IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧 ▶ トヨタ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-蓄電モジュール 図1
  • 特許-蓄電モジュール 図2
  • 特許-蓄電モジュール 図3
  • 特許-蓄電モジュール 図4
  • 特許-蓄電モジュール 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-16
(45)【発行日】2022-03-25
(54)【発明の名称】蓄電モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/28 20060101AFI20220317BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20220317BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20220317BHJP
   H01M 50/121 20210101ALI20220317BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20220317BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20220317BHJP
【FI】
H01M10/28 Z
H01M4/24 Z
H01M50/103
H01M50/121
H01M50/184 A
H01M50/186
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018228027
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020091992
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-01-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100180851
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼口 誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 知広
(72)【発明者】
【氏名】弘瀬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 伸烈
(72)【発明者】
【氏名】奥村 素宜
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-067382(JP,A)
【文献】特開2018-133323(JP,A)
【文献】特開2018-133201(JP,A)
【文献】特開2018-125142(JP,A)
【文献】特開2018-133207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/04-39
H01M 4/02-70
H01M 50/10-198
H01G 11/00-86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の面に正極活物質が塗工され、一方の面とは反対側の他方の面に負極活物質が塗工された金属板からなるバイポーラ電極、及び前記バイポーラ電極の金属板の一方の面又は他方の面における周縁部に溶着される枠状の樹脂部材を有するバイポーラ電極ユニットと、
一方の面に負極活物質が塗工された金属板からなる負極終端電極、前記負極終端電極の金属板において前記負極活物質が塗工されていない他方の面に対向して配置され、活物質が塗工されていない未塗工の金属板、前記負極終端電極の金属板の周縁部と前記未塗工の金属板の周縁部とに溶着される枠状の樹脂部材、及び前記未塗工の金属板において前記負極終端電極に対向する一方の面とは反対側の他方の面における周縁部に溶着される枠状の樹脂部材を有する負極終端電極ユニットと、を備え、
前記負極終端電極ユニットは、一方向に沿って積層された複数の前記バイポーラ電極ユニットからなるバイポーラ電極ユニット群の前記一方向における一端において、前記負極終端電極の負極活物質が前記バイポーラ電極ユニット群と対向するように配置され、
前記バイポーラ電極の金属板、前記負極終端電極の金属板、及び前記バイポーラ電極ユニットの樹脂部材によって形成された内部空間にはアルカリ溶液を含む電解液が収容され、
前記負極終端電極の金属板の剛性は、前記バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きい、蓄電モジュール。
【請求項2】
一方の面に正極活物質が塗工された金属板からなる正極終端電極、及び前記正極終端電極の金属板の一方の面及び他方の面における周縁部に溶着される枠状の樹脂部材を有する正極終端電極ユニットを更に備え、
前記正極終端電極ユニットは、前記バイポーラ電極ユニット群の前記一方向における他端において、前記正極終端電極の正極活物質が前記バイポーラ電極ユニット群と対向するように配置され、
前記正極終端電極の金属板の剛性は、前記バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きい、請求項1に記載の蓄電モジュール。
【請求項3】
前記未塗工の金属板の剛性は、前記バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きい、請求項1又は2に記載の蓄電モジュール。
【請求項4】
金属板の剛性は、金属板の厚みを調整することによって設定されている、請求項1~3の何れか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項5】
金属板の剛性は、金属板のヤング率を調整することによって設定されている、請求項1~3の何れか一項に記載の蓄電モジュール。
