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特許7042173RF装置の運転条件または生成物の組成を提供する装置、方法、プログラム、非一時的コンピュータ可読記録媒体
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  • 特許-RF装置の運転条件または生成物の組成を提供する装置、方法、プログラム、非一時的コンピュータ可読記録媒体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】RF装置の運転条件または生成物の組成を提供する装置、方法、プログラム、非一時的コンピュータ可読記録媒体
(51)【国際特許分類】
   C10G 35/24 20060101AFI20220317BHJP
   G06Q 50/04 20120101ALI20220317BHJP
【FI】
C10G35/24
G06Q50/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018122375
(22)【出願日】2018-06-27
(65)【公開番号】P2019172947
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2021-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2018062616
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000105567
【氏名又は名称】コスモ石油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千代田 範人
(72)【発明者】
【氏名】新名 哲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 大樹
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-303076(JP,A)
【文献】特開2002-329187(JP,A)
【文献】特開2006-187737(JP,A)
【文献】特開2003-58206(JP,A)
【文献】国際公開第2018/117154(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/216746(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0260041(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 35/24
G06Q 50/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、前記予定運転日数と前記最終到達温度のいずれか他方を算出して前記端末に出力するように構成された、RF装置の運転条件を提供する装置。
【請求項2】
前記流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、生成物の性状を算出して前記端末に出力するように構成された、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における生成物の性状を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、生成物の性状を算出して前記端末に出力するように構成された、RF装置の生成物の性状を提供する装置。
【請求項4】
前記流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、前記予定運転日数と前記最終到達温度のいずれか他方を算出し、前記端末に出力するように構成された、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件をユーザの端末へ提供する方法であって、
ネットワークを介して前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、前記予定運転日数と前記最終到達温度のいずれか他方を算出し、前記端末に出力するステップと、を有する、RF装置の運転条件を提供する方法。
【請求項6】
原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における生成物の性状を、ユーザの端末へ提供する方法であって、
ネットワークを介して前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、生成物の性状を算出して前記端末に出力するステップと、を有する、RF装置の生成物の性状を提供する方法。
【請求項7】
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を取得し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定し、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定し、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて、運転日数が前記予定運転日数に達するまでの期間、または、運転温度が最終到達温度に達するまでの期間について、生成物の性状を算出し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記生成物の性状から前記期間のトータルの収益を算出し、前記収益が最も大きくなる前記選択項目の値を特定する、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置。
【請求項8】
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する方法であって、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を取得するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定するステップと、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定するステップと、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて、運転日数が前記予定運転日数に達するまでの期間、または、運転温度が最終到達温度に達するまでの期間について、生成物の性状を算出するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記生成物の性状から前記期間のトータルの収益を算出し、前記収益が最も大きくなる前記選択項目の値を特定するステップと、を有するユーザのRF装置における運転条件を提供する方法。
