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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/571 20210101AFI20220317BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220317BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220317BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220317BHJP
   H01M 50/555 20210101ALI20220317BHJP
   H01M 10/28 20060101ALI20220317BHJP
   H01G 11/78 20130101ALI20220317BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20220317BHJP
【FI】
H01M50/571
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/184 A
H01M50/555
H01M10/28 Z
H01G11/78
H01G11/80
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018155545
(22)【出願日】2018-08-22
(65)【公開番号】P2020030955
(43)【公開日】2020-02-27
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100140453
【弁理士】
【氏名又は名称】戸津 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 伸烈
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
【審査官】山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-120818(JP,A)
【文献】国際公開第2018/142919(WO,A1)
【文献】特開2000-156209(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/00-50/198
H01M 50/50-50/598
H01M 10/00-10/04
H01M 10/06-10/34
H01G 11/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に沿って積層された複数の電極を含む積層体と、
前記第1方向における前記積層体の一端に設けられた導電性樹脂フィルムと、
前記電極の周縁部に溶着され、隣り合う前記電極の間に内部空間を形成すると共に前記内部空間を封止するための封止部と、
前記内部空間に収容されたアルカリ溶液からなる電解液と、
を備え、
前記複数の電極は、複数のバイポーラ電極と負極終端電極とを含み、
前記電極は、前記第1方向と交差する第1面及び前記第1面の反対側の第2面を含む電極板を含み、
前記バイポーラ電極は、前記第1面に設けられた正極と、前記第2面に設けられた負極と、を更に含み、
前記負極終端電極は、前記第2面に設けられた負極を更に含み、前記第2面が前記積層体の内側になるように、前記第1方向の前記積層体の前記一端において前記バイポーラ電極と前記導電性樹脂フィルムとの間に配置されており、
前記導電性樹脂フィルムは、前記負極終端電極の前記第1面に対向する第3面と前記第3面と反対側の第4面とを含み、
前記負極終端電極の前記第1面の周縁部及び前記導電性樹脂フィルムの前記第3面の周縁部には環状の樹脂部が溶着されており、
前記負極終端電極、前記導電性樹脂フィルム及び前記樹脂部によって囲まれる空間が形成される、蓄電モジュール。
【請求項2】
前記樹脂部に含まれる樹脂が前記導電性樹脂フィルムに含まれる樹脂と同じである、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記導電性樹脂フィルム及び前記樹脂部のそれぞれが、ポリプロピレン及びポリエチレンのうちの少なくとも1つを含む、請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
前記導電性樹脂フィルムがカーボン粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、電極板の一方面に正極が形成され、他方面に負極が形成されたバイポーラ電極を備えるバイポーラ電池が知られている(特許文献1参照)。バイポーラ電池は、セパレータを介して複数のバイポーラ電極を積層してなる積層体を備えている。積層体の側面には、積層方向に隣り合うバイポーラ電極間を封止する封止体が設けられており、バイポーラ電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールでは、積層体における積層方向の一端に、内面に負極が形成された電極板からなる負極終端電極が配置されている。この負極終端電極の電極板の縁部についても封止体によって封止されているが、電解液がアルカリ溶液からなる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板の表面を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って当該電極板の外面側に滲み出ることがある。電解液が外面側に漏れ出て拡散すると、例えば負極終端電極に隣接して配置された導電板の腐食や、負極終端電極と拘束部材との短絡などが生じるおそれがあり、信頼性の観点から好ましくない。