【請求項6】
金属板の剛性は、金属板の引張強度を調整することによって設定されている、請求項1~3の何れか一項に記載の蓄電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の蓄電モジュールとして、両面に正極層及び負極層がそれぞれ形成された電極板からなる複数のバイポーラ電極と、負極層が形成された電極板からなる負極終端電極と、を備えるバイポーラ電池が知られている(特許文献1参照)。このような蓄電モジュールは、バイポーラ電極の電極板の一方の面における周縁部に設けられた封止体をバイポーラ電極と一体的に構成したバイポーラ電極ユニットと、負極終端電極の電極板の一方の面における周縁部に設けられた封止体を負極終端電極と一体的に構成した負極終端電極ユニットをそれぞれ製造し、これらを積層することによって組み立てられる。隣り合う電極間は、封止体により封止されており、電極間に形成された内部空間に電解液が収容されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-204386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような蓄電モジュールでは、電解液がアルカリ溶液からなる場合、いわゆるアルカリクリープ現象により、電解液が負極終端電極の電極板の表面を伝わり、封止体と当該電極板との間を通って当該電極板の外面側に滲み出ることがある。電解液が外面側に漏れ出て拡散すると、例えば負極終端電極の外側に隣接して配置された導電板の腐食、負極終端電極と拘束部材との間の短絡等が生じるおそれがあり、信頼性の観点から好ましくない。
【0005】
そこで、負極終端電極の外側に例えば未塗工の金属板を設け、負極終端電極と未塗工の金属板との間、及び未塗工の金属板の負極終端電極とは反対側に封止体を溶着することによって負極終端電極と未塗工の金属板との間に余剰空間を形成し、外部空間の湿度の影響によるアルカリクリープの進行を抑制することが考えられる。このような未塗工の金属板を設ける場合も、封止体及び未塗工の金属板を負極終端電極と一体的に構成した負極終端電極ユニットを形成することが考えられる。
【0006】
このような場合、負極終端電極及び未塗工の金属板に封止体を溶着するときに、当該封止体に対して入力されるエネルギの量が、バイポーラ電極の電極板の一方の面のみに封止体を溶着する場合に比べて大きくなって封止体の溶融量が増加するおそれがある。封止体の溶融量が増加すると固化時における熱収縮量も増加する。これに伴ってその収縮力も大きくなるため、バイポーラ電極ユニットの電極板に比べて負極終端電極の電極板にしわが生じ易くなる。このようなしわの発生は、電極板と封止体との溶着度合の脆弱性につながり、信頼性の観点から好ましくない。
【0007】
本発明は、信頼性が向上された蓄電モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る蓄電モジュールは、一方の面に正極活物質が塗工され、一方の面とは反対側の他方の面に負極活物質が塗工された金属板からなるバイポーラ電極、及びバイポーラ電極の金属板の一方の面又は他方の面における周縁部に溶着される枠状の樹脂部材を有するバイポーラ電極ユニットと、一方の面に負極活物質が塗工された金属板からなる負極終端電極、負極終端電極の金属板において負極活物質が塗工されていない他方の面に対向して配置され、活物質が塗工されていない未塗工の金属板、負極終端電極の金属板の周縁部と未塗工の金属板の周縁部とに溶着される枠状の樹脂部材、及び未塗工の金属板において負極終端電極に対向する一方の面とは反対側の他方の面における周縁部に溶着される枠状の樹脂部材を有する負極終端電極ユニットと、を備え、負極終端電極ユニットは、一方向に沿って積層された複数のバイポーラ電極ユニットからなるバイポーラ電極ユニット群の一方向における一端において、負極終端電極の負極活物質がバイポーラ電極ユニット群と対向するように配置され、バイポーラ電極の金属板、負極終端電極の金属板、及びバイポーラ電極ユニットの樹脂部材によって形成された内部空間にはアルカリ溶液を含む電解液が収容され、負極終端電極の金属板の剛性は、バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きい。
【0009】
この蓄電モジュールでは、負極終端電極の金属板に対向して未塗工の金属板を配置することにより、電解液の移動経路となり得る経路上に余剰空間が形成されている。このような構成では、アルカリクリープ現象によって電解液が滲み出す起点となる負極終端電極の金属板との間の隙間に、外部の空気中に含まれる水分が入り込むことを抑制することができる。これにより、アルカリクリープ現象の加速条件となる外部の湿度の影響を抑制することができ、電解液が蓄電モジュールの外部に滲み出ることを抑制することができる。更にこの蓄電モジュールでは、未塗工の金属板を含んで負極終端電極ユニットを構成するために、負極終端電極の金属板及び未塗工の金属板に樹脂部材が溶着されるだけでなく、未塗工の金属板の他方の面にも樹脂部材が溶着される。このような構成の負極終端電極ユニットを形成する場合には、バイポーラ電極の金属板の一方の面又は他方の面に樹脂部材を溶着する場合に比べて、樹脂部材に対して入力されるエネルギの量が大きくなるので、上述したように、負極終端電極の金属板にしわが生じ易くなるという問題が生じる。そこで、この蓄電モジュールでは、負極終端電極の金属板の剛性を、バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きくしている。これにより、負極終端電極の樹脂部材に対して入力されるエネルギの量が大きくなったとしても、負極終端電極の金属板にしわが生じることが抑制される。以上により、蓄電モジュールの信頼性を向上することができる。
【0010】