【請求項9】
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
規定運転日数と最終到達温度を取得し、
前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日と、前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日における前記運転温度と、前記規定運転日数と、前記最終到達温度より、目標劣化速度を算出し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定し、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定し、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて、劣化速度を算出し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記劣化速度が前記目標劣化速度未満の前記選択項目の近似値を特定する、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置。
【請求項10】
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する方法であって、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
規定運転日数と最終到達温度を取得するステップと、
前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日と、前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日における前記運転温度と、前記規定運転日数と、前記最終到達温度より、目標劣化速度を算出するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定するステップと、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定するステップと、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて劣化速度を算出するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記劣化速度が前記目標劣化速度未満の前記選択項目の近似値を特定するステップと、を有するユーザのRF装置における運転条件を提供する方法。
【請求項11】
請求項5、6、8、10のいずれか一項に記載の方法をコンピュータにより実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のプログラムを記録した非一時的コンピュータ可読記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RF装置の運転条件または生成物の組成を提供する装置、方法、プログラム、非一時的コンピュータ可読記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
原料油から触媒による接触改質(Reforming)により所望の成分の生成物を得る接触改質装置(以降、RF装置と呼ぶ)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-58206号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1などにより、化学企業(ユーザ)が運転する反応器内で進行する触媒反応に関する情報を、通信網を通じて触媒供給企業に送信し、触媒供給企業は、触媒反応に関する情報に基づき、シミュレータ装置を用いて、反応器に対する操作情報を生成し、この操作情報を、通信網を通じて化学企業に返信するように構成された触媒利用支援方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1では、例えば予測エンジンとしては触媒反応速度式を用いたダイナミックモデルが採用されることとされているが、このようなシミュレーションは、反応器の形状や各成分の反応モデルなどを緻密にシミュレートするので、膨大な入力データや計算量が必要となる。このため、ダイレクトシミュレーションを用いて各成分の流量を予測することは現実的ではない。また、ダイレクトシミュレーションでは、得たい組成の生成物を得るための運転条件を予測することも現実的ではない。
【0006】
そこで本発明は、ダイレクトシミュレーションによらず、RF装置の運転条件または得られる生成物の組成を提供する装置、方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、前記予定運転日数と前記最終到達温度のいずれか他方を算出して前記端末に出力するように構成された、RF装置の運転条件を提供する装置。
【0008】
また上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における生成物の性状を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、生成物の性状を算出して前記端末に出力するように構成された、RF装置の生成物の性状を提供する装置。
【0009】
また上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件をユーザの端末へ提供する方法であって、
ネットワークを介して前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、前記予定運転日数と前記最終到達温度のいずれか他方を算出し、前記端末に出力するステップと、を有する、RF装置の運転条件を提供する方法。
【0010】
また上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における生成物の性状を、ユーザの端末へ提供する方法であって、
ネットワークを介して前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
前記端末から、ユーザが予定している運転条件である、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を予定条件として取得するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち前記予定条件として入力されなかった項目を前記ユーザ実績情報の各々の項目で代用した流用条件と、前記予定条件と、前記ユーザ運転関数に基づき、前記ユーザ実績情報に含まれる前記触媒と前記予定条件と前記流用条件で前記ユーザのRF装置を運転した場合における、生成物の性状を算出して前記端末に出力するステップと、を有する、RF装置の生成物の性状を提供する方法。
