変換器47は圧力センサ故障信号を送信しない。
他方、
図3に示すように、仮にA時点で圧力センサ45が故障すると、圧力センサ45は、二次側配管19内の圧力が変動しているのにも関わらず、A時点以降は、B時点のようにスプリンクラヘッド21が開放したとしても、二次側配管19内の圧力が一定値である旨の信号を送信するので、信号変換器47は圧力変化率がゼロであることを検知して、バルブ中継器37を介して圧力センサ故障信号を消火システム制御盤39に送信する。消火システム制御盤39は、圧力センサ故障信号を入力すると、例えば故障ランプ等を点灯して報知を行う。
【0030】
なお、信号変換器47は、変化率がスプリンクラヘッド開放時の圧力変化率として設定されている所定値を越えない限り、スプリンクラ作動信号を送信しない。
このように二次側圧力制御装置51が、二次側配管19内の圧力を周期的に変動させている状況下において、圧力センサ45からの出力に基づいて、信号変換器47が、単位時間あたりの圧力変化率を演算し、その演算値が、二次側配管19内の圧力変動に対応してなく、例えば所定時間にわたって、一定の値しか演算されないときには、信号変換器47は、圧力センサ故障信号をバルブ中継器37を介して消火システム制御盤39に出力する。
なお、二次側圧力制御装置51により二次側配管19内の圧力が上昇または下降するときの圧力変化率の値は、信号変換器47にあるメモリに記憶されており、圧力センサ45からの圧力値に基づき変化率を演算することで、圧力センサ45が故障状態であるかを判断できる。
【0031】
二次側圧力制御装置51は、常時、稼動させていても良いが、例えば、1日に1回、定まった時間だけ稼動させるようにしてもよい。または、消火システム制御盤39の操作者が定期的に二次側圧力制御装置51を動かすようにしてもよい。常時稼動させる場合には、
図2に示したように、二次側配管19内の圧力変動が周期的になるように制御をしたが、必ずしも周期的である必要はない。信号変換器から圧力変化率を消火システム制御盤39に出力させるように構成し、二次側圧力制御装置51により、一定時間にわたって、圧力を上昇させ、そのとき信号変換器から出力される圧力変化率が一定値である場合には、圧力センサの故障と判断するようにしてもよい。
このように信号変換器47は、圧力センサ45から入力される検知信号によって、スプリンクラヘッド21の開放による配管内の圧力低下と判断される状態を検知すると、火災であると判断してスプリンクラヘッド作動信号を発信する。
【0032】
<火災時の動作>
火災時の動作について、
図4、
図5に基づいて説明する。
火災時には、通常、まず火災感知器41が作動し(S1)、その信号が火災受信機43に入力され、火災受信機43が火災信号を消火システム制御盤39に送信する(S2)。
なお、ここでは、火災感知器41自体が火災であるかを判定した場合で説明する。つまり、火災感知器41が検出した出力値が所定値を上回り火災であると判定した場合に、火災感知器41は火災受信機43へ火災信号を送信する。これに対して、火災受信機43が火災であるかを判断する場合であっても本発明は適用できる。この場合には、火災感知器41からはセンサ出力が火災受信機43へ送信され、そのセンサ出力と所定値とを比較して、火災受信機43が火災か否かを判断する。いずれの場合であっても、火災が発生した場合には、火災受信機43からの火災信号が消火システム制御盤39に入力される。
また、次に、火災の熱によってスプリンクラヘッド21が開放して二次側配管19の圧力が減圧すると(S3)、信号変換器47の演算値である圧力変化率が所定の値を越えるため、信号変換器47がバルブ中継器37を介して消火システム制御盤39にスプリンクラ作動信号を送信する(S4)。
【0033】
上述したように、圧力センサ45は、常時極めて短い時間間隔で配管内の圧力値をサンプリングし、信号変換器47はこのサンプリング信号を入力して常時圧力の変化率を演算しているので、二次側配管19内の圧力が減圧して所定値に達する前に、圧力低下を検知でき、スプリンクラヘッド21が開放した後、きわめて早い時期に減圧状態を検知できる。
【0034】
消火システム制御盤39は、火災信号とスプリンクラ作動信号の両方の信号を入力すると、電動弁31を制御して予作動弁29を開放する(S5)。予作動弁29が開放すると、
その後、給水本管7から継続して水が流れる状態となり、その水の流れを検知し、流水検知スイッチ35が作動して、流水信号が消火システム制御盤39に送信する(S6)。消火システム制御盤39が流水信号を受信すると(S7)、消火システム制御盤39から火災受信機43にも流水信号が送信される(S8)。