本発明に係る蓄電モジュールは、一方の面に正極活物質が塗工された金属板からなる正極終端電極、及び正極終端電極の金属板の一方の面及び他方の面における周縁部に溶着される枠状の樹脂部材を有する正極終端電極ユニットを更に備え、正極終端電極ユニットは、バイポーラ電極ユニット群の一方向における他端において、正極終端電極の正極活物質がバイポーラ電極ユニット群と対向するように配置され、正極終端電極の金属板の剛性は、バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きくてもよい。
【0011】
この蓄電モジュールでは、例えば内部空間の内圧が上昇した場合、バイポーラ電極では、一方向に隣り合う内部空間の内圧による荷重がキャンセルされるものの、バイポーラ電極ユニット群の他端に設けられた正極終端電極では、内部空間の内圧による荷重はキャンセルされない。このため、内圧が上昇した場合に正極終端電極が変形し、正極終端電極ユニット側における電解液の漏液及び破損が生じるおそれがある。そこで、この蓄電モジュールでは、正極終端電極ユニットを、金属板の一方の面及び他方の面の両方に樹脂部材を溶着している。このような構成では、内部空間の内圧が上昇した場合、例えば金属板の一方の面又は他方の面のみに樹脂部材が溶着されている場合に比べて、正極終端電極が変形しにくくなる。これにより、正極終端電極ユニット側における電解液の漏液及び破損を抑制することができる。
【0012】
一方、このような構成の正極終端電極ユニットを形成する場合には、バイポーラ電極の金属板の一方の面又は他方の面に樹脂部材を溶着する場合に比べて、樹脂部材に対して入力されるエネルギの量が大きくなるので、負極終端電極の金属板と同様に、正極終端電極の金属板にしわが生じ易くなるという問題が生じる。そこで、この蓄電モジュールでは、正極終端電極の金属板の剛性を、バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きくしている。これにより、正極終端電極の樹脂部材に対して入力されるエネルギの量が大きくなったとしても、正極終端電極の金属板にしわが生じることが抑制される。以上により、蓄電モジュールの信頼性を向上することができる。
【0013】
本発明に係る蓄電モジュールでは、未塗工の金属板の剛性は、バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きくてもよい。この蓄電モジュールの負極終端電極ユニットでは、負極終端電極の金属板及び未塗工の金属板に樹脂部材が溶着され、さらに未塗工の金属板の他方の面にも樹脂部材が溶着されている。このような構成の負極終端電極ユニットを形成する場合には、バイポーラ電極の金属板の一方の面又は他方の面に樹脂部材を溶着する場合に比べて、樹脂部材に対して入力されるエネルギの量が大きくなるので、負極終端電極の金属板と同様に、未塗工の金属板にしわが生じ易くなるという問題が生じる。そこで、この蓄電モジュールでは、未塗工の金属板の剛性を、バイポーラ電極の金属板の剛性よりも大きくしている。これにより、未塗工の金属板の樹脂部材に対して入力されるエネルギの量が大きくなったとしても、未塗工の金属板にしわが生じることが抑制される。以上により、蓄電モジュールの信頼性を向上することができる。
【0014】
本発明に係る蓄電モジュールでは、金属板の剛性は、金属板の厚みを調整することによって設定されていてもよい。この場合、金属板の剛性を容易に設定することができる。
【0015】
本発明に係る蓄電モジュールでは、金属板の剛性は、金属板のヤング率を調整することによって設定されていてもよい。この場合、金属板の剛性を容易に設定することができる。
【0016】
本発明に係る蓄電モジュールでは、金属板の剛性は、金属板の引張強度を調整することによって設定されていてもよい。この場合、金属板の剛性を容易に設定することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、信頼性が向上された蓄電モジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、蓄電装置の一実施形態を示す概略断面図である。
図2図2は、図1に示された蓄電モジュールの内部構成を示す概略断面図である。
図3図3は、図2の蓄電モジュールのバイポーラ電極ユニット、負極終端電極ユニット及び正極終端電極ユニットを示す断面図である。
図4図4は、図2の蓄電モジュールの一部を示す拡大断面図である。
図5図5は、比較例に係る蓄電モジュールの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る蓄電モジュールを備える蓄電装置について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1に示される蓄電装置1は、例えばフォークリフト、ハイブリッド自動車、電気自動車等の各種車両のバッテリとして用いられる。蓄電装置1は、積層された複数の蓄電モジュール4を含むモジュール積層体2と、モジュール積層体2に対してモジュール積層体2の積層方向D1に拘束荷重を付加する拘束部材3とを備えている。
【0021】
モジュール積層体2は、複数(ここでは3つ)の蓄電モジュール4と、複数(ここでは4つ)の導電板5とを含む。蓄電モジュール4は、バイポーラ電池であり、積層方向D1から見て矩形状をなしている。蓄電モジュール4は、例えばニッケル水素二次電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池、又は電気二重層キャパシタ等である。以下の説明では、ニッケル水素二次電池を例示する。
【0022】
積層方向D1に互いに隣り合う蓄電モジュール4,4同士は、導電板5を介して電気的に接続されている。導電板5は、積層方向D1に互いに隣り合う蓄電モジュール4,4間と、積層端に位置する蓄電モジュール4の外側とにそれぞれ配置されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された一方の導電板5には、正極端子6が接続されている。積層端に位置する蓄電モジュール4の外側に配置された他方の導電板5には、負極端子7が接続されている。正極端子6及び負極端子7は、例えば導電板5の縁部から積層方向D1に交差する方向に引き出されている。正極端子6及び負極端子7により、蓄電モジュール4の充放電が実施される。