【0011】
また上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を取得し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定し、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定し、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて、運転日数が前記予定運転日数に達するまでの期間、または、運転温度が最終到達温度に達するまでの期間について、生成物の性状を算出し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記生成物の性状から前記期間のトータルの収益を算出し、前記収益が最大化する前記選択項目の値を特定する、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置。
【0012】
また上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する方法であって、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を取得するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定するステップと、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定するステップと、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて、運転日数が前記予定運転日数に達するまでの期間、または、運転温度が最終到達温度に達するまでの期間について、生成物の性状を算出するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記生成物の性状から前記期間のトータルの収益を算出し、前記収益が最大化する前記選択項目の値を特定するステップと、を有するユーザのRF装置における運転条件を提供する方法。
【0013】
また上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置であって、
前記装置は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、を備え、
前記コンピュータ可読命令が前記プロセッサで実行されると、前記装置は、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得し、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出し、
規定運転日数と最終到達温度を取得し、
前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日と、前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日における前記運転温度と、前記規定運転日数と、前記最終到達温度より、目標劣化速度を算出し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定し、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定し、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定し、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて、劣化速度を算出し、
前記選択項目の全ての算出値について、前記劣化速度が前記目標劣化速度未満の前記選択項目の近似値を特定する、ユーザのRF装置における運転条件を提供する装置。
【0014】
また上記目的を達成するために、本発明によれば以下が提供される。
ユーザの端末とネットワークを介して接続され、原料油から接触改質(Reforming)により生成油を得る接触改質装置(以降、RF装置)のベンチプラントにおける、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む基準実績情報の各項目の関係を表す基準運転関数を使って、ユーザのRF装置における運転条件を提供する方法であって、
前記端末から、前記ユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含む、ユーザ実績情報を取得するステップと、
前記基準実績情報と前記ユーザ実績情報とを比較して、前記基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出するステップと、
規定運転日数と最終到達温度を取得するステップと、
前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日と、前記ユーザ実績情報の前記運転日数の末日における前記運転温度と、前記規定運転日数と、前記最終到達温度より、目標劣化速度を算出するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定するステップと、
前記選択項目について、前記ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して、計算範囲を設定するステップと、
前記選択項目について、前記計算範囲内に所定数の算出値を設定するステップと、
運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒の種類について前記ユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記流用条件と前記ユーザ運転関数に基づいて劣化速度を算出するステップと、
前記選択項目の全ての算出値について、前記劣化速度が前記目標劣化速度未満の前記選択項目の近似値を特定するステップと、を有するユーザのRF装置における運転条件を提供する方法。
【0015】
また、本発明によれば、
上記方法をコンピュータにより実行させるためのプログラム、および、
上記プログラムを記録した非一時的コンピュータ可読記録媒体が提供される。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ダイレクトシミュレーションによらず、RF装置の運転条件または生成物の組成を提供する装置、方法、プログラムおよび非一時的コンピュータ可読記録媒体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態に係る方法を実施するためのシステム構成図である。