【0005】
そこで、本発明は、信頼性の向上が図られた蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る蓄電モジュールは、第1方向に沿って積層された複数の電極を含む積層体と、前記第1方向における前記積層体の一端に設けられた導電性樹脂フィルムと、前記電極の周縁部に溶着され、隣り合う前記電極の間に内部空間を形成すると共に前記内部空間を封止するための封止部と、前記内部空間に収容されたアルカリ溶液からなる電解液と、を備え、前記複数の電極は、複数のバイポーラ電極と負極終端電極とを含み、前記電極は、前記第1方向と交差する第1面及び前記第1面の反対側の第2面を含む電極板を含み、前記バイポーラ電極は、前記第1面に設けられた正極と、前記第2面に設けられた負極と、を更に含み、前記負極終端電極は、前記第2面に設けられた負極を更に含み、前記第2面が前記積層体の内側になるように、前記第1方向の前記積層体の前記一端において前記バイポーラ電極と前記導電性樹脂フィルムとの間に配置されており、前記導電性樹脂フィルムは、前記負極終端電極の前記第1面に対向する第3面と前記第3面と反対側の第4面とを含み、前記負極終端電極の前記第1面の周縁部及び前記導電性樹脂フィルムの前記第3面の周縁部には樹脂部が溶着されている。
【0007】
この蓄電モジュールでは、導電性樹脂フィルムの第3面の周縁部に樹脂部が溶着されている。導電性樹脂フィルム及び樹脂部はいずれも樹脂を含むので、金属板に樹脂部を溶着する場合に比べて、導電性樹脂フィルムと樹脂部との間のシール性が高くなる。その結果、電解液が、負極終端電極の第2面と封止部との間を通過した後、負極終端電極の第1面の周縁部と樹脂部との間を通過してしまっても、導電性樹脂フィルムと樹脂部との間を通過して蓄電モジュールの外側に漏れ出ることを抑制できる。よって、アルカリクリープによる漏液が確実に抑制され、蓄電モジュールの信頼性が向上される。
【0008】
前記樹脂部に含まれる樹脂が前記導電性樹脂フィルムに含まれる樹脂と同じであってもよい。この場合、導電性樹脂フィルムと樹脂部との間のシール性が更に高くなる。
【0009】
前記導電性樹脂フィルム及び前記樹脂部のそれぞれが、ポリプロピレン及びポリエチレンのうちの少なくとも1つを含んでもよい。この場合、他の樹脂に比べてアルカリ溶液に対する耐性が高くなる。
【0010】
前記導電性樹脂フィルムがカーボン粒子を含んでもよい。この場合、他の導電性粒子に比べて樹脂中の分散性が高くなる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一側面によれば、信頼性の向上が図られた蓄電モジュールが提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図2図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4】変形例に係る蓄電モジュールの内部構成の一部を示す概略断面図である。
図5】比較例に係る蓄電モジュールの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態が詳細に説明される。図面の説明において、同一又は同等の要素には同一符号が用いられ、重複する説明は省略される。
【0014】
図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。図1に示される蓄電装置1は、例えば、フォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してその積層方向に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0015】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5と、を含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタである。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0016】
積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向に互いに隣り合う蓄電モジュール4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側と、にそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電装置1の充放電が実施される。
【0017】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば、積層方向と、正極端子6及び負極端子7の引き出し方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能のほか、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持つ。なお、図1の例では、積層方向から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さいが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくてもよい。