【0023】
導電板5の内部には、空気等の冷媒を流通させる複数の流路5aが設けられている。流路5aは、例えば積層方向D1と、正極端子6及び負極端子7の引出方向と、にそれぞれ交差(直交)する方向に沿って延在している。導電板5は、蓄電モジュール4同士を電気的に接続する接続部材としての機能の他、これらの流路5aに冷媒を流通させることにより、蓄電モジュール4で発生した熱を放熱する放熱板としての機能を併せ持っている。なお、図1の例では、積層方向D1から見た導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積よりも小さくなっているが、放熱性の向上の観点から、導電板5の面積は、蓄電モジュール4の面積と同じであってもよく、蓄電モジュール4の面積よりも大きくなっていてもよい。
【0024】
拘束部材3は、モジュール積層体2を積層方向D1に挟む一対のエンドプレート8と、エンドプレート8同士を締結する締結ボルト9及びナット10とによって構成されている。エンドプレート8は、積層方向D1から見た蓄電モジュール4及び導電板5の面積よりも一回り大きい面積を有する矩形の金属板である。エンドプレート8におけるモジュール積層体2側の面には、電気絶縁性を有するフィルムFが設けられている。フィルムFにより、エンドプレート8と導電板5との間が絶縁されている。
【0025】
エンドプレート8の縁部には、モジュール積層体2よりも外側となる位置に挿通孔8aが設けられている。締結ボルト9は、一方のエンドプレート8の挿通孔8aから他方のエンドプレート8の挿通孔8aに向かって通され、他方のエンドプレート8の挿通孔8aから突出した締結ボルト9の先端部分には、ナット10が螺合されている。これにより、蓄電モジュール4及び導電板5がエンドプレート8によって挟持されてモジュール積層体2としてユニット化されると共に、モジュール積層体2に対して積層方向D1に拘束荷重が付加される。
【0026】
次に、蓄電モジュール4の構成について詳細に説明する。図2に示されるように、蓄電モジュール4は、電極積層体11と、電極積層体11を封止する樹脂製の封止体12とを備えている。電極積層体11は、セパレータ13を介して蓄電モジュール4の積層方向(一方向)D1に沿って積層された複数の電極ユニットによって構成されている。これらの電極ユニットは、複数のバイポーラ電極ユニット31と、一つの負極終端電極ユニット32と、一つの正極終端電極ユニット33と、を含む。
【0027】
図2図4に示されるように、バイポーラ電極ユニット31は、バイポーラ電極14と、樹脂枠(樹脂部材)21と、を有している。バイポーラ電極14は、第1の面(バイポーラ電極14の電極板15の一方の面)15a及び第1の面15aの反対側の第2の面(バイポーラ電極14の電極板15の他方の面)15bを含む電極板(金属板)15と、第1の面15aに設けられた正極16と、第2の面15bに設けられた負極17とを有している。正極16は、正極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される正極活物質層である。負極17は、負極活物質が電極板15に塗工されることにより形成される負極活物質層である。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の正極16は、セパレータ13を挟んで積層方向D1の一方に隣り合う別のバイポーラ電極14の負極17と対向している。電極積層体11において、一のバイポーラ電極14の負極17は、セパレータ13を挟んで積層方向D1の他方に隣り合う別のバイポーラ電極14の正極16と対向している。
【0028】
樹脂枠21は、電極板15の第1の面15aにおいて周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向D1から見て矩形環状(枠状)をなしている。樹脂枠21は、例えば超音波又は熱(エネルギ)によって電極板15の第1の面15aに溶着され、気密に接合されている。樹脂枠21は、例えば積層方向D1に所定の厚さを有するフィルムである。樹脂枠21の内側は、積層方向D1に互いに隣り合う電極板15の周縁部15c同士の間に位置している。樹脂枠21の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、封止体12に埋設されている。複数のバイポーラ電極ユニット31は、セパレータ13を介して積層方向D1に沿って積層され、バイポーラ電極ユニット群30を構成する。なお、内側とは、積層方向D1から見て、蓄電モジュール4の中心の側をいう。外側とは、積層方向D1から見て、蓄電モジュール4の中心から遠ざかる側をいう。
【0029】
負極終端電極ユニット32は、負極終端電極18と、金属板(未塗工の金属板)20と、樹脂枠(樹脂部材)22と、樹脂枠(樹脂部材)23と、を有している。負極終端電極18は、電極板15と、電極板15の第2の面(負極終端電極18の電極板15の一方の面)15bに設けられた負極17とを有している。負極終端電極18は、バイポーラ電極ユニット群30の積層方向D1における一端において、負極終端電極18の負極17がバイポーラ電極ユニット群30と対向するように配置されている。負極終端電極18の電極板15の第2の面15bに設けられた負極17は、セパレータ13を介して積層方向D1の一端のバイポーラ電極14の正極16と対向している。負極終端電極18の電極板15の第1の面(負極終端電極18の電極板15の他方の面)15aには、活物質が塗工されていない。
【0030】