図2】本実施形態に係る方法のフローチャートである
図3】ユーザ実績情報の一例を示す図である。
図4】予定条件および流用条件の一例を示す図である。
図5】運転日数と運転温度の関係を示す図である。
図6】運転条件および生成物の組成を含む出力される項目を示す図である。
図7図4とは異なる予定条件および流用条件の一例を示す図である。
図8図7の運転条件で算出される運転日数と運転温度の関係を示す図である。
図9】本発明の変形例1に係る方法のフローチャートである。
図10】変形例1においてユーザが入力する予定条件を示す図である。
図11】算出点毎のトータルの収益を示す図である。
図12】変形例2に係る方法のフローチャートである。
図13】運転日数と運転温度の変遷を示すグラフである。
図14】ユーザが運転圧力を選択項目として設定したときの運転圧力と劣化速度の関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて、より詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るRF装置の運転条件および生成物の組成を提供する方法を実施するためのシステム構成図である。本実施形態に係るRF装置の運転条件および生成物の組成を提供する方法は、ユーザのRF装置の実績や予定している運転条件などを取得し、予定している運転条件でユーザのRF装置を運転した場合に得られる生成物の組成を端末へ提供する。また該方法は、ある予定条件で所望のオクタン価を有する生成物を得ようとする場合に設定するべき運転条件の一部を端末へ提供する。
【0019】
図1に示すように、システムは、メインサーバ20(装置)とデータサーバ30を有している。メインサーバ20とデータサーバ30は通信可能に接続されている。メインサーバ20とデータサーバ30は一体の構成としてもよいし、別体の構成としてもよい。
【0020】
メインサーバ20は、ネットワーク40を介してユーザの操作する端末10と接続されている。端末10とメインサーバ20は専用回線で接続されていてもよいし、インターネット回線で接続されていてもよい。端末10は、表示装置を一体又は別体に有している。端末は、ユーザが所有するコンピュータ、タブレット端末、携帯電話などの情報処理機器である。また、端末は、ユーザが所有しない情報処理機器であってもよい。例えばユーザがログインした情報処理機器であってもよい。情報処理機器は、プロセッサと、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部と、表示装置を有する。
【0021】
メインサーバ20は単一のサーバで構成してもよいし、複数台のサーバで構成してもよい。メインサーバ20は、プロセッサ21と、コンピュータ可読命令を記憶する記憶部22で構成されている。プロセッサ21は、記憶部22に記憶されたコンピュータ可読命令を読み出し、以下に詳述するRF装置の運転条件および生成物の組成を提供する方法を実行する。
【0022】
データサーバ30は、ハードディスクなどの記録装置で構成されている。データサーバ30は、ベンチプラントデータベース(以降、ベンチプラントDBと呼ぶ)31と、ユーザデータベース(以降、ユーザDBと呼ぶ)32とを有している。ベンチプラントDB31は、基準実績情報を有している。ユーザDB32は、ユーザが登録したユーザIDとパスワードと、ユーザ実績情報など有している。ユーザDB32やベンチプラントDB31に記録される各々の情報は追って説明する。
【0023】
図2は、本実施形態にかかる方法のフローチャートである。
図2に示すように、メインサーバ20は、ユーザのログイン処理を実行する(ステップS01)。メインサーバ20は、端末10にユーザIDとパスワードの入力を促す画面を表示させる。端末10は、ユーザが入力したユーザIDとパスワードをメインサーバ20へ送信する。メインサーバ20は、このユーザIDとパスワードを取得する。メインサーバ20は、取得したユーザIDとパスワードが、ユーザDB32に登録されているユーザIDおよびパスワードと一致しているか否かを判定する。両者が一致している場合、メインサーバ20は特定のユーザがログインしているものと判断して以降の処理を進める。
【0024】
ログイン処理が終了したら、メインサーバ20はユーザDB32にユーザ実績情報があるか否かを判定する(ステップS02)。メインサーバ20は、ユーザDB32にログインしているユーザのユーザ実績情報があるか否かを照会する。
【0025】
事前にユーザがユーザ実績情報をユーザDB32に登録している場合、あるいは、既に本方法を利用したことがあるユーザがメインサーバ20にログインしている場合には、ユーザ実績情報がユーザDB32に記録されている。メインサーバ20がユーザDB32にユーザ実績情報があるか否かを照会し、メインサーバ20がユーザDB32にユーザ実績情報があると判定すると(ステップS02:Yes)、メインサーバ20はユーザDB32から該ユーザのユーザ実績情報を読み出す(ステップS03)。
【0026】
一方で、新規のユーザの場合など、ユーザDB32にユーザ実績情報がない場合もありうる。メインサーバ20がユーザDB32にユーザ実績情報がないと判定すると(ステップS02:No)、メインサーバ20は、端末10にユーザ実績情報の入力を促す画面を表示させる。端末10は、ユーザが入力したユーザ実績情報をメインサーバ20へ送信する。メインサーバ20は、送信されたユーザ実績情報を取得し(ステップS04)、ユーザDB32に書き込む。
【0027】
続いてメインサーバ20は、ベンチプラントDB31から基準実績情報を読み出す(ステップS05)。メインサーバ20は、基準実績情報とユーザ実績情報との比較に基づいて、基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出する(ステップS06)。
【0028】
実績情報とは、あるRF装置をある運転条件下で運転したときにある組成の生成物が得られたかといった情報である。ユーザのRF装置における実績情報をユーザ実績情報と呼び、ベンチプラントにおける実績情報を基準実績情報と呼ぶ。ベンチプラントとは、各種の触媒を評価又は運転した実績のあるRF装置であり、例えば研究用の評価用プラントが挙げられる。このベンチプラントを様々な運転条件のもとで運転したときに得られた各種の情報が、基準実績情報である。
【0029】
図3に、ユーザ実績情報の一例を示す。図3に示すように、実績情報は少なくとも、運転条件と、該運転条件下で得られた生成物の組成に関する情報を含む。実績情報は少なくとも、触媒の種類、運転日数、運転を開始した初日の運転温度(開始温度)、運転の末日の運転温度(最終到達温度)、運転圧力、水素オイル比、原料油の液空間速度、といった運転条件を含む。また、実績情報は、該運転条件下で得られた生成物の組成、密度、蒸留性状といった原料油の性状を含む。