また予作動弁29が開放したときには、分岐管15における予作動弁29の一次側配管の圧力低下が生じ、これによって、圧力タンク9に設けた圧力スイッチ11が作動して、ポンプ制御盤13が消火ポンプ5を起動する。
消火ポンプ5が起動することで、加圧された消火水が給水本管7を通じて二次側配管19に供給されて作動したスプリンクラヘッド21から放水されて消火が行われる(S9)。
【0035】
<火災感知器の誤動作の場合>
火災感知器41が非火災によって動作した場合、消火システム制御盤39には火災信号は入力されるが、二次側配管内の圧力低下がないので、スプリンクラ作動信号は入力されない。したがって、消火システム制御盤39は予作動弁29の開放をしない。このため、二次側配管19に消火水が供給されることはなく、水抜き作業が発生することはない。
【0036】
<圧力センサが故障の場合>
上述したように二次側配管19内の圧力を周期的に変動させることで圧力センサ45が正常に作動してるか否かは確実に検知できるので、圧力センサ45の故障が検知されれば、作業者が交換等を行えばよい。
したがって、本実施の形態では、基本的には圧力センサ45の故障の場合を想定する必要がない。
【0037】
しかしながら、仮に予期せぬ事態により圧力センサ45の故障であるにも拘わらず故障を検知できない場合が発生すると、火災であるにも拘わらずスプリンクラ作動信号が発信されない。
このような場合であっても、本実施の形態では圧力スイッチ33を設けていることで、スプリンクラヘッド21が開放して二次側配管19内の圧力が所定値まで減圧すると圧力スイッチ33が作動して、圧力スイッチ33の信号がバルブ中継器37を介して消火システム制御盤39に入力される。
火災の場合、消火システム制御盤39には火災信号が入力されているので、消火システム制御盤39は圧力スイッチ33からの信号の入力があると、例え信号変換器47からのスプリンクラ作動信号が入力されていなくても予作動弁29を開放する。
【0038】
以上のように、本実施の形態では、圧力センサ45を用いることで、圧力スイッチによる場合よりも、火災の場合に早期に予作動弁29を開放できるので、放水遅れが生ずることがない。また、圧力センサ45の故障を常時監視しているので、仮に圧力センサ45が故障した場合でも、故障を知ることができ交換等の作業を行うことが可能であるため、圧力センサ45の故障による弊害が発生することがない。
さらに、予期せぬ事態として、圧力センサ45が故障したにも拘わらずそれを検知できなかったような場合でも、圧力スイッチにより二次側配管内の圧力が低下したことを検知するようにしているので、火災時に放水が行われないという最悪の事態を確実に回避することができ、消火設備としての信頼性が高い。
【0039】
本実施の形態では、圧力スイッチの代わりとして圧力センサを使用し、信号変換器で圧力の変化率を演算するようにした。信号変換器は、圧力変化率が所定値を越えたときにスプリンクラ作動信号を出力するようにしたが、例えば、圧力センサからサンプリングした圧力値をバルブ中継器を介して消火システム制御盤に送信するように構成してもよい。この場合には、消火システム制御盤が、二次側配管内の圧力値を直接表示できる表示部を有し、管理者が一定時間における圧力値の変化を視認できるようにすることで、例えば夏季において、配管内の圧力上昇があるときは、管理者が、試験弁23を開放するなどして、配管内の圧力を低下させることができる。
また本実施の形態では、火災受信機と消火システム制御盤をそれぞれ設けたが、これらの盤が有する機能を一つにまとめた一体盤で構成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 予作動式スプリンクラ消火設備
3 貯水槽
5 消火ポンプ
7 給水本管
9 圧力タンク
11 圧力スイッチ(圧力タンク)
13 ポンプ制御盤
15 分岐管
17 予作動式流水検知装置
19 二次側配管
21 スプリンクラヘッド
23 試験弁
25 コンプレッサ
27 空気配管
29 予作動弁
31 電動弁
33 圧力スイッチ(予作動式流水検知装置)
35 流水検知スイッチ
37 バルブ中継器
39 消火システム制御盤
41 火災感知器
43 火災受信機
45 圧力センサ
47 信号変換器
49 非常電源装置
51 二次側圧力制御装置
53 第1圧力スイッチ
55 第1スピードコントローラ
57 排気配管
59 第2圧力スイッチ
61 第2スピードコントローラ
63 監視圧力制御盤
V1、V2 開閉弁