金属板20は、負極終端電極18の電極板15に対して積層方向D1の外側に配置されている。金属板20は、負極終端電極18の電極板15の第1の面15aに対向して配置されている。金属板20は、負極終端電極18の電極板15の第1の面15aに対向する一方の面20a及び一方の面20aの反対側の他方の面20bを有している。金属板20の一方の面20a及び他方の面20bには、正極活物質及び負極活物質が塗工されておらず、一方の面20a及び他方の面20bの全面が未塗工領域となっている。すなわち、本実施形態において、金属板20は正極16及び負極17のいずれも設けられていない未塗工の金属板である。なお、図2図3及び図4では、説明の便宜のため、断面視において直線状の金属板20を示しているが、導電板5を介して蓄電モジュール4が積層された場合には、金属板20は隣り合う電極板15側に接触して電気的に接続された状態となる。
【0031】
樹脂枠22は、負極終端電極18の電極板15の周縁部15cと金属板20の周縁部20cとの間において周縁部15c及び周縁部20cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向D1から見て矩形環状(枠状)をなしている。樹脂枠22は、例えば超音波又は熱によって電極板15の第1の面15a及び金属板20の一方の面20aに溶着され、気密に接合されている。負極終端電極18の電極板15と金属板20と樹脂枠22とによって、後述する電解液が収容されていない余剰空間VAが形成される。樹脂枠22は、例えば積層方向D1に所定の厚さを有するフィルムである。樹脂枠22の内側は、積層方向D1に互いに隣り合う電極板15の周縁部15c及び金属板20の周縁部20cの間に位置している。樹脂枠21の外側は、電極板15及び金属板20の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、封止体12に埋設されている。
【0032】
樹脂枠23は、金属板20の他方の面20bにおいて周縁部20cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向D1から見て矩形環状(枠状)をなしている。樹脂枠23は、例えば超音波又は熱によって金属板20の他方の面20bに溶着され、気密に接合されている。樹脂枠23は、例えば積層方向D1に所定の厚さを有するフィルムである。樹脂枠23の外側は、金属板20の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、封止体12に埋設されている。
【0033】
正極終端電極ユニット33は、正極終端電極19と、樹脂枠(樹脂部材)24と、樹脂枠(樹脂部材)25と、を有している。正極終端電極19は、電極板15と、電極板15の第1の面(正極終端電極19の電極板15の一方の面)15aに設けられた正極16とを有している。正極終端電極19は、バイポーラ電極ユニット群30の積層方向D1における他端において、正極終端電極19の正極16がバイポーラ電極ユニット群30と対向するように配置されている。正極終端電極19の電極板15の第1の面15aに設けられた正極16は、セパレータ13を介して積層方向D1の他端のバイポーラ電極14の負極17と対向している。正極終端電極19の電極板15の第2の面(正極終端電極19の電極板15の他方の面)15bには、活物質が塗工されていない。
【0034】
樹脂枠24は、電極板15の第1の面15aにおいて周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向D1から見て矩形環状をなしている。樹脂枠24は、例えば超音波又は熱によって電極板15の第1の面15aに溶着され、気密に接合されている。樹脂枠24は、例えば積層方向D1に所定の厚さを有するフィルムである。樹脂枠24の内側は、積層方向D1に互いに隣り合う電極板15の周縁部15c同士の間に位置している。樹脂枠24の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、封止体12に埋設されている。
【0035】
樹脂枠25は、電極板15の第2の面15bにおいて周縁部15cの全周にわたって連続的に設けられ、積層方向D1から見て矩形環状をなしている。樹脂枠25は、例えば超音波又は熱によって電極板15の第2の面15bに溶着され、気密に接合されている。樹脂枠25は、例えば積層方向D1に所定の厚さを有するフィルムである。樹脂枠25の外側は、電極板15の縁よりも外側に張り出しており、その先端部分は、封止体12に埋設されている。積層方向D1に沿って互いに隣り合う樹脂枠21,22,23,24,25同士は、互いに離間していてもよく、接していてもよい。
【0036】
バイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19を形成する電極板15、並びに、金属板20は、例えば、ニッケル又はニッケルメッキ鋼板といった金属からなる。一例として、電極板15及び金属板20は、ニッケルからなる矩形の金属箔である。電極板15の周縁部15cは、矩形枠状をなし、正極活物質及び負極活物質が塗工されない未塗工領域となっている。正極16を構成する正極活物質としては、例えば水酸化ニッケルが挙げられる。負極17を構成する負極活物質としては、例えば水素吸蔵合金が挙げられる。本実施形態では、電極板15の第2の面15bにおける負極17の形成領域は、電極板15の第1の面15aにおける正極16の形成領域に対して一回り大きくなっている。
【0037】
バイポーラ電極14、負極終端電極18及び正極終端電極19を形成する電極板15の第1の面15aにおける周縁部15cと樹脂枠21,22,24のそれぞれとが重なる領域は、粗面化されている。粗面化された領域は、当該重なる領域でもよいが、本実施形態では電極板15の第1の面15aの全体(周縁部15cから中央部にわたる全面)が粗面化されている。
【0038】
金属板20の一方の面20aにおける周縁部20cと樹脂枠22とが重なる領域は、粗面化されている。粗面化された領域は、当該重なる領域でもよいが、本実施形態では金属板20の一方の面20aの全体(周縁部20cから中央部にわたる全面)が粗面化されている。金属板20の他方の面20bにおける周縁部20cと樹脂枠23とが重なる領域は、粗面化されている。粗面化された領域は、当該重なる領域でもよいが、本実施形態では金属板20の他方の面20bの全体(周縁部20cから中央部にわたる全面)が粗面化されている。