【0030】
(運転関数)
ベンチプラントにより得られた膨大な実績情報に基づき、特定の運転条件(触媒の種類、運転温度、運転日数、運転圧力、水素オイル比、液空間速度)における、特定の組成を有する生成物に関する情報を統計的に把握することができる。このようなベンチプラントの運転条件と生成物の組成との関係から、基準運転関数を導出することができる。換言すれば、基準運転関数とは、運転条件と、該運転条件下でベンチプラントのRF装置を運転した場合に得られる生成物の組成との関係を表す関数である。
【0031】
例えば、ある組成αの原料油をある触媒、運転温度、運転日数、運転圧力、水素オイル比、液空間速度でベンチプラントのRF装置へ供給したときに、ある組成Aの生成物が得られたとする。また、ある組成βの原料油をある触媒、運転温度、運転日数、運転圧力、水素オイル比、液空間速度でベンチプラントのRF装置へ供給したときに、ある組成Bの生成物が得られたとする。このような触媒の種類、運転温度、運転日数、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状といった運転条件と、生成物の組成との関係が、基準運転関数である。このような触媒の種類、運転温度、運転日数、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状に応じた、生成物の各組成の関係について、膨大なデータがベンチプラントDB31に蓄積されている。
そこで、触媒の種類、運転温度、運転日数、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状を入力すれば、基準運転関数を使って、ベンチプラントで得られる生成物の組成を簡単に予測することができる。
【0032】
ところが、ユーザのRF装置は、その大きさ、形状、配管の長さなどがベンチプラントとは異なっているため、ベンチプラントで得られた基準運転関数をそのまま用いても、ユーザのRF装置で得られる生成物の組成を正確に予測することができない。しかしながら、ユーザのRF装置における触媒の種類、運転温度、運転日数、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状といった運転条件と生成物の組成との関係は、ベンチプラントにおけるそれらと一定程度の相関がある。
【0033】
そこで本発明者は、ベンチプラントから得られた基準運転関数を、ユーザのRF装置用に補正してユーザ運転関数を算出し、このユーザ運転関数を用いることで、ユーザのRF装置で得られる生成物の組成を簡単に予測できることを見出した。
【0034】
また、運転関数を用いることにより、所定の触媒の種類、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状といった運転条件から、所望の組成の生成物を得るために触媒に所望の化学反応を促進させる運転温度を算出することができる。また運転日数が経過するにつれて触媒の劣化が進行するので、劣化した触媒に所望の化学反応を促進させるためには運転温度を高く設定しながら運転を継続する必要がある。この触媒の劣化度合いは運転温度や触媒の種類などに応じて変化するが、運転関数を用いることにより、この劣化度合いも算出することができる。
【0035】
また、運転日毎に運転温度、所定の触媒の種類、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状といった運転条件から得られる生成物の性状を算出し、これを所定の運転日数分繰り返すと、所定の運転日数におけるトータルの生成物の性状を算出することができる。図6などに示す生成物性状は、この所定の運転日数におけるトータルの生成物の性状を言うものである。
【0036】
また、運転日数を経るに従って、劣化した触媒の活性を補うように運転温度を高く設定していく必要がある。運転関数を用いると、運転の末日に到達する運転温度(最終到達温度)を推測することができる。また、運転温度がRF装置に設定された上限温度を超えるようになると、実質的にRF装置を運転することができない。そこでこのような状況を、本明細書では触媒の寿命が尽きたと表現する。運転関数を用いると、ユーザのRF装置に設定された上限温度に到達するまでの運転日数(触媒の寿命)を推測することができる。
【0037】
(運転関数の補正の手法)
例えば、同一の運転条件において、ユーザのRF装置で得られる生成物のオクタン価がベンチプラントのRF装置で得られる生成物のオクタン価の8割であることがある。この場合、該運転条件においてユーザのRF装置で得られる生成物のオクタン価がベンチプラントのRF装置で得られる生成物のオクタン価の8割となるように、基準運転関数を補正してユーザ運転関数を得る。
あるいは、ベンチプラントのRF装置で得られる生成物の組成が、他の運転条件は同じでベンチプラントのRF装置に設定した運転圧力よりも1割高く設定された運転圧力でユーザのRF装置を運転したときに得られる生成物の組成と近似している場合がある。この場合、ユーザが入力した運転圧力の1.1倍が運転圧力として計算に用いられるように基準運転関数を補正してユーザ運転関数を得る。
もっとも、ここでは単純化したモデルを説明しているのであって、実際には、ユーザのRF装置の運転条件と生成物の組成に応じて様々に補正を行う。
【0038】
メインサーバ20は、上記のようにユーザ運転関数を算出したら、算出した該ユーザ運転関数をユーザDB32に保存する。
【0039】
次にメインサーバ20は、端末10から予定条件を取得する(ステップS07)。図4にユーザが入力する予定条件を示している。予定条件とは、ユーザが自身のRF装置を運転する際に設定しようとする各種条件である。
【0040】
図4から図6を用いて、あるユーザが所定の予定運転日数を定めており、既存の運転条件から運転圧力のみを変更した場合の最終到達温度を知りたい場合を説明する。所望のオクタン価を有する生成物を得つつ運転圧力のみを既存の運転条件から変更して、予定運転日数だけ運転を継続した場合に、最終到達温度がユーザのRF装置の上限温度以内に収まるかどうかを知りたいことがある。図4から図6を用いて、ユーザが本実施形態に係る装置をこのようなシチュエーションで利用するときを説明する。
【0041】
RF装置において、定期的に触媒に再生処理を施して触媒の活性を回復させて、再度使用することが行われている。この再生のタイミングはユーザのRF装置毎に設定されている。この再生のタイミングには、RF装置は運転を停止する必要がある。つまり、RF装置の運転継続可能日数は限度がある。このような理由で、ユーザは、運転日数をこの運転継続可能日数以内に設定している。以下の説明では、このRF装置の制約により定まる運転日数を規定運転日数と呼ぶことがある。