【0018】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10と、によって構成されている。エンドプレート8は、積層方向から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8の内側面(モジュール積層体2側の面)には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0019】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向に拘束荷重が付加される。
【0020】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。図3は、図2の部分拡大図である。図2,3に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体(積層体)11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12と、を備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して、積層方向D(第1方向)に沿って積層された複数の電極(複数のバイポーラ電極14、単一の負極終端電極(電極)18、及び、単一の正極終端電極19)を含む。ここでは、電極積層体11の積層方向Dはモジュール積層体2の積層方向と一致している。電極積層体11は、積層方向Dに延びる側面11aを有している。
【0021】
バイポーラ電極14は、積層方向Dと交差する第1面15a及び第1面15aの反対側の第2面15bを含む電極板15、第1面15aに設けられた正極16、第2面15bに設けられた負極17を含んでいる。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向Dに隣り合うさらに別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0022】
負極終端電極18は、電極板15、及び電極板15の第2面15bに設けられた負極17を含んでいる。負極終端電極18は、その第2面15bが電極積層体11の内側(積層方向Dについての中心側)になるように、積層方向Dの一端に配置されている。負極終端電極18の負極17は、セパレータ13を介して、積層方向Dの一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。正極終端電極19は、電極板15、及び電極板15の第1面15aに設けられた正極16を含んでいる。正極終端電極19は、その第1面15aが電極積層体11の内側になるように、積層方向Dの他端に配置されている。正極終端電極19の正極16は、セパレータ13を介して、積層方向Dの他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。
【0023】
負極終端電極18の電極板15の第1面15aは、電極積層体11の外側に臨む面である。負極終端電極18の第1面15aには、後述する導電性樹脂フィルム50を介して、導電板5が電気的に接続されている。また、正極終端電極19の電極板15の第2面15bには、蓄電モジュール4に隣接する別の導電板5が接触している。拘束部材3からの拘束荷重は、導電板5を介して負極終端電極18及び正極終端電極19から電極積層体11に付加される。すなわち、導電板5は、積層方向Dに沿って電極積層体11に拘束荷重を付加する拘束部材でもある。
【0024】
電極板15は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の周縁部(バイポーラ電極14、負極終端電極18、及び、正極終端電極19の周縁部)15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の第2面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の第1面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0025】
セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0026】
封止体12は、例えば絶縁性の樹脂によって、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、周縁部15cを包囲するように電極積層体11の側面11aに設けられている。封止体12は、側面11aにおいて周縁部15cを保持している。封止体12は、周縁部15cに溶着された複数の第1封止部21と、側面11aに沿って第1封止部21を外側から包囲するように第1封止部21に接合された単一の第2封止部22と、を有している。
【0027】
第1封止部21は、積層方向Dから見て、矩形環状をなし、周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられている。第1封止部21は、電極板15の第1面15aに溶着されて気密に接合されている。第1封止部21は、例えば超音波又は熱によって溶着されている。第1封止部21は所定の厚さ(積層方向Dの長さ)を有するフィルムである。電極板15の端面は、第1封止部21から露出している。第1封止部21の内側の一部は、積層方向Dに互いに隣り合う電極板15の周縁部15c同士の間に位置しており、外側の一部は、電極板15から外側に張り出している。第1封止部21は、当該外側の一部において第2封止部22に埋設されている。積層方向Dに沿って互いに隣り合う第1封止部21同士は、互いに離間している。負極終端電極18の第1面15aの周縁部には第1樹脂部21Aが溶着されている。本実施形態では、第1樹脂部21Aが1つの第1封止部21と同じ構成を備える。