【0039】
上記粗面化は、例えば電解メッキによる複数の突起が形成されたメッキ層により実現し得る。すなわち、電極板15の第1の面15a、電極板15の第2の面15b、金属板20の一方の面20a、及び金属板20の他方の面20bにメッキ層が形成されることにより、それぞれの面における各樹脂枠との接合界面では、溶融状態の樹脂が粗面化により形成された複数の突起間に入り込み、アンカー効果が発揮される。これにより、電極板15及び金属板20と各樹脂枠との間の結合強度を向上させることができる。
【0040】
負極終端電極18の電極板15の剛性は、バイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きい。電極板15の剛性は、電極板15の厚みを調整することによって設定されている。つまり、負極終端電極18の電極板15の厚みは、バイポーラ電極14の電極板15の厚みよりも大きい。例えば、負極終端電極18の電極板15の厚みは、バイポーラ電極14の電極板15の厚みの1.2倍~3倍となるように形成されている。
【0041】
金属板20の剛性は、バイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きい。金属板20剛性は、金属板20の厚みを調整することによって設定されている。つまり、金属板20の厚みは、バイポーラ電極14の電極板15の厚みよりも大きい。例えば、金属板20の厚みは、バイポーラ電極14の電極板15の厚みの1.2倍~3倍となるように形成されている。
【0042】
正極終端電極19の電極板15の剛性は、バイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きい。電極板15の剛性は、電極板15の厚みを調整することによって設定される。つまり、正極終端電極19の電極板15の厚みは、バイポーラ電極14の電極板15の厚みよりも大きい。例えば、正極終端電極19の電極板15の厚みは、バイポーラ電極14の電極板15の厚みの1.2倍~3倍となるように形成されている。
【0043】
セパレータ13は、電極板15,15間の短絡を防止する部材である。セパレータ13は、例えばシート状に形成されている。セパレータ13としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂からなる多孔質フィルム、ポリプロピレン、ポリプロピレン、メチルセルロース等からなる織布又は不織布等が例示される。セパレータ13は、フッ化ビニリデン樹脂化合物で補強されたものであってもよい。なお、セパレータ13は、シート状に限られず、袋状のものを用いてもよい。
【0044】
封止体12は、全体として矩形の筒状に形成されている。封止体12は、電極積層体11を包囲するように電極積層体11の側面に設けられている。封止体12は、当該側面において電極板15の周縁部15cを保持している。封止体12は、上記側面に沿って各樹脂枠21,22,23,24,25を外側から包囲し、各樹脂枠21,22,23,24,25のそれぞれに結合された封止部26を含んでいる。
【0045】
封止部26は、電極積層体11の外側に設けられ、蓄電モジュール4の外壁(筐体)を構成している。封止部26は、例えば樹脂の射出成形によって形成され、積層方向D1に沿って電極積層体11の全長にわたって延在している。封止部26は、積層方向D1を軸方向として延在する矩形の筒状(環状)を呈している。封止部26は、例えば射出成形時の熱によって各樹脂枠21,22,23,24,25の外表面に溶着されている。各樹脂枠21,22,23,24,25及び封止部26は、例えば、耐アルカリ性を有する絶縁性の樹脂である。各樹脂枠21,22,23,24,25及び封止部26の構成材料としては、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE)等が挙げられる。
【0046】
樹脂枠21,24及び封止部26は、隣り合う電極の間に内部空間Vを形成すると共に内部空間Vを封止する。より具体的には、封止部26は、積層方向D1に沿って互いに隣り合うバイポーラ電極14の電極板15、及び樹脂枠21によって形成された内部空間Vを封止する。封止部26は、積層方向D1に沿って互いに隣り合う負極終端電極18の電極板15及びバイポーラ電極14の電極板15、並びに樹脂枠21によって形成された内部空間Vを封止する。封止部26は、積層方向D1に沿って互いに隣り合う正極終端電極19の電極板15及びバイポーラ電極14の電極板15、並びに樹脂枠24によって形成された内部空間Vを封止する。各内部空間Vは、気密に仕切られている。各内部空間Vには、例えば水酸化カリウム水溶液等のアルカリ溶液を含む電解液(不図示)が収容されている。電解液は、セパレータ13、正極16、及び負極17内に含浸されている。
【0047】
次に、図5を参照して本実施形態に係る蓄電モジュール4の作用効果について説明する。図5は、比較例に係る蓄電モジュールの要部拡大断面図である。図5に示されるように、比較例に係る蓄電モジュール100は、金属板20及び樹脂枠23を備えていない点において本実施形態に係る蓄電モジュール4と相違している。
【0048】
蓄電モジュール100では、いわゆるアルカリクリープ現象により、内部空間Vに存在する電解液が負極終端電極18の電極板15の表面を伝わり、電極板15と樹脂枠22との間の隙間を通って電極板15の第1の面15a側に滲み出ることがある。図5には、アルカリクリープ現象における電解液Lの移動経路を矢印Aで示す。このアルカリクリープ現象は、電気化学的な要因及び流体現象などにより、蓄電モジュールの充電時及び放電時並びに無負荷時において生じ得る。アルカリクリープ現象は、負極電位、水分、及び電解液Lの通り道がそれぞれ存在することにより生じ、時間の経過とともに進行する。