【0042】
なお一般的には、過去の運転条件から一部を変更した条件でRF装置を運転しようとすることが多い。例えば運転圧力だけを変更し、その他の条件は過去の運転条件(実績情報で入力した運転条件)のままとすることが多い。そこで本実施形態では、ユーザが変更する運転条件を予定条件と呼び、実績情報で入力した運転条件を流用する運転条件を流用条件と呼ぶ。
【0043】
図4に示すように、メインサーバ20は、予定条件として、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の少なくとも一つ以上と、予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を、端末10から取得する(ステップS07)。
また、メインサーバ20は、流用条件として、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価のうち予定条件として入力されなかった項目をユーザ実績情報の各々の項目から流用する(ステップS07)。この流用条件は、端末10またはユーザデータベース32から取得することができる。
【0044】
本実施形態では、メインサーバ20は、予定条件として予定運転日数と運転圧力を端末10から取得する。またメインサーバ20は、流用条件として、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価を、ユーザデータベース32から取得する。また本事例においては、最終到達温度がユーザ運転関数を用いて算出される項目である。
【0045】
メインサーバ20は、取得した予定条件および流用条件とユーザ運転関数から、最終到達温度を算出する(ステップS08)。図5は、ユーザ運転関数から得られる運転日数と運転温度の関係を示すグラフである。
【0046】
前述したように、運転関数を用いることにより、所定の触媒の種類、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状といった運転条件から、所望の組成の生成物を得るために触媒に所望の化学反応を促進させる運転温度を算出することができる。運転初日の、劣化していない触媒に所望の化学反応を促進させる運転温度を、開始温度と呼ぶ。この開始温度は、図5におけるY切片である。
また、運転関数を用いることにより、運転温度や触媒の種類などからこの触媒の劣化度合いを算出することができる。この劣化度合いは図5においてグラフの傾きとして表れている。
【0047】
つまり、取得した予定条件および流用条件とユーザ運転関数から、図5におけるY切片と傾きを算出することができ、これから
直線Xを算出することができる。なおこの直線X自体は、予定条件でユーザのRF装置を運転する際の運転日に応じた運転温度の変遷を示している。つまり直線Xは、予定条件および流用条件として設定された運転条件において目標のオクタン価を有する生成物を得ようとする際に設定すべき、運転日に応じた運転温度を示している。また、直線Xと、予定条件として設定された規定運転日数との交点の運転温度が、最終到達温度となる。なお、図5に示したグラフは説明の便宜のために示したのであって、メインサーバ20が端末10に表示させるように構成してもよいし、表示させないように構成してもよい。
【0048】
メインサーバ20は、算出した最終到達温度を端末10へネットワーク20を介して出力する(ステップS08)。
【0049】
また前述したように、メインサーバ20は、予定条件と流用条件とユーザ運転関数から生成物の組成を算出し、ネットワーク20を介して端末10に出力する(ステップS09)。前述したように、ユーザ運転関数を用いて、運転日毎に、運転温度、所定の触媒の種類、運転圧力、水素オイル比、液空間速度、原料油の性状といった運転条件から得られる生成物の性状を算出することができる。メインサーバ20は、予定運転日数分、生成物の性状の算出を繰り返し、図6に示す予定運転日数におけるトータルの生成物の性状を算出する。
【0050】
なお、上述した実施形態では、ユーザが特定の運転条件において規定運転日数の末日の最終到達温度を知りたい、というシチュエーションを説明した。このため、メインサーバ20はまず最終到達温度を通知(ステップS08)した後に、生成物の組成を通知する(ステップS09)構成を説明した。しかしながら、ユーザが特定の運転条件において予定運転日数の末日にどのような組成の生成物が得られるかを知りたい場合もある。この場合には、メインサーバ20は、最終到達温度を通知せずに、生成物の組成を通知するように構成してもよい。あるいは、生成物の組成を通知するとともに最終到達温度を通知するように構成してもよい。
【0051】
次に、ユーザのRF装置の上限温度が設定されている場合に、液空間速度のみを実績値から変更したときに触媒の寿命が尽きるかどうかを知りたい、といったシチュエーションを説明する。この場合、図7に示すように、ユーザが知りたい項目は予定運転日数である。またユーザが予定条件として設定する項目は、最終到達温度と液空間速度である。また、生成物の目標オクタン価、運転圧力、水素オイル比が流用条件になる。
【0052】
上述と同様に、予定条件と流用条件とユーザ運転関数を用いて計算すると、運転初日の開始温度と触媒の劣化度合いを算出することができる。これにより、図8に示したグラフを作成することができる。また、このような計算により算出された予定運転日数を端末10に出力する。
【0053】
図8において、開始温度と触媒の劣化度合いから算出された運転温度が上限温度に達する運転日数を、予定運転日数(寿命)として示している。運転温度は上限温度を超えられないので、運転温度が上限温度に達した運転日数を寿命と表現している。また図8では、メンテナンス期間などから設定される、ユーザのRF装置に設定されている連続して運転すべき運転日数を規定運転日数として示している。なおこの規定運転日数はユーザ運転関数などから算出されるものではない。
【0054】
図8に示した例においては、予定運転日数(寿命)が規定運転日数よりも短い。すなわち、本事例では、メインサーバ20は、ユーザが設定した予定条件では規定運転日数まで運転させることができないことを示している。このように、本実施形態に係る装置は、寿命判断にも役立てることができる。なお、本事例においても、図6に示したような生成物の組成を算出して端末10に出力するように構成してもよい。
【0055】
なお、上述した一つ目の事例では、メインサーバ20が予定条件として予定運転日数と運転圧力を取得し、流用条件として流用条件として水素オイル比と液空間速度と原料油の性状と生成物の目標オクタン価を取得した例を説明したが、本発明はこれに限られない。