【0028】
第2封止部22は、電極積層体11及び第1封止部21の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。第2封止部22は、例えば樹脂の射出成型によって形成され、積層方向Dに沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。第2封止部22は、積層方向Dを軸方向として延在する筒状(環状)を呈している。第2封止部22は、例えば、射出成型時の熱によって第1封止部21の外表面に溶着(接合)されている。
【0029】
第2封止部22は、第1封止部21と共に、積層方向Dに沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の間、積層方向Dに沿って互いに隣り合う負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、積層方向Dに沿って互いに隣り合う正極終端電極19とバイポーラ電極14との間をそれぞれ封止している。これにより、バイポーラ電極14の間、負極終端電極18とバイポーラ電極14との間、及び、正極終端電極19とバイポーラ電極14との間には、それぞれ気密に仕切られた内部空間Vが形成されている。すなわち、第1封止部21及び第2封止部22は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止するためのものである。この内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液からなる電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16及び負極17内に含浸されている。
【0030】
ここで、蓄電モジュール4は、導電性樹脂フィルム50を備える。導電性樹脂フィルム50の厚さは、例えば50~200μmである。導電性樹脂フィルム50は、積層方向Dにおける電極積層体11の一端(負極終端電極18側の端部)に設けられている。導電性樹脂フィルム50は、負極終端電極18の第1面15aに対向する第3面50aと、第3面50aの反対側の第4面50bと、を含む。導電性樹脂フィルム50の第4面50bは、導電板5に接触している。導電性樹脂フィルム50は、積層方向Dに沿って電極と共に積層されている。これにより、負極終端電極18は、積層方向Dに沿って導電性樹脂フィルム50とバイポーラ電極14との間に配置されることになる。換言すれば、蓄電モジュール4においては、負極終端電極18のさらに外側に導電性樹脂フィルム50が設けられることになる。
【0031】
導電性樹脂フィルム50は、第1樹脂部21Aに溶着されると共に負極終端電極18の第1面15aに接触している。第1樹脂部21Aは、導電性樹脂フィルム50の第3面50aの周縁部に溶着される。より具体的には、導電性樹脂フィルム50は、第1面15a上に配置されて第1樹脂部21Aに溶着された矩形環状の被溶着部52と、被溶着部52の内側において被溶着部52よりも負極終端電極18の第1面15a側に位置して(窪んで)第1面15aに接触された矩形状の被接触部53と、を含む。被溶着部52と被接触部53とは互いに連続している。
【0032】
導電性樹脂フィルム50と負極終端電極18との間(第3面50aと第1面15aとの間)には、第1樹脂部21Aの厚さ(積層方向Dに沿った長さ)に相当する余剰空間VAが形成され得るが、導電性樹脂フィルム50が被接触部53において負極終端電極18側に窪んでいることから、この余剰空間VAが狭く制限されている。
【0033】
導電性樹脂フィルム50は、例えば樹脂と導電性粒子との混合物を含む。樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、例えばPPにPPEを混合させた樹脂等の変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。導電性粒子としては、例えばカーボン粒子等が挙げられる。カーボン粒子としては、例えばカーボンブラック等が挙げられる。
【0034】
本実施形態では、導電性樹脂フィルム50の第4面50b及び第1樹脂部21Aに第2樹脂部51が溶着されている。第2樹脂部51は、積層方向Dからみて第1樹脂部21Aと略同一の形状を呈している。すなわち、第2樹脂部51は、矩形環状であり、また、所定の厚さを有するフィルムである。第2樹脂部51は、導電性樹脂フィルム50の第4面50bの周縁部から第1樹脂部21Aにわたって延在して配置されている。第2封止部22は、複数の第1封止部21、第1樹脂部21A及び第2樹脂部51を外側から包囲するように第1封止部21、第1樹脂部21A及び第2樹脂部51に接合されている。第2封止部22は、積層方向Dからみて導電性樹脂フィルム50及び第2樹脂部51に重複する重複部22Aを含むと共に、重複部22Aにおいて第2樹脂部51に溶着されている。
【0035】