【0049】
これに対し、本実施形態に係る蓄電モジュール4では、図4に示されるように、負極終端電極ユニット32は、金属板20を有し、樹脂枠22と負極終端電極18の電極板15と金属板20とによって、余剰空間VAが形成されている。余剰空間VAは、アルカリクリープ現象による電解液の移動経路となり得る経路上に設けられている。したがって、電解液が滲み出す起点となる負極終端電極18の電極板15とバイポーラ電極14の樹脂枠21との間の隙間に、外部の空気中に含まれる水分が入り込むことを抑制することができる。これにより、アルカリクリープ現象の加速条件となる外部の湿度の影響を抑制することができ、電解液が蓄電モジュール4の外部に滲み出ることを抑制することができる。
【0050】
しかも、樹脂枠22は、負極終端電極18の電極板15及び金属板20に溶着されている。これにより、内部空間Vに存在する電解液が負極終端電極18の電極板15の表面を伝わり、電極板15と樹脂枠22との間の隙間を通って電極板15の第1の面15a側に滲み出ること、及び、電解液が金属板20の表面を伝わり、金属板20と樹脂枠22との間の隙間を通って金属板20の他方の面20b側に滲み出ることを抑制することができる。また、負極終端電極18の電極板15と樹脂枠22との溶着、及び、金属板20と樹脂枠22との溶着が互いに補強されるため、上述したように、電解液が負極終端電極18の電極板15の第1の面15a側に滲み出ること、及び、金属板20の他方の面20b側に滲み出ることを抑制することができる。
【0051】
さらに、樹脂枠23が金属板20の他方の面20bに溶着されているため、電解液が金属板20の表面を伝わり、金属板20と樹脂枠23との間の隙間を通って金属板20の他方の面20b側に滲み出ることを抑制することができる。
【0052】
負極終端電極ユニット32では、樹脂枠22が負極終端電極18の電極板15及び金属板20の両方に溶着されている。さらに、金属板20には樹脂枠23が溶着されている。このため、樹脂枠22及び樹脂枠23を溶着するときに、樹脂枠22及び樹脂枠23に対して入力されるエネルギの量が、電極板15の第1の面15aのみに溶着されたバイポーラ電極ユニット31の樹脂枠21に比べて大きくなるおそれがある。入力されるエネルギの量が大きいとは、例えば溶着温度が高いこと又は溶着時間が長いことをいう。
【0053】
具体的には、バイポーラ電極ユニット31においては、樹脂枠21は以下のように溶着される場合がある。すなわち、樹脂枠21を電極板15の第1の面15aに配置した後、電極板15の第2の面15bからエネルギ(超音波又は熱)を入力することにより、樹脂枠21を電極板15に溶着する。これに対して、負極終端電極ユニット32においては、樹脂枠22及び樹脂枠23は以下のように溶着される場合がある。すなわち、まず、樹脂枠21と同様に、樹脂枠22を電極板15に溶着する。その後、金属板20を樹脂枠22上に配置すると共に樹脂枠23を金属板20の他方の面20bに配置し、樹脂枠23の金属板20とは反対側からエネルギを入力することにより、樹脂枠22及び樹脂枠23を金属板20に溶着する。
【0054】
このような場合に、樹脂枠22は、電極板15の第2の面15bから伝わったエネルギ、及び樹脂枠23及び金属板20を介して伝わったエネルギの両方によって、電極板15及び金属板20に溶着されることとなる。また、樹脂枠23は、樹脂枠23を介して伝わったエネルギによって金属板20に溶着されることとなる。したがって、樹脂枠22及び樹脂枠23に対して入力されるエネルギの量は、電極板15のみを介して伝わったエネルギによって電極板15に溶着される樹脂枠21に比べて、大きくなる。なお、樹脂枠22を負極終端電極18の電極板15と金属板20との間に配置し、電極板15の第2の面15b及び金属板20の他方の面20bからエネルギを入力することにより、樹脂枠22を電極板15及び金属板20に溶着した後、樹脂枠23を金属板20の他方の面20bに配置し、樹脂枠23の金属板20とは反対側からエネルギを入力することにより、樹脂枠23を金属板20に溶着することも考えられるが、上記と同様に、樹脂枠22及び樹脂枠23に対して入力されるエネルギの量が大きくなる。
【0055】
樹脂枠22及び樹脂枠23に対して入力されるエネルギ量が大きくなると、樹脂枠22及び樹脂枠23の溶融量が増加し熱収縮量が増加する。これに伴ってその収縮力も大きくなるため、バイポーラ電極14の電極板15に比べて負極終端電極18の電極板15及び金属板20にしわが生じ易くなる。そこで、本実施形態の蓄電モジュール4では、負極終端電極18の電極板15の剛性及び金属板20の剛性を、バイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きくしている。これにより、負極終端電極18の電極板15及び金属板20に樹脂枠22及び樹脂枠23を溶着するときに、樹脂枠22及び樹脂枠23に対して入力されるエネルギの量が、バイポーラ電極ユニット31の樹脂枠21に比べて大きくなって、樹脂枠22及び樹脂枠23の溶融量が増加した結果、固化時における熱収縮量が増加したとしても、その収縮力によって負極終端電極18の電極板15及び金属板20にしわが生じることが抑制される。これにより、蓄電モジュール4の信頼性を向上することができる。
【0056】
また、蓄電モジュール4では、使用条件等により内部空間Vの内圧が上昇した場合、バイポーラ電極14では、積層方向D1に隣り合う内部空間Vの内圧による荷重がキャンセルされる。また、内部空間V自体も僅かな空間であるため、バイポーラ電極14の変形は比較的生じ難い。一方、例えば、電極積層体11の積層端に位置する正極終端電極19では、バイポーラ電極14とは異なり、内部空間Vの内圧による荷重はキャンセルされない。このため、内圧が上昇した場合に正極終端電極19が積層方向D1の外側に変形することが考えられる。正極終端電極19に変形が生じると、正極終端電極19に結合された各部材に過大な応力がかかり、各部材が破断したり、正極終端電極19との間に隙間が生じたりするおそれがある。各部材の破断や正極終端電極19との間の隙間の形成は、蓄電モジュール4の外部への電解液(不図示)の漏出の原因となり得る。