本実施形態の装置が提供する予定運転日数または最終到達温度のいずれか一方は、予定条件または流用条件として、予定運転日数と最終到達温度のいずれか他方と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価を取得するように構成すれば、算出することができる。
また、ユーザは、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の目標オクタン価の全てを予定条件として設定してもよいし、これらの項目の内の少なくとも一つを予定条件として設定してもよい。
【0056】
本実施形態に係る装置および方法によれば、ダイレクトシミュレーションをする場合に比べて、処理負荷が小さくかつ正確に生成物の組成を予測することができる。また本実施形態に係る装置および方法は、ダイレクトシミュレーションでは得ることが難しく、かつ、ユーザが求めている、運転温度や予定運転日数といった項目を算出することができる。また、本実施形態に係る装置および方法は、運転圧力を変更したときの生成物の組成を知りたい、液空間速度を変更したときのRF装置の寿命が持つかを知りたい、などのユーザの様々な要望に応えることができる。
【0057】
<変形例1>
また、本発明は、例えばユーザが運転圧力以外の触媒の種類、運転日数、目標オクタン価、水素オイル比、液空間速度については予定する値を設定しており、収益を最大化できる運転圧力を知りたいというケースにも適用できる。以下、この変形例1を図9から図11を用いて説明する。
【0058】
図9は、本変形例に係る方法のフローチャートである。図10は、本変形例においてユーザが入力する予定条件を示している。なお、図10にはユーザ実績情報も合わせて表示している。
【0059】
図9において、ステップS11~S16は図2のステップS01~S06と同一であるため、簡単に説明する。上述した実施形態と同様に、メインサーバ20はユーザの端末10からユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、最終到達温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含むユーザ実績情報を取得する(ステップS13またはステップS14)。メインサーバ20は、取得したユーザ実績情報と基準実績情報とを比較して、基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出する(ステップS16)。さらに、メインサーバ20は予定運転日数と最終到達温度のいずれか一方を取得する(ステップS17)。本変形例ではステップS17において、メインサーバ20は予定運転日数を取得する。
【0060】
次にメインサーバ20は、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度、生成物の目標オクタン価のうちから一つを、ユーザが知りたい項目である選択項目として設定する(ステップS18)。本変形例ではステップS18において、ユーザは運転圧力を選択項目として選択し、メインサーバ20は選択項目が運転圧力であることを示す信号を取得する。
【0061】
次にメインサーバ20は、選択項目についてユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して計算範囲を設定する(ステップS19)。本変形例では、選択項目として運転圧力が設定されている。そこでメインサーバ20は、ユーザ実績情報の運転圧力の値を参照し、これに所定係数を乗じて下限値と上限値を算出する。例えば、メインサーバ20は、ユーザ実績情報の運転圧力の値に0.95を乗じて下限値を算出し(2.04×0.95=1.938[MPa])、ユーザ実績情報の運転圧力の値に1.05を乗じて上限値を算出する(2.04×1.05=2.142[MPa])。このようにしてメインサーバ20は、運転圧力が1.938~2.142[MPa]の計算範囲を設定する。
【0062】
メインサーバ20はこの選択項目について、計算範囲内に所定数の算出値を設定する(ステップS20)。例えば、1.938~2.142[MPa]の計算範囲を50分割し、分割した点と下限値と上限値とを合わせて51個の算出点を設定する。例えば算出値1として1.938、算出点2として1.94208、算出点3として1.94616、・・・、算出点51として2.142を設定する。
【0063】
なお、下限値や上限値の算出方法は任意である。また、算出値の個数や設定方法も任意である。例えば下限値としてユーザ実績情報の該当する項目の値の50~99.5%を設定でき、上限値として、ユーザ実績情報の該当する項目の値の100.5~150%を設定できる。上限値や下限値を算出するために用いる係数が大きければ、ユーザが予期しない最適な運転条件を見つける可能性が高まるが、算出範囲が大きくなるため、処理負担が大きくなったり精密な値を算出しにくくなったりする。
算出点の個数は、コンピュータの処理負担や、ユーザの要求する運転条件の精密さに応じて定めることができる。算出個数が大きければ、より精密な値を算出することができるが、処理負担が大きくなる。
【0064】
次にメインサーバ20は、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と原料油の性状と触媒についてユーザ実績情報の値を設定して流用条件として設定する(ステップS21)。本変形例では、図10に示すように、触媒の種類、運転日数、目標オクタン価、水素オイル比、液空間速度の値として、ユーザ実績情報の各々の値を流用し、流用条件を設定する。
【0065】
メインサーバ20は、選択項目の全ての算出値について、流用条件とユーザ運転関数に基づいて、運転日数が予定運転日数に達するまでの期間、または、運転温度が最終到達温度に達するまでの期間について、生成物の性状を算出する(ステップS22)。本変形例では、図10に示した流用条件をユーザ運転関数に適用し、運転日数が予定日数に達するまでの期間について、運転圧力が算出点1の場合から算出点51までの場合について、生成物の性状を算出する。
【0066】
メインサーバ20は、選択項目の全ての算出値について、生成物の性状に基づいて、運転温度が最終到達温度に達するまでの期間のトータルの収益を算出する(ステップS23)。ステップS22において算出点1から算出点51について、生成物の性状が算出されているので、これに基づいて該期間の収益を算出することができる。例えばC5Pについて単位質量当たりの価格を用いて、C5Pの組成と生成量からC5Pの該期間の収益を算出できる。各組成について収益を算出し、これらを合計すると該期間のトータルの収益を算出することができる。このようにして求めるトータルの収益を、各々の算出点毎に算出する。
【0067】