第1封止部21、第1樹脂部21A及び第2樹脂部51は、例えば樹脂を含む。樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)又はポリエチレン(PE)等のポリオレフィン系樹脂、例えばPPにPPEを混合させた樹脂等の変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。第1樹脂部21A及び第2樹脂部51に含まれる樹脂は、導電性樹脂フィルム50に含まれる樹脂と相溶する。第1樹脂部21A及び第2樹脂部51に含まれる樹脂は、導電性樹脂フィルム50に含まれる樹脂と同じであってもよい。例えば、第1樹脂部21A、第2樹脂部51及び導電性樹脂フィルム50がいずれもポリプロピレンを含んでもよい。第1樹脂部21A及び第2樹脂部51に含まれる樹脂は、導電性樹脂フィルム50に含まれる樹脂と異なってもよい。例えば、第1樹脂部21A及び第2樹脂部51がポリプロピレンを含み、導電性樹脂フィルム50がポリエチレンを含んでもよい。
【0036】
第2封止部22は、例えば樹脂を含む。樹脂としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、又は例えばPPにPPEを混合させた樹脂等の変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0037】
第1面15a、第3面50a、及び、第4面50bには、第1樹脂部21A又は第2樹脂部51に溶着されるエリアが形成される。具体的には、積層方向Dからみたとき、第1面15aにおける第1樹脂部21Aに重複するエリアA1、及び、第3面50aにおける第1樹脂部21Aに重複するエリアA2は、第1樹脂部21Aに溶着されるエリアである。また、積層方向Dからみて、第4面50bにおける第2樹脂部51に重複するエリアA3は、第2樹脂部51に溶着されるエリアである。エリアA1~A3は、矩形環状である。少なくともエリアA1は粗面化されている。ここでは、第1面15aの全体が粗面化されている。
【0038】
さらに、第3面50aは、エリアA4,A5を含む。エリアA2は、導電性樹脂フィルム50の周縁部に対応する環状の外側エリアである。エリアA5は、エリアA2よりも内側に位置する内側エリアであって、第1面15aに接触されている。エリアA4は、エリアA2とエリアA5との間の中間エリアであって、エリアA5に向かうにつれて第1面15aに近接するように傾斜している。余剰空間VAは、第1樹脂部21A、第1面15a、及び、エリアA4によって形成されている。
【0039】
ここでは、第1面15aの全面が、例えば、電解メッキ処理で複数の突起が形成されることにより粗面化されている。これにより、第1面15aにおける第1樹脂部21Aとの接合界面では、溶融状態の第1樹脂部21Aが粗面化により形成された凹部内に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、互いの結合力を向上させることができる。粗面化の際に形成される突起は、例えば、基端側から先端側に向かって先太りとなる形状を有している。これにより、互いに隣接する突起の間の断面形状がアンダーカット形状となり、アンカー効果が生じ易い。
【0040】
一方、エリアA2では、第1樹脂部21Aの樹脂と導電性樹脂フィルム50の樹脂とが、溶着により一体化されている。エリアA3では、導電性樹脂フィルム50の樹脂と第2樹脂部51の樹脂とが、溶着により一体化されている。
【0041】
引き続いて、蓄電装置1の製造方法の一例について説明する。この方法では、まず、上記の蓄電モジュール4を製造する。蓄電モジュール4の製造方法は、一次成形工程と、積層工程と、二次成形工程と、注入工程と、を備える。一次成形工程では、所定数のバイポーラ電極14と負極終端電極18及び正極終端電極19を用意し、それぞれの電極板15の周縁部15cの第1面15aに第1封止部21又は第1樹脂部21Aを溶着する。また、導電性樹脂フィルム50及び第2樹脂部51を用意する。第2樹脂部51は、導電性樹脂フィルム50の第4面50bに予め溶着されてもよい。
【0042】
積層工程では、第1封止部21が電極板15の周縁部15c同士の間に配置されるようにセパレータ13を介してバイポーラ電極14、負極終端電極18、及び正極終端電極19を積層することにより、電極積層体11を形成する。また、第1樹脂部21A上に第2樹脂部51が配置されるように、導電性樹脂フィルム50を電極積層体11の一端に配置する。二次成形工程では、射出成形の金型(不図示)内に電極積層体11及び導電性樹脂フィルム50を配置した後、金型内に溶融樹脂を射出することにより、第1封止部21、第1樹脂部21A及び第2樹脂部51を包囲するように第2封止部22を形成する。これにより、電極積層体11の側面11aに封止体12が形成される。注入工程では、二次成形工程の後、バイポーラ電極14,14間の内部空間Vに電解液を注入する。これにより、蓄電モジュール4が得られる。
【0043】
続いて、蓄電モジュール4の作用・効果について説明する。図5は、比較例に係る蓄電モジュールの一部拡大断面図である。図5に示される例では、導電性樹脂フィルム50が設けられていない。このため、例えば、内圧の上昇に伴って負極終端電極18の電極板15に荷重が付加されると、当該電極板15に溶着された第1樹脂部21Aが変形するおそれがある。この場合、第1樹脂部21Aと電極板15との間に隙間が生じ、当該隙間を介して電解液Lの漏液が生じるおそれがある。
【0044】