【0057】
そこで、正極終端電極19は、電極板15の第1の面15a及び第2の面15bにそれぞれ溶着された樹脂枠24及び樹脂枠25と一体的に構成されている。このような構成では、内部空間Vの内圧が上昇した場合、例えば電極板15の第1の面15aのみに樹脂枠24が溶着されている場合に比べて、正極終端電極19が変形しにくくなる。これにより、正極終端電極19側における電解液の漏液や破損(例えば樹脂枠24の破損)が抑制される。
【0058】
正極終端電極ユニット33では、電極板15の第1の面15aに樹脂枠24が溶着され、且つ、第2の面15bに樹脂枠25が溶着されている。このため、樹脂枠24及び樹脂枠25を溶着するときに、樹脂枠24又は樹脂枠25に対して入力されるエネルギの量が、電極板15の第1の面15aのみに溶着されたバイポーラ電極ユニット31の樹脂枠21に比べて大きくなるおそれがある。
【0059】
具体的には、正極終端電極ユニット33においては、樹脂枠24及び樹脂枠25は以下のように溶着される場合がある。すなわち、まず、例えば樹脂枠24を電極板15の第1の面15aに配置し、電極板15の第2の面15bからエネルギを入力することにより、樹脂枠24を電極板15に溶着した後、樹脂枠25を電極板15の第2の面15bに配置し、樹脂枠25の電極板15とは反対側からからエネルギを入力することにより、樹脂枠25を電極板15に溶着する。このような場合に、樹脂枠25は、樹脂枠25を介して伝わったエネルギによって電極板15に溶着されることとなる。したがって、樹脂枠25に対して入力されるエネルギの量は、電極板15のみを介して伝わったエネルギによって電極板15に溶着される樹脂枠21に比べて、大きくなる。同様に、樹脂枠25を電極板15に溶着した後、樹脂枠24の電極板15とは反対側からからエネルギを入力することにより、樹脂枠24を電極板15に溶着する場合においても、樹脂枠24に対して入力されるエネルギの量が大きくなる。
【0060】
樹脂枠24又は樹脂枠25に対して入力されるエネルギ量が大きくなると、樹脂枠24又は樹脂枠25の溶融量が増加し熱収縮量が増加する。これに伴ってその収縮力も大きくなるため、バイポーラ電極14の電極板15に比べて正極終端電極19の電極板15にしわが生じ易くなる。そこで、本実施形態の蓄電モジュール4では、正極終端電極19の電極板の剛性を、バイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きくしている。これにより、樹脂枠24又は樹脂枠25に対して入力されるエネルギの量が大きくなって、樹脂枠24又は樹脂枠25の溶融量が増加した結果熱収縮量が増加したとしても、その収縮力によって正極終端電極19の電極板15にしわが生じることが抑制される。これにより、蓄電モジュール4の信頼性を向上することができる。
【0061】
また、電極板15の剛性は、電極板15の厚みを調整することによって設定されている。金属板20の剛性は、金属板20の厚みを調整することによって設定されている。これにより、電極板15及び金属板20の剛性を容易に設定することができる。
【0062】
本発明は上記実施形態に限定されない。
【0063】
上記実施形態では、電極板15剛性が電極板15の厚みを調整することによって設定されている例を示したが、電極板15の剛性は、電極板15のヤング率を調整することによって設定されていてもよい。金属板20の剛性が金属板20の厚みを調整することによって設定されている例を示したが、金属板20の剛性は、金属板のヤング率を調整することによって設定されていてもよい。ヤング率は、例えば、電極板15又は金属板20の材質を変更したり、電極板15又は金属板20に表面処理を施したりして、設定されている。
【0064】
電極板15の剛性は、電極板15の引張強度を調整することによって設定されていてもよい。金属板20の剛性は、金属板の引張強度を調整することによって設定されていてもよい。引張強度は、例えば、電極板15又は金属板20の熱処理の条件を変更することによって設定されている。何れの場合も、金属板の剛性を容易に設定することができる。
【0065】
上記実施形態では、金属板20及び正極終端電極19の電極板15の剛性がバイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きい例を示したが、少なくとも負極終端電極18の電極板15の剛性がバイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きければ、金属板20及び正極終端電極19の電極板15の剛性は、バイポーラ電極14の電極板15の剛性よりも大きくなくてもよい。
【0066】
上記実施形態では、樹脂枠21がバイポーラ電極14の電極板15の第1の面15aに溶着されている例を示したが、樹脂枠21は、バイポーラ電極14の電極板15の第2の面15bに溶着されていてもよい。つまり、樹脂枠21は、バイポーラ電極14の電極板15の第1の面15a又は第2の面15bに溶着されている。
【0067】
上記実施形態では、金属板20は、負極終端電極18の電極板15に接触する接触部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0068】
4…蓄電モジュール、14…バイポーラ電極、15…電極板(金属板)、15a…第1の面、15b…第2の面、15c…周縁部、16…正極(正極活物質)、17…負極(負極活物質)、18…負極終端電極、19…正極終端電極、20…金属板(未塗工の金属板)、20a…一方の面、20b…他方の面、20c…周縁部、21,22,23,24,25…樹脂枠(樹脂部材)、30…バイポーラ電極ユニット群、31…バイポーラ電極ユニット、32…負極終端電極ユニット、33…正極終端電極ユニット、D1…積層方向(一方向)、V…内部空間。
図1
図2
図3
図4
図5