メインサーバ20は収益が最大化する選択項目の値を特定する(ステップS24)。図11は、ステップS23で求めた算出点毎の該期間のトータルの収益を示している。図11に示すように、算出点毎に異なる収益を示しており、これらの収益のうちから最も収益が大きくなる算出点を特定する。図11に示した例では、算出点21の収益が最も大きくなる。そこでメインサーバ20は、算出点21の運転圧力2.0196[MPa]を特定し、ユーザの端末10へ出力する。あるいはメインサーバ20は、収益が最も大きくなる運転圧力の値を、算出された収益とともにユーザの端末10へ出力してもよい。
【0068】
あるいはステップS24においてメインサーバ20は、図11から近似曲線を求め、その最大値または極大値となる選択項目の値を特定してもよい。これによれば、最適な値が2つの算出点の間に位置するような場合にも、収益を最大化できる選択項目の値をユーザに出力することができる。
【0069】
このようにして、運転圧力以外が設定された予定条件において最も収益を最大化できる運転圧力を知りたいというユーザの要求に応えることができる。なお、上述した説明では、選択項目として運転圧力が設定された場合を説明したが、選択項目として水素オイル比、駅空間速度、生成物の目標オクタン価のいずれかを選択してもよい。
【0070】
本変形例によれば、ダイレクトシミュレーションによらずに収益を最大化できる運転条件をユーザに提供することができる。
【0071】
<変形例2>
また、本発明は、例えばユーザが現在稼働しているRF装置に使っている触媒の寿命が規定運転日数の末日に丁度尽きるような運転条件を知りたいというケースにも適用できる。以下、この変形例2を図12から図14を用いて説明する。
【0072】
図12は、本変形例に係る方法のフローチャートである。 図12において、ステップS41~S46は図2のステップS01~S06と同一であるため、簡単に説明する。上述した実施形態と同様に、メインサーバ20はユーザの端末10からユーザのRF装置における、触媒の種類と、運転日数と、運転日数に応じた運転温度と、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、原料油の性状と、生成物の組成を含むユーザ実績情報を取得する(ステップS43またはステップS44)。メインサーバ20は、取得したユーザ実績情報と基準実績情報とを比較して、基準運転関数を補正してユーザ運転関数を算出する(ステップS46)。
さらに、メインサーバ20は規定運転日数と最終到達温度の両方を取得する(ステップS47)。なお本変形例2では、本変形例1と異なり、ステップS47において、メインサーバ20は規定運転日数と最終到達温度の両方を取得する。
【0073】
図13は、運転日数と運転温度の変遷をグラフにしたものである。図13において実線はユーザ実績情報の運転日数における運転温度の変遷を示す。図13において二点鎖線は、ユーザが現在設定している運転条件のまま規定運転日数の末日までRF装置を運転した場合の予測を示す。図13の二点鎖線に示すように、ユーザ実績情報の運転条件で規定運転日数の末日までユーザのRF装置を運転した場合には、運転温度が最終到達温度まで達しない。つまり、ユーザが現在設定している運転条件では劣化速度が低く、触媒を有効に使えていない。そこで本変形例では、ユーザに触媒の寿命が規定運転日数に尽きるような運転条件を提供する。触媒の寿命が規定運転日数に尽きるとは、運転温度が規定運転日数の末日に最終到達温度に到達することを意味する。
【0074】
このように触媒の寿命を制御するためには、図13においてユーザの運転日数の末日(現在の日)における運転温度の点Aから、規定運転日数の末日における最終到達温度の点Bへ向かう直線に沿って、運転温度を高めていくような運転条件を定めればよい。なお図13においては、劣化速度は運転日数に対する運転温度の増分としての傾きで表されている。このため、点Aから点Bに向かう直線の傾きを目標劣化速度と呼ぶことができる。本変形例は、この目標劣化速度となるような運転条件をユーザへ提供する。
【0075】
そこで本変形例においてメインサーバ20は、ユーザ実績情報の運転日数の末日と、この運転日数の末日における運転温度と、規定運転日数と最終到達温度より、目標劣化速度を算出する(ステップS48)。具体的には、目標劣化速度は、(最終到達温度-ユーザ実績情報の運転日数の末日における運転温度)/(規定運転日数-ユーザ実績情報の運転日数の末日)で求めることができる。
【0076】
次のステップS49からステップS52は、変形例1のステップS18からステップS21と同様である。メインサーバ20は、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちから一つをユーザが知りたい項目である選択項目として設定する(ステップS49)。メインサーバ20は、選択項目について、ユーザ実績情報の該当する項目の値に応じて下限値と上限値を算出して計算範囲を設定する(ステップS50)。メインサーバ20は、選択項目について、計算範囲内の所定数の算出値を設定する(ステップS51)。メインサーバ20は、運転圧力と、水素オイル比と、液空間速度と、生成物の目標オクタン価のうちの選択されなかった非選択項目と、原料油の性状と触媒の種類について、ユーザ実績情報の値を設定し、これらを流用条件として設定する(ステップS52)。
【0077】
メインサーバ20は、選択項目の全ての算出値について、流用条件をユーザ運転関数に適用し、それぞれの劣化速度を算出する(ステップS53)。図14は、本変形例の一例として、ユーザが運転圧力を選択項目として設定したときの運転圧力と劣化速度の関係を示したグラフである。図14に示したように、算出値に応じた劣化速度が算出される。
【0078】
メインサーバ20は、選択項目の全ての算出値のうちで、劣化速度が目標劣化速度に最も近い算出値を特定する。図14においては、目標劣化速度を示す直線に最も近い点が、劣化速度が目標劣化速度に最も近い算出値である。そこで例えばメインサーバ20は、この点の算出値(横軸の値)が、劣化速度が目標劣化速度に最も近い算出値であると特定し、ユーザの端末へ出力する。
なお変形例1と同様に、図14において近似曲線を算出してこの近似曲線が目標劣化速度となるような算出値をユーザの端末へ出力してもよい。
【0079】
このようにして本変形例によれば、ユーザが現在稼働しているRF装置に使っている触媒の寿命が規定運転日数の末日に丁度尽きるような運転条件を提供することができる。本変形例によれば、ダイレクトシミュレーションによらずに触媒の寿命が規定運転日数の末日に丁度尽きるような運転条件を提供することができる。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0081】
1 装置
10 端末
20 メインサーバ
21 プロセッサ
22 記憶部
30 データサーバ
31 ベンチプラントデータベース
32 ユーザデータベース
40 ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14