蓄電モジュールでは、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液Lが負極終端電極18の電極板15上を伝わり、第1樹脂部21Aと電極板15との間の隙間を通って電極板15の第1面15a側に滲み出ることがある。図5には、アルカリクリープ現象における電解液Lの移動経路が矢印Aで示されている。このアルカリクリープ現象は、電気化学的な要因と流体現象等により、蓄電装置の充電時及び放電時並びに無負荷時において生じ得る。アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液Lの通り道がそれぞれ存在することにより生じる。
【0045】
これに対して、図2及び図3に示される蓄電モジュール4においては、電極積層体11の電極の間には、第1封止部21によって電解液を収容する内部空間Vが形成されている。また、電極積層体11の一端には、複数の電極のうち、電極板15の第2面15bが電極積層体11の内側になるように負極終端電極18が配置されている。負極終端電極18における電極積層体11の外側に臨む第1面15aには、第1樹脂部21Aが溶着されている。一方、電極積層体11の一端には、導電性樹脂フィルム50が設けられている。これにより、負極終端電極18は、電極のうちのバイポーラ電極14とこの導電性樹脂フィルム50と間に配置されることになる。すなわち、負極終端電極18のさらに外側に導電性樹脂フィルム50が設けられることになる。また、導電性樹脂フィルム50は、負極終端電極18の第1面15aに対向する第3面50aの周縁部において、負極終端電極18の第1面15aに溶着された第1樹脂部21Aに溶着されている。さらに、導電性樹脂フィルム50の第4面50bの周縁部は、第2樹脂部51に溶着されている。ここで、導電性樹脂フィルム50及び第1樹脂部21Aはいずれも樹脂を含むので、金属板に第1樹脂部21Aを溶着する場合に比べて、導電性樹脂フィルム50と第1樹脂部21Aとの間のシール性が高くなる。また、導電性樹脂フィルム50及び第2樹脂部51はいずれも樹脂を含むので、金属板に第2樹脂部51を溶着する場合に比べて、導電性樹脂フィルム50と第2樹脂部51との間のシール性も高くなる。その結果、電解液が、負極終端電極18の第2面15bと第1封止部21との間を通過した後、負極終端電極18の第1面15aの周縁部と第1樹脂部21Aとの間を通過してしまっても、導電性樹脂フィルム50と第1樹脂部21Aとの間を通過して蓄電モジュール4の外側に漏れ出ることを抑制できる。よって、アルカリクリープによる漏液が確実に抑制され、蓄電モジュール4の信頼性が向上される。
【0046】
また、負極終端電極18の外側にさらに導電性樹脂フィルム50が設けられることにより、電極間の内部空間Vへの外部からの水分の侵入が抑制される。よって、アルカリクリープの加速条件となる外部の湿度の影響が抑制される。さらに、負極終端電極18から外部に通じる経路上において、負極終端電極18の第1面15aと第1樹脂部21Aとの溶着箇所、導電性樹脂フィルム50の第3面50aと第1樹脂部21Aとの溶着箇所、及び、導電性樹脂フィルム50の第4面50bと第2樹脂部51との溶着箇所の少なくとも3段階のシールが形成される。よって、多段階のシールにより漏液速度が低減される。このような点からも、アルカリクリープによる漏液が確実に抑制され、蓄電モジュール4の信頼性が向上される。
【0047】
第1樹脂部21Aに含まれる樹脂が導電性樹脂フィルム50に含まれる樹脂と同じである場合、導電性樹脂フィルム50と第1樹脂部21Aとの間のシール性が更に高くなる。第2樹脂部51に含まれる樹脂が導電性樹脂フィルム50に含まれる樹脂と同じである場合、導電性樹脂フィルム50と第2樹脂部51との間のシール性が高くなる。
【0048】
導電性樹脂フィルム50、第1樹脂部21A及び第2樹脂部51のそれぞれが、ポリプロピレン及びポリエチレンのうちの少なくとも1つを含む場合、他の樹脂に比べてアルカリ溶液に対する耐性が高くなる。さらに、導電性樹脂フィルム50、第1樹脂部21A及び第2樹脂部51のそれぞれがポリプロピレンを含む場合、ポリエチレンに比べて強度が高くなる。
【0049】
導電性樹脂フィルム50がカーボン粒子を含む場合、他の導電性粒子に比べて樹脂中の分散性が高くなる。
【0050】
図4は、変形例に係る蓄電モジュールの内部構成の一部を示す概略断面図である。図4に示される蓄電モジュール4aは、第2樹脂部51を備えないこと以外は蓄電モジュール4と同じ構成を備える。よって、蓄電モジュール4aでは、導電性樹脂フィルム50の第4面50bに第2封止部22が溶着される。積層方向Dからみて、導電性樹脂フィルム50の端面は第1樹脂部21Aの外周面と一致している。
【0051】
蓄電モジュール4aにおいても蓄電モジュール4と同様の作用効果が得られる。また、導電性樹脂フィルム50及び第2封止部22がいずれも樹脂を含むので、金属板に第2封止部22を溶着する場合に比べて、導電性樹脂フィルム50と第2封止部22との間のシール性も高くなる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について詳細に説明されたが、本発明は上記実施形態に限定されない。
【符号の説明】
【0053】
4,4a…蓄電モジュール、11…電極積層体(積層体)、14…バイポーラ電極、15…電極板、15a…第1面、15b…第2面、16…正極、17…負極、18…負極終端電極、21…第1封止部(封止部)、21A…第1樹脂部(樹脂部)、50…導電性樹脂フィルム、50a…第3面、50b…第4面、V